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(操作音)
(操作音)
(桑野信介くわの しんすけ)うっ 無理だ…
無理だ
うっ 読めない
(佐々木) いまいちなんだよ 君の芝居
俺も推薦した手前—
できるだけ かばおうとしたんだけど…
結局 恥をかいたよ
(戸波早紀となみ さき) 私の何を分かってるっていうの
あっ… 私は大丈夫
お芝居うまくなりたいなら 練習あるのみ
ねえ 私のセリフ聞いて
えっと リョウ子こ 電話をかける
あいつを殺せっていうの?
(早紀)そんなの無理
私を殺人犯にしようっていうの
私を殺しの実行犯にして 自分は 安全な所にいるつもりなの?
ううん 言い訳なんかしなくてもいい
分かってる
私があなたを 愛してしまっているから—
断れないと思ってるんでしょ
(早紀)いいわよ やるわ
どうやるんだ?
青酸カリを飲み物の中に 入れるだけでいいのね
分かったわ
えっ!
あ 明日の夜!
青酸カリ…
(早紀)おはようございます
(信介)あの…
(早紀)はい…
いや…
(吉山よしやままどか)うっ うう うう…
うっ ふう う…
うあっ はっ
(まどか)どうも (信介)どうも
(まどか) どうやら やっくんは 海外の業者を経由して—
日本のプロバイダーに アクセスしてるようなんです
(信介)まるでプロだな
これを特定するとなると—
もう少し 手間がかかることになりますが—
続けますか?
しかたない やってください
分かりました
あっ ところで—
やっくんのブログ 今日は…
ハハッ 検索順位6位です 1つ下がってよかったですね
1つ下がっても うれしくありませんよ
そうですか…
え〜っと…
今日は何か 他に お話でも?
あっ そうですか
じゃあ…
(まどか)いいですよ もう
(信介)そうですか
あの…
実は昨日 隣の女が—
殺人計画を話しているのを たまたま聞いちゃったんですよ
えっ
電話で話してるのが 聞こえたんですがね
今夜 青酸カリで 誰かを殺すって
大変じゃないですか
一般論として—
たまたま そういう話を 聞いてしまった場合—
どうするべきですか?
あ もちろん警察に 通報すべきでしょ
警察が そう簡単に信じますかね
あっ まあ それは…
それに 警察に殺人を 計画してますかと聞かれて—
“はい してます”って 答えるバカ いないでしょ
そうですね…
(信介) しかも 通報したことによって—
逆に 恨まれるかもしれない
今度は 自分が 狙われるかもしれないんです
だったら 黙ってた方が 賢いっていうことになりませんか
殺人計画を聞いて 黙ってたからって—
罰せられることは ないですけど…
いや でもな…
(信介)じゃあ それで
(まどか) えっ いやいや ちょちょ ちょ
これで終わるつもりですか?
何か?
いや こんな話ほっとけませんよ
(信介)実はね… (山下香織かおり)先生
目黒台めぐろだい署の木村きむらさんから お電話です
(まどか)あっ はい ちょっと待ってください
あっ ちょうどいい
刑事さんです ちょっと相談してみます
えっ
もしもし あっ お世話になっております はい
ああ〜 その件は 昨日メールしましたように—
訴えを取り下げるという方向で
いろいろ ありがとうございました はい
ああ ところで ちょっと別件で ご相談がありまして
(信介)あっ ちょっと あの… (まどか)はいっ あ
いいから
あの 実は 私の依頼人から 相談を受けたんですが—
事件に 発展するかもしれない事案でして
あっ いえいえ 今すぐに ということではないんです
あくまで 可能性の話なんですが…
(木村)つまり それは—
台本か何かを 読んでいたということですね
(信介)たぶん そういうことです
(まどか)スウ…
(木村) しかし 台本を読んでいたと どうして分かったんですか?
同じ言葉を 何度も繰り返し言ってましたし
同じところで 何度もかんだりして
(木村)セリフですね (信介)セリフです
申し訳ありません お忙しいのに こんなことで
いや ハハッ
何でもなければ それでいいんですよ
(まどか)すいませんでした (木村)フフッ
すいません この人が
(木村)じゃあ 私は これで
(まどか) ああ〜 これは もうこっちが いや 大丈夫です
(まどか) ああ〜 これは もうこっちが いや 大丈夫です (木村)いやいや…
(木村)そうですか (まどか)はい
(木村)あっ では 失礼します
(まどか)すいませんでした
(ドアの開閉音)
いい人でよかった
フッ ああいう人と 結婚したらどうですか
あの人は 奥さんも子供さんもいます
調べたんですね…
(信介)フッ (まどか)ハア…
要するに あなたは 私をからかったんですね
たまたま 刑事さんから 電話があったから—
こういうことになったけど なければ—
私が あたふたするのを さんざん楽しんだあとで—
ホントのことを 言うつもりだったんでしょ
近いけど違うな
どう違うんですか?
フフッ 僕は ただ あなたを試したかったんですよ
この殺人が 実行不可能だということに—
気付けるかどうか
どういうことですか?
いいですか 青酸カリで 人を殺すっていうのは—
ドラマなんかでは よくやりますが—
実際は 青酸化合物は 味が強くて—
飲み物に混ぜて 飲ませるのは難しい
それに シアン化化合物は 非常に分解しやすくて—
すぐに空気と反応して—
無害の炭酸カリウムに なってしまうんです
詳しいんですね
刑事ドラマっていうのはね 他にも ウソが多いんですよ
殺人現場に刑事が 鑑識と一緒に入ることはないし
所轄が本庁と対立してる っていうのも これ ウソなんですね
あっ そうなんですか
弁護士のくせに そんなことも知らないのか
弁護士に 必要な知識じゃないですから
怒ってますか?
当然です!
ぬるい
(田中有希江たなか ゆきえ)これ お持ちして
(太田留美)えっ 何か空気が… (有希江)あっ…
(信介)ああ〜 うまい
(有希江) あの〜 よかったら コーヒーのお代わり どうぞ
(まどか)すいません (信介)ハアッ
別に 桑野さんも悪意が あったわけじゃないんですよね
ええ まあ…
十分あるんじゃないですか
(信介)ありません (まどか)もういいです
(まどか)ハア…
熱っ 熱っ 熱っ
あっつ
♪〜
〜♪
(信介)やっぱり 送ってくれるんですね
(まどか)送ってません どうせ通る道だから—
乗せてあげてるだけです
(信介)なるほど
あれ?
(まどか)ん 何ですか?
いや 例の青酸カリの女です
えっ
何か 困ってるみたいだったな…
やっぱり犯行に失敗か
まだ言いますか
(早紀)あっ
(信介)どうしました?
(早紀) タツオ見ませんでしたか?
(信介)タツオ?
あっ 犬です
散歩させようとしたら どっか行っちゃって…
(早紀)タツオ〜
タツオ
(まどか)タツオく〜ん
あれ いないな…
(信介)タツオ
タツオ
ケン
ああっ あ…
ハハッ やっぱり…
生まれ変わったのか
よし 待ってろ 待ってろよ ケン
(早紀)あっ いた
(信介)見つけました
こんな所で 他の犬のうんこ嗅いでました
(まどか)うんこ (早紀)ありがとうございます
いえ
(早紀) もう 何で逃げたの タツオ
お前…
タツオになったのか
(まどか)桑野さん やっぱり 女優さんなんですって
(信介)知ってますよ
(早紀)すいません お騒がせして
(まどか) 騒がせたのは この人です
(信介)脚本の人に 言っといてくださいよ—
青酸カリで 殺人は難しいってね
(早紀)えっ
(まどか)かわいい〜 どうしてタツオなんですか?
さあ 何となく ハハッ
実は 私 生き物飼うの初めてなんです
(まどか)へえ〜 どうして急に?
こないだ ショックなことがあって—
落ち込んでる時に 店で この子と目が合って
この子 寂しそうで つい…
あっ 1度あった 生き物 飼ったこと
高校の時 弟が合宿でいない間に—
金魚の世話 頼まれたんです
ちゃんと お世話してたのに ある朝 全部 死んでたんです
ああ…
(丸山裕太ゆうた)フフッ (村上英治むらかみ えいじ)それはないと思う
(裕太)へえ〜 (英治)あっ 桑野さん
(英治)バカなことやって まどか先生に怒られたそうですね
(信介)誰から聞いた?
(英治)えっ 風のうわさです
…で その女優さん 何ていう人ですか?
確か と 戸波早紀とかいったかな
芸名は 同じかは知らんがな
(一同)戸波早紀 早紀…
(英治)あっ 知ってる
前は アイドルやっててさ
俺 ちょっと ファンだったんだよな
(裕太)へえ〜 (横田詩織)何に出てる人だろう?
えっ 知らない
(裕太) おお〜 ウィキもないですね
(英治) ああ〜 でも どうして—
あんな高級マンションに 住んでんですか
駆け出しの女優じゃ 家賃払えないでしょ
知らんよ
事務所が借りてるとか
売れっ子でもないのに?
(沢村映子)事務所なら家賃が 経費で落ちますのでありえます
(詩織)事務所の社長の愛人とか (裕太)えっ
それもありえます
(英治)ああ〜 やっぱ かわいい
桑野さん いいな〜
隣に女優が住んでるって ちょっとドキドキしません?
フッ 別に ハッ
(詩織) クリエーター同士ってことで うまくいくかも
(英治)あっ そうだよ クリエーター女子って—
物好きが多いでしょ だったら 桑野さんでも
よせやい ハハッ
(森山桜子もりやま さくらこ)ハア…
(英治) ああ〜 桜子ちゃん 桑野さんがさ…
(桜子) ちょっとマズいことになって
(英治)えっ
山田やまださんが—
依頼した内容と違うから 返金しろって言ってきてるんです
(英治)えっ 山田さんって ついこないだ家が完成して—
引き渡しが済んだお客さんだろ 何が違うっていうの?
完成した家が注文と違うって…
奥の部屋は 和室にしろって言ったのに—
洋室になってる
フローリングの色は ベージュが希望なのに—
ブラウンになってるって…
いや でも 打ち合わせでは 予算があるから任せるって
それを全部 こちらで やり直したとすると…
(映子) 約500万円の損害になります
(英治)それじゃ大赤字だよ
(桜子)あの人 それどころか 契約解除するって言ってます
そんなん無理だよ
お前が よくよく確認しなかったからだろ
(英治)うわ 俺のミスだ (桜子)ううん
よく確認しなかった私のミスです
(一同のため息)
どうすればいいんですかね こういう時?
俺は そんな問題 起こしたことないからな
(信介)知らんよ (英治)そんな〜
人のこと笑った バチが当たったんだ
冷たいじゃないですか
俺は誰にも頼らず 1人で ここまでやってきた
甘えるな
(英治)分かりましたよ
(信介)分かればいい
(一同のため息)
そうだ!
まどか先生に相談しよう
結局 頼るのか
(薬丸やくまる) フッフッ フッフッ フッフッ フッフッ…
フッ フッ
フッフッ フッフッ
フッ…
(操作音)
フウーッ
“GABA配合”
(店員)いらっしゃいませ
6点で864円です
1000円から お預かりします
(早紀)あっ ん…
あ…
もう タツオ ああ…
言うこと聞いてよ
(早紀)あっ こんばんは (信介)どうも
(早紀) 先日は お騒がせしました
(信介)いえ
あの それ…
はい?
犬…
あっ 何ですか?
首輪がきつくて 嫌がってるでしょ
えっ
そうですか?
(信介)これは このぐらい緩めておかないと—
酸素がなくなって…
(早紀)詳しいですね
(信介)見れば分かりますよ (早紀)すいません
(信介)今日は サングラスしてないんですね
ああ… 何か この子が怖がるみたいなんで
この種の犬種は 繊細ですからね
それからパグは この顔のシワに 汚れがたまりやすいんで—
こまめに拭いてやってください
あと 暑さに弱いんで注意して
(早紀)詳しいんですね
ネット情報ですよ
あっ 私—
金魚しか飼ったことないって 言いましたけど—
よく考えたら インコとか亀とか 飼ったことありました
ほう
すぐ死んじゃいましたけど
(信介)つかぬ事 伺いますが
いつから女優に?
(早紀) 前はアイドルみたいなことも ちょっと…
でも 年齢的にあれだし
これからは お芝居かなって
(信介)その割に… (早紀)えっ?
(信介)あっ いや あのマンションの家賃とか
(早紀)ああ…
あそこ 私の父が持ってる マンションなんです
今は空いてるからって
(信介)チッ ああ
(早紀) もう早く帰ってきて結婚しろって うるさくて
(信介)帰らないの?
女優で頑張りたいから
(信介)ふ〜ん
あっ
(野村信吾) なんで 電話に出ないんだよ
(早紀) もう終わりにしましょうって 言ったでしょ
(野村) こっちは終わりたくないんだよ
何だよ 芝居に専念したいからって…
男いるんじゃんかよ
(早紀) この人は関係ない ただのお隣さん
(野村)お隣さん? (早紀)うん
(信介)こんばんは
ああ 分かった
こいつのために 引っ越ししたんだろ
(信介)こいつ… (早紀)だから 関係ないって
(野村)どうなんすか?
どうかな…
(野村)えっ (早紀)えっ
やっぱり こいつと つきあってんだ
そうよ 悪い?
(野村) マジかよ こんなおっさんと
相思相愛だ
俺は嫌だ
(野村)別れないぞ (早紀)ちょっと…
もう遅い
人の彼女 横取りしといて 何なんだよ?
(信介)フッ (野村)いてっ
大丈夫か?
うるさい
(早紀)行きましょう
クソ…
(早紀) すいませんっていうか ありがとうございます
(信介)いや 別に…
悪い人じゃないんですけど 束縛が ひどくて…
俺と一緒になって 女優やめろなんて言うから—
別れたんです なのに しつこくて
フッ ストーカーになる可能性大だな
それはないと思います
向こうも人気商売なんで
ほう
これで仕事に専念できます 感謝してます
あっ いや
(早紀)じゃあ おやすみなさい
おやすみなさい
(詩織)あっ…
野村君が?
どこの女だよ
ええ!
ちょっと 大変ですよ!
(詩織)これ (英治)何 何 何 何?
(村上・映子・裕太)あっ
(信介) なんだこれ 立てつけ悪いな
どうした?
あれ?
(詩織) “人気俳優 野村信吾が—”
“深夜の痴話ゲンカを繰り広げた”
“相手はかねてからうわさのあった 女優の戸波早紀”
“一緒にいる背の高い男性は 早紀の新恋人か”
(英治)これ 桑野さんですよね? (信介)知らん
(英治)いやいや どう見たって桑野さんでしょ
でも これ どういうことですか?
(信介)んっ
(信介)どういうことって? (英治)えっ
いや もしかして ホントに新恋人…
(英治)んなわけないか
(詩織)それはないです (英治)ないない ない
壁1枚しか隔たりがないんだぞ
何があっても おかしくない距離だろ
はいはい
チッ
どうせ そんな目え隠されてんだから—
誰だか 分かんないだろ 大丈夫だよ
(携帯電話の着信音) (信介)チッ 何だよ
(英治)ハハハハッ
はい
(中川圭子なかがわ けいこ) お兄ちゃん もう何やってんのよ
(桑原)何が? (圭子)何がじゃないわよ
何 この写真?
人違いだ
(圭子) これが お兄ちゃん以外の 誰だっていうのよ
もう いい年して みっともない
(不通音) (圭子)切った
(信介)ハア… (英治)おっ ちょ 何ですか…
(桑野育代いくよ)信介たら 若い女が好きなのかしらね
若い女が お兄ちゃんのこと 相手にするわけないでしょ
(ゆみ)いいじゃん 別に悪いことしてないんだから
(圭子)恥ずかしくない?
家族が こんな目線ありの写真 でかでかと
うん 何か こうやって見ると—
信介も割といい男ね
どこが?
(棟梁とうりょう)見たよ
あれ あんただろ?
(信介)違う
(棟梁) 俺 まだ何にも言ってねえのに ハハッ 図星だよ
(棟梁)あんただ (大工)桑野さん
(大工)写ってるよ ハハハハッ
クソ お前ら…
(棟梁)…で その女優とつきあってんのか?
知らん
(棟梁)ってなわけねえよな こんなきれいな ねえちゃんと
なあ つきあってねえよな
ウハハハッ
(信介)ハハハハッ (棟梁)押さえるなよ 笑うなって
(信介)やめろ!
(信介)チッ
こんにちは 何でしょう
ちょっとトラブルが発生しまして
あの週刊誌ですね
見たんですか?
村上さんが メールで教えてくれました
ツッ バカ英治 チッ クソ英治
香織ちゃん あれ
あれですね
(信介)あれ?
でも あくまで 桑野さんは傍観者でしょ?
(香織)どうぞ (まどか)ありがとう
(信介)これですよ この目線 この目隠し…
(信介)これですよ この目線 この目隠し… (香織)フフッ…
人を犯人みたいに
(まどか)これね〜 まあ いい気分はしないでしょうけど
困ることもないんじゃないですか 目線入れてるし
(信介) バレバレですよ あちこちで—
見ました 見ました 見た見たって…
それに“お前なんか どうせ若い子が—”
“相手するわけないだろ”って ひどいことまで言われちゃって
相手してほしいんですか 若い女に
そういう問題じゃないでしょ
とにかく 肖像権の侵害ですよ これは
(香織)フフッ んっ
まあ もう出ちゃってますからね
訴えるとして 何を求めるんですか?
(信介)雑誌の回収とか… (まどか)絶対に裁判で負けます
世間で話題になって 余計に拡散しますよ
じゃあ 泣き寝入りですか
ご愁傷さまです
じゃあ 泣き寝入りしろって 言うんですか
(川上)どうしようもないよ
向こうの事務所とも 話したんだけど…
当面は静観ということで
(早紀)ハア…
女優の仕事に 専念しようと思ったのに…
(川上) でも 考え方によっては—
むしろ 話題になって よかったってこともあるからね
そんなの嫌です ちゃんと別れたいから—
引っ越しまでして 見つからないように—
サングラスとか かけたりしてたんですよ
じゃあ ちゃんと 女優として成果を出して—
見返してやるんだね
分かりました
じゃあ 読み合わせ お願いします
(川上)いいよ どこ?
(早紀)えっと…
21ページのアパートのところ
じゃあ お願いします
(棒読みで)分かってるさ
お前は俺から離れることなんて できないのさ
そんなことないわ
思い上がるのも いい加減にしてちょうだい
じゃあ なぜ 俺がやったペンダントを外さない
これは…
お前は 俺を愛してるんだ
いい加減認めて 俺にすべてを委ねろよ
そうよ…
私は あなたを愛してしまってる
殺したいくらいにね…
ハハハハッ
ついに認めたな 自分の愛を
あれ どうかした?
(早紀)ああ いえ…
(店員)へい チャーシューワンタン麺 お待ち
(男性)どうも
(有希江)大変ですね…
実害はないんですよ 笑われるだけで
これって 結構 実害のような気もしますけど
う〜ん 人によっては—
ネタができたって 喜ぶ人もいると思いますけど
桑野さんには ダメージ大きいかもしれないですね
でも かわいい女優さんと 何かあるみたいに思われて—
ちょっとは うれしかったりしないんですかね
誰も 何かあるって 思わないみたいですよ—
桑野さんを知ってる人は
そうなんですか?
そうですよ
(まどか)ウフフフッ
(携帯電話のバイブ音)
すいません
はい
あっ 村上さん
(英治)先生に言われたように—
かし担保責任はないって 主張してみたんですけど…
やっぱり ダメでした
そうですか…
じゃあ 他の方法を 考えるしかないですね…
桑野さんは助けてくれないし
まどか先生だけが頼りですよ
(まどか)ああ…
何か 方法はあるはずですから またあとで連絡します
お願いします
あまり 深刻にならないようにね
ありがとうございます
(まどか)じゃあ あとで
俺 建築家としてやってく自信 なくなったよ…
村上さんも へこむことあるんですね
俺 こう見えて 心折れやすいタイプ
実は 私もそうなんです
あっ
あっ そうですか…
ハア…
(中川良雄) どうした 急に飲もうなんて
(信介)ちょっと疲れた
(中川)若い女は疲れるか…
冗談だよ ホントは何でもないんだろ あれ
まあな とばっちりだ
そうだろ そうだと思ったよ
俺たち おじさんはさ—
若い女の子が そうそう相手に してくれることなんてないんだよ
病院の院長なんかやってるとさ
若いナースが より取り見取りだろ なんて言うやついるけど—
とんでもない みんなさ—
若い独身のイケメンの医者が 持ってくんだよ
でもさ… おじさんが—
若い男より優れてる点が 2つだけある
何か分かるか?
いや
知識と経済力だ
これを うまく行使できれば なんて思うんだけどな…
妄想かな…
いや それでも うまくやってる奴やつとかいるのかな
ああ〜 どうなんだろう チクショウ
こいつに お代わり 心が落ち着くやつ
(神崎)かしこまりました
(信介)うわっ
(早紀)あ… あの
すいませんでした
(信介) いや 別に君が謝ることじゃ…
お知り合いの人とか 何か言ってます?
話題沸騰ですよ
ああ… 申し訳ありません
そっちは…
必要なら弁護士 紹介しますよ
ハハッ 相談料5000円ですけどね
ああ 事務所は 静観とか言ってたので—
たぶん 必要ないと思います
そう じゃあ
あっ
あっ あの…
こんなお願い 変なんですけど…
何か?
私の… お芝居の稽古の相手を お願いできたりしませんか
なんで 僕が?
下手クソなんです うちのマネージャー…
他に いないし
フッ だからって…
あっ そうですよね…
いきなり こんなこと…
私 時々 人との距離の取り方 間違えちゃうんです
ごめんなさい
行こう タツオ
(信介) “お江戸えどをたって二十里上方かみがた”
“相州小田原一色町そうしゅうおだわらいっしきまちを お過ぎなされて—”
“青物町あおものちょうを 上りへおいでなさるれば”
“欄干橋らんかんばし 虎屋とらや 藤右衛門とうえもん ただいま てい髪いたして—”
“圓斎えんさいと名乗りまする”
“元朝より 大つごもりまで お手に入れまする この薬は—”
“昔 珍ちんの国の唐人 外郎ういろうという人 我が朝へ来たり”
“みかどへ参内の折から この薬を深く込め置き—”
“用ゆる時は一粒ずつ…”
(早紀)えっ あっ
(信介)気にしないで
(信介)そのまま まっすぐ歩いて (早紀)ああ…
(信介) こうすれば 写真を撮られても すれ違ってるようにしか見えない
(早紀)はい
(早紀)あの (信介)はい
さっきは断ったのに どうして…
気が変わったというか
ああ うれしいです
読むだけですよね?
はい
…で どこ行くんですか?
夜分に 女性の部屋というのも どうかと思いまして…
(有希江)どうぞ (信介)どうも
(早紀)いいんですか?
(有希江)はい
私は あっちで帳簿つけてるんで 気にしないでください
(信介)ありがとう
(有希江)ごゆっくり
(信介)じゃあ (早紀)はい
(早紀)じゃあ お願いします
えっと… あっ ここです
このダイキって役 ここから
フウーッ
(信介) そっちは台本見なくていいの?
ああ 私は セリフ入ってるんで
(信介)えっ (早紀)役者ですから
おお…
どうぞ
(桑野のせきばらい)
(信介)あえい あえい あ… (ドアの開く音)
(まどか)あっ
いらっしゃい
あっ こないだの…
(まどか)ああ (英治)戸波早紀さんですよね?
俺 ファンです
ありがとうございます
何しに来たんだ 閉店だぞ
(英治)あっ まどか先生に—
例のトラブルのことで 相談するんですよ
(信介)よそでやれよ (桜子)よそ行きましょう
あっ 私はいいですよ
(まどか)迷惑じゃない? (信介)迷惑だよ
あの ここ 私の店なんだけど
(英治)いいそうです
(英治)先生 行きましょう (まどか)はい
(英治)さあさあ さあ
はい じゃあ 先生 どうぞ
(まどか)は〜い
(英治)桜子ちゃん 奥にね
チッ よそ行きましょう
あっ 私は他の人にも 聞いてもらった方がありがたいです
(英治) 閉店後の店で 何してたんですか?
(有希江) 台本の読み合わせだって
おおーっ 聞きたいな〜
ええ〜 私も ちょっと聞きたいかも
(早紀)お願いします (桜子)ちょっと 仕事の話…
(英治)あとで
(桜子)もう…
じゃあ お願いします
(信介)あえい あっ…
分かってるさ
お前は俺から離れることなんて できないのさ
(早紀)そんなことないわ
思い上がるのも いい加減にしてちょうだい
じゃあ なぜ 俺がやったペンダントを外さない
これは…
お前は 俺を愛してるんだ
いい加減認めて 俺にすべてを委ねろよ
(早紀)そうよ…
私は あなたを愛してしまってる
殺したいくらいにね…
まあ なんて醜い女なのかしら
自分が憎い
あなたが憎い
あっ どうかしました?
いいんですかね これで…
ああ いいんです 桑野さんは読むだけで
いや 僕じゃなくて そっちが
(早紀)えっ あ…
私のお芝居 マズいですか?
いや まあ… 素人の意見なんで
(早紀) 何か あったら聞かせてください
(信介)ハア…
あの…
この物語は 現代の設定ですよね
はい
どうも時代劇みたいな感じがして
私のお芝居が 古いってことですか?
あっ いや 脚本の問題か
この… ここの言い回し 変えてみたらどうかな
自分が憎いじゃなくて 自分が許せないとか…
この “いい加減にしてちょうだい”
これも “いい加減にしてよ”でいいし
俺の この“ペンダント”って セリフ いつの時代だよ
「ひみつのアッコちゃん」じゃ あるまいし
アッコちゃんって—
ペンダントじゃなくて コンパクトでしたよね
さあ 知らない…
(まどか)ちょっと桑野さん (信介)はい
誰も脚本の直しは 頼んでないと思うんですけど
あっ 演技か…
そもそも あなたは—
どういうメソッドで 演じてるんですか?
メソッドって…
あの アクターズ・スタジオ系とか
(早紀) ああ… 何ですか それ?
アクターズ・スタジオは—
スタニスラフスキーのメソッドを 基にしていて
スタニフ?
あの ストラスバーグの 「メソードへの道」は—
もう読みました?
いえ…
ああ… 読んでないか…
となると…
内面からのアプローチよりも—
状況のアプローチからの方が いいのかな…
だとすると そうだな…
(まどか)あの… もっと 分かりやすいのないんですか?
あのね 僕は観客の立場で ものを言ってるだけなんで
教えてください
そうだ
芝居の前に まずは人間理解だ
ウォルシュの「神との対話」を 読むことから始めた方がいい
ああ そのレベルだ…
はい…
あれ?
(早紀のすすり泣き)
私 あと何年ぐらいで 一人前になれるでしょうか?
さあ 僕に聞かれても…
頑張るつもりなので
ああ… 頑張って
(英治)もう桑野さん この人いじめて楽しいですか
(信介)誰が… (まどか)そうよ
スタニスだかストレスだか よく分かんないし
桑野さんに 悪意はないんですよね
(まどか)ないのかな (英治)いや ありますよ
桑野さんってね 正しいこと言ってね—
人をおとしめるとこあるからな
何だ 英治まで…
悪かったな
(早紀)いいんです
言われて当然なんです
私は 女優としては まだまだなんですから…
話題になるのは あんなことだし
親はやめて結婚しろって言うし
私 もう やめた方がいいのかな
そんなことないよ
そうよ あなた まだ若いし頑張れるって
なら やめろ
(まどか)また そんなこと…
やめた方がいい…
そう言われて 簡単に 夢を捨てられるぐらいだったら—
やめた方がいい
どんな仕事にだって 必ず辞めたいという時が来る
でも そこで踏みとどまれたら—
それこそ 本当の第一歩なんだ
俺が若い時 そうだったから
(まどか) ちょっとフォローしてきます
(まどか)ハア…
ああ〜 早足なんだから…
(信介)何か…
(まどか) 憎まれ口だけかと思ったら—
たまには いいことも言うんですね
桑野さんのこと 少し見直しました
だてに キャリア積んでるわけじゃ ないんですね
俺—
もう1回 山田さんと ちゃんと話してみる
桜子ちゃん 山田さんに 明日のアポ取ってくれるかな
分かりました
(英治)うん
よし
(有希江)これが ホントのスタートですね
はい
私も もう1回 頑張ってみます
長年 働いてると 誰しも山あり谷ありですよね
実は…
私も仕事辞めようと 思ったことあるんです
そうなんですか…
自分の未熟さに—
打ちのめされることって ありますよね
そうでしょうね…
桑野さんは いつ頃の話ですか?
何がですか?
仕事を辞めようと思ったの
僕は そんなこと 思ったことありませんよ
えっ だって さっき…
この年になるとね—
知識と経済力だけは 若いやつに負けないんです
そのうちの知識を ちょっと使っただけですよ
若者をたきつけるような言葉を 脳内で検索して—
アウトプットしてみたんです
弁護士を 辞めようと思われたんですか
(まどか)ハア… 一瞬
その時 辞めるという選択肢も あったわけですよね
えっ
もっと別のいい人生が あったかもしれない…
もしかしたら 結婚できてたかも
フフフッ
いや… え…
可能性の話を言っただけですよ
私は 辞めなくて よかったと思ってます
まあ 人生に たらればは ありませんからね
やっぱり あなたは 悪意があって言ってる
(信介)えっ (まどか)ハア…
あの…
じゃあ 私も この年齢なりの知識で—
ひと言 申し上げます
はい
桑野さん
人としての価値は お金でも知識でもありません
デリカシーがあるかないかです
ああっ ハア…
(機械音声) イテッ イテッ イテッ イテッ…
イテッ イテッ イテッ イテッ…
(信介)フウ…
ハア〜
あっ
死ぬなよ
(育代)信介〜
お部屋きれいに しといてあげるからね〜
(信介)早く 追い出さないと…
(育代) 私 間違ってたわ
あんた 結婚しない方がいい
(圭子)あさって お母さんの誕生日でしょ
プレゼントも渡してよ
プレゼント? 何だ それ…
自分のお母さんに 何かを—
プレゼントすることって ありますか?
聞けばいいじゃないですか 何が欲しいか
どうかしましたか?
(育代)独りぼっちで—
孤独に暮らしてんじゃないかと 思ったけど—
結構 周りにお友達がいるのね
こっち来たいのか
(まどか) お母さん 待ってますよ
ほら もっと本気出して!
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