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Original subtitles

(電子音)

(ぶつかる音) (桑野信介くわの しんすけ)ん チッ

ああ

フウ…

(足音) (信介)100…

(スタッフ)いかがでしょうか? (信介)あっ

(信介) どうも ありがとうございました

(スタッフ)いえ お役に立ちましたでしょうか?

(信介)ええ 十分 (スタッフ)はい

(信介) 何か おかしいな これ…

あの トイレありますか?

(スタッフ)あっ アハッ お手洗いは こちらですが

ここじゃなくて

(村上英治むらかみ えいじ) 結婚する前に俺がさ—

うちに帰ったら 明かりがついてて—

晩ご飯の用意してくれてる 暮らしがしたいなって言ったら—

彼女が言うんだよ

“偶然ね 私も同じよ”って

(横田詩織)フウ〜 気が合う夫婦 (英治)うん

だから 交代でご飯作って 待ってることにしたんだ

(丸山裕太ゆうた) へえ〜 平等でいいですね

(英治)うん

(英治)うん (沢村映子) 令和の時代にふさわしいですね

(沢村映子) 令和の時代にふさわしいですね

ねえ〜 結婚はいいよ 君たちもした方がいいよ

そんな気がしてきました

(信介) フッ 平等なのは最初だけだろ

そのうち 英治が毎晩 メシ作って 待ってるハメになるぞ

(英治) 今日は ちょっと 桑野さんに反論させてください

(信介)何だよ? (英治)桑野さんは—

結婚は古いシステムだって 言ってましたよね

ああ

違いますね

何だ 理論武装してきたのか 言ってみろ

若い世代が お金がないから—

結婚できないって話を 聞くじゃないですか

でも 結婚して共稼ぎすれば—

家賃とか食費とか光熱費とか 折半できるんで

むしろ 金がない人ほど 結婚した方がいいっていえますね

(信介) 金がない男と結婚したい女が—

どれほどいるかという問題を 解決できたらな

それは個別の問題っていうか…

議論から逃げたな

金のことだけじゃなくて

結婚すれば おうちご飯で 栄養バランスもとれて—

こんないいこと ないじゃないですか

(指を鳴らす音) (信介)お前の理論は穴だらけだ

おうちご飯は1人でもできんだろ

なあ なあ

あっ いや すいません

桑野さんは特殊なんですよ

普通は1人で食っても寂しいし—

面倒だから つい外食ばっかりに なっちゃうんですよ

それに 桑野さんのおうちご飯って—

どうせ肉主体でしょ

栄養バランス的に どうなんですかね

あっ 桑野さんが反論できない

(英治)よし

(森山桜子もりやま さくらこ)こんにちは (英治)あっ こんにちは

(桜子)あっ 英治君 (英治)うん

(桜子)今日 夕方 エステ寄って帰るから—

夕食係 交代してくれない?

(英治) えっ 俺も歯医者なんだけど

今日しか予約取れなかったの お願い

分かりました

(桜子)ありがとう (信介)フッ

(桜子)コーヒー 頂きます

(信介) つかの間の勝利だったようだな

別に勝負なんかしてないし

(信介)うっ…

えっ ていうか 桑野さん どうかしたんですか?

(信介)うっ… (詩織)えっ 桑野さん

(信介)いててて… (裕太)大丈夫ですか?

今朝けさから腹が…

(英治) えっ だったら早く言いなさいよ!

反論できなかったのは この腹痛のせいだからな…

(英治) 今 そんなこと どうでもいいから

(沢村映子)救急車 呼びます (英治)うん 呼んで 呼んで

(英治)大丈夫なんですか? (詩織)大丈夫ですか?

(救急車のサイレン)

(機械音声)救急車が通ります

いててて ああ…

おい ちょっと待ってくれ おい

(中川なかがわ良雄)おっ (信介)あっ

(中川) 何だ 信介 どうした?

頼む あの女医にだけは知らせるなよ

(中川)ああ 分かってるよ

どうしたの こいつ?

(吉山よしやままどか) えっ 桑野さんが倒れた

(田中有希江たなか ゆきえ)そうらしいの

(太田留美るみ)お待たせしました (まどか)ありがとう

(戸波早紀となみ さき) それで大丈夫なんですか?

ていうか原因は何? 病気?

(中川)急性胃腸炎だ

疲れが出たんだな あとは1人暮らしによる不摂生

まあ お互い もう若くないんだ 気を付けろ

10年前から 同じこと言いやがって

10年前だって 既に 若くないんだよ

(信介)ああ… いてっ (中川)救急車 呼んだり

世話してくれる人がいて よかったよな

1人で倒れて そのままだったらどうする

(ノック)

(まどか)失礼します

どうも…

大丈夫ですか?

(信介)まあ…

(有希江) 倒れたって聞いて びっくりしました

(早紀) 命に別状ないみたいですね

(信介)一応…

(蹴る音)

(信介)あっ

この人は この病院の院長の中川

妹の旦那です

(中川)どうも (まどか)どうも

(信介)それから あちらは弁護士の吉山さん

はじめまして

それから カフェのオーナーの田中さんだ

(有希江)はじめまして

それから…

女優さんですよね え〜っと…

(早紀)あっ 戸波早紀です

ああ 見ましたよ ネットで

えっ 何を?

(中川)いいな〜

こんなに美女が 見舞いに来てくれるなんて

実は お前 モテ男だったのか (蹴る音)

(まどか)いやいや いや (早紀)全然あれなんで…

(中川)でも 普通 どうでもいい人の見舞いには—

来ないでしょ

(一同)ハハハッ…

仕事は?

おっ そうだ じゃあ お大事に フッ

冗談じゃなく—

心配してくれる人が いるっていうのは—

ありがたいことだぞ

(中川)では 失礼します

(まどか)どうも

(中川)ハア〜 ハハッ

(一同)ハハッ…

(まどか)あっ これ つまらないものですが

あの… うつる病気じゃないんで

(まどか)あっ フフッ… (早紀)あっ… (有希江)ハハッ…

(まどか) じゃあ ここ置いときますね

(有希江)やっぱり 少し顔色悪そうですね

(早紀) 桑野さんでも弱ることあるんだ

人間だから

(早紀)ハハッ…

いつも 人に皮肉ばっかり言ってるから—

バチが当たったんじゃないですか?

そうなんですね

心配してくれて どうも ありがとうございます

(早紀)えっ 何か 桑野さんが素直…

(まどか:小声で) もうちょっとつついてみたら

(早紀:小声で)うん

あの… この機会に 心を入れ替えた方がいいですよ

(まどか:小声で) いや それ 言いすぎ

確かに そうですね

ホントに弱ってる…

ハッ 僕をいじめるなら今ですよ

よし 何言ってやろう

そんな 病人なんだから

キャラの違いが出ますね

(まどか)冗談よ フフッ (早紀)フフッ

まあ とにかく…

今日は わざわざ来てくれて うれしかったです

どうも ありがとう

(まどか)えっ どうも… (有希江)いえいえ…

あっ そうだ

バナナ 食べますか?

さっき 英治が置いていったんですよ

(一同)うわ

(信介)うっ ああ〜

あっ…

どうぞ 取って

(早紀)じゃあ 頂きます

よいしょ

(有希江)よいしょ

(まどか)いただきます

インド産です

♪〜

〜♪

結婚相手に欠点があったって 別に いいんですよ

あとから教育次第で 何とでもなりますから

(有希江)なるほど

私は そこに失敗したのか

ていうか 相手を 教育しようっていう—

発想がなかったわ

(早紀) でも 矯正不能な欠点って ないんですか?

まあ それが こっちにとって 見逃してやれる範囲なら—

別に気にしなくていんじゃない

(有希江)なるほど

(まどか)人生の後輩から こんなに教えられるとは…

(桜子)どうも ハハハハッ (まどか)おほ〜

(早紀)あっ そしたら

桑野さんでも 教育可能ってことですか?

あっ 絶対無理って人は除外で

ううん 桑野さんでも 変わることがあるかも

見たでしょ 今日

あっ あれね びっくりした

えっ 何ですか?

桑野さんがね 素直だったのよ

ええ〜

(早紀) 何か いい人になったみたいで

(まどか)ねえ (有希江)いやっ

ふだん強がってたって 病気になったら不安なものよ

えっ じゃあ ホントに 心 入れ替えたんですか?

うん… かもしれません

(有希江)うんうん (桜子)う〜ん…

(まどか)いや どうかな〜

あれは所詮しょせん 一時的なものかも

ああ 体調崩して弱体化しただけよ リバウンドするね きっと

桑野さんは 変な人だけど悪い人じゃない

優しいとこもあるし

まどかさんは 桑野さんに厳しすぎ

いや… そういうことじゃなくて

あっ

(信介)あれ

あっ ちょっと早紀ちゃんちに

あっ ああ

今日は どうも…

もういいんですか?

(信介)ええ もう すっかり

薬飲んだら治りました

(まどか)よかったですね

(信介)ええ まあ…

あの…

はい?

あっ… いえ

じゃあ お大事に

どうも

あっ

そうだ

はい?

(店員)ごゆっくり

何ですか?

黒丹茶こくたんちゃです

実家の母が 大量に送ってきたんです

体にいいらしいので

いいらしい?

ああ 私は まだ飲んでなくて よかったら

あっ お互い1人なんだから—

余計に 健康には 気を遣わないとね

(信介) まあ とにかく飲んでみます どうも

ああ… よかった

桑野さん ホントに 人の言うことを 素直に聞くようになったんですね

まあ 健康のことは ちゃんと考えないとね

お互い もう若くないんだし

そうですね

部屋で 誰も知らないまま—

孤独死なんてことに ならないようにしないと

ああ もし部屋で 1人でいる時に—

具合が悪くなったりでもしたら いつでも連絡ください

ベランダを伝ってでも 助けに行きますから

そういうの得意なんで

ホントですか

冗談でも そういうこと言われると うれしいです

いや 冗談で そんなこと言いませんよ フッ

そうですか…

ありがとうございます

まあ 1人暮らしを 余儀なくされてる方に—

少しでも お役に立てたらと

余儀なく? どういう意味ですか

いや 別に 大した意味はありませんよ

あっ そうだ

映画のチケットが 2枚あるんですが—

行きませんか?

(まどか)映画?

(信介)中川がくれたんです こないだの病院の院長

ほら どうせ—

キャバ嬢 誘って 断られたんでしょう

桑野さんが 誘ってくれるなんて…

あっ この映画 何か—

二重三重に謎が張り巡らされてる とかいうやつですよね

(信介)フフッ (まどか)私 そういうの 結構—

(まどか) だまされちゃうんですよね (信介)フフッ

ご安心ください

僕が予習タイムと 復習タイムを作って—

懇切丁寧こんせつていねいなレクチャーを しますから

決して 置いてきぼりにはさせませんよ

それは どうも…

でも 私 映画は もっと気楽に楽しみたいかな

あっ そうですか…

別に 無理にとは言いませんけど

あっ いえ 行かないとは言ってませんよ

でも 解説は 特にしてもらわなくても

(信介)要は 僕と行くのが嫌なんですね

(まどか)解説せずに いられないんですか

(信介) 親切で誘ったのに…

(まどか)あっ

(信介) いつも1人で寂しそうだったから

別に 寂しくないですよ 有希江さんや早紀ちゃんもいるし

謎の女子会で たあいもない話をするのが—

そんなに楽しいんですか

楽しいですよ

桑野さんも うんちくを おとなしく聞いてくれる人を—

探した方がいいですよ フウ…

最後は自己正当化か…

(まどか)ハア…

やっぱり…

何ですか?

お腹痛いのが治ったから リバウンドしたんだ

リバウンド?

みんなで話してたんですよ

桑野さん 病気になって 心を入れ替えたのかもって

そんな必要性は感じてませんけど

あ そうですか

一瞬でも あなたが 優しくなったかと思った—

私がバカでした

これ いるんですか?

飲みます 一応

毎朝ですよ

ハア…

(ドアの開閉音)

フッ 虫の居どころでも悪いのか

(田村)本当は 俺のことが好きなくせに

(早紀)はあ〜 そんなわけないでしょ

あんたのことなんか 1ミリも好きじゃない

この女に のし付けて差し上げるわ

(美香) ありがとう じゃあ頂くわ

(早紀)ああ そう

じゃあ これで めでたし めでたしね

(田村)ハハッ よせよ そんな (美香のにおいを嗅ぐ音)

(美香)ハア… フフッ (田村)嗅ぐなって

(早紀)何かムカつく

こいつらだけ幸せになるなんて 許せない

(美香)は? 何か言った?

(早紀)こうなったら…

(早紀)はっ (田村)あっ

(極きわみ)はい (手をたたく音)

(極)え〜っと

のし付けるって意味分かってる?

はい

喜んで進呈するって 皮肉を込めた言い方ですよね

調べました

あっ そう ならいいんだ

あと… この女は 本当は彼のことが 好きだっていうのは 分かってる?

えっ

意識してることと 本当の気持ちが 食い違うってことあるだろ

ケンカしてても本心では好きとか

ケンカしてても好き…

(早紀) ハア〜 ヤバい 分からない

(美香)どうしたの?

ねえ さっき 極さんが言ってたこと分かる?

(美香)う〜ん…

そういえば

ひどいこと言われて 嫌なやつと思ったけど—

言われた中に 結構 真実があるって気付いて

フフッ 急に その人が 気になってきたことがあったな

ふ〜ん…

体にいいらしいから

(神崎)そうですか…

どう?

確かに 体にはよさそうです

じゃあ… 飲んでみるかな

分かりました

金田かねだ?

(男性) ウハハッ すいません フフフッ

(神崎)どうぞ

マズッ

(“交響曲第4番 ロマンティック”)

(信介)うわ 薬丸やくまる…

1人バーベキューか…

楽しそうだな

(太田留美るみ) お待たせしました ブレンドです

(まどか)ありがとう

(早紀) えっ またケンカしたんですか

詳しくは語ろうとしないんだけど 何かあったみたい

何でかな… 桑野さん—

私がタツオの散歩頼んだら 快くやってくれるし…

早紀ちゃんには 好意があるんじゃないの

(早紀)えっ でも 有希江さんにだって—

お店の看板 作ってくれたんでしょ

じゃあ 有希江さんにも 好意があるんでしょ

ハハッ まどかさんにだって…

全然

でも まどかさんと 桑野さんって—

ケンカしてても どこか仲がよさそうっていうか

はあ?

単に私が 嫌みを 言いやすい相手なんでしょ

男の子って 好きな女の子 いじめたりするじゃないですか

そりゃ 子供の話でしょ 私たち いくつだと思ってんの

年は関係ありません

ケンカしてても 実は 好きっていうのがあるんですよ—

男と女には ねえ

まあ あるかな…

それは物語の中だけでしょ

現実にもあるんじゃないですか?

(まどか)ないない (早紀)ええ〜 どっちですか…

また 分かんなくなってきた

えっ 今やってるお芝居 そういう内容なの?

うん 私の役が—

1人の男を 他の女と取り合うんですけど

激しいじゃない

あっ そういえば—

激しい恋をしろって 演出家に言われてたのよね

う〜ん 今は それより—

男と女の間で言葉と感情が 裏腹っていう表現が難しくて

難しそう

(早紀)でも頑張ろう

よかったら観みに来てください はい

まどかさんも

(まどか)ん あっ いつ?

(早紀) チケットが残ってるのが 1日だけなんですけど—

ご都合どうですか?

(留美) 私 遅番 大丈夫ですよ

あっ そう じゃあ 私 行ける

私も大丈夫 行くね

じゃあ 2枚 席取っときますね

(まどか)うん

あと 誰か 招待する人いるかな…

それこそ 桑野さん誘ったら

(早紀)えっ (まどか)そうよ

桑野さんのポイント 上がってるんでしょ

う〜ん それとこれとは別っていうか

えっ なんで?

桑野さんには前に 芝居のダメ出しされたんで

そもそも あなたは—

どういうメソッドで 演じてるんですか?

内面からのアプローチよりも—

状況のアプローチからの方が いいのかな…

そうだ 芝居の前に まずは人間理解だ

(まどか) 確かに あれはひどかったね

う〜ん でしょ

(桜子)木村きむら様は—

1人暮らしの小さな家を 建ててほしいそうなんです

ほう 1人暮らしの

(木村) この度 30年連れ添った妻と 離婚することになりまして—

晴れて1人になるんです

ああ… それは おめでとうございます

(木村) あっ ありがとうございます

…で これからの人生を 考えてる時—

桑野さんの発言を ネットで読みまして

例のシンポジウムの発言ですね

人生100年時代の

(信介)あっ あれか…

(木村)人生100年なら—

まだ30年以上 残ってることになります

第2の人生を これから どう1人で生きるか…

あっ 私 翻訳関係の仕事をしてまして

まだ当分働けますし

じゃあ 金銭的には 問題ないんですね

ええ 幸い

ですから 1人で 快適な暮らしができる家を—

ぜひ 桑野さんに 造っていただきたいんです

分かりました

いや どうも世間には—

1人じゃ 幸せになれないというような—

間違ったイメージが 広まってますよ

ウソですよね そんなの

1人でも 第2の人生を 快適に暮らせる

それを証明するための家を 設計してみせますよ

よろしくお願いします

(子供)イエ〜イ すごい

(女性)あっ 広いわね (男性)眺めもいいよ

(女性)あっ ホント

(子供)こっちだ

(女性)そうちゃん 走ったら危ないよ もう

(男性)コラ… (女性)コラ

(棟梁とうりょう) やっぱり家族はいいな

家は 家族で住むに限るよな

(信介) 人生の多様性を知らんやつだ

(棟梁)何だと

(信介) どうせ言っても分かんないだろ

お前 自分が どうして 結婚できないか知ってるか

何だよ

ヒヒヒッ

教えない

クッソ

(山下香織かおり) 先生 確認ですけど—

今日6時から打ち合わせですよ

えっ そうだっけ!

ああ〜 しまった

ああ 変更になったの忘れてた〜

今夜 早紀ちゃんのお芝居なのに どうしよう…

香織ちゃん 代わりに行かない?

あっ いや 私 今日はちょっと…

ハア… どうしよう

あっ あの 友達で—

お芝居 好きな子がいるので 電話してみます

お願い

(香織)は〜い

(まどか)ハア…

(ノック) (まどか)はい

(香織)あっ いらっしゃいませ (まどか)あっ

どうも

(まどか)今更ですけど…

(信介)はい

(まどか)どうして いつもバナナなんですか?

だって 好きだって言ったから

(信介)好きですか? (まどか)大好きです

ちなみに 僕もバナナ 好きなんで

なるほど…

…で 今日は何ですか?

まあ 先日の発言に—

ちょっと いきすぎがあったかと思いまして

そうですか…

何か私に お願い事でもできたんですか?

えっ

そういうこともないと—

あなたが わざわざ 詫わびを入れに来るとは思えません

ほら すぐそうやって人を…

何もないんですか?

事務所に架空請求してくる 業者に対応するのに—

弁護士の名前があった方が 早いと聞きまして

ほら

嫌なら 別にいいんですよ

(まどか) 嫌とは言ってませんよ 分かりました 検討します

(信介)お願いします (まどか)はい

(信介)あれ これ (まどか)あっ

早紀ちゃんのお芝居です これ

でも 私 都合が悪くなって

(香織)すみません 友達 お芝居ダメみたいです

あっ そう…

ああ… 今夜なのにどうしよう

ハア…

もしかして…

僕に行けって言ってます

(まどか)えっ

桑野さんには前に 芝居のダメ出しされたんで

(まどか)いいえ そんなこと言ってません

今夜7時…

(信介)今夜は空いてるな… (まどか)あっ いや

(香織) ちょうどいいじゃないですか

ああ〜 いや えっとですね

あっ 桑野さん これ 駅から30分ぐらい—

(まどか)歩くらしいですよ 劇場 (信介)全然歩けます

(まどか) すごい座席が狭いんですって

もうね こうやって 観なきゃいけないんですよ

たぶんね 桑野さんだと…

(有希江)ええ〜 桑野さんが

そうなのよ

本人 行く気になっちゃって ダメとも言えなくて

うん… でも 早紀ちゃん—

桑野さんに来てほしくない みたいなこと言ってなかった

まあ… 客席暗いし

いても気付かないんじゃない

(有希江)そっか…

(有希江)そうね (まどか)うん

あっ 観たあとで酷評して—

早紀ちゃんのこと 傷つけたりしないように—

そこは くぎ刺しといて

分かった

(有希江)あっ (まどか)どうかした?

ということは 私と桑野さん—

2人で お出かけするってことよね

そうなるね…

(まどか)嫌? (有希江)大丈夫

うん 大丈夫よ

フフフッ

フフフッ じゃあ また

うん またね

(スタッフ)招待券お持ちの方 こちらに お願いします

招待券お持ちの方 こちらに お願いします

(スタッフ)こちらもいいですよね (女性)かわいいね…

(出演者)は〜い (出演者)ありがとうございます

(美香)ねえ ねえ 完売だって

(早紀)えっ ホント ええ ヤバい (美香)そう完売 かんば〜い

(早紀)えっ ホント ええ ヤバい (美香)そう完売 かんば〜い (出演者) ウソッ やったーっ

なんで桑野さんが…

(スタッフ)開演5分前です

(早紀) ええ〜 やだ もう どうしよう

(美香)どうしたの 元カレとか来てんの?

はあ…

(有希江) 私 こういう小劇場って 初めてです

(信介)フッ 演劇は—

脚本 俳優 観客の3者がそろって 成立するんですよ

まあ そういう意味で言えば

観客と俳優の近い小劇場は—

演劇のだいご味を 味わえる場だといえます

そうなんですか…

もともと小劇場演劇は—

60年代に 新劇に反発した若者たちが—

旗揚げしたのが最初で だから… (アナウンス) 大変長らく お待たせいたしました

(アナウンス)それでは ただいまより開演いたします

(信介)続きは 後ほど (有希江)はい

(信介)続きは 後ほど (有希江)はい (アナウンス) 携帯電話—

(アナウンス) 携帯電話—

(アナウンス)スマートフォンなど 音の出るものは—

電源をお切りください

(有希江)桑野さん

(信介)僕は もう切りました

(有希江)そうですか

(信介)あっ マナーモードもダメですよ

振動音は 意外と響いてきますからね

(早紀)あなた 魚をさばける女が好きって—

(早紀)私に言ったじゃない (田村)いや まあ…

(美香)私には マカロンを 作れる女が好きって言ったわ

(田村)あっ うん (早紀)どういうことよ (観客の笑い声)

(早紀) 私 あなたのために—

まぐろの目利きまで できるようになったのよ

(美香)私なんて フランスで半年間も修業したわ

(田村)ああ〜 もう

そういうアピールとか ウザいだけだから

(早紀)なんて言いぐさよ (田村)魚も食べたいし—

マカロンだって食べたい 人生って…

そういうもんだろ

(美香)開き直ろうっていうの

(田村)悪いけど これから 北京ペキンダックの女と会うんだ

(早紀)ペ…

(早紀・美香)北京ダック

(田村) 今日は 中華な気分なのさ

(早紀) ねえ お願い 私だけを見て

(美香) いいえ 私だけを見てちょうだい

(早紀)あっ

(早紀)猫? (美香)猫?

(田村)ニャ〜ン

(早紀・美香)犬が 好きなんじゃなかったの

(田村)あっ 終電に間に合わない

じゃあ (舌を鳴らす音)

(観客の笑い声)

(早紀・美香)悔しい〜

(ドアの開く音) (出演者)どうぞ

(出演者) 靴のまま お上がりになって

(出演者) お邪魔しま〜す

(早紀)ああ〜 やりにくい

(極) 今日 何か芝居が硬いよ

(早紀)すいません

(極)頼むよ (早紀)はい

(田村)お疲れっす (極)はい

(田村)お客さんで 全然笑ってない人がいる

3列目の あのでっかい人 面白くないのかな

(早紀)すいません あの 気にしないでください

なんで君が謝んの… 知り合い?

えっ いや…

(美香) あっ 次 早紀の見せ場ね

ファイト

どうしよう…

本当は俺のことが—

(骨が鳴る音) (田村)好きなくせに フオ〜

はあ? そんなわけないでしょ

あんたなんか 1ミリも好きじゃない

この女に のし付けて差し上げるわ

一寸先は闇 何が起こるか分からない

それが人生よ

武器が何もないわ…

(極)おお〜

早紀ちゃん いないのかな…

(有希江)あっ あの… (美香)はい

戸波早紀ちゃんは…

ああ… トイレに こもって出てこないんです

泣いてるみたい

(有希江)えっ

(信介)あの…

なかなか斬新ざんしんな展開で よかったと伝えてください

ハハッ あっ これ 彼女に

ああ ありがとうございます

うう そうですよ〜

(一同)かんぱ〜い (早紀)桑野さんのせいで…

桑野さんのせいって どうして?

桑野さんが 客席から変なオーラ出すから—

私の本来の実力が 出せなかったんです

ごめんなさい

私が 桑野さん 連れてっちゃったから

いえ…

私が未熟なだけなんです きっと

あのさ…

これから桑野さんと 食事するんだけど 来ない?

行くわけないでしょう

ハア… そうね

(中川圭子けいこ) もんじゃ 久しぶりだね

(中川ゆみ)そうだね〜

あっ 伯父さんだ

(圭子)えっ はっ

(圭子)1人もんじゃ (ゆみ)ええ…

(有希江)お待たせしました

(圭子)うわ〜 あっ

(ゆみ)ええ〜

伯父さんがデート…

誰?

あっ 伯父さんが よく行くカフェのママさん

(圭子)そんな人いたの (ゆみ)うん

(圭子)フフッ (ゆみ)ちょっと ちょ ちょ

(圭子)んっ (ゆみ)そっとしとこうよ

少ないチャンス邪魔しちゃ かわいそうだし

そうだね フフッ

(ゆみ)ちょっと ちょっと (店員)お待たせしました

(ゆみ)行くよ (圭子)うん はいはい

(店員) いかもんじゃと豚もんじゃです

(有希江)ありがとうございます (店員)ごゆっくり どうぞ

(信介)どうも

(有希江)かんぱ〜い

(有希江)ああ〜 (信介)ハア〜

(有希江)フフッ

実は僕は お好み焼き派だったんです

もんじゃというのは あんまり好きじゃなくて

ああ そういう人いますよね

(信介) でも お好み焼きより もんじゃの方が—

カロリーが少なくて ヘルシーなんですよ

(有希江) そうなんですよね

私も下町育ちなんで 昔っから好きでした

気軽なところがいいですよね もんじゃって

気軽?

僕は最近 知ったんですが もんじゃというのは—

作り方次第で 味が激しく変わるんですよ

そうなんですか

やってもいいですか?

どうぞ…

まずは 初動が肝心です

スープと材料を 一気に鉄板に入れてしまうのは—

邪道です

えっ そうなんですか?

ですので 器は こう—

水平に

傾けると 中のスープが こぼれてしまうので慎重に…

そして 具をいためます

具がしんなりしたら—

次は土手を作ります

ここで肝心なのは—

真ん中のスペースの大きさですよ

おお〜

(男性)じゃ そういうことで よろしくお願いします

(女性・男性) よろしくお願いします

(まどか)よろしくお願いします

(女性)お疲れさまでした (まどか)お疲れさまでした

(男性)お疲れさまでした (男性)失礼します

(女性)失礼いたします

(香織)ありがとうございます (男性)ありがとうございます

どうなったかな…

邪魔しちゃ悪いか

(信介) いよいよスープを入れます

ここで一気にスープを入れるのは 危険です

土手が決壊してしまうおそれが ありますからね

フウ…

完璧だ…

(有希江)違う…

えっ

これは もんじゃじゃない

じゃあ 何ですか?

あっ ハッ なんてこと

(焼ける音)

(有希江)こうやって—

ここが ジュ〜 って 焦げてくるじゃないですか

それを混ぜ混ぜして

ここをこそげ取って…

こうやって食べるのが おいしいんじゃないですか

フウ〜 フウ〜

ハア〜 おいしい

桑野さんも食べて

(有希江)そうやって お焦げになる一歩手前か—

完全にお焦げになるか そこは好き好ずきで—

ご自分のタイミングで 食べるんです

あっ この時 鉄板の温度にも 気を付けてくださいね

鉄板って 大体 真ん中が熱いんで

フウ〜

ほら おいしいでしょ

なるほど

うちの地元では みんな こうやって食べてました

これが 本当のもんじゃです

勉強になります

(有希江) フフッ あっ ほら ここ

(信介)あっ (有希江)ほらほら ほら

(信介)ごめんなさい ハア

こんばんは

あっ まどかさん

(まどか)有希江さん (ぶつかる音)

(有希江)いやっ (まどか)イッタ…

あっ 大丈夫 今夜 大丈夫だった?

うん

お芝居のあと 桑野さんと もんじゃ食べに行ったの

そう…

何か ひどい目に遭わなかった?

別に

えっ

いや もんじゃ食べながら うんちくとか—

聞かされたりしたんじゃないの?

ああ〜 何か言ってたけど…

いいじゃない もんじゃのうんちく ぐらい

えっ

ハア… 楽しかったな

楽しかった?

また行こうかな

大丈夫?

やっぱり桑野さんいい人だし

いや それ甘くない?

いや 桑野さんと結婚したら もし万が一 結婚したら—

もんじゃだけじゃ済まないよ

家の掃除のしかたから始まって もう家事全般

あと 映画とか小説とか 時事ネタとか—

もう あらゆることに もれなく—

桑野さんのうんちくが ついてくるんだよ

そんなこと結婚もしてないのに どうして分かるの?

そりゃ分かるよ だって 桑野さんだもん

もうちょっとおっきいな…

私 人のこと 決めつけない方がいいと思うな

わざわざ 今夜のこと聞きに来るなんて

まどかさん…

実は 桑野さんのこと 気になってるんじゃないの?

えっ

まさか

ないない ないない いやいや いや

いや 有希江さんが ちょっと心配になっただけ

ホントに?

そうよ

そう

わざわざ ありがとう

うん

ハア…

はっ

はっ

(2人の荒い息)

110番しますよ

(工藤くどう)これ

えっ

うんち袋 ラベンダーの香り…

こないだ落としてったでしょ

あ あなたのですよね

ああ… はい…

よかった〜 やっと返せた

もしかして このために?

うん

ハア… よかった〜

ストーカーかと思った

ハハハハッ

脅かして ごめんなさい

いえ

その子 名前何ていうんですか

(工藤)おもちです (早紀)おもちちゃん

うちの子は タツオです

タツオ君 はじめまして

おもちちゃん よろしくね ハハッ

(英治)あっ 木村さん

どうも

(英治)ん どうかしましたか?

(信介)あの… 設計は予定どおり進めてますけど

(木村)すいませんが… あの家の設計—

1度 ストップして いただけますか

(英治)えっ

あの どういうことですか?

妻に訴えられました

えっ

あの土地には 自分に 所有権があると言いだして—

建築の差し止めを 要求してきたんです

向こうは 弁護士を立ててます

裁判になるかもしれません

(まどか) 裁判所に訴状を出しておきました ご安心ください

(木村玲子)よろしくお願いします

このままじゃ どうしても許せなくて…

分かります

しっかりと こちらの権利を 主張していきましょう

(まどか) また 次の動きがあったら お知らせしますから

(玲子)よろしくお願いします (まどか)はい

(玲子)失礼します

(香織)ああっ (まどか)うん?

(香織)いらっしゃいませ

(まどか) あっ 桑野さん どうしました?

(信介)どうも (まどか)ハハッ…

ゆうべ 有希江さんと—

もんじゃ食べて 楽しかったそうですね

いろいろと 学ぶべきところがありましたよ

そうですか… よかったですね

今日は もんじゃよりも 重大な話があって来ました

何ですか?

(信介)これ

(まどか)あっ 私が出した内容証明ですけど…

どうして桑野さんが?

僕が この旦那さんの家を 設計することになったんです

えっ 桑野さんが

旦那さんは裁判になっても 闘うと言ってますけど

そうですか…

何だか… ややこしい話に なってきましたね

バナナ 食べますか

(裕太) 桑野さんが証人?

(まどか)1人は 寂しいというのは—

人として 自然な感情でしょう

異議あり!

(まどか) 長野の母の事務所を 引き継ぐことに—

(まどか)なりました (信介)えっ

(まどか) 有希江さんは桑野さんと いい感じでしゃべれるから

(信介) あなたの話を聞く前に 僕の話をしてもいいですか

(早紀)この子たち 預かってもらえませんか

(信介)調子がいいな

(ゆみ)自分で お金を稼げる人間になりたいの

(桑野育代いくよ) 当分 生きられそうな気がするわ

(信介) あんたも ついに引退か…

(まどか)お互いが ほんの少しでも心を開いて—

相手の立場に立てば…

(詩織)ケンカって何なんですか? (英治)だから 知るかって

お前ら…

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