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(“ワルキューレの 騎行”)
(桑野信介くわの しんすけ) “自分の考えに夢中になって—”
“周囲のことを無視したり 忘れたりすることがよくある”
ないな
“他人よりも 自分が優れていると感じる”
まあ そうだな
“他人のことをうらやましく 思うことがよくある”
ない
くだらん
(携帯電話の着信音)
ミスター・スポック 終了
(携帯電話の着信音)
はい
(女性)あっ 私
誰?
(女性) 私だけど 分からない?
分かりません 切ります
(中川なかがわゆみ)私よ ゆみ
フッ 何だ お前か
変なやつだな
(ゆみ)普通だけど
(信介)何だ?
(ゆみ)実は…
おばあちゃんがね…
(信介)えっ! (ゆみ)生きてるけど
…で
家が水漏れしちゃって—
…で しばらく帰れないからって ゆうべから うちに来たんだけど
今朝 ママと くだらないことで ケンカして出ていったの
…で 行くとこないし 伯父さんのとこ行くんじゃないか…
来なくていい
おばあちゃんに言ってよ
う〜ん ちょっとママに代わるね
(中川圭子けいこ)お母さんがね—
“どうしてあなたは どうでもいいことを—”
“ペラペラしゃべりまくるんだ” って言うから—
私が こんな おしゃべりな性格になったのは—
お母さんの遺伝だって言ったら—
“遺伝は関係ない 自己責任だ” って言うのよ
そのとおりだ
ハア… お兄ちゃんさ 自分の責任は どう感じてるわけ
兄がしゃべらないから その分 妹の私が—
しゃべらなきゃって思って 育ったから こうなったの
俺は 頼んだ覚えはない
俺は普通に育ってきた それだけだ
ハア… もう結構です
はい
というわけで
(通話の切れる音) (信介)おっ おい おい
おい ちょ ちょっと
(インターホン)
(インターホン)
(携帯電話の着信音)
ミスター・スポック 頼む
(電車の発車ベル)
(アナウンス) 熊本 熊本〜
(アナウンス) 熊本 熊本〜 (信介)はい
(アナウンス) 熊本 熊本〜
(アナウンス) 熊本 熊本〜 (桑野育代いくよ)信介 もう出かけちゃったの?
(桑野育代いくよ)信介 もう出かけちゃったの?
(桑野育代いくよ)信介 もう出かけちゃったの? ご乗車 ありがとうございました
(桑野育代いくよ)信介 もう出かけちゃったの?
お降りのさいは足元に ご注意ください
お降りのさいは足元に ご注意ください (信介)ああ
お降りのさいは足元に ご注意ください
お降りのさいは足元に ご注意ください あっ 今 熊本に 仕事に来てるんだよ
あっ 今 熊本に 仕事に来てるんだよ
(育代)あら そうなの
(育代)あら そうなの (アナウンス)間もなく 発車いたします
(アナウンス)間もなく 発車いたします
(アナウンス)間もなく 発車いたします う〜ん どうしよう…
悪いけどさ 今 取り込み中だから
あっ どうも 久しぶり ハハッ
じゃあな
(育代)もお… う〜ん
困ったわね…
(戸波早紀となみ さき) あ… どうかされました?
(育代) あっ わたくし あの—
502号室の 桑野の母なんですけど…
(早紀)あっ…
留守なんで どうしようかと思って
えっ 桑野さんいると思いますよ
(信介)んっ (育代)えっ
(早紀) ついさっき音楽が でっかい音でかかってましたから
よ 余計なこと…
信介〜
お〜い
(育代)母親を 追い返そうとするなんて—
どういうことなの
(信介) 俺はね 部屋に 人を入れない主義なんだ
(育代) へえ〜 その妙な主義って 一体 何の役に立つの?
あら 初めて来たけど きれいなとこね
部屋はね 住む人の脳を表してるんだ
あまり歩くなよ 汚れるから
きれいだけど 何か寒々としてるわね
だったら 圭子のとこ行けよ
たらい回しにされる 哀れな母親ね
どこが哀れだ
…で いつまでいるんだよ
(育代)うん うちのね 水漏れが直るまで
4〜5日かしら
(信介)4〜5日… そんなの1日で終わるだろ
そんなに迷惑?
ああ〜あ ミスター・スポック…
(育代)じゃあ いいわよ
水浸しのうちで 風邪引きながら暮らすから
ああ〜あ 死ぬかもね…
それじゃ…
(信介)いいよ (育代)あら いいの
悪いわね
(信介) というわけで 今 うちは「東京物語」なんだよ
(横田詩織)何ですか? 「東京物語」って
(信介)小津安二郎おづ やすじろう監督 昭和28年公開の—
日本映画屈指の名作だぞ
(村上英治むらかみ えいじ) そんな昔の映画 知らないですよ
(英治)どんな話なんですか? (信介)タッ
老夫婦が—
東京の息子たちの家を 訪ねるんだが—
邪魔にされ たらい回しにされたあげく—
ばあさんが死ぬ話だ
そんな悲惨な話なんですか
桑野さん お母さん殺さないでくださいよ
あの女が そう簡単にくたばるかよ
今頃 うちで何してるか 見ちゃおう
(英治)あっ これ
(信介)覚えてるか?
(英治) ケンを預かった時に—
外から見張るために こういうの使いましたよね
(丸山裕太ゆうた) んっ ケンって何ですか?
(英治)犬 (裕太)犬
やっぱり役に立つな これは
(沢村映子) 銀行へ行ってまいります
(信介)あっ よろしく
(英治)あっ (信介)あれ…
勝手に掃除しやがって
いや 掃除してくれるなら いいじゃないですか
(信介)いや だってさ フローリング材は—
重曹を薄めたやつで 拭かなきゃダメだろ 英治
まあ まあ そうですけどね ねえ…
(信介) 気を付けろよ 気を付けろよ…
気を付けろよ 気を…
ハッ 場所は ちゃんと決まってるんだからさ
おい 気を付けろ…
見るなよ
捨てた
お気に入りの所に 付箋 貼ってあっただろ
何で捨てるかね
(英治)フッ
(信介)チッ
(携帯電話の呼び出し音)
(育代)はい
勝手に片づけるなよ
(育代)ええっ
ものは ちゃんと場所が 決まってるんだから
ちょっと 信介 あんた どこにいんの?
(信介)えっ 金魚鉢の横だよ
金魚鉢?
あっ 金魚鉢 金魚鉢
信介 ずいぶん ちっちゃくなっちゃって
これ 見えてんの?
あなたが知らないうちにね 文明は進歩してるんだ
(英治)あら (信介)あれ
ちょっと もしもし
文明も もろいものね
お部屋きれいに しといてあげるからね〜
“ね〜”って 何もしなくていい…
(不通音)
切りやがった
早く追い出さないと…
どんどん部屋が カスタマイズされちまう
(山下香織かおり)どうぞ (育代)ありがとう フッ
弁護士さんと会うの 初めてなんで緊張するわ
緊張するような相手じゃないから
そんなに親しい人なの?
相談料 5000円だからさ
(吉山よしやままどか)あっ どうも お待たせしました
はじめまして 弁護士の吉山です
(育代)あっ…
わたくし 桑野信介の母親でございます
わたくし 桑野信介の母親でございます (まどか)あっ…
(まどか)あっ…
(まどか)あっ… (育代) 何ですか いつも いろいろと お世話になっておりますそうで
(育代) 何ですか いつも いろいろと お世話になっておりますそうで
(まどか)いえいえ お世話だなんて そんな
まあ でも ご立派ですわね
ご自分で弁護士事務所を 構えていらっしゃるなんて
弱小ですから どうぞ
(育代)司法試験って 難しいんでしょう?
(まどか) あ… まあ そうですね 私も3回目で やっと
(信介)そろそろ 本題に入ったら どうかな
(まどか)そうですね
ええ〜 あらましは—
桑野さんからメールで お聞きしました
この場合 あとで補修にかかった金額を—
施工業者に提示して 話し合うのがいいかと
欠陥が原因なんですから 仮住まいの住宅を—
提供させるべきなんじゃ ないですかね
ああ それも そうですね
とにかく早く解決してくださいよ
あっ 割り増し料金でもかまわないんで
どうして そんなに急がれるんですか?
あっ あの この人の考えてることは 分かるんです
とっとと 私を追い出したいんですよ
ええ お母さんを追い出すなんて…
フフッ ホントにね 人聞きが悪いでしょ
(育代)あっ… もう この人の 言うとおりでお願いします
(まどか)分かりました じゃあ 書類を作成しますので
(育代)あっ え〜っと 5000円でしたね
(まどか)あっ いや あの… (信介)ああ〜
(育代)えっ (信介)いいんだよ…
依頼すると決めたら 5000円は いらないんだ
(育代)あら そうなんですか? (まどか)そうなんです
(信介)あとで もっと バカ高い請求書が来るから
まあ… これで 安心しました よろしくお願いします
(まどか)はい (信介)リフォームする時に—
ひと言 俺に相談してくれれば こんなことにならなかったのにな
相談したらしたで—
ああする こうするって あんた うるさいじゃない
(信介)そのとおりだよ
この方のお母様やるのも さぞかし大変でしょうね
ええ それは もう
(まどか・育代)フフフフッ
ところで あの…
吉山先生は 結婚してらっしゃるの?
あっ いえ 独身です
あら そう…
(まどか)フフッ
あっ…
♪〜
〜♪
(早紀)せっかちで すぐ熱くなる…
(男性)そして 冷めやすいのかい?
それは あなた次第…
(演出家) は〜い そこまでーっ 10分休憩
(一同)はい
(演出家)休憩 休憩 うえ〜い (男性)お疲れさまです
(演出家)休憩
ずいぶん よくなったよ
あ… ホントですか?
でも まだ 何かが足りないんだな
えっ 何ですか?
(演出家)恋愛経験だよ
どう あれから—
恋 してる?
ぬるい恋しか してないんじゃないの
もっと身を焦がして 最後は ボロボロになっても—
かまわないって 思えるような恋愛しなきゃ
ボロボロに…
(演出家)そう
確かに そこまでのものは 経験できてません
今後の課題とします
(演出家)課題っていうか…
今晩 俺と…
あっ すいません お待たせしました
(田中有希江たなか ゆきえ)あっ こんにちは (まどか)あっ こんにちは
(まどか)あっ 私 ブレンド (有希江)はい
(まどか)ごめんなさい
(育代)まあ お世話かけます
(まどか)いいえ
それで 施工業者に 連絡取ってみたんですけど—
補修費用の負担に おおむね同意してくれました
(育代)あら そうですか
(まどか)あっ (太田留美)失礼します
(まどか)あっ (太田留美)失礼します まあ お世話をかけまして ありがとうございます
まあ お世話をかけまして ありがとうございます
仕事ですから
有希江さん こちら 桑野さんのお母さん
(有希江)あっ そうなんですか
(育代) 信介がお世話になりまして
あっ いや 別に お世話は…
ハア〜 すてきなお母様ですね
でしょ
あの桑野さんの お母さんだっていうから—
どんな方かと思いましたけど
(育代)あら もっと変な母親かと思いました?
(まどか)フフフッ
この親にして この子あり みたいな
ええ… ああ ごめんなさい
(育代)アハハッ 遠慮しないで
(まどか)フフッ (育代)この機会に どうぞ—
母親に文句言っていただいて いいんですよ
(まどか)フフッ (育代)私も ほら—
産んでしまった 責任がありますから
まあ 多少 困ったところは あると思いますけど…
(まどか・育代)フフフフッ
その笑いに含みがあるわね
フフフフッ
(有希江)ユニークですけど とてもいい人ですよ
(育代)ああ〜 そう言っていただけると
(英治)こんにちは
(有希江)あっ いらっしゃい
(英治)どうも (まどか)ああ どうも フフッ
(英治)あっ
(まどか) あっ 桑野さんのお母さん
(英治) ああ〜 どうも どうも ご無沙汰しております
(育代)ああ〜 確か あの 信介の事務所のお手伝いをしてた
今は 共同経営者なんですよ
あら そうですか まあ ご立派になられて
いえいえ それほどでも
(有希江)どうぞ (英治)あっありがとうございます
(英治)失礼します
いや〜 それにしても ほっとしたな〜
(森山桜子もりやま さくらこ)はい…
(有希江) 何か いいことでも あったんですか?
(英治)ああ 例の山田やまださん
洋室の一部補修の案 何とか納得してくれたんですよ
(有希江)こないだ言ってた話? (英治)うん
(有希江)よかったですね
(英治)あっ 僕 ブレンドで
(留美)はい (桜子)私 カフェオレで
(留美)はい 分かりました (英治)ハア…
(桜子)まどか先生が アドバイスくれたおかげですよ〜
お役に立てて何よりです
(英治)ホント 一時は どうなることかと思いましたよ〜
お祝いでもしましょうか?
(英治)あっ そうだね (桜子)うん
あっ でも 桑野さんには ないしょでね
(桜子)ああ それはマストですね (英治)うん
(有希江)どうして? (英治)いや だって—
(英治)あの人に言ったら—
また 俺たちの仲が怪しいとか 言いだすに決まってますもん
(英治)ねえ (桜子)うん 何もないのにね〜
(英治)ホントね 困っちゃうね〜 (有希江)2人のことを—
後輩として 大事に思ってるからでしょ
(英治) あっ 有希江さんって 基本 桑野さんに対して甘いですね
(桜子)うん (有希江)そうかな
(英治)もっと厳しく 対応した方がいいですよ
あっ すいません お母さんの前で
ハハッ いいんですよ
ハハハハッ
(信介)フウー フウー
フウー
(薬丸やくまる)んん…
(薬丸)んっ
ああ んっ…
(育代) ありがとうございました
(まどか)いいえ
(育代)信介のお知り合いの 皆さんに会えてよかったわ
みんな 桑野さんの文句言ってますけど
(育代)ハハハハッ
話題にしてくださるだけでも ありがたいわ
あの子のことだから 独りぼっちで—
孤独に暮らしてんじゃないかと 思ったけど—
結構 周りにお友達がいるのね
まあ さすがに 1人では 生きていけませんから フフッ
これからも信介をよろしく
(まどか)あ… はい (育代)フフッ
何か 変な感じです
(育代)えっ
お母さんといると—
自分の母親といるより 落ち着くんです
どうしてでしょう?
あっ そりゃ 他人は気楽だもの
血を分けた家族には いろいろあるでしょ
ハア…
私の母は—
何だか いつも 私に対抗心を燃やすんです
対抗心?
私がフラメンコを始めたら 自分もやるって言いだしたり
一緒に行くのが嫌で 結局 私の方がやめて…
そうやって母は 私の陣地を荒らしていくんです
ああ それは きっとね—
あなたと共通の趣味を持って 話題にしたかったからじゃないの?
何か そういうんじゃないんですよね…
だから 何だか 母といても気が休まらなくて…
ああ… 血を分けた家族だからこそ 起こる問題って—
いろいろあるのよ フフッ
あら 気休め言っちゃったかしら
(まどか)う… フフッ
でも 落ち着きます
ハハハッ ならよかった
(まどか・育代)フフッ
(育代) ずいぶん 難しい本 読んでるのね…
(インターホン)
は〜い
え〜っと どこだったかしら あっ
あら
(ゆみ) なんで 伯父さんの部屋 入れてくれないの?
(育代)信介が嫌がるのよ
(ゆみ)留守ならいいでしょ
(育代)あの子ね 気配で気付くの
さすが 息子のことは よく分かるんだ
(育代)フッ
まあ ゆみを偵察によこすなんて
圭子も あんた そんな気になんだったら—
自分が来ればいいのにね〜
(早紀)愛してしまってる 殺したいくらいにね…
(育代)あら
あっ こんばんは
(信介)ああ…
ああ
(神崎)こんばんは 今日は お早いですね
あ… ちょっとね
(神崎)何にされますか?
(信介)じゃあ この 本日のオススメの2番目
(神崎) ダーティーマザー 強いですよ
(信介)ハア…
(男性の泣き声)
(男性)ママ ママ…
(男性のヒンディー語)
ママ… ママ うっ
(神崎)すみません
あの人 国に置いてきた お母さんに電話しては—
ああやって泣いてるんです じき 泣きやみますので
(泣き声)
(男性)ママ… ママ…
(ヒンディー語)
(男性)ママ…
キャンセル
(男性のヒンディー語)
(信介)スウ…
フッ
ああ…
“ドンサック… 幻のカレー味”
出た…
(信介の口笛)
ハア…
(信介)ハア… チッ
ハア…
(育代)あら 何なの これ?
(早紀)どうしたんですか?
えっ 何 これ?
(育代) ホントに ひどいわね
はっ そこにいたのか
あら 信介 帰ったの?
このやっくんのブログ ひどいわね
はっ なんで そんなものを…
ゆみが教えてくれたのよ
あなたのことをひどく書いてある ブログがあるって
なあ 年寄りに そんなもの見せんなよ
ええ〜 だって おばあちゃんが 見たいって言うから
私も初めて知りました
(育代)ハア… それにしても この人—
よっぽど あなたのことが好きなのね
えっ
(育代) かわいそうな人なのよ
フフッ 寂しいのよね
(早紀)確かに こんなこと しないでいられる方が—
幸せに決まってますよね
こっち来たいのか
(携帯電話の着信音)
(信介)ハア…
チッ…
もしもし
ゆみの帰りが遅いんだけど そっち行ってるんでしょ?
うんうん その辺で楽しくやってるよ
えっ その辺って
切るぞ
あっ ちょっと待って
私 大事なこと忘れてた
えっ
あさって お母さんの誕生日でしょ
(信介)…で (圭子)いや 毎年 うちで—
誕生日会やって プレゼント渡してたじゃない
まあ お兄ちゃんは 何だかんだ言ってサボってたけど
ケンカしてるのに よくそんなことまで気が回るな
まあ それとこれとは別よ
だったら 仲直りしろよ
いや それは無理 ケンカ中だから
今年は—
お兄ちゃんのところで お誕生日会やってくれる?
えっ
あっ 私は ケンカしてる手前 行けないけど—
旦那とゆみは 都合が合えば行かせるから
うちは無理だぞ
少しは親孝行したら?
ねっ ちゃんとプレゼントも渡してよ
(信介)プレゼント? (圭子)頑張ればできるって
(圭子)じゃあね (信介)ちょっと おい おい
(通話の切れる音)
プレゼント…
何だ それ…
(まどか)何でしょう
お母さんに依頼された件なら 進めてますけど
(信介)今日は別件で…
(まどか)そうですか
どうぞ
ちょっとお聞きしますが
自分のお母さんに—
何かをプレゼントすることって ありますか?
えっ
なんで そんなこと?
ただの質問ですよ
しないですね 子供の頃はしたけど
親不孝だな
自分は どうなんですか?
さあ そこですよ
はあ どこです?
(信介)明日 母の誕生日らしいんですけどね
明日は まだ うちにいることになりそうなんです
(まどか)…で
(信介)うちにいる以上 無視もできないじゃないですか
(まどか) 何か あげればいいじゃないですか ケチってないで
ケチとか そういう問題じゃないでしょ
じゃあ 何なんですか?
分からないかな…
まずは 何を贈るべきなのか
聞けばいいじゃないですか 何が欲しいか
簡単に言いますけどね…
聞くのも渡すのも てれくさいということですか?
まあ 雑に言えば そうですよ
悪かったですね 雑で
いいじゃないですか てれくさいくらい 親子でしょ
フッ あなたは どうなんですか?
最近は してないって 言ってたじゃないですか
(まどか)まあ 私は… (信介)人のこと言えるんですか
うちは 親子関係に問題があるんです
そっちは ないでしょ いいお母さんじゃないですか
フン 言い訳だな
言い訳…
そうですね… 言い訳です
私は—
親不孝な娘なんです
結婚もしないで 心配ばっかりかけて…
だから 何ですか
何か すいません…
(まどか)待ってください
ルシャノワールの香水なんか いいんじゃないですか
えっ
プレゼントです あなたの お母さんへの
ああ…
あの年代の方には ちょうどいいと思うんですよね
そうですか どうも…
怒ってんのかと
(まどか)怒ってますよ
でも お母さんのためです
(信介)あの…
(まどか)何か?
それ どこで売ってますか?
それくらい調べてください
ノワール…
ル シャ ル シャ ノワール
んっ
(店員)ちょ ちょ ちょ (店員)ん?
(店員)ねえ あ あの人…
ほら あの人…
(店員)えっ? (店員)ちょっと
(店員)いや 分かんない ず〜っといる
(店員)違う… (店員)行っちゃったじゃん
ああ なんだ 違う ごめん ごめん
(店員)やめてよ
えっ ちょ はっ…
えっ ちょ えっ…
110番 する?
でも 前にいるだけだし…
(店員)まあ確かに 確かに (店員)うん…
(店員たち)はっ
(店員)目の前…
(店員たち)ひい〜
(留美)いらっしゃいませ (有希江)いらっしゃいませ
(信介)ハア…
はい 何にします?
(信介)ブレンドで
今日はクリスタルマウンテンが 入荷しましたよ
(信介)じゃあ それで
はい
(信介のため息)
ハア…
どうかしましたか?
(有希江)これ ください (店員たち)ありがとうございます
(店員) お預かりいたします
1万7000円でございます
(有希江)はい これ (信介)すいません
ネットでも買えるのに
(信介)そうだったんですか (有希江)ハハッ
まどか先生も もう少し 詳しく教えてあげればいいのに
チッ そうですよね 意地が悪いっていうか
(有希江)フフッ
(信介) あっ お店 いいんですか?
(有希江)少しなら 留美ちゃんもいるし
あの そのかわりと言っては なんですけど…
えっ
お話があるんです
(信介)どうぞ (有希江)どうも
(有希江) 私… 今のお店は 雇われで店長やってるんです
(信介)はあ
(有希江)オーナーから店の権利を 買い取らないかって言われてて
(信介)ほう
別れた旦那の慰謝料も入ったし… ちょっと考えてて
そうなんですか
みんなは 思いきって—
やってみればいいじゃないかって 言うんです
はあ…
桑野さん どう思います?
なんで 僕に?
桑野さんって 時々—
思いがけないこと 言うじゃないですか
だから… 何か—
斬新な意見が 聞けるんじゃないかと思って
ちょっと考えさせてください
お願いします
フフフッ
(信介)ハハッ (有希江)ハハッ
(薬丸)うん
(薬丸)うっ よし (男性)さすがですね 薬丸さん
(薬丸)そう ハハッ
(男性)いつから やってるんですか?
(薬丸)ああ〜 大したことないけど—
まあ 結構やってるかもしれないね
(信介)ヤクマル? (男性)2カ月前から やってる…
(薬丸) ちょっと やってもらって
ヤクマル…
(男性) あっ ありがとうございます
やっくん…
(薬丸)ここしめて…
まさか…
(中川なかがわ良雄)…で プレゼント 何買ったの?
(においを嗅ぐ音) (信介)何か 匂いか何かのやつ
(中川) 香水なんか年寄りが喜ぶか
キャバクラの子ならともかく なあ そうだろ?
(神崎)さあ 僕は女性のことは あまり…
年寄りにはさ 滑らない靴とか 温泉の素もととか—
そういうので いいんじゃないの
クソ…
ガセをつかまされたか チッ
お前は 毎年 おふくろに 何をやってんだ?
俺はスポンサーだよ
金さえ出しとけば家庭円満 安いもんさ
俺も そうしてもらおうかな
もう買ったんだから渡しとけよ
大体さ なっ
母親に プレゼントもできない男が—
女に プレゼントできるのかっつうの
さあ しないから
俺なんか キャバクラの子に—
どれだけプレゼントの むだ打ちしてきたか…
“まあ ありがとう〜” とか言って—
ブランドバッグ受け取っといて 次の日には質屋行きだもんな
よくグレずに生きてきたな
(信介の鼻歌)
プシュ〜
♪ フ〜ン 母さん
♪ 母さん 母さん
(育代)ああ おかえり (信介)ああ
(育代)何 それ?
別に
(育代)冷蔵庫にね いろいろあったから—
夕食作ったわ 食べましょう
あっ そう ハハッ
冷蔵庫…
(育代)ん?
はっ 舌びらめがない
(育代) あっ おいしそうだったから 煮つけにしたわ
(信介)煮つけ?
日曜日にカルパッチョにしようと 思って熟成させてたのに—
何だよ 煮つけなんかにしちゃってさ
チッ もったいないな
(育代) どっちでもいいじゃない おいしければ
舌びらめが ああいう状態で おろしてあったら—
生で 食べるに 決まってんだろ
チッ いい年して そんなことも知らないのかよ
何年 生きようと—
どうでもいいことは 知らなくていいの
ハア… 男のくせに よく まあ そんなことを
性別は関係ないだろ
“ご飯作ってくれて ありがとう” とは言ってくれないのね
ハア… まったく
(育代)ハア… 私 間違ってたわ
あなたのところに こういう人でもいいって—
お嫁さんが来てくれたら いいなと思ってたけど—
私の考えが間違ってた
不幸な女性を 生みださないためにも—
あんた 結婚しない方がいい
あのね 言われなくても そうなってますよ
どうして そうなの…
どこで そうなったの…
私 何か間違ってた?
お世話になりましたね
(ドアの開閉音)
(信介の荒い息)
(早紀)どうしたんですか? (信介)いや ちょっと…
(早紀)ん?
行こっか
(早紀)ん?
あっ
(育代)ハア
どうせ お兄ちゃんが また ひどいこと言ったんでしょ
(信介)いいや… (圭子)じゃあ どうして—
(圭子)お母さん 出てったの? (信介)ハッ ちょっと それは…
(中川)自宅は今 戻れない状態なんだろ?
どこ行ったんだ
(信介)チッ ったく (圭子)あっ ゆみ
おばあちゃんが大変なの 警察 連絡しないと
えっ 私 おばあちゃんの誕生会 行くんだけど
(インターホン)
(早紀)は〜い
(早紀)あっ いらっしゃい (ゆみ)どうも〜
(まどか)す〜ごい (早紀)どうぞ
(ゆみ)お邪魔します (有希江)えっ すごい
(まどか)じゃあ 改めて お誕生日おめでとうございま〜す
(育代)ありがとう (一同)おめでとうございます
(育代)ああ うれしいわ (ゆみ)かんぱ〜い
(まどか)桑野さんは?
(ゆみ)う〜ん 自分の部屋で引きこもってます
来ればいいのに
(育代)来ませんよ あの人は (まどか)来ませんね
(育代)ねえ〜 (早紀)あっ わざと盛り上がれば
仲間に入れてって 言ってくるんじゃないですかね
甘いわ 桑野さんは そんな人じゃない
(有希江)ホントは 来たいんじゃないですかね…
(一同)ええ… うん…
(早紀)よし 来るかどうか賭けをしましょう
(一同)ええ〜
(まどか)来ないに賭けま〜す (早紀)私は来る方に…
(まどか)ええ〜 (ゆみ)何賭けるの?
(ゆみ)おいしい〜 (まどか)これ 味付け知りたいな
(有希江)うん ホント
(“私は町の何でも屋 セビリアの理髪師”)
ええ〜 何なの?
うるさいわね もう
これ 結構 気にしてる証拠ですよ
(ゆみ)えっ これが… (まどか)フフフッ
(“私は町の何でも屋 セビリアの理髪師”)
(まどか)いつも こう?
(早紀)よくかかってます (まどか)そうなの
(早紀)今日は すっごい曲ですね (まどか)そうだよね
(まどか)オペラ 好きみたいね (早紀)みたいです
(“私は町の何でも屋 セビリアの理髪師”)
(育代)ハア… しょうがないわ
そろそろ 圭子と仲直りしましょうか
(ゆみ)お母さんも待ってるよ
(まどか)いいんですか 桑野さんに何も言わなくて
(育代)うん いいんですよ
無事だって分かれば 安心するでしょ フフッ
ねえ あなたに1つ お願いしておきたいことがあるの
はい
信介のこと よろしくお願いいたします
はあ…
あっ 勘違いしないで
結婚してやってくれとか そういうことじゃないの
えっ
人として つきあってくださいってこと
大丈夫です
あっ あよかった
(まどか)フッ
じゃあ
(まどか・育代)フフフッ
(信介)ハア ハア…
(まどか)あれ?
いたなら どうして出てこないんですか
(信介) ああ 間に合わなかったか
(まどか)いいお母さんね
(信介)ああ… (まどか)あれ?
(まどか) それ ルシャノワールの 買ったんですか?
(信介)ハハッ まあ…
間に合わなかったから もういいです
(まどか)いや 渡さないと
いや もう行ったし…
この際 ほら なかったことにして
ダメですよ せっかく用意したのに
別に 僕が用意したなんて 思わないでしょ
そんなことないです
思ってますよ 私 言いましたから
えっ 余計なことを…
待ってますよ お母さん
(まどか) ほら まだ間に合いますよ
ほら!
もっと本気出して!
フフッ
(信介の荒い息)
伯父さんも やっかいな人ね…
まあね 信介なりに 必死に生きてんのよ
おばあちゃんに もうちょっと 素直になればいいのにね
ゆみは 自分の母親に 素直でいられる うん?
えっ う〜ん…
(運転手)あの人 この車 追いかけてるのかな?
(ゆみ・育代)えっ
(ゆみ)ああ (育代)あっ
(信介の荒い息)
(育代)ねえ どうしたの?
いや ちょっと ほら 運動不足なんで ジョギングをさ
あっ 何だ そう うふん…
あっ… これ
(育代)ん? (信介)あの…
誕生日の… あれ…
あれって 何?
いや どうせ 匂いなんて興味ないだろ
(育代)あら 香水 ああ うれしいわ
(においを嗅ぐ音)
いくつになってもね 女は—
こういうのが うれしいもんなのよ
えっ
意外と やるじゃないの
(育代)フッ (信介)うん まあな…
ああ ありがとう
ほら…
母さん… きれいだしさ
まだ 需要あるだろ
ああ だといいけど
こんなふうに お誕生日に ものをもらうのは—
あと何回かしらね…
えっ
いつまでも あんたのそばに いられるわけじゃないのよ
お世話になりました
じゃあ
(信介)やっと ゆっくり寝れるな
(育代)“先日は いろいろとお世話になり—”
“ありがとうございました”
“その後 おかげさまで 家の問題も解決し—”
“元の暮らしに戻っております”
“ところで プレゼント何がいいか—”
“信介に アドバイスをして下さったの—”
“まどか先生なんでしょ”
“お気遣いいただいて ありがとうございます”
“ただし 先日お話しした通り 間違っても—”
“信介が かわいそうだから 結婚してあげようなどと—”
“仏心を起こさないように して下さいませ”
ご心配なく
(育代) “これだけは くれぐれも お願いいたします”
(英治)これ (裕太)あっありがとうございます
(英治)あっ ブラックがいい
何か とりついたか?
(早紀)鎌倉かまくら いいですね
(まどか) でも このことは 桑野さんにはないしょね
あっ
(早紀) なんで桑野さんが こんなとこに?
ハブ ア ナイス デー
(有希江)1人洗い…
(エリカ)絶賛 婚活中なんです
(有希江) 知る人ぞ知る神社に 行くんですかね
(まどか)後をつけていきましょう
(信介) 鎌倉に来ている以上 常識ですよ
(有希江) あの人なりに 人のこと ちゃんと考えてるのよね
(男性) こないだのブログ見ましたよ…
(男性) こないだのブログ見ましたよ… (薬丸)あっ シーッ
(信介)こいつだ
やつが やっくんだという確証を 見つけだすんだ
(早紀) 何してるの? タツオ
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