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♪~
~♪
(大石剛介(おおいしごうすけ))佐倉(さくら)さん わざわざ恐れ入ります
(佐倉一誠(いっせい))どんな具合ですか?
ああ…
昨晩 突然 吐血されまして その後 意識が
まあ どうぞ おかけください
ああ 私は まだ若いですから
(佐倉) 若いから長生きするとは 限りませんからな
私の心臓は立派に あと10年は もつそうですよ
(野口(のぐち))意識を取り戻しました
大山(おおやま)先生 佐倉です
(大山喜久夫(きくお)) あんたと 大石君に―
わしの遺言として 聞いてもらいたいことがあるんだ
わしが以前 提唱した 大日本同志会
それを あんたたち 2人の手で―
ぜひとも…
実現してもらいたいのだ
佐倉さん 頼む
それは いずれ また
大石君
努力いたします
(吉野(よしの)隆吉)棺おけに 片足 突っ込んでながら―
まあ しぶといっちゅうか なんちゅうか ハッハ
大山はん 冥土の首領(ドン)にでも なりはるつもりでっしゃろか
(組員) 親分 大山先生の秘書の方が お見えでおます
(ドアが開く音)
(野口)佐倉さん 先ほどは わざわざ ありがとうございました
さあ どうぞ どうぞ
(野口)実は私(わたくし) 先生からこれを お預かりいたしておりまして
先生が入院される直前に書かれた 遺言状でございます
そうですか 確かに
それから今ひとつ 先生からお願いがあるのですが
何でしょうか
先生は手術の執刀を―
ご子息の 一宮(いちのみや)先生に お願いしたいと
ほう
一宮に
一宮先生が 先頃 金沢の学会で発表された―
新しいガン手術の評判を聞かれて ぜひにと
(中神(なかがみ)敬志) 理事長 手術のことは お聞きになりましたか?
まあ 大日本同志会の 蒸し返しの話といい―
大山先生という方は まさに怪物ですな
江本(えもと)部長の話じゃ もう老齢のことですし―
助かる見込みは ないということなんですが
(大石郁子(いくこ))いらっしゃい (中神)こんばんは
(大石きく江(え))どうも お待たせ (郁子)はい どうぞ
(中神)奥さん どうぞ お構いなく
(きく江)ええ
中神さん アメリカのお土産 どうもありがとう
(中神)ああ いやいや
高いんですってね インディアンの装飾品って
でも とってもステキだった 気に入っちゃった
(中神)そうですか
どうだ お前たち 一緒に旅をしないか?
(きく江)まあ どこへですの? (郁子)アメリカ?
(大石)サイパン島(とう)だ (きく江)サイパン
つまんない だって何にもないとこでしょ?
お父様には思い出があるのよ 戦争中の
ヤダわ 遺骨収集でも する気?
お前たちは グアムかフィリピンに 遊びに行けばいいだろ?
わあ! それなら つきあってあげる
わあ うれしい
お前も やがては嫁に行くんだ
家族そろって旅をするのも これが最後になるかもしれんからな
(ガイド) サイパンを中心とした 北マリアナ諸島は―
現在 アメリカの 信託統治領ですが―
近いうちにテリトリーに昇格して アメリカの領土そのものになります
そうなればアメリカ政府も 本格的に開発に力を入れるでしょう
特にサイパンには日本から直行便で 僅か3時間のフライトですから―
ハワイよりも もっと すばらしい―
リゾートアイランドになることは 間違いありません
今 日本の企業は グアムに集中していますが―
サイパンに目をつけられた 大石さんは―
大した先見の明です
(江本) 間違いなく噴門部のクレブスだ
病状は初期だが 発生場所が やっかいだ
手術に時間がかかれば 十中八九 心臓は もたない
いや 失礼
今までの例証では―
一宮先生の参考にはなりませんな
(組員1)兄貴
(組員2) 中島(なかじま)組の坂口(さかぐち)さんですね
(銃声)
(女たちの悲鳴と男たちの怒号)
(組員)どけ! どけ どけ
(女たちの悲鳴)
(銃声) (組員)ウワアッ
(組員)アッ ウアアッ
(銃声)
(パトカーのサイレン)
(銃声)
(ナレーター) この事件は 覚醒剤密輸ルートの 縄張り争いが原因であったが
殺されたのは中島組系 川西(かわにし)組傘下 坂口組 組長で―
襲撃したのは関東同盟傘下 新藤(しんどう)組の若い者であった
(新藤徳太郎(とくたろう)) あんたらと違ってね
この不景気に わしら 末端のほうには―
2千万って上納金は 荷が重すぎるんだよ
たまたま あんなマチガイを 起こしたのは―
運が悪かったんだ
ヘロインだって シャブだって―
どこの組だって やってるじゃないですか
まあ 見てろ
いずれ中島組とは 戦争が おっ始(ぱじ)まるんだ
(ナレーター) 新藤は このあと 関東同盟を除名された
(捜査員)課長 川西が出頭しました
(藤井(ふじい))おう
お前 せがれが立たんようなったら 銭の亡者 なってるらしいな
総会ゴロ サルベージ 整理屋 パクリ
へえへえ 今度は麻薬か
(川西明(あきら)) あの件でっか? グアムの あれなら わしと関係おまへんで
見とくんなはれ
坂口やったら ひと月前に破門にした男や
あんまし手回しよすぎても 警察は信用せんね
川西
いずれ坂口の子分たちが グアムから送還されてきよる
お前 ヘタにシラを切っとると―
連中の吐いた泥 食わんならんようになるぞ
(あくび)
(藤井)どうせ キツネとタヌキの三文芝居や
平和は上っ面だけで 何か起これば すぐに火がつく
中島には まだ お前みたいなやつがおるさかいな
何の薬や?
せがれの眠気覚ましか
どや 川西
グアムの件は不問にしたるさかい お前 解散せんか?
(サイレン)
(吉野) 大島に魚釣りに行くっちゅうて 出かけたそうですが
途中で 海へ 飛び込んだんやないかと
関東同盟の理事会で 反抗的やったそうです
まあ 遅かれ早かれ 仏になる運命やったんやないかと
とにかく これで グアムの件は一件落着ということで
(佐倉)そうかな
フッフッフ
しかし 川西だけは 頭痛の種でおますわ
幹部から除名せいっちゅう声も あるんでおますが―
野放しにするのも かえって何やと思いまして
なんせ 大石はんに チャカ向けた男でおますさかい
(債権者1)社長はどこや 社長は (債権者2)出さんかい
(木村由紀子(きむらゆきこ))知りません
(債権者2)知らんで済むか (債権者3)せや
(債権者4)あんた 社長の娘やろ
(由紀子) 父は皆さんが見えたら―
“会社を立て直す見込みはあるから もうしばらく待ってほしい”
そう言って出かけました
(債権者5)ウソ言え!
今日中に これが落ちなんだらな こっちは即死や!
(債権者2) やっぱり逃げおったんや
(債権者4)計画倒産や (債権者たち)そうや!
(債権者5)おい 金庫 開けてくれるか 金庫
(債権者4)クッソ (債権者6)開けろよ!
そや 誰か倉庫 行って 在庫製品 調べてきてえな
(債権者たち) おう そや 倉庫 行くぞ
(宮原の部下) コラァ どかんかい!
(飛び交う怒号)
(宮原宏(みやはらひろし)) アホなマネ せんほうがよろしい 刑事問題になりまっせ
(債権者5)あんた 誰や!
(宮原)こういう者(もん)です
あんた 整理屋か
やっぱり 計画倒産やで
(宮原)ハハッ そんなことんならんように―
ここの社長は和議で解決したい お考えでんねん
とにかく 1週間以内に 資産 そのほか洗い出して―
バランスシートこさえてから 債権者会議 開きますさかい
まあ 今日のとこは 引き取っておくんなはれ
フン ウマいこと言うて
あんたな 自分だけ ええとこ取りするつもりやろ
わしの言うことが 信用できん言いはりまんのか?
わしら 月賦の支払いで 今日 明日にカネが要りまんのや
まっ カネのことなら 改めて相談 乗らしてもらいまっさ
うちは金融が本業ですさかい
(宮原の部下) さあ 帰った 帰った
(債権者7) わしはカネもらいに来ただけや!
(宮原)ああでも言わんと この場の収まりがつきまへんさかい
お父さんとこ 案内してもらいまひょか
わしも債権者の1人でんねん さあ
(木村宇市)ホンマに まだ立ち直る見込みがおまんねん
金策のめど ついてまんねん
ええかげんなこと言うたら あかんで
お宅の累積赤字は 資本金の5倍からあるし―
工場と住宅 機械 在庫製品 全部 合わせても焼け石に水や
宮原 実はな カトウに口止めされてましてんや
親会社の社長はんが―
近々 資金のめどがついたから 子会社に運転資金 回す言うて
親会社 言うたら松原(まつばら)産業やろ もう潰れたも同然の会社やないか
西宮工場 手放して 不動産部門一本で出直すそうです
工場の敷地は3万坪以上あるそうで
それだけの土地が おいそれと売れるはずがない
住宅公団と交渉中や聞きました
社長はんの口ぶりからして 間違いないと思います
宮原 どうか もうしばらく 待っておくんなはれ
きっと立ち直ってみせますさかい
(宮原)オーライ オーライ
オーライ オーライ
(宮原の部下) オーライ オーライ
ストップ!
(宮原)こっちや
(部下1) あっち行け! あっち行け はよ
おお あっちや あっちや はよ せんかい はよ
(部下2) そっちや そっちや 向こうや
お父ちゃん!
お父ちゃん!
(宮原の部下)社長 (宮原)続けるんや
荷 運び終わってから 警察へ知らせまっさ
アホなことしてくれたもんや
はよ せんかい!
(ジゼル) ♪ 怖いものは何もないわ
♪ 愛は いつも優しいものよ
♪ たとえ つかの間でもいいの
♪ 燃える…
(庄内春夫(しょうないはるお))やあ しばらく
(郁子)奇遇ね こんなとこで会えるなんて
♪ 喜びを与え合い
もう あのときは怖くって お礼も言わずに ごめんなさい
父や母に叱られたわ 名前ぐらい聞いとけって
(春夫)庄内春夫さ (郁子)大石郁子
(郁子) これでも大学生なのよ あなた この店 よく来るの?
(春夫)毎日 (郁子)へえ 物好きね
え? これでもオーナーさ この店の
わあ
(春夫)踊ろうか (郁子)ええ
(ジゼル) ♪ 隠すことは何もないわ
♪ 肌と肌が 愛を
♪ 知ってる
(伊庭(いば))総理も あなたの 南太平洋開発会社の構想には―
大変 興味を示されましてね
秋の総裁選が終わりしだい 開発銀行の誘致 そのほか―
全面的にバックアップしたいとの 総理のお言葉でした
(大石)ありがとうございます
…で 選挙の見通しは どうなのですか?
現在 五里霧中です
フッ フフフッ
平山(ひらやま)幹事長派は―
1票 1000万円で買い取ると 公言しとるもんですから
向こうが1000万なら―
こちらは2000万 出せばいいじゃありませんか
大石が胸をたたいたと 総理に そうお伝えください
(伊庭)頼りにしておりますよ
(女将(おかみ))いらっしゃいませ
それにしても大石さん
あなたが実業界に進出されたら パニックが起きるでしょうな
あなたは財界の恥部を ことごとく握っておられるし
資金は無尽蔵だ
現在 関東同盟は―
どのくらいの団体が 加盟しておられるんですか?
650です
あ… ついに中島組を超しましたね
比較するつもりはありません
関東同盟は合法的な団体です
大石さん
どうしたら あなたのような 統率力が持てるようになるか―
もし 秘けつがあるなら ぜひ ご教授願いたいですな
簡単なことですよ
誰にも裏切りを許さないことです
(江本)一宮君
君が学会で発表した新手の手術を 拝見させていただくよ
どれぐらいで終えるつもりかね?
(一宮恭夫(やすお))予定は2時間です
2時間? ほう まるで神業だね
(一宮) この病院の設備なら 可能だと思いますが
(アコーディオンの演奏と歌声) ♪ 男 平山 五尺の体
♪ 日本国の夜明けのために
♪ 命を懸けて立ち回る
♪ 命を懸けて立ち上がる
(議員1)招かれざる客だね
(議員2)まったくだ
暴力団は迷惑だってことが 分からんのかね
(司会者)それでは続きまして―
ご来賓のご祝辞を 頂戴いたしたいと存じます
初めに 政民党中同(ちゅうどう)会 代表幹事でいらっしゃいます―
刈田重徳(かりたしげのり)先生に お願いいたします
刈田先生 お願いいたします
(拍手)
(刈田重徳)えー えっ
ご来場の紳士 ならびに淑女諸君
私(わたくし)は ただ今 紹介にあずかりました―
前建設政務次官 衆院建設委員会 委員長 刈田重徳であります
このたび 平山幹事長の 総裁選出馬 激励会が―
四国政財界有志によって 行われると聞きまして―
多忙な政務の中を 駆けつけて参ったしだいであります
(男1)あんた どっちの味方や
(男2)昨日は 中久保(なかくぼ)派の パーティーに出てたじゃないか
私(わたくし)たち 中同会のモットーは―
日本の政治を あくまでも 国民的な立場から考え―
良識の鏡に照らして判断する というところにあるのでありまして
現在の私(わたくし)の心境は 明鏡止水
この歌のとおりであります
♪ 海 ゆかば
♪ 水漬(みずつ)くかばね
♪ 山 行かば
♪ 草 むすかばね
(佐倉) 心ばかりですが お祝いです
(平山英格(えいかく))これはこれは では
佐倉さん あんた 近頃の関東同盟の大石の動きを―
どう見とるかね?
大石が中久保派の弾薬運びに ひと役買ってることは―
あんたも知っとるだろう
官房長官の伊庭なんぞは―
赤坂の大石の妾(めかけ)のうちに 入り浸りだ ああ…
その狙いは何だと思うかね?
(電話のベル)
(議員)はい
ああ 佐倉さんなら ここだ
お義父(とう)さんですか
大山先生の手術 無事 終わりました
ウマくいきました
そうか よくやってくれた
ご苦労だった
(受話器を置く音)
(平山)どうかしたのかね?
大山先生の手術 せがれが執刀して―
成功しました
(平山)なに?
容体は絶望的だと 聞いとりましたがな
しぶといジイさんですな
佐倉さん どういうつもりで そんな…
あんたは まだ なんも分かっとらんらしいな
大石はサイパン島を中心にして 一大開発事業を計画しとるんだ
すでに大山喜久夫を通して―
アメリカの上院議員と 渡りをつけとるらしい
(佐倉)フッフッフ
あの人は私なんかと違って なかなか やり手です
君 そんな のんきなこと 言ってる場合じゃないよ
大石が この事業に成功したならば―
彼は その… 名実ともに日本の首領(ドン)だ
(ナレーター) 大阪へ帰った佐倉は
初めて大山の遺言状を 幹部たちに見せた
“現在 我が国の保守政権は 沈滞堕落し―”
“赤色(せきしょく)テロの横暴は 目に余るものがあります”
“警察 自衛隊は 頼むに足らず―”
“今こそ全国の任侠(にんきょう)団体が 一致団結して―”
“救国の盾となるべき 国難非常の時であります”
(ナレーター) 大山は任侠団体の全国的統合を 強調するとともに
“自分の意志を継ぐ者は 佐倉しかいない”と結んでいた
この遺言状には 極めて危険な毒が仕込まれてる
先生は わしと大石との 二股をかけて―
勢力を盛り返そうと図っている
幸い 一命を取り留めたから―
これは物同然だ
ところで サイパンの件はどうするんだ
(宮之浦(みやのうら))関東は関東 こっちは こっちで―
お互い 立場は きっちり守ったほうが
(佐倉) お前はサイパンの事業が どんなものか知ってるのか
いえ
知らんで 立場もへったくれもあるか
おい どうだ
5年間に1000億の プロジェクトやと聞いとります
表向きはレジャーランドの建設 ということになっとりますが―
実際の狙いはラスベガスのような バクチ場でっしゃろ
(佐倉)フフフフッ フフフッ
ハアー
大石は はっきり首領(ドン)の椅子に 目 向けてる
大山さんは 大石に殺される
その次に何が来るか
お前たちにだって それくらい分かるだろ
(白川義雄(しらかわよしお))えらい低気圧でんな
(組員)サイパン台風や フッ
笑い事や あるかい
親分 わしらに 大石はん殺せって言うてはんのや
そんなアホな
気構えの問題や
ハッパかけてはるねや
川西
親分に空気入れたん お前ちゃうか
お前な!
戦争したかったら 中島脱退してやってくれや
とばっちりは真っ平やで
(宮原)敷地は正味3万7000坪
国税庁の評価は坪20万ですから 実勢価格は34~35万や思います
(川西)中(なか) 取って 27万で売ったとして―
99億9000万か
松原産業の累積赤字は なんぼや
150億ぐらいという うわさです
(興信所の所長)松原産業は 関東同盟の大石を通じて―
住宅公団の里見(さとみ)総裁と 接触しとるようです
えー 売値希望価格が 35万だそうですが
まあ 33万ぐらいで 折り合うんじゃないかと
いやあ 先生のご運の強さには まったく感心させられます
今まで何度か生死の境に 立たされながらも―
そのたびに 死線を越えて よみがえってこられる
まったく驚きました
いや 賭けだよ
大石君
わしは佐倉のせがれに なぜ命を預けたか―
分かるかね?
わしは自分が ガンだということを 知っておった
どうせ死ぬ病なら―
イチかバチかの賭けを しようと思った
これで佐倉に借りができた
ハハッ
これが ものを言うんだよ
例のサイパンの件だがね
ジェラルド上院議員に 手紙を出しておいたよ
そうですか どうもありがとうございました
ところで提案があるんだがね
この事業は 中島組と 共同ということにしてほしいんだ
…と申しますと?
佐倉に借りを返すんだよ
(大石) お言葉を返すようですが―
中島組との事業提携には 同意しかねます
なぜかね?
関東同盟は中島組と違って 寄り合い所帯です
今 中島組が加われば 大混乱は避けられません
中島は わしが抑える
大日本同志会は わしの念願じゃ
佐倉さんは なかなか 一筋縄ではいかんと思います
先生は当分のあいだ 療養専一に お努めください
(ナレーター)翌日 野口が
サイパン島 開発プロジェクトの 明細書を持って 佐倉を訪れた
大山先生は これを 関東同盟に独占遂行させるのは―
大石さんの絶対権力に つながるとして―
警戒しておられます
それゆえに 中島組の手で 阻止していただきたいと
手段については佐倉さんに お任せするとのことです
情報は私(わたくし)から そのつど
先生は大日本同志会の実現に 命を懸けておられます
佐倉さんに衷心のほど お察し願いたいと―
そう申しておられました
よく分かりました
野口さん
大山先生に よくお伝えくださいませんか
サイパン開発の事業は いっそのこと―
中島組に 肩代わりできないものか どうか
(由紀子)ミネラル 下さい (バーテンダー)はい
(バーテンダー)いらっしゃい
1時間ほど待ってください お店 終わってから
いや 今夜 別の話で来たんや
300万で あんたを買いたい 言う人があるんやけどな
300万いうと―
飲まず食わずで返済してっても 5年は かかる
花の盛りを棒に振らんならん つまらんと思わへんか
(川西)服 脱げや
その前に はっきりしてください
まさか 300万で 一生 縛る気じゃないでしょうね
(川西)お前は男 知っとんのか
私 もう24です かたわじゃありません
(川西)ああ
んあ…
ひと月契約や
その間 焼いて食おうと煮て食おうと―
わしの自由や
それで どうや
シャワー使わせてください
(川西)待てや!
その必要ない
わしはのう
男に戻れん宣告されとる
そやけど わしは 医者の言葉なんぞ信用しとらん!
ハアッ ハア ハア ハア…
なんや そのツラは!
(由紀子の うめき声)
イヤ!
(川西)飲めや!
われの体に火つけたる!
ンンンッ
食ろうてみい!
(由紀子)ンンッ アッ
わいの男 食ろうてみい!
(由紀子)ンンッ
(川西)ウウッ
(春夫)おはよう
ゆうべも遅かったね
また あの子かい?
いやあ ケン坊らとドボンやってたんだよ
(ジゼル)私はケン坊に 送ってもらったんだけど?
こいつは不思議だな
(ジゼル)結婚してもいいよ
マネージャーの代わりなら いくらだってあるんだから
ジゼル
パン
(春夫)あっ はい
えっと
遊びは構わないさ
だけど仕事だけは きちんとしな
私は来月 アメリカ公演だ
安心して旅もできやしない
分かってるよ
(玄関チャイム)
(春夫)はいはい
(春夫)宮原さん (宮原)しばらく
(春夫) さあ 上がってください どうぞ
どうぞ上がってください
♪ 朝だ 夜明けだ
♪ 潮(うしお)の息吹
♪ うんと吸い込む
♪ あかがね色の
♪ 胸に若さの
♪ 漲(みなぎ)る誇り
♪ 海の男の艦隊勤務
♪ 月月火水木金金 (店員)いらっしゃいませ
ハハッ あれが親父(おやじ)の健康法なんですよ
(店員)いらっしゃいませ
LP2枚分 ぶっ続けに やっちゃうんだから
どうぞ
ほかの者(もん)の健康なんて 全然 頭にないんですね
♪ 赤い太陽に流れる汗を
♪ 拭いて にっこり
♪ 大砲 手入れ
(庄内良子(よしこ))あら いらっしゃい
まあ どうしたの
ここへ来るなんて 珍しいこともあるもんね
(春夫)ママ 覚えてるかい? (良子)何が?
宮原さん
(良子) まあ 宮原さん 立派になって
(宮原)その節は どうも お世話になりました
いいえ 懐かしいわ まあまあ おかけになって
ホントに よう来てくれましたね
(春夫)ねえ ママ ちょっと親父に話あんだけど
当分 無理 今 始まったばっかりだから
その代わりね お父さんの とっておきのブランデー
持ってきてあげる ちょっと待っててくださいね
♪ 怒濤(どとう)の歌に
♪ ゆれる釣床
♪ 今宵の夢は
(宮原)いかがでしょうか
(刈田)うーん なかなか面白そうだが 難しいな
ごもっともでおます
もし お力添え願えれば―
中同会のほうには十分なる献金を させていただきますが
だが関東同盟が かんどるとなると 身の危険もあるしね
それでしたら しばらく温泉へでも おいで願えませんか
この木村君が ご案内いたします
どうぞ
あなたが?
私の秘書なんです
車の運転もいたしますから
(救急車のサイレン)
(一宮が指示する声)
(一宮)点滴の用意 (看護師たち)はい
(看護師)お名前は?
(松原)松原太一郎(たいちろう)
松原産業 代表取締役社長 56歳です
(里見)まったく驚きました
例の西宮工場の用地買収の件で―
住宅公団としては 今回は 見送りたいと申し上げたところ―
突然 倒れられましてね
総裁 わけを説明していただけませんか?
君は 松原産業から―
どれぐらいのリベートを 取っとるのかね?
公示価格20万の土地をだ 33万で購入するっていうのは―
政府と国民に対する 重大な背信行為じゃないかね?
購入価格は 決して高すぎるとは思いません
実勢価格は 大体 公示価格の―
1.5倍か2倍するというのが 常識ですから
そんな… そんな詭弁(きべん)は通らんよ 君
何しろ100億からの国民の 貴い税金が動くんだからね
それにね わしん所へ来た投書によるとだ
暴力団が かんどるという うわさもあるそうじゃないか
カハハッ ハハハハハッ
これは君 ゆゆしき問題だよ
(里見)建設委員の田中(たなか)代議士らも 同席しておりました
強行すれば国会で問題にするという 巧妙な脅しです
フッ 刈田さんのことですから 何か裏があってのことでしょうが
あの人に にらまれた以上―
松原産業の件は 白紙に戻すしかありません
(戸の開閉音)
(電気を消す音)
(戸が開く音)
(刈田の いびき)
ん…
え? ああ
ああ 君か
いやあ うっかり眠ってしまった
ああ 失敬 失敬 ああ…
ハア…
しかし 妙なもんだね 人生とは
君のような若い美人と こうして…
宮原君は 君は男を知らんと言っとったが?
ん?
さあ こっち来なさい ね?
ああ…
フッフフフ
はあー 果報だな ん?
人間 長生きせんきゃウソだな
んっ
(玄関チャイム)
(春夫)はい
あんた 刈田代議士のご子息ですね?
(春夫) 何の用ですか こんな時間に
入らせてもらいますよ
(春夫)よせよ!
お嬢さん!
(春夫)何するんだよ
アッ!
(医師) 急性のアルコール中毒で ショックを起こしたんですが―
ひと晩 寝れば 治るでしょう
どうも お世話さまでした
お大事に
ハア…
フフッ
あ…
いいから これを飲んで ぐっすり寝るんだ
(ドアが閉まる音)
あなた
あなた…
どうしたというんだ!
なぜ あんなマネをさせた
すいません
あの…
中神さんの話では 相手は―
何とかいう政治家の お妾さんの子だとか
どうせ ろくでもない男に 決まってます
あなた どうしたらよろしいんでしょう
西宮の土地の件で ひと肌脱いでいいと思ってね
松原社長のことじゃ わしも いささか後味悪い思いしとるんだ
ああ ハハッ アハハハハッ
ああ 話まとまるまでに―
つなぎの資金 世話していいと思っとる
信州銀行なら わしの顔 利くんじゃ
(真田(さなだ))どうも 大変 お待たせいたしまして
営業部長の真田でございます
石渡です このたびは 誠に ご無理を申しまして
とんでもございません
今 瀬川(せがわ)さん 私(わたくし)どもの常務と 話し合いをいたしておりますので
まもなく こちらに参りますので
例の手形でございますけども 今日 お持ちいただいておりますか
(石渡)あ? あっ はい
(石渡)お改めください (真田)ちょっと拝見します
あの… ちょっと お預かりして よろしゅうございますでしょうか
(石渡)どうぞ (真田)そうですか
今しばらく こちらで お待ちくださいませ
すぐ戻ります
(瀬川) お待たせいたしました 石渡さん
常務の松井(まつい)さんです
(石渡)あっ はじめまして 松原産業の石渡です
(松井) 松井です ただ今 瀬川さんから お話を伺いましたが
あっ さあさ どうぞ
ちょっと ご希望にお応えするのは 難しいですな
お宅さんと 取り引きがあるわけでもなし
地元の企業ってなら また別なんですがな
しかし 刈田先生は 大丈夫だと おっしゃいましたが
あの先生の安請け合いは 有名ですから ハハハッ
瀬川さん 話が違いますね
こちらさんには あんた 了承済みだと
ええ ええ 実は私も知らなかったんです
刈田先生から ちゃんと話が 通ってると思っとったんですが
常務さん もう一度 考えていただけませんでしょうか
松原さんのほうには―
まだ ちゃんとした担保物件も ありますですしね
あっ 石渡さん
工場敷地の登記謄本ございますか? ちょっと お渡しを
手形も一緒に
手形は先ほど こちらの 営業部長さんに お渡ししましたが
営業部長?
真田という人です
真田… そんな者はおりませんが
いや この人です ここに名刺がございますが
♪ 雪の降る町を
♪ 雪の降る町を
♪ 思い出だけが通りすぎてゆく
♪ 雪の降る町を
♪ 遠い国から落ちてくる
♪ この思い出を この思い出を
♪ いつの日か 包まん
ブラボー!
ハアー いいなあ
聴いてるうちに涙が出た
“雪の降る町を 思い出だけが通りすぎていく”
ロマンチックだ センスがいいな
お前 そう思わんか?
すいませんね 時代遅れで
そうとも 今の銀座もババアじゃダメなんだ
良子 お前は引退しろ
(由紀子) ホントにいいの? ねえ ホント?
(中神)刈田先生ですね
何だ 君は
関東同盟の中神という者です
そんな者に用はない
(中神) 先生をお連れするように 理事長から言いつかりましてね
どうぞ
用があるなら そっちから会いに来たまえ
国会議員に対して無礼じゃないか
おい お嬢さんをお送りしろ
(組員)はい
(刈田)由紀子には関係ない
ご心配なく
政治家の先生方より 私たちは紳士的ですから
どうぞ
大石さん あんた どうも わしという者を誤解しとるようだな
国家と国民の利益を守るのが わしらの責務であるからして
そりゃあ 時には―
あんたの気に障るようなことが あるかもしれん
しかし それは決してね
あんた個人や関東同盟に 他意があってのことじゃないんだ
刈田先生 誤解されておられるのは そちらのようですな
私(わたくし)は ご子息の春男君のことで ここへ お招きしたのです
春男?
(刈田)ん?
春男
(大石)刈田先生 娘です
(郁子) はじめまして 郁子でございます
やあ
大石さん
これは いったい どういうことですか?
このたび 春男君より 正式に婚約の申し出がありまして
春男
本当か?
はい
お前ってやつは
どうして お父さんに 早く言わなかったんだ
自分の妻は 自分で選びたかったんです
それに 大石さんのような 立派な方の娘さんなら―
間違いはないと思いまして
そりゃまあ そのとおりだ
娘は どんな上流社会に出しても―
恥ずかしくないように 育てたつもりです
そうですか
いやあ わしも故郷(くに)に 娘がおるだけでして―
春男には大いに 期待をしていたところなんです
近いうちに私の秘書として 政治の勉強をさせたいと―
考えていたところなんですよ
どうか 2人のためにも
しかし大石さん 縁っていうのは まか不思議なもんですな
あんたと私が親戚になるとは アッハハハハッ
おやじさん おやじさん 見やはりましたか?
思い切った手で来よりましたな
わしゃ パクられたブツの サルベージが先かと―
踏んでましたんやが
(川西) ひょっとしたら大石は 最初から―
松原産業を乗っ取るつもりで 絵図 引いたのかもしれんのう
わしが つかんだ情報では―
更生管財人には ヤマソウがなるらしい
ミセヤ電気 ヤマノ機械
ヤマソウが手に入れた会社は全部 大石ら関東同盟の幹部が筆頭株主や
ひょっとしたら松原も 大石に消されたのかもしれんのう
まさか
(ナレーター)数日のち 堺市にある松原産業本社で
会社更生法申請に関する 第1回の説明会が開かれた
会場は 会社側の護衛軍団と―
全国から蝟集(いしゅう)した 整理屋集団によって二分された
整理屋たちの狙いは言うまでもなく 会社を破産に追い込んで―
骨の髄まで しゃぶり尽くすことである
何かご質問がございましたら お答えいたしたいと思いますが
(組員1)社長 (松原)どうぞ
私は 手元にあるバランスシートを つぶさに検討してみたのですが
この程度の赤字であれば―
売掛金の積極的回収 在庫製品の販売促進
業務内容の縮小 人員整理等の手当てによって―
十分 当社の再建は 可能であると考えます
万一 更生法の申請が 却下されまして―
破産という最悪の事態に 立ち至った場合―
最も手ひどい打撃を被るのは―
我々 零細なる 一般債権者であります
それゆえ お立ち会いの 調査委員の方々には―
あくまでも 更生開始決定の方向で ご検討いただきますよう―
切に希望するものであります
(組員2) ああ そうだ そのとおりだ!
(組員3) その場合 石渡社長代理以下 経営陣は どうされますか?
(組員4) 当然 責任を取られるんでしょうな
もちろん 進退については 考えております
社長!
どうぞ
保全管理人の弁護士さんに お尋ねしたいのですが
更生管財人は どなたに委嘱されるおつもりですか
(弁護士) それは今のところ未定であります 2~3 交渉中の段階でして
ヤマソウさんのうわさが 出ておりますが
有力な候補者の1人と 申し上げておきましょう
私はね この会社を立て直すには―
ヤマソウさん程度の人物じゃ 無理やと思うんです
過去の例から見ても いわゆる 債権屋さんの手にかかって―
我々の利益が守られたためしは 一度も ありません!
そりゃ 松下(まつした)はんやとか―
土光(どこう)はんが やってくれはんのやったら―
安心して お任せしまっけど
ヘタに いじられて 結局 パーにされるよりは―
今 なんぼかでも配当もうたほうが マシやと思うんです
(組員3)黙れ! (組員1)議長
どうぞ
ただ今の発言は―
会社再建を前提とした この集会の 趣旨に反するものであります
即刻 退場を命じていただきたい
ちゃらけ! われこそ 会社の犬やないけ コラァ
(組員たち)何だと! (白川)なに コラ
(机をたたく音)
川西や
社長
このバランスシートやけど―
これは いったい いつのもんでっか?
あっ それは もちろん 今 現在の物ですが
そんなはずはない
借方のほうに 50億の重大な欠落がある
(どよめき)
いいかげんなことを言うな!
証拠を見せろ
わしは ここに―
石渡社長代理名義の手形を 5枚 持っとる
1枚の額面 10億
合わせて50億や
ハッ…
(吉野)ほう こら すごいわ お前 育てたんか
(川西) ああ この赤いのは200万
こっちは まあ 300万しま
親分 大山先生の本復祝いに どないや思いましてな
畜生というのは 罪がなくて かわいいもんだ
あるじや住みかに 難しい注文をつけんからな
ハハハハッ
しかし 水が合わないと 長く もたんと聞いておりますが
なじんだ水を混ぜとけば大丈夫です
(女将) さあ どんどん お持ちいたしますから―
お召し上がりくださいませ
太平洋の ど真ん中に―
バクチ場を開いたら さぞ面白いでしょう
バクチ場を?
それも ルーレットとか バカラだとか―
西洋流のチャカチャカした バクチではなく―
手本引きのね
(関野(せきの)) 紅毛碧眼のギャンブラーに 本引きを引かせるんですか?
ハハハハハッ そりゃいい そりゃいい
理事長 このアイデア 頂いたらどうです?
佐倉さん いっそのこと 共同経営でいかがですか
結構ですな
大石君
先生も ご異存ないと思いますが
もちろん 結構なことだが
こっちにいるあいだに 関野さんと話を詰めといてくれ
はい
(大山)大石というやつは まったく食えんやつじゃ
あの紳士ヅラの裏で 何をたくらんでおるか―
まったく油断のならんやつだ
佐倉さん
大石の今度の変心
あんた 何と見るかね?
(佐倉)わしの… いや ハハハッ
バクチの話が 気に入ったんじゃないですか?
(大山)フッ とんでもない
わしと あんたの 手を組んだのを知って―
妨害しようとしとるんじゃ
気をつけなさい
いずれ 寝首をかく気でいるらしい
わしは 100億ぐらいのカネは 捨てるつもりでおります
佐倉さん
大石は どうしても たたかねばならん
国を憂える わしの気持ちは 全く分かっておらん
やつは権力とカネに 魂を売り渡してしまっておる
♪ 雪の降る町を
♪ 雪の降る町を
♪ 思い出だけが通りすぎてゆく
♪ 雪の降る町を
♪ 遠い国から落ちてくる
♪ この思い出を
(由紀子) まあ 中神さん ようこそ
(中神)空いてる? (由紀子)どうぞ こちらへ
(バーテンダー)チーフ あの人 松風(しょうふう)会の中神さんでしょ?
サインもらってくださいよ サイン
(チーフ)バカ 映画スターじゃないんだ
(ドアが開く音)
チーフ ありゃあ中島組の川西明ですよ
昔 関東同盟の大石さんを 撃ったやつだ
変わりなさそうやな
ええ どうにか
(中神)川西さん どうぞ
(刈田)おい ママ 何者だ あの身体障害者は
さあ 存じませんわ
存じませんって… おい おいおい
お前を見る目つきが 違っとったぞ おい
(店員) 先生 そりゃママが美人だからよ
初めて来るお客さん みんな あんな顔するわ
(刈田) 黙れ! ママ ちょっとな お前 男に愛想がよすぎるぞ
特に中神のようなやつらには 気を許しちゃいかん
やつらは善良な市民を 食いものにする吸血鬼だ
注意しなさい
(男)いやあ 松原産業の件では 川西さんに見事にやられましたよ
相手が悪かったんだ しかたがないさ
川西さん
あの手形は どういうルートで 手にされたんです?
わしにも よう分かりまへん
まあ ぎょうさん手あかが 付いてることは確かや
適性な値で 引き取らせてもらって―
その分は ひとつ 事業のほうに
(野口)東亜(とうあ)銀行 神田支店
明治信用金庫 麻布支店
神奈川銀行 桜木町支店 各1億5000万ずつ
関東同盟の口座から 現金化されて―
平河町の刈田代議士の事務所に 運ばれています
(野口) 大石は娘の縁組をテコにして―
刈田を動かそうとしていることは 間違いありません
(吉野)うーん 今朝の新聞に出ておりましたな
刈田は来月の2日から―
東南アジアのほうに 外遊に出向きますが―
それと何か関係が?
(野口) 賄賂ですな アメリカ側への
(吉野)うーん
では どうか ご無事で
大石さん 大船に乗った気持ちで おってください
わしは あんたのためだったら どんなことでも引き受けますよ
人殺し以外はね
(ドアが開く音)
(ジェラード) オウ! ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ
ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ
(ガイド1) ミスター・ジェラード ミスター・カリタ
ジェラード ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ
(ジェラード) ナイス・トゥ・ミート・ユー
(ガイド1)ヤア?
大石君から この領収書に サインをするように頼まれてね
(ガイド1)オウ! 1本1億円のシガーですね?
ユア・サイン・プリーズ
(ジェラード)オウ
(ガイド2)どうぞ
ああ ハッハッハッハ
(呼び出し音)
(ガイド2)ヤア?
(男)アイ・ハブ・シャンペン
(ガイド2)シャンペン? (男)イエ
フー・オーダード?
エニワン・シャンペン 注文しましたか?
ノー
プレゼンツ・ フロム・ミスター大石・オブ・東京
大石さんからプレゼントか そりゃ気が利くな
さあ みんなで乾杯しましょう ん? フフフフッ
うーん
ああ ありがとう
(ガイド2)グッド
おお ありがとう
うーん さあさ
んっ いいね?
(ジェラードの乾杯の合図)
(刈田)乾杯 (ガイド1)ヤア!
き… 貴様 何者だ!
じ じ… 人命は そ… 尊重したまえ
(手錠をかける音)
(男)行くぞ
(男)ヘイ
(ドアが閉まる音) (刈田)アアッ
(荒い息)
(電話のベル)
(男)イエス
ヘイ・バーグラーズ! カム・クイックリー
(車が近づく音)
(車の走行音)
(男たちの怒号)
(銃声)
宮原さん
(男)うーぬ
(強盗)うっ
(機関銃の連射音)
ウオッ!
(爆発音)
(パトカーのサイレン)
(警察官の英語)
(強盗)ヘッヘヘヘ
ヘイ!
(パトカーのサイレン)
(強盗)ヘイ
(銃声) (強盗)アーッ アッ
(銃声)
(銃声)
アーッ!
アアーッ!
(ナレーター) この事件は 犯人たちの身元が 判別不可能なため
単なる強盗事件と推定されたが―
被害に遭ったのが 日米の両議員で―
しかも 巨額の金銭が 絡んでいたことから―
これ以後 さまざまな物議を醸す原因となった
わしゃ 危うく 殺されるところだったんだよ
被害者のわしが なんで日本の検察の―
尋問を受けなきゃ ならんのかね
(鬼島(きじま)) いえ 決して尋問ではありません
ご承知のように 私どもは警察と協力して―
暴力特捜を編成しております
あの事件と暴力団との関係を 究明したいと思い―
ご協力を願ってるわけなんですが
犯人は暴力団なのか?
(鬼島)現在 身元の追跡を やっておるところです
先生のご記憶にある犯人像を ご説明 願えませんでしょうか
君 それは わしはイヤってほど 現地の警察に しゃべったんだよ
思い出しても不愉快だ
それじゃ その件は 後回しにしてですね
被害に遭われた 数億円と推定されるカネですが―
あれは先生が 日本から運ばれた物(もん)ですか?
いやいや わしはカネなど運んどらんよ
しかし 犯人が奪った2つのカバンは―
先生の手荷物と 確認されておりますが
いや カバンは わしの物(もん)だが カネは知らんな
ほう
じゃ こういうことは なかったですか?
出発前に どなたかから 手荷物を預かられたとか
(刈田)ん?
いや もちろん 先生としては単なる厚意からで―
中身については ご存じなかったとは思いますがね
(刈田)ん?
うーん…
記憶がないなあ
思い出していただけませんか?
でないと先生に あらぬ嫌疑を かけることにも なりかねるのです
ど… どんな嫌疑だ
例えばですね 外為法違反 密輸 贈収賄容疑
現に アメリカ本国でも ジェラード議員を―
上院の査問委員会に かけようという動きがあるようで
まあ あの方は極東通ではあるが
日本やヨーロッパの 商社と組んで―
とかくのうわさが 絶えない人物ですから
いずれ日本にも この問題が 波及してくるかもしれませんね
いかがですか 先生
カネの出どころを 説明していただけますか?
(職員)どうぞ (刈田)え? ああ
私どもの狙いは あくまでも 組織暴力の壊滅です
ご協力 願えれば―
決して悪いようにはしないと お約束いたしますがね
(刈田)うん
あっ ああ 苦しい
うーっ 気分悪いな
君 今日は これぐらいで 勘弁してくれないかな
芝居は よしてください
芝居じゃないよ 君
わしはね 糖尿と血圧で 外遊を止められていたんだよ
ああ 君 東亜第一の江本部長 呼んでくれないかな ああ…
刈田が入院したらしいな そんなに悪いのか?
体より神経のほうが まいっておられるようです
いやあ まいっとんのは大石だろう
刈田が口を割ったら 大石の逮捕は免れまい
(一宮) 江本部長は警察からも報道陣からも 面会謝絶にしてるそうですから
ちょっと外してくれんかね?
一宮君
君に頼みがあるんだがね
何ですか?
刈田は 近いうちに大石に殺される
その前に ある物を狙うはずだ
それは刈田が サイパンで受け取ってきた―
賄賂の領収書だ
刈田も自分の命綱と思うから どっかに隠してあるに違いない
わしの調べたところでは―
検察当局も まだ気づいていないらしい
そんなのが実際にあるんですか?
うん
ジェラードに電話して確認しておる
これが―
その写しだ
これを 刈田から 奪い取ってもらいたいんだがな
(一宮)私がですか?
君なら疑われずに 刈田の身辺に近づけるだろ
私に盗みをしろと おっしゃるんですか
江本も同じようなことを 言われておる
江本は以前から 大石にカネで買われておってね
もう 何人か あの病院で殺しておるはずだ
だいぶ ショックのようだね
だが 地位や名声は 無償では手に入らんよ
(一宮)お言葉ですが 私にはできません
君の目的のためには あの病院の設備と人材は―
ぜひとも必要なんだ
わしは あの病院の理事長だ
君を外科部長にすることも できるし―
研究資金も 存分に出すことができるよ
(由紀子)ご苦労さまです
いかがですか?
今日は気分がいいようですわ 食欲もありますし
失礼
江本先生は どうしとるのかね
部長先生のご回診は 午後からになります
じゃ 診察は そのときでええ
あなた そんな わがままな
構いません これだけお元気なら大丈夫です
まあ… 申し訳ございません
(ドアが閉まる音)
(由紀子)あなた どうしたの?
あの先生は部長先生よりも 評判がいいんですよ
お前は何にも知らんから そんな のんきなこと言っとるんだ
あの医者の親父は 佐倉一誠なんだぞ
お前だって名前ぐらい知っとるだろ
あの医者はお前の親父さんを殺した 中島組の親分のせがれなんだぞ
それにしてもビックリしたな もう
あのカバン中にさ あんな大金が入ってるなんて
政府のカネなんですかね?
(大石)うん そうだろ
…で お父様のお加減 どうなの?
いや どうってことないですよ
日本に帰るまでは ピンピンしてたんだから
(郁子) でも私たちまで面会謝絶なのよ
困るわ 早く よくなっていただかないと
お式の日取りも決められないもの
慌てることはないわよ 準備もあるんだし
だってえ
ねえ?
ハハッ しょうがないさ
春男君 ちょっと
あした 地検に呼ばれているそうだね
はあ あの…
鬼島っていう検事さんが 話を聞きたいっていうもんですから
断るわけにもいかないし
いやあ 君は知っていることを 正直に話してくれればいいんだ
さっき“あんな大金”と 言っていたが―
君は見たのか?
いいえ 新聞で知って ビックリしてるんですよ
親父 何も話してくれないもんだから
お義父(とう)さん
新聞じゃ 日本赤軍じゃないかって 書いてあるんですけど
実は僕 ちょっと気になることがあるんです
ホテルの前で 宮原さん見かけたんですよ
宮原は何をしていた?
犯人の車を追っかけていきました
まさか宮原さんが一味だなんて 思えないんですけど
何しろ中島の人間ですから
このことも 検事さんには話すつもりでいます
(きく江) あなた お茶をお持ちしました
(玄関チャイム)
(玄関チャイム)
(郁子)春男さん! 春男さん!
春男さん! 春男さん 私よ 春男さん!
春男さん 開けて 私よ 春男さん!
春男さん!
(女)どうしたの? (郁子)春男さん!
(男)どうした (郁子)春男さん!
(女1)うわっ ガスよ (女2)管理人さん 呼んできて
管理人さん!
(住民たち)ウエッ 窓開けろ 窓! ガス止めろ
(郁子)春男さーん! 春男さん!
春男さん!
ハッ
(住民たち)そっちの窓 開けろ 窓! そっちの窓
(テレビのアナウンサー) 今朝8時半ごろ
港区にあるタツミレジデンス―
202号室に住む 庄内春男さんを―
友人が訪ねたところ―
庄内さんが女友達とガス中毒で 死んでいるのが発見されました
死んだ女性は 混血の ステージシンガーとして有名な―
ジゼル こと ジル・モトヤマさんで―
現場の状況から 2人は泥酔して―
ガスを消し忘れたものと 見られております
つけとけ
(由紀子) あなた ダメでしょ 起きたりしちゃ
(テレビをつける音)
(テレビのアナウンサー) なお 庄内さんは
衆議院議員 刈田重徳さんの秘書で―
先日のサイパン強盗事件の 参考人として―
検察庁で 事情聴取を受ける予定でした
(テレビを消す音)
殺された 春男が
大石に殺されたんだ
次は わしの番だ
俺も やられる やられる 俺も
ここにいちゃ… ここにいちゃマズいんだ マズい
なあ 早く逃げなくちゃ
あなた!
(刈田)お前もな お前も お前も早く支度しな 早く支度しな
あなた!
(刈田)ハア ハア…
お前… なあ お前だけは わしを裏切らんだろうな え?
わしのそばに ずっといてくれるだろうな
大丈夫よ
ここにいたほうが安全だわ 警察の人もいるし
警察なんかを当てにできるか
わしの頼りは お前だけなんだ 由紀子
なあ頼む わし… わしを 見捨てないでくれよ なあ
ウワッ
(殴る音) (宮原)ウワッ ウワッ
アッ
(電話のベル)
(子どもの泣き声)
(一宮)はい 一宮です
(子どもの泣き声)
(一宮) うるさいよ 静かにさせろよ
(子どもの泣き声)
例の物は まだかね
老人は気が短くってな
あっ 新たに分かったことだが―
刈田は大事な物は 腹巻の中に隠しているらしい
(受話器を置く音)
(一宮登志子(としこ)) あなた こんな時間に?
スープだけでも お飲みになったら?
いや すぐに帰ってくるよ
誰?
誰なの?
キャッ
あなた あなた
(ドアが開く音) (由紀子)あなた!
(一宮)どうしました
誰か来たんですか?
先生じゃなかったんですか?
ハッ… 警察の人 呼びましょうか
あっ いや ここにいなさい 刈田さんのそばを離れないように
部長先生なら 今 お帰りになりましたけど
(医師)あっ 一宮先生
(一宮)どうした (医師)あっ 特別病室の患者が
(刈田)あーっ ああっ
あなた
(刈田)あっ ああっ (由紀子)あなた
(刈田)うあああっ (由紀子)あなた
(由紀子)あなた
(刈田)ああっ ああっ (由紀子)あなた
(一宮の指示を出す声)
(由紀子)あなた
(刈田)息が… ああ ああっ (由紀子)あなた
(刈田) やられた やられた ああ 苦しい
大石 大石… やられたあ
(刈田の うめき声)
(宮原) えらい ご大層な顔ぶれでんな
わしらの貫禄じゃ 罰当たりそうや
宮原 お前に聞きたいことがあるんだ
正直に答えてくれ
分かってま
大阪から熱海くんだりまで 連れてこられたんや
覚悟できてまっせ 何でも聞いとくんなはれ
サイパン事件の指揮をしたのは お前だな
何のことでんねん サイパンの事件って
(関野)とぼけるな!
現場でね お前を見た者(もん)がいるんだよ
(宮原) そやけど サイパンなんて 行ったことおまへん…
何さらすのや!
(組員)コラ!
(宮原)ああっ うっ…
関野はん こりゃ どういうこっちゃ
罪のない者(もん) 無理やりゲロさして 中島にイチャモンつける気か
だから 正直に答えろって 言ったはずだ
(宮原)正直に言ってるやないけ
なんで こんな目に遭わん ならんねん
クソッタレが
お前ら 初めから わしを殺す気やったんやな
お前らこそ サイパンの事業を ぶち壊す気だろ
あの強盗事件が 中島の狂言だとすると―
こっちも考えなくちゃいかんな
(宮原)ハア ハア…
演出は川西で お前が動いたそうだな
性根を据えて答えろよ
お前の身柄は 関東が保証してやるよ
けったくそ悪いやないけ 痛(いと)うもない腹 探りやがって
関東のやくざはな もうちっと さばけてる思うてたぜ
があっ
クソッタレが!
(銃声)
うわっ
(連続する銃声)
(大石)どうだ 気晴らしに 海外旅行にでも行ってこんか
連れは何人でも構わん
ちょうど今の季節なら ヨーロッパが いいらしいぞ
春男さん 殺されたのよ
お父さんでしょ
郁子
お前 何を
郁子
お父さんはね お前の幸せだけを考えているんだよ
郁子
信じてくれ
どうしました?
(一宮)解剖を主張したんだがね どうしても院長が許可してくれない
告訴して 司法解剖に 持ち込む手もあるんだが
それだけの証拠もない
刈田は毒殺されたんですわ 間違いありません
そうだとしても 確証がつかめるかどうか
例えば この薬です
塩化スクシニルコリンというんだが これを注射するとね
急性心不全を誘発するんだ
分量によって数週間のちに 延ばすことも可能だから―
自然死に見えるし―
解剖しても 検出は不可能だと言われてる
こんな物が この病院にも?
(一宮) ほかにも自然死に見せる毒物は いくらでもあるんですよ
きっと江本だわ
私が眠れないと言ったら―
わざわざ睡眠薬を 届けてくれたりして
あなた これからどうします?
遺体は もうすぐ 長野へ帰るそうです
(由紀子)もういいんです 人間 死んだら おしまい
いまさら とやかく言ってみても しかたありませんわ
そうでしょ? 先生
これ 誰か買ってくれないかしら
(一宮)それ…
刈田から預かっていましたの
私 お金が欲しいんです
だって―
これから1人で生きていかなくては ならないんですもの
(一宮) 一緒に食事でも どうですか?
(由紀子) 私のうち いらっしゃいません?
手料理ですけれども
(大山)川西君
わしは勝ったよ
来なさい いい物を見せてあげる
この紙切れ1枚で 大石は断罪
中久保内閣は確実に崩壊だ
わしも―
返す刃(やいば)で 多少のケガはするだろうが―
わしと政財界の交わりは50年
大石は たかだか4~5年だ
もし わしに手をつけたら―
日本の政財界は 収拾のつかぬ大混乱に陥る
川西君
これを どこから手に入れたと 思うかね?
一宮君だよ
ほれ 佐倉さんの娘婿の ドクトル一宮だ
わしは近いうちに 大日本同志会を―
正式に発足させようと思っておる
君にも 大いに手伝ってもらいたいんだがね
国家的見地に立って考えた場合―
佐倉さんのやり方は もう古い
いまだに関東制圧の妄執に―
取りつかれておるんじゃから
その点 君には 近代的経営のセンスがある
いつまで中島組の代紋に へばりついておんのかね?
わし ガキの時分―
四国から大阪へ スイカ船の番人やってましたんや
その時分は 瀬戸内海に 海賊が よう出たもんやさかい―
ガキのくせして チャカ2丁 腰にぶち込んで―
船が大阪へ着いたら―
荷主の代理で スイカを親分の家まで届けまんねん
ほしたら いつも親分が―
“ご苦労やな”と 声かけてくれはって―
姐(ねえ)さんが駄賃に 5円 くれはりまんねん
それが うれしゅうて わしは 極道になったようなもんですわ
うーん
三文芝居の筋書きにあるようだね
まあいい
だが これだけは忘れるな
サイパンの仕掛け人が お前だという証拠を―
わしは つかんでおる
(吉野) やっぱり怖いお人でんなあ 大山はんは
親分 これで大石はんも 終わりですな
お義父(とう)さん
お義父さん 領収書のことですか
確かに 大山先生と取り引きしました
東京で研究を続けるためには しかたがなかったんです
お義父さん!
わしが なぜ お前を 東京へやったか分からんのか
お義父さん
お義父さん 私を―
医者として認めてくれたんじゃ なかったんですか
私が一人前の医者になるためには あの病院が必要だったんです
一流のスタッフ 研究設備…
お義父さん
ああっ
あっ
ぐわっ
(蹴る音) (佐倉)がっ
まさか… まさか お義父さん
大山を殺さねば わしが死ぬのだ
(一宮)できません!
あっ
私は大山先生の手術に―
医者としての すべてを懸けたんです
その先生を殺せと言われるなら―
私も死ねと言われるのも同然です
くっ…
(佐倉)んーっ (一宮)うわっ
(佐倉)お前は 医者である前に わしの息子だ
(一宮) 私は中島の人間じゃありません
(佐倉)だが わしの息子だ!
大山は 大石に勝った
だが 大石も黙っていまい
やつらは必ず手を組んで わしに向かってくる
一歩 遅れれば―
わしは日本の首領(ドン)になる機会は 二度と来ない
いいか
お前は いつか 辰巳(たつみ)を殺したじゃないか
この手で
(電話のベル)
はい
君も新聞で知ったろ いよいよ始まったな フフッ
わしは すぐ入院する
病状は君に任せるから わしがいいと言うまで面会謝絶だ
(受話器を置く音)
さあ お茶でも いれましょ
あなた
病院へ行ってくる
(登志子)日曜日なのに? (一宮)急患だ
(一宮)登志子 (登志子)ええ
(一宮) もし 俺が 大阪のお義父さんと 縁を切ると言ったら―
お前 どうする?
また何かあったんですか? 病院で
(一宮)いや 俺を選ぶか お義父さんを選ぶか知りたいだけだ
答えてくれ
あなた このごろ変よ
きっと疲れてらっしゃるんだわ はい
(一宮)答えろよ
答えられません
(ナレーター) アメリカにおける ジェラード証言の波紋は
たちまち太平洋を越えて 日本に広がり―
関野 中神らに続いて 大石が地検特捜部に召喚された
(鬼島) 大石さん あんたにはね はっきり言って―
贈収賄 外為法違反 殺人 この3つの容疑が浮かんどるんだ
ここに たくさんの投書が来ておる
この2~3年 あんたや関東同盟と 関わりを持った人たちが―
何人も変死しておるが―
いずれも あんたに消されたと 訴えておるんだ
ひとつ これを読んでみたまえ
さすがのあんたも驚いたようだな
そう あんたの娘さんからの投書だ
(郁子の声) 庄内春男さんは父に殺されたのです
父は春男さんを利用するために 私と婚約させ―
邪魔になった途端 事故に見せかけて殺したのです
私もね たまげたよ
郁子さんは 血を分けた娘さんだろ?
普通 一般の親子じゃ 考えられんことだ
あんたらの家庭は いったい どうなっとるのかね
娘は…
悲しみのあまり 気が動転していたのでしょう
(記者たちが詰め寄る声)
(ナレーター) 数日後 伊庭官房長官が 事情聴取を受けるため地検に出頭
続いて 大山喜久夫にも ちっ監状が発送された
(一宮) 今 大山先生を動かすのは 絶対 無理です
たとえ いかなる理由があるにせよ 担当医として許可できません
(記者) そんなに病状が重いんですか?
極めて憂慮すべき状態です
病名を教えてください
高血圧と心不全です
ご高齢でもありますし―
この春 大手術されたばかりですから―
当分のあいだ 絶対安静が必要です
(大山)ハハハハッ
これで 中久保内閣も ご臨終だ
いよいよ 平山英格の時代だな
(大山と横川(よこがわ)の笑い声)
(横川)党人派の天下になりゃ 景気も ぐっと回復するでしょう
(大山)うむ
それからな 横川君
例のサイパンの件だが―
いずれ 君が手がけるようになると思う
その心積もりでいてくれたまえ
いやあ しかし あれは関西の佐倉さんが
バカなこと言いたまえ
あれは 作戦に使ったまでじゃ
(横川)じゃあ いずれ また
おっ 横川君 一宮先生だ
ああ 佐倉さんのご子息の
帝国興業の横川君だ
そうですか よろしく
こちらこそ じゃ
(ドアの開閉音) (大山)ああ…
大石に逮捕状が出たそうだね
いずれ わしに 泣きついてくると思う
一宮君 よく分かったかね?
いくら肩を怒らしておっても 所詮 やくざは やくざでしかない
一宮君
わしが この世の中で 一番嫌いなものは―
何だと思うかね?
赤色革命家と権力者だ
やつらは相反するようでいながら 共に偽善の仮面をかぶって―
国家と国民を 食いものにしておる
また注射かい?
もう勘弁してくれよ
まぶしいな 閉めてくれ
その点 佐倉さんは誠実でいいな うーん
例の江本だがね
熊本の病院へ追っ払ったよ ハハッ
わしらの勝ちや
(瓶を置く音)
お父さん
お父さんたちに 急に会いたくなったもんだから
私がダメだったの
(はなをすする音)
私が いい奥さんじゃ なかったから
総裁選挙の見通しは あんまり芳しくありません
平山が新聞や野党各派と 打ち合わせて―
中久保派の辞任を迫ってます
吉野から 大山先生密葬のあとで 開発会社の件について―
話し合いがしたいという 申し入れがありました
こちらの弱みにつけ込んで―
会社の主導権を握ろうとする意図が ありありと うかがえます
出資金を凍結して休業する っていうのは どうでしょうか
潰してしまえ!
そんな ケチのついてしまったものは要らん
(読経)
お疲れでしょう
ゆうべから 手伝いに見えられてるそうですね
大山先生には 特に目かけてもらいましたさかい
なんや悪い夢 見てるようですわ
(読経)
大石はん どないでっか? 親分が心配してはりました
あの逮捕は検察のゴリ押しでね
結局 よう起訴しきらんでしょう
できることあったら 何でも言(ゆ)うとくんなはれ
サイパンの件かて…
(中神)その件について―
近日中に 佐倉さんに お目にかかるつもりでした
南太平洋開発会社の登記を 抹消しようと思いましてね
抹消
お分かりでしょ 今の情勢
フッ そりゃ関東だけのことでっしゃろ
なんなら中島で全面的に 肩代わりしても よろしおまっせ
会社の名義料は きちっと払わしてもらいますさかい
これで どないでっしゃろ?
大山先生の置き土産でしてね
高(たこ)うついとるんですわ
サイパン以来 あんたにゃ やられっぱなしですね
こっちは かわいい舎弟1人 いかれてまんねん
あいこでっしゃろ
佐倉さんといい―
西の人は どうして そう 関東 目の敵にするんですかね
こっちには戦争の構えなんざ みじんもないんですがね
中島は関東と違(ちご)うて 一家一門ですさかい
いっぺん火がついたら 灰になるまで止まらんのですわ
首領(ドン)の椅子に―
親分に座ってもらうまではね
話し合いましょう
明日 午後3時 新橋の本部で
(チーフ)失礼します
さあ 帰りましょ
今日は何日だ?
もう10月 秋だわ
(店員1)ママ お疲れさまでした (店員2)お先に失礼します
(由紀子)お疲れさま (店員3)失礼します
うちへ帰る
どうして?
もう うちへは帰らないって 言ったじゃない
病院もあるしな
病院も辞めるって言ったでしょ ウソだったの? みんな
一宮先生 お久しぶりでおま
川西だす
もう お店 おしまいですけど
由紀子 お前に用があって来たんや
どうや もういっぺん わしと契約し直さへんか?
あの晩のことが忘れられんのや
お前には一宮先生は もったいない
わしぐらいが似合いや
(由紀子)お断り
私だって もうそろそろ まともな男と つきあいたいわよ
まとも? まともって何や
そんな男が この世におるのか?
先生 どないだ?
キンタマ ほかしたぐらいなら まだマシなほうやで
私だって もう昔のことは 全部 忘れたわ
あなた 行きましょ
けっ
親分に心配かけるやつは お前でも容赦せえへんど
先生 上で待ってま
(川西たちの うめき声)
(銃声) (組員)ああっ
あうっ
(川西の うめき声)
あう…
(一宮)手を貸せ
やった! やった やった やったあ
(川西の苦しげな息)
お… お守りがいや
あんたも―
中島の身内やったら―
こ… これが…
いるはずや
う…
(ナレーター)11月に入って 中久保内閣は総辞職し
平山英格が新たに総裁に就任した
(議長)平山英格君
(ナレーター)佐倉一誠は ちょうど 70歳の誕生日を
迎えたばかりであった
(室内に流れる祭囃子)
(手をたたく音)
(ナレーター) 敗戦の焦土の中で 佐倉が中島組を結成してから30年
日本制圧に燃える佐倉の野望は―
今 膨大な組員の犠牲のうえに 達成されようとしていた
佐倉は平山新総裁の 祝賀パーティーに出席するため―
東京へ向かった
(宮之浦)お頭(かしら) (吉野)おう
名古屋から大須(おおす)の前田(まえだ)はんやら 大勢 乗り込んで来はりまんのや
親分に挨拶したい言うて
あかん あかん 東京へ着くまで待たせとけ
(宮之浦)へい
親分 麻布のほうに マンション買(こ)うとりますんで―
まっすぐ そっちゃへ 入ってもらいまっさ
(佐倉)よし
大丈夫よ お母さん 私 自殺なんかしないから
ええ もう帰らないわ
東京なんて こりごり
もう 一宮とのことは終わったのよ
(佐倉雪江(ゆきえ))登志ちゃん
もしもし?
もしもし もしもし!
(学生たちの にぎやかな声)
(吉野) はーい ちょっと ごめん ほら
あー どいてちょうだい
あー ちょっと通してちょうだい
(吉野)アッ (女子学生)どいて どいて
(吉野)コラ! (女子学生)早く ユウコ 早く
公衆道徳っちゅうもん 習っとらんのか お前ら!
親分 食堂車は満員で―
空くのに 10分ほど かかるそうですが
ああ じゃ ここで待とう
(吉野) へい ほな 先 行って 様子 見てきます
おい 奥さんもお呼びしてくれ
へい
ここ かけていいですか?
(一同)どうしようか いいよね?
どうぞ
(女子学生たちの笑い声)
(女子学生1)あっ サンキュー (女子学生2)あった
(女子学生1)はい (女子学生3)わあ!
(袋からお菓子を取る音) (女子学生3)ちょっと待って
どうぞ
フフッ ありがとう
(院長) これは いったい どういうわけだね
この病院の 何が気に入らんというのだ
(一宮) 院長や病院には関係ないんです
私は医者を辞めるつもりですから
医者を?
君 正気か!
(女子学生たちの悲鳴)
理事長 佐倉さんが亡くなりました
佐倉さんが亡くなったんです
あまりにも突然で 私たちも信じられませんでした
1時頃 新幹線の車中で倒れられて―
すぐに静岡の病院に 運ばれたそうですが―
すでに亡くなっていたそうです
理事長 大逆転ですよ
藤枝(ふじえだ)先生のご尽力で 保釈の許可も取れそうですし
もう早速 方々から 挨拶が届いておるんです
平山総裁側近の 三島(みしま)代議士からも―
釈放の日時について 問い合わせがありました
しかし 人間なんて はかないもんですね
あれだけの修羅場をくぐって びくともしなかった人が
(由紀子) あっ いらっしゃいませ まあ どうも お久しぶり
ええ 失礼します
まあ 横川さんまで ありがとうございます
どうもありがとうございます
(バーテンダー) 先生 どうです 今夜のママ キレイだなあ
この店ね きっと銀座の ナンバーワンになりますよ
(一宮)ママ 呼んでくれ (バニーガール)はい
先生 中島組の2代目 誰がなるんですか?
先代が大きすぎると あとが大変ですよね
なあに? 今 忙しいの
俺な 旅に出る
それも いいわね
お前も あとで来ないか?
ダメよ 開店早々なんだから
俺は もう帰ってこない
どういう意味?
カネは 作るよ
今のあなたには何もできないのよ 佐倉一誠は もう いないの
こんな物 早く捨てなさいよ
由紀子
いいかげんにしてよ あんまりムチャ言うと私だって…
(バーテンダー)大石剛介だ
(横川)ああ 大石さん
(各人が口々に) おめでとう いやあ おめでとう 長いこと ご苦労でした
いろいろと お世話になりまして ありがとうございました
(由紀子)いらっしゃいませ
(議員)ママ 大石理事長だ
(由紀子)まあ ようこそ おいでくださいました
木村由紀子でございます
(横川)さあさあ ママ 席を1つに まとめて
今夜は大石さんの歓迎パーティーだ
承知しました 1つにして
(店員)はい
(横川)大石さん さあ どうぞ そちらへ
(由紀子)どうぞ
(横川)ママ 大石さんの隣だ さあ
せん越ながら 私 乾杯の音頭を取らせていただきます
日本の首領(ドン) 大石剛介氏の カムバックを祝して 乾杯!
(一同)乾杯!
皆さん どうもありがとう
やっぱり なるべき方が 首領(ドン)になりましたな
大山先生も さぞかし地下で ご満足でしょう
(バーテンダー)すげえなあ
さすが 貫禄十分だ
(横川)一宮君じゃないか
ああ 一宮さん
佐倉さんは 本当に お気の毒でした
心から お悔やみを申し上げます
どうも恐れ入ります
かけませんか?
ありがとうございます
君 医者を辞めたんだって?
今 何してんだ?
ここのママさんの ヒモです
先生 酔ってらっしゃるんだわ さあ 行きましょ
由紀子 俺は酔っちゃなんかいないよ
大石さんに話があるんだ
一宮さん 冗談にしても それはマズい
我々は見なかったことにするから 引っ込めなさい
大石さん
あんた これで私を撃ちなさい
大山さんを殺したのは私だ
あいにくだが 私は人を殺したことは一度もない
一宮さん 二度と こんな茶番はやめるんだ
やくざになるのは 医者になるほど楽じゃない
(一宮)うっ
(女性たちの悲鳴)
やめて! やめて! うちの店…
やめてー! うちの店や うちの店や
やめてー!
うちの店や うちの店や
うちの店や やめてえ…
うちの店や
(バーテンダーの わめき声)
(刺す音) (由紀子)うちの店や
(銃声) (バーテンダー)あああっ
(バーテンダーの うめき声) (由紀子)うちの店や やめてえ
♪~
(由紀子)うちの店や
うちの店や
うちの店や
うちの店や
やめて
うちの店…
うちの店や…
~♪
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