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・~
・~
・~
・~
・~
(汽笛)
(汽笛)
(男性)お疲れさまでございます (女性たちの話し声)
(男性)お疲れさまでございました
(女性たちの話し声)
(男性の話し声)
(倒れる音)
(男性たちの笑い声)
(話し声)
・~
(素直子)おはよう
(男性)「うきみそーちー」
何よ?
「ぬーが」
・~
「うきみそーちー」 「ぬーが」
「さようなら」
「ぐぶりーさびら」
ぐぶりーさびら
(桃子)♪昔 昔、 浦島は
♪助けた亀に連れられて、
♪龍宮城へ来て見れば、
♪絵にもかけない美しさ。
(ドアが開く音) そんなに のんびり入らないでよ
髪まで洗っちゃって… ドボンと一緒に入っちゃうわよ!
お断り じゃあ 早く上がってよ ホントに
・沖縄へ来たら 私が 主役なんだから
それとも あれかしら?
大村ツルさんに 会ったりする場合・
パパの新しい奥さんになる 桃子先生としては・
特殊な感情が働くのかしら?
だって 大村ツルさんは パパの昔の恋人
電話番号 見つかった?
自宅は見つからず お仕事のほうは分かった
電話かけてったほうが いいかしら
それとも バーンと一挙に お目文字したほうがいいかしら
お目文字できる スータンじゃないねえ このほこり
・(ノック)
今 駄目で~す! ・桜田です
今 2人とも裸!
・俺は もう すっかり大丈夫だ
大丈夫なんですって
悪かったな 2人じゃ この部屋 狭いな
そんな用だったの
いや~ もう ひとっ風呂 浴びたら・
酒も すっかり抜けて 気分爽快だから・
観光に行くんなら 案内してやろうと思ってな
介抱してもらったり 部屋を譲ってもらったり…
その おわびと お礼のしるしだ
そうか! おじさんは昔 沖縄に来てて 詳しいんだったわね
ああ… 沖縄の へそのゴマの数まで知ってるよ
あら 沖縄に へそっていう所が あるんですか?
いや~ 女郎屋のことだよ 女郎屋って分かるか?
こんな日本語は… 分かります! 栄町 十貫瀬…
波之上 コザ吉原
おじさんの頃は きっと… 辻遊廓
おお~
お姉さんの教育が 行き届いてるようだな
お姉さんですって
ウフフ… OK OK
じゃあ 早く着替えなよ
俺はロビーで待ってるからな
すいません! 私たち 単純な観光じゃないんです
いや… 複雑なほうだって 俺は 一向 かまわんよ
どんな複雑さだい?
人に会うんです! スータン…
そりゃあいい
俺も 実は 会いたい人間がいるんだ
分かった! 昔の その遊廓の…
なじみの女! そう!
…と 言いてえけれども 殺されに来たんだ 俺は
おじさん お酒 まだ残ってんの?
姉妹と言ったら笑ったけど 俺も 実は違うと思ってたんだ
どういう関係かね? ご想像に お任せします
どうも いけねえな
女ってやつは 何でも複雑にしたがる
単純にいこうよ 単純に
スータン! ・は~い
私 この方に 単純な観光案内してもらうわ
スータン 1人で行けるでしょ? 主役なんだもんね
♪(太鼓の演奏) (男性の掛け声)
♪~
まず 手始めに どの辺から行くかな?
まだ明るいし…
手始めに ちょっと…
(電話のダイヤルを回す音)
もしもし 南国観光ホテルですか?
社長の 大村ツルさん お願いします
え?
でも 大村ツルさんが 経営なさってると伺いましたが…
3か月前?
じゃあ そちらには 全然 いらっしゃらないわけですか?
では ご面倒でしょうが あの… ご自宅のほうの・
電話なり 住所なり お分かりにならないでしょうか?
どうかした? 何か 嫌なことでもあったのか?
何にも! きれい さっぱり
観光案内お願いします ああ
すいませ~ん ちょっとお伺いします
ここの前の社長の大村さん・
今 どうしてらっしゃるんでしょうか
(女性)ツルさんねえ…
どこに いらっしゃるんですか?
フロントじゃ 何にも知らないなんて…
大村ツルさんね ここを売って どこに行かれたのか 分かりません
な~んだ!
社長が 代わったんなら 代わったほうの 今の社長に・
バーンと 一挙に聞くだけだわ
いねえな… いねえもんだ
人を 殺せそうなやつは 一人もいねえや
ふやけた面ばっかりだ
桜田さんは 立派なお顔ですわ いや~ 俺は ひでえ顔してるよ
どうせ殺される側だからな
何で 殺されたいんですか?
残虐行為ってやつが あったじゃないか
あなたも 沖縄の女や子供を 殺されたんですか?
いや~ 俺は 女一人だって・
殺しちゃ もったいねえと 思ってるほうだからな
フフフ… しかし こっち側にも いねえんだよ
そのことに責任取って 腹を切ろうってやつも いなきゃ・
殺されてやろうってやつも いねえんだ
それで あなたが代表して・
代表殺され役社長ってわけですか
ウフフ… アハハ…
・桃子さん!
・~
よかった 1人じゃ 心細かったのよ
そうか 沖縄だから 女の子 1人じゃな…
生ビール 3つ! あのね…
2人なってから そのこと話しましょう
だって 遠いのよ まず ご飯でも食べて・
おなかに力をつけてから 出発と思ったんだけど…
じゃあ 分かったの? 遠い所って…
じゃあ そのホテルには いなかったわけ?
3か月前に ホテル 売っ払っちゃったんですって!
今 奥武島って所に 引っ込んじゃってるんですって
車で1時間以上もかかる へんぴな所らしいのよ
でも 母上に会えたんで安心したわ
奥武島の 何てとこに いらっしゃるの?
同じ名字で やっぱり大村さんって人の家
主役が お目見えするって 電話かけてくるわ
そうか 私としたことが 電話のこと すっかり忘れてたわ
場合によっちゃ・
こっちのほうへ来てくださいって 言えたのにな~
ところで その奥武島にいるのは 男なんだろうな?
残念でした! 女性!
いつごろ お帰りになりますか?
夕方には お帰りになるんですね?
どうも ちょっと存じ上げてる者です
失礼いたしました
何だか よく分かんないけど 船で どっかへ出てるんですって
帰りは 夜になるらしいわ どうする?
そう… でも 向こうへ行って待ってようか
4時間も5時間も 待つようになるわよ
じゃあ 出発だ!
これから南部戦跡巡りの 観光バスで行きゃ・
ちょうどいい時間になるよ
乾杯!
(女性)糸満市民は 海洋民族の代表的なもので・
その過半数が 漁業者を示しております
小さな くり舟に身を託し 7つの海を乗り切り・
遠く南洋辺りまで 漁業に出かける・
勇敢な 海の男として 有名でございます
また 主人の 留守がちなところから・
一家の経済 子供の教育 お隣近所のおつきあいは・
全て 主婦が引き受けているので・
糸満の婦女子は 少女時代から身体強健で・
勤勉倹素であることも 有名でございます
また 昔 糸満漁民の中には・
大変 珍しい風習がございました
それは 夫婦別々の 財産制であることです
夫が 海から取ってきたお魚を 妻が買い取り・
妻は それを売って 自分の財産にするということで・
漁民の中には 奥様はお金持ちでも 旦那様は たばこ1個すら・
ろくに買えないなんて方が いらしたそうでございます
(女性) こちらが 赤比儀幸地腹門中の 共同の墓でございます
沖縄では 親類 親戚のことを 門中といっております
その門中の集まりを 腹と呼んでおります
この糸満市には29の腹と 42の門中がございますが・
その腹で1つの共同墓地を 持ってるわけでございます
お墓の構造は 前にございます 4つのお墓が シルヒラシ墓で・
後ろの 大きなお墓が トーシー墓でございます
門中で どなたかが亡くなられますと・
まず最初に 前4つの シルヒラシ墓に安置し・
洗骨の後に 後ろのトーシー墓に・
安置することになっております
ところが こちらには 珍しい内規がございまして・
80歳以上 長生きをなさった方や・
一門で 手柄のあった方が 亡くなりますと・
直接 後ろの トーシー墓に安置されます
その反対に 7歳以下で亡くなった学童とか・
一門の名を汚した方は その いずれのお墓にも・
納棺することはできません
ただいま 皆様方に ご覧いただいております壕が・
ひめゆり部隊 戦士の壕 第三外科の壕でございます
この 米須付近には 野戦病院の壕が4つございました
本部 第一外科 第二外科
そして この第三外科の 4つでございます
各壕に 女学生が配置されましたが ほとんど全滅したのが・
この壕にいました 第三外科の方々でございました
第三外科の生存者は 僅か3名で・
ひめゆり部隊 戦士の壕でございます
昭和20年 6月18日 第一外科の壕から・
50m前方に アメリカ兵が 現れたと知らされましたので・
第一外科と第二外科の壕は 近かったので・
互いに知らせ合って その日のうちに壕を飛び出し・
避難いたしましたが…
この第三外科は 第一外科から・
よほど離れていたので 知らせることができず・
翌19日になって 初めて・
アメリカ兵が 近くに 来ていることを知ったのです
20日の未明を期して 脱出することを決めて・
19日の夜は 最後の分散会を催し・
生徒たちは 得意の隠し芸などを演じ・
最後に音楽担任の 東風平先生の音頭で・
『海行かば』と『別れの曲』を 合唱して・
会を閉じたとのことですが 翌20日の脱出ができず・
洞窟に入ったまま はかない最後を 遂げたのでございます
あっ もうビール終わりね
・~
スータン…
主役だから 許して!
「昭和12年7月 勃発した支那事変は・
遂に 大東亜戦争に発展し・
戦域は遠く東南アジアを蔽い 沖縄は死命を…」
「一大決戦場となったが・
戦いは 史上最大の犠牲を払って・
終末を告げた」
「その間 本県出身の・・
将兵 文民の逝いて 帰らざるもの・
また数を知らない」
「顧みれば・
諸霊は遠く祖国を離れ…」
「素直子 僕の妹 素直子」
「突然 こんな高校生の ラブレターのような呼び方をされて・
君は 不愉快になったかもしれない」
「しかし この妹という言葉は・
僕の血が 呼んでいるのです」
「僕の名は 大村鶴男」
「僕の 体の中には もしかすると 君と同じ・
菊地浩佑氏の 血が流れているかもしれない」
「僕は 小さいときから 父は いないものと思ってきた」
「が ある日 母に そのことを問うたとき・
母は 父である可能性のある 人の名を2つ挙げました」
「その一人が あなたのお父様でした」
素直子 やめなさい もう
「3月の初め 東京へ出てきた 僕は・
早速 君の家を捜し 君の家のことを調べた」
「しかし 僕は 君のお父様に会う気はなかった」
「僕は 君の家の庭先で 僕の妹を見た」
「いや 正確には 妹であるかもしれない人・
と言うべきだろう」
「しかし 庭を掃いている 君を見たとき・
僕は 信じてしまった」
「僕の妹 素直子」
いや~ いいとこまでいったのに…
もう いいわよ ねえ スータン
その兄さんに会うために もう ここまで来たんじゃないの
兄妹か… うん はらからだ!
「素直子 僕の妹」
「僕は 君のお父様や 僕の母なんかのこと・
そういう前の時代の人たちの ことなんかについては・
もう 何も言ったりしたり する気はないんだ」
「ただ 君を妹と呼びたい」
「そして できれば 僕が生まれ育った沖縄で・
君に 優しくしてあげたい」
「よかったら 夏休みに沖縄へ来ないか?」
・~
寝なさい スータン
ちっとも 眠くなんかないわ
ツルさんが 帰っていらっしゃる までには 時間があるわ
しばらく 横になってなさい
ほら
(鳥の鳴き声)
(波の音)
・~
(男性)ツルさ~ん お客さん… 座っちょんど
(波の音)
(波の音)
小藤田桃子と申します 突然 お伺いしちゃって…
お忙しいところ 申し訳ないんですけれども・
ちょっと 時間をお借りしたいんですが
(ツル)忙しい身分じゃないけど・
人に 物を頼まれる身分でもないのよ
今朝 東京から着いたばっかりなんです
遠い所を ご苦労さま
…と 言いたい時代じゃ なくなりましたわね
あの… お宅へ戻ってからじゃなくて・
今のうちに急いでお話… どうぞ
菊地浩佑氏 菊地判事のことですけど…
最近の消息は ご存じでしょうか?
お嬢様と2人暮らしだってことは 何年か前に
その… 菊地氏のお嬢さん 素直子さんと・
あなたのご子息の鶴男さんが・
兄妹だということは ホントですか?
それが どうかしましたか?
大村鶴男君は 菊地家の庭先で 姿を見たと言って・
素直子さんに 手紙をよこしました
それで?
「君を妹と呼びたい 妹だと信じる」
「僕の生まれ育った沖縄で 優しくしてあげたい」
「夏休みになったら来ないか?」
フフフ…
素直子さんは 今 こちらへ来てるんです
(ツル)それで?
大村鶴男君が 菊地家の庭先で見たのは・
実は 別な人だったんです
あなただったってわけ?
はい アハハハ!
鶴男が あなたを見て? アハハハハッ!
笑わないでください ウフフ…
あなた 人が泣いたり 笑ったりするのを止める権利・
どこで手に入れてらしたの? 東京?
私…
ああ… あなた 菊地家に いらっしゃる方なのね
いいえ これから そうなる予定の…
それで?
素直子は その行き違いを 何にも知らずに・
鶴男君に 会いに来たんです
会わしちゃいけないと思うんです
お母様に ご協力いただきたい と思って参りました
よろしくお願いします 私に どうしろと おっしゃるの?
素直子が聞いても・
鶴男君の居所を 言ってほしくないんです
教えるも 教えないも・
私 今 鶴男が どこにいるのか知りません
捜せと おっしゃれば 捜すことはできますけど…
素直子さんは 別として…
あなた 鶴男にお会いになりたいの?
分かりました
じゃあ 私 素直子さんに 会わなくてもいいでしょ?
どういう言い方でもいいから・
あなた 素直子さんを連れて お帰りなさい
それじゃ
桜田さん あまり遅くならないうちに・
帰してくださいね い~だ!
もうビール飲んじゃ駄目よ
ビールどころじゃねえよな ホントは…
おじさんも ごまかされたような 気分ですか? 眠ってた間に…
一体 あんな島に 何しに行ったのかね
スータン!
パパが あした来るって! え~?
フロントにメッセージがあって・
あした いらっしゃるって 電話があったそうよ
パパ 何しに来んのよ~
あら 素直子ちゃん 聞いてなかった?
体が空いたらって おっしゃってたじゃない
聞いてない 聞いてない そんなこと 全然聞いてない
もし聞いてたら 私 初めっから来なかったわ
だって このことは パパに 初めっから秘密にしてたじゃない
そうか 桃子先生 スパイだったのかって気がしちゃう
バカ言いなさい スータン
そりゃあ信じてるけどさ… でも 今晩は帰らないわよ
さあ いこう いこう でも 泡盛って強いんでしょ?
あんたも ごまかされたと思ってるんだろ?
臭い…
うん 俺も 臭いと思っとるんだ
大体だな… あんな遠い島まで行って・
電話で ちょろっと話 しただけで 帰ってくるってのは ひどいよ
鶴男っていうのは 君に任せるとしてもだな…
おふくろさんの ツルさんって人には・
俺は 会う権利か義務が あったんじゃないか?
第一 会わなきゃ 鶴だか アヒルだか分からないよ
おい! そんなに飲んで大丈夫かい
泡盛ってのは ゆっくり ちびちびと飲むもんだよ
・(男性)お二階のお客さん 一曲いかがですか?
おう 上がれ!
一杯 いくか
ん~ 何やってもらおうかな?
まあ 優しいところで・
『安里屋ユンタ』辺りから 始めるか
♪マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ
♪(ギターの演奏) ♪サー 君は野中の
♪いばらの花か サーユイ…
あんちゃん 合わねえじゃねえか
(男性)♪悲しさに 涙もかれて しまうほど
あんちゃん! 何だそりゃ
♪夜の池袋
すいません 沖縄の歌 歌えないんですよ
てめえ 本土から流れてきたのか?
そんなようなもんです
あら?
おいおい! スータン!
消した跡があるわ やっぱり…
ええっと うきみ うきみ…
うきみそーちー うきみそーち?
ぐぶりーさびら
ぐぶりーさびら
何だ? ありゃ
ひでえ時代になったもんだ
スータン! あの手の者には・
どんなことがあっても 近づくんじゃないぞ!
昔は 沖縄人は 沖縄人らしく・
日本人は 日本人らしく していたもんだ!
殊に 沖縄の女は…
俺ごとき者が 軽々しく 口にしちゃ申し訳ないほど・
心映えが美しかったもんだ
泣かないでください 私まで 泣けてきちゃう
そうか スータン…
お前は 心映えの美しい女だ
しかし まあ… そういうわけにも いかんだろうな
もう 帰ろう 帰ろう!
・(男性たちの話し声)
(男性)ここじゃ タクシー拾えないよ
向こうの路地まで歩いたら?
そうか… 君も あれだな
こんな所で あれしてないで 自分の生まれた所へ帰るんだな
はい そうします
じゃあ 君の知ってる歌 いこう!
♪貴様と俺とは 同期の桜 ♪(ギターの演奏)
♪同じせんこうの 庭に咲く
♪咲いた花なら 散るのは覚悟
♪みごと散りましょ 国のため
♪貴様と俺とは…
「兄」
「やっちー」 やっちー
「妹」
「うない」
うー? 「うない」
うーない? 「うない」
「父」
「すー」 すー?
「優しい」
(沖縄語)
「優しい」って沖縄語 ねえなあ
「夏休み」!
夏休みは 夏休み
(小銭が落ちる音)
アハハハ! アハハハ…
おい! タクシー!
お~い!
ぐぶりーさびら
またやー
え?
「またな」ってことよ ウー!
(フロント)おはようございます もう コーヒー飲めるかしら?
(フロント)はい お持ちします お願いします
(フロント)お客様 715号室でしたね はい
(フロント)まだ お休みかと思いまして 控えていましたが…
お手紙が届いてます
持ってらした方は?
(フロント) さあ ちょっと分かりかねます 私は 直接お受けしたものでは・
ございませんので…
何でしたら お調べいたしましょうか?
いえ 結構です
おはようございます おやすみ
・~
(フロント)お待ち遠さま
眠いのに…
起こしたりするのは だあれ?
大村鶴男さん?
何だ~ ママか…
寝てなさい パパの飛行機は12時よ
お迎えに行くまで スータンのスケジュールは ないわ
スータン 行かない!
素直子 旅行先なのよ わがままは 許しません!
わがままじゃない! パパなんかに 会いに来たんじゃない!
大村鶴男君に会いに来たんだい!
このまま諦めるもんか
そんなスータンとは 訳が違うぞ!
なっ スータン
どこ行くの?
ちょっと浮気 パパが来る前にね
いや~ 結構 結構 大いにやってくれたまえ!
君も大人になったな~
・~
・~
9時 壺屋
おじさん 寝てんの?
起きてるの?
(男性)寝てます いいんですか?
9時40分ですよ
そんな時間に 私にすることがあるかな?
ねえ! こういう人 知らない?
ああ…
ああ… 今日は いないようだな
彼に 何か用ですか?
人を捜してるんで…
あの人に そのこと相談しようと思って
沖縄人の知り合いって あの人 一人なんだもん
あんた やまとんちゅーですか?
おじさんの目 怖い
そう見えますか?
うん でも そんな怖い顔で 見なくても大丈夫
私 沖縄に親戚があるの 一人だけ
その人 捜してるのよ
つまらない人を捜してるんだな
おじさんも 誰か捜してるの?
ああ… 私の目を怖いと言ったね
あんた子供にしては いいとこ見てるよ
私は 殺す値打ちのある日本人を 1人 捜してるんだ
あっ! 私 警察行こう
何?
違うのよ! スータンは 親戚 捜してもらうために行くのよ
・~
・~
・~
こんな名簿で 分かるわけないじゃない!
第一 家出人じゃないんだから
(警官)しかしな 母親んとこを出て 分かんないといや…
これを 見てもらう他 ないんだけどな
あとは変死体名簿だとか 犯罪者 犯罪容疑者名簿…
バカ! 私の兄は 犯罪者じゃありません
優しいもん
ね~え! パトカーで スピーカーか何かでさ…
「大村ツルさんの子供の 大村鶴男君いませんか?」
そのぐらい やってくれたって いいじゃないの 私急いでんだから
いや~ 君は 愉快なお嬢さんだね
愉快なんかじゃないわ! 泣きたいくらいだわ!
大村ツルさんの子供の 大村鶴男さ~ん!
(国吉)君… 今言ったこと もう一度 言ってごらん
私 何も悪いことなんて 言ってません 捕まえちゃ 嫌!
ツルとか鶴男とか言ったね? はい
大村ツルさんの子供の 大村鶴男
で その人が?
お兄さんです! 捜してるんです!
(国吉) そうか 菊地素直子君というのか はい
大村鶴男君には 僕が・
きっと会わせてあげることが できると思うよ
ありがとうございます でも どうやって?
奇遇と言うべきかな…
僕が その 大村鶴男君の 父親である可能性を持った・
もう一人の男だよ
大村鶴男君の父は うちのパパ 菊地…
僕は 国吉真幸という
君は この名前を 一度も 聞いたことはなかったかね?
ありません
君… お昼でも一緒に食べながら 話そうか
でも お昼にはパパが来ちゃう!
ほう… うん!
じゃあ 僕も迎えに行こう
・~
(男性)どうだった? 素直子
鶴男さん? (鶴男)ああ
きれいだったろ?
9時の壺屋 10時の石畳 11時の ここ
まあ 那覇の近くじゃ この3つぐらいなんだ
やり方が カッコ良すぎるわ
ごめん ごめん じゃあ 一緒に飯食いに行こうか
もう時間がありません
今度いつ会う? 素直子
あしたの朝 今日と同じ方法で連絡して
大村ツルさんという人を 僕は 君のお父さんに・
僕の妹だと言って紹介したんだ
もちろん本当の妹じゃなかった
でもね 自分より年下の女性を そう呼ぶ感じ…
分かるか?
はい 分かると思います
だから 君のお父さんが・
大村ツルさんを 好きになっても しかたがなかったんだ
それで 結局 僕と 君のお父さんとの両方が・
大村鶴男君の 父親かもしれないという…
まあ 状態になってしまった
もちろん ほんの短い間のことで・
ツルさんは すぐ 沖縄へ帰ってしまったけどね
そういうことは 無責任すぎませんか?
あれは暑い夏だったなあ
京都の夏は 沖縄と同じくらいに暑いんだよ
大学生なんて 自分じゃ 大人だと思ってるけれど・
若いってことは イコール 無責任 ということかもしれんよ
素直子君
(乗客たちの話し声)
パパ! (浩佑)おう
来なくてもいいのに
小藤田君 どうした? パパ あの人…
あの… 国吉だよ 菊地
おう 国吉か
偶然 お嬢さんに会ってね
私用だから 事前に連絡はしなかったが・
君に会いたかったんだ
今晩 一杯やろう ホテルは?
コウワ だったかな?
じゃあ あと 連絡する
どうだ? 沖縄は楽しいか?
(案内人) 判事殿は ご存じでしょうが ここがコザ市です
人口およそ6万
基地依存の町で・
沖縄というよりは むしろ アメリカ合衆国の一部ですね
ひところ マリファナ 大麻などが 1日 1万ドル分 動き・
ピストルや機関銃が 5ドルから30ドルで出回ってました
復帰した今でも 基地流れの品が 安く買えますよ
うわ~ 面白そう! この辺で 私 降りちゃってもいいのよ
素直子さん…
だって こんなチャンスは なかなか ないと思うよ!
菊地判事は 忙しいし・
家庭サービスなんか する人じゃないから!
2人だけで新婚旅行の予行演習 っていうことにしたら どう?
あの~ 私も 降りても ようございますが・
国吉部長から 言いつかっておりますので
いや~ 君 冗談だよ 続けてくれたまえ
(案内人) この歓楽街が 通称 センター
ベトナム帰りのGIの天国で 我々は近づけません
沖縄の売春婦は 公称1万人
推定1万2000~4000人
人口およそ100万の中の 1万でしょ?
100万のうち 50万が女性として・
そのうち 25万を老人 子供と見ても…
ねえ! そんな数字ばっかり 言わないでさ
このコザの吉原とかいう所の 女の人たち・
みんな どうなっちゃったの?
コザ吉原の売春婦は・
3000をマークしたことも ありましてね
美妓3000 これが本土観光客には 魅力の一つだったんですね
何しろ 売春防止法で たまりに たまっている上に・
「旅の恥は かき捨て」 といいますから・
タイム つまり ちょんの間 10ドル
オールナイト 泊まりですね 20ドルで女を抱くんですよ
いやっ お嬢様の前で こりゃどうも…
パパは そんな女の人 買ったことあんのかな?
(浩佑)友達の中には そんなの たくさんいたさ
つまり 国吉部長さんなんかね
(浩佑/案内人)アハハハ…!
パパだって信じられないぞ ねっ 桃子さん
そう 信じられないわ
信じられなくても 別にかまわん
楽しいご家族ですね 同じ裁判官のご家庭でも・
やっぱり 本土の方は違うな 民主的だ
いや 民主的すぎて いろいろ問題がある
そう 娘は沖縄に着いた晩から ボーイフレンドと夜遊びするし
そう! 婚約者は 朝から浮気してきたし
パパも今夜あたり 女でも買うか (拍手)
♪昔 昔、 浦島は
♪助けた亀に連れられて、
♪龍宮城へ来て見れば、
♪絵にもかけない美しさ。
・~
・~
・~
じゃあ すいません すぐ… じゃあ スータンも
(浩佑)スータンまで めかし込むことはないぞ
今夜は旧友 再会 パパが主役だからな
715 お願いします はい (フロント)715
菊地素直子様ですね はい
(フロント)お手紙が届いております
どなたから? 国吉真幸さん
万歳! スータン万歳! やっちー 万歳!
素直子…
沖縄語で兄さんって言ったの
会えるのよ! 大村鶴男さんに
いつ?
夜の居場所しか 分からない人なの
私 これから行く 宴会なんか行かない
ねえ パパに言って お願いします! 先生 母上様!
じゃあ 素直子は 大村鶴男さんに 会いに行ったって・
言えばいいわけね
バカ! 先生とスータンの 美しい秘密じゃないの
おなかが痛くなったとか 熱があるとか・
何とでも言えるじゃないの
乙姫様!
腹痛ね… きっと私に看病しろって言うわね
(女性)お見えになりました
お待たせしました つい 本部まで行っちゃってね
相変わらず 君は まめな男だな
お嬢ちゃんの他に もう一人と聞いたけど・
また 嫁さん もらったのか?
まだ予定中なんだ この秋ぐらいにね
さっき 飛行場で ちょっと見かけたが…
どうして ここへ 連れてこなかったんだ?
うん… 若いときってものは いろいろ ややこしいもんらしいよ
(2人)アハハハ…
菊地判事の令名は とどろいているからな
ご高説を拝聴したい というやつは多かったが…
今夜は とりあえず プライベートな人間だけにしたよ
それから こちらは 照屋林徳君
今の沖縄で本物の歌を聴かせる 数少ない一人だ
沖縄のものは戦争と占領で 何もかも無くなってしまってね
琉歌と沖縄語の中にしか 沖縄は残っていないんだよ
菊地です
今夜は 大いに飲もう! (浩佑)ありがとう
照屋さん お酒のほうは?
この人は 歌う前だけは 飲まない人なんだな
それ以外は… じゃあ いつも飲んでいらっしゃる?
アハハハ…
・(女性)お見えになりました
わざわざ お呼びいただきまして どうも
(国吉)あ… こっちこっち
遅くなって ごめんなさい
仕事辞めたら 怠け癖がついちゃって
ツルさん しばらく 菊地です
ウフフ… ごめんなさい
でも もうツルさんなんて 格好じゃないでしょ?
いや~ そんなことは…
お久しぶりでございます
本当に しばらくでした
国吉部長 こちら 沖縄 初めてでらしたかしら?
俺は 知らんよ こいつは まめなやつだからな
初めて? いや 全く初めてだ
(2人)ウフフ…
素直子 こっから先は 大人しか入れない所
私が 捜してきてあげるから
だって 私 ゆうべ この先で 泡盛だって飲んだんだから
でも それは 桜田のおじさんと 一緒だったんでしょ?
こっから動かないで待ってなさい
だって こんなとこに じっと立ってたら…
間違えられちゃう スータン
あんたは 誰が見ても まだまだ 単なるスータンよ
い~だ!
(鶴男)よう!
いけねえ 桃子のバカ! 声かけられちゃったじゃない
(鶴男)よう
ああ… 助かった
桃子のバカ!
スータンは 単なるスータンに すぎないから・
声なんか 絶対に かけられないなんてさ
それなのにさ 「よう」なんて 言われたからさ
スータンさ ホント…
お前 スータンか?
うん 素直子
名字は?
菊地よ
こんなとこで何してんだ?
大村鶴男さんって人 捜してるの 協力してよ
この辺で あんたみたいな 式の仕事している人らしいのよ
今 桃子ママが捜してるんだけど あいつ 当てになんないからさ
その… 桃何とかってのは 何だよ
パパの再婚相手の 意地悪ばばあよ
お前んとこも 複雑なんだな
・~
(女性)どうぞ
こんばんは やっぱり来ちゃいました
素直子ちゃんは ホテルへ帰ってます
さあ そっちへどうぞ
(浩佑)ご紹介します 小藤田桃子君
娘にピアノを教えていてね…
まあ さっき言ったような訳の人だ
どうぞよろしく
国吉です
大村です
まあ どうぞ
若い人が そんなに硬くなってないで・
足でも出して 楽になさったら? 肩が張りますよ
もんでやろうか?
菊地 歌えよ
え? 何を?
俺が歌うか!
♪京大出てから二十年 ヨイショ
♪今じゃ あんまの大将で ヨイショ
♪一たび 指令を発すれば ヨイショ
♪集まるパンマが五万人
相変わらず 下手くそね ご苦労さま
あなた いかが? 若い人には 適当かもよ
ああ… お疲れのようだね
♪京大出てから二十年 ヨイショ (手拍子)
♪今じゃ東京の…
ウフフ… フフフ…
俺も 相変わらず 下手か
(ツル)いいえ ウフフ…
菊地!
お前 これじゃ 自分の娘と 結婚したようなもんだな
いや うちの娘は まだ中学生だよ
あれは ホテルで1人か?
ごめんなさい
素直子さん ある男の人と会ってます 街で
その人を 好きになったみたい
私 食い止めることが できませんでした
それは どういう男だ?
もしかしたら 大村鶴男さんっていう人
ツルさん あんたの子供は 鶴男というのか?
だって 私の子供ですもの
アハハハハ…!
そんなことが 起こるかもしれないと思って・
追いかけてきたんだが…
♪(三絃の音)
(照屋)歌にしましょう いずれにしても・
殺し 殺されるという 話では ないでしょう
(2人)♪シルバー仮面は
♪さすらい仮面
♪銀の光に 流れ星
♪淋しいときには 呼んでみる
♪兄よ 妹よ 弟よ (男性)よう! 流しの兄妹!
(沖縄語)
もう捜すの やめ?
んん? 少しは稼がねえとな それに情報もな
(男性)おい こいつら ホントの兄妹じゃねえぞ
(男性)そんなこと 決まってますよ うまいことやってんだよ こいつら
え~ 何やりましょうか? (男性)「泣くな妹よ」 やってくれ
えっ? 何ですか その歌
バカ! 『人生の並木路』知らんのか
すいません その歌 知らないんで・
ちょっと頭のほうだけ 歌ってください せ~の…
(2人)♪泣くな妹よ
♪妹よ泣くな
♪泣けば幼い ふたりして
よう 歌え!
(2人)♪ふたりして
♪故郷を捨てた 甲斐がない
♪暗い さびしい 日暮の路で
♪泣いて叱った 兄さんの
♪涙の声を 忘れたか
♪生きてゆこうよ (ドアが開く音)
ん~?
お前ら こんな所で うろうろしてたのか
スータン! 君は… 君は なんということだ!
兄貴を捜すという 大望ある身でありながら・
こんなやつと つるんで のんきに歌なんか歌って!
何だ このじじい!
い~や な… 何でもないです 何でもないです
アハハ… ではでは 行こう 行こう…
おじさん…
おじさん!
沖縄の歌 聴きたいって言ってたね ああ…
今日やってるよ 俺の先生 おお 行こう 行こう
うん 俺が 教えてやるよ
そんなこと言わないで 一緒に行こうよ
俺たちは みんな兄弟みたいなもんだよ
なあ
♪(歌声)
♪~
♪~
あなたと 縁を結んで 月を数えてみたが・
僅かだけれど 別れなければならない 国のために
諦めましょう 愛しい人よ
♪(照屋の歌声)
♪~
♪~
あなたは 軍人なのに なぜ お泣きになるのですか?
笑って 戻ってくるように 願をかけています
それも国のため さきもりよ
♪(歌声)
♪~
♪~
・♪~
う~ん いい 実にいいねえ
・♪(照屋の歌声)
ヤバい… え?
な~んだ! ここパパたちの宴会だ
あの正面にいるのが パパか?
うん 私と 大村鶴男君のパパ
パパの隣にいるのが さっき言った 何とか ばばあか
そう! 小藤田桃子ばばあ
方々 捜しといてやるよ
主に どこら辺? フフフ… さすらい仮面だからね
待って!
スータン…
♪(照屋の歌声)
こんばんは
♪~
お邪魔します
♪~
思い出した!
きれいになったんで 見違えちゃった!
おじさん! この人が 殺すほうの人なのよ
歌う おじさん! この人が 殺されるほうの人なのよ
素直子!
だって お互いに 会いたい 会いたいって言ってたんだもん
そうか…
桜田拓三と申す
照屋林徳
まずは ゆっくりと
歌は 終わりにします
(拍手)
国吉君 これで もう失礼していいかな?
今日は 家族連れだからな
またあした 場所を変えてやろう
そう また やりましょうよ
それじゃあ 素直子… パパ!
この方 私に紹介してください
私は 菊地素直子です
だって もう お分かりに なってるでしょ? 素直子さん
裁判長!
この婦人に 正しく姓名を 名乗らせてください
大村ツルでございます
被告 大村ツル
被告は 何故に 菊地浩佑を愛しながら・
更に 国吉真幸を愛すことによって・
訳の分からない子供を 作ってしまったのか
(2人)アハハハ…
いやあ 申し訳ない 文字どおり 失礼をした
改めて おわびは申し上げるが…
今日は とりあえず これで・
閉廷ということにさせてくれ
次回は 明 8月3日 正午
場所は 改めて本官より通知する 被告人も よろしいな?
はい
では 全員 起立!
(国吉)礼!
(男性たちの話し声) ♪(ギターの演奏)
♪~
♪~
・~
気分がいいな
やっぱり 朝 早く起きると気分がいい
あっ 素直子 違う
餌を そんなふうに付けるから 駄目なんだ
どうせ 私は お魚に餌をやりに来たんだ
自分で ちゃんと釣らないと 朝飯のおかずは ないぞ
パパ 自分で釣ったお魚 自分で食べちゃうの?
私なんか とってもかわいそうで 食べらんない
桃子ママ 食べられる?
嫌! やめて! これ 食べんのよ
うん… 君も そのうち・
魚の下ろし方ぐらい 習っとかんとな
私… 自信ないわ
な~んだ 一匹も釣ってないじゃない
パパに怒られるぞ 頑張ろうよ
無念無想 雑念を払い…
さお先は 見るでもなく 見ないでもなく…
糸は波の たゆたいに任せる
んっ! 手応えあり!
パパ 大人物だな!
ひょっとしたら 昨日のこと 怒らないかもしれないわよ
あっ… あっ! お魚が さお釣っちゃった
あ~あ どんどん持ってっちゃう
龍宮城まで持ってくのかしら
僕のを使えよ
まだ 釣ります?
釣らないで どうするんだ?
私 お話ししなきゃ ならないことが あるんです
聞いていただきたいんです
何だ 改まって 東京へ帰ってからでいいだろう
今は 楽しい旅先だ
いいわよ いいわよ 話しちゃいなさいよ
私 聞いてないから
東京で 叱られるなんて嫌だもん!
素直子さんにも 聞いてほしいの
何にも聞こえない! 何にも聞こえない!
船頭さん 帰るよ
(リールのハンドルを回す音)
(エンジンがかかる音)
笑っちゃ嫌ですよ
怒られても しかたがないけど
何だ?
事の起こりは 私が素直子さんと 間違えられたことなの
告げ口にも礼儀があるわよ! 桃子先生
大村鶴男さんが 先生のおうちの 庭先で私を見て・
素直子さんだと思って 手紙を よこしました
「僕の妹 素直子」
「僕の妹 素直子」ねえ…
素直子さんに お手紙を見せられて 間違いが すぐ分かったので・
あとの お手紙は 私が 全部 処置しました
でも… 最初のお手紙に 書いてあったんです
「夏休みは 沖縄へ来い」
「兄として 優しくしてあげたい」って
それから?
私 昨日の朝 鶴男君に会ってきました
笑わないでね
私 素直子として 振る舞ってしまいました
優しくしてもらったか? まさか…
長すぎる 長すぎる!
私 そんなに たくさん 悪いことしてない!
ゆうべも言ったように・
素直子さんも 鶴男君に会っちゃいました
鶴男君は すぐ間違いに気付いたんでしょう
2人は ひどく穏やかに 話してました
それ以上のことは なかったと思います
でも 私としても 決まりをつけたいので…
今朝 これから 鶴男君に会ってきたいと思います
よ~し 食ったるぞ 食ったるぞ!
誰が釣った魚だろうが 魚は単に魚にすぎない
スータンが 単にスータンに すぎないのと・
おんなじことだ チクショー!
待ちなさい 素直子! これから がっちり私を 怒る気?
素直子 耳を塞ぎなさい
は~い
鶴男君に 連絡は取れるのか?
取れるようになってます
(浩佑)会ってきたまえ 俺も会ってみたいな
何なら 午後のパーティーに 連れてでもくるんだな
スータン ご苦労さん
そろそろ焼けたぞ~ さあ ほら…
・~
・~
・~
・~
・~
・~
・~
素直子…
僕の妹
私…
座ろうよ
「しかし 庭を掃いてる君を見たとき・
僕は 信じてしまった」
「僕の妹 素直子」
どうして そうだったのかしら?
素直子 君に優しくしてあげたい
優しくって 何をするの?
君の してほしいことをする
君は 庭を掃いてた
(鶴男)君の髪
(鶴男)君の肩
(鶴男)君の手
(鶴男)素直子…
鶴男さん
私たち 兄と妹
かわいい…
君の唇
・~
桃子のバカ野郎!
ギターのバカ野郎!
鶴男を捜しもしないで あんなことを…
・~
チクショー!
沖縄なんか 日本に 帰ってこなきゃよかったんだ!
ツルさん あんた いくつよ
11歳
まだ つまり ひめゆりまで行かない・
ただの つぼみだったわけだ
あんたは?
俺は もう皮むけてたな
沖縄健チン隊だもんね
そう 死んでりゃ 今頃 健チンの塔よ
死んだやつで いつまでも 立ったままのがいたな
弁慶の立往生ね
弁慶ってのは 意外に小さくて 一生やれなかったそうだぜ
あれは 義経と おかまだったんだろ
義経は 健チン門院じゃなかった 建礼門院と やったんだろ?
おたくは おいくつですか? お話は お嫌いですか?
いや エロ話は いつ聞いてもいいですな
どんどんやってください
あのころの辻町には いい女がいたな
優しいっていうのか 何ていうか…
体中が これ セックスのような…
そこんとこ もうちょっと ひとつ 具体的に
ウヘヘ… いや~ 初めに手を突っ込んだときから・
膝の所まで ぬるぬるなんだよ
病気じゃないかと思って 飛び上がったよ
ところが やり手ばばあに聞いてみたら・
「あの子は 5日も客を取ってない」 って言うんだな
いや~ 情熱的というか そのサービス精神ってのは・
もっと深い所から生まれたんだな 沖縄の女は
羨ましいなあ
僕らには まだそういう経験が… 何を言うんですか!
こういう人が おるじゃありませんか
お願いするんですよ
そりゃあいい
第一 やり手ばばあからして 違うんだな
金は いくらかって聞いたら・
「そんなもの後でいい」 って言うんだ
後ってのは あしたの朝かって言ったら・
「内地へ帰るときでいい」 って言うんだ そんなのある?
ありませんね~
面白かったのは あれだな
知事さんだって 町の偉い人だって・
毎日 ここで どんちゃか宴会をやってるんだ
それを聞きながら 居続けさ
とにかく 俺が 内地へ帰るまで・
女は 他に お客を取らない って言うんだから…
龍宮城だったよな
俺は 浦島太郎になってもいいと 思ったよ
お土産もらったでしょ? いや~ 病気なんて とんでもない
しかし それも 今は もう昔の夢だ
開けて悔しい玉手箱
今は 上下 白髪の おじいさん
(笑い声)
うん じゃあ ひとつ 照屋林徳の前だが・
歌わしてもらおうか
♪昔 昔 へその下
♪助けた亀の へその下
あら?
・~
素直子 こっちへ来いよ
嫌! 面白そうじゃないも~ん!
素直子検事としては・
昨夜の 公判の続きは やらなくていいの?
・~
お前 よせよ
どうせ うそつくんでしょ?
いや! 俺が 今まで話したことに うそも誇張もないぞ!
じゃあ 殺されてみろ
素直子 何のことだ?
おじさんだって 殺すって言ったじゃない
ホント お二人は ゆうべから 不思議なムードですけど・
ホモでも なさそうだし…
どういうご関係?
私が この男を殺す それだけです
時間を決めてください
何事にも なすべき時というものがある
いささか 時 既に遅しという感が なきにしも あらずだな
今からでも遅くないわ
パパだって 今からでも遅くないわ!
(浩佑)何が?
スータン 国吉さんに聞いちゃったんだもん
お前… 何言ったんだ?
まっ ホントのことか うそのことか 分かんないんだけど
この際 戦争中の残虐行為については・
全て 正直に言ったほうがいいよ
そのとおりだ 軍人だけじゃなくて・
裁判官だって 責任は問われなければならない
冗談じゃない 僕は まだ 中学校に入ったばかりで…
むけてさえも いなかったよ
それと 念のために お断りしておきますが・
沖縄へ来たのは これが初めてなんです
じゃあ あんた… つまり沖縄とは 何の関係もないというわけか
そういう人と 私は 同席したくないな
私が 動くのも何ですから そちらさんは・
もう国際通りで お土産でも買って・
さっさと 退散されたらいいでしょう
パパ 沖縄との関係を 照屋さんに お話ししたら?
うん じゃあ話そうか
ちょっと待って!
どうぞ
あれだな 国吉
ところで あのころ 俺は お前が 沖縄の人間だってことを・
そう意識して つきあってたわけじゃないけど…
一体 お前 あのころ 復帰とか沖縄独立について・
一体 どの程度の考えを 持ってたのかな?
いつよ それ?
そういや あれは 講和条約が 結ばれる前後のことだったけど…
じゃあ 国吉 お前なんか どんな手続きを取って・
日本へ来てたんだ?
あんときは お前を見ても・
そんなこと 考えたこともなかったけどな
フフフ…
私のために ちゃんと教えてください
忘れちゃったな
大変だったのよ
やむをえない 人道上の理由
日琉占領軍の 軍事機密保護に マイナスにならぬ場合に限り・
日琉間の旅行を認める
そういう規則があったのよ
本土に 身元引受人を探したり・
申請書を出しても 民政府から米軍政府・
それから 在日第8軍司令部へ たらい回し
許可が下りるまでには 2~3か月
ひどいときには 半年も かかったの!
いっそ 密航したほうが ずっと ましだったわ
まあ いずれにしても 素直子さんが生まれる前の話よ
今は こうして みんな楽に・
行ったり来たり できるように なったんだから いいじゃない
そういうふうにして渡ってきた ツルさんを・
妹だと言って 紹介したのね
ああ 妹だと言っときゃ 手を出さないと思ったんだけどな
しかし 僕は 君にしても ツルさんにしても・
沖縄人だからって そんなことをしたんじゃない
友人の妹を 好きになるってことは 普通の感情だろう
普通の感情から・
どうして 普通じゃない子が 生まれるんです?
あら 鶴男は普通の子よ
どっか変わったふうに見えた? あなた
私 まだ会ってないから 何にも分かりません
(ツル)ホント?
じゃあ どうして 普通の子じゃないなんて言うの?
だって パパの子供かもしれない
国吉さんの子供かもしれない
そんな両方の可能性のある 子供なんて普通の子じゃないわ
ツルさん 復帰後の 今になって 謝るのも 何だけれども…
あんた どっちに ホントの可能性があったか・
今 言ってくれても かまわないんだよ?
♪乙姫様の御馳走に、
♪鯛や比目魚の舞踊、
♪ただ珍しくおもしろく、
♪月日のたつのも夢の中。
先生…
大村鶴男さんです
うそつき!
スータン あなたは そう思ってないで会ってたけど・
この人が そうなの
へえ~ そうなの! こいつが大村鶴男さんなの
そうですか? そうよ
そうですか? うん
みんな うそつき!
みんなで 私を だまそうとしてるんだな パパ!
いや うそも ホントも わしは今 桃子に紹介されて…
アハハハハ! アハハハ…
よ~し! じゃあ こいつが・
あなたと パパの間に生まれた 子供だっていうの?
それとも あんたと国吉さんの 間に生まれた子供だというの?
素直子! ツルさんを責めちゃいかん
君 とりあえず 今 紹介された線で 鶴男君だとして・
気を悪くせんでくれたまえ
何しろ状況が悪かったんだ
国吉君と僕が ろくに対話も できんような状態だったんだ
僕が最初にツルさんを 妹だと紹介されたとき・
国吉君は 金網の向こう側にいたんだ
それは動物園の金網ですか? 鳥小屋の金網ですか?
まあ そのころの僕は 酔狂だったが…
鳥小屋に入るほど 酔狂じゃなかった
ろう屋にいたんだよ 分かる? ろう屋の中のほうだよ
悪いことしたんだな
そのころの学生運動では・
ろう屋に入るなんて 珍しいことだった
まあ 少なくとも国吉は・
俺なんかよりは 真面目だったってことだ
まあドジだったってことだな いろいろと…
それで どうして 鶴男君が生まれたんですか?
国吉が出獄してくる前の晩に 僕は ツルさんを…
暴力的にっていう意味ですか?
俺が 出てきたとき・
菊地の口から そのことを聞いていれば・
また 話は別だったろうけど…
ツルさんのほうから 知ってしまった以上・
俺も やる以外になかった
それは 一体 何のためなんですか?
いや~ 分かる! それがいいんだ そういうのがいいんだ
友達のやった女と・
その友達のことを 思い出しながら 丁寧に…
一盗二ひ というくらいで 盗むということは最高!
いや… この場合は 先に盗まれた
つまり 盗み返すために 丁寧に…
良かったろうな なあ おい!
いや~ まあ つまり…
こいつの種に 先に着かれちゃ かなわない
もしも 着いてたとしたら せめて ごちゃ混ぜにしようと…
アハハハ!
部長! さすがに それは 立派なお考えでした
何しろ こいつは そのころ こいつが そばを通るだけで・
女は 腹が膨れると 言われたぐらいだからな
バカ! それは お前じゃないか
ロマンティックね~ 泣けてきそうなとこだってあるわ
でも 今の おば様 見てると ちっとも かわいそうに見えない
困っちゃうな~
素直子さん 私 あんたが好きだわ
ねえ おば様 本当に大村鶴男君は誰の子?
私の子よ
ウワー! スータン おば様が大好き
こんなやつが 鶴男君であるもんか!
でもね… スータン これが鶴男君なのよ
うそつき! 見たんだぞ!
そいつと桃子さんが 何をしてたか
う~ん 分かる 分かる 判事さんでしたかねえ…
あの婚約者も きっと ごちゃ混ぜが好きなんだろう
桃子!
はい
(浩佑)飲むか
おい! 偽者の鶴男! ああ
お前も飲むか?
おい ちょっと来い
私が言うのも何でしょうが… 大丈夫でしょうか?
何が?
そう 今度は 本当の兄と妹ということも・
ありうるからな
みんなで行きましょうか 散歩代わりに
いずれにしても… この世の中は男と女の2種類だ
いや 沖縄人と日本人の2種類だ
そのことも忘れちゃいない
おい! 沖縄語の これの ギター流しの…
鶴男を捜してくれるといいの 捜してくれずの・
桃子先生と う~ん しやがった野郎
男… 偽者の鶴男 菊地素直子に 約束しなさい
何だい!
こうなった以上 絶対に 大村鶴男君を捜し出します
難しいな… 俺には そういう才能もないしな
誠意の問題です 真剣さが足りないわ!
殺し 殺されるって 言ってる人もいるわ
…と してもだな 力が足んねえよ
でも お願い 私 あした11時の船で帰るの
あしたの11時?
それじゃあ もう絶望的だな
・~
ついてくるな~!
(鶴男)おい! 危ないぞ!
・~
真っ赤な夕日の夕方だった>
まだ仲良く歌ってたし・
ツルさんと国吉さんは 何やら しんみり 話 してた>
この辺の土地を売って・
もうけるという話だったような 気もするな>
ケンカをしてたみたいだったし・
やたらに 体をくっつけ合ってた みたいでもあったな~>
海から助けられたときのことは・
全然 ぼんやりして よく覚えてないけど・
あの助けてくれた あいつに 体を 優しく さすられたり・
何か ひょっとすると チューぐらいされたみたいな・
気がするけど…>
・~
一足先に飛行機で・
パパと一緒に帰りなさい と言ってあげた>
帰らないんじゃないかと・
すごく びくびくしてた>
私は うそつきじゃない!>
・~
ぐぶりーさびら
(話し声)
(汽笛)
お~い!
俺 ホントの大村鶴男だよ
そんなうそ 沖縄語で言ってみろ!
スータンはね もっと力をつけて また ここへ来て・
本当の大村鶴男君と会うんだ!
・~
・~
あいつら お魚 釣って また お酒飲むつもりだ!
・~
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