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(田沼意知おきとも)実は 我らは今➡
「蝦夷えぞち地」を上知あげちしようとしておる。➡
そなたも ひとつ 仲間に加わらぬか?
蔦屋重三郎。つたや じゅうざぶろう
♬~
(蔦屋重三郎)お断りします。
手前のことで 手いっぱいなんで。
♬~
そうか。
気が変わったら言ってくれ。
それから この話は他言無用で頼む。
花魁おいらんのためにもな。
花魁のため…?
お前 何で 「抜荷ぬけに」のこと聞いてきたんだ?
(誰袖たがそで)んふ。 手すさびに青本を。
何やってんだ?
た…➡
雲助くもすけと。
ここですることなんて一つしかありんせんよ。
ふ~ん 分かった。
カボチャに言う。
(大文字屋市兵衛だいもんじや いちべえ)花魁。あっ。
あの…。(大文字屋)ちょいと➡
「ぬクけケにキ」のカラクリ考えてみたんだがよ。
「ぬクけケにキ」?
さすがは おっとさん。
ぬクけケにキ…。
ぬけに!
1貫10両だから その差は10倍なんだよ。お前!
(大文字屋)松前のご家老様…。呑気のんきに 「ぬクけケにキ」なんて➡
言ってる場合じゃねえですぜ。
こりゃ 相当きな臭くせえ話で下手すりゃ 血だって…。
うっせえな!おおっ!
どんだけ うまい話だと思ってんだよ!花魁が あのお方に身請けされりゃ➡
おめえ どんだけ 金入ってどんだけ 名があがるか!
親父おやじ様…。
こんな うまい話 逃せるかってんだよ。
え~ どこまで話したっけ?
つまり 儲もうけは…。
(大文字屋)ざっと 8百両。(誰袖)まぁ。
(須原屋市兵衛すわらや いちべえ)四方赤良よものあから編「万載狂歌集」 100部。
ありがた山にございます。
よいしょ。
こいつは 横流しだぞ。➡
「抜荷」みてえなもんだからな。くれぐれも 店先では捌さばくなよ。
あの… 蝦夷地ってあるじゃねえすか。
急に どうしたんだ?
いや… 青本のネタ考えててどんなとこなのかなって。
ほう。 おめえ 少し暇かい?
へえ。
はあ~!
(須原屋)ここに松前家ってのがあってな➡
ここが 蝦夷地。➡
それでな こっから先は オロシャ。
どんな所か 行ってみてえよな。
ヘヘッ!ハハハ!
何で ここに印つけてんすか?
これはな…。
えっ!?
♬~
♬~
♬~
♬~
先生!
あからなのに!あかくない!
(大田南畝なんぽ)俺を見て 又また うたをよみちらすかと➡
皆の思はんこともはづかし。
天明三年。大田南畝 四方赤良が大ブレーク。
その勢いに乗って…。
<<お見えになりましたよ。(熊野屋)蔦重!つたじゅう➡
こっちへ きな粉もち!
ついでに 蔦重も大ブレーク。
おおっ これが!蔦重!
俺も買ったよ!
いいね!ごっつぁんです!
狂歌の指南書「浜のきさご」は飛ぶように売れ➡
そのほかの品も とても評判がよく…。
そうそう このころから 青本は➡
黄表紙と呼ばれるようになったんです。
時間が経たつと➡
青い表紙が 黄色に変色したからだそうで。
(ふじ)48文です。
とにかく 蔦重は江戸一の目利き「利者ききもの」と言われるようになったのでした。
(いね)はい ありがとう。
(りつ)重三じゅうざは戻ってるかい?ちょいと話があんだけど。
(ふじ)また お願いします。
(駿河屋市右衛するがや いちえもん門)何だ おめえも 今日 こっちか。
ここんとこ 重三郎が引っ張りだこで。
(いね)重三なら今日は 太夫の贔屓ひいき筋と相撲見物➡
そのあと 富本本の打ち合わせそれから 土山様との宴席だっけ?
はあ… 売れっ子の呼び出し並みだね。
風雲児ってやつ?
吉原よしわらに おんぶに抱だっこでなにが風雲児だ!
さて こちらは本物の風雲児➡
いえ 風雲爺ふううんじい様。
今や 田沼様は要職を田沼派で固め終え➡
息子を特例で奏者番に抜擢ばってきするなどの無双ぶりを見せつけておりました。
出来た!
願わくば 田沼様とは思へども➡
せめてなりたや➡
公方くぼう様には。
(長谷川平蔵宣以のぶため)さすがに 公方様は やり過ぎだろ。
(佐野政言まさこと)そなたら 何をやっておるのだ?
その波に乗り損ねた武士たちは➡
狂歌を嗜みたしな土山様にコネを作りに行く有様ありさま。
♬~
(土山宗次郎)わが庵いほは 都のたつみ…。
これは…350俵の組頭の屋敷ではなかろう。
田沼様の覚えがめでたければ➡
350俵でもこういうことも できるということよ。
しかし とても近づけそうにないのう。
何か よい手は…。
む? あれは…。
そうですか 和泉屋いずみや様は近頃 丁子屋へ。
(和泉屋)ハハハハハ!
で お前は? 次は 日本橋か?➡
ん?いやいやいや…。まぁまぁ。
ああ ありがとうございます。
(平蔵)蔦重。 蔦重!
長谷川様!
おめえ やりやがって!
使っておるぞ これ。
ああ! ありがた山にございます!
あのよ あいつらに 土山殿と見知りを作ってやりてえんだがよ。
あ~… じゃあ 行きますか。
♬~
おお! 来たか! 蔦唐丸つたのからまる!
へえ!
(土山)江戸一の「利者」は350俵の勘定組頭など もはや後回しか。
んなわけねえじゃねえですか!意地悪 言わねえでくだせえよ。
(土山)その者らは?
長谷川平蔵様と…。
本丸で番士をやっております➡
佐野…。(南畝)長谷川といえば➡
かの高名な火付盗賊改方のひつけとうぞくあらためかた ご子息の!➡
確か 吉原で極めて豪気な振る舞いをなさった!
ああ…。いやぁ ハハハハハ!➡
若気の至りでござる!
(土山)狂歌はなさらぬのか?(平蔵)これから始めようと。
ひとつ 赤良先生に大いにモテそうな名を お願いしたく。
では 稀代きだいのモテ男 在原業平ありわらのなりひらにちなんで➡
あり金はなき平で。
金はなくともモテると。
(笑い声)
私は 横山と申します!(南畝)横山様。
私は 縦川と申す!(南畝)縦川様。➡
では 2人あわせて 縦と横にちなんで…。
どうぞ おそばに。
よい。やはり 拙者は かような場は慣れぬし…。
そう おっしゃらず。
親の具合もようないので 長居できぬしな。
では。
あの…。
(笑い声)
(土山)お前 雲助様の誘いを断ったそうじゃないか。
ああ…。
この話の先にはあらゆる儲け話が転がっておる。
一枚かんでおけば➡
いずれは 蝦夷地の本屋商いを取りしきるなどということもできように。
いやぁ 吉原のしがない本屋にゃあ話が大きすぎまさ。
買ってやろうか 店。
えっ?日本橋などにでも。
その方が 赤良の本も もっと売れようし。
それ 本気でおっしゃってますか?
今日よぉ 土山様が➡
日本橋に 店出さねえかって。
(喜多川歌麿うたまろ)近頃 みんなに それ言われてんでしょ。
けど 土山様は金出してくれるってんだよ。
毎年 自分に 運上 納めりゃいいって。
(歌麿)それ 間違いなく得するのは 土山様だけだよ。
そうかなぁ。
(歌麿)蔦重は 吉原にいるからちょいと かっこよしなんだよ。
ん?江戸一の利者が 江戸の外れの吉原にいる。
それが粋に見えんだよ。
んじゃ ここ そのままにして日本橋に2店目ってな どう?
親父様が 蔦重に話があるみてえだよ。
おい 親父様も 俺に日本橋って?
(歌麿)だと いいけどね。
何ですか? これ。
蔦屋の名があがったもんで➡
店の引き札やら 品を入れる袋やらを作ってもらえないかって➡
お馴染なじみ様たちが続々とね。
いいだろ? あんたも儲かるし吉原のためにもなるし。
この 赤良先生に 孫の祝いに狂歌集 作ってもらいてえってな➡
いくら何でも 無理でさぁね。
みんなも暇じゃねえし。
おめえ 近頃 いい気になってやしねえか?
…俺の? どこがです?
前だったら こんな話間違いなく 乗り気んなったろ。
そうすかね?
勘違いすんじゃねえぞ。
吉原のおかげで おめえはここまでんなれてんだ。
俺たちが 手ぇ引いたらその日のうちに潰れんだからな。
ああ… 分かりました!
やらせてもらいます。
何だ その言い方!
まぁまぁ…重三も忙しい身だからさ。
できるだけでいいからさ。
へえ。
(意知)蔦重に そんなことを言ったのか。
(土山)江戸一の利者の本屋は 土山のもの。
これは なかなかに気分ようございますし➡
そうなれば おのずと蝦夷の話にも引き込めましょうし。
いずれは 蝦夷での本屋商いのうまみも懐にということか。
あれだけ ため込んでもまだ足らぬか。
私のような小身は 金だけが頼りで。
<<(松前廣年ひろとし)はあ!? 琥珀こはくが たくさん欲しい!?
<<(大文字屋)花魁が身につけておる琥珀があまりに美しく➡
いっそ うちの妓こに➡
揃そろいのかんざしなどにしてつけさせてはどうかと。➡
何卒なにとぞ ご手配いただくことはできませんでしょうか。
(廣年)聞いてはみるが…。
琥珀は 値も相当に張るぞ。
そこは ぜひ できるだけお手柔らかに願えると助かりますな。
では。
(足音)
♬~
(誰袖)主さん。
琥珀というのは何故 かように高いのでありんすか?
そりゃあ 商人が利をのせるからだな。
では商人を通さず 直じかに オロシャから➡
主さんが お買い付けになることはできぬのでありんすか?
そうすれば 安く手に入りんしょう?
ならぬ! ならぬ!
それでは 抜荷となってしまう!
異国と勝手に取り引きをすれば御法度!➡
下手をすれば 取り潰しじゃ!
けんど 主さんが安く手に入れ親父様に高値で買い取らせれば➡
相当な金が お手元に残りんしょう?
差し出口をきくな! 女郎ごときが!
出た。
<<(廣年)お… 花魁?➡
花魁…。
わっちは➡
その金があれば➡
主さんともっと お会いできるかと思いんして…。
♬~
(廣年)これ 泣くでない。
分かった。
ひとつ 考えてみるゆえ。
嬉うれしうありんす!
んふふ…。
主さん…。
ぜひ いつの日か 身請けを。
<<(廣年)うむ。 考えてみるゆえ➡
もう泣くでない。
♬~
ああ… 忠さん。
(小泉忠五郎)おう。
この辺 もろもろ➡
うちの名で お願いしてえんだけど。
ああ いいけどよ これは?
もちろん 弾みまさ。
しかし お前さん まだ こんな摺物すりもの屋の請け負い仕事やってんのか。
いや… 吉原から頼まれっと どうにも。
鶴屋さんの向かいの店 空くって噂だうわさぜ。
えっ!?
ハハッ どうだい?
ここらで いっそ 吉原 出て日本橋に打って出るってなぁ。
俺たちみたいな小店のやつがよぉ面白おもしれえじゃねえか。
ハハハ…。
ちなみに おいくらくれえで?
まぁ 千両ぐらいじゃねえ?
千両か…。
けど お前さんなら 吉原に頼みゃあさ貸してもらえんだろ?
いや… そういう感じでもねえってえか。
いっそ 日本橋から言ってきてくんねえかなぁ。
忠さん 聞かなくていいですよ。
蔦屋は 江戸一の利者!
タダでいいから日本橋に店出してくださいって。
(忠五郎)ヘヘヘッ!
重三。へえ。
日本橋のお偉いさんたちがあんたも一緒に話があるって。
えっ!
ハハッ へえ!
要するにもっと「雛形ひながた若菜」が人気となるよう➡
吉原に町を挙げて力を貸せってことですか。
ええ。 今後 呉服屋仲間として➡
西村屋さんの「雛形若菜」を➡
第一に盛り上げていこうということに なりまして。
ああ こちらの「青楼名君せいろうめいくん」は➡
まぁ そのうちにということで。
これの どこが「雛形」に劣るんです?
華やかさや面白さだって負けちゃいねえ。
それに 入銀にゅうぎんは吉原。
タダで新作を見せられんですよ。
(白木屋)絵としては優れているかもしれませんが➡
さほど売れてないでしょう。
いやぁ 市中では かなり。
江戸の外では どうですか?
どうなんだい? その辺りは。
往来物のツテがあるとこに頼んだりはしてまさ。
(白木屋)ハハ… そうですか。➡
そこが 西村屋さんとはまったく違うところです。➡
鶴屋さんや 西村屋さんには諸国の本屋から 大口の買い付けが来る。
故に その品は遠く 名古屋 京 大坂 北は仙台➡
地方の本屋 小間物屋にまで流れているんです。
ケッ いつまで経っても 脇が甘あめえな!
重三。 これは これで手伝うってことでいいかい?
「青楼名君」をやらないって話じゃないし➡
江戸の外まで女郎の名が売れるのは吉原にとっても いい話だし。
江戸の外まで流れりゃ➡
「雛形」じゃなく うちの「青楼」を盛り上げようってなりますか?
お… おめえ!見ててくだせえ。
あっという間に日の本中に流してみせますから。
(白木屋)分かりました。しばらく待ちましょう。
どうぞ。
♬~
(駿河屋)おい。 おめえ おめえ おめえ!何 勝手なこと言ってんだ!
(りつ)そうだよ!吉原にとっちゃ 双方ある方が…。
うちの品を売れるように計らうのは当然じゃねえですか。
しゃらくせえ!吉原あっての蔦屋だろうが!
親父様。
近頃はうちに金出してえって人も いんですぜ。
てめえ!
(りつ)まぁまぁ…。もういっぺん言ってみろ こら! おい!
(松葉屋半左衛門はんざえもん)おうおう おうおう!(丁子屋長十郎)どうした どうした おい。
(松葉屋)取り込み中かい?(りつ)いや いいよ。 どうしたんだい?
(丁子屋)ああ。 和泉屋のご隠居が亡くなったらしいんだよ。
和泉屋様が…。(丁子屋)ああ。
次は 日本橋か? ハハハハハ!
明日 お弔いだってんだけどな。
(りつ)迷うとこだね。私らが出るのを嫌がる人も多いからね。
ああ。 けど 息子の 今の旦那から➡
見送ってほしいって わざわざ言われてよ。
お前も行くか? 世話になったろ。
へえ! ぜ…。出てる暇なんてねえだろ。 ええ?
蔦屋様は 世話んなった馴染みより➡
てめえの品 流す方が 大事でえじだろうからよ!
…じゃあ そうさせてもらいまさ。
ありがとうございました!
えっほ! えっほ! えっほ!
おう ありがとう! また来るよ!また お願いいたします!
ああ…。
おっ。
あの すみません。えっ?
ちと いいですか? こちらへ。
俺 吉原の蔦屋って本屋なんですが➡
錦絵 見てもらえませんか?えっ?
江戸じゃあこいつが一等の流行はやりなんでさ。
あ~…西村屋の「雛形」買ってりゃ言われとるで。
へえ…。
あっ! すみません。え?俺 吉原の蔦屋ってんですが➡
錦絵 見てもらえませんか?
急いでっから!江戸じゃ こいつが…。
毎度! 「雛形若菜」あっべか?
<<あら 山形屋さん!ありますとも ありますとも!
う~ん…。
いやぁ さすがに錦絵を書物で流すってなぁ 無理だな。
そこを なんとか。
無理だよ。 まぁ 座れよ。
へえ…。
なあ 蔦重。
おめえ 日本橋に出る気はねえかい?
え?
日本橋に出りゃな この絵は一発で方々の国に出回ることになるんだぞ。
どういうことですか?
西村屋 鶴屋の品物が江戸の外に流れてるだろう?
へえ。あれはな 日本橋に店があるからだ。
よその商人あきんどはな➡
日本橋に店が出せるってことは一流もの➡
そこの店の品物だったら間違いねえって買っていく➡
いや 買ってこいっていうことになってるんだよ。➡
だから おめえが出ていきゃあな➡
この絵の話なんざ あっさりと先に進む。➡
いや ほかの品だって同じことなんだぞ。
狂歌本 青本 富本本。
日本橋に出りゃほっといたって流れに乗る。
はあ…。しかもな 一作につき桁違いの数が出るんだ。
そうなりゃお前さんだって 作者にとったって➡
きっと いいことになると思うんだがな。
いやぁ… 吉原 怒らせたら➡
細見も 催事の仕事も一切 できなくなっちまう。
俺おりゃ 吉原に 山のように借金ありますし。
フッ 金のことなんか どうでもなるだろ。
細けえこと考えたら 無理でさね。
それでもよ俺ゃ おめえに日本橋に出てもらいてえ。
あの 源内さんのためにもよ。➡
お前さんはな 今江戸で一番 面白えものを作ってるんだ。➡
そいつを この日の本の津々浦々まで流すということは➡
この日の本の人々の心を豊かにすることじゃねえのか? なっ。
(須原屋)耕書堂っていう名には➡
そういう願いが込められていたんじゃなかったのか?
♬~
吉原もんが…。
吉原の人?吉原もんだ。
初めて見た。
(足音)
すみませんあちらに お移りいただけませんか。
吉原の方と同じ扱いなら帰ると仰せのお方がいらっしゃいまして…。
俺たちゃ その辺りは何度も確かめたぜ!
それでも いいって旦那が言うから来たんだよ!
重々 承知です。けど どうか… なんとか!
(扇屋宇右衛うえもん門)よし 行くぜ。
吉原もんが。(雷鳴)
(雨音)
(読経)
(雨音)
何で そんなの見てんだい?ああ…。
和泉屋様 亡くなっちまったんだってよ。
和泉屋様の荷物持ちをしたから田沼様に会えたんだよね。ああ。
そっから 全てが始まって…。
(田沼意次おきつぐ)お前は何かしているのか➡
客を呼ぶ工夫を。
(平賀源内)おめえさんはさ これから 板元はんもととして➡
書をもって 世を耕し➡
この日の本をもっと もっと豊かな国にすんだよ。
<<(丁子屋)うわっ!<<(りつ)大事ないかい? 立てるかい?
(留四郎とめしろう)大丈夫でえじょうぶですか?(松葉屋)踏んだり蹴ったりだな おい。
(丁子屋)ああ 大事でえじねえ 大事ねえ。➡
どうせ 濡ぬれ鼠だねずみったしよ。
(留四郎)濡れ鼠?
大事でえじねえっすか?何か あったんですか?
まぁ いつものさ。
「吉原もん」とはってやつだよ。
おい 行くぜ。
(丁子屋)ありが十匹 猿五匹。じゃあな!
♬~
(瀬川)任せたぜ 蔦の重三。
♬~
ありがとな。
(歌麿)行きなよ 蔦重。
何が どう転んだって俺だけは隣にいっからさ。
(松葉屋)前よりは 女郎や芸者には気を配ってんだけどねぇ。
俺ゃ 時々 言ってやりたくならぁね。
このままじゃ食えなくて死ぬしかねえ子を➡
兎とにも角にも食わせてんのは誰なんだってよ!
まぁ けど 体を売らせる限りはってことなんだろうさ。
じゃあ てめえらは 買う以外いげえ➡
そんな子らに 何かしてやったことがあんのかってよぉ!
<<入ります。
(駿河屋)何だ。
錦絵は あっという間に日の本中に流れるようになったのか?
そこを含めて お話よろしいでしょうか。
(扇屋)手短にな。へえ。
皆様に お願いがございます。
俺に 日本橋に店を出させてくだせえ!
(大文字屋)に… 日本橋って!
(若木屋与八)お前 んなことしたら吉原の店は どうすんだい!
人に任す いっそ畳むやり方は いろいろあると思います。
とにかく 俺ゃ 日本橋に移りてえんです!
(駿河屋)とち狂ってんじゃねえ!おお!?
おら! おめえは 吉原の本屋だろうが!こら!
おい! ちょいと やり過ぎだろ。
おら!
ああ? おい!てめえの名があがったら おさらばか!
おお!? 誰のおかげでここまでなれたと思ってんだ!
忘八ぼうはちにも 程があんだろうが!➡
べらぼうめ!
重三! 重三郎! 大事ないかい!?
重三!う…。
俺ゃ 忘八でさ。
けど 親父様。俺ほどの孝行息子もいませんぜ。
江戸の外れの吉原もんが➡
日本橋のまん真ん中に 店 張んですぜ。
そこで商い切り回しゃ誰にも蔑まれたりなんかしねえ。
それどころか 見上げられまさ。
吉原は 親もねえ子を拾ってここまでしてやんだって!
大てえしたもんだ 吉原の門だ➡
丑寅うしとらの門は 懐が深えって。
俺が成り上がりゃあ その証しになる。
生まれや育ちなんか➡
人の値打ちとは関わりねえ屁へみてえなもんだって。
そりゃこの町に育ててもらった拾い子の➡
一等でけえ恩返しになりゃしませんか?
皆様 俺に かけてくだせえ。
勝ち目は?
しくじりゃ所詮 吉原もんはって言われるだけさ。
勝ち目は どこにあるんだい?
俺には 歌麿がいる。
まぁさん 春町はるまち先生 赤良先生➡
重政先生 政演まさのぶ➡
太夫 三和さんな 燕十さえんじゅうん➡
近頃は 政美まさよしもいい。
俺の抱えは 日の本一に決まってる!
俺に足んねえのは➡
日本橋だけなんでさ。
♬~
(佐野)はい。
(佐野)今年も見事に咲きましたな。
(佐野政豊)ところで 佐野の桜は いつ咲くのだ?
もう咲いておりますよ 父上。
そして そのころ➡
日本橋 鶴屋の向かいの本屋 丸屋が売りに出されることが決まりました。
(てい)「富は屋おくを潤し 徳は身を潤す」。➡
日本橋のためとなる方にお譲りできれば本望です。
(鶴屋喜右衛きえもん門)分かりました。
ほかに 買い手に望むことはありますか?
吉原の➡
蔦屋耕書堂だけは➡
1万両 積まれようともお避けいただきたく。
♬~
(若木屋)お前の往来物が丸屋の息の根を止めた?
岩戸屋さんから聞いたとこじゃそのようなんです。
いやいや いやいやいや➡
俺の聞いたとこじゃ 一人娘の元婿は扇屋の花扇にな 随分 入れ揚げたって。
そうなんすか?
それで 店の金 つぎ込んで店が傾くきっかけになったんだと。
ああ…。
丸屋 うちに店売ってくれますかねぇ。
丸屋じゃなくても 売ってくんねえだろ。
(丁子屋)吉原もんには 市中の屋敷は売るなって➡
あれがあんだろ。ああ…。
お待ちどんぶり 二人連れ。
お連れしたぜ。
さあさあさあ。
扇屋さん どなたで?
俺たちの 奥の手ってとこさ。
奥の手…。
あなた方は 日本橋に ふさわしくない。
明日 乗り込むぞ。
日本橋 移るって ほんとかい?賭けだがな。
吉原者と一緒になるなど ありえません!八方塞がりということか。
その眼鏡もねぇ。えっ?
花魁は こやつを唆し…。お許しを!
あの人の望みは➡
一つしかねえんだよ。ええっ!?
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