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Original subtitles

(悲鳴)

(悲鳴)

早く!押すな!

(半鐘の音)

(半鐘の音)

こっちだ! 逃げろ!(半鐘の音)

こっちだ! 逃げろ!(半鐘の音)

(半鐘の音)

(半鐘の音)

(半鐘の音)

つたや じゅうざぶろう(蔦屋重三郎)逃げろ〜! 逃げろ!

つたや じゅうざぶろう(蔦屋重三郎)逃げろ〜! 逃げろ!

早く逃げろ! おい 逃げろ!

♬〜

♬〜

♬〜

じゅうざ重三! 重三 おめえも そろそろ逃げろ!

ああ!⚟早く こっちだ!

ああ!⚟早く こっちだ!

♬〜

♬〜

あいつ…。

おい! 何やってんだ!

ったくよぉ…。

ったくよぉ…。

♬〜

♬〜

(花の井)さくら あやめ!

いなりお稲荷さんなんて置いていきな!行くよ!

かな(さくら)やだ! お願い 叶わなくなる!

かな(さくら)やだ! お願い 叶わなくなる!

死んだら元も子もないだろ!(朝顔)さくら あやめ!

手 離しな!やだ!

手 離しな!やだ!

早く!(朝顔)こんなのありんした!

ねえ(花の井)姐さんまで!大概にしておくんなんし!

ねえ(花の井)姐さんまで!大概にしておくんなんし!

離しな!(泣き声)

何やってんだ お前ら!

何やってんだ お前ら!

この子たちが お稲荷さん連れていくって聞かなくて…。

ああ?(あやめ)だって お稲荷さん焼けちゃう!

いや 神様だろ…。石だよ!でも…!早く!➡

いや 神様だろ…。石だよ!でも…!早く!➡

ほら 行くよ!

よし 燃えなきゃいいんだな!

よし 燃えなきゃいいんだな!

うう…!

(水音)

(水音)

♬〜

♬〜

♬〜

(花の井)ここにいな!(朝顔)待っとき。

(花の井)ここにいな!(朝顔)待っとき。

♬〜

♬〜

♬〜

かけるぞ!

かけるぞ!

(花の井)脱ぎな!

行くぞ!

行くぞ!

(一同)あい!

(悲鳴)⚟熱い!

(悲鳴)

(悲鳴)

うわ〜! ああ! 熱い!

おい! 坊主!

べらぼうめ! 何 考えてんだ!

べらぼうめ! 何 考えてんだ!

おとっつあんは おっかさんは どうした?

行くぞ!

(語り)明和九年➡

(語り)明和九年➡

めいわくねん!

まことメイワク極まりない この大火は➡

まことメイワク極まりない この大火は➡

ある無宿坊主が 盗みを企て➡

目黒の寺に火を放ったのが 事の起こり。

目黒の寺に火を放ったのが 事の起こり。

あお火は 南からの風に煽られ➡

よしわら三日三晩 吉原や江戸の町を焼き尽くした。

よしわら三日三晩 吉原や江戸の町を焼き尽くした。

この大火が起こった 時の将軍は…。

この大火が起こった 時の将軍は…。

(鈴の音)(お錠口)上様のお成り〜!

(鈴の音)(お錠口)上様のお成り〜!

いえはる十代 徳川家治。

いえはる十代 徳川家治。

江戸幕府誕生から およそ170年。

江戸幕府誕生から およそ170年。

今や 百万都市となった江戸に燃え盛るのは 戦の火ではない。

今や 百万都市となった江戸に燃え盛るのは 戦の火ではない。

偉くなりたい 楽したい。

偉くなりたい 楽したい。

もう一旗揚げたい 儲けたい。

もう一旗揚げたい 儲けたい。

たいたい「たい」尽くし。

万事めでたい太平の世に燃え盛るのは 欲の業火。

万事めでたい太平の世に燃え盛るのは 欲の業火。

果ては この世を思うがままに➡

果ては この世を思うがままに➡

この両の手で動かしたい。

この両の手で動かしたい。

この欲深き時代を鮮やかに駆け抜けた男がおりました。

この欲深き時代を鮮やかに駆け抜けた男がおりました。

金なし 親なし 家もなし。

何やってんだい!? 行かないと!

何やってんだい!? 行かないと!

ないない尽くしの吉原者は鼻を利かせ 風を読み…。

ないない尽くしの吉原者は鼻を利かせ 風を読み…。

風が変わった。

行くぞ!

やがて 江戸のメディア王に成り上がった。

やがて 江戸のメディア王に成り上がった。

(花の井)重三! みんな あっち行ってるけど!

早く来い!

早く来い!

こっちは だめだ!戻れ! 戻れ〜!

行くよ!

つたじゅうその名は 蔦重➡

つたじゅうその名は 蔦重➡

蔦屋重三郎。

ああ〜!

つたのからまるまたの名を 蔦唐丸と申します。

つたのからまるまたの名を 蔦唐丸と申します。

♬〜

♬〜

♬〜

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さて あの火事から1年と半年ほど。

くろすけ私 九郎助稲荷もここ吉原に戻ってまいりました。

くろすけ私 九郎助稲荷もここ吉原に戻ってまいりました。

え? 吉原って何?

では 私 九郎助稲荷が➡

では 私 九郎助稲荷が➡

軽く ご案内申しましょう。

吉原というのは 男が女と遊ぶ町。

吉原というのは 男が女と遊ぶ町。

幕府公認 江戸唯一の「天下御免」の色里です。

幕府公認 江戸唯一の「天下御免」の色里です。

場所は 浅草の外れ。

場所は 浅草の外れ。

田んぼの中に浮かぶ島といった趣です。

市中との位置関係はと言いますと➡

市中との位置関係はと言いますと➡

市中を出た北側にございます。

市中を出た北側にございます。

ほっこくだから 「北国」なんて呼ばれ方もしてました。

例えば日本橋からの所要時間はと言いますと…。

例えば日本橋からの所要時間はと言いますと…。

1時間ほど。

1時間ほど。

めちゃくちゃ遠いわけではないですがへんぴ場所は辺鄙だし➡

大金はかかる しきたりも多い。

大金はかかる しきたりも多い。

おっくう気軽に行くには ちと億劫。

そんな感じですかね。

そんな感じですかね。

そんな吉原の町には 当時➡

女郎3,000人を含めざっと1万人程度が暮らしておりました。

女郎3,000人を含めざっと1万人程度が暮らしておりました。

普通の町に見えますが女郎の逃亡に厳しいのが吉原。

普通の町に見えますが女郎の逃亡に厳しいのが吉原。

高い塀や お歯黒どぶと呼ばれる堀に囲まれておりました。

高い塀や お歯黒どぶと呼ばれる堀に囲まれておりました。

私が沈んだのも この どぶ。

そういうわけで 吉原への出入り口は➡

そういうわけで 吉原への出入り口は➡

おおもん基本的には この大門 ただ一つ。

おおもん基本的には この大門 ただ一つ。

市中から この大門に至るまでの道が➡

よしわらごじっけん吉原五十間。

よしわらごじっけん吉原五十間。

そして この一角に➡

我らが主人公 蔦重の勤める茶屋「蔦屋」がございました。

我らが主人公 蔦重の勤める茶屋「蔦屋」がございました。

五十間の茶屋というのは 吉原の案内所。

五十間の茶屋というのは 吉原の案内所。

客の刀や荷物を預かったり女郎屋の情報を教えたり。

じろべえ蔦重は当時 義理の兄 次郎兵衛の営むこの茶屋で働いておりました。

じろべえ蔦重は当時 義理の兄 次郎兵衛の営むこの茶屋で働いておりました。

じろべえ蔦重は当時 義理の兄 次郎兵衛の営むこの茶屋で働いておりました。

(足音)

行くぞ 唐丸。(唐丸)うん!

にいあっ 義兄さん。

島田様と西尾様が まだ いらしてないんで来たら お願いします。

島田様と西尾様が まだ いらしてないんで来たら お願いします。

さや島田様は鞘が赤茶 西尾様は黒ですからね。

さや島田様は鞘が赤茶 西尾様は黒ですからね。

あいよ〜。お願いしますよ!

(唐丸)ねえ➡

(唐丸)ねえ➡

次郎兵衛さんって何で あんなに働かないの?

ああ… 義兄さんは いずれそこの旦那になれんだよ。

ああ… 義兄さんは いずれそこの旦那になれんだよ。

(唐丸)じゃあ 蔦屋は いずれ 蔦重が継ぐの?

(唐丸)じゃあ 蔦屋は いずれ 蔦重が継ぐの?

どうだろうな。 義兄さんは実の子だけど➡

じっぱひとからこっちは 十把一絡げの拾い子だからな。

じっぱひとからこっちは 十把一絡げの拾い子だからな。

(唐丸)十把一絡げの拾い子?

ああ あんなんだ。

ああ あんなんだ。

するがや駿河屋は 行き所のない子を養って➡

大人になったら その辺に若い衆として奉公に出すんだ。

大人になったら その辺に若い衆として奉公に出すんだ。

吉原は 男手も いっぺえいるから。

おやじあっ 親父様 どうも。

おやじあっ 親父様 どうも。

行くぞ。

おう!

おう!

どうも!おう。

どうも!おう。

おはようございます!

おはようございます!

(一同)おはようござりんす。

松葉の親父様 どうも!

はんざえもん(松葉屋半左衛門)おお よろしくな〜。へい!

はんざえもん(松葉屋半左衛門)おお よろしくな〜。へい!

お前さん これでいいかい?

ああ いいんじゃないかい。

♬〜

♬〜

♬〜

お姫様方 貸本屋の蔦重が参りましてございますよ〜!

お姫様方 貸本屋の蔦重が参りましてございますよ〜!

おいらん松の井花魁 おはようございます。

おはようござりんす。

おはようござりんす。

よし!むちゅうさんじんたつみのその今日は 夢中散人の新本「辰巳之園」や➡

よし!むちゅうさんじんたつみのその今日は 夢中散人の新本「辰巳之園」や➡

「石山軍鑑」なんかを仕入れてきたぞ。

(うつせみ)「ひらかな盛衰記」はあるかい?おっ ありまさぁ。

(うつせみ)「ひらかな盛衰記」はあるかい?おっ ありまさぁ。

このころの蔦重は 茶屋の仕事の片手間に「貸本屋」をしておりました。

このころの蔦重は 茶屋の仕事の片手間に「貸本屋」をしておりました。

しなぞろ貸本の品揃えは➡

あかぼん子供向けの読み物の赤本➡

あかぼん子供向けの読み物の赤本➡

あおぼん大人向けの青本➡

じょうるりぼんしゃれぼんよみほん浄瑠璃本 洒落本 読本。

これらを 1冊当たり6文から24文➡

これらを 1冊当たり6文から24文➡

高いもので 72文ほどで貸し出しておりました。

高いもので 72文ほどで貸し出しておりました。

ちなみに そば一杯は16文。

まあ ささやかな小遣い稼ぎにございます。

まあ ささやかな小遣い稼ぎにございます。

かいだんばなしとしおとこ怪談噺がいいなら この「登志男」にしとけ。なっ? 読みやすいから。

かいだんばなしとしおとこ怪談噺がいいなら この「登志男」にしとけ。なっ? 読みやすいから。

だろ?

だろ?

蔦重。あ? どした?

これ あやめちゃんから戻ってきたんだけど➡

これ あやめちゃんから戻ってきたんだけど➡

どうしよ…。

よいしょ。

よいしょ。

おい 花魁。

あやめが だめにした赤本3冊18文つけとくからな。

あやめが だめにした赤本3冊18文つけとくからな。

ええ? 18文は 吹っかけ過ぎだろ。

1冊6文の本を 3冊だめにしたんだ。あたりめえだろ。

1冊6文の本を 3冊だめにしたんだ。あたりめえだろ。

だめにしたのは 新しい本じゃないだろ?

ばか馬鹿らしうござりんす。

か〜! ケチくせえ。

か〜! ケチくせえ。

お前 それでも江戸っ子かよ。

は? そっちこそ それでも江戸っ子かい?

は? そっちこそ それでも江戸っ子かい?

お前は 一晩で10両20両 稼ぐだろ…。

…んだよ これ。

このあと 浄念河岸 行くんだろ?

このあと 浄念河岸 行くんだろ?

朝顔姐さんに これ届けとくれよ。

おう。 じゃ 届けたら払うか? 18文。 ん?

おう。 じゃ 届けたら払うか? 18文。 ん?

朝顔姐さんに届けてくれって話だよ?

朝顔姐さんに届けてくれって話だよ?

あんたと わっちの朝顔姐さんだよ!

そんなこと言うのかい?あんた そんなこと言う男なのかい?

そんなこと言うのかい?あんた そんなこと言う男なのかい?

あ〜ったよ!

♬〜

♬〜

♬〜

唐丸 先 戻ってろ。うん。

唐丸 先 戻ってろ。うん。

さて 蔦重がお使いを頼まれた「浄念河岸」とは➡

さて 蔦重がお使いを頼まれた「浄念河岸」とは➡

お歯黒どぶに面した一帯のこと。

ここは 吉原の場末で➡

ここは 吉原の場末で➡

あげだい女郎たちの揚代はひときり「線香一本燃え尽きる間」 一切で百文。

あげだい女郎たちの揚代はひときり「線香一本燃え尽きる間」 一切で百文。

花の井のいるような大見世とは比べ物にならぬほど安い。

花の井のいるような大見世とは比べ物にならぬほど安い。

そう 吉原の中は 今でいうところの結構な格差社会でございました。

そう 吉原の中は 今でいうところの結構な格差社会でございました。

どうも〜! お姫様方!

おとわ(音羽)重三〜! 待ちかね山!

おとわ(音羽)重三〜! 待ちかね山!

ねえ 遊んでって 遊んでっとくれよ!

ちょうどすごろくお客と一緒に遊べる双六 入りましたよ。

(歌浦)客なんか来ないよ。

(歌浦)客なんか来ないよ。

もう3日も お茶っぴきぁ。あっ! それは…。

おっと! 手ぇ出したら➡

おっと! 手ぇ出したら➡

ここ いられなくなっちまいます。ハハハ!

堪忍! それは堪忍!(きく)ただいま。➡

あんたら 何やってんだい!おかみ女将! 女将!

あんたら 何やってんだい!おかみ女将! 女将!

(きく)お前も!俺 違います!こら!

だめ だめ!こら!それは だめっす!

だめ だめ!こら!それは だめっす!

こら〜!

ったく あいつら…。

ったく あいつら…。

朝顔姐さん 入るぜ。

朝顔姐さん 入るぜ。

(せきこみ)おおっ…。

(せきこみ)おおっ…。

大事ねえか?(せきこみ)

(せきこみ)

(せきこみ)

(せきこみ)

悪いね。 あんまり近寄るとね…。

こっちこそ 気ぃ遣わせて悪かった。

こっちこそ 気ぃ遣わせて悪かった。

あ… これ 花の井から。

あ… これ 花の井から。

ちっと 食われちまったんだけど…。

ちっと 食われちまったんだけど…。

薬まで…。

薬まで…。

花魁の金繰りも楽ではないんしょうに。

あいつ 張り込むなぁ。

あいつ 張り込むなぁ。

え? 食いなよ 姐さん。

え? 食いなよ 姐さん。

後で ゆっくり食べるよ。

それより早く あれ 頼むよ。

それより早く あれ 頼むよ。

そんな遠慮せず…。

食べる時に むせちまうんだよ。男前には見られたくありんせん。

食べる時に むせちまうんだよ。男前には見られたくありんせん。

…そっか。

…そっか。

んじゃ やるか!

(せきばらい)

「背に角をおうて一文字になって来るものは➡

「背に角をおうて一文字になって来るものは➡

さざえにてぞありける。➡

これりゅうおうみたま是も忍びの役人なれば 龍王見給い➡

これりゅうおうみたま是も忍びの役人なれば 龍王見給い➡

人間界の様子 いかにいかにとせめ給う。➡

いでその時 さざえにじり出て申しけるは」。

いでその時 さざえにじり出て申しけるは」。

(高い声で)「私は小田原町からまわ通り筋を一ペン廻り候が」。

(高い声で)「私は小田原町からまわ通り筋を一ペン廻り候が」。

お帰りなさい。ああ ただいま。

お帰りなさい。ああ ただいま。

お帰り。

(半次郎)そんなに まずいのかい?河岸の方。

(半次郎)そんなに まずいのかい?河岸の方。

ああ。

ありゃ 風呂も ろくに入ってねえよ。

ありゃ 風呂も ろくに入ってねえよ。

かゆ飯も粥になってるし3日も客が来ねえって。

昼見世とはいえ これだもんなぁ。

昼見世とはいえ これだもんなぁ。

岡場所と宿場には勝てんってとこか。

岡場所と宿場には勝てんってとこか。

岡場所 宿場とは 無許可の風俗街。吉原のライバルでした。

岡場所 宿場とは 無許可の風俗街。吉原のライバルでした。

(半次郎)ひとっ風呂 浴びるついでに女 買えるのに➡

わざわざ吉原まで来ねえよなって話だ。

わざわざ吉原まで来ねえよなって話だ。

せんじゅ千住は もう連れてってもらったか?

せんじゅ千住は もう連れてってもらったか?

え?吉原の男は➡

みんな 千住に行くんだよ〜。 ハハハ!

みんな 千住に行くんだよ〜。 ハハハ!

はえまだ早えよ。

お勘定。おう。

お勘定。おう。

戻ってろ 唐丸。うん!

ごちそうさま。

戻ってろ 唐丸。 ハハハハ!

笑うな。

笑うな。

おさなななにも てめえの幼名付けなくてもいいんじゃねえの?

お侍じゃあるめえし。

お侍じゃあるめえし。

けど あいつがそれがいいっつうんだからよ。

でもよ あいつまだ 何も思い出さねえのか?

でもよ あいつまだ 何も思い出さねえのか?

昔のこと。

みてえだよ。ちょいちょい聞いてはいんだけど。

みてえだよ。ちょいちょい聞いてはいんだけど。

(磯八)何だ この茶は!ぬるいじゃねえかよ!

(磯八)何だ この茶は!ぬるいじゃねえかよ!

(唐丸)申し訳ございません!

ああ〜 旦那様方➡

ああ〜 旦那様方➡

失礼いたしました。

吉原は お初にございますか?

吉原は お初にございますか?

(磯八)ああ?➡

悪いかよ!めっそう滅相もない!

悪いかよ!めっそう滅相もない!

よくぞ お越しくださいました。

では 腰の物 お預かりしましょうか。

は?(磯八)おい てめえ➡

は?(磯八)おい てめえ➡

兄ぃの刀 盗もうってのか?

おい!(仙太)おい!

いえ 吉原には決まりがございまして➡

いえ 吉原には決まりがございまして➡

いかなるお方といえども見世にあがる時には➡

刀を お預かりすることになっております。

刀を お預かりすることになっております。

深川でも品川でもんなこと言われたことはなかったぜ。

申し訳ございません。

申し訳ございません。

吉原は 天下御免。

面倒がございましてはお上の名を汚すことになります。

面倒がございましてはお上の名を汚すことになります。

チッ。

おらよ。へい。

おらよ。へい。

はあ… これは ご立派な。

はあ… これは ご立派な。

(仙太)兄ぃ 兄ぃ 兄ぃ兄ぃ兄ぃ!

差したままのやつ いますぜ!

差したままのやつ いますぜ!

ああ あのお方は 中になじひきてぢゃや馴染みの引手茶屋がおありなのです。

ああ あのお方は 中になじひきてぢゃや馴染みの引手茶屋がおありなのです。

大身のお武家様は中の引手茶屋に 刀をお預けになるんで。

大身のお武家様は中の引手茶屋に 刀をお預けになるんで。

馴染みや大身は 中…。

おい!

おい!

ってえ!てめえ 誰に向かって口 きいてんだ!

このお方はなぁ!おう! その辺にしておけよ。

このお方はなぁ!おう! その辺にしておけよ。

おめえもさ人を見る目 持った方がいいぜ。

おめえもさ人を見る目 持った方がいいぜ。

フッ。へえ。

クソが!

蔦重! 大事ない?重三 大事ねえか?

蔦重! 大事ない?重三 大事ねえか?

へ鼻から屁が出る病になりゃいいんだあんなやつら。

鼻から屁?

鼻から屁?

臭くて たまんねえだろうが!

ああ すいません お騒がせしました。

ああ すいません お騒がせしました。

悪かった。

♬〜(三味線)

♬〜(三味線)

♬〜(三味線)

さして客の来ない昼見世が終わり暮れ六つ。

さして客の来ない昼見世が終わり暮れ六つ。

吉原の本番 夜見世が始まります。

吉原の本番 夜見世が始まります。

♬〜(三味線)

♬〜(三味線)

♬〜(三味線)

♬〜(三味線)⚟旦那方 いかがでございますか?

♬〜(三味線)⚟どの花魁が お好みで?こ⚟どの妓が お薦めですか?

♬〜(三味線)⚟どの花魁が お好みで?こ⚟どの妓が お薦めですか?

♬〜(三味線)おにいさん 遊んでって。

♬〜(三味線)おにいさん 遊んでって。

♬〜ウフフフ!旦那 寄ってってよ。

♬〜おにいさ〜ん。私と遊んでくんなんし。

♬〜おにいさ〜ん。私と遊んでくんなんし。

♬〜

♬〜

♬〜ちょいと いい男でありんすなぁ。

⚟♬〜(三味線)

⚟♬〜(三味線)

(戸が開く音)(まさ)花魁。➡

(戸が開く音)(まさ)花魁。➡

いずみや和泉屋様から呼び出し入ったよ。

お受けしんす。

お受けしんす。

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

俗に吉原は日に千両の金が落ちたと言われますが➡

俗に吉原は日に千両の金が落ちたと言われますが➡

稼ぎ頭となったのがよびだしこの花の井のような 呼出の花魁です。

稼ぎ頭となったのがよびだしこの花の井のような 呼出の花魁です。

だいつう客は 大通と呼ばれる 身元も財布も確かな選ばれた金持ちばかり。

だいつう客は 大通と呼ばれる 身元も財布も確かな選ばれた金持ちばかり。

だいつう客は 大通と呼ばれる 身元も財布も確かな選ばれた金持ちばかり。

客は まず 引手茶屋で一席➡

その後 女郎屋でも一席➡

その後 女郎屋でも一席➡

ほうかん芸者 幇間などを呼び 宴席を張ります。

(和泉屋)おお 花の井!

(和泉屋)おお 花の井!

(和泉屋)待ちかねたぞ。待ちかね山じゃ!

(和泉屋)待ちかねたぞ。待ちかね山じゃ!

お待たせいたしんした。 和泉屋様。

お待たせいたしんした。 和泉屋様。

最低でも 一晩10両➡

中には 百両 張り込む方もいたとか いないとか。

中には 百両 張り込む方もいたとか いないとか。

(仙太)あ〜 吉原ったってよぉ別に どうってことなかったな。

(仙太)あ〜 吉原ったってよぉ別に どうってことなかったな。

(磯八)女なんて どこも おんなじだな。➡

(磯八)女なんて どこも おんなじだな。➡

兄ぃ 次は どこ攻めやすか?

そうだなぁ…。

そうだなぁ…。

⚟おお…!

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

じゃあ お楽しみくだせえ。

行ってらっしゃいませ。

行ってらっしゃいませ。

(磯八)あの女とはやれねえってどういうことなんだよ!➡

兄ぃはなぁあの女とやりてえっつってんだよ!

兄ぃはなぁあの女とやりてえっつってんだよ!

はあ… 何やってんだ ありゃ。

はあ… 何やってんだ ありゃ。

さむれあのお侍えが 花の井花魁とやらせろって言いに来たんだよ。

(松葉屋)本日は馴染みのお客様がいらしておりまして…。

(松葉屋)本日は馴染みのお客様がいらしておりまして…。

じじいあんな爺 すぐへたるに決まってんだろ!

そのあとこっちに回せっつってんだよ!

あと! あの方のあととおっしゃいますと明日の明日の明日の昼まで➡

あと! あの方のあととおっしゃいますと明日の明日の明日の昼まで➡

お待ちいただくことになりんすがよござんすか?

お待ちいただくことになりんすがよござんすか?

ながぞういや〜 もう 一度来たら居続けの長蔵で。

(磯八)てめえ 誰に向かって口きいてんだ?

(磯八)てめえ 誰に向かって口きいてんだ?

このお方はなでえれっきとした 大のお旗本なんだぜ!

このお方はなでえれっきとした 大のお旗本なんだぜ!

お… お旗本?

お… お旗本?

ああ しかもとがにんメイワク火事の咎人を挙げた➡

ああ しかもとがにんメイワク火事の咎人を挙げた➡

ひつけとうぞくあらためかたのぶおあの 火付盗賊改方 長谷川平蔵宣雄様!

ひつけとうぞくあらためかたのぶおあの 火付盗賊改方 長谷川平蔵宣雄様!

(一同)はは〜!

(磯八)のぶため…のご子息の長谷川平蔵宣以様だぞ!

(磯八)のぶため…のご子息の長谷川平蔵宣以様だぞ!

フッ。念のため この男➡

フッ。念のため この男➡

おにへい後の「鬼平」にございます。

そういうクチか。

そういうクチか。

(磯八)この度 長谷川家のご当主になられたんだからな!➡

(磯八)この度 長谷川家のご当主になられたんだからな!➡

たけ頭が高えんだよ!

さよう然様でございましたか!

さよう然様でございましたか!

ハハッ! いや〜然様に ご立派な方とは心得ず➡

ハハッ! いや〜然様に ご立派な方とは心得ず➡

先ほどは ご無礼を。

重三?

重三?

いや〜 実は 私➡

長谷川様のお目当ての女郎とは幼馴染みにございまして。

長谷川様のお目当ての女郎とは幼馴染みにございまして。

まことか?ええ。

いかがでしょう。 お二人のご縁をとびきりのものにするべく➡

いかがでしょう。 お二人のご縁をとびきりのものにするべく➡

私に仕切り直しをさせていただけませんか?

私に仕切り直しをさせていただけませんか?

吉原一の引手茶屋の仕切りで。

吉原一…。ええ。

吉原一…。ええ。

ご大身の長谷川様に似合いの吉原一の引手茶屋…。

ご大身の長谷川様に似合いの吉原一の引手茶屋…。

駿河屋でございます!

駿河屋でございます!

いよっ!

(笑い声)

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

いちえもん⚟(駿河屋市右衛門)極上吉のカモ?

いちえもん⚟(駿河屋市右衛門)極上吉のカモ?

ええ。 イキがっちゃいるが➡

ありゃ 今まで ろくに遊んだこともねえ血筋自慢の嫡々野郎でさ。

ありゃ 今まで ろくに遊んだこともねえ血筋自慢の嫡々野郎でさ。

いい年した世間知らずが親が死んで 遊び回ってる手合いかと。

いい年した世間知らずが親が死んで 遊び回ってる手合いかと。

あの長谷川様のってのは 本当かよ?腰の物は格別だったんで 間違いねえかと。

あの長谷川様のってのは 本当かよ?腰の物は格別だったんで 間違いねえかと。

⚟(にぎやかな声)

⚟(にぎやかな声)

すご〜い!ハハハ!

すご〜い!ハハハ!

あ〜 すご〜い! 硬い!

極上々吉。でしょう?

極上々吉。でしょう?

長谷川様!

長谷川様!

この度は お越しいただき 恐悦至極。

この度は お越しいただき 恐悦至極。

引手茶屋の駿河屋市右衛門にございます。

♬〜

♬〜

♬〜

(虫の声)

(虫の声)

(皿をなめる音)

(戸が開く音)

(戸が開く音)

(朝顔)わっちは手も触れておりんせんゆえよければ おあがり。

(朝顔)わっちは手も触れておりんせんゆえよければ おあがり。

(食べる音)

(食べる音)

(食べる音)

⚟(虫の声)

⚟(虫の声)

付け火だって?(花の井)ああ。➡

付け火だって?(花の井)ああ。➡

腹が減ったんだって。ごめんなせえ ごめんなせえ!

かりたく火事のあと 仮宅の時は安いから客が押し寄せただろ。

かりたく火事のあと 仮宅の時は安いから客が押し寄せただろ。

ああ。もういっぺん ああなりゃ➡

ああ。もういっぺん ああなりゃ➡

腹いっぱい食えると思ったらしいよ。

腹いっぱい食えると思ったらしいよ。

ほら 立て! どいた どいた!お許しくだせえ!

どいた どいた!ボヤで済んだし➡

済ませてやれねえですか?できるか!

済ませてやれねえですか?できるか!

付け火だぞ!けど 悪気ねえみてえだし…。

火事んなったらなどんだけ人が死ぬと思ってんだ!

火事んなったらなどんだけ人が死ぬと思ってんだ!

行くぞ!ごめんなせえ! ごめんなせえ!

こっちだ!お許しくだせえ!

(ちどり)蔦重。

ああ ありがとな。

ああ ありがとな。

おお 姐さん ちゃんと食ったんだな。

おお 姐さん ちゃんと食ったんだな。

はい。

(ちどり)おらが食った。…あ?

おらが…➡

おらが…➡

おらが 飯 食っちまったから…食ったから…。

おらが 飯 食っちまったから…食ったから…。

え?

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

あっ… 姐さん…。

あっ… 姐さん…。

裸で捨てられるの?

裸で捨てられるの?

剥ぎ取って売るんだよ。

剥ぎ取って売るんだよ。

この罰当たりが。

姐さんは 俺を救ってくれた人でな…。

姐さんは 俺を救ってくれた人でな…。

ある日 いきなり 俺はふた親に捨てられたんだよ。

ある日 いきなり 俺はふた親に捨てられたんだよ。

(駿河屋)よぉ。

(駿河屋)よぉ。

おめえ 捨てられたんだって?

うちで働くか?

うちで働くか?

で 駿河屋の親父様が拾ってくれたんだけどな➡

で 駿河屋の親父様が拾ってくれたんだけどな➡

なまじ 親がいただけに拾われ子のうちで いじめられてな。

なまじ 親がいただけに拾われ子のうちで いじめられてな。

そん時 そばにいてくれたのが➡

そん時 そばにいてくれたのが➡

朝顔姐さんだったんだ。

あいつら 目から しょんべんが出る病になりますように!

あいつら 目から しょんべんが出る病になりますように!

お願いします!(朝顔)ウフフフ…。

お願いします!(朝顔)ウフフフ…。

おかしなお願いをなさいんす。

おかしなお願いをなさいんす。

♬〜

♬〜

♬〜

(朝顔)これは何でありんすかえ。分かりんすか?

(朝顔)これは何でありんすかえ。分かりんすか?

そっからは 赤本の絵解きなんか一緒にやってくれてな。

そっからは 赤本の絵解きなんか一緒にやってくれてな。

からまる柯理のおとっつあんと おっかさんも鬼退治に出かけたのかもしれんせんなあ。

からまる柯理のおとっつあんと おっかさんも鬼退治に出かけたのかもしれんせんなあ。

からまる柯理のおとっつあんと おっかさんも鬼退治に出かけたのかもしれんせんなあ。

おいらの親は色に狂って出てったんだよ。

おいらの親は色に狂って出てったんだよ。

うわさ噂でありんしょう。まことか どうかなど分かりんせん。

そうだけど…。

そうだけど…。

どうせ分からぬのなら➡

思いっきり楽しい理由を考えてはいかが?

思いっきり楽しい理由を考えてはいかが?

その方が 楽しうありんせんか?

その方が 楽しうありんせんか?

くぼう柯理は… 公方様の隠し子で。

くぼう柯理は… 公方様の隠し子で。

おとっつあんと おっかさんは➡

おとっつあんと おっかさんは➡

実は 隠密で。うん!おいらを預かって…。

本当 優しい人でな…。

本当 優しい人でな…。

優しいから きつい客 引き受けて飯も食え食えって やっちまうんだよ。

優しいから きつい客 引き受けて飯も食え食えって やっちまうんだよ。

最後は こんなんなっちまって…。

最後は こんなんなっちまって…。

吉原に すき好んで来る女なんていねえ。

吉原に すき好んで来る女なんていねえ。

女郎は 口減らしに売られてきてんだ。

きつい つとめだけどおまんまだけは食える。

きつい つとめだけどおまんまだけは食える。

親兄弟はいなくても 白い飯だけは食える。

親兄弟はいなくても 白い飯だけは食える。

それが 吉原なんだよ!

それが ろくに食えもしねえって…➡

それが ろくに食えもしねえって…➡

そんな ひでえ話あっかよ…。

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

ふざけやがって。 何だ こりゃあ!

ふざけやがって。 何だ こりゃあ!

ももかわまあ 百川のやるこったからなぁ。

ももかわまあ 百川のやるこったからなぁ。

まねチッ。 手の込んだ真似しやがって。

まねチッ。 手の込んだ真似しやがって。

誰が頼んだんだ!

誰が頼んだんだ!

ここまでしろって。

ここまでしろって。

(笑い声)

(長崎屋小平治)しかし 今朝は驚きましたな。➡

(長崎屋小平治)しかし 今朝は驚きましたな。➡

腹減ったくれえで 付け火とは。

(桐屋伊助)河岸女郎の頭の中はどうなっとりますことやら。

(桐屋伊助)河岸女郎の頭の中はどうなっとりますことやら。

だいもんじや(笑い声)(大文字屋)あいつらには カボチャ!➡

だいもんじや(笑い声)(大文字屋)あいつらには カボチャ!➡

カボチャ食わしときゃいいんですよ!(笑い声)

(りつ)出たよ カボチャの一つ覚え。

(松葉屋)大文字屋は女郎にカボチャ食わせて➡

(松葉屋)大文字屋は女郎にカボチャ食わせて➡

のし上がった店だからねえ。

(大文字屋)そうそう。河岸女郎には カボチャ カボチャ!

(大文字屋)そうそう。河岸女郎には カボチャ カボチャ!

(笑い声)

⚟河岸は 今!

そのカボチャにすら難儀してるのでございます!

そのカボチャにすら難儀してるのでございます!

何だ てめえ。

けえ帰れ。

けえ帰れ。

てめえが来るようなとこじゃねえだろうが!

帰れって言ってんだろ!

松葉の親父様!

今朝 朝顔姐さんが亡くなったのはご存じで?

今朝 朝顔姐さんが亡くなったのはご存じで?

え?

理由は 飯が食えねえからです。

理由は 飯が食えねえからです。

胸って聞いたよ。

女郎たちが しょっちゅう体を壊し➡

女郎たちが しょっちゅう体を壊し➡

治るはずの病をこじらせてあっけなく逝っちまうのは➡

そもそもちゃんと飯が食えてねえからです!

そもそもちゃんと飯が食えてねえからです!

どうか しばらくの間 親父様たちから➡

河岸に 炊き出しなり何なりしてもらえねえでしょうか?

河岸に 炊き出しなり何なりしてもらえねえでしょうか?

あ〜。

あ〜。

このままじゃ女郎は どんどん減りますよ。

そうなりゃ 客も減るし 店も潰れる。

そうなりゃ 客も減るし 店も潰れる。

そんなの親父様たちだって望んでねえでしょう!?

そんなの親父様たちだって望んでねえでしょう!?

おい!

うっせえな!

うっせえな!

別に悪かねえんだよ女郎が どんどん死ぬのは!

河岸見世の女郎は呼出みてえな格別な女でもねえ。

河岸見世の女郎は呼出みてえな格別な女でもねえ。

正直 どこにでもいる女が一切百文で股開いてるだけだろが!

正直 どこにでもいる女が一切百文で股開いてるだけだろが!

んなもんな どんどん死んで入れ代わってくれた方が➡

んなもんな どんどん死んで入れ代わってくれた方が➡

客も楽しみなんだよ!

百川だって 毎回同じじゃねえ。

百川だって 毎回同じじゃねえ。

そりゃ あまりにも情けなかねえですか…。

そりゃ あまりにも情けなかねえですか…。

親父様たちは 人じゃねえです!人として…。

親父様たちは 人じゃねえです!人として…。

ぼうはちあいにく 私たちは 忘八なもんでね。

(笑い声)

(笑い声)

ああ…忘八は➡

うしとらもん丑寅門の人でなしうまよし午の出入りは なき葦の原。

うしとらもん丑寅門の人でなしうまよし午の出入りは なき葦の原。

(大文字屋)うまい!(丁子屋)うまだけに。

(大文字屋)うまい!(丁子屋)うまだけに。

(笑い声)

けど…!

けど…!

けど 俺たちは 女郎に食わせてもらってるじゃねえですか!

けど 俺たちは 女郎に食わせてもらってるじゃねえですか!

おおっ!おっ!吉原は…➡

おおっ!おっ!吉原は…➡

みこし女郎が神輿で 女郎が仏!

俺ぁ そうやって教え込まれましたぜ!

俺ぁ そうやって教え込まれましたぜ!

いくら 忘八でも➡

そこだけはお題目 突っ張んねえといけねえんじゃ…。

そこだけはお題目 突っ張んねえといけねえんじゃ…。

うう…。

うう…。

ん。

うっせえんだよ おめえ!

うっせえんだよ おめえ!

親父様!

親父様!

クソ… この忘八が ふざけやがって。

クソ… この忘八が ふざけやがって。

あ… あのさ➡

「けいどう」って 取締りだっけ?

「けいどう」って 取締りだっけ?

ああ。 岡場所ってのはなお上の許しを得てない。

宿場で色を売るのもな。

宿場で色を売るのもな。

それを「けいどう」してもらえば➡

岡場所は潰れるし宿場も女を売れなくなる。

岡場所は潰れるし宿場も女を売れなくなる。

そうすれば 吉原に客が戻るってこと?

そういうこった!

そういうこった!

じゃあ 行ってくらあ。

奉行所に訴え出たものの…。

奉行所に訴え出たものの…。

奉行所のトンチキが!

この手の話は 名主から持ってこいの一点張りでよぉ。

この手の話は 名主から持ってこいの一点張りでよぉ。

やる気ねえんだよ。

はっちょうぼり八丁堀のクソが!

はっちょうぼり八丁堀のクソが!

(男)お前さんそれは クソに ご無礼ってもんよ。➡

あいつらは 屁。へ?

あいつらは 屁。へ?

(男)クソは畑にまきゃ役にも立つがあいつらは それ以下の屁よ。

(男)クソは畑にまきゃ役にも立つがあいつらは それ以下の屁よ。

(屁の音)(男)あ〜。

何の役にも立ちゃしねえへへへのへっぴり野郎よ。

何の役にも立ちゃしねえへへへのへっぴり野郎よ。

あいつらはね金になる仕事しかしやしねえのよ。

あいつらはね金になる仕事しかしやしねえのよ。

じゃあ 旦那だったら どうします?「けいどう」やってもらおうと思ったら。

「けいどう」?ええ。 俺は吉原のもんなんですが➡

「けいどう」?ええ。 俺は吉原のもんなんですが➡

岡場所 増え過ぎて女郎が困ってんすよ。

ろくに食えねえ見世も出てきて。

ろくに食えねえ見世も出てきて。

じゃあ いっそ 田沼様のところに行ってみるってのはどうだい?

ああ 田沼様。おう ご老中のよ。

ああ 田沼様。おう ご老中のよ。

ああ。

ええっ!?あん人は案外と➡

町場のもんの話も聞いてくれるよ。

町場のもんの話も聞いてくれるよ。

いやぁ… 担いじゃいませんか?

ハハハ…にいちゃん 担いで 何の得があんだよ。

ハハハ…にいちゃん 担いで 何の得があんだよ。

それよりよ。

実はな これ…。ええ。

実はな これ…。ええ。

田沼様肝煎りの炭でよ。

田沼様肝煎りの炭でよ。

どうだい? 一つ買わねえかい?

どうだい? 一つ買わねえかい?

田沼様…。

えっほ えっほ。

えっほ えっほ。

おお〜!

おお〜!

無理じゃない? 蔦重。おっ。

唐丸 ここで待ってろ。

和泉屋様〜!

和泉屋様〜!

ご無沙汰しております。

重三郎でございます。 吉原 駿河屋の。

重三郎でございます。 吉原 駿河屋の。

あ… ああ! あ〜 ハハハ!

あ… ああ! あ〜 ハハハ!

今日は 私に荷物持ちをさせていただけませんか?

おいや 間に合うておる。そう おっしゃらずに!

おいや 間に合うておる。そう おっしゃらずに!

馴染みの旦那様を お見かけしたら万事お尽くしするようにと➡

主人から きつく言いつかっておりまして。フフフ…。

主人から きつく言いつかっておりまして。フフフ…。

ねっ。

ちょっ…。おい!

ちょっ…。おい!

行きましょう!

入れ。はっ。

入れ。はっ。

さぶろべえ和泉屋三郎兵衛にございます。

さぶろべえ和泉屋三郎兵衛にございます。

うん。 では それを取り 待っておれ。

うん。 では それを取り 待っておれ。

はっ。

(女)若様 なりませぬ。なにを よいではないか。

(女)若様 なりませぬ。なにを よいではないか。

(女)あっ… なりませぬ。

おきとも(田沼意知)構わぬ。 皆で食うがよい。あ… かように たくさん。

おきとも(田沼意知)構わぬ。 皆で食うがよい。あ… かように たくさん。

どうせ 無駄に太った親父しか来ぬのだ。

ありがとうございます!うん。

ありがとうございます!うん。

(案内役)こちらで待っておれ。(和泉屋)はっ。 ありがとうございます。

(案内役)こちらで待っておれ。(和泉屋)はっ。 ありがとうございます。

(戸が開く音)

(戸が開く音)

おきつぐ(田沼意次)面を上げよ。

おきつぐ(田沼意次)面を上げよ。

久しいのう 和泉屋。腰の具合は どうだ?

(和泉屋)はっ… 然様なことまで覚えていてくださるとは!

(和泉屋)はっ… 然様なことまで覚えていてくださるとは!

今日は新たな産地の商いの件でと聞いたが。

今日は新たな産地の商いの件でと聞いたが。

はい。 おい。

へえ。

へえ。

(和泉屋)こやしかの地では 実によい肥が出来まして➡

ぜひとも ひとつ ご覧いただきたく。

ぜひとも ひとつ ご覧いただきたく。

(意次)そのようなもの 持ってくるな!(和泉屋)いや そうはおっしゃらずに➡

(意次)そのようなもの 持ってくるな!(和泉屋)いや そうはおっしゃらずに➡

ご覧くださいませ。

フッ。 これは これは実に よう効きそうな肥じゃの。

フッ。 これは これは実に よう効きそうな肥じゃの。

やまぶきたわわに実りましょうぞ 山吹の実が。➡

やまぶきたわわに実りましょうぞ 山吹の実が。➡

取り入れが成りましたらみょうが相応の運上 冥加は お納めいたします。

取り入れが成りましたらみょうが相応の運上 冥加は お納めいたします。

恐れながら 吉原も運上 冥加を納めております。

恐れながら 吉原も運上 冥加を納めております。

(和泉屋)はあ?

私も 是非 田沼様にお聞き届けいただきたい話がございます。

私も 是非 田沼様にお聞き届けいただきたい話がございます。

お前!

構わん。 手短に申せ。

構わん。 手短に申せ。

ありがとうございます。

吉原は 天下御免を頂きました時分よりばくだい莫大な運上 冥加をお納めし➡

吉原は 天下御免を頂きました時分よりばくだい莫大な運上 冥加をお納めし➡

課せられた町役にも励んでおります。

課せられた町役にも励んでおります。

一方で 運上も冥加も納めぬふてい不逞な岡場所は増えに増え➡

はばか宿場も憚りもせず色を売る始末。

はばか宿場も憚りもせず色を売る始末。

そのせいで 吉原の末端の女郎たちはありさま腹を満たすことすらもできぬ有様。

そのせいで 吉原の末端の女郎たちはありさま腹を満たすことすらもできぬ有様。

これは どう考えても道理に合いません。

これは どう考えても道理に合いません。

つきましては 「けいどう」をお願いできませんでしょうか。

(意次)「けいどう」を行うことはできぬな。

吉原が持ち直したら必ず お礼を献上いたします!

吉原が持ち直したら必ず お礼を献上いたします!

吉原のためだけに国益を逃すわけにはいかぬのだ。

国益?

国益?

(意次)お前 名は。

蔦屋の重三郎と申します。

蔦屋の重三郎と申します。

(意次)うん。 蔦の重三か。➡

(意次)うん。 蔦の重三か。➡

宿場町といえば千住 板橋 品川 内藤新宿辺り。➡

宿場町といえば千住 板橋 品川 内藤新宿辺り。➡

その 江戸へ入る五街道沿いの宿場町がもし一つでも潰れたら どうなると思う?

その 江戸へ入る五街道沿いの宿場町がもし一つでも潰れたら どうなると思う?

宿場町から宿場町の間が長くなりますから➡

宿場町から宿場町の間が長くなりますから➡

旅が大変になり商いの機会も減ったりしましょうか。

旅が大変になり商いの機会も減ったりしましょうか。

そうだ。

宿場が潰れれば 商いの機会が減り➡

宿場が潰れれば 商いの機会が減り➡

それによる大幅な利益つまり 国益を逸することになる。

裏を返せば 宿場が栄え商いの機会が増えれば➡

裏を返せば 宿場が栄え商いの機会が増えれば➡

莫大な国益を生む。

莫大な国益を生む。

では 宿場を栄えさせるのは何だ?➡

では 宿場を栄えさせるのは何だ?➡

何だ?

何だ?

ばくち女と 博打にございます。

そうだ。

そうだ。

然様なわけで ここのところの宿場町でのめしもりおんな飯盛女の大幅な増加を認めてきた。

然様なわけで ここのところの宿場町でのめしもりおんな飯盛女の大幅な増加を認めてきた。

そのおかげで 宿場は栄え運上もつつがなく上がるようになった。➡

そのおかげで 宿場は栄え運上もつつがなく上がるようになった。➡

それを棒に振って 吉原だけを救うために「けいどう」を行うわけにはいかんだろう。

それを棒に振って 吉原だけを救うために「けいどう」を行うわけにはいかんだろう。

では…!

岡場所だけなら いかがでしょう。

岡場所だけなら いかがでしょう。

そもそも 吉原が天下御免を頂いたのは➡

そもそも 吉原が天下御免を頂いたのは➡

得手勝手に色を売り危ない目に遭う女が多かったゆえ!

そこは よろしいので!?

そこは よろしいので!?

それに天下御免の色里が廃れたとあっては➡

それに天下御免の色里が廃れたとあっては➡

お上のご威光に関わるのではございませんか?

(足音)

(足音)

(足音)

百川が 吉原の親父たちは上得意だと言っておった。

百川が 吉原の親父たちは上得意だと言っておった。

…え?

吉原の女郎たちが食えぬのは なにも岡場所や宿場のせいばかりではなかろう。

吉原の女郎たちが食えぬのは なにも岡場所や宿場のせいばかりではなかろう。

「けいどう」を願う前に 正すべきは➡

「けいどう」を願う前に 正すべきは➡

あの忘八親父たちの不当に高い取り分ではないのか?

あの忘八親父たちの不当に高い取り分ではないのか?

それは…!更に言えば➡

吉原に 客が足を運ばぬのは➡

もはや 吉原が 足を運ぶ値打ちもない場に成り下がっているのではないか?

もはや 吉原が 足を運ぶ値打ちもない場に成り下がっているのではないか?

もはや 吉原が 足を運ぶ値打ちもない場に成り下がっているのではないか?

女郎は 懸命に つとめております!

(意次)では 人を呼ぶ工夫が足りぬのではないか?

(意次)では 人を呼ぶ工夫が足りぬのではないか?

お前は何かしているのか 客を呼ぶ工夫を。

お前は何かしているのか 客を呼ぶ工夫を。

♬〜

♬〜

♬〜

(意次)和泉屋。(和泉屋)はっ。商いの件は承知した。

ではな。ありがたき幸せ!

ではな。ありがたき幸せ!

田沼様!

田沼様!

田沼様!

お言葉目が覚めるような思いがいたしやした!

お言葉目が覚めるような思いがいたしやした!

まこと➡

かんありがた山の寒がらすにございます!

かんありがた山の寒がらすにございます!

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

♬〜

ういっす!うっす!

お〜 でっけえ!

お〜 でっけえ!

おっ。 親父様方 どうしたんですか?

(駿河屋)重三郎…。へい。

(駿河屋)重三郎…。へい。

てめえ。おおっ…。何やってんだ こら!

てめえ。おおっ…。何やってんだ こら!

えっ?

えっ? えっ 何 これ!

えっ? えっ 何 これ!

分かんねえ。(丁子屋)こいつ 勝手に➡

「けいどう」頼みに行きやがったんだい!

大騒ぎになったんだよ。

大騒ぎになったんだよ。

奉行所から会所に お尋ねが来て➡

うるさく言ってきておるやつがおるが➡

うるさく言ってきておるやつがおるが➡

吉原は まことに「けいどう」を望んでおるのかって。

けど このままじゃ 吉原は➡

潰れちまい…。うるせえ!ってえ!

潰れちまい…。うるせえ!ってえ!

この野郎!

あのな 「けいどう」なんか頼んだら➡

あのな 「けいどう」なんか頼んだら➡

こっちが 岡場所の女の面倒見なくちゃいけなくなんだよ!

いや…。この左前の時に➡

いや…。この左前の時に➡

んな余裕ねえんだよ!

いってえ! あ〜…。

あっ じゃあ 人を呼ぶ工夫をしましょう!あ?

あっ じゃあ 人を呼ぶ工夫をしましょう!あ?

田沼様は 人を呼ぶ工夫をしろと。

田沼様は 人を呼ぶ工夫をしろと。

田沼?田沼様って おめえ まさか…。

ご老中の。

ご老中の。

この べらぼうめ!えっ? えっ えっ?

いってえ!

いってえ!

(次郎兵衛)重三!蔦重!

(半次郎)いやいや… 重三…。

(半次郎)いやいや… 重三…。

いてえ…。こら! こら!

親父様 やめてください!

親父様 やめてください!

うっ… ちょっと!

やめてください! おい!

やめてください! おい!

おい! おい! 上げろよ! おい!離しやがれ!

おい! おい! 上げろよ! おい!離しやがれ!

チッ。親父様!

(駿河屋)次郎兵衛 何もすんじゃねえぞ!

(駿河屋)次郎兵衛 何もすんじゃねえぞ!

(次郎兵衛)はい…。上げろ! 上げろ これ!

何 やったんだよ〜?おい 上げてくれよ。

何 やったんだよ〜?おい 上げてくれよ。

お〜い!お〜う。おい。

(唐丸)蔦重。おお 唐丸。

(唐丸)蔦重。おお 唐丸。

これ。おお!

(はなをかむ音)

吉原のためにやってんのに…。

吉原のためにやってんのに…。

てめえ ふざけんじゃねえよ!

(次郎兵衛)重三 頑張れよ〜。おう 義兄さん! おう!

(次郎兵衛)重三 頑張れよ〜。おう 義兄さん! おう!

(半次郎)重三 大丈夫か?お前 我慢しろ。

(はなをかむ音)

(はなをかむ音)

ほらよ。おい!

それから数日。きったねえな!

おけ蔦重は 狭い桶の中で考えました。

おけ蔦重は 狭い桶の中で考えました。

朝も夜も ひたすら。

朝も夜も ひたすら。

回想 (意次)お前は 何をしている。

お前は何かしているのか 客を呼ぶ工夫を。

お前は何かしているのか 客を呼ぶ工夫を。

そして 三日三晩が過ぎた頃。

そして 三日三晩が過ぎた頃。

(八五郎)おお 熊さん!(熊吉)おう!今日は どうして 吉原へ?

(八五郎)おお 熊さん!(熊吉)おう!今日は どうして 吉原へ?

はっつぁん そりゃあ これよ!

おお〜!

おお〜!

これだ…。

これだ…。

はい!よいしょ!

(次郎兵衛)おい 重三。 生きてっか?

おいおい 大事ねえか?

おいおい 大事ねえか?

おお…。(唐丸)蔦重?

危ない 危ない 危ない!

危ない 危ない 危ない!

「吉原細見」… これで客を。

「吉原細見」… これで客を。

吉原のいいとこって どこだい?

きれいそりゃあ 何たって女が綺麗です。

きれいそりゃあ 何たって女が綺麗です。

吉原をなんとかしなきゃと思ってんのもあんただけじゃない。

来たぜ。口を開けば 金 金 金と。

来たぜ。口を開けば 金 金 金と。

もはや この世は全て金。恥を知れ!

恥を知れ!べらぼうめ!

平賀源内に頼めってえのか。会わせてやるよ。 平賀源内先生に。

平賀源内に頼めってえのか。会わせてやるよ。 平賀源内先生に。

あんたは 一人じゃない。

よし!できた〜!

西村屋の旦那様!

わっちは 前世からの縁!ぶつよ!

わっちは 前世からの縁!ぶつよ!

事は悪くねえと思うんだよね。

遅かりし…。

遅かりし…。

二度と大門くぐんじゃねえぞ。

ちくしょう! べらぼうが!

謝りゃいいと思ってんだろ!

謝りゃいいと思ってんだろ!

江戸城に 田安の種をまくのです!

知らぬは 己の落ち度と。

是非 やるべきだと言われてな。

是非 やるべきだと言われてな。

これは…。

わざわい禍転じて福となす!

わざわい禍転じて福となす!

女郎の錦絵を出す?

絵にする女郎に 呉服屋の売り込みたい着物を着させるんです。

絵にする女郎に 呉服屋の売り込みたい着物を着させるんです。

夢ん中にいるみてえだ!

江戸時代からあさくさ一大観光地として栄えた 浅草。

江戸時代からあさくさ一大観光地として栄えた 浅草。

その北西に➡

その北西に➡

幕府公認の遊郭よしわら吉原がありました。

つたじゅうつたや じゅうざぶろう蔦重の名で親しまれた 蔦屋重三郎は➡

つたじゅうつたや じゅうざぶろう蔦重の名で親しまれた 蔦屋重三郎は➡

おおもんごじっけんみち吉原大門のそば 五十間道に店を構えていました。

おおもんごじっけんみち吉原大門のそば 五十間道に店を構えていました。

時代の移ろいの中で 姿を変えた吉原。

時代の移ろいの中で 姿を変えた吉原。

大門へ続く曲がった道や➡

大門へ続く曲がった道や➡

見返り柳が➡

当時の面影をしのばせています。

当時の面影をしのばせています。

吉原神社は➡

吉原神社は➡

いなりしゃ吉原に点在した稲荷社 5社と➡

弁財天を合祀した神社です。

弁財天を合祀した神社です。

♬〜

♬〜

吉原の近くにある…

吉原が現在の地に移って以来➡

遊女たちを弔い続けています。

遊女たちを弔い続けています。

江戸の文化を彩った吉原から蔦重の物語は始まったのです。

江戸の文化を彩った吉原から蔦重の物語は始まったのです。

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