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（
国枝
くにえだ
優子
ゆうこ
）ありがとう

座れば？

（
青葉
あおば
リク）あ はい

（優子）敬語じゃなくていいよ

（リク）でも 年が…
（優子）いくつ？

15

２つしか変わんないじゃん

まあ うん

飲めば？

あ うん

あっ コップ

おうちの人は？

母さんは仕事で
そろそろ帰ってくる

（リク）あと…
（ソラオ）リクリク リクリク

ちょっと これ読んでくれない？

ソラオ

（ソラオ）あ ごめんなさい

（ソラオ）あー 今日からか！
（優子）はい

お世話になります
優子といいます

ソラオです
こちらこそよろしく

えっと 締め切りまであと15分で
今 ピンチなんです

（優子）締め切り？

「モグランとたつまる」っていう
子供用の番組の台本で

え すごいですね

脚本家さんなんですか？

（ソラオ）
うん 本業は小説家なんだけど

たまにこういう仕事もやってて

（優子）あーこれか！ かわいい

実は 人類滅亡後の世界っていう
裏設定でね

（リク）うん　面白かった

ラストちょっと急だけど

家父長制へのアンチテーゼを
潜ませたの分かった？

（リク）全然分かんなかった

うーん まいっか

よし　リクありがと
えっと優子ちゃん また後で！

お父さん？

いや 違う違う

（優子）どういう関係？

あー 何て言うんだろ

お母さんの友達も住んでて

その恋人

（優子）…の ４人暮らし？

（リク）うん

（優子）変だね

よく言われる

（優子）お父さん いないんだ？

（リク）いない
（優子）うちも

（優子）離婚？

（リク）うん

（優子）一緒一緒

ふーん

リクくんのお母さんとうちのお母さんて
昔から仲良しらしいね

うん でも…

（青葉
春子
はるこ
）ただいま
（リク）あ 帰ってきた

（春子）ただいま

あ…

（めいこ）美大予備校かあ

（めいこ）懐かしいわ

めいこさんも美大なんですか？

そやで うちは東京の予備校なんて
考えんかったわ

（めいこ）勇気あんな

（優子）いやあ 夏期講習だけなんで

（優子）お試しって感じで

（めいこ）しかもまだ高２やろ？
（優子）はい

わ！ おいしそう

あ 優子ちゃん うちの部屋で寝るから
ソラオはリクの部屋な

（リク）えー
（ソラオ）よろしくね

（めいこ）なあ ソラオも飲む？

（ソラオ）いただこうかな
歓迎会だし

（めいこ）せやせや せやせや

（春子）ねえねえ
はい これお願い

（めいこ）ありがとう

なあなあ なあなあ…

優子ちゃんて
あの
知世
ともよ
さんの娘さんなんやな？

あー はい　そうです

（めいこ）
うち めっちゃファンなんよ！

ええー そうなんですね

（めいこ）
インスタもフォローしとるし—

仕事で提案したこともあんのよ

そんでな あれあるやん…

（春子）さ 食べましょっか

（めいこ）わー めっちゃ おいしそう

（優子）わー

優子ちゃん 青葉家へようこそ

２週間 よろしくお願いします

（春子）では

（一同）いただきます

これは…

（ソラオ）ああ
今週は僕が朝担当なんだ

（めいこ）ごめんな あの人 今
タコスにハマってるからずっとタコス

（ソラオ）タコス研究月間です

（春子）優子ちゃん
このお弁当箱使っていいよ

（優子）あ ありがとうございます

リクくんは？

バンド練だって

（優子）へえー バンド？

何かね 最近燃えてるみたい

（めいこ）優子ちゃん
今日 予備校初日やね

緊張してます

頑張れ～

（めいこ）大丈夫よ

（
大島
おおしま
）鉛筆は１本１本
真心を込めて削りましょうね

（
与田
よだ
あかね）貸そうか？

削り方知らないの？

今日初めてで

私もここは初めて

（与田）貸して

♪～

（
大工原
だいくはら
ヒロ）
チョコレートスリープオーバーの—

デビューシングル「このままじゃ」を

独自の解釈で

（リク）ここ 大事っぽいね

（ヒロ）カバーしてください

（ヒロ）メンバーによる…
厳選な審査で

（
中田
なかた
まどか）選ばれたバンドは
復活ライブに招待されるんでしょ

もう分かったよ！ こないだから何回
募集要項 読んでんの？

何回でも読ませてよ

急にチョコスリが活動再開して
カバー曲のコンペまでやるってんだから

（中田）20年前に活動を
休止したバンドなのに—

ホント オタクだよね

（リク）曲作って送ったら—

レックマン聴いてくれるのかな

可能性高いね

（中田）もう 分かったから演奏しようよ

（大工原
史郎
しろう
）コーン茶 飲む？

お邪魔してます

お邪魔してます

バンドかあ いいねえ

（中田）うるさかったですか？

全然　いや僕も昔やっててさ
懐かしい…

さっ お父さん
こういうときはすぐ去ろう

スマートに

（史郎）ごゆっくり～
お代わりあるからね

（ヒロ）ハァ…

よし！ もう１回
インディーズ時代のから聴こう

（生徒Ａ）えっと
イラストレーター目指してるんで—

グラフィックデザイン科
目指してます

（生徒Ｂ）よっ！

（生徒Ａ）お願いします

（大島）じゃあ次
瀬尾
せお

（瀬尾
雄大
ゆうだい
）はい

瀬尾雄大です　えっと音楽とか
映画とかデザインとか—

いろいろ好きです
よろしくお願いします

（大島）インターンの あれ言いなよ

ああ えっと
ＨＡ９
ハク
ってデザイン事務所で
インターンさせてもらってます

（大島）瀬尾は
美大なんて行かなくていいよ

（瀬尾）いや 俺 行きますよ国立
（大島）えー

（瀬尾）“えー”って言わないでくださいよ
（大島）はい 拍手

（瀬尾）お願いします

（大島）じゃあ 次

国枝優子です

私も音楽とか映画とか
カルチャー全般好きです

えっと 最近YouTubeもやってます

あとは えっと　えー

えっと　えー

私の母が国枝知世といいまして

雑誌とかにも取材されたりするような
人間なんですが その影響もあって—

最近 そういうメディア？
系の職業もいいなって思ってます

よろしくお願いします

（大島）はい　拍手

はい 次

（
佐藤
さとう
小雪
こゆき
）えっと 佐藤小雪です
漫画家を目指しているので…

（優子）そっか
与田さんも地方組かあ

（与田）うん

姉ちゃんが東京住んでるから
夏期講習の間だけ居候してる

（優子）そっか そっか

瀬尾って人 高２のくせに
インターンしてるってね

シャラくせーって思ったわ

ねえ

（与田）まあ でも
瀬尾が一番うまかった

国立志望って言ってたし
ライバルだわ

（優子）与田さんも国立？

うん うち私立 厳しいから

（与田）国枝さんは？

（優子）ああ

私は迷い中

ふーん

（与田）そろそろ 帰ろっかな

えー もう帰るの？
そんな髪色なのに？

髪色関係ないっしょ

（与田）姉ちゃん心配するし

（優子）あのさ

えっと…

今日 うちのお母さん
テレビ出るんだ

ふーん

あ　じゃあ早く帰らな

だから帰りたくない

（ナレーション）
洗練された内装と—

親しみやすさが同居した
町中華“満福”

店主 国枝知世の

ユニークなライフ
スタイルそのものに

注目が集まっている

今まで出版した３冊の本は
全てベストセラー

（めいこ）もう
洗い物 後でやるって

もうちょっとだから

優子ちゃん 今日遅いの残念やわ

（国枝知世）こだわりとか？
ないない ないない

あ～でも 強いて言うなら

来てくれたお客さんには
とりあえず話しかけるかな

で話しかけて もう前のめりの勢いで
話しかけて…

（めいこ）春子さん
こんな有名人と友達やったんやな

いやあ もう何年も
会ってなかったから

（ナレーション）
そんな“満福”の看板メニューは

“はぁちゃんライス”

はーい はぁちゃん お待ち

（ナレーション）
シンプルだが癖になる一品だ

（優子）親がおしゃれすぎるって
なかなかハードよ

“知世さんの子だからセンスよさそう”
とかよく言われるし

（与田）うぜー

だから私もセンスよくなりたくて

映画とか音楽とか
勉強してるんだよね

（与田）ふーん

（与田）そういえばYouTube
やってんでしょ？

あ うん
でもまだ始めたばっかだから

（与田）見せてよ

（優子）え？ まだ見せるレベルじゃ
（与田）ダメ

（優子）編集 荒いし

（与田）じゃあ帰ろっかな

（知世）え～っと ほら

ここ 頑張り時だなって
いうときあるじゃないですか？

そういうときは
もう気合入れるために

こう目いっぱい息を吸い込みます

こう ハァ～

って息も全部いっちゃうぐらいの勢いで
吸い込んで　そうすると—

“よし やるぞ！”っていう気持ちに
なるんですよ

やってみてくださいよ こう息を
こう ハァ～

そう 吸い込んで
そうしたら ほら やる気になるでしょ

ねえ これ私 ここぞというときに
絶対やるんですよ

本当 オススメっていうかあの

私のおまじないみたいな
感じなんですけどね

（優子）本を読んだときとか
映画を見たときに—

必ず感想をノートに書くことによって

作品を自分の血肉にしてるんですよ

（与田）これって自分で編集したの？

うん　あ でもこれは
作品っていうか趣味でね

ナレーションとかも仮だし

やっぱり私は
母の名前には頼りたくないんで

自分の感性を磨くって
決めてるんですよ

国枝優子のナインエッセンス

エッセンス１
母の名前は使わずに勝負

初日に破ってんじゃん！
エッセンス

言わないで！ あれ もう
ホント自分でも最悪だったの！

（与田）マジでめっちゃ面白い

こないだお母さんが家で撮影してたから
私もって思って

普通 やんないよ こんなの
お母さんに対抗してるんでしょ？

痛いかな…

いや 最高じゃん

本当？

国枝さん いいね

（優子）ねえ 私たちもさ
何か一緒に作らない？

（与田）いいね　何する？

（優子）分かんない 何かない？

（与田）何かって
言い出したのそっちじゃん

えー じゃあ
ＺＩＮＥ
ジン
とか？

（優子）ＺＩＮＥって
イラストの本だっけ？

いや イラストでも
何でもいいんだよ

自分たちの好きなもので
雑誌 作るの

すごい！ いいねＺＩＮＥ
えっ いいね

あ じゃあ交換で
１冊のノートに描いてって

まあそしたら夏期講習終わるころには
１冊の作品になるっしょ

最高！ 絶対やろう！ 約束ね

分かった分かった
近い近い…

（優子）あっ ごめん

（優子）いいね ＺＩＮＥ

（優子）あ おはよう

おはよう

ヒゲ生えるの？

うん　結構 生えるよ

（優子）ヒゲそりは自分の？

これはソラオのだけど

今度 自分のを買う

（優子）へえ～

あ ごめん　急ぐね

あ 急がなくていいよ

ってか リクくん
チョコスリ好きでしょ

（リク）え　うん

私も好きなんだ

え！ そうなの？ マジか

え なんで？

えーっと 親が好きだったから

（リク）ああ 僕も

（優子）チョコスリＴシャツ着てたよね
（リク）うん うん

（優子）いいよね！ あれ
今度 貸してよ なんて

Ｔシャツを？

（優子）うん
あのデザイン好きなんだ

分かった　ちょっと待ってて

（優子）え？ 今じゃなくていいよ

（与田）じゃん！
（優子）ＺＩＮＥ！

（優子）すっげ～！
与田ちゃん いいねえ

（与田）昨日盛り上がって
遅くまでやっちゃった

（優子）この色とか
手の使い方がいいわぁ！

よし！ 次は私ね

（与田）これ毎日 描いてったら
結構なボリュームになりそうだね

（優子）うわあ 何描こう

（与田）ん～　何かあるでしょ？

ねえ

チョコスリ好きなの？

あ　うんうん

（瀬尾）うお～ 俺らの年で
チョコスリ好きなんてなかなかいないよ

マジでうれしい　どの曲好き？
あ １曲に絞るなんて酷だよね ごめん

聞いた俺から答えるね

ちょっと待って　どうしよう

結構その日の気分によって変わるんだけど
最近は45周くらいして

結局「このままじゃ」が
一番いいんだよね

あの１Ａと２Ａに隠されたさ
“ノックノック”っていう歌詞あるじゃん

でもあれ実際に音楽で聴いてみると
“ノコノコ”って聴こえてくるわけで…

（与田）引いたわ

あいつ 30分くらい
熱弁してなかった？

自分でしゃべって感極まって
泣きそうになってたよ

きもっ

きもー！

いやー 音楽全般 詳しかったなあ
瀬尾

瀬尾雄大

なんでフルネーム言った？

何か発音してみたくなった
発音してもいい感じ

そうか？

ってか与田ちゃん デッサン
めっちゃうまいね

いや でもやっぱ私より
瀬尾のが評価も高かった

ライバルだわ

雄大瀬尾なー

♪～

（リク）中田さん
リズム感あるんだね

楽しいかも

（ヒロ）ん～

独自の解釈って何だろか

（中田）うーん…

私 ラップやってみたい

（ヒロ）いやいやいや…
そんなのカバーじゃないよ

（ヒロ）頼むぜ

レックマンならどうするか

（リク）もう１回 考えてみよう

じゃあ いっそ
倍のリズムにしてみる？

（不気味な音）

（ヒロ）わああ～

（中田）何の音？

うち 何か昔から
何か変な音するんだ

何か… この世の終わり？
みたいな

妖怪…？

（不気味な音）
（ヒロ）うわー

ちょっと見に行こう

（リク）え…
（ヒロ）え？

（リク）えー

（中田）早く

（不気味な音）

（不気味な音）

（優子）与田ちゃんへ

突然ですが
私を語る上で避けては通れない—

創作の歴史を
振り返りたいと思います

（与田）じゃん！
（優子）じゃーん

（与田）おおー

（優子）どう？
（与田）かわいい

（優子）粘土作家になろうと
思ったこともあったけど—

何かが違った

弾き語りもやってみたけど
文化祭ライブは出るのやめときました

Ｔシャツを染めてみたり

カメラもやってみた

どれも何か違う

YouTube用の映像も作ったけど
公開はしてません

あとはスケボーもやってみた

初めは“私って最高”って
いつも思うのに
なぜか…

おかしい

結局しっくりこない

下書き保存だけがたまっていく

なんで？

（与田）創作の歴史 いいね

私の地元はめっちゃ田舎で
やることがないから—

早く美大に入りたい

大人になったら

いろんな本のデザインをしたい

（優子）与田ちゃん
夢が明確で さすが

私も夢を
熱く語りたいところなんだけど

今は目の前のデッサンが
ムズすぎる

全然見てないですね

（優子）え？

（大島）よく見る

（優子）はい
（大島）ちょっと貸して

（優子）今日もうまく描けなかったので
家でもデッサンの練習をしました

手って ずっと近くにあったのに

よく見たら
こんな形してんのかって驚く

（与田）いいじゃん　形 取れてる

（優子）伸びしろが取り柄なんで

（与田）あ！ 何これ

（春子）上手にできた

（優子）私が居候している青葉家では

春子さんが
大体ごはん担当なんだけど

もうホントに いっつもおいしい

（優子）おいしい

（優子）だけど だけど
こないだは急に“閉店宣言”をし

そうなると選手交代で
めいこちゃんが夕飯の準備をします

“包丁を使わない”をモットーにした
めいこちゃん料理も意外と—

というか めちゃおいしかった

うま… おいしいです

（優子）朝はソラオさんの
タコス研究が止まりません

さすがに最近はみんなタコスに飽きて
文句ばっか言ってるけど

見ると つい食べてしまう

それをソラオさんがキッチンで誇らしげに
見てる図が面白い

タコス いいなー

（優子）いいっしょー

（大島）はい　次

（優子）雄大瀬尾

今 最も動向が気になる存在です

（大島）はい　次

（与田）え～ 瀬尾のどこがいいの？

え… 何？

（優子）与田ちゃん 敵視しすぎ

（ドアが開く音）
（優子）リク

ちょっと ノックしてよ

（優子）あ～ ごめん ごめん
これって再生できる？

（リク）え…

ああ…

うん

（優子）瀬尾って人の
ミックスＣＤなんだけど

あ ミックスってのは
いろんなアーティストの曲を集めて…

ミックスくらい知ってるよ

（優子）あ ごめん ごめん

これ わざわざ私のために
作ってくれたんだ

すげえなあ
知らない曲ばっかだわ

僕は知ってる曲もある

（優子）この曲いい

あ～ 僕も好き

リクのＴシャツきっかけで
仲良くなれたんだよ

ふーん

チョコスリ好きなんだって

（リク）へえー

今度のライブのチケットも
取れたんだって

ライブ行きたいなー

（優子の鼻歌）

バンド

一緒にやる？

♪～

（優子）中学生のバンドに入りました

いい感じです

（不気味な音）

（ヒロ）うわー

（優子）何やら場所もいい感じです

（優子）何？ これ

（ヒロ）いや
こういうのあんのよ うち

（不気味な音）

（ヒロ）もう やだ

やりすぎじゃない？

うん？
こんくらいでもいいんちゃう？

私もちょっと 大人っぽくしたいです

（春子）もっと高校生らしい方がいいよ

周りは大人ですよ

だからよ

ちょっとくらいいいやんな

（めいこ）あ！ じゃあこれは？

（春子）かわいい！

（ソラオ）デザイン事務所の
パーティーって何？

（春子）このバッグとか
合わせてみたら？ ほら

（リク）知らないよ

（優子）めちゃ好きです

（春子）こういうの こういうの

（めいこ）きれい きれい

知らない世界すぎる

（めいこ）耳元は大ぶりですか？

（めいこ）あ いい

（瀬尾）あー緊張してきた

（優子）本当に私たちも
行っていいの？

（瀬尾）うん
友達 連れてきていいよって

（与田）じゃあ早く行こうよ

（瀬尾）前のめりだね

（与田）そんで早く帰りたい

（瀬尾）なんで来たの？
（与田）優子の付き添い

（優子）ありがと

（与田）ってか
瀬尾 今日 服 変じゃね？

（瀬尾）え？ どこが？

（与田）何か背伸び感？

（優子）あー 確かに

うわー 最悪だ

これ　交換

ああ

（与田）私の方が似合うな これ

うぜー

（与田）うん 瀬尾も似合ってるよ

（瀬尾）よし 行こっか

（瀬尾）ありがとうございます
（スタッフ）楽しんで

（瀬尾）お疲れさまです

（与田）うお
（優子）何？

（与田）これ
めっちゃ読みたかった本だ

絶版なんだよね

（瀬尾）国枝さん

こちら国枝さんです

こちらが俺のことインターンで拾ってくれた
屋敷
やしき
さんと
嶋佐
しまさ
さん

（屋敷）どうも　ウワサの

国枝優子と申します

（嶋佐）うわー

（嶋佐）名刺だよ

（嶋佐）すみません
今ちょっと切らしちゃってて

あ いえ 全然！

あの 皆さんのお仕事
小田急線ハックしたガムの広告とか

リムズのジャケとか 前からかっこいいって
思ってたものばかりでした

（嶋佐）いやいや
ホント ここ１年でようやくって感じで

（嶋佐）なあ？
（屋敷）おう

あ 瀬尾ちょっと
受付 手伝ってあげてくんない？

（瀬尾） はい！
じゃ 国枝さん また後で

（屋敷）何か飲む？
（優子）はい

（優子）えっと 私もこういうお仕事
興味あるんですけど

皆さん やっぱ美大なんですか？

（嶋佐）まあ 半々くらいかな？

へえー そうなんですね

知世さんってさ
ふだんどんな感じなの？

えっと 普通ですよ

イライラするとサウナ行きがちです

（屋敷）知世さん サウナ
はやる前からインスタ載せてました

（嶋佐）あ 載せてた　早かった

私も１回 連れてってもらったんですけど
熱すぎて すぐ出ちゃいました

まあ 熱いもんね

あ このグラス うちにもある

（嶋佐）マジか！
ワンチャン知世さんとかぶった

意外とこんなもん使ってるんすね

（優子）お母さん あんま
値段とか気にしないみたいで

（嶋佐）へえー
（屋敷）そうなの？

あの知世さんの
そういうところ俺 好きなんだよね

（屋敷）いや
そういうところがいいですね

（嶋佐）ああそう
だからすごい どっちもあるじゃん

何かバランスいいっていうか

（屋敷）バランスが
取れてないように見えてバランスがいい

（嶋佐）そうそう そういう結構
レベル高いバランス取れるっていうか

（屋敷）いやマジで僕も
惚
ほ
れてます

（嶋佐）知世さんってさ 毎月
どれくらい こっち帰ってきてるの？

（屋敷）知世さんはさ…
（嶋佐）ホント知世さんて…

（嶋佐･屋敷）
知世さんはさ… 知世さんてさ…
知世さんはさ… 知世さんてさ…

（与田）すみません
吐いていいですか？

は… 吐いていいですか？

（屋敷）大丈夫？
（与田）気持ち悪くて

（嶋佐）ダメダメ ダメダメ

（与田）気持ち悪いんですけど
どこだったら吐いて…

（嶋佐）どこも吐いちゃダメだよ

（与田）ダメかもしれない
（嶋佐）ダメじゃない ダメじゃない

（嶋佐）ダメじゃない 誰かちょっと
袋 袋　ゴミ箱 ゴミ箱…

（優子）ありがと

（与田）あー 吐いときゃよかったなー

（優子）また お母さんの話しちゃった

（与田）求められたからでしょ

（優子）うん
でも そっちのが盛り上がるし

（与田）何ていうかさ

うちらは まだ若いからって
なめられてるからムカつくんだけどさ

でもまあ だから これからだから

勉強してスキル身につければ
何だってなれるっしょ

はい 私です！ どーんって

胸 張れるんじゃない？

そうかも

って　ここぞで精神論 出ちゃった

（優子）ううん
サンキュー与田ちゃん

私 伸びしろ半端ないの忘れてたわ

そうだ そうだ

私 優子の絵も好きだけど
文章も好きだよ

他の誰かじゃなくて
優子の話 もっと読みたい

（優子）ホント？
（与田）うん

私 地元に話 合う人いなくてさ

（優子）私もだ

でも 本のおかげで
何とか生きてこれたんだよね

だから本の装丁がやりたい

（与田）私みたいな子が

わあ この本 私が読む本だ
って思うようなやつ

（与田）じゃん！
（優子）あ！

何かムカついたから
パクってきちゃった

うわ 不良！

ねえ 名刺ちょうだいよ

えー

はい

（与田）ふーん

（与田）いいね

しおりにするわ

はあ？ じゃあ返してよ！

（与田）クリエーター

（イヤホンから漏れる音楽）

では 買い出し行ってきます

（春子）はい 気をつけて

（リク）いってきまーす

（めいこ）優子ちゃん
今日 模試って言ってたね

（春子）うん
もうそろそろ帰ってくるよね

（優子）帰りました

（めいこ）あ 帰ってきた

（春子）あれ？

（めいこ）寝かせといてあげようか

優子ちゃん 外 行こっか

え どこ？

あそこ

（優子）うわー

（春子）いいね 今日も貸し切り

（優子）ここ すごいですね

（めいこ）ええやろ

市がナイトプール言うて
夜も開放してんけど

全く はやってへん

たまにここ来て ２人で飲んでんの

（優子）描いた絵
評価のいい順に並べられるんだけど

仲のいい友達は一番上なのに
私は一番下で

（めいこ）画塾の講評って—

キツいよな

（優子）自分だけレベルが違うのが
分かっちゃって

恥ずかしいし悔しいし 何より—

また がっかりされるって思ったら
立てなくなっちゃって

それは… 知世に？

お母さん 私のこと
何でも分かるみたいで

昔から着るものも 見るものも

習い事も全部
“優子にはこれがいい”って

正解を言っちゃうんです

でも 絵はずっと好きだったから

自分でやりたいって言って
ここまで来たのに

ああ またダメなパターンだって

分かるよ

（めいこ）え？

ごめん “私のことなんて
分かるわけない”って思うでしょ

ごめんね でも私だけは
分かるの ごめんだけど

話の腰折ってごめん 続けて

めっちゃ“ごめん”って言うやん

って お母さん…

あのさ ファンの前で
大変申し訳ないんですけど

あいつはプロデュース癖があんの

自分にね自信持ちすぎなの
もう昔っからそう

春子さんて うちのお母さんとは…

20年前に絶縁したっきり

え？ え？ え！

そうだったの！

（リク）どこ行ったんだろう

（ソラオ）うーん

ちょっとそこまでってことは
サンダルで行ける範囲とか？

（リク）サンダルで旅行
行く人もいると思うけど

（ソラオ）確かに

（リク）うん

（ソラオ）よし
これであとは揚げるだけだ

リク やってみる？

（リク）やってみたい

（ソラオ）はい

（ソラオ）気をつけてね
（リク）うん

（ソラオ）いい感じ

（リク）すご

（春子）大学出て すぐ

２人とも
フラフラしてたときがあって

２人で 店 出そうとか
ずーっと話してて

（めいこ）そんで 結局？

やらなかった

いろいろ あって

別々の道 選んで

それからずっと疎遠

（優子）お母さんは国枝知世だけど

私は私で何かにならなきゃって思って

いろいろ試してみたけど

どれも何か しっくりこなくて

画塾の友達は
２人とも なりたいものがあって

それに向かって頑張ってるけど

私は なりたい自分すら
分からないんです

（めいこ）なりたい自分か…

（春子）出た！ 息 一気に吸うやつ

（めいこ）ええやんか

これ見よがしにやるんですよ これ

前に「
chil
チル
」のインタビューでも
同じ話してた

え？ 知世さんの活動
チェックしてんの？

開き直らせてもらうけど
全部チェックしてまーす

（めいこ）マジで？

（優子）春子さんヤバ

あんなに仲良かったっけ？

（リク）さあ？

ねえ 無理しなくてもいいんじゃない？

え？

いや 今 目の前のこと頑張れ
って思うけど

何て言うか
違ったら また探せばいいし

そうですかね

うん　何か１個
見つかればいいんだって

（めいこ）そやね

（優子）そっか １個か…

よし　じゃあこの夏
何か１個 見つけます

頑張れ

って20年前の私が
言ってる気がするんだよね

はい

優子ちゃん
私 知世に会ってくるわ

ずーっと引っ掛かってた
人生の精算してくる

大丈夫？

（優子）えー 何が？

いや 昨日 結構
ボロカス言われてたじゃん

（優子）寝たら忘れたよ

それより今日バンドの録音なんだ

それよりって

あ 与田ちゃん 今日の夜 ね！

ＯＫ ＯＫ

（優子）忘れないでよ

すみません

（
紺介
こんすけ
）すいません
今日はランチだけでして

（春子）すみません 私
お客じゃなくて あの

知世の同級生で
青葉春子といいます

ああ　え？

知世… いますか？

知世さんは今
海外クルーと撮影中でして

海外クルー？

そうですか　じゃあ私
近くで時間潰して また来ます

（紺介）あ いや　あのちょっと

（紺介）あの こういった場合は

その… あ… あ よろしければ
こちらにお掛けになってください

（春子）いいんですか？
（紺介）どうぞどうぞ

（春子）じゃ
（紺介）はい

（紺介）はい

（春子）すいません

あ　お茶をお持ちしますね

（春子）ありがとうございます

（春子）へえー

（ベースの演奏）

（優子）お疲れ！

（中田）あ 優子ちゃん

（優子）録音 進んでる？

（ヒロ）順調だよ

いいね～！

（紺介）どうぞ
（春子）すいません

（ドアが開く音）

（知世）ハァ… ただいま

紺介くん お疲れ お疲れ

（紺介）撮影 お疲れっした

知世さんのお友達が

え？

知世 久しぶり

久しぶりじゃーん！

久しぶり

（知世）連絡くれたら
お店 予約してたのに

あれ？ このタイ料理って
まだ開いてたかなあ

（春子）いえ いいよいいよ！
急にごめんね

（知世）いや こっちこそ！
優子のこと ありがとね

（春子）ホントだよ
いきなしメッセージしてきてさ

もう びっくりしたよ

（知世）ごめん ホント

（春子）もう！

（春子）元気してた？

（知世）このとおり
どうにかやってるよ

（春子）いい店だね

（知世）ずーっと
来てほしかったんだから

（春子）タイミングがね

あの子 迷惑かけてない？

全然　すごくいい子だよ

どこがよ？
ミーハーで めんどくさいでしょ

めんどくさくないよ
悩みも話してくれたしね

悩みって？

うん？ あー

うん　何から言えばいいかな

何ていうか

あ 別にいいよ 大体分かるし

あれ？ 春子って今
何系の仕事してるんだっけ

雑貨とか服とか売る ＥＣサイトで

へえー いいね
春子 昔から服好きだもんね

今日の服も似合ってる

ありがと

でもさ 昔から
そういう色とか素材とか好きだよね

え？ そうでもないよ

ホント変わんない

まあ 似合ってるからいいけど

（春子）何？
（知世）ああ いやいやいや

えー 何？

（知世）ん～

たまにはさ 冒険しないと
価値観 凝り固まんない？

え？ 無理する方がダサくない？

（知世）そのセリフも春子っぽい

何それ

あのね私だって いろいろ冒険した結果
ここに落ち着いてんの

（知世）うん 分かった分かった
そうだよね

ていうかさ おなか減んない？

ハァ…

やっぱ言うわ

あのね 優子ちゃん
あんたのプロデュース癖に悩まされてんの

プロデュース？

するじゃん！ 昔っから
すぐ口 出して パッケージングしてさ

何？ はるばるケンカ売りにきたの？

違うよ！ 私…

（春子）そうかも

ケンカしに来たのかも

あのさ 知世って
私のチャーハンで有名になったよね

（知世）はあ？
（調理器具の落ちる音）

（紺介）失礼しました

だからさ 私が考えたじゃん
はぁちゃんライス

あれは ２人でお店出す計画の中で
出たアイデアだし

料理なんか これっぽっちも
興味なかったくせに

みんなの理想 背負っちゃってさ

背負ってないし

何？ 嫉妬？

全然羨ましくない

（知世）そうだよね

あんとき そっちが裏切ったもんね

帰るわ

（春子）今更 無理だった

ちょっと待って

お邪魔しました

（知世）ちょっと待って！
これだけ

（物音）
（知世）わあ！

え？

え？

あ 知世

（知世）腰…
（春子）え？ 何 何？

（知世）腰が…
（春子）は？

（春子）どした？ 腰？
（知世）腰が痛い

（紺介）知世さん！

また腰やっちゃったんですか？

俺がついていながら うう…

（春子）ねえ どうすればいい？
これ 救急車 呼ぶ？

（春子）大げさかな？
（知世）もういいから帰って！

（春子）ちょっと え？

いやいや無理だって

帰りたいけど無理！

明日の撮影どうしましょう

（知世）
痛
いて
ててて
ここはいいから もう

（春子）ど… どうすれば…

（与田）あれ？ シソ？
シソってどこに？

（優子）大葉ね
（与田）あ 大葉？ 大葉か

（与田）てか
あれ たくあんじゃね？

（瀬尾）あれが“真夏の後悔”か

（与田）あれ“真夏の後悔”なの？

（優子）いやいや まあまあ
お楽しみにね

（与田）ソラオさんの50倍
本格的だったわ

バンドの録音どうやったん？

めちゃくちゃいいのが
録
と
れたよね！

え 聴きたい！

（リク）まだミックス
終わってないから

（ソラオ）はい
“フィッシュフライタコス” お待ち！

（与田）おお～

いただきます

（優子）私 “シェフの気まぐれ”で
（ソラオ）ＯＫ

あ 俺もそれにしたかった！

（優子）一口あげるよ
（瀬尾）やった

いやあ リクくんの年で
チョコスリ好きなんて珍しいよ！

いや 結構いますよ

（与田）優子は何やったの？

私はコーラスとピアニカ！

ピアニカって インディ時代の隠れ名曲
「柔らかい人」のオマージュ？

え？ 知ってるの？

やっぱり！
元ネタそこなの渋すぎだって！

ってか そこ気付くのもすごいよ

（瀬尾）いやあ ホント
バンド羨ましいよ

リク 私もホントに楽しかった！

バンドだったかも私

（優子）誘ってくれて ありがとね

こちらこそ

ライブ 行けるとええな

あ そういえばさＨＡ９の人たちが
今度 仕事 見においでって

国枝“仕事 興味ある”って
言ったらしいね

（優子）うん 言った
覚えててくれたんだ

インターン？

はい まだ論地前なんで
詳しいことは言えないんですが

今 とあるプロジェクトの
チームにいまして…

（優子）マジ！ すごっ

俺 あした行くけど一緒に行く？

（優子）え… 行きたい！

与田も来る？

私は いいや

（優子）えー

ホントに行くの？ あんなとこ

行きたい… 行かない？

行くわけないじゃん ダサ

ソラオさん

はい　はい

タコスめっちゃおいしいです

よかった！ どんどん食べて

（めいこ）せや　食べよ 食べよ

ソラオ オススメは？

（ソラオ）ん～ “真夏の後悔”かな

（めいこ）何や それ

（海外クルー）カット！

（英語の会話）

（知世）痛たたた…

（春子）あ～ もう
ちょっと 何もしてないじゃん

（知世）体勢キープだけで
キツいんだって

（春子）ねえ もう
寄っかかんないで

今のはＯＫで

今度は春子さんの手の寄り
撮っていくみたいです

（春子）え～

カット ＯＫ

ノー!

春子！ もっと激しく！

はあ？

激しく

プロデュースすんな！

そう！ もっともっと！

うっさい！

ワオ！

すげえ…

（紺介）次は包丁を研ぐ知世さんの
イメージカットの撮影です

（春子）何なの この世界観…

（紺介）ジャパニーズ
ワビサビらしいっす

こういうのは相手のクリエーティブに
寄り添うものなの

はあ そうですか

知世でも こういう
Ｂ級な作品もやるのね

これ135か国で配信されてる
ビッグコンテンツですよ

え？

（紺介）
「ワールズ･エンド･クッキング」の
シーズン４

ウソ ウソ！
それ 私いっつも見てる

ちょっと ちょっとソーリー

（春子）ん～

その花 微妙だよね

（春子）う～ん

（知世）この紫の
いらないんじゃない？

（春子）こう？

（知世）ん～

（春子）こうとか
（知世）ん～

ごめん！
やっぱ造花じゃ無理だわ

ああ… あーっと
えーっと その… つまり…

（紺介）知世さん どうでしょうか？

（海外クルー）
How about this one?

いいね！

よし！

（スタッフ）色コート作業なんだけど
色を調整していくの

（優子）はい
（スタッフ）例えば ほら ここの…

（瀬尾）すいません
ホントにすいませんでした

（スタッフ）もうちょっと色を変えたい
印刷所に言う

（スタッフ）数字で言うと331Ｃ
（優子）331Ｃ

（スタッフ）に寄せてくださいって
印刷所に言ったりして…

だんだん調整していくっていう
そういう作業ね

気になってるところは
こう ペンで赤入れて 戻して で また…

（春子）はい

（知世）あー ありがとう
（春子）どうぞ

（知世）おいしそう

（春子）はい

（知世）ありがとう

（春子･知世）いただきます

（知世）おいしい
（春子）うん

（春子）おいしいね

いい
画
え
が撮れたって興奮してたよ

それはよかった

（ため息）

もっとスカスカかと思った

え？

テレビとかで いい感じでも
実際見たら大したことないかと思った

ごめん

私 そうあってほしかった

でも…

お店入った瞬間 分かった

ああ ここ好きだって

お店が本当に愛されてるのが分かった

（知世）あ　えっ…

（春子）ん？ ちょ 何？

腰 腰 腰

待って 待って 大丈夫 大丈夫

自分のタイミングで座るから
ちょっと待って

大丈夫 大丈夫 ゆっくりやるから
いいの いいの いいの

（春子）大丈夫？
（知世）痛たたた…

優子がいるときじゃなくてよかった

なんでよ

（知世）こんなかっこ悪いとこ
見せらんないでしょ

あ 痛たたた…

（知世）う～ん

ふう～

ホント言うと

優子と ここ半年くらい
うまくしゃべれないんだよね

だと思った

ケンカになるから避けちゃって

何してんの

最近 優子が
何考えてるのか分かんない

最近の優子ちゃんは

東京でパーティーへ行きました

何？ それ

ほら

ちょっと大人になった

今もなってるよ

かわいいっしょ

（知世）似合ってる
（春子）でしょ

（春子）ほら
（知世）こんな服 持ってたっけ？

（春子）貸してあげたの

（瀬尾）ごめんね

せっかく国枝来たのにバタバタで

いや 全然全然

今日に限って
すげえミスっちゃってさ

（優子）ああ
何か大変そうだったね

（瀬尾）俺のせいなのに
全部 先輩がやってくれて

そっかあ
まあ みんなプロだから

“瀬尾もチームの一員だよ”って
みんな言ってくれるけど 全然違うわ

高校生だからって

帰らされたし

インターンやってるなんて言って

本当は こんなだよ

（優子）すごいよ
画像の加工したり

みんなのコーヒー
買いに行ったりね

頑張ってたじゃん

誰でもできる雑用ばっかね

でも すごいよ 大人の世界で

（瀬尾）大人になりたい

（瀬尾）え？

（優子）泣いてたから

（瀬尾）いや えっ？

（優子）これで拭いて 涙

（瀬尾）これって…

あっ お弁当箱の包み

タコス臭い？

（瀬尾）少し

こういうときって
普通ハンカチじゃない？

だよね

ありがと

俺 時間進む薬あったら飲む

（優子）何？ その薬

飲んだら５年くらいたつの

それは瀬尾の時間だけ進むの？

（瀬尾）そう
（優子）世界は？

ああ どうだろう？

細かい設定は宿題にさせて

５年後か…

国枝 何になりたいの？

うーん それ聞く？

知りたい

じゃあ宿題にさせて

ああ うん

（優子）先 帰るね

（優子）じゃあね
（瀬尾）あのさ

与田には さっきの言わないで

言わない 言わない
てか冗談でしょ

じゃあ また 画塾で

バイバイ

（ヒロ）応募しなかった？

いや 他のバンド
クオリティー高すぎてさ

あれ プロだ

僕たちの曲なんて

ファンにたたかれて

願わない形で
チョコスリにも知られちゃうし…

知られるのに
願うも願わないもないでしょ

それに世に出してみないと
分かんなくない？

（ヒロ）そうだよ
何言ってんだよ 君は

みんなでせっかく作ったものを
悪く言われたくない…

（中田）だからって
勝手に決めすぎだよ

（リク）ごめん

（紺介）お決まりですか？

（客）はぁちゃんライス２つ
（紺介）はい

お飲み物は？

（客）ビールで
（紺介）はい

（紺介）ありがとうございます
少々お待ちください

はぁちゃん２つ
それとビールいただきました

はい はぁちゃん２つね

（紺介）いらっしゃいませ
奥のお席どうぞ

（客）ひょっとして

（知世）腰やっちゃった

（春子）紺介くん
これ ６番さんにお願いします

お待たせしました！

（春子）紺介くん 次

（春子）お会計お願いします
（紺介）はい！

（与田）瀬尾 優子は？

（瀬尾）来てないっぽいね

何か知ってんでしょ？

いや 知らないって

ホントに？

（瀬尾）知らないよ

そう

（LINEの受信音）

（与田）何だ 仮病か

（優子）ごめん

（与田）インターンで
何かあったのかと思った

（優子）別に

インターンは行ってよかった
プロの世界 知れたし

１回行ったくらいじゃ
分かんないっしょ

分かるよ　ってか行ってない人には
絶対分かんないね

は？

で 思ったんだけど
画塾は何かやっぱ違うわ

受験のための美術って楽しくないし

何それ

美大じゃなくても まあ

（与田）そうだね

バンドやったり インターン行ったり

逃げるとこいっぱいあっていいね

逃げてないけど

評価されるの怖いから
そうやって逃げてんでしょ？

しっくりこないんじゃないよ
理由つけて逃げてるだけじゃん

（与田）ＺＩＮＥもさあ
何日描いてないの？

（優子）だって忙しいから

（与田）画塾も どうせ
お母さんに言われて来たんでしょ？

（優子）違う！

（与田）私は美大しかないから

（アラーム音）

（アラーム音）

（紺介）じゃあ お先に失礼します
（春子）はい

（紺介）知世さん そろそろ病院から
帰ってくると思いますんで

（春子）うん　お疲れさま

春子さん
ホントに帰っちゃうんですか

知世に最後 挨拶だけしたら行くよ

マジかあ

マジでか

そりゃ そんないつまでも
いられないでしょうよ

（紺介）でも春子さんいた方が
知世さん めっちゃいい感じだし

いなくなっちゃうなんて
さみしいっす！

ありがとね　またね

はい！ ありがとうございました

（リク）あ

予備校は？

辞めた

曲は？

出さなかった

そっか

（リク）ライブ
連れてけなくてごめん

（優子）ううん

（LINEの受信音）

（知世）ただいま

あ！

これ 中 見ちゃった

私たちのヤバすぎる過去の遺産

（知世）２人のだから
捨てないで取っといたの

だからって腰まで壊す？

（春子）これヤバいよ

私と知世でさ
ユニット組んだじゃん

（春子･知世）ザ･ペンズ！

（知世）ダサッ
（春子）あえてのこれね

あー しかもこれチョコスリ特集
勝手に組んだやつじゃん

懐かしい

あ！ 今日 ライブだよ

（知世）あ ねっ
（春子）うん

でも おじさんになったレックマン
見たくねー

だよねー

でさ 一番ヤバいの これね

ゲッ…

（春子）はい 今週も始まりました
ザ･ペンズ･オンザ･レディオ

パーソナリティーの春子です

（知世）知世です

はい　まずは お互いを
インタビューし合って…

（知世）あー 無理無理 無理無理

キツいねえ

若気の至り 爆発しすぎでしょ

（春子）まあ でも今だって至るしね

至って至って今の私たちじゃん？

（春子）知世さん
最近の活動は？

確かに
（春子）知世さん
最近の活動は？

（春子）知世さん
最近の活動は？

（知世）はい
雑誌でコラムを書いたり

イラストを描いたり

最近はデザインもやり始めて

フライヤーとか
Ｔシャツなんかも作ったり

24時間 何かしら作ってます

（春子）おおー クリエーティブ

（知世）
あとは とりあえずイケてる場所とか
イケてる人に会いに行って

話すみたいな活動なんか
しちゃってます

ホント これだけは
優子に聞かせられない

墓まで案件だわ

何？

さっき送っといたよ

（知世）はあ？ 痛！ 痛っ

ねえ？

（春子の笑い声）

（春子）あのー でも知世さん

さすがに いろんなことに
手出しすぎじゃないですか？

（知世）えー 節操なさすぎ？

（優子）お母さん

（知世）でも私は
全部に本気で手 出してるから-

常にフルスロットル！

（春子）知世っぽい

（知世）でしょでしょ
信念持ってフラフラしてんの

（知世）だから業界人！
私を見つけろー！

（春子）だそうです！

（知世）私はここにいますよー
聞こえますかー？

飲む？

（知世）飲む

（春子）今後の野望を
聞かせてください

（知世）えーっと まずは相方の春子と

めっちゃイケてる店を
オープンさせます

（春子）その先は？

（知世）コラムの連載も持ちたい

（春子）その先は？

（知世）えー

（春子）結婚とか…

（知世）想像できなーい

（春子）子供は？

（知世）いやー もっと想像できない
私が親とか向いてないって

（春子）分かんないじゃん！
“もし”なったらどんな母親になりたい？

（知世）えー 何だろう

（知世）私はかっこいい女でいたい

仕事バリバリやって 新聞読んで
選挙とか行って おしゃれして

（春子）自分のことばっか

（知世）いや それでさ-

“うちのママ イケてる”って
思ってくれたらうれしい

そしたら
あたしはキツく抱きしめんの

（春子）いい母ちゃんじゃん

じゃあ 最後にその未来の子供に向かって
ひと言どうぞ

（知世）えっ ひと言？

（知世）じゃあ ここで曲いきましょう

（春子）えー ちょっと あ 逃げた！

（知世）
チョコレートスリープオーバーで
「このままじゃ」！

♪～「このままじゃ」

（ドアが開く音）
（優子）リク！

（リク）ノックしてって言ったじゃん

（春子）かっこいいお母さんの

青くてダサいとこは
若者の希望だよ

～♪

（ヒロ）あれ？

やっぱ いた

ホントは音漏れじゃなくて
中で聴く予定だったのに

やあ

“やあ”じゃないよ

（リク）ごめん！

ごめんじゃ許されないと思うけど

（中田）やっぱり外からじゃ
聞こえないね

（ヒロ）ねー

（優子）うちのお母さんさ

大したことなかったわ

飽き性だし

でもね

ちゃんと戦ってたんだよね

打つべし打つべしっつってね

だから

納得いってなくてもダサくても

世に出した方がいいんだよ

多分

きっと

作りたい

やっぱり
もっかい みんなでやりたい

です

もう締め切り終わってるよ

てか ライブも終わるよ

しょうがないヤツだな

言っちゃえよ

（中田）言っちゃえ

（中田）早く

（リク）あとさ 優子ちゃん
（優子）ん？

やっぱ歌ってくんない？

えっ

いや 優子ちゃんの声が
イメージにぴったりで

えー

（ヒロ）遅いよー

（中田･優子）ごめんごめん

（中田･優子）よいしょ

（ヒロ）さあ やろう

（優子）やろう
（ヒロ）よっしゃー やるぞ！

（中田）お邪魔します

（ヒロ）どうぞ 適当に座って

（優子）ありがと お邪魔しまーす
（リク）お邪魔しまーす

（ヒロ）いいねぇ

もはや歌詞創作してる時点でさ
カバーの範ちゅう超えちゃってきたかな

（リク）いいよ
自分たちがいいと思うの作ろうよ

（ヒロ）賛成！

（中田）やっぱり これ
どっちかにするか

（ヒロ）そうだよね
まあでも ここ大事だからね

（不気味な音）

（不気味な音）

（中田）行こ行こ 行こ行こ

（ヒロ）ねえ ねえ
（中田）やめてよ！

（リク）ちょちょ… ちょっと…

（中田）行こ行こ 行こ行こ

（ヒロ）大丈夫 大丈夫
大丈夫だって！

（中田）いくよ

（不気味な音）

（ヒロ）えっ？
（史郎）まぶしい まぶしい え… え？

（ヒロ）お父さん？

君たちに触発されて
久々に弾いちゃったよ

（不気味な音）

（４人）えー！

まぶしい まぶしい

（ヒロたちの安どする声）

（リク）びっくりした
心臓止まるかと思った

（知世）見て
私たちの店の企画書

（春子）ああしよう こうしようって
永遠考えてたね

（知世）ずっとしゃべってたね

（春子）全然違うね

（知世）全然違う

（春子）知世
（知世）ん？

あの日 行かなくてごめん

うん

一緒に店やるために
いろいろ準備進めてたのに

（知世）いざ店の内見 行くって日に
ドタキャンね

あんときの私は

ひよった

うん

じゃあ いくよ

みんな いい？

はい

準備ＯＫ

こっちもＯＫ！

（リク）回った

（一同）３ ２ １

♪～

♪あんときのバイバイ思い出す

♪どうしても後悔しちゃうよ

♪
憂鬱
ゆううつ
にバイバイのフリして

♪ホントは怖かっただけ

あれから何度も後悔した

あー あんとき
知世と一緒に店やってたら-

今頃 私も…

なんて思うこともあったよ

（知世）うん

♪将来はどうなってんだ

♪大人も分かっちゃいないんだ

♪ユウレイになってしまうよ

♪アラームかけてないだろ

♪続き見させてくれないか

でも

思ってた未来とは違ったけど

私は気に入ってる

強がりじゃないよ

うん　分かるよ

あたし 店やろっかな

ずっとやりたかった

（知世）いいじゃん

いつ始めてもいいよね

そうだよ

そうだよ
～♪

～♪

（春子）え もう
ちょっと飲めないよ
～♪

～♪

（知世）はい 乾杯
～♪

～♪

（春子）乾杯

（春子）うーん

（リク）アップするよ

（ヒロ･中田）ＯＫ！

（リク）上がった

（優子）そわそわする～

（中田）ねえねえ コメント来た？

（ヒロ）いや まだだろ

（ヒロ）いや まだだろ
（ＬＩＮＥの着受音）

（ＬＩＮＥの着受音）

（リク）多分まだだね
（ＬＩＮＥの着受音）

（リク）多分まだだね

（ヒロ）どうなんだろうね
（中田）緊張する

（リク）再生数 伸びてほしいな

（ヒロ）バイバイ 気をつけてね

（中田）じゃあね
（優子）バイバーイ

（中田）じゃあ また
（優子）じゃあね

（リク）あのさ
（優子）ん？

（リク）作った曲 聴きながら
遠回りして帰らない？

ああ ごめん

私さ まだやり残しちゃったこと
あるんだよね

行ってくるね

（録画の開始音）

（知世）やだ～

（春子）ダメ もう逃がさないぞ

（知世）無理！
（春子）ほら

（春子）あんたの子へメッセージ！

（知世）えーっと えーっと だって
メッセージなんてないよ

んーと でも　うーんと

うーん…

あなたに

そっちで何があったのか

どんな出会いがあったのか

帰ったら教えてね

話そ

以上！

以上

はい ＯＫ！

（優子･与田）せーの　キャー

（優子）私 絵やっぱ好きだ
一番下手だし先生ムカつくけど

この夏 やりたいこと１つに
絞ろうと思ってたんだけど

（与田）うん

正解は１つじゃないっぽい

え？

バンドも YouTubeもやる

与田ちゃんに文章 褒められたから
文章もやりたい

全部やる

また増えるかも

（与田）欲張り

本当は私もインターン行きたかった

そうなの？

何でもすぐ飛び込む優子が
羨ましかった

え？

（優子）もう

与田ちゃん　潜水勝負しよ

いいって

いくよ　せーの

（優子）私 お母さんと今
めっちゃ話したいんだよね

（与田）いいじゃん 何話すの？

（優子）友達が出来たって

（優子）宿題 出しにきたよ

（瀬尾）え？

やっぱ何回考えても
私は なりたい自分が毎日変わる

そんな自分
めっちゃ嫌いだったんだけど

今は それでもいいっかって胸を張る

だから雄大瀬尾
数年後また会おう

私はかっこよくなる

なんでフルネーム

受験会場で会おうってこと？

バイバイ

（優子）お世話になりました

（めいこ）元気でね

（春子）優子ちゃん また来てね

（優子）春子さん

（春子）知世によろしくね

（優子）はい

リクもありがとね

（リク）うん

（優子）夏が終わる

宿題は持って帰ろう

いつかは選ばなくちゃいけないかも
しれないけど

今は選ばないことを選びたい

（優子）おーい
（中田）ヤッホー

昨日送ったデモ 聴いてくれた？

（優子）めっちゃ よかった
（ヒロ）でも 煮詰めるとこはあるよ

（史郎）何だ“煮詰める”って
何だお前 博士か

（ヒロ）いやいや でもね…
（史郎）最高だよ

（史郎）何言ってんだよ
一番よかったっつってんだよ

（リク）ケンカやめてよ

はい ありがとうございます

はぁちゃんライス２つと
春雨サラダ１つです

はい！

（ソラオ）来るよ 来るよ

ああー 出た！ タコスくん
ほらほら

人気 出るといいな

では

（４人）いただきます！

♪～

（優子たち）３ ２ １
♪～

♪～

～♪