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Original subtitles

(ナレーター)昭和20年 焦土と化した広島県 呉(くれ)の町で

復員兵 広能昌三(ひろのしょうぞう)ら 一団の若者たちは―

青春の欲望がほとばしるままに 暴力世界の制覇に命を燃やした

だが親分 山守義雄(やまもりよしお)の 老獪(ろうかい)な支配と―

権力争いの仲間割れとで―

若者たちは 次々に葬り去られていった

昭和37年

山守は 広島市最大の暴力団 村岡(むらおか)組の跡目を相続して―

広島に君臨したが―

これを不満とする―

村岡の舎弟 打本 昇(うちもとのぼる)は―

神戸の広域暴力団 明石(あかし)組と盃(さかずき)を交わして

対決の構えを見せた

山守組もまた―

若頭 武田 明(たけだあきら)の 献策によって―

明石組のライバル 神和(しんわ)会と結託し―

広島は西日本を二分する―

二大組織の対決の 最前線となった

こうした危機を回避するために―

広能は呉の長老 大久保憲一(おおくぼけんいち)

明石組幹部 岩井信一(いわいしんいち)と組んで―

山守引退の 工作を進めたが―

組の防衛を主張する 武田と衝突して―

山守組を破門された

これを知った明石組もまた 山守に接近する打本会幹部

早川英雄(はやかわひでお)を破門させて 報復した

早川は山守組に走って 打本への攻撃に転じた

こうして広島と呉を舞台に―

明石組系列下の打本会と広能組―

神和会系列下の 山守組とのあいだで―

血で血を洗う 一大抗争の火蓋(ひぶた)が 切って落とされたのである

♪~

~♪

(ナレーター)昭和38年 秋

東京オリンピックを翌年に控え―

池田(いけだ)内閣の 高度経済成長政策のもとで―

好況と繁栄に酔いしれる 市民社会は―

秩序の破壊者である暴力集団に ようやく非難の目を向け始め

それに呼応して警察も―

頂上作戦と呼ばれる全国的な 暴力団壊滅運動に乗り出していた

(警察官)どけ! 邪魔だ!

(刑事A)邪魔じゃ どかんか!

(警察官)主任! (主任)おう

(警察官)道具らしい物(もん)いうたら こんな物しかあらせんです

(主任)火縄銃か (警察官)はっ

こがなもんでケンカしとるわけじゃ あるまいが お前たち! うん?

(ナレーター)こうした警察陣の 予防作戦にも関わらず

広島市の中心街は 東西に二分されて―

打本会と正面から―

対決する構えになった 山守組には―

中国各地から続々と 助っ人の組員が集結していた

そして山守は自分の経営する キャバレーに宿泊し―

多くのボディーガードを 引き連れては 朝風呂に通って―

世間の注目を集めていた

一方 呉では山守組傘下の 槇原(まきはら)組が 広能組と対決して―

すでにゲリラ戦の様相を呈していた

(的場(まとば))おい 非常呼集じゃ!

(組員)よーし 急げ!

(槇原政吉(まさきち))中通りで 広能が上田(うえだ)と―

メシ食っちょるけん 行って殺(と)ってきちゃれい

(組員たち)へい!

(関谷(せきや))おやっさん おやっさん! (広能昌三)なんなら?

(岩見(いわみ)益夫) 槇原のやつら来ますけん 乗ってつかい

(関谷)おじき! はよ はよ! (岩見)はよ!

(組員たちの怒声)

(ナレーター) こうした緊張の中で

生き返ったように 躍動し始めたのは―

かつての広能たちのように―

若い野心と欲望に飢えた 各組の若者たちであった

(柳井(やない))これならポリ公(こう)の 探知機でも バレやせんじゃろ

(本田(ほんだ))おう 絶対じゃ

(柳井)おっ 人が来たぞ (谷口(たにぐち))ええっ!

(本田)バカタレ! すぐ立たんかい おら!

(谷口の口笛) (柳井)ションベンじゃ

(本田)こっちじゃ! (谷口)ええっ!

(小便の音)

(谷口)おい 錆(さ)びやせんかのう?

(柳井)あ? (本田)あん?

(本田)ああっ!

ああ… 何をすんじゃ お前は!

(女A)ありゃあ どうしたん? その頭

(山本(やまもと)) おお 戦争が始まるけえのう 心身共に清めとるんじゃ

(金田(かねだ))お前らとのつきあいも 断つけえ 近づくなや

(女B)フン! いびせえで チンポが立たせんのじゃろ!

(金田) コラッ! ババアが コラッ!

(山本)なんじゃい 待て コラッ! (金田)待てーっ!

(杉本(すぎもと))兄貴!

そがな体で 帰ってこられんでも…

(松井(まつい))おやっさん (早川英男(はやかわひでお))おお 松井!

(松井)このたびは…

(早川)まあまあ 座れ座れ

こんなは 故郷(くに)で 入院しとったんじゃろうが

ケンカと聞いたら カッカして身がもたんですけえ

タマ除けぐらいなら まだ役に立ちますけえ 頼んます

まあまあ 無理をせずに 養生せんかい おお?

三重(みえ)ちゃんも こっちの水は 久しぶりじゃろうが のう?

(三重子(みえこ))ええ 3年ぶりですけえ

(早川) ほお そがいなるかのう ハハハッ

おっ 一杯飲めや

(森田(もりた) 勉)手に入ったんか お?

まあ まあ 乗れや

(森田)ええ手触りじゃのう

おい…

戦争になりゃ消耗品じゃけえ また頼むわ

(笑い声)

(明美(あけみ)) ヤッチン ミーコが広島に 戻ってきちょるの 知っとんかい?

(福田泰樹(ふくだやすき))ミーコ?

三重ちゃんよ あんたの前のレコじゃった

広島で見た者(もん)がおってじゃけん

どがな女(スケ)じゃったかのう

(明美)待っちょるけん 行くよ

(森田)ああ また頼むど

(明美)任しちょって

(福田) どがな体しとった女子(おなご)かのう

(森田)バカ この はよう出せ!

(金属を研磨する音)

(戸をたたく音)

(河西 清(かわにしきよし))誰なら?

(広能)わしじゃ

(河西)ああ おやっさんですか

広島へ出る用事があったけえ 寄ったんじゃが

撃針がイカレとるけじゃけえ 見とってくれや

(河西)はあ… じゃったら これを持ってってつかあさい

(広能) ああ わしゃ いらんわい

(河西)いやあ 万一いうこともありますけえ

事故だけは起こさんように 気をつけえよ

(組員たち)へい

何しとんじゃ?

(竹本 繁(たけもとしげる))青酸カリです

ばらダマに こいつまぶして ぶち込んだりゃあ―

一発でコローッと イキよりますけえ

おやっさん 道具もそろいましたけえ―

わしらに槇原殺(と)りに 飛ばせてつかあさい

まあ もうちっと様子見んかい

なんぼ 敵じゃいうても わしの元の親筋じゃけえ―

こっちから殴り込むいうわけに いかんじゃろう

(岩見)ポリ公のやつら―

おやっさんの仮釈(かりしゃく) “取り消したる”ちゅうて―

嗅ぎ回っとるようですけえ

そこらへんも考えられんと…

ああ 用心だけはしとけや

町 出るときは1人で歩くなや

(河西)へい

ほいじゃ 頼むけの

(一同)へい

(ナレーター) このとき広能は14年前の殺人による 20年の刑が残っており

仮釈放中の身であった

(広能)打(う)っちゃん おるかの (本田)へい

(三上(みかみ))何なら わりゃ!

どこへ行くんない!

呉の広能じゃ

(三上)どうも… (広能)脅かすなや

(組員たち) あっ おいでなさい

(森田)どうぞ (広能)おい あれは どこの者(もん)な?

行儀を知らんのう

(森田)出所して間なしですけえ 気が立っとるんで

(森田)何か? (広能)いや

(岩井信一)よう (広能)おっ

(打本 昇)西の川田(かわだ)じゃ

“わしの側で立つ” 言うてくれちょるけえ―

まあ 一緒に 連れちゃっとくれ

(川田英光) 川田ですけえ よろしゅう

(広能)おう (岩井)おう

今 岡島(おかじま)はんから電話があってな 向こうで待っとるそうや

(広能)ほうな じゃったら すぐに行こうかい

(岩井)おう

(ナレーター)この日 広能たちが訪ねた相手は

広島市西郊(せいこう)で 古くから博打の縄張りを守る―

義西(ぎせい)会の会長 岡島友次(ともじ)であった

岡島はたびたびの 抗争事件にも―

常に中立の立場を守ってきた 穏健な人物であったが―

広能たちが 広島で優位に立つためには―

ぜひとも味方に加えて おかなければならない―

実力者であった

(藤田(ふじた)正一) おやじは すぐ見えられますけん

おじさん わしら若い者(もん)は―

おじさんの側で立つと 腹くくっちょりますけえ

そのつもりで おやじに 押してみてつけん

(広能) ほうか すまんのう

こんな 体のほうはどうなる?

おかげさんで 今んところは…

あれは 昌(しょう)ちゃんと懇意やったんか?

(広能)ああ

中におったころ 知り合(お)うてのう

ここが いかれとるけえ 面倒見ちゃってたんじゃが―

“恩返しや”いうて 苦労してくれとるんじゃ

(打本)のう 岡島が “乗らん”言うんじゃったらよう

この話は 無理に押すことはないすよ

ここだけの話じゃがよ

ここらのプー屋の胴は この川田にやらしとるんじゃが

岡島んとこも近頃メッコ入れて 乗り出しちょるげな

味方になってくれんのはええが―

これらのシマが荒らされんのは つまらんけえのう

打本はん あんたがやで―

自分で自分の首 守れるような人やったら―

わいらも苦労しまへんがな

ふん こっちのケンカじゃ ありゃせんのに…

おお そっちが山守と 向き合(お)うたけん 起きたことで

はよう山守 殺(と)ってみせんかい

のう 岡島は そがな筋の通らんことはしやせんよ

ハッ わしらのことじゃったら 気にせんでええっすよ

(岡島友次) いやあ どうもどうも

(打本)おお

こりゃあ…

はあ… 大体の話は これから聞いちょりますがのう

正直 言うて わしゃ

どっちに肩入れするいうて 決めるわけにゃ いかんのですよ

わしゃ この昌ちゃんとも 山守組の武田とも―

兄弟盃しちょる間柄ですけん

(広能) 武田から何か言うてきたんや

(岡島)いいや じゃが 言うてきても答えは一緒よ

そうじゃろうが

今 ここでケンカして あとに何が残るんや

金は使う 若い者(もん)は失(な)くすで いったい 誰がどう得するんや

わしも 一方に傾いて―

反対から恨まれるのは つまらんけん

のう… 山守と話は つかんのかのう

(打本)いや わしは 山守と話す用意があるんじゃが

これが言うこと聞かんのじゃ

“聞かん”言うて あんた何を言いよるんや

わしゃ 18年も一緒にやってきて 破門くうとるんで

それに 今までのいきさつを 見てみない ああ?

話のつくそばから みんな寝首かかれとるじゃない

兄弟 そっちもで

黙っちょるけん 山守に 今でもカスリ取られてるんじゃない

(岡島)ふんっ

(広能) ここで わしらが引いてみぃや

山守が黙って あんたのシマ ほっとくと思うとるんの?

(岩井)岡島はん

あんたが どない思われようと この戦争は避けられまへんねん

その際 敵か味方か きちっと色分けしとかな―

被害を受けるのは おまはん方や

中立や何やちゅうたかて―

頭に血ぃの上った若い者(もん)には 見境つきまへんさかいな

どないだ? ええ返事 聞かしとくれなはれ

(カーラジオ) ジャイアンツの 攻撃に入ります

3回に塩(しお)原(ばら)のスリーラン ホームランが出まして

幸先よいスタートを 切りました…

(窓をたたく音)

(藤田)待たして すまんのう (野崎 弘(のざきひろし))はっ

どっちが勝っとる?

巨人が3対0で

(藤田)ああ ほうか

そっちら 今日 なんぼのハンデでいっとるんや?

広島に3点ですけえ

(藤田)ほうか わしらのほうは 2点で切って出したんじゃが―

ちっと甘かったかのう

これからも ハンデ教えてくれや のう

そちらとは いずれ アンコになるんじゃけえ なあ

はあ… すまんです

(引き戸が開く音)

(川田)おう

わりゃんとこの おやじは いよいよ 煮えきらんのう

そのうち泣くようになるんで

よその者(もん)と ちょろちょろしよんな!

(車のドアを閉める音)

(車が走り去る音)

のう 昌ちゃん よう分かった

役に立つんなら わしを使(つこ)うてくれや

ただし わしにも考えがあるけん―

そっちのほうから手は出さんと 約束しとくれや おう?

(広能)おっ 分かっちょる

まあ なにぶん よろしゅう頼んます

ほいじゃ

(ナレーター) だが そのころ 呉では

広能たちの予想外の事件が 突発していた

広能組の幹部 河西 清(きよし)が―

今(いま)西(にし)通り2丁目の路上で 射殺されたのである

槇原組員 数名と 遭遇した河西は―

口論の末 拳銃の引き金を3度引いたが―

いずれも不発

槇原組員 森久 宏(もりひさひろし)の 銃弾に倒れたのであった

(水上(みずかみ)) 会長 上でおやっさんが―

大久保さんや岩井さん方と 待っとられますけえ

いやあ わしゃ 広島に急用があんじゃ

(水上)今後の相談がありますけえ “是非”いうて言われとりますが

表に警察が張っちょるんど!

葬式に来てよう―

そっちとこのケンカの 巻き添え食わされてたまるかい

第一 殴り込みでもあってみぃ

わしの命は 誰が保障してくれんだい!

(和田(わだ)) 打本さん 帰られまっけど よろしいでっか

(岩井)止めなんだんか

(水上)おやっさん (広能)もうええ

(広能) あがな者は当てにしとりゃあせん

清は わしの身代わりで 死んだんじゃけえ―

わしの手で山守を殺(と)ったらにゃ いけんのじゃ

おお 表のシケバリが解けたら 広島へ攻めたるけえ 用意しとけや

(水上)へい!

(大久保憲一) おい そりゃ やめとけ

(広能)なしてですか

(大久保) わしんとこへ入った情報じゃのう

そっちらが攻めていきゃ 警察は―

“全員パクる”いうて 言うとるそうじゃ

サツのご機嫌うかがっとったら ケンカできやせんですよ

まあ 聞けや

ハア… ええか

山守や槇原は 広島に逃げとるんじゃけえ

呉だけは がっちり固めて―

あれらが戻れんようにすりゃ 向こうが根をあげらぁや

山守の金ヅルは この呉のシマが主(おも)じゃけの

(岩井)わしも賛成や

昌ちゃんが広島へ出てったら―

血ぃ見んことには 収まりがつかんやろ

ほたら 話つける糸口も のうなるしな

話? 山守とどう話つけるんなら

広島のケンカいうたら―

殺(と)るか殺(と)られるかの 2つしかあらせんので

いっぺん後手に回ったら 死ぬまで先手は取れんのじゃけえ

現に わしが 格好つけちょったけえ

清は殺(と)られちょるんど

わしゃ 仁義の立たんことはすな 言うとんじゃ

なんぼ悪(わる)でも 山守は そっちの元の親やないけえ

(広能)この場へ来て 仁義もクソもあるかい

山守 殺(と)ったら わしも死んでやるよう

(岩井)ほな 勝手にせい

明石組には明石組の メンツがあるさかいな

筋の通らんケンカには 応援できんわい

(広能)誰が“応援してくれ” 言うとってや おう?

よそから来てもろうて ケンカしてもろうとは―

ほっても思うとらんのじゃ こっちは

(上田利男)兄貴

岩井さん

兄貴の応援は わしもいますけん それはええですが

そっちのメンツと呉の者(もん)の血と どっちを大事にするのか―

本家のはっきりした返事を もらってつかい

それによって わしらは腹を決めますけん

なあ 昌ちゃん

わしの立場も苦しいんや

こっちは今 関東の連中とゴタゴタしよって

おやじさんは上京中やし

そやさかい兄弟のほうに 手が回らへんねや

なあ もうちっとの間(ま) 時期待ってくれや

せやないと わしゃ 兄弟に対しても本家に対しても―

立場がたたへんねや

それに そっちは今 仮釈中やないけ

もしパクられて 残りの弁当食わされたら―

こっち側はバラバラや

な? そこらも よう考えてや

トシ

おんどりゃ よけいなカバチタレるな!

誰が広能に助っ人せい いうて言うたい!

(上田)じゃが おじさん… (大久保)トシ!

わしゃ 事業があるけん

どうでも あれにつく 言うんじゃったら―

わしと縁切ってからにせい

いつまで わしを追い回すんじゃ

(武田 明) 広能に よう話してくれましたか?

“呉を出るな”いうて 釘を差しといたけえ

それでえかろうがい 人目に立つけん はよ去(い)んでくれ

(武田)ほうですか

じゃったら 今日はこのまま黙って 帰りますがのう

もし広能が広島に 出てくるようなことがあったら―

たとえ おじきさんじゃろうと―

今度こそ 遠慮のう 首をもらいますけん

よう 覚えといてつかあさいや

(車が走り去る音)

(組員たちの怒声)

(男)すんまへん

(組員) ええかげんにせんか!

(武田)どうしたんなら (山崎(やまざき))へい

大阪から 応援に来ちょるやつですが―

“小遣いが足らん”言うて 絡みよるんですけえ

何を一人前(いちにんまえ)なこと言うちょるか

今度 言うてきたら 40~50上げちゃれ

(古賀(こが))あのう さっき 山守の御大(おんたい)から使いが来て―

“これを”言うて…

応援の連中の旅館代じゃないか

(古賀)へい

こんとな物(もん) おやじに払(はろ)うてもらえ おやじに

御大が一銭も 出しよらんもんですけえ―

宿屋が往生して―

“警察へ訴える”言うて 騒いどるそうです

料理屋

芸者

酒!

人の懐じゃ思うて ようけ遊んどりやがるのう!

何ない この “18万”ちゅうのは?

(山崎)あっ これ 山守さんが 旅の連中を連れてかれる―

うどん屋のツケですわ

枯れ木も山のにぎわいじゃがのう

この分じゃと 枯れ木に 山が食いつぶされるわい

(ナレーター) ケンカの助っ人に対する ばく大な出費は

ケンカ以上に 当事者の頭痛の種であった

一方 それを察知した警察は―

縄張り内のカスリの取り立てに 監視の目を光らせ―

資金源根絶の作戦を進めていた

(警察官)コラッ!

貴様 また やっちょるんか

(古賀)何もしとりゃあせんど

(警察官)まあ ええから 来いや!

(古賀)こんなら 放せや!

(一同のどなり合う声)

(女性の悲鳴)

(山守義雄) このままでおったらよ

槇原も だんだん呉に 戻れんようになるけん

この際 みんなで一致団結して 広能をたたき潰さんかよ んん?

(武田)まあ 待ってつかあさい

広能の後ろには 明石組がついとりますけん

もうちいと時期を見んと

わしが今 計画 練(ね)っちょりますけん

(江田省一(えだしょういち))向こうに 明石組がついちょるんは―

初めから 分かっとることやなあか のう?

ほうよ

そっちは こっちの安全地帯で ぬくぬくしちょるけん―

笑うておられようがよ

わしの立場にもなってみいや

誰がぬくぬくしとるんじゃ お?

ほう言うんじゃったら…

この勘定払(はろ)うてから言(ゆ)うてくれい

旅の者(もん)の勘定で

そっちら 今まで1円でも 払(はろ)うたことあるんや おう?

(山守)まあまあ 明(あき)ちゃん

そう こまか銭のこと 言いなんなや

(武田)おやっさん

わしのとこは もう1千万しか 残っとらんのですよ

カスリは不自由になるし

ほいで どう戦え言われるんですか

(早川)ハハハハッ

頭(かしら)! 銭のことなら 心配せんでも―

山守さんは 競艇の会長もしておられるし―

銭なら うじゃるほど あるじゃないですか のう?

(江田)ほうじゃ ほうじゃ

おやっさんに出してもろたら ええじゃないか

おやっさん 出しちゃってつかあさいや

競艇は こっちの渡世(とせい)とは 関係ないんじゃけえ

会長じゃいうてもよ 自由にはならせんのよ のう?

(武田)じゃったら こっちの言うこと聞いてつかあさい

おい 外せや

ええですか

このケンカ うちが守る側ですけん

旅から攻めてくる連中は どこへでも飛べますがのう

こっちら若い者(もん)は パクられるだけで

そのあと 明石組が攻めてきて 防ぐ兵隊がおらなんだら―

向こうの言いなりになる だけでしょうが

まあ ケンカには勝っても 勝負には負ける ちゅうことですな

(江田)…で どうせえ言うの?

ええか

若い者(もん)に よう言うちゃって

絶対 跳ねっ返りせんように 抑えとってくれい

その間 わしが分断工作するけん

分断工作?

要するに あれら バラバラにしちゃるんですよ

大久保は もう動けんように クンロク入れてありますけん

打本は自分からは動かんでしょう

ほうすると 広能が当てにするのは―

西の岡島だけや

岡島…

(吉井(よしい))岡島さんなら あそこに来とりますが

あん外道(げどう) 猫かぶりやがって わしの店で

若い者(もん) 呼んで 事務所 引っ張ってきちゃれ!

(武田)岡島のことは わしに任せてつかあさい

お前らも席 変えてくれんかい

アイ子にゃあ わしゃあ 200万 前借りさせちょるんぞ

泥棒猫みたいなマネしとりやがって あれ わしの女じゃけん

クソ この あいつは わしに オメコの毛も触らしゃせんの…

(アイ子)山守さん 見えとってよ

(岡島)気にすな

お前の前で殺(と)られりゃ本望じゃい

(アイ子)いやっ バカじゃねえ

同じ広島の者(もん)が なして 敵(かたき)同士にならにゃあいけんの

わしはのう 広能についたけえ

山守が手が出せんようになって 戦争にならんのよ

わしが山守と そのうちに話をつけるけえ

心配すな

(安川(やすかわ))おう 止めや

(急ブレーキの音)

(安川)お前ら待っとれ のう

財布が軽くなったけえ―

ちいと 打本のおやじに 銭(ぜに)貸してもろうてくるわい

(前島(まえじま)) おやじに会いに行くなら わしも行くけえ

(ホステス)大将 打本の親分知っちょるん?

(安川) おお 闇市時代からのポン友よ!

(前島) お前ら待っちょれよ ヘヘヘヘッ

(谷口) おいおい! お前ら なんなら

(安川)おやじ おるんか? “銭貸せえ”言うちゃってくれや

(本田) バカタレ 酔っ払いやがって ここをどこじゃ思うとるんなら

(前島)お前らじゃ話にならん おやじ出せ おやじ

(一同の怒声)

(銃声)

(銃声)

(安川の悲鳴)

(本田)やめえ やめや!

(一同の怒声)

(森田)このバカタレ!

これは おやじさんの 堅気のお客さんど

(頬をたたく音) (森田)バカタレが

はよ片づけ 片づけ! 何しとるんや バカが!

(森田)おい コラコラコラ 血を流せ 血を流せ!

血! 血!

バカタレが! どかんかい!

(三上)いやあああ!

(ナレーター) 罪のない市民の1人が死亡 1人が重傷を負った この事件は

それまで無力な沈黙に浸っていた 地元一般市民と―

新聞界の反発を 一気に燃え上がらせた

それに合わせて警察も―

県下400名の係官を動員して 対策本部を設置し―

暴力団 取り締まりの強化に 取り組み始めた

(県警本部課長) 目撃者の証言によって―

容疑者の身元は 近日中に判明するものと

(記者A)犯人より 打本会は捜査せんのですか!

(記者B) もとは今度の抗争事件じゃけえ なんで山守も捕まえんの!

(記者C)あんたらまるで ナメられきっとんじゃないの

(記者A)見解をはっきりせい!

(記者たちの責めたてる声)

(編集長) こがなことをほっといちゃ 新聞人の恥じゃ

徹底的に たたかにゃいけん

こと組員の犯罪は―

どんな些細(ささい)な事件でも 記事にすること

それから 犯罪に結びつかんことでも―

脱税やら事業のカラクリを 全部 暴きたてて書いちゃれ

(記者たち)はい

やくざが勝つか 我々が勝つか

命を懸けるつもりで 取材しちょくれ のう

(記者たち)はっ

(福田)おう

ありゃ 早川じゃねえか

(早川)おーし これから わしの店へ行こや

ハハハッ

さあ 乗れ 乗れい 乗れ!

やっちゃれ!

(組員たちの怒号)

(組員たち) コラッ おんどりゃ!

どこのブン屋じゃ コラッ!

(打本) こがな写真撮られやがって このバカタレが!

県警も新聞も 頭にのぼせてるときに―

おう! 格好つけて踊るバカおるかい!

あれらは わしの事業免許 取り消せいうて―

ほざいちょるんぞ

お前ら わしに 首くくれ言うんか

大体 このたびのケンカはよ

広能が勝手に起こしとることで わしには関係ないんど!

わしは これから東京に飛んで―

桑原(くわばら)代議士に 今後のことを相談しとくるけん

お前ら 頭使(つこ)うてやっとれい!

おう 頭よう!

(ドアが開く音)

(早川)どうな? 容態は

(杉本)はあ…

もう 持たんようです

迷惑かけに 戻ったようなもんじゃの

こんまま黙って 兄貴を男にさせちゃっといてつかい

(三重子) あの… 買い物してきますけん お願いします

おやじはよ 銭(ぜに)汚しとるけん―

ケンカはバカらしゅうて できんじゃろうがよ

おう?

わしら 早川みとうな外道に ナメられとって―

道 歩けるかいや のう?

(谷口)ほんまじゃ

(店員)おいでなさい

(三重子)焼きそば1つ 急いでね (店員)へい

(三重子)ヤッチン… (福田)やっぱり三重子か

どうしとったんなら

達者でおったん?

おう そっちもよう

しばらく見んうちに 皮がむけちょるけん―

誰か思っとったわい

3年じゃけんね うちも大人になったんよ

あんたのようなバカと手が切れて

(福田の笑い声)

どこ行っとったんなら

ちいと痩(や)せたかのう

うちはねえ

あんたにヌードスタジオ 売り飛ばされたこと―

まだ忘れとらんのよ

まあ 言うなや

あんときは わしも足軽口(あしがるぐち)で 考えが浅かったんじゃけえ

おい こっちにも酒くれや

(本田)へい

(柳井)兄貴

早川の車が この先に止めてありますき

(福田)早川の? (柳井)へい

ようし どこに潜っとるか調べてこい

わしが殺(と)っちゃるけん

(柳井) おやじに怒られんですかのう

(福田)おやじは東京じゃけえ

留守のあいだに やりあげたるんじゃい

(柳井)はっ… お前ら来い!

のう 知っとろうが 早川よ

あん外道“おやじに 破門されたけん”いうて―

弓 引いとるんじゃ

まあ 見とれい

わしが どれほどの男に なっちょるか

ほいじゃがよう…

べっぴんになったのう

うん?

(雨音)

(三重子の喘ぎ声)

(2人の荒い息づかい)

(福田) わしゃ もう 去(い)なにゃならんけえ

(三重子)ねえ また会(お)うて

(福田)ああ…

なんじゃったら 荷物まとめて わしのアパートへ移ってこいや

のう?

ホンマね?

ホンマよ

(三重子)組長は?

(楠田(くすだ))ちょっと… 知り合いの家(うち)に寄っとられます

打本会の連中がつけとるんよ

あんたら はよ行って 外に出んよう言うてやって

(楠田)へいっ

姐(ねえ)さん

打本会がつけとるいうんは 誰に聞かれてですか?

誰いうて…

見たんじゃけん うちが

あんた ヤッチンに会(お)うたんじゃないの

会うわけないじゃろうね

何するん

兄貴は命を捨てに 帰ってきとられるのに…

なんなら!

(三重子の悲鳴)

(頬をたたく音)

(杉本) 出てけ! 出ていかんかい

(三重子)何ね

うちは 早川も打本も 関係ないんじゃけん!

何ね 何が悪いね?

(三重子の泣き声)

(突き刺す音) (福田)なんなら!

(福田のうめき声)

(杉本)来いや

(蹴る音)

(蹴る音)

(突き刺す音) (福田)うああーっ!

(福田のうめき声)

(杉本)こん腐れ外道

言うといちゃるがのう おどれ売ったんは三重子じゃ

ざまあみやがれ!

(福田)あああーっ!

(福田のわめき声)

(銃声)

(銃声)

(銃声)

(ナレーター) この惨殺事件を きっかけとして

それまで および腰だった 両陣営の若者たちは―

堰(せき)を切ったように 抗争し激突した

(銃声と人々の悲鳴)

(柳井)行くぞ

はよせい

(森田)おい! 乗れ

(森田) バカタレが ハハハハッ

(柳井)どんなもんじゃい

(組員)こん外道じゃ!

(組員たちの怒号)

(蹴る音)

(森田)おい おい!

さあ 殺せや! よう殺さんのか!

(山本(やまもと))ようし 殺しちゃる!

(森田のうめき声)

(江田)おい お前ら!

半殺しは かわいそうじゃけえのう

帰らすか眠らすか どっちかにしちゃれい

(丸山(まるやま) 勝)わしが殺(や)りますけえ やらしてつかい!

(森田)うああーっ!

(突き刺す音)

(ナレーター) こうした殺傷事件の頻発に たまりかねた

広島市中心街の住民たちは―

ついに町ぐるみの暴力追放運動に 立ち上がった

その結果―

縄張りを追い立てられた 組員たちは―

警察の厳しい追及を 受けて―

次々と検挙されて いったのである

(引き戸の開く音)

(男たちの怒声)

(警察官)お前ら! 公務執行妨害で逮捕するぞ!

(竹本) 何をぬかしやがるんなら 大掃除しとるんじゃい!

文句言うんじゃったら 車のほう どかせい

(男たちの怒声)

(ナレーター) そのころ 広能は

呉署の厳重な監視下に置かれて 全く動きを封じられていた

それに加えて―

広能側の指導部とも言える 神戸 明石組は―

関東に進出しようとして 地元組織の激しい抵抗を受け―

その収拾に追われて―

広能を応援する余力は なかった

それを見た ライバル神和会は―

実力者 伊丹義一(いたみぎいち)が 二代目を襲名して―

力のバランスによる 共存を図ろうとしていた

(岩見)おやっさん 武田から電話がかかっとります

(広能)武田から?

明(あきら)か

ぎょうさんに構えちょるが―

ちょっとも 攻めてきやせんじゃないの おう?

(武田)そっちこそ “山守 殺(と)る殺(と)る”言うてからに

殺(と)りゃせんじゃないの ああ?

打本は そっぽ向いちょるし 明石組には見捨てられるし

フッ 締まらん話よのう

おうおう どうとでも言いないや

いよいよ動きがつかんけえ―

電話でカバチタレるしか ありゃせんのじゃろうが

おおう クソバカタレが

動きがつかんのは お互いよ

ほうじゃけん わしは忠告しちゃるんじゃが

わりゃ いいかげん堅気(かたぎ)になれ

口じゃ信用できんけえ 新聞に発表せい

ほしたら わしも あとあと そっちの立場を考えちゃるけん

おう なんなら 出しちゃってもええよ

そっちも“堅気になる” 言うんじゃったらのう

それも 山守と連れでのう

のう 昌三

よう考えてみいや

このままでおったら わしら 新聞と警察に潰されるだけで

そう思わんや

(電話を切る音)

(組員)あっ こんにちは

(上田)兄貴 (広能)おう

(上田) 大久保さんのツテでのう―

市会の連中から呉署に かけ合うてもろうたんじゃが

“シケバリは解けへん”いうて 強硬なんじゃ

(広能)ほうか

(上田)ほいで わしが 手足になれりゃいいんじゃが

大久保のおじさんが どうでも許さんのじゃけえ

ほいで 山守いうたらよう のう

1人でのうのうと 動き回っとるんじゃけん

神和会の襲名披露にも “江田を連れて出る”言うとってで

山守いうたら県警は ぐうの音(ね)も出んのじゃけえ

金(かね)じゃのう 世の中

山守が神戸行くんか?

のう 神和会の襲名披露いうたら いつじゃったかいのう

(広能)やれや

(ガラスをたたき割る音)

(銃声)

(銃声)

どうしたんなら! 開けい 開けんか!

(激しく戸をたたく音)

(警察官)開けんかい!

(広能)おい 行くど (竹本)へい

(急ブレーキの音)

(広能)どうしたんなら

おやっさん

おやっさん やっぱり 神戸に行かれんほうがええです

わしと こいつで山守は きっと殺(と)りますけん

おやっさんは 引き返してつかあさい

カバチタレとる暇かい

やらんかい

(竹本)のう おやっさん

ヘビは なんぼ切られても 頭さえ残っとりゃ 生き返るんです

頭 食われたら―

生き返るもんも返らんのですけえ

おやっさんは最後まで 呉に残っとらにゃいけんです

わしゃのう 山守には 18年の恨みがあるんじゃけえ

わしがジキリかけて 刺し違えちゃらにゃ 済まんのじゃ

はよ行かんかい

(広能)何をしとるんなら! (岩見)あの わし このあいだに…

ちと クソ垂れてきますけえ

またクソか 腹 壊したんかい?

(岩見)こいつが冷えて冷えて

下痢しとるもんですけえ

(車のドアを閉める音)

わしも おかしゅうなった

(広能)連れグソか

クサい仲じゃのう お前ら

(竹本)へえ…

(ドアを閉める音)

ヘビの頭のう…

繁(しげ)!

岩見!

どこにおるんじゃ! おい!

返事せえや

おい!

あのクソどもが

(竹本)おい 来やがった

(相原重雄(あいはらしげお)) “やめ”ちゅうたら やめとけ このガキゃあ

ええか そら相手が祝儀の日や おもろいには おもろいわい

けど うちのおやじが 出席することになったんや

そのへんのことも よう考え!

じゃったら式が済んで―

親分が帰られたあとじゃったら ええんでしょうが

駅でもどこでも やりますけえ 頭(かしら) 頼んます

それがしんどいさけえ 神戸ではすなっちゅうねん

信(しん) お前から よう言(ゆ)うてきかせ

(岩井) そやけど わしも手ぶらでは 広能に会えまへん

頭(かしら) なんとか応援の兵隊 出してもらえやしまへんやろか

お前も分からんやっちゃな

おやじが“いかん”ちゅうとんのに どんな口実で兵隊出すねや

口実やったら おま

(ナレーター) 岩井が計画したのは

射殺された広能組員 河西 清の本葬であった

岩井から決断を求められた広能は 直ちに 準備に取りかかる一方―

葬儀終了と同時に―

一気に広島に攻め込む手はずも 整えていた

こうして葬儀の数日前から 明石組をはじめ―

全国各地から参加団体組員が 続々と呉に集結し始め

その数は1,600名に達した

(ドアが開く音)

(打本)よお

おい

ハハハハ

待ったか え? ハハハ…

(菊枝(きくえ))いろいろ もましとるそうじゃけど―

いつも同じお店で会(お)うとって ええん?

ここは表がよう見えるけん 安全なんじゃ

コーヒー

それに“戦争”ちゅうてもよ

ちいとは息抜きでもせにゃ もう身がもたんけえ

(打本)アハハハ (菊枝)ハハハ

コーヒーちゅうたら…

ひっ!

(古賀)騒がんでつかい のう

(打本)あ…

(古賀)立たんかい

(弾倉を戻す音)

(ドアが開く音)

(山守)ハッハッハッハッ

おう 打本 ええざまくれじゃのう

オメコばっかり ほじくっとったけんよう

どうしたんなら その顔は

まっ ま… 待ってつかあさい

わしはですよ “ケンカしちゃいけん”言うて―

若い者(もん) 抑えとったんですけえ

現にですよ 殺(や)られたのは―

みんなうちの 若い者(もん)だけじゃないですか のう

(山守)ほう

わりゃ この場になっても まだ助かりたいんか

ほうか ほうか

ほいじゃ 助けちゃるけんのう

ここでよ この女と シロクロやってみせい シロクロ

ほれほれ はよ裸にならんか

(打本)こらえてつかあさい

(山守)おい 省一 これ写真に撮ってな

明石組に送りつけちゃれよ

(打本)そ… そがな…

(江田) おい 写真機持ってこい 写真機よ

(菊枝)親分!

うちは辛抱しますが この人だけは いたぶらんでください

うちと一緒だったことが あとで知れると―

この人の奥さんに うちが申し訳が立たんけん

お願いします

(江田)オメコ芸者 わりゃ 黙っちょれい

あんたら! あいびきのときでも狙わんと―

この人の命 殺(と)れんの!

(頬をたたく音) (江田)ざまくな クソ

よう見ちょれ

(武田)待て 江田

これ殺(や)ったら―

次は そっちが打本会から 的(まと)かけられるだけで

ほうじゃけ いうて 生かして帰すことはないじゃない

ほうじゃ ほうじゃ 殺(や)れ!

省一 殺(や)っちゃれい

まあ 座れや

おやっさん これの首が残っとるうちは―

話のつけようもありますがの

首がのうなってもうたら 誰と話つけるんですか

とことん戦争せえ いうて 言われるんじゃったら―

それでも かまいませんがの

わしゃ 責任 持たんですよ

おい 打本

広能が河西の本葬をやるげながの

そら表向きで―

こっちへ攻め込むんが 腹なんじゃろう?

おう?

どうなんじゃい!

あんた 助かるんじゃけん 言いんさいね ね!

(打本)ああ…

ようし その話 詳しゅう聞かせてもらおうか

(主任)広能組全員に告げる

事務所の周囲は 機動隊で完全に包囲してある

そのままの状態で指示に従いなさい

指示に反する者は 公務執行妨害で逮捕する

広能昌三 これから 逮捕状を持っていくから―

おとなしく出てきなさい

繰り返す

事務所の周囲は完全に包囲してある

そのままの状態で指示に従いなさい

指示に反する者は 公務執行妨害で逮捕する

広能昌三 これから 逮捕状を持っていくから―

おとなしく出てきなさい

(竹本)おやっさん

わしらで一戦 交えますけえ 逃げてつかい

時が来たんじゃけえ なるようにしかならんよ

(水上)おやっさん 大事なときですけえ

どうせ 別件の木(こ)っ端(ぱ)の事件じゃけえ

すぐ戻るわいの

(竹本)おやっさん

それより 隠せ 隠せ そんとな物(もん)

みんなパクられたら どうするんじゃ

(刑事A) 広能 暴行傷害容疑じゃ

(広能)ほうの

去年の夏 槇原組組員を―

広島の山守組事務所に 引こずり込んで―

やりあげたじゃろが

ほうですか

その事件を知っとるのは 山守だけのはずじゃが

あれのチンコロかいの

(刑事B)まあ ええから来い

税金の無駄遣いじゃのう

(組員たち)おやっさん!

(組員たち)おやっさーん!

(ナレーター)広能の逮捕は 別件容疑であったが

彼は再び抗争の場に 戻ることはなかったのである

その3日後 主(あるじ)なきままに葬儀は終わり

応援組員は なすこともなく 呉から引き揚げていった

それとともに 山守 槇原が呉に復帰して―

形勢は全く逆転し

追い詰められた 広能組 組員とのあいだで―

再び血の応酬が続けられたのである

(組員たちの怒号)

(突き刺す音)

(突き刺す音)

(槇原組組員) おおっ! 来やがった!

(広能組組員) コラッ 待てー!

(岩見の叫び声)

(広能組組員) 兄貴! 兄貴!

兄貴 しっかり!

(銃声) (男たち)うああーっ!

(銃声)

(突き刺す音)

(うめき声)

(野球場の歓声)

(男たちの怒声)

(殴る音)

(男) 金(かね)返せ コラ! バカ野郎!

(藤田)やめとけ!

お前ら なんなら

(男A)わしゃのう

今のホームランに 1,000円張(は)っとったんじゃ

それを500円じゃ言うて ヒンガモにしよるんじゃけえ

(野崎)わしのツケヒキは 狂(くる)っとりゃせんわい!

(男B)おい おんどりゃ どこの者(もん)な

(藤田) 義西会じゃ! 文句あるんか

こんな

1人で仲仕(なかし)やっちょるんか?

はあ…

ポリが やかましいですけん

ナメられとったら プー屋は終(しま)いで

貸しちゃるけえ

アヤつけられたら カマしちゃれ!

お借りしますけん

広能が挙げられるとは 予想もしとらんじゃったけんのう

こうなら わしらと山守組との戦争で

武田んとこじゃ “金(かね)が続かんけん”いうて―

応援の連中を おいおい帰しちょるげな

打本は頼りにならんけん わしと組んで―

山守に勝負かけんかい のう?

わしゃ ケンカどころか―

野球の資金集めるのに手いっぱいで

今までは打本の兄貴が 面倒見てくれてたんですがの

近頃 あの人も 握りキンタマになっとってじゃけん

正直言うて 打本さんには もう義理はありゃせんのですよ

そがな うわさも聞いたけん―

こうして 当座―

500万 用意してきたんじゃ

のう 収めてくれい

わしゃ… 打本じゃ 明石組じゃいうて―

少しも義理はないんじゃが

このまま広能らが―

たたかれっぱなしになるのを ほっといたら―

次は わしらで

のう 力 貸してくれ

頼むわい

まあ できるだけのことは さしてもらいますけえ

こっち移ってから いよいよ磨きがかかってきたの

(アイ子) あら じゃ あの人と別れて もういっぺん売り出そうかしら

おう そうせい そうせい わしが立候補するけん

(アイ子)新車に乗り換えるか

アハハハ

でも 武田さんには お礼の言いようがないわ

前のお店に あのままおったら―

山守さんに いびり抜かれて 広島にはおられんじゃったろうし

これが武田さんのおかげじゃ いうことを―

岡島も知ってくれてたら―

あの人も構えてなんて おられんのじゃろうけど

まあ わしが ここに世話したいうことは―

死んでも言わんといてくれ

あれもガンボタレの きかん男じゃけんのう

それよりな

あれの居場所だけは 毎日 わしに電話で教えてくれや

わしゃ あれの命だけは 守ってやりたいんじゃ

あれを“殺(と)る殺(と)る”言うてる連中が 大勢おるけんの

ええ します

(友人A)よう 岡島

友(とも)ちゃんじゃないの

(友人B) よお! 久しぶりじゃったのう

(岡島)おお

(友人B) まあまあまあ 座りや 座りや

(友人A) そのまんま 一杯 一杯 アハハハ

(友人B)どうじゃ 達者かいの

(アイ子)いらっしゃいませ

よお… こらのう わしの小学校の同級生じゃ

まあ ほうじゃったん

(友人A)のう 友ちゃんよ

こりゃいっぺん 同窓会を開かにゃいけんのう

そうよ げんこつラッパも 呼んじゃってのう

(アイ子)何ね? “げんこつラッパ”いうて

わしらの担任の先生じゃ

(一同の笑い声)

(友人B)乾杯!

(電話のベル)

(吉井)もしもし ああ…

あ? 武田さん?

ちょっと待ってつかい

(吉井)おやっさん 前に店におったアイ子から―

“武田さん 見えとらんか” ちゅうて

アイ子?

武田んとこの若い者(もん)じゃちゅうて 聞いてみい

(吉井)へい

(岡島たちの笑い声)

(岡島)のう わしゃ よう げんこつ食ろうて言われましたけん

わりゃみたいな者(もん)は―

“少年院 入ったほうが まじめになろう”ちゅうて言われて

(一同の笑い声)

(岡島) ほれで 今も極道しとりますがのう

ちいとは 真面目になりましたかのう 先生

(先生)いやあ それを言われると 顔に電気がつくわい

(一同の笑い声)

(友人)先生 足元

(先生) なに まだまだ大丈夫じゃけえ

(男)あんた 岡島さんな?

そうじゃが

(岡島)コラッ!

(銃声)

(銃声) (岡島)おお!

(銃声) (岡島)あう…

(銃声)

(岡島)うう…

(銃声)

(銃声) (岡島)ああ…

(吉井) あんたら見とったとおりじゃ

(ナレーター) 岡島の死を聞いた武田は 山守の独断に激怒した

世論を敵としては勝てないことに すでに気付いていた武田は―

主戦派の山守 江田と対立して 抗争の前面から手を引くに至った

一方 打本は―

再三にわたる 岩井の決起要請にも応えず―

いたずらに決着を 長引かせるのみであった

山守を殺(や)るんか殺(や)らんか あんたの腹 聞いとんのや わしゃ

ん… そがに言われても 広能もおらんし

わし1人で やってみたところで 勝ちゃせんじゃない のう

打本はん あんた それで極道かいや

それとも何か

その辺のタクシー屋の おっちゃんか どっちや

“どっちか”いうて言われたら…

わしゃ もう 事業一本に絞りたいんじゃ

(岩井)さよか

ほたら そうしなはれや

わしら タクシー屋の おっちゃんには用はないさかいな

これから1人で 歩いたらよろしいがな

けど 言うとくけどな

前向いても崖や 後ろを向いても崖やで

あんじょう性根入れて 歩くこっちゃな!

ああ… ヘッ

フッ ハハハ…

のう わしの言うことにも 一理あるじゃろうが

あんたら まあ 頑張りんさいや

のう

(組員たち)おやっさん (藤本)打本さん… ゴホッ ゴホッ

(組員)兄貴

(ナレーター)こうして抗争は 一時 鎮静したかに見えたが

その炎を 再び燃え上がらせたのは―

組長らの政治的駆け引きを 不満とした―

各組の若者たちであった

(バイクのエンジン音)

(ガラスの割れる音)

(爆発音)

(ガラスの割れる音)

(藤田)かわせ!

(爆発音)

県警本部 県警本部か?

なに!

山守! 山守義雄じゃ

“何じゃ”言うことあるかい!

あれほど電話かけて “保護してくれ”言うちょるのに

そっちゃ ちいとも パトカーよこしてくれんじゃないの

うん?

これほど 爆弾 放り込まれとるっていうに

わしゃ 身の隠し場所もないんど

善良な市民を保護するのは 警官の務めじゃないんか!

わしが死んだらよ 責任を取れよ おお? 責任を!

あっ… アチチッ

(主任) ほいで 今どこにおんの あんた

よし 分かったけん そこにおったらええ

(記者1) 山守が 何じゃ言いますねや

“善良な市民を保護せんのか” いうての

(記者1)バカな

そんとな電話を いちいち聞いちょるけえ―

あんたらも あいつらに…

容疑が決まらんうちは 一般市民と同じだ

(記者2)ええ?

(早川) おやじがパトカー呼んだけん こんなら散っとれ

(楠田)ええんですか?

(早川)ふんっ わしらより 警察 当てにしとるんじゃけん

つきあえんわい 出せ

(運転手)へい

(本田)おお 山守がの

江田と2人で 早川の店に隠れちょるど

(谷口)ホンマか? (本田)確かじゃ

ほいで早川らは 事務所へ引き揚げたけん

殺(と)るなら 今で!

(柳井)ようし 殺(や)っちょるか おい (谷口)ようし 殺(や)っちゃれい

(本田)みんな来い! (組員たち)おお!

(電話のベル)

ああ わしじゃが

ほんで どうした?

あ? 山守を?

(組員)はよせい

(電話のベル)

(武田)武田じゃ

おう 何なら?

この前の借りもあるけん 教えちゃるがよ

今 わしとこの若い者(もん)がの―

“山守 殺(と)る”言うて 出てったところじゃ

早川のやっとる 「エデン」言うとったで

はよう そっちから知らせて かわさせんと 間に合わんど

バカタレ この! なんで われが止めんのじゃい!

“止めい”言うて なんで わしが止めにゃならんの

そっちとケンカしとんのに

のう… ほいで山守が助かったらよお

わしに“2千万ぐらい 融通せい”いうて―

頼んでみてくれいや

ケンカ相手に金(かね)貸すバカが どこにおるかい このボケ!

(江田)なんなら 明

(武田)省一!

わりゃあ こんな無防備な所に おやじ呼んどりやがって―

それで側近が務まると思ってんのか

何言うとんなら 表にパトカーがおらあ

そな物(もん)おるかい 見てこい!

(山守)武田

わしゃ 江田を信用して 命を預けちょるんど

わりゃには もう用はないけん

ほうですか

じゃったら 今 打本会の連中が 仕掛けてきますけん

そっちら2人で戦(たたこ)うてつかい

(山守)あっ ま… 待っとれ 待っとれ

わしも一緒に行くけん

(武田) 来られるのは ええですがのう

このケンカ わしに任すんですか 任さんのですか

“任さん”とは 言うとりゃせんじゃないの

のう 明(あき)ちゃん

(銃声)

(武田)こっち来(き)ない

(女性たちの悲鳴)

(拳銃の連射音)

(パトカーのサイレン)

(武田)早く出せ!

(近づくパトカーのサイレン)

ポリ公じゃ かわせ かわせぃ!

(組員1)放せや コラァ!

(組員2)逃げい 逃げい!

(山本)お! わりゃ 何じゃ! 打本会じゃろうが

(柳井)ひいっ!

(武田) 待て待て! 待たんかい!

やめんかい こんな所で 呉越同舟じゃ

(山本)腐れ外道が!

(谷口)ほいでよ わりゃ よう逃げてこられたのう

ほうよ ほしたらの

途中で エンスト起こしやがっての

みんなで車 降りて押したんじゃ

わりゃも押したんか?

(柳井)ほうよ

(柳井)ほいじゃがよ

まあ よう考えてみたら―

わしが手伝わにゃならん筋合いは ないけんのう

ほいで 逃げてきたんじゃ

(本田)バーカ (谷口)このバカタレが

ほいじゃがよ 武田が言うとったがの

今日のわしらの殴り込みは―

打本のおやじが 向こうにチンコロしたげで

(谷口)おやじが? (柳井)ああ

ほうじゃけん わしら ナメられとるんじゃ!

のう マンクソ悪いけん まっ いっぺん押し出さんかい!

(谷口) ようし 押し出しちゃれい!

(金田)おい! 打本会の連中が また新天地 歩いちょるぞ

(山本) あの外道が やりあげちゃれ!

(組員たち)おお!

(金田)こらチンピラ! どこ歩いとるんじゃ!

(山本) 腐れ外道 出ていかんかい!

バカタレらが! 来るなら来(こ)んかい!

(殴り合う音)

(女性たちの悲鳴)

(組員たちの怒号)

(銃声)

(銃声)

(組員)腐れ外道が!

(銃声) (組員)ああーっ!

(拳銃の連射音)

(ナレーター) 市民生活を直接脅かした この乱射事件は

暴力団追放の世論を沸騰させ

各界の激しい突き上げを受けた 警察と検察当局は―

ついに組長クラスの 一斉検挙に踏み切った

(江田) 何じゃい 何じゃい この扱いは!

(組員たち)おやっさん! (江田)何じゃい!

(組員たちの騒ぎ声)

(女性たちの笑い声)

(刑事A)どかんかい

(山守)なんなら お前ら

(刑事A)山守 逮捕状じゃ

(山守)わしに何の容疑じゃ

(刑事B) 2年前に競艇場の職員を 殴ったことがあるじゃろうが

おう!

わしゃ カリエスで 腰がよう立たんじゃけえ

院長に聞いてみい

何がカリエスじゃ!

やりすぎのヤリエスじゃろうが!

(山守)痛い 痛い 痛い…

(利香(りか))あんた!

新聞社も見えとってじゃけん 男らしくしんさいよ

(山守)ほっとけ クソたわけ…

性根抜かして こん人は

(刑事A)さあ 来い

待っとれ 待っとれ 記者会見するけえ

(ナレーター) 山守の逮捕を知った岩井は

直ちに広島に乗り込んで 岡島亡きあとの義西会を中心に―

陣営の再建に取りかかった

一方 武田は かつての宿敵であった テキヤ大友(おおとも)連合会をはじめ―

群小暴力団を糾合して 広島やくざの大同団結を呼びかけ

岩井の挑戦を 真っ向から受けて立ったのである

広島には広島極道の性根 ちゅうもんがあるんじゃけんのう

わしらのほうでも 神戸の神和会が―

“代紋飾らせてくれ”いうて 言い寄るんを蹴(け)っとるんじゃ

あんたが ここにおるのは かまわんがのう

明石組の看板だけは 即刻 下ろしてくれんかい

ちょっと待たんかい

わしゃ 明石組の若い者(もん)やで

わしが いてる所に 本家の のれんを下げて―

どこが悪いんや

じゃったら

今すぐ義西会と手ぇ切るいうて 宣言してくれんかい

これらと組んで 事務所 開くいうんは―

わしら広島の者(もん)に対する 内政干渉じゃい

ほたら…

死んだ岡島の落とし前は どうつけてくれるんや われ

(早川)ハハハ

戦争じゃけん 殺(と)る 殺(と)られるは 当たり前(めえ)じゃろうが

じゃったら わりゃあも 的(まと)にかけちゃるけん―

勝負に来いや!

(吉倉(よしくら))おう! いつでも 買(こ)うちゃるけん 来いや!

(早川)来いや! (武田)まあ 待てや

今のそっちの言葉

本家の答えとして 受け取ってええんか

わしは明石組の岩井や

ほうか

ほいじゃ言うとったるがのう

広島極道は芋かもしれんが―

旅の風(かざ)下(しも)に立ったことは いっぺんもないんで

神戸の者(もん)いうたら 猫一匹 通さんけん

おどれら よう覚えとけや

ようし

おんどれらも 吐いた唾は飲まんとけよ

ええな

分かったら はよ去(い)ね

(友田(ともだ))扱いに注意せえや (古賀)へい

明石組の組長だけは傷つけなや

あとが面倒なことになるけん

ほかは どこでもかまわん 好きなだけ ぶっ飛(と)ばしちゃれい

(武田)気ぃつけてな (古賀)へい じゃ

(列車の発車ベル)

(警笛)

(爆発音)

(ナレーター) 襲撃を受けた 明石組では

神和会の仕業と誤解して 即座に報復を加えた

(銃声)

(拳銃の連射音)

(ナレーター) 事件はその夜のうちに 広島にも飛び火して

岩井組と武田組とのあいだで―

早くも銃撃戦の火蓋が 切って落とされた

(銃の連射音)

(友田)おい! 病院 連れていっちゃれ

(武田)おい ボケッとしとらんと片づけんかい

(組員たち)へい

(ナレーター) こうして広島抗争事件は

広島対神戸の西日本を揺るがす―

一大流血事件に 発展し始めたのである

(銃声)

(銃声)

(銃声)

(銃声)

(エンジンの始動音)

(藤田のせき込み)

のう 岩井さんが 立ってくれとんじゃけん―

旅の連中に任せて 地元のわしらが すくんどったんじゃ―

さきざき頭 上がらんじゃない

わしらも立つけえ

あんたのほうからも 兵隊 出してつかいや のう

わしに言うてきても 筋違いで

わしゃ 打本さんの舎弟なんじゃけん―

打本の兄貴が腰も上げんのに―

勝手にケンカはできやせんよ のう

あんたの立場も分かるが―

おやじも あんたを当てにしたけん―

肩 貸しとったじゃないの

他人じゃないんじゃけん

(川田) 銭の話 出すのはやめてくれい

確かに岡島さんに借りはあるが―

こっちも埋め合わせに―

毎月カスリを そっちに渡しとるんじゃけんのう

(沖山(おきやま))銭勘定で 義理が返せると思うとるんですか!

バカタレ! そっちが先に口を出しとるんど

(藤田)やめとけ

川田さん

あんたが立ってくれたら―

打本さんも きっと立ってくれるんじゃけん

おやじが浮かぶも浮かばれんも あんたの腹ひとつで

わしらを男にしてつかいや

頼みますけえ

(激しいせき込み)

(沖山)兄貴…

わしも いっぺん 打本の兄貴に打診してみるけえ

心配しなんなや のう

(激しいせき込み)

(沖山)おっ あ… 急げ!

(組員)へい!

(エンジンの始動音) (沖山)兄貴!

(藤田)ええか!

川田の返事があるまで…

抜け駆けは すなや

(沖山) 兄貴 あがな者(もん) 相手にせんと―

わしらだけで やりますけえ

(藤田)おやじの敵(かたき)は―

わしが息があるうちに きっと とっちゃるが…

川田は癖のある男じゃけえ―

敵に回したら こんならが あとで難儀するんど

わしゃ そう長(なご)うもたん…

(せき込み)

(沖山)兄貴!

(藤田のせき込み)

(藤田のせき込み)

(電話のベル)

(野崎)もしもし

あっ わしですが

はあ 分かりましたけえ

すまんですが おやじが呼んでますけえ

(せき込み)

(アナウンサー) 慎重に第6球を投げました

(川田)おっ 打ちよった!

(アナウンサー) セカンド捕った 間に合うかどうか

セカンド捕った 1塁へ送る 1塁アウト! 試合終了

よーし!

(川田)これで今日の片重(かたも)りは こっちのもんじゃ のう

おう 弘(ひろし)

わりゃあ 義西会の藤田を 手伝(てつど)うちょるげなかのう

ええかげん 手ぇ引けや

(野崎)はあ… じゃけえ 藤田さんには義理がありますけえ

義理? どがな義理なら

あれら風(かざ)上(かみ)に 立ったふうしよってから

わしのシマ 荒らし回(まわ)っちょるんど

スタンド見てみぃ 義西会のバッジばっかりじゃ

そう言われても…

戦争になったら 義西会につかにゃならんですけえ

誰がよ

わしゃ どっち側にもつかんど

何が悲しゅうて 義西会 助(す)けにゃならんのよ

ケンカやりたい者(もん)にゃ やらしとけ

わしらの大事なんはよ

このシマをどう守るかよ

のう 弘

こんながやってくれると 助かるんじゃがのう

はあ?

義西会の二代目継ぐんは あの藤田じゃろうてや

あれさえ おらなんだらよ

義西会も馬のクソと同じじゃ

のう

ハハハ…

これだけの分がよ―

義西会にカスリで持ってかれるんど

藤田さえ おらなんだらよ

こんなのほうにいく分じゃ

のう

まあ つきあいもあるけん―

“やれん”言うんじゃったら しかたがないが

のう 弘

こんなも ここらで男にならんと―

もう舞台は回ってこんど おお?

(テレビ“東京五輪音頭”)

(野崎の母) テレビやかましいけん 消しな

“消しな”言うちょるんが 分からんのか お前は!

(子どもの泣き声)

(野崎の母)弘 起きんさい!

仕事もせんと ブラブラ ブラブラしよってからに

起きんさい! 痛い…

(野崎)おい はよメシ食え

俺が さらのテレビ 買(こ)うちゃるけん

(野崎の母)大きなことばかり 言うとってからに

(子どもたちの泣き声)

ゴホッ ゴホッ…

誰なら?

ああ… 弘か

なんなら 今頃

(藤田)うう… うえっ

(銃声)

(野崎の荒い息)

(沖山)兄貴!

兄貴!

(パトカーのサイレン)

(扉が開く音)

(野崎の母)あっ! な… 何ですか いったい!

(刑事) お前んとこの息子は どうした!

(野崎の母) 弘が何かしたんですか?

(警察官)殺人犯じゃ (野崎の母)え?

(警察官たち) いたぞ! おったぞー!

(警察官たち)待て! 待たんか!

(野崎)わああー!

(岩井)昌ちゃん

(広能)信(しん)ちゃん…

(岩井)昌ちゃん

義西会の藤田が殺(や)られよった

藤田が?

ああ

殺(や)ったんは川田組のチンピラよ

同士討ちや

義西会もなんも バラバラやで

もう わしの手には負えんわい

それにな

神戸の本家は―

兵庫県警の仲立ちで 神和会と手打ちしよってな

わしにも引き揚げて来い 言うてきとんねや

昌ちゃん

すまんが手ぇ引かしてくれ

このとおりや

すまんのは こっちよ

信ちゃんの気持ちは よう分かるけえ

これまで ようやってくれたのう

今 打本にも会(お)うてきたが―

“ブタ箱に入って ホッとした” 言うとったよ

それぐらいのことよ

(看守)おい

(広能)ほいじゃの

(岩井) 世の中 変わったちゅうてもな 呉 広島だけが住みかちゃうで

神戸へ来たらええにゃ

なっ 待ってるさかい

(広能)ああ (岩井)きっとやで

(主任)あ!

いったい やくざを続けるんか 事業のほうを続けるんか―

どっち取んの あんた ん!

それによっては―

こっちで あんたの事業免許 取り消すこともできるんで

わしも それを ずっと考えとってじゃけん

ほいじゃがのう…

極道社会におるうちは 鎧(よろい)着て生きにゃならんのじゃけん

口にゃあ 出せんじゃないの

(県警本部課長) 打本会 解散するのか せんのか どっちなんじゃ!

ほうじゃけん!

ここに入って

“覚悟は決まった”いうて 言うとるじゃないの のう

(弁護士)拳銃不法所持と 脱税の容疑に関しては―

こっちのほうで 担当検事と折衝中ですけん

まあ 必要以外のことは しゃべらんでください

ほいじゃけど あんまり皆さんに逆らわんで―

はよ出てきんさいよ

今 市のほうから―

競艇会社の権利を 10億で買収しよういう話も―

出とるんじゃけん

一生 困りゃせんじゃないの

跡目も誰かに渡して ねっ

はい ぜんそくのお薬

(山守)ぜんそく? (利香)ああ

ゴホッ ハッハッ

うあっ こら よう効くわ

ハッ ハッ ハッ

(看守)おい 岩井からの差し入れじゃ

(看守)親分のあんたは―

こがな ええ料理が食えるけん えかろうがのう

ほかの若い衆らいうたら みんな 官弁(かんべん)じゃけん

かわいそうにのう

(検察)やくざで ええ目 見られるんは親分だけよ

ケンカにしても 自分じゃやらんと 若い者(もん)ばっかりに さしよるんじゃ

本音は命が惜しいんじゃろう

そっちらとは世界が別で!

知らんことには黙っとれや!

格好つけるな!

(広能)なんなら!

(検察)本当に あれらのこと 思うちゃっとるんなら―

お前が真っ先に 死ぬべきじゃないんか!

(広能)おどりゃ!

(ナレーター)それから間もなく 広能は仮釈を取り消されて

広島刑務所に収監され―

翌39年1月 改めて 7年4か月の懲役判決を受けた

(吹きすさぶ風の音)

(武田)昌三

おう

何年 打たれたんね

前のと合わして 7年4か月じゃ

ほうか

ちょっとした殺人刑と一緒じゃの

わしも―

神戸のダイナマイトの事件や 何やかんや 合わせよると―

そっちより長いかもしれんわい

(広能)ほうの

(武田)江田は5年

槇原は3年ぐらい くろうたげな

打本のやつは執行猶予じゃ

山守は?

(武田)ありゃ1年半じゃ

1年半と7年か…

間尺に合わん仕事したのう

わしも全財産はたいてしもうて 一文無しや

その上 新聞には たたかれるし

これからは 政治結社にでも変わらんと―

やっていけんわい

まあ それはそれで ええかもしれんが

もう わしらの時代は終(しま)いで

18年もたって 口が肥えてきちょって―

こう寒さが こたえるようになってはのう

ほうよ

7年の刑じゃけえ

とにかく 持ちこたえんことにはのう

(武田)昌三… 辛抱せえや

(広能)おう お互いにのう

♪~

(ナレーター) こうして広島抗争事件は

死者17人 負傷者26人

逮捕者 約1,500人を出しながら―

何ら実りなき終焉(しゅうえん)を迎え―

やくざ集団の暴力は―

市民社会の秩序の中に 埋没していったのである

だが 暴力そのものは―

いや 人間を暴力に駆り立てる さまざまの社会矛盾は―

決して我々の周囲から 消え去ったわけではない

~♪

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