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(徳川家康)信長～！

(織田信長)家康…｡

本能寺にて 織田信長 死す｡

(石川数正)明智を討たねばなりませんな｡

いざ信長公の敵を討つべく
明智討伐を企てた神の君でありましたが➡

一足早く それを成し遂げたのは➡

西国より急ぎ戻ってきた
この男でございました｡

(羽柴秀吉)明智殿｡

今までで一番ええ顔しとるがね｡

天下一統を目前にしていた
信長の後を継ぐのは 誰なのか｡

新たなる覇者が求められておりました｡

♬～

まさか 秀吉が明智を討つとはな…｡

(酒井忠次)かくも恐るべき速さで➡

備中から京まで引き返すとは…｡

まるで 何もかも
お見通しだったかのごとくですな｡

うむ…｡

秀吉は 信長の敵を討ったと
触れ回っております｡

まあ そうたやすく
織田家の天下は揺るがんでしょうが｡

だが… 何せ秀吉だからな…｡

左衛門尉 やつの動きから目を離すな｡

(忠次)はっ！

秀吉の好きにさせてはならぬ｡

天正十年６月 信長の後継者を決めるべく
織田家臣たちが集まっておりました｡

いわゆる 清須会議でございます｡

(秀吉)馬なれど
猿っちゅ～んは これ いかに？➡

ヒャッヒャッヒャッ…！

まっ ちゅ～ことで➡

上様のご嫡孫
この三法師様が 織田家のご当主｡

ほんで この秀吉と➡

柴田殿 丹羽殿 池田殿が
話し合いをもって政を行う｡

ご子息は いかがする？
信雄様と 信孝様を外すわけには…｡

どちらかを立てれば どちらかが立たぬ｡

三法師様が大きくなられるまで
わしらあが力を合わせて政務を仕切る｡

それが一番だがね｡

それは
織田家をないがしろにすることでは？

(秀吉)ないがしろ？➡

ないがしろ？➡

ないがしろ？➡

それは聞き捨てならん｡

フッ お主が一人で
どんどん決めるものでなあ｡

明智を成敗したもんの役目と➡

心得とる｡

わしは
筑前の言うとおりで よいと存ずる｡

皆を集めよう｡

パッカ パッカ パッカ｡
パッカ パッカ…｡
筑前｡

実はな…｡

♬～

母上｡

何じゃ？

母上は 徳川殿に こし入れするかも
しれなかったというのは➡

まことでございますか？
えっ？ 誰が そのような…｡

そうなのですか？

♬～

嘘じゃ｡
幼い時分に顔見知りであっただけ｡

もしかしたら 私たちの父上は
徳川殿だったのかもしれないのですね｡

(茶々)つまらぬことを申すな｡

我らの父は 浅井長政じゃ｡

♬～

(秀吉)話は権六から聞きましたわ｡

織田家のためと思うてな｡

いや～ 結構 結構！

結構なこったわ！

お市様と権六が一緒になって➡

織田家中を
しっかりと おまとめくださる｡

こんなに ありがてえことはねえ！

え… ああ… わあ～ お似合いだわ｡

あ～ 昔っから
夫婦だったみて～だわ！

うんうん！ 姫様たちも
新しい父上が出来てようごぜ～ましたな！

いや～ よかった｡ フフフ…｡

よかった｡

おめでとうごぜ～ます｡

♬～

柴田勝家殿が
お市様をめとられるとのことじゃ｡

(平岩親吉)柴田殿がお市様を…？

(鳥居元忠)そりゃあ めでてえが…➡

どう見ます？ 殿｡

秀吉の好きにさせんためじゃろうな｡

秀吉の？
(原康政)それを阻むため➡

柴田殿がお市様と手を組んだ｡
いや むしろ➡

お市様から仕組んだのかもしれませんな｡

(井伊直政)なるほど｡
だとすると 柴田勢と羽柴勢 いずれ…｡

ぶつかるかもしれん｡

(大久保忠世)う～ん…｡
そうなったら どちらにつきますか？

聞くまでもなかろう 万千代｡

直政｡ 今は 名を改め 井伊直政でござる｡

ふん｡

何じゃ？ 平八郎 何を怒っとる？

(本多忠勝)怒っておりませぬ｡
言ってることと顔つきが違い過ぎるぞ｡

伊賀を越えて 直ちに戻って出陣すれば
明智の首は取れていた｡

さすれば 今頃
天下は我らの手にあったのかもしれん｡

それを まんまと秀吉なんぞに｡
(忠世)口を慎め｡

なぜ もたもたなさったか
それを知りたいだけでござる｡

今 我らが なすべきことは
ほかにあると考えたからじゃ｡

ほかとは？

(数正)
我らにとって 目下の難題は隣国じゃ｡➡

つまり 武田領であった
甲斐 信濃 上野｡➡

武田が滅び 信長のものとなった｡
しかし その信長も死んでしまった｡➡

つまり 主のない国が ３つ落ちておる｡➡

かの地の連中は
武田家臣であった誇りを捨てておらん｡➡

例えば…｡
信濃 真田｡

真田か…
確かに ありゃあ やっかいじゃ｡

武田の残党を集め
勝手な動きを始めておる｡

面倒なことになりそうじゃ｡

我らが急ぎなすべきことは
甲斐 信濃 上野の三国を鎮め➡

北条より先に手に入れることじゃ｡

秀吉のことは
ひとまず お市様にお任せし➡

我らは その間に
揺るぎない実力をつけよう｡

さすれば 天下も おのずと
近づいてくるというもの｡

そういうことなら お任せを｡

一同 直ちに手分けして…｡
甲斐 信濃に散り➡

かの地を調略しようぞ！
北条を追い出せ！

(一同)お… おう｡

(康政)ついてこい 万千代！
(直政)直政！ わざと言っとるでしょう！

(元忠)足元 気を付けよ 万千代！
(直政)直政と言っとるでしょ！

(鷹の鳴き声)

(本多正信)喉 渇いたじゃろ｡
(鳴き声)

ほれ｡ ほれ ほれ｡

ほれ｡ 飲まんか？

ほれ｡ ほれ ほれ｡

おう｡
お～し いいぞ｡ うん｡

ほれ！

(鷹の鳴き声)

フフッ｡
(於愛の方)イカサマ師殿｡

(正信)本多正信でございます 於愛の方様｡

北条と戦になりましたぞ｡

えらいことでございますなあ｡

ホウ！
(鷹の鳴き声)

出陣の支度は？
某は 鷹の世話係でございますゆえ｡

ホウ！
(鷹の鳴き声)
ホ～ウ！

(鷹の鳴き声)

殿が 正信も連れていくと仰せでしたよ｡

足の古傷の… ホウ！ 具合が どうも…｡

ホ～ウ！
(鷹の鳴き声)

(笛の音)

(於愛)あっ 行ってしまわれた…｡

♬～

そこまで殿が仰せなら
お供せねばなりますまい｡

今 参りますぞ 殿！

(鷹の鳴き声)

ホウ！

北条｡ 関東最大の都市 小田原を居城に➡

相模 伊豆 武蔵
下総 上総北部 上野ら➡

広大な領土を有する
老大国｡

その北条を率いるのは➡

かの北条早雲こと
伊勢宗瑞を祖とする 北条氏政と➡

氏直の父子｡

眠れる獅子が
ついに動き出したのでございます！

一方 我らが君の徳川軍は➡

甲斐･新府城に布陣｡

(直政)北条の大軍勢 ２万を超えましょう｡

北条は本気じゃな｡

お味方の3, 000では
持ちこたえられませぬ｡➡

信濃各地に散らばる手勢を
呼び寄せるべきかと｡

(正信)それは いかがなものでしょうな｡

来たか 正信｡

散らばった手勢が集まれば➡

敵の散らばった手勢も また集まり
敵が更に膨れ上がります｡

しかし 既に敵は大軍｡
大軍ゆえに 動きは緩慢｡

山中では 大軍は進むも退くも
意のままにならん｡

彦右衛門殿の手勢を ひそかに動かし
黒駒辺りで待ち伏せしてみては？

それでも 数は及びませぬ｡
狭き山道ゆえ➡

数の差は気にならん｡

僅かな兵で大軍を追い払うことができれば
勝利以上の値打ちがある｡

やってみるか｡

殿 このようなやつの言葉を…｡
直政｡

一軍の将になるからには
こやつのずる賢さも学ぶがいい｡

学ぶがいい｡

一軍の将…？

召し抱えた武田の兵は➡

そなたに預ける｡

武田の兵を… 私に？

はっ…｡

♬～

(ざわめき)

しっ！

♬～

１番 放て～！

(銃声と うめき声)

２番！
(銃声と うめき声)

３番！
(銃声)

今だ！ 槍を入れよ～！
(喚声)

かかれ～！

(喚声)

(秀吉)北条と ぶつかったか｡

(羽柴秀長)徳川殿に助けを送りますか？

何でえ？
徳川殿は あくまで➡

織田家のために戦っとります｡
形だけでも｡

任しときゃあええ｡
数が違いますに｡➡

北条は ２万を超える大軍勢を動かしとる｡
ええか？ 弟よ｡➡

この20年 徳川殿が上様のもとで➡

どれほど多くの大戦をしてきたと
思うとる？➡

今や あの三河もんに勝てる軍勢なんぞ
そうはおらん｡➡

ましてや 関東の端っこで➡

ぬくぬくしておった
北条なんぞにゃあな｡➡

せいぜい
潰し合ってくれりゃあええがね｡➡

ほっときゃあええ｡
こっちは…➡

それどころだにゃあわ｡

(扇子で たたく音)

(秀吉)信雄様！➡

信雄様｡

信雄様 ご心配いりませんでよ～｡➡

勝手なことしだしたんは
信孝様と柴田の方だで➡

成敗するのが筋っちゅうもん｡

三法師様を取り返しましょう｡

(織田信孝)わあ～！

(三法師)パッカ パッカ パッカ…｡

フフ… よっ！

勝てるであろうな？

この猿めが 信雄様を必ずや➡

必ずや 天下人に｡

秀吉が
信雄様を たらし込んだようでござる｡

愚かな兄じゃ｡

戦になるじゃろうな｡
望むところ｡

信孝様は 三法師様を秀吉の手から守り
我らを頼ってくださった｡

義は 我らにありまする｡

秀吉は 己の欲のままに生きておる｡

織田家の天下を
決して渡してはなりませぬ｡

兄に恩義のある
丹羽 池田 滝川 前田 佐々➡

皆 我らにつくことでしょう｡

そして きっと➡

徳川殿も｡

徳川がついてくれれば 心強いな｡

♬～

(直政)殿｡
北条 和睦に応じましてございます｡

上野一国さえもらえれば
甲斐 信濃の二国からは手を引くとのこと｡

悪くない取り引きじゃが…➡

上野 沼田は 真田の地じゃ｡

臣従してくれたばかりの真田から
その地を取り上げることになります｡

恨まれるかと｡

恨まれるのは➡

わしの役目じゃ｡

もう一つ 殿の姫君を 氏直殿の妻にと｡

(お葉)お話は 於愛から伺いました｡

おふう いかがじゃ？

両家のお役に立てるは 至上の喜び｡

謹んでお受けいたしまする｡

お葉｡ まこと そなたに似た➡

麗しくも たくましい姫に
育ててくれたのう｡

おふうも こし入れが決まり
葉は肩の荷が下りました｡

お家のことも あとは於愛に任せます｡

まだまだ頼りにしております｡
私に任せたらいけません｡

それもそうじゃな｡

まあ｡
ハハハッ｡
アハッ｡➡

フフフッ｡

♬～

その一報が入ったのは
その年の暮れでございます｡

申せ｡
はっ｡

羽柴秀吉と柴田勝家
戦になりましてございます｡

秀吉は 織田信雄様を頂き
勝家方の近江･長浜城に攻め込みました｡

秀吉は 織田家を乗っ取るつもりでしょう｡

♬～

羽柴秀吉は
信長の次男 織田信雄と手を組み➡

三法師を奪い返さんと出陣｡

対する柴田勝家は 雪のため出陣できず｡

(お市)権六！

北ノ庄城に
足止めを余儀なくされておりました｡

左衛門からじゃ｡
岐阜城も落ちたそうじゃ｡

勝家が動けん時を狙ったな｡

雪が解けたら 柴田勝家と羽柴秀吉
いよいよ ぶつかりますな｡

(忠世)恐れていたことが起きましたな｡
猿め 調子に乗りおって！

金ヶ崎の時は
おろおろしておったくせに！

あのころの秀吉とは
訳が違うだろう｡

(康政)明智を討ち取った早業も
悔しいが見事であった｡

殿｡

柴田殿より年の瀬の贈り物でございます｡

(元忠)おおっ なんと美しい綿布じゃ｡

(康政)送り主は お市様じゃろうな｡
(親吉)いかにも お市様の真心のようだわ｡

(忠世)やはり 柴田勢の本当の総大将は➡

柴田勝家でも織田信孝でもなく
お市様かと｡

(元忠)さすが信長の妹よ｡

(直政)秀吉からも｡

(数正)打って変わって 品のないことよ｡
(元忠)そのとおり！

つくづく下世話な男じゃ！
(笑い声)

いつでも お市様をお助けできるよう
出陣の用意を整えておこう｡

うん｡

柴田勝家と羽柴秀吉は
近江･賤ヶ岳にて激突｡

しかし予想に反し 柴田勢は
秀吉の調略による裏切りが相次ぎ➡

総崩れとなったのでございます｡

(銃声)
出てこい！ 柴田！

(銃声と やじる声)

≪(銃声)

大事ない｡ 怖がることはないぞ｡
うん…｡

≪(銃声)

♬～

お見えになるでしょうか｡

母上が待ちわびておられる お方｡

何のことじゃ？

私が幼い頃
母上は ようお話ししてくださいましたよ｡

昔話を｡

でも… 覚えておいででしょうか？
幼き日の約束など｡

♬～

(忠勝)殿！ 出ましょう｡

柴田殿を助けるべきと存じます｡

同じく！
お市様と共に 秀吉を討ちましょうぞ！

(正信)さてさて
それは どうでござろうな｡

(忠世)正信｡
鶏の世話係なんぞ入ってくるな！

鷹の世話係で｡
(笛の音)

前田利家も 柴田を裏切ったと聞く｡

つまり 織田家臣の多くは
秀吉に調略されたわけじゃ｡

(康政)なぜ そんなことになったのか…｡

それこそが 秀吉という男の才覚｡➡

某は
諸国を渡り歩いてきたので よう分かる｡

うん！ 甘いの これは！
ああ よかった！

こいつも甘いのう！
(歓声)

(正信)秀吉は
民百姓の人気が すさまじい｡➡

皆 自分の親類縁者のように
やつのことを思うておる｡

あれは 人の心をつかむ天才じゃ｡

存外 人は美しい綿布よりも
下品な金が好きなものでござってなあ｡

殿｡ これは あくまで 織田家中の争い｡

我らは ただ静観し 勝った方に➡

｢おめでとうございまする｣と言いに行くが
上策かと｡

明智に続いて柴田をも押し潰す｡
今の秀吉は破竹の勢い｡

私も 戦を構えるのは時期尚早かと｡

北条や真田のことも気がかり｡

今は
甲斐 信濃を固めるが肝心と存じます｡

≪(銃声)

♬～

様子を見る｡

♬～

♬～

(せきこみ)

大事ござらぬか？

お市様のことは
この竹千代がお助けします｡

♬～

必ず 助けます｡

♬～

古い約束があってな…｡

お相手は
ずっと覚えておったんじゃろう…｡

なのに わしは…｡

その約束を➡

一番果たさねばならん時に…｡

果たせぬ…｡

♬～

祈ることしかできぬ｡

♬～

(すすり泣き)

♬～

(秀吉)権六の首だけ持ってくりゃあええ｡

我が妻には 傷一つつけるだにゃあぞ｡

我が妻？

決まっとるわさ｡

お市様｡

欲しいのう 織田家の血筋が｡

そうすりゃあ
わしらあを卑しい出だっちゅ～て➡

バカにするもんは おらんくなる｡

早う 連れてこい｡

はっ｡

(茶々)やはり
お見えになりませんでしたな｡

見て見ぬふり｡

戦とは
そのような たやすいものではない｡

徳川殿は
嘘つきということでございます｡

茶々は あの方を恨みます｡

秀吉の使いが参った｡ 出よ｡

あやつが上様の草履持ちだった頃
わしは よう あれの尻を蹴った｡

やつを見くびっていた… からではなく➡

フ… 怖かったからじゃろう｡

あの男の底知れぬ才覚が｡

やつのもとへ お行きなされ｡

行きなさい｡

(江)母上は？

あとから参ります｡

(初)まことでございますね｡
はい｡

♬～

(お市)頼む｡
はっ｡

(お市)早う行け｡

♬～

そなたも出よ｡

断る｡
信長様に顔向けできん！

一度ならず二度までも
夫だけを死なせて…➡

生き恥をさらすことこそ➡

地獄にいる兄に笑われようぞ｡

私は 誇り高き織田家の娘じゃ｡

男のように乱世を駆け巡るのが
我が夢であった｡

最後に ほんの少し
そのまね事ができた｡

この戦の総大将は
この市であると心得ておる！

敗軍の将は その責めを負うもの｡

一片の悔いもない｡

織田家は死なぬ｡

その血と誇りは 我が娘たちが
しかと残していくであろう｡

(足音)

母上の無念は 茶々が晴らします｡

茶々が天下を取ります｡

♬～

｢娘たちを頼む｣…｡

愚かな…｡

愚かな おなごだわ｡

織田家の血筋 残念でしたな｡

な～んも｡

♬～

３～４年もたてば➡

代わりがおるでよ｡

♬～

(秀吉)のう？

♬～

(炎の音)

♬～

♬～

(直政)申し上げます｡

(直政)北ノ庄城 落城｡➡

柴田勝家殿 ご自害！

(直政)また お市様…｡

共に ご自害あそばされましたる由｡

♬～

(荒い息遣い)

♬～

(秀吉)♬ 白兎 白兎

♬ 白兎 白兎

♬～

秀吉は…➡

わしが倒す｡

♬～

秀吉から天下を取り返してくれ！

小牧山城が 最もふさわしゅうござる｡

出るぞ｡
いかがいたしましょう？

日ノ本全土の大戦だわ｡

この辺りが ちょうどいい死に場所と
心得ます｡

秀吉に 勝負を挑みたい｡

家康と勝負をつけたるわ｡

は… はっ｡
はて お気に召しませぬか？

次回 どうする｡

賤ヶ岳の山頂から望む余呉湖｡

この湖を囲む一帯で
柴田勝家は 羽柴秀吉と激突しました｡

しかし 味方の裏切りに遭い
勝家は越前に向けて退却｡

そして勝家が築城した北の庄城に
お市と３人の娘と共に入りました｡

数日後
秀吉軍に包囲され死期を悟った勝家は➡

お市に城内からの退却を
求めますが➡

お市は
きぜんとして断り➡

共に自害する道を選んだと
伝わります｡

そして２人は
黄泉の国へ いざなうといわれる➡

ほととぎすに思いを託し➡

辞世の歌を詠み合いました｡

菩提寺の境内で
勝家と共に静かに眠るお市｡

信長の妹として
あらがえない宿命を背負った人生が➡

ここに ようやく終わりを迎えたのでした｡