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Original subtitles

(女性)私は もうすぐ死ぬ

(かすかな呼吸音)

(女性) まだ7歳 短い人生だった

(心電図モニターの心拍音:ピッ ピッ)

(心拍音が乱れる:ピピッ… ピピピ)

(警告音)

(警告音が続く)

(警告音が止まる)

(響く心音 ドクン! ドクン!)

(りの)誰?

(じゅん)じゅん 甲野(こうの)じゅん

あげる 近くで咲いてたんだ

きれい

ありがと

(鳥のさえずり)

(りの)甲野くん?

甲野くん?

(りの)おぉぉー!

(田中(たなか))長谷部(はせべ)?

(中学生のりの)私は走った! 全力で息を吸って 吐いて!

甲野くん

甲野くん

甲野くん 甲野くん 甲野くん!

(りの)あー! 待って待って うおっ!

(荒い息づかい)

(りの)えっ?

(響く心音 ドクン! ドクン!)

こ… こ こ…

甲野くん!?

(りの)え…

もしかして… 甲野じゅん?

(じゅん)あ? 誰?

(りの)ほら! 私 長谷部りの!

小1の時 死にかけの私を救ってくれた!

ずっと探してたんだよ

ほら! 甲野くんが私の手を こうやって握ってくれて

(じゅん)触んな

うっ…

こ… 甲野くん

(校内のチャイム)

(田中)おい おなかが ほら おなかがすごいぞ

デュン デュン デュン…

-(りの)田中 邪魔 -(田中)え?

(りの)おい 田中

好きという恋愛感情を 疑っている田中よ

(田中)なんだ?

(りの)私 甲野じゅんが好き

(田中)ほう

(りの)たぶん1年生 ようやく見つけた

どう見ても不良だけど 間違いなく甲野じゅん

(田中)不良か やめとけ!

(りの)やめるとか やめないとか そういうことじゃない!

もう理屈抜きに どうしたって好きなんだからぁ

(田中)だったら勝手にしろ

うわっ!

(りの)こ…

こ…

こ…!!

(りの)甲野くん!! 出よう! 4×(かけ)100メートルリレー

(じゅん)あ それ

-(りの)部長! -(部長)え?

(りの)今から猛特訓しよう

(部長)いやいや… 無理 無理 俺ら あいつみたいに才能ないし

部長

才能があるとか ないとか関係ない

出たいの? 出たくないの? どっち!

(夏也(なつや))別に てかダルい

-(りの)出れる! -(秋人(あきと))根拠は?

(りの)根拠は… えーと

私 長谷部りのがマネージャーで

甲野くんが先生だから!

(じゅん)は?

(じゅん)おい ちょ… やめろ おい やめろって!

(部長たち)フゥフゥ~!

(夏也) むちゃくちゃ速くないですか?

絶対スカウトしたほうがいいっすよ あれ

(笑い声)

(りの)か… かっこいい!

ありがとうございます

-(りの)ねぇ ねぇ ねぇ ねぇ -(じゅん)は?

(りの)どうやったら そんな速く走れんの?

(じゅん)目線は真っすぐ 軸(じく)をぶらさずに

手をしっかり振る

で… ひざは前に出すイメージ

(りの)目線は真っすぐ

うぅっと!

(りの)うわぁ! 速くなった気がするー!

(走っていく足音)

(秋人)あ… あの

僕も やってみても… いいですか?

(じゅん)もちろん もちろん

(じゅん)はい はい はい!

リズム上げて リズム上げて! 胸 広げて!

肩甲骨(けんこうこつ) 閉じて! 腕 振って 腕 振って!

(りの)はいっ

13秒9!

(じゅん)おぉ!

(秋人)よっしゃあ

(秋人)はぁ… よかったぁ

(りの)こ… 甲野くん!

(じゅん)え?

(じゅん)あっ

(りの)捕まえてこーい

(走っていく足音)

(じゅん)先輩たちも一緒に 練習しませんか?

-(夏也)どうすか? 部長 -(部長)するか

(夏也)じゃあ

(じゅん)手のひら 卵 軽く握る感じ!

後ろで しっかり引いて 目線 真っすぐ!

テンポ テンポ テンポ!

ひざ上げて! 前に前に!

足首 固めて!

バトンの先端を 相手の手のひらに押しつける!

(秋人)はいっ

はいっ

(じゅん)オッケー!

走れー!

-(夏也)はいっ -(じゅん)はい

-(夏也)頼む じゅん! -(じゅん)オッケー

(部長たち:口々に) ダッシュ ダッシュ ダッシュ!

じゅん ダッシュ! ラスト集中!

集中 集中! ここだ ここ!

(部長)何秒 何秒?

(りの)新記録 出ました!

目標タイムまで あと1秒!

(部長たち)おぉー!

1秒 すげー! マジで?

わぁー! すごい すごい!

よし! 最高 最高!

(じゅん)よっしゃ!

(りの)甲野くん

一緒に帰ろう

(じゅん)別にいいけど

後ろ 乗る?

(じゅん)は?

人力(じんりき)!?

(りの)本戦(ほんせん)はこれで 会場 行くからね

(じゅん)マジかよ

(じゅん)ははっ

(りの)1か月 あっという間(ま)だったね

(じゅん)そうだな

(りの)いよいよだ

(じゅん)うん やれることは 全部やってきたつもり

てか すげぇ見られてんだけど!

(りの)みんな 私たちが うらやましいんだよ

-(じゅん)いいよいいよ 代わるよ -(りの)いいよ 送りたいから

(じゅん)なんで そんなに俺のこと

(りの)好きだから!

(じゅん)は? な な… なんで!?

(りの)うるさい! 好きなものは

好きなの!

(じゅん)勝たなきゃな 長谷部先輩のためにも

-(りの)えっ 何? -(じゅん)なんでもねぇよ!

(りの)えっ 長谷部…

-(じゅん)いいから 前 見て -(りの)あ痛(いて)てて…

(じゅん)危ないから!

(りの)ごめんなさい お花 踏みます! あははっ

(じゅん)長谷部先輩

(りの)あ 甲野くん

よく頑張った

(じゅん)みんな言ってた 長谷部先輩のこと恨(うら)んでるって

(りの)え…

え… うそ

(じゅん)こんなに…

こんなに楽しい夏になっちゃって どうしてくれんだよって

かわいい

(じゅん)長谷部先輩

(りの)何? 甲野くん

(じゅん)俺

長谷部先輩のおかげで 走るの もっと好きになりました

仲間もできたし

めちゃくちゃ楽しかったです

ありがとうございました!

私のやってきたことが 甲野くんの力に…

(じゅん)はい!

(近づく 飛行機のエンジン音)

(近づく 飛行機のエンジン音)

よかった

(近づく 飛行機のエンジン音)

(近づく 飛行機のエンジン音)

甲野くんのこと好きになって

(じゅん)俺も

(エンジン音が 大きくなる)

(エンジン音が 大きくなる)

俺も… 長谷部先輩のこと

好きです

(りの)え…

え… えっ?

(田中)長谷部?

(りの)甲野くんが…

消えた

誰 それ?

えっ?

私と一緒にいた甲野くんだよ

陸上部の 不良っぽい めっちゃ足速い甲野じゅん!

はぁ?

え? いや だから あの…

ほら えっと…

えっと…

あれ? 写真が…

(田中)何 言ってんだ お前

(りの)待って 待って 待って

甲野くんが消えた?

甲野くんも 甲野くんの存在も?

いやいや 待って待って待って 分かんない 分かんない

え? いや ちょっと待って

(田中)長谷部 落ち着け!

お前は恋に恋してただけだ

(りの)え… 違う

そうじゃなくて

そうじゃない!

(田中)目線は真っすぐ ひざを押し出せ

そう教わったんだろ?

(りの)え?

(田中)はい 立つ

んっ!

あいっ!

あ スマホ忘れてるよ!

-(田中)おい! バカ! -(りの)うわぁー!

(ギターの音色)

(りの)甲野くん 甲野くん 甲野くん!

なんで甲野くんは消えた?

甲野くん もう会えないの!?

いや そんなことはなーい!!

(ドクン! ドクン!)

け… 軽音部(けいおんぶ) 激しく入部希望 長谷部りのです!

(じゅん)僕 3年で部長の甲野

よろしく

甲野くん

好きです!

甲野くん!

(りの)え?

また?

♪(ギターで奏でるイントロ: 「C7」)

(りの:弾き語り)♪ 心配なのは

♪ あなたのこと忘れそうなこと

♪ 不安なのは

♪ こんな日々にも慣れそうなことよ

(間奏)

♪ 1つだけわかったこと

♪ あたしは強い

♪ 1人になった時

♪ 実感する

(田中)何してるんですか?

(りの)分かるでしょ 探してんの 甲野じゅんを!

-(田中)よっ! -(りの)あんた分かる?

すごいんだよ 人を好きになる時の引力(いんりょく)って

もう重力なんて目じゃないよ!

だから私

私 世界一 幸せ!

甲野くーん! どこにいるのー!

(女性と男性の話し声)

(りの)あ すみません

(女性たち)すみませーん

(りの)えっ…

(ドクン! ドクン!)

(踏切警報機の音)

(りの)甲野くん!

(りの)好きだよ!

俺も!

(電車の走行音)

(踏切警報機の音)

(田中)うーん 奥が深いな

(りの)は?

(田中)恋って 時々 正しさまで打ちのめしてくるのか

(りの)いや ウザい

てか 田中 受験は?

(田中)俺 働くわ

(りの)えぇっ 田中 落ちたの?

(田中)いや ていうか 合わなかったっていうか

(りの)田中って 案外バカなんだね

(田中)バカは お前だろ

-(りの)いや 私 受かったし -(田中)え? あっそ

-(りの)だから受かったって -(田中)へー

-(りの)おめでとうは? -(田中)おめでとう

(女子)なんかさぁ

え ちょっ… このサークル やばくない?

-(男性)大丈夫? -(女性)うん 大丈夫 大丈夫

うん もうすぐ帰るよ

(男性)寿司?

(女性)結構あるよ

(男性) ガキが調子こいてんじゃねぇぞ コラ!

親に食わしてもらってる身分で 何 親の悪口 抜かしてんだ クソガキが!

(男子たち) すいませんでした じゅんさん!

(店主)感謝しろよ! 親に

あっ いらっしゃい

(ドクン! ドクン!)

(じゅん)えっ お客さん?

(りの)あ? え… えっと…

(じゅん)おっ もしやバイト希望?

うん 採用!

-(花森(はなもり))じゅん 早すぎ -(じゅん)えっ ダメだった?

(りの)ダメじゃないです 長谷部りのです

-(じゅん)彼女 同僚の花森 叶美(のぞみ) -(花森)どうも

(じゅん)花森さん もうすぐ産休だしさ ちょうどいいじゃん

-(花森)まぁ そうだけど -(じゅん)ね?

(じゅん)で 俺が店長の

甲野じゅん

(じゅん)えっ?

(花森)こうの?

(じゅん) なんで知ってんの? 俺の旧姓

えっ 旧姓?

(じゅん)いや 今は洗井(あらい)だけど

(田中)あー なるほど

厳しい状況だな

(りの)厳しいとかじゃないし

うまっ

(田中)で 相手って どんな人なの?

(りの)名前はキョウコ

今は ほかの店舗に 出張してるんだって

(田中)しかも婿入(むこい)りしてるんだろ?

いや マズいって浮気は

-(客たち)ごちそうさまでーす -(田中)ありがとうございました

(田中)やめたくなったか?

(りの)やめたくても この心臓の鼓動は どうしたらいいのよ

それは止(と)められないし

(田中)ほう

(りの) だって出会っちゃったんだから

もう その運命には逆らえないのよ

私だって逃げ出したいけど

それでも私たちは 恋をしなきゃいけない

(田中)おい!

恋が目的になってるじゃん

ちょっとは相手の気持ち 考えてやれ

(じゅん)えっ どういうこと?

デートに行ってくれませんか? 私と

(じゅん)いや デートって…

もちろん キョウコさんにも確認します

ダメ元なのは分かってます

でも私にチャンスを下さい

(じゅん)どうしようかなぁ

(りの)仕事 頑張りますんで

お願いします!

(じゅん)じゃあ アイロンがけで

(りの)え?

(じゅん)アイロンで うまくシワ取れるようになったらね

(りの)いいんですか?

(じゅん)来月2日に キョウコ帰ってくるから その時までに

(りの)はい!

(花森)あれさぁ

じゅん からかってるだけだよ

(りの)花森さん

シャツの袖(そで)の こういうシワって どうやれば もっと取れるんですかね

(花森)だから どうして そこまで?

好きなんですよね

(花森)単純すぎ

でも 人を好きになるって 単純なことだと思うんです

理屈なんか 0(れい).0000…

000000… 1ミリも いらないっていうか

(花森)やめときなって ただの ひと目惚(めぼ)れだよ

(りの)なんでですか 花森さんの おなかの子のお父さんだって

(花森)1人で育てるよ

アイアム ハイパー シングルマザー

(りの)失礼しました!

(花森)いえいえ

恋とか愛とかじゃなくて 自分を大事にしなよ

りのちゃんが傷つくの 見てらんないよ

花森さん 優しい

(花森)は? 何が?

優しい人には

きっと優しい赤ちゃんが 生まれますね

(花森)赤ちゃんが何 言ってんの

(りの)えへへっ お疲れさまでした!

(花森)お疲れ

(りの)よし…

(鳥のさえずり)

(近づく足音)

(シャッターを開ける音)

(りの)今日は よろしくお願いします

(じゅん)おはよう

(りの)あれ? キョウコさんは?

今日はね キョウコの技術を 全て受け継いだ俺が見ます

(りの)えっ? でも今日 帰ってくるって

(じゅん)うん 帰ってきてると思う

ははっ ごめん

りのちゃんがさ キョウコに張り合ってくれるから

なんかキョウコが 生きてるような気になっちゃってさ

この店はさ キョウコの形見なんだ

そうだったんですか

(じゅん)うん

脱サラして俺が店 継(つ)ぐの 反対してたんだけどさ

キョウコ 見てっかなぁ

ちっとはマシな店になったかな

え? なんで りのちゃんが泣いてんの?

あ… ごめんなさい

ただ

好きな人が

好きな人の話をしてくれて

で… それ聞いてるうちに

私もキョウコさんのこと 大好きになってたから

(じゅん)あぁ ありがと 花森さん

-(りの)ありがとうございます -(花森)いいえ

-(じゅん)じゃ どうぞ -(りの)はい

(じゅん)お手並み拝見といきますか

うん いいね

行ってくれますか?

(じゅん)ははっ そうだね

気持ちは うれしいけどさ でも俺 やっぱりキョウコのこと

(りの)分かってます

でも

少しだけ私に 向き合ってみてくれませんか?

お願いします!

(じゅん)いや… でも俺 ほら 不器用だしさ

そんなとこも かわいいです

(じゅん) 変に頑固なところもあるし

頑固さなら譲(ゆず)りません

(じゅん) 昔 マジで ひどかったんだよ

いろんな人に迷惑かけてきたしさ

(りの)じゃあ 一緒に謝りましょう!

汚れたなら 一緒に洗いましょう

シワがついたなら 一緒に伸ばしましょう

だから…

私と一緒に生きてください!

(りの)じゅんさん

好きです

(じゅん)俺も…

俺も…

りのちゃんのこと

好きだよ…

(りの)もういいよ…

なんなの これ…

(花森)りのちゃん 大丈夫?

(りの)あ… 花森さん

(花森)もしかして りのちゃんさ

いや…

(りの)じゅんさんのことですか?

(花森)誰? じゅんさんって

(りの)あ… いや

なんでもないです

(花森)何?

(りの)こんなバカげた話 絶対 信じないと思いますけど

じゅんさんが

甲野さんが

(花森)もしかして消えちゃった?

えっ?

なんで?

(花森)知ってる

私もそうだから

(りの)えっ…

え… えぇっ?

花森さんも 好きな人が?

(花森)うん

だから ちょっと気持ち分かるよ

(りの)そうだったんですか

いや… 私 もう どうしたらいいか分かんなくて

(花森)んー

誰も好きにならなければ いいんじゃない?

(りの)そんなのは悲しいです

私は

甲野じゅんが運命の人なんです

(花森)運命って?

(りの)いや えっと それは その…

(花森)そうやって言い聞かせて 自分に酔ってるだけでしょう?

(りの)違う!

違う…

違う違う違う 違う…

(近づく 飛行機のエンジン音)

(近づく 飛行機のエンジン音)

(エンジン音が 大きくなる)

(りの)え…

(田中)それは ずいぶん切ないな

(りの)切ないとかじゃなくて 意味 分かんない

これって全部 私のせい?

私と出会ったら みんな消えちゃう

(田中)つらいのは お前だけじゃない

(りの)甲野じゅんは 両想いになったら消えちゃう

そして また現れて

消えて…

(田中)消えるってことは いたってことだよな

(りの)ん? どういうこと?

(田中)バイト行くわ

(りの)ねぇ 田中

あんた なんか知ってる?

知らないのは お前だけだよ

じゃ

(降りだす雨の音)

(雨音が続く)

(りの)あぁ…

もう疲れたかも

(田中)おい 長谷部

おい!

お前 全然 食べねぇな

(りの)昨日は食べたよ

(田中)今の話だ

(りの)あっそ

てか田中 なんで いんのよ

(田中)俺を落とした大学は どんなもんかと思ってな

(りの)気にしてんじゃん

(田中)こんなんも あんだな

“新歓(しんかん)バーベキュー”

出会いが待ってるぞ

(りの)いいよ

誰と出会ったって どうせ消えちゃうんだから

(男性)ちょっと!

(じゅん) すいません いきなり

でも消えちゃうなんて

ダメですよ そんなこと言わないでください

(りの)あ… そういうの大丈夫です

(じゅん)じゃあ 俺 明日も同じこと言います たぶん

よし はい チーズ!

(シャッター音) (りの)え え え?

-(じゅん)名前は? -(りの)長谷部りの

-(じゅん)はせべりの はい -(田中)田中

(じゅん) はせべりの たなか… よしっ

(りの)あの それって

(じゅん)あ 時間!

(じゅん)あっ

俺 じゅん

甲野じゅん よろしく

(田中)おい じゅん!

(走っていく足音)

あ… あれ?

(シャッター音) (じゅん)よしっ

(女子)みんなー!

もっと いっぱい食べて もっと盛り上がっちゃってよ!

(歓声)

-(じゅん)この肉は全て俺が頂きます -(良太(りょうた))お前 食いすぎだって!

(じゅん)いいんですよ 食わせてください!

俺 じゅんっす 甲野じゅん!

(良太)じゅんじゅん!

(良太)じゅんじゅん!

(じゅん)俺 じゅんっす! 甲野じゅん よろしくっす

俺 じゅんっす よろしくっす

あの 長谷部さんっすよね? 肉 食ってます?

(りの)あっ 結構です

(じゅん)うまいっすよ

(談笑)

(船の汽笛)

(カナ)肉 ラスト食べる人!

(良太)えー まだあるの?

(じゅん)まだまだ いけます~!

(カナ)いけるって!

(じゅん) 拙者(せっしゃ)が頂かせていただきます!

いただきマンモス 失礼します!

(笑い声)

(じゅん)やっぱ違(ちげ)ぇわ!

やっぱ肉だよ!

(じゅん)楽しんでますか?

(りの)あ… 全然 お構いなく

(じゅん)肉 食べないんすか? めちゃくちゃ うまいっすよ

(りの) 食べすぎでしょ どう考えても

(じゅん) 今日は食べすぎるやつでしょ

(りの)そんな食べたら あとで絶対 苦しくなるし

(じゅん) あととか前とか関係ない!

やりたいことをして 今を楽しんで 今を生きる!

(カナ)はい チーズ!

(りの)イェーイ… (シャッター音)

(じゅん)見せてー

俺 いい顔してる

-(カナ)送っとくね -(じゅん)うん

(アスカ)おっしゃ みんな バレー やろうぜ!

(じゅん)バレー やっちゃう?

世界で一番 好きなスポーツ バレー!

バレーボール!!

(じゅん)あっ

じゃあ 俺も長谷部さん撮っちゃお

(りの)いや いいって

(じゅん)あれ?

(りの)どうしたの?

-(じゅん)ない -(りの)何が?

(じゅん)スマホ

(りの)あぁ 鳴らそっか 番号は?

(じゅん)覚えてない

(りの)あ 変えたばっかとか?

(じゅん)あ うん いや…

(りの)とにかく探そう 手伝うよ

(じゅん)うん

(じゅん)触った覚えないんだよね

(りの)じゃ 私 向こう見てみる

(りの)えっ これは?

(じゅん)あ! あぁ 違う

(りの)あぁ…

ねぇ データって どうしてんの?

(じゅん)それは平気 毎日 バックアップ取ってるから

(りの)え? じゃあ 別に

(じゅん)今日の

今日の思い出は あれにしか入ってないからさ

あんなに楽しかったのに 忘れたくないし

(りの)そんなすぐ忘れないって

忘れるよ

今日という日は もう 一生 来ないから

俺たちが生きてるのは 今だからさ

だから毎日 思い出 残さないと

(りの)そっち持って

(じゅん)え?

(りの)大事な思い出なんでしょ?

(じゅん)うん

(りの)いくよ せーの!

-(じゅん)うぁっ! -(りの)痛てて…

ちょっと待って 全然 持ててない! そっち動いてもないよ!

-(じゅん)うぁ! 重(おも)っ -(りの)あった?

(じゅん)どうやって見つけんだよ 今ので!

-(じゅん)無理だろ -(りの)はははっ

(りの)今あったかもしれない

(じゅん)絶対 うそじゃん 見てないじゃん

上がってないのよ 少しも!

これぐらいでもいいから 上げてくんない?

(りの)真面目に探そう

(じゅん) 真面目じゃなかったの? 今の

はぁ…

あぁ…

(じゅん)あ ごめん ありがとう

もう大丈夫

え… えっ!?

えええ! え えっ!?

(りの)階段の下にあった

-(じゅん)うわー ありがとう! -(りの)きゃあ!

(じゅん)あぁっ! ごめん

(りの)ごごご… ごめん

あぁっ!

ごめん ごめん あぁっ!

(じゅん)あぁ! じゃないから

立たせてくれよ! 立たせてくれ

ありがとう

(にぎやかな話し声)

(アスカ)来てた? なんで2人 来なかったの?

(じゅん)いや ちょっと スマホをなくしちゃって 探してたの

(じゅん)あっ じゃあ俺 あっちだから

(りの)あっ じゃあ また明日

(じゅん)うん

(りの)え…

えっ 甲野くん 電車は!?

(じゅん)あ… 何 言うか考えてなかった

(りの)え?

(じゅん)あっ

あ… あっ

あ あの… これ

-(りの)何これ? -(じゅん)ははっ

(じゅん)あ… 今日は 本当にありがとう

長谷部さん

じゃ

(りの)だ… 大丈夫?

(ドクン! ドクン!)

(りの)痛(いった)…

(田中)どうした? 長谷部

あ… ううん

(田中) どうだ? あいつ 甲野じゅん

(りの)あー

いや 別に 普通

(田中)そっか

(りの)うん まぁ いい子だなと思うけど

(りの)しばらくは いっかなぁ そういうのは

(田中)まぁ 恋愛が全てじゃないしな

すいません 注文は?

-(女性)あ ピーチウーロンを1つ -(女性)じゃあワインで

(田中)了解です はい

-(りの)甲野くん おはよう -(じゅん)おはよう

(りの)昨日は楽しかったね

(じゅん)楽しかったな

(りの)スマホ 平気? 壊れてなかった?

(じゅん)え? 大丈夫… だよ

(りの)そっか よかった じゃあ

(じゅん)で 君(きみ) 誰?

(りの)え?

いやいや… 私 長谷部りの

あぁ 長谷部さんか

ごめん

(りの)うん まぁ いいけど

ていうか 普段は静かなんだね

(じゅん)え? 昨日は静かじゃなかった?

(りの)ていうか 元気すぎたってか…

ぶっちゃけ うるさかった

そっか

楽しかったんだな

ごめん

隠すつもりなかった

…と思うんだけど

(講義をする教員の声)

(田中)記憶が1日しか持たない?

(りの)うん

厳密には 寝たら忘れるんだって

6歳の時に遭(あ)った交通事故の 後遺症が再発したらしくて

そっか

そりゃ大変だな

(りの)うん…

(りの)記憶が1日しか もたないってことは…

(良太たち)おい じゅんじゅん! おいー じゅんじゅん

(良太)また食ってんじゃん じゅんじゅん 食いすぎ

(りの)思い出が作れない ってことだよね

(良太たち) てか 絶対 覚えてないじゃん

あんな顔する?

あんな しゃべったのに いやいや ダルいわ

(りの)甲野くん

(じゅん)あ…

長谷部さん だよね?

(りの)うん

(じゅん)えと…

このあいだ 確か 一緒にスマホを探してくれたよね

あの… バーベキューの

(りの)甲野くん

君… 家どこ?

(鳥のさえずり)

(由美子(ゆみこ))いいの? 無理してない?

してません

(りの)毎朝7時45分に 迎えに来させてください

(由美子)それは本当に助かるわ

朝は ちょっと 騒がしいかもしれないけど

こちらこそ よろしくお願いします

(りの)よろしくお願いします!

-(りの)あっ 長谷部りのです -(由美子)長谷部さん

-(由美子)かわいい名前だ -(りの)ありがとうございます

(じゅん)同情なら大丈夫なんだけど

(りの)違う

(じゅん)前にも そういうふうに言ってくれる友達は

いたみたいなんだけど

でも 結局 毎日なんて 全然 無理でさ

(りの)私は その人じゃない

(じゅん)毎朝とか

そんなの いつか絶対 めんどくさくなるって

(りの)だったら何?

(じゅん)え?

(りの)“前にも”とか“いつか”とか

甲野くんは どこにいるの?

今 ここにいるんでしょ? 私の目の前に

甲野くん 言ったじゃん

やりたいことをして 今を楽しんで

今を生きる

俺たちが生きてるのは今だから

だから毎日 思い出 残さなきゃって

(りの)私 あの時

なんも感じないふりした

甲野くんのこと好きになって

いつか傷つくのが怖くて

(りの)でも今は

本当のこと言わないほうが怖い

私は甲野くんが好きだよ

じゃ! また明日

(遠ざかる足音)

(じゅん)大丈夫じゃないよ…

(じゅんの泣きわめく声)

(由美子)今日一日(いちにち) 一生懸命 生きよう

(じゅん)覚えてないもん!

(由美子) でも ちゃんと今日を生きないと

今日一日を一生懸命…

(じゅん)嫌だ! 何もしたくない!

(由美子)帰ってきたら お母さんに全部 話して ね?

(泣き続けるじゅんの声)

(由美子)じゅん 今日を生きよう

(じゅん)嫌だ 忘れちゃう…

(由美子)朝は ちょっと 騒がしいかもしれないけど

こちらこそ よろしくお願いします

(玄関の引き戸が開く音)

おはよう 甲野くん

えっと… ごめん

私 長谷部りの

よろしく

(じゅん)どうして ここに?

(りの)毎朝 迎えに来ることにしたの 今日から!

(りの)おはよう 甲野くん

(じゅん)おはようございます

(由美子)いってらっしゃい

-(りの)いってきます -(由美子)よろしくね

(りの)行くよ! あ 怪しい者(もん)じゃないから

(由美子)ふふっ

(りの)遅刻するぞー!

ダッシュ!

(由美子)いってらっしゃい

(田中)調子 良さそうだな

(りの)そう?

(田中)うん ちょっとダルいくらいに

(りの)なんか 私ばっか ごめんね

(田中)別に

だって恋愛の分のエネルギーを ほかに回せるし

(りの)さすがだねぇ 田中 超越してんね

(田中)お前に言われたくねぇよ

(りの)でも

すごいよ 好きな人と毎日 出会うって

毎日 恋してんだよ

(田中)なんか あれから1か月 毎日 告白してんだって?

うん

でも甲野くんにとっては 毎日 初めてのことだよ

(りの)甲野くん 好きです!

(じゅん)えっ そんな…

ありがたいけど

(りの)読んでおいて

明日も健(すこ)やかにね

(じゅん)じゃ

(2人)じゃ ははっ

(りの)おはよう 甲野くん

(じゅん)えっと…

(りの)あ… 私

(じゅん)待って

えーと…

えーと…

(講義をする教員の声)

(りの)甲野くん 好きです!

(じゅん)いや そんな…

ありがたいけど

(りの)明日も健やかにね

(じゅん)うん

じゃ

-(りの)じゃ -(じゅん)じゃ

(じゅん)はははっ

ははっ バイバイ

(りの)ふふっ

(セミの鳴き声)

(りの)おはよう 甲野くん

(じゅん)あ…

なんか… 覚えてる気がする

(りの)えっ 本当?

(講義をする教員の声)

(りの)じゅんくん 好きです!

(じゅん)そんな ありがたいけど

ふふっ

(りの)明日も健やかにね

(じゅん)うん

(2人)じゃ

(じゅん)ははっ

(りの)あっ (走ってくる足音)

(りの)おはよう じゅんくん

(じゅん)どちら様ですか

あぁ… えーと

わ… 私

ま… 毎朝

うそ うそ

長谷部さんでしょ?

(りの)えーっ! いいよ もう見せなくて

(じゅん) ありがとう いっぱいあった

(りの)いやぁ! トレーディングしないで 行くよ

(じゅん)ふふふっ

-(じゅん)“甲野くん 大好き” -(りの)読まなくていい!

-(じゅん)“今日ね 夢に甲野くんが…” -(りの)違う 違う 違う!

(良太たち)ごちそうさまでした!

(カナ)あぁ! 風 気持ちいい~

(アスカ)どうですか? 二十歳(はたち)になった気分は!

(良太)もっと飲みたいっす 先輩!

(アスカ)お前はダメだ!

-(良太)うわぁ! -(じゅん)勘弁(かんべん)しろ

(笑い声)

(じゅん)じゃあ 俺 これで

-(良太)えっ まさか帰る系? -(アスカ)オールしようよ オール!

(じゅん)行きたいけどさ ほら 朝までは 迷惑かけちゃうかも

-(良太)えー! 大丈夫だって -(カナ)騒がない

(りの)行こうよ じゅんくん

(じゅん) でも俺 寝ちゃうと記憶が…

(りの)寝なきゃいいじゃん

私も寝ない ひと晩くらい平気だよ

(じゅん)じゅんじゅん追加で お願いします!

(一同)わー! やった!

(良太)やった 行くぜ じゅんじゅん! じゅんじゅん!

(カラオケ)

(アスカたち) ♪ どうかこの夜が~!

♪ 朝にならないで

♪ 強く思うほど

♪ 願うほど

(じゅんたち) フゥ フゥ フゥ フゥ!

(アスカたち)♪ 赤い秒針は

♪ そんなあたしを 嘲笑(あざわら)って

♪ この時間を 吸いとっていくだけ

(良太)ウェーイ!

(アスカ)フゥ~!

-(アスカ)はぁ~ -(良太)もういい もういい

(良太)もう… のど痛い

(曲の間奏が続く)

(アスカ)もういいや 終わりでいいくらいかな

-(カナ)帰っていい -(じゅん)もう帰っていい

-(アスカ)帰ろっか もう -(りの)帰ろ

-(カナ)風呂 入りたいね -(良太)帰る?

(アスカ)歌うのも ちょっと 飽きた説あるよね

(良太)マジで?

(カナ)本とか読みたいよね

(アスカ)分かる 落ち着きたい

もういいもん 歌なんて

(一同)♪ どうかこの夜が~!

♪ 朝にならないで

♪ 強く思うほど

♪ 願うほど

フゥ フゥ フゥ フゥ!

(もれ聞こえる歌声)

(アスカ)♪ ひとりにして

♪ 君の頬(ほほ)を涙が

♪ 流れては落ちる

♪ 僕等(ぼくら)は自由だね

♪ いつかそう話したね

♪ まるで今日のことなんて

♪ 思いもしないで

♪ さよなら さよなら さよなら

(カラオケが続く)

(じゅん)あぁ 長谷部さん

(あくび)

(りの)じゅん 寝るなぁ!

(じゅん)何 その動き

(りの)じゅんの眠気を散らす舞(まい)!

(じゅん)へー

(りの)いや 眠すぎて反応 薄(うす)っ

(じゅん)ははは…

(りの)じゅんくん

(じゅん)ん?

(りの)好きだよ

(じゅん)ありがとう

(りの)ねぇ 朝まで話そ!

(じゅん)うん 何 話す?

(りの)何がいい?

(じゅん)うーん

じゃあ 俺たちが出会ってから 今日までの話

(りの)オッケー

最初は 大学のカフェテリアで 出会った

(じゅん)え? そうだったっけ

(りの)で…

その時 私が

“出会いなんか いらない”

“誰と出会ったって どうせ 消えちゃうんだから”って言ったら

じゅんくんが

“ダメです! そんなこと言わないでー!”って

(じゅん)うそ…

(りの)で そのあと バーベキューに行って…

(りの)…で そのあと

(じゅん)ごめん

(りの)いいよ 寝て

(じゅん)ん…

(じゅん)でも…

(りの)大丈夫

夢まで迎えに行くよ 全力疾走で

(じゅん)好きだよ 長谷部さん…

(りの)消えないで…

(遠くに聞こえる 飛行機のエンジン音)

(遠ざかる足音)

長谷部さん…

うぅっ…

(スマホが床に落ちた音)

(女性)マジ 酔ってるだけだから

(女性)え…

(男性)こういうのはさ

ちゃんと好きって伝えてからにしよう って決めてたんだけど

(女性)後出(あとだ)しでもいいよ

(男性)いい?

(女性)全然 どうぞ

(男性)すっげぇ好き!

(停止ボタンを押す音)

(りの)何?

(田中)観てなかったろ

(りの)観てたよ

(田中)じゃあ なんで彼は 彼女を好きになった?

(りの)いや 理由なんて 1つじゃないし

ていうか そもそも こんなの全部うそなんだから

(田中)冷(つめ)た

(りの)いや 理屈では分かるよ

でも 一時(いっとき)の感情でしょ

究極 人と人となんて 分かり合えないし

(田中)本当にそう思ってる?

(りの)何が?

(田中)別に

(りの)分かった 私はもう じゅんくんを好きにならない

これでいい?

記憶が1日しかもたないって

そんな よくある 恋愛映画みたいな設定

(田中)だったら最後は ハッピーエンドだろ

(りの)最後って何? どこが最後?

好きとか分かんないくせに

(リモコンの操作音)

(動画の音楽)

(りの)ごめん

(女性)バチクソ好き

(田中)いや

(バイブ音)

(動画:ギターの音色)

(田中)何してるんですか?

(りの)分かるでしょ 探してんの 甲野じゅんを!

(田中)よっ!

(りの)あんた分かる?

すっごいんだよ 人を好きになる時の引力って

重力なんて目じゃないよ!

だから私

私 世界一 幸せ!

…バカみたい

(りの)い い… いる いる いる!

うれしい! いや うれしくない え どっち?

(じゅん)どうしたの?

(りの)あぁ!

じゅんくん おはよう

(じゅん)おはよう

あれ? 今日って確か大学…

(りの)あっ うん 休み

でも来ちゃった

(じゅん) あ ありがとう… ございます

(りの)いえいえ

(じゅん)なんか します?

(りの)うーん じゃあ…

とりあえずキス?

(じゅん)…は ちょっと

(りの)えへへっ ごめん 冗談

そうだ デートしない?

(りの)あっ チョウチョもいる

-(じゅん)あっ 釣り -(りの)釣り!

-(りの)私 釣りしたい -(じゅん)へぇ 俺もしたい

-(りの)する? 今度 -(じゅん)うん したい

-(りの)道具 買って -(じゅん)家あるよ

(りの)うそ!

-(じゅん)あ ここ バーベキュー? -(りの)覚えてんの?

(じゅん)うん 書いてあった

ねぇ 新歓バーベキュー 長谷部さんもいたって

(りの)いたよ

(じゅん)俺 スマホなくしたの? 一緒に探してくれたって

(りの)そうそう

みんなが遊びに行く中で 2人で ここに残ってさ

-(じゅん)マジで? -(りの)マジで

(りの)で おっきなソファ 持ち上げたりして

-(じゅん)ソファを? -(りの)そう

で 見つかって 駅まで送って

(じゅん)そっか ありがとう

(りの)書いてあるの それだけ?

(じゅん)うん

(りの)あ そっか

(じゅん)え?

(りの)なんでもない 行こっか

(じゅん)あ ごめんごめん ごめん

楽しかった?

(りの)あぁ 微妙

(じゅん)え? なんで?

(りの)んー 肉を無理やり 食べさせられそうになって

-(じゅん)マジ? -(りの)そう じゅんくんに

-(じゅん)俺? うそだ -(りの)本当だよ!

(じゅん)そんなことないよ しないよ そんなこと

(走ってくる足音)

-(りの)ごめん ごめん お待たせ -(じゅん)ううん

(じゅん)えっ 何それ?

(りの)えへへ いいから見てて 見てて

(じゅん)うん

-(りの)あ やっぱ見ないで -(じゅん)いや どっち?

-(りの)ジャジャン! -(じゅん)あ ギター?

-(りの)そう -(じゅん)わぁ!

(りの)ありがとう これ 置いてもらってもいい?

-(じゅん)うん -(りの)ありがとう

-(じゅん)こうでいいの? -(りの)うん

(りの)よいしょ

-(じゅん)えっ ここで? -(りの)うん

はぁ 緊張する

(りの)じゃあ いきます! じゅんくん

(じゅん)はい

(イントロの演奏:「C7」)

(イントロが続く)

♪ 心配なのは

♪ あなたのこと忘れそうなこと

♪ 不安なのは

♪ こんな日々にも慣れそうなことよ

(間奏)

♪ 1つだけわかったこと

♪ あたしは強い

♪ 1人になった時

♪ 実感する

♪ どうかこの夜が

♪ 朝にならないで

♪ 強く思うほど

♪ 願うほど

♪ 赤い秒針は

♪ そんなあたしを 嘲笑って

♪ この時間を 吸いとっていくだけ

♪ たまにあたしは

♪ まねして ギターをかかえて

♪ C7(シーセブン)を押さえる あなたの指

♪ 思い出そうとする

(りの)どうかな?

(じゅん)めちゃくちゃすごいよ すごかった!

(りの)ありがとう

(じゅん)うん ありがとう

(りの)はい これ あげる

(じゅん)え?

えぇ? 何 この しわくちゃの花

(りの)うん だよね

なんか拾って

(じゅん)へぇ ありがとう

もう でも…

もう… もう だって

(りの)えへへっ

-(りの)いきます -(じゅん)来い

(りの)ほい!

-(じゅん)見えない! -(りの)あー!

(りの)もう1回 そっちから

-(じゅん)いきます -(りの)ほい

(りの)ほっ!

(じゅん)ほっ!

-(りの)はっ! -(じゅん)うわっ うそでしょ!

うそだろ

(笑い声)

(りの)あれ? 私に勝って プロポーズするんじゃなかったの?

(じゅん)何それ

(りの)えっ 書いてない?

だから毎日 特訓するって 言ってたよ

(じゅん)そうなんだ

(りの)まっ うそだけど

(じゅん)うそつかないで うそだけは やめて

(りの)ごめん ごめん

(じゅん)よし はい

(2人)あっ

(じゅん)長谷部りのさん

(りの)はい

(じゅん) 大学のカフェテリアで出会った

(りの)うん

(じゅん)それから 一緒にバーベキューもした

(りの)うん

(じゅん)で… 毎日 好きだって言ってくれて

で… 一緒に授業 受けたり

(りの)うん

(じゅん)一緒に帰ったり 一緒にバドミントンしたり

(りの)うん

(じゅん)で… 昨日だって一緒に

一緒に…

ごめん

ごめん よし

(バドミントンをする音)

(りの)はっ!

(じゅん)はっ よいしょ

(じゅんの荒い息)

(りの)あったかいなぁ

(じゅん)何が?

(りの)揺れる肩が

(2人)ふふっ

(りの)ねぇ 聞いてよ 私の未来

(じゅん)うん

(りの)いつか じゅんくんと結婚して

赤い屋根の家に住んで

(じゅん)えっ なんで赤?

(りの)分かんない なんか幸せそうだから

(じゅん)それで?

(りの)庭には柴犬(しばいぬ)が1匹

子どもは3人

男 女 男

(じゅん)女 女 男がいいな

(りの)いいよ そうしよう

(じゅん)この話も 何度もしてる?

(りの)胸 借りていい?

(じゅん)うん

(りの)じゅんくん…

もう寝ないで

私 消えたくない…

ずっと ずっと覚えててほしい

(じゅん)分かった

じゃあ もう 一生 寝ない

りのさん

りのさん

りのさん?

りのさん

りのさん?

(走っていく足音)

りのさん?

りのさん!

りのさん!

(田中)あれ?

何してんだ こんなとこで

おい 長谷部?

おい!

(りの)大丈夫でしょ

(田中)何が?

(りの)どうせ明日が来たら 全部 忘れるから

(田中)じゅんは?

おい

おい 待てって

長谷部!

お前 毎日 じゅんに 恋してるんじゃなかったのか

毎日 出会って 毎日 告白して

お前は世界一の幸せ者じゃ なかったのかよ

(りの) 世界一 幸せなわけないじゃん

世界一 幸せなわけないじゃん!

頭も悪いし ずっと独りぼっちで

毎日 好きな人に忘れられて

どんだけ思い出 作っても 明日には全部 消えてるんだよ

どう?

がっかりした?

(田中)俺は…

こんなことで悩んでて バカみたいでしょ

でも… でも

こんなことでしか悩めないのよ!

残念ながら私は!

(田中)俺は ずっと 長谷部を尊敬してた

人をみっともないくらい 好きになって

ぶつかって

長谷部の“好き”って すげぇんだなって

お前は過去じゃなくて 未来じゃなくて

今にしか いなかったからな

(りのの泣き声)

(りの)あんたも うらやましかったけどね

(田中)でも お前はお前だろ?

(りの)うん…

(田中)だから

独りぼっちなんて二度と言うな

(田中)戻るぞ

(由美子)りのちゃん?

(りの)じゅんくん 帰ってきてませんか?

(由美子)一緒じゃなかったの?

あ… えっと

(由美子)出てったっきり 戻ってきてないけど

そうですか

(由美子)携帯は?

かかんなくて

私も探してみる

(りの)すいません ありがとうございます

(由美子) なんかあったら連絡するね

(りの)はい!

(玄関の引き戸を開ける音)

(荒い息づかい)

(りの)じゅんくん!

じゅんくん!

じゅんくん!

じゅんくん!

なんで…

なんで いつも

私の前から消えちゃうの!

(りの)なんで みんな 私を残して消えちゃうの!?

なんで花森さんまで?

(女性)あれぇ?

(りの)花森さん?

(花森)おぉ 元気?

…でもないか

え… なんで?

(花森)え? りのちゃんの声が聞こえたから

(りの)い… いや

消えたんじゃ…

ふふふっ

消さないでよ なんで消しちゃったの?

(りの)え… 分かんないです

だって私たち 両想いとか そういうんじゃなかったし

だって 私は…

(花森)カズさんのことが 好きだったもんね

ん? カズさん?

(じゅん)俺も

俺も りのちゃんのことが

(じゅん)好きだよ…

(りの) そう あの時 消えたんです

(花森)消えたのは カズさんじゃないよ

(りの)えっ?

好きなんだけど…

ごめん

(りの)それで十分です

今はもっと キョウコさんのこと 想ってあげてください

もっともっと 気が済むまで

いつか思い出になって

笑顔で前に進める時まで

(花森) りのちゃんだよ 消えたのは

(花森)カズさんのことを思って りのちゃんが身を引いたの

でも あんなに好きだったから

思い出が全部つらいから

消えたって記憶に すり替えてただけ

だけど

大事なことを りのちゃんが私に 教えてくれたじゃない

(りの)私は 甲野じゅんが 運命の人なんです

(花森)そうやって言い聞かせて 自分に酔ってるだけでしょう?

(りの)違う!

違う

違う… 違う違う違う

(花森)運命とか 好きとか愛とか

しっかり向き合ってるように 装(よそお)っても

別れて1か月 経ったら

半年 1年 経ったら

一緒に何を食べた とか

どこで会って何を話した とか

すぐには思い出せなくなって

都合よく忘れて 相手を消しちゃうんだよ

私は 忘れません

(花森)ううん いつか忘れるの

(りの)今は!

忘れたくない私がいるとしか 言えません

後先(あとさき)は考えられません!

(花森)りのちゃん

甘いよ

(花森)ああは言ったけど

私もゴチャゴチャ 後先 考えてたなぁって

肩の力 抜けたの

りのちゃんの おかげだよ

(りの)そうだったんですか

(男性)叶美!

(花森)誰かを好きになるよりも

一緒になってからのほうが 人生 長いよ

1人でいる幸せも きっとあるしね

はーい ありがとう

おいで~ はぁい

またね りのちゃん

あの時 忘れないって言ってたけど

りのちゃんが 忘れてるんじゃないの?

(りの)え…

私が…

忘れてる?

私が…

私が出会ったのは!

(荒い息づかい)

えぇっ 甲野くん?

先輩 お久しぶりです 甲本(こうもと)です

えっ!? 甲本?

ずっと探してたんだよ

ほら! 私の手を こうやって握ってくれて

(甲本)触んな

(りの)いよいよだー

(甲本)やれることは 全部してきたつもり

…てか すっげぇ見られてんだけど

(りの)みんな 私たちが うらやましいんだよ

(甲本)いや なんで そんな俺のこと

-(りの)好きだから -(甲本)は?

(甲本) 俺も 長谷部先輩のこと…

(甲本)好きです

えぇ…

(甲本)あそこまでは よかったんすけどねぇ

(甲本)あれから先輩 だいぶ やばかったっすよ

(りの)はぁ?

(りの)甲本く~ん

この恋は きっと愛に変わるよ

そしたら私たちは結婚して 子ども4人 作って

最強のリレーチームを作って!

私は 人生という名のトラックを

あなたと共に 駆け抜けてゆきたいのです!

(甲本)重(おも)っ!!

(声が反響する) 重っ… 重っ…

重い?

(りの)甲野!

いや 甲本くーん!

(荒い息づかい)

(りの)あっ!

-(田中)いたか? じゅん -(りの)いや…

(田中)こっちもだ 別 探そう

(りの)甲本くんだった!

(田中)あ?

あぁ 懐かしい名前だな

やっと気づいたか 誰も消えてねぇことに

誰も… 消えてない?

え え え じゃあ

そのあとの 軽音部の甲野くんは?

(田中)あぁ 近藤(こんどう)のこと?

(りの)近藤!?

(男子:ギターの弾き語り) ♪ 頭の良すぎるアイツらは

♪ ほっておこう

♪ 俺たちの圧勝なわけで

♪ こんな事を歌うバンドを見て

♪ 冷めた顔で 頷(うなず)いたりしてるんだろうね

♪ ねえキルミーベイベー 殺してくれ

♪ 溢(あふ)れるほどの愛で 溺(おぼ)れさせてくれ

♪ もう何もいらない トイレのタイルにそう誓うんだ

♪ ねえキルミーベイベー 殺してくれ

♪ 溢れるほどの愛を 僕に分けてくれ

♪ 100分(ぶん)の1でもいいから

♪ 僕に愛を 故郷には緑を!

軽音部 激しく入部希望 長谷部りのです!

(近藤)僕 3年で部長の近藤 よろしく

(りの)こ… 近藤くん

好きです!

近藤くん!

(りの)あ あの 私も弾けるようになりたくて

(近藤)えっ

(りの)教えてください

(近藤)僕でよかったら教えます

(りの)はい!

(近藤)で… A(エー)は ここ こうやって

(弦を鳴らす)

(りの)ここ こうやって

(音が乱れる)

(近藤)ちょっと弾いてみるから 歌ってみて

(りの)うん

(ギターの音色)

(りの)♪ 実感する

♪ どうかこの夜が

(近藤)♪ どうかこの夜が

(りの)♪ 朝にならないで

(近藤)♪ 朝にならないで

(りの)♪ 強く思うほど

(近藤)♪ 強く思うほど

-(りの)♪ 願うほど -(近藤)♪ あー あー

(りの)♪ 赤い秒…

なんか前の彼女の歌い方だと もうちょっと…

(りの)♪ 元カノ 忘れろー!

ごめん なんか…

やっぱ違った ごめん なんか違う

(りの)えっ?

えっ!?

(田中)いや あん時は ひどかったな

(りの)うん…

(田中)分かるけどさ お前は極端なんだよ

おぉ 大丈夫か?

(田中)でも まぁ ちゃんと進んでたんじゃねぇの?

(りの)え… あの それって

駅前で出会った えっと あの…

(田中)田野倉(たのくら)な

(りの)なんで諦(あきら)めんの? あの人のこと好きなんでしょ?

(田野倉)こんな気持ち 消えたらいいんですよ

(りの)消えるな!

消えるとか言わない!

(田野倉)だって 周りに迷惑かけてばっかで

告白しても困らせるだけだし

それに…

これを利用してるように 思われたくないし!

(りの)利用って何!?

言い訳じゃん それ

みんな 胸 痛めて それでも勇気 振り絞って

田野倉くんより よっぽど頑張ってるよ

なんで

俺に そこまで してくれるんですか?

好きという気持ちを 否定しないでほしいから

(雨音と踏切警報機の音)

田野倉!

頑張れー!

ありがとう

(電車の走行音)

(踏切警報機の音)

(田野倉)好きです

付き合ってください

(女性)はい

私でよければ

(田野倉)えっ 本当に?

(女性)いや え 私でいいの? 逆に

(田野倉)うん

(りの)そうだ…

サイテーだ 私

何も… 何も知らなかった

(田中)でも お前は 悲しみを知ってるじゃねぇか

だから 優しいんだよ

(田中)おっ おい! 大丈夫か

(荒い息づかい)

(りの)田中も優しいよ

(田中)当たり前だろ

(りの)そっか…

今まで いろいろあったんだね

ありがとう 田中

(田中)おう

行くぞ

乗れ

よいしょ はぁっ

(りの)今まで

忘れようとしてて ごめん

本当に ごめんなさい

全部全部 大切な時間だったよ

みんな

出会ってくれて

ありがとう

(心電図モニターの警告音)

(警告音が続く)

(ドクン! ドクン!)

誰?

じゅん 甲野じゅん

よかった

(じゅん)あげる

近くで咲いてたんだ

(りの)お花…

(じゅん)うん

前にも…

覚えてる

りのさん

もう消えないで

ごめん

私 もう消えないよ

俺も

忘れてないから

長谷部りのさん

大学のカフェテリアで出会った

で… 一緒にバーベキューもした

で 毎日 好きだって言ってくれて

一緒に授業 受けたり

一緒に帰ったり

一緒にバドミントンしたり

それから

それから…

消えたっていいよ

私が消さないから

ありがとう…

好き

うん

俺も

好き

(りの)えへへっ

(アスカ)よっしゃ イェーイ

-(アスカ)行きますか? -(カナ)行こう

(アスカ)ずっと寝てるよね

起きろ!

-(カナ)寝すぎだよ -(良太)終わった?

-(カナ)終わった -(良太)早(はや)っ

(アスカ)やばいよ ずっと寝てるからね

(カナ) テスト出るとこ 言ってたよ

-(良太)えっ 教えて -(カナ)無理 無理

(じゅん)すいません! 別れてください

あの 昨日までの俺が なんて言ってたか知らないんですけど

えっと…

りのさん… は ただの友達だと思うので

(りの)分かった! じゃあ 別れようか

そして

私と付き合ってください!

(じゅん)えぇ? いやいや…

(良太たち)フゥ~!

えっ えぇ…?

えぇ?

(りの)うふふ

(女性の鼻歌:「C7」)

♪ フフフフ フフフフン~

♪ フフフフ フフフフン~

♪ フフ~ フフフフン

(鳥のさえずり)

(近づく足音)

(女性の鼻歌:「C7」) ♪ フフフフ フフフン~

♪ フフフフ~ フフフ

♪ フフフ~ フフフン

(鼻歌が続く)

(じゅん)ははっ はい

(りの)ありがとう

(じゅん)うん

-(りの)じゅんくん -(じゅん)ん?

(りの)好きだよ

(じゅん)俺も

あなたが大好きです

-(りの)えへへ -(じゅん)ふふっ

♪~

♪ 二人の物語に

♪ 触れたような気がして

♪ 君の名前 声に出して

♪ 目が覚めた

♪ 私のこの気持ちは

♪ この世界のどこにも

♪ 置き場なんて ないのかな

♪ わかっていたけど かなしい

♪ 私は今夜

♪ 君が見てる夢だって

♪ 書き換えて しまいたいのに

♪ 今更(いまさら) 自信もなくて

♪ いったりきたりして

♪ 結末を急ぐけれど

♪ 何も変わらない!

♪ 君の名前を

♪ あと何回 あと何回 繰り返す

♪ 過ぎた日々を

♪ 立ち止まって 何度だって

♪ 確かめるよ

♪ いくつも静かな夜を

♪ 越え たどり着く終点

♪ 君はきっと ずっと知らない

♪ 私だけが 忘れないことを

~♪

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