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<清霞:禁域の奥深くにある オクツキと呼ばれし 異能者の墓。
そこは 死してなお負の情念によって
異形と化した怨霊たちを
永久に封じておくための場所。
もし本当にオクツキが暴かれ
異形たちが 目覚めたのだとしたら>
帝都にとって未曽有の危機 と言っても過言ではありません。
(大海渡)いったい何者が なんの目的で封印を解いたのか。
この時に尭人さまに降りた天啓。
偶然ではないのでしょうね。
(大海渡)ご自分では まだ帝位を 継いでいないゆえに
お力も不安定だと おっしゃっていたが
我々程度では 到底 計り知ることはできん。
ん…。 (一志)あ~ お久しぶりです。
久堂さん 大海渡さん。
辰石お前 その格好で 御前に出るつもりか?
んっ? 僕は軍属ではないし
帝に従う以外に 重んずるべき 規則など ないはずだけど?
最低限の礼儀はあるだろう。
これが僕の正装なんだよ。
あまり堅苦しいことを 言わないでほしいな。
今回だけだ。 次はないぞ。
まあまあ そうカッカしないで。
(大海渡のため息)
(大海渡)失礼いたします。
大海渡 久堂 辰石 参りました。
(尭人)入れ。
(尭人)よくぞ参った。
(大海渡)ご無沙汰しております 尭人さま。
お主らも元気そうで何よりだ。
新たに 辰石家当主を務めさせて いただくことになりました。
辰石一志と申します。
(一志)こたびは 当家の者が 罪を犯したにもかかわらず
このように御身に 拝謁する許しをいただけたこと
心より感謝申し上げます。
気にするな。 お主も大変だったであろう。
はっ。 もったいなきお言葉。
以後 辰石家は 久堂家の麾下に入り
その手足となって 名誉と信頼を回復できるよう
精一杯 務めさせていただく 所存でございます。
帝である父に代わり 我が辰石家を許す。
自らの言葉にたがわぬよう励めよ。
寛大な処置に感謝いたします。
して 尭人さま。
天啓がおありだったと 伺いましたが。
うむ。 オクツキの封が 破られたことは知っておろう。
(大海渡)はい。
(尭人)黄泉より とわに明けぬ夜が来る。
それは深く とこしえに続く闇だ。
気をつけよ 戦いになる。
(清霞/大海渡/一志)んっ!
(尭人)命を落とす者も 出るやもしれぬ。
この帝都に 危険が迫っているのですね。
また何か見えれば伝えよう。
(3人)はっ。 よろしくお願いいたします。
失礼いたします。
清霞。
なんでしょう。
婚約したらしいな やっと。
はい。 お主の婚約者。
まあ これから いろいろと大変であろうが。
大変? 大丈夫であろう お主ならばな。
それも天啓ですか?
心に留めておきます。
(葉月)ふんふん。 (美世)ど どうでしょう?
そうね まず背中は 丸めないように意識してみて。
はい。 視線は前。
はい。 パーティーは交流の場よ。
まずは その自信がなさそうに見える
所作から変えていきましょ!
はい。 ほら 笑顔!
はい。 (葉月)笑うときは口角を上げて。
ん…。 う~ん。
あっ そうそう! 昔 清霞を連れて
甘味処へ行ったことがあってね。
もちろん甘いものを頼んで おいしくいただくじゃない?
は はい。 (葉月)それなのに清霞
甘いものより 何に興味示したと思う?
えっ なんでしょう?
甘味に添えられていた漬物よ。
私の漬物をじっと見て 食べないならもらう だって!
フフッ。 意外と食いしん坊よね。
あの旦那様がですか? フフッ。
そうそれ! あっ。
その笑顔を自然に出せるようにね。
は はい! いい返事ね!
(葉月)それじゃ 次は歩き方のレッスンよ。
和装と洋装じゃ全然違うからね。
は はい。
うう…。
《淑女として 非の打ち所がない葉月様。
そんな方に毎日 稽古をつけてもらっていると
なんだか 本当に少しずつだけど
葉月様へ近づけている気がして。
旦那様の隣にふさわしい 淑女になれるような気がして》
《尭人さまには この先 美世に起きることが
見えているようだったが…。
美世の身にいったい何が》
岩清水:斎森真一の先妻
斎森美世の実の母親なんだが
どうやら 薄刃家の人間だったようでな
《薄刃家。
あまたある異能の家系の中でも
飛びぬけて異質とされ 危険視されてきた一族。
人の心を読み 記憶を覗き
夢に入り込める者までいると聞く。
薄刃の異能が 美世の悪夢に関係しているのか?
だが結界に ほころびはなく
外部から干渉した形跡もなかった。
あと考えられる可能性としては》
(五道)いつでも 出動できるように準備しろ。
(五道)あれ? お出かけですか?
ああ。 すぐに戻る。
あ~ もしかして 美世さんに会いに行くんですか?
仕事だ。 暗くなる前には戻る。
どうぞ 心置きなく!
(葉月)あとは 自己紹介の仕方と
会話の時の決まり事。
あと 絡まれたときの 対処法なんかも教えないとね。
ありがとうございます 葉月様。
大事な妹のためだもの。
少しでも力になれるのなら
こんなにうれしいことはないわ。
それと 美世ちゃん。 はい。
1つだけお願いがあるんだけど。
これだけ仲よくなったんだから そろそろ いいわよね…。
葉月様?
その呼び方! えっ。
私のことは 「様」を付けずに呼んでほしいの。
え…。 私 もっと あなたと仲よくなりたいの!
これからは私たち家族だもの。
どんどん甘えて 頼ってくれていいのよ。
清霞だって 無愛想だけど 同じように思ってるはずだわ。
家族…。
だからね そんなにかしこまらないで
気軽にお義姉さんって 呼んでくれたら うれしいわ。
もちろん 無理にとは言わないけれど。
おねえ…。 香耶:お姉様
は…。
(葉月)どうかした?
あの それでは 葉月さんとお呼びしても
いいでしょうか?
ええ もちろん。
それじゃあ美世ちゃん また明日ね。
はい 明日もよろしくお願いします。
《私は旦那様のおそばにいたい。
私は旦那様と家族になりたい。
でも…。
家族って なに?》
(岩清水)いやはや 急に降ってきたな。 (ドアの開閉音)
夏の天気は 変わりやすくて かなわん。
それで 薄刃の人間は見つけられたか?
(岩清水)いろいろと 調べてはみたんだが
薄刃家に関する記録や文献は皆無。
ウワサばかり 独り歩きしている状態だな。
今のところ 「薄刃」につながる 手がかりは 薄刃澄美だけか。
(岩清水)現状 唯一判明している
薄刃と名乗った人間だからね。
《薄刃澄美は確かに存在し
斎森に嫁いで美世が生まれた。
いくら薄刃家が秘匿しようと 彼女の痕跡を
完全に消し去ることなど 不可能なはずだ》
(岩清水)旦那? なんでもいいから情報が欲しい。
まずは帝都にいた 澄美という名の女性を
片っ端から調べてみてくれ。
う…。
《一刻も早く 悪夢の原因を突き止めねば》
ど どうでしょう?
すばらしいわ 美世ちゃん!
ありがとうございます。
これなら 次は学んだことの実践として
街に出かけられそうね。
ふ…。
美世ちゃん 大丈夫? 疲れてない?
いえ。 最近ちゃんと寝れてる?
はい。 無理はしないで
つらいときは いつでも言ってね。
はい。
(葉月)そういえば最近 清霞の帰り 遅いんですって?
お仕事が大変なようで
今日も泊まり込みになると おっしゃっていました。
んもう! こんなかわいい 美世ちゃんを放って
仕事漬けなんて亭主失格ね。
そ そんなことは…。
旦那様が頑張られている分
私もお稽古に精を出します。
あら いい笑顔! その意気よ。
(2人)フフフッ。
(五道)隊長 宮内省からの使いが 到着したみたいです。
ようやくお出ましか。
(五道)しかし あの秘密主義の宮内省が
よく重い腰を上げましたね。
それだけ状況が 切迫しているということだろう。
いったい何が起きているのか
すべて話してもらうとしよう。
(新)はじめまして 鶴木新と申します。
(新)宮内省の使いで参りました。
久堂清霞だ。 対異特殊部隊 隊長を任されている。
存じております。
あなたは社交界でも有名ですので。
女性を寄せ付けず
まるで凍土のように 冷たいとかなんとか。
世間話はいい。 聞きたいのはオクツキの件だけだ。
ああ そうでした。
では。
ご存じのとおり オクツキが暴かれました。
宮内省は現在も 逃げ出した 異形の回収を急いでおります。
犯人の目的は?
(新)まだ調査中ですが 現場付近にて
怪しい男たちが 倒れているのを発見しました。
おおむね その連中の仕業かと思いますが
目的は不明です。
宮内省が 急に我々へ事情を 話す気になったのは なぜだ?
さんざん渋っていたはずだろう?
現状 オクツキの 異形の回収率は2割程度。
被害者も出ています。 んっ。
要は全く手が足りていないんです。
ようやく省内のお偉方にも
それを理解いただけたのですよ。
どうかしましたか?
失礼かもしれないが
君はどういう経緯でここに来た?
宮内省の職員ではないのだろう?
さすが久堂さんですね。
おっしゃるとおり 自分は宮内省 所属の人間ではありません。
ですが 宮内省とは昔から お付き合いがありましてね。
普段は 鶴木貿易という 会社を営んでおりまして。
常日頃から取引先の調査や
交渉ばかり やっているもんですから
頼まれれば こういう仕事も 引き受けているんです。
なるほど。 今回に限らず
事態が こじれたときに登場する 交渉役というわけか。
ええ。 それはそうと
交渉に差し当たり こちらも あなたのことを
少しばかり 調べさせていただきました。
例えば 最近 婚約されたこととか。
んっ。 まったく うらやましいことです。
自分も早くいい相手を見つけて
身を固めたいと考えてはいても これがなかなか。
結婚とは難しいものですね。
ともかく こたびの件
正式に依頼されたからには 我々も対処に加わる。
ありがとうございます。
これからは 自分が連絡係として 顔を出すと思いますので
改めて よろしくお願いします。
こちらこそ よろしく頼む。
健闘を祈ります 久堂さん。
(隊員たち)おお…。
こいつはひどいな。 んっ。
異形は発見次第すぐに報告しろ。
会敵した場合は 必ず複数名で対応するんだ!
(隊員たち)はい!
(一志)茂みの中に倒れてたってさ。
脈はかろうじてあるけれど 意識はない。
報告にあった男たちと同じか。
コイツ ただの被害者って わけでもないんでしょ?
ああ。 十中八九 オクツキを暴いた実行犯だろうな。
てことは 目を覚ましたところで
こわ~い尋問が待っているわけか。
かわいそうに。
目を覚ませばな。
この状態で救助された者は いまだに誰一人
目覚めていない。
なぜ意識が戻らないのか
その原因は全くわからないそうだ。
オクツキの呪いか。
(大海渡)ああ。 オクツキから解放された異形と
接触したと考えて おおかた 間違いないだろう。
なるほど。
一応言っておくけど 僕にできることは あくまで
呪いや術を解く 「解術」だから。
生きている相手ならともかく
死者の呪いなんて 解けるかわからないよ。
ほかに方法がない とにかく頼む。
了解。
なんでしょう? まるで何かが 動いた後みたいですね。
んっ。 隊長 どうしましたか?
静かすぎる。
音が 消えた。
ふぅ。
ん…。
あぁ…。
はっ! くっ!?
なっ どうした!?
この呪いはちょっと…。
僕の手には 負えそうにない。
あれは…。 下がっていろ。
んっ。
んっ はっ!
(隊員たち)おお!
(隊員たち)はっ!
くっ!
は…。
ここは どこ…。
旦那様…。
はっ!
いや いやぁ!
んっ んっ!
(隊員たち)ん…。 英霊とはいえ
怨霊と成り果て 人を襲う異形と化した以上
容赦はない!
すまないが ここで滅却させてもらう!
はっ! ハァハァ…。
もうすぐですよ。
ようやく…。
(義浪)うむ すでに予兆はある。
目覚めは近いぞ。
はい 俺が守ります。
それが俺の役目ですから。
これが オクツキの異形。
んっ。 もし こんなヤツらが 帝都まで侵入してしまったら…。
そんなことは絶対にさせん。
(セミの鳴き声)
(子どもたちの声)
おじさん 飴玉ちょうだい!
あいよ。
うん かなりいいと思うわ! 上出来よ!
背筋も歩き方も完璧!
あ ありがとうございます。
さぁ 行きましょう。
お稽古とはいえ 何より楽しまなきゃ。
は はい!
《今日は実習の日。
旦那様もお仕事を 頑張っていらっしゃるんだもの。
私だって頑張らないと。
旦那様にふさわしい 淑女になるために》
(ゆり江)美世様? んっ?
んっ?
美世ちゃん 大丈夫? 顔色が悪いわよ?
え… ああ 平気です。
根を詰めすぎるのはよくないわ。
焦ってもどうにもならないわよ。
あなたはちゃんと成長しているわ。
だから頑張りすぎないで。
はい…。 やっぱり今日はもう帰りましょう。
あの葉月さん 私なら…。
だ~め 今日は帰ったら しっかり休むこと いい?
わかりました…。
さっきも言ったけれど 焦りは禁物よ。
肝心のパーティーの時に 体調を崩したら
元も子もないんだから。
さぁさぁ 紙芝居始まるよ!
おい 早く来いよ! 待ってよ~!
うわっ! (葉月たち)あっ!
うう… ごめんなさい。
大丈夫?
うん。
行こう! うん!
あ…。
《あれ 私…。
こんなところで 倒れるわけには…》
大丈夫か? 美世
旦那様…。
はっ。
大丈夫ですか? 斎森美世さん。
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