All language subtitles for Hakobiya.EP01.1080p.AMZN.WEB-DL.DDP2.0.H.264-MagicStar

～

（杏奈）すみませ～ん。

誰もいませんか～？

う～ん。

（物音）

すみませ～ん！

（剣）すみません。
まだ営業時間前でして…。

ここで　バイトしたいんですけど。

おっ　なるほど。
そちらへどうぞ。

キッチン白鳥が
この街にできたのは

今から　３５年前で。
俺は　１９年前

オヤジから　この店を継いだ。
えっ？

リーズナブルな価格を維持しながら

一流の料理と
接客を提供してきた。

あなた　接客の経験は？

少しだけですけど…。
一流の接客というのは

お客様の潜在的なニーズに
対応できることが必要で。

まぁ
一朝一夕には　いきませんが…。

はい　Ａランチ！
３番さん　Ｃランチと　Ｄランチで。

はい。
あの　お代わり　いかがです？

えぇっと　１，２００円です。
はい。
ありがとうございました。

剣さん　さっきのＢランチ
まだですか？
今やってる…。

あぁ　いらっしゃいませ！
すみません　１人で。

あっ　１名様…。

私…　採用ですかね？

まぁ　いいだろう。
では　明日

同じ時間に来ますね～。
おつかれさまでしたぁ～。

（平野）すみませ～ん。

あっ　すみません。

今日は　もう…。
あっ　ホットココア

お願いできますか？

お二階へどうぞ。

ホットココアです。

（平野）あの　荷物を
運んでいただけるって

聞いたんですけど。

ご依頼のものは？

このギターと　楽譜を

運んでほしいんですけど。

わかるところだけでいいので
ご記入いただけますか。

この　一ノ瀬奏太ってヤツに

運んでほしいんですけど…。

ただ　今
どこにいるかわかんなくて。

そういう依頼でも
大丈夫なんですよね？

えぇ。

この　一ノ瀬とは
「ざぼん」っていう　デュオを

組んでたんですけど…。

ただ　最後のほうは

全然　やる気なくて。

曲を覚えてこないし

レコード会社の人が見に来る
大切なライブにも来なくて…。

そんなアイツのせいで
デビューできなかったんです。

だから　俺のほうから
解散しようって伝えて。

このギター　一度　家に
返しに行ったんですけど

引っ越ししたみたいで。

こんな高価なもの
捨てるわけにもいかないし

置いといたら
いろいろ思い出しちゃうし。

その他に　何かありますか？

いいえ。　これで　お願いします。

お荷物
丁重にお届けいたします。

うぅ　よいしょ～。

どうして　お前が？

楽しそうなので。
連れてってもらおうと思って。

聞いてたのか？
忘れ物　取りに行ったとき

偶然。
降りろ。

一緒に行きます。
遊びじゃないんだ。

こっちのバイトもやります。
運び屋の仕事は

バイト感覚ではできない。

じゃあ

あっちのバイト辞めま～す。

ん？
安心してください。

私…　いい働きするんで。

なんで
こんな仕事してるんですか？

話すと長くなる。

なんで　わざわざ
ここにお願いするんですかね？

自分で届ければいいのに。

うちにしか運べない荷物がある。

例えば？
今回のように

届け先がわからないケースもあれば

自分では配達できない事情を
抱えたケースもある。

毎日　依頼って来るんですか？

だいたい月に　２～３件くらいだ。

じゃ
運びの仕事してるとき　お店は？

質問が多い。

うちは　ランチ営業しかしていない。
えっ　すごっ。

この２人
フォロワー　３万人もいますよ。

「伝えたい　この想い」
へぇ。

「君の心に届くよに」
おぉ～。

「いつまでも」

ここには　いないんじゃ
なかったでしたっけ？

おい！

アンタたち　なんの用だい？

ちょうどよかった！

今…　部屋探ししてたんですけど。

あっ　大家さんですか？

あぁ　そうだけど。

だと思いました。　ペットは
飼い主に似ると言いますが

建物も
大家さんに似るんですね。

こんなすてきなアパート
見たことありません。

設計は　コルビジュですか。

コ…　コルビジュ？

この植栽も
きれいに刈り込まれて

芸術的ですね。

褒めすぎだよ。
あぁ　いえいえいえ…。

梅さんみたいな大家さんいたら

毎日　楽しいだろうなぁ。
ヘッヘッ　そんなことないよ。

私みたいな大家　嫌がるから。

えっ？　前に
２０１に住んでた子もですか？

えっ　一ノ瀬さん？

最初は
いい子だったんだけどねぇ。

「だった」？
うん。　最後のほうは

家賃を滞納するようになって。

バイトも辞めちゃったとか。

う～ん。
どこで　バイトしてたんすか？

駅前の楽器屋さんで働いてたよ。

あっ　そうだ。
えっ。

焼き芋　食べるかい？

あぁ　はい。

失礼します。

正直に　ギター届けたいって
言えばよくないですか？

ああいう人は
仲よくなったほうが

手っ取り早いんだ。
ふぅん。

こんな探偵みたいなことも
するんですね？

運び屋というのは
運ぶだけではなくて…。

うわぁ　ってか　どうして
この自動車なんですか？

映画に出てくる運び屋は

大抵　外車に？
乗ってるイメージありますけど。

すご～い！

電気自動車は坂道に強い。

そして　軽だから　小回りも利く。

へぇ～。
あっ　じゃあ

私に何か質問ありますか？

ん？
あっ　いや

私ばかり質問して
申し訳ないので。

特にない。
いやいやいや　一つくらい

ありますよね。

接客は　どこで覚えたんだ？

あっ　やっぱり　それ
気になります？

実は　高校のとき
定食屋で　バイトしてて。

いやぁ　一度
体に染みついたものって

なかなか忘れないですよねぇ。

アハハハ…。

（演奏）

ブラボー！
イェー！

いやぁ　うちのこと
どこで聞いたの？

あの　一ノ瀬くんっていう子から。

あぁ…。
えっ。　あっ　なんか

やっちゃった系ですか？
まぁね。

一ノ瀬くんって
どんな環境で育ったんですかね？

あぁ　母親が　ピアノの先生
やってるって言ってたけどね。

初めのころは　よく
働いてくれたんだけど

遅刻が増えて…
最後には　連絡なしに

バックレたんだよね。
あぁ　なるほ…。

あっ　すみません
急用思い出しちゃって。

あの　また…　イェー。
またお待ちしてま～す。

ありがとうございました。
どうも。

店長　あの人たち　誰ですか？

あぁ　彼はね…。

誰なんだろう？

いやぁ　人の懐に入るの

どれだけうまいんですか。
前職の癖でな。

前職？

たぶん　ここだ。

刑事みたいで

ワクワクしますねぇ。

こういうのは
届け先がわからないときだけだ。

（浩美）あっ　ごめん。
車の鍵　忘れたから

ちょっと待ってて。

一ノ瀬奏太さん。
（一ノ瀬）はい。

平野壮馬さんからのお届け物です。

このギターと　楽譜を

お返ししたいそうです。

（一ノ瀬）あっ…　すみません。

平野さんって　どなたですか？

あなたと　プロのミュージシャンを
目指していた人です。

プロの…　ミュージシャン？

あなたたち　なんの用ですか！？

このギターと　楽譜を
届けにやって来ました。

いったい　誰が　こんなものを…。

平野壮馬さんです。

ひらの…　そうま。

（浩美）帰ってください。
お母さん

僕…　プロのミュージシャン
目指してたの？

なんかよくわかんなくなってきた。
大丈夫だから

家に入ってて。
うん。

そのギターは
もう必要ないんです。

持って帰ってください。

そういうわけにはいきません。
もう　あの子に

ギターを近づけないでください！
迷惑だし

もう帰りましょうよ。
いえ

受け取ってもらえるまで
帰れません。

なぜですか？

依頼人が
一ノ瀬さんに届けたいと

望んでいるからです。

じゃあ　私が受け取ります。

持ち主の元へ

届けさせてください。

病気なんです。
えっ。

若年性の　アルツハイマー。

１年前に発症して

少しずつ
記憶を失っているんです。

デビューが決まる
大事なライブのことも

忘れていたみたいで…。

でも　どうして　うちの子が

こんな目に…。

いつか…。

私のことも

忘れてしまうんでしょうね。

ギター　渡したら

すぐに帰ってください。

はい。

こちら　お届け物です。

なぜ僕に　これを？

受け取りの　サインをお願いします。

私が書きます。

失礼いたします。

（ギター）

奏太…。

違うな…。

こうかな…。

（浩美）わかるの？

うん。

ギターは　いつから？

高校に入ってすぐ
ギターを始めたんです。

（浩美）家族の中で　唯一

音楽を好きになってくれて…。

（浩美）平野さんと
デュオを組んだ日のことは

覚えています。

最高の相棒を見つけたって。

絶対　プロになる。

（浩美）そう
興奮して話してくれました。

《浩美：路上ライブを
見に行ったこともありました。

本当に楽しそうで…。

お客さんがいたとしても

いなくても

ずっと　ライブをしていました》

「この恋は　果てしなく」

《浩美：本当に　音楽が
楽しかったんでしょうね》

「流れゆく　雲に乗せ」

《浩美：平野さんと
一緒にやる　音楽が…》

「届くまで」

すべて
忘れるわけじゃないと思います。

きっと　すべてを
忘れるわけじゃない。

失礼します。

～

運び屋の仕事って

ただ　荷物を
届けるだけじゃないんですね。

依頼人と　受け取る人の

本当の気持ちを知る必要がある。

ただ運ぶだけじゃ　ダメなんだ。

あっ　もしかして　剣さん

最初から
一ノ瀬さんが病気だって

気付いてたんですか？

病気だって聞いたとき
驚いてなかったし。

楽譜だ。
ん？

楽譜に　「１１月１０日　１８時」…。

上野駅で　平野壮馬とライブと

書かれていた。
それが　どうしたんですか？

いつもやってるライブなら
そこまで丁寧に書く必要はない。

しかも　平野くんの名前は

書かなくてもわかるだろ。

それと　皆…
口をそろえて言っていた。

「最後は」と。

最後のほうは
全然　やる気なくて。

最後のほうは
家賃を滞納するようになって。

最後には
連絡なしに　バックレたんだよね

とても評判のよかった彼が
いきなり変わった理由。

それは　病なんじゃないかと。

それで
実家にいるってことも…。

えっ　もしかして

一ノ瀬さんが弾けるってことも
わかってたんですか？

それは
お前が言っていたんだろ。

体に染みついたものは
なかなか忘れないって。

高校のとき
定食屋で　バイトしてて。

いやぁ　一度
体に染みついたものって

なかなか忘れないですよねぇ

あっ。

やっぱり私
いい働きしますねぇ。

（すすり泣く声）

なんで
言ってくれなかったんだよ…。

言ってくれればよかったのに…。

そういうことなら…。

無理して届けなくてよかった。

そうでしょうか。

一つ　気になっていました。

高価なギターは捨てられない。

だから彼に届けてほしいと
あなたは言いました。

でも　なぜ　楽譜までも

届けたいと思ったんですか？

それは…。

私は　あなたの望みを

届けただけです。

俺…　音楽続けます。

アイツと作った音楽と一緒に。

俺たちの音楽が

アイツの元に届くくらい

俺売れますから。

剣さん

新メニューとか作らないんですか？

この店　どこにでもある
普通のメニューばかりだから。

これでいい。　うちは
古きよき洋食屋なんだから。

そういうこだわり
時代遅れですって。

もっと　バズるメニュー作りましょうよ。
例えば…。

そういうのいいから。

買い出し行ってこい。

了解です！