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♬「山へ行こう 次の日曜」
♬「昔みたいに 雨が降れば」
♬「川底に沈む橋越えて」
♬「胸まである 草分けて」
♬「ぐんぐん進む背中を」
♬「追いかけていた」
♬「見失わないように」
♬「抱えられて」
♬「渡った小川」
♬「今はひらり」
♬「飛び越えられる」
♬「一緒にね いろんな話ししよう」
♬「晴れたらいいね 晴れたらいいね」
♬「晴れたらいいね」
ひらりが思いを寄せている竜太を 自分も好きだと
とうとう みのりは言ってしまいました。
そして 一晩が明けました。
どなたさんも おはようさん。
おはよう。 あ お姉ちゃんも おはようさん。
おはよう。 どれ パンを焼きましょう~。
ひらり あのね 冷蔵庫にね サラダがあるから
私 出してあげるね。 いや いいよ お姉ちゃん。 食べて。
いいって ほら あんた ドレッシングのあるとこ
知らないじゃない。 あ ごめんね。
何か あの二人 変じゃない? 仲よすぎない?
美しいことじゃないですか?
お姉ちゃんってさ ドレッシングのかけ方 うまいね!
こんなのに かけ方も何もないよ。 あるある。
ごめんね こんな話で朝から呼び出して。
そうよ。 開店前に わざわざ呼び出すんだもん。
何事かと思ったけど こういう話じゃ 家ではできないわ。
そうなのよ 社長や すみれさんにも 聞かれたくないしね。
だけど お姉さん ホントに引くと思う?
思う。 お姉ちゃんね うそつけない人なのよ。
そうかな 恋愛が絡めば別って気がするけど。
私も そう思う。 だって25でしょ?
一番結婚したい時じゃない! せっぱ詰まってると思うよ。
この前さ 高校のクラス会があったのよ。
行って驚いたんだけどさ 働いてる子は みんな結婚したいって話ばっかよ。
ひらりのお姉さんだからさ 悪く言いたくないけど
会社辞めたいのと結婚したいのとで 頭の中いっぱいのはずよ。
だって それしか夢がないんだもん。 私も そう思う。
ひらり お姉さんね 絶対 このまま引っ込まないよ。
お姉ちゃん そんな人じゃないよ。 私 よく分かる。
せっぱ詰まった女って そんな甘くないんだよ。
だって 口と違うことやったら 家族も姉妹もなくなっちゃうって
お姉ちゃん 分かってるはずよ。 結婚して 子供ができりゃ
自分の新しい家族の方が大事だもん。
妹なんてね 縁が切れたって 痛くも かゆくもないよ。
そうかな…。 そうに決まってんじゃん。 常識だよ。
私 思うんだけどさ 竜太先生と同じくらい いい条件の男が
お姉ちゃんの前に現れりゃいいのよ。 そうそう そうすればさ
どっちが身を引くっていうわけじゃなくて 円満解決だよね。
ねえ もう あんたが 身ぃ引きなって。 面倒くさいよ こんなの。
二十歳なんだしさ これから いい男 いっぱい来るって。
やめやめ。 そうだよね。
年功序列っていうのがいいよ ひらり。
駄目! 私 竜太先生じゃなきゃ 嫌。
私 竜太先生以外 嫌だもん。
口では そう言って 陰で動くってわけ?
それで いいんだよ。 恋愛って 結局は戦いだもん。
作戦が必要だよ。 でも 口では そう言って裏で動いて
もしかして ホントに みのりが 竜太先生と結婚でもしたら
ひらりちゃんと完璧 まずくなるよ。
あのね 激しい恋の前には 妹なんて どっかへ吹っ飛ぶの。
だけど みんなに祝福されて結婚したい って あるじゃない。
きれい事言ってたら 欲しいもんなんて手に入んないよ。
みのりだって 作戦立てて当然よ。 私だって 銀次さんのこと
真っ正面から攻めても駄目だって 分かったから
おじいちゃんのこと こっちに引き寄せる っていう作戦に出たの。
おじいちゃん 芳美のこと 気に入ってるみたいよ。
もう 銀次さんの仕事のスケジュールとか いつ暇だとか ビシバシ教えてくれんの。
芳美 何してんの?
和田マリ子してんのよ。 え?
今夜 銀次さんの現場に 差し入れするんだって。え…。
ねえ ちょっと味見て。
どう? うん おいしい。
おいしい うん。 ホント?
芳美は いいよね。
だけど 私 ひらりと同じ部屋で暮らすの 結構 しんどいな。
分かる。 だと思う。
今日だって お互いに 気ぃ遣っちゃってさ いつもよりベタベタに 仲いいの。
相手が気ぃ遣ってんの見えるから 疲れちゃって。
そうだと思う。 できれば どっちかが 別の人好きになった方がいいんだけどね。
しょうがないわ。 今更 どっちも引けないもん。
あんたも強くなったわ。 昨日の夜 ベッドの中で
ずっと考えてたの。 口では ああ言ったし
やっぱり 引いた方がいいのかなって。 でも 嫌だって分かった。
竜太先生が 私以外の人と結婚して かわいい女の子とか抱っこしてたら
私 立ち上がれないもん。 私も。
銀次さんが 小さい男の子に はんてん着せて歩いてたら
私 さらっちゃう。 怖っ。
こんちゃ! おっ 弁当が来た。
すいませんね~ いつも お弁当で 立派な講義を聞かせてもらっちゃって。
おう 食ったらな 今日から 肥満体特有の病気について話すからな。
あ それパス。 私はね 肥満体の人に洋服を売るためだけに
講義受けてんだから 病気はいらないの。
ピシッ! いいから やっとけ。 必ず後で役に立つ。
やれ!
竜太先生ってさ 何でも はいはいって 聞いてる女が好きでしょ。
そうやって 力いっぱい 命令するとこ見ると そうだね。
そう。 俺に守られる女が好き。
あのね ただ守られてる女なんて 単純に頭悪いのよ。
何とでも言え。 お前なんか守る気ねえから。
俺さ 自分の女以外はね
こう いろいろ バリエーションに富んだタイプをさ
周りに取りそろえておくってのが 好きなんだよ。 頂きます!
のり弁か~。
うちのお姉ちゃんってさ 竜太先生のタイプだと思うよ。
そうかもな。 でも 俺 ころころタイプ変わるから。
じゃあ 今に 私のことが好きって 泣きついてきても 振ってやるから。
はっ そんな心配しねえでいいよ。 よいしょ。
あのさ 今まで 竜太先生が 一番好きになった人って
どんな人だったの?
俺の ほれた女聞いて どうすんだよ。
父ちゃんよ 俺は 一杯やらせてもらうぜ。 よっ。
父ちゃんよ あの芳美って子がよ 昨日も今日も 夜 仕事場に来たろ。
ああ 差し入れ持ってな。 うん。
ありがてえじゃねえか 銀次。 ん?
あれだけ ほれられて。 いやよ あの子 何で
仕事場知ってんだろうな。 昨日も今日も 夜 全然違う所なんだぜ。
さあな。 いや 父ちゃん いなかったけどよ
土曜日だってよ そ~っと のぞいてやんのよ。
あの子 麻薬捜査官みてえに 俺の居場所 突き止めんだよな。
何か 薄気味悪くてな。 そういうときゃ 大体 あれじゃねえか
仲間内の誰かが タレ込むんじゃねえか?
ああ。 父ちゃんよ
頼むから あの子に もう来ねえでくれって そう言ってくれよ。
俺はよ おかみさん以外とは 結婚する気ねえんだから。 あ?
銀次。 あ?
おめえの その純愛は 父ちゃん 立派に評価してるぜ。
うん。43にもなって そういう純愛を貫くなんざ
並の人間にできるこっちゃねえ。
おめえは 天然記念物だ。 イリオモテヤマネコだ カブトガニだ。
深川銀次よ。 ヘヘヘ!
だけどな 銀次。 ん?
考えてもみろや。 何だよ。
あの芳美みてえな娘と一緒になってよ 子供を育てんのも
幸せなんじゃねえか?
俺はな 子供は どうでもいいんだよ。 世の中のバカどもはよ
何かっつうと 子供のいねえ夫婦に聞くだろ?
「お子様は?」ってよ。 え? 「いねえ」っつうと
「それは お寂しいですね」と来やがる。 え?
子供がいなきゃ お寂しいって 決めるなっつうんだよ。
じゃ 何か? 夫婦二人じゃ 家族じゃねえっつうのか。
怒るなよ カブトガニ。
俺はよ まず女房なの。 ほれた女と一緒になって
毎日毎日 女房自慢しながら 暮らしてえのよ。
牛嶋さまによ…。
「こんな いい女房を おありがとうございます」って 毎日よ。
結婚っつうもんに そこまで夢持ってるおめえは
やっぱり 並の人間じゃねえ。 カブトガニだ。
俺だってよ おかみさんと一緒になれるなんてなあ
半分くらいしか思ってねえけどよ。
半分も思ってるのか?
おめえは 状況をわきまえねえ男だな。
おうよ。 深川銀次よ!
ひらり おじいちゃんとこ行ったの。
やっぱり 私と顔合わせるの つらいんだと思う。
そう。
私ね どっちの味方もできないけど
みのりちゃん 楽な方に逃げちゃ駄目よ。
一度逃げると 逃げる癖がつくの。
私 今まで逃げてばかりいた気がする。
傷つかずに 何かを手にするなんて できっこないのよ。
はい。 今回は逃げません。
ドロドロになるかなあ。
大人の女は ドロドロになんかしないものよ。
逃げないことも大切だけど 潔い引き際っていうのも
大人の女には大切でね。
難しいなあ…。
そ。 難しいのよ。
いろいろね。 ん? いろいろ どうした?
うん。
洋一に 何か怒られたか。
お父さん 関係ない。
みのりと けんかしたか。
よく分かるね。
お前は 小さい時から 隠し事 下手だから。
けんかしたってわけじゃないんだけど
何か しばらく 顔合わせたくないなとか思って。
おじいちゃん 生きてるとさ いろんなことあるよね。
うん。 いろんなことのある人ほど
人生が退屈じゃないってことだ。
病気だって面白がれって 竜太先生が言ってたよ。
ひらり。 ん?
何があったか知らんが 何でも面白がれ。 ん?
みのりにも そう言っとけ。
人生なんて こう 一瞬の花火だ。
死んだら 何もかも終わりだ。
生きているうちに 出会った人を大事にして
思いっきりやることだ。 な!
疲れた顔してる。 早く 横になれ。
俺も寝るから。 うん そうだね。
はい。
はい。 ん。
よいしょ。
いくよ~。ん。 せ~の。
あ ごめん。 こっちだ…。
よいしょ はい。
人生は 一瞬の花火かもしれません。
でも 孫娘が泊まりに来てくれた 今夜のことは
心の中で消えることはないだろうと 小三郎は思いました。
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