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「山へ行こう 次の日曜」
「昔みたいに 雨が降れば」
「川底に沈む橋越えて」
「胸まである 草分けて」
「ぐんぐん進む背中を」
「追いかけていた」
「見失わないように」
「抱えられて」
「渡った小川」
「今はひらり」
「飛び越えられる」
「一緒にね いろんな話ししよう」
「晴れたらいいね 晴れたらいいね」
「晴れたらいいね」
九月場所に十両昇進をかけている 梅響でしたが
思わぬケガで 稽古を休まねばなりませんでした。
前 前 前 前 前!
⚟
痛いっすよ。
よっ。 どなたさんも やってるね。
おっす。 よ~う。
⚟おい! おい 誰か!
響さん 最近 荒れてんな。
⚟誰もいないのか!
お前 ちょっと行ってこい。
はい! お呼びでしょうか。
呼ばれたら さっさと来いよ バカヤロー! はい!
水持ってこい! はい!
何だった?水です! 水か。 よし!
久男! お盆に持ってけ。 はい!氷も入れてって!
おしぼりも持ってった方がいいですよ。 スイカも持ってけ!はい!
煎餅も持ってけ。 な! よし!
気を付けて。 頑張れよ。
何かピリピリするよな。
分かってあげてよね。 今一番つらいのは 梅響なんだから。
分かってるって。 稽古不足で本場所って
ホント怖いと思うよ。 十両かかってっからなあ。
⚟ え!?え~っ!?
どうしたんだ!? いってえ。
バカ。
はい コーヒー。 いれたてよ。 ありがとう。
私 コーヒーやめたの。 願い事が かなうまでね。
それって ひょっとして銀次さんのこと?
うん。 ひらりに聞いたけど
銀ちゃん 結構 失礼なこと やったんだってね。 ごめんね。
いいのよ。 私 振られたなんて思ってないから。
私ね 嫌いだから目の前から消えろって 言われるまでは
振られたことにならないって 決めてるから。
強いね。
私なんて 関心持たれてないなんて ちょっとでも思ったら
もう すぐ引いちゃう。
そんなことしてたら いつまでたっても 恋愛も結婚もできないよ。
でも そこまでして
結婚していただく必要って あるのかな。
あるんじゃない? しちゃったら 結局 勝ちだもん。
そうだけど…。 みのりだって
竜太先生が ひらりちゃんと結婚したら 嫌でしょ?
何か パッと いいことないかな。
すみれさん 相当傷ついてるよ。 木原さん 変なこと言うから。
「梅響は ほっとけば 年上の変な女に 引っ掛かる」はないですよ。
まさか すみれさんが 梅響のことを あそこまで思ってるとは思わないからね。
だけど 梅響の方は どうなんでしょう。
絶望的だろうね。
いらっしゃい!
梅響。 どうしたの?
買い物じゃないんだ。 あの すみれさん…。
あっ あ… ちょっと待って。
すみれさん! あの 梅響が 用があるそうです。
何か?
よかったら 今日 昼飯食べませんか?
あの 残念だけど 商品整理があるんで 今 片づけたいの。
そう…。
ちょっと 時間稼いでください。
梅響。 はい。あの~ 三所攻めって
どうやんだ? あ…。
あの すみれさん お昼ごはん 行ってあげてください。
あんたに関係ないでしょ。
関係ないけど 梅響の気持ち 分かるんです。
実は 足首ケガして稽古できないの。
え?
それで 相当イライラして 若い衆に当たったりするの。
今まで そんな梅響 一回だって見たことなかった。
すごく大事な九月場所を前にして 全然稽古できないのって
ホントに つらいんだなって思いました。
あの… ちゃんこ食べたあとだから ホントは お昼ごはん済んでるんです。
でも すみれさんと おしゃべりしたいんだと思います。
梅響さん お昼行きましょう。
ひらりちゃんも行くって。
ちょっと すみれさん…。
変な女が引っ掛けてるとか 言われたくないから。
根本さんにセーターもらったことが バレたっていうわけ?
セーターのことは バレてないと思うけど
会ったことは分かったと思う。 だけど 偶然会って
お酒一杯飲んだだけなのにね。 さっさと話しちゃえばよかったね。
ねえ。 でも 何となく 言いにくかったのよね。
根本さんから連絡ある? 全然。
洋一さんは 会ってんでしょ? …と思う。
そっか 根本さんが言ったのよ。
「ゆきちゃんに ばったり会って お酒一杯飲んだ」って気軽にね。
何か 腹立たない?
だって こっちは 旦那に言い出しにくい なんて思いしてんのに
あっちは気軽にさあ 全然 どうってことないわけよ。
うん まあ 言われてみれば そうかもね。 でも 腹も立たないけど。
だってさ そんなことで 夫婦の間がギクシャクしたら
たまったもんじゃないわよ。 26年も一緒にいれば
夫婦なんて 何もなくても ギクシャクしてくるものよ。
あ はい。ありがと。
藪沢質店でございます。
礼子! どうしたのよ。
え? 今 春子来てるの。 バイト お休みなんだって。
ちょっと待って。
もしもし あ 礼子? うんうん いいわね~。
えっ ゆき子? 大丈夫よ。 分かった。 7時ね!
ねえ 何? 7時って。
うん ほらね 礼子もお休みなんだって。
うちでゴロゴロしててもしょうがないから 今夜会わないかって。
私は駄目よ。 おじいちゃん寝てるんだから。
1日ぐらい いいじゃない。 大きい娘だっているんだから。
そうだけど…。
行っておいで ゆき子さん。
あ おじいちゃん。
お邪魔してます。 すみません。
ごめんなさい 夜遊び 唆したりして。
どうぞ 唆してください。 ゆき子さん 店までやって
もう大変ですから。 ありがとうございます。
必ず 夜のうちには お帰ししますから。
ちょっと 春子。 僕なら大丈夫だよ。
体調はよくなったから 行っておいで。
はい。 じゃ どうぞ。
失礼いたします。 すいません お義父さん。
すいません すみれさん。 無理に誘っちゃって。
いえ とんでもないです。
でも いい言葉。 は?
「無理に誘っちゃって」って言葉 もう ずっと言われてないから。
私だって 全然ないですよ。 あら あなたはあるでしょ 若いんだから。
最近 私の周りでは 若いのって ウケないみたい。
俺も 年上って 割と好きですよ。
やだ。
2つ3つなら 年上の方がいいな。
う~ 梅響!
あの 何となく すみれさんと おしゃべりしたくなったんでしょ?
そう。
とんでもないです。 私なんか つまんない女なのに。
そんなことないですよ。 俺 すみれさんと一緒にいると
安らぎます。 やだ そんな。 まさか。
まさかじゃないよね。 この梅響の大事な時に
一番会いたくなったのが すみれさんなんだよね?
うん。ね! やだわ。
母親みたいな女に弱いから 男って。
母親はないよね! たった13しか違わないのに。
そうだね お姉さんか。 ごめん。
よう!
どうだった? 美男力士囲んでのランチタイ…。
ありがとう。 え?
一生懸命 私をもり立ててくれて。
でも もう いいから。
ちょっと 憧れてただけだから。
何か月か いい夢みさせてもらった。
なにも 終わったわけじゃないでしょう。
子どもは 藍だけで たくさん。 あちこちで 母親やろうと思わないから。
よし 仕事するぞ!
どしたの?
いらっしゃい。 お父ちゃん!
何でい。 このお店来たの 初めてじゃない。
当ったりめえよ。 あんな野郎が座ってるところへ
誰が来るかい。 何 質入れに来たの?
いや 残暑が厳しいなと思ってな。
ふ~ん そんなこと言いに来たの? 俺は 季節感を大事にするからよ。
こっから上がって のれんくぐって左側が おじいちゃんの部屋。
バ… バカヤロー。 見舞いに来たわけじゃねえやい。
分かってるけどさ おじいちゃんが会いたがってんの。
ちょっと顔出して。 ごめんだね。
もう 季節の挨拶はしたから帰るよ。
ねえねえ 向こうが会いたがってんの。 ね!
けっ。 しょうがねえ野郎だな あの うすらトンカチは。
⚟おじいちゃん。 どうぞ。
あ~。
何しに来たんだ?
「何しに来た」はねえだろ。
おめえが会いてえって言うから 来てやったんじゃねえか。
僕は 会いたいなんて言ってやしないぞ。
こっちだって おめえになんか会いたかねえや!
じゃあ 何なんだい。 け… 帰ろうと思って玄関探したら
道に迷って 来ちまったんだよ。
ゆき子さんが一緒だったじゃねえか。
お前はね しょっちゅう そうやって 本ばっかり読んでるから
人間が理屈っぽくなって そんで 疲れて ぶっ倒れたんだ。
ざまあ見ろ! バカヤロー。
うすらトンカチめ おととい来やがれ!
礼子 遅いね。 ね。
ありがとう。
じゃ。
いらっしゃいませ。 いらっしゃいませ。
な~に よく会うじゃない。
週に3日は来てるんでね。 先日は どうも。
いいえ こちらこそ。
あの 今ね 礼子来るのよ。
根本さん 今日は美女3人で幸せね。 ハハハハ。
ちょっと遅刻の美女に電話してくる。 うん。
あ~ 藪沢 ここんとこ会わないな。 ずっと夏休みでしたから。
うん。 毎日 ブラブラしてたんでしょう あいつのことだから。
そうなの 毎日。 ハハハハハ…。
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