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先 行くな。
もう? うん。
顔色 悪いな。
寝不足とちゃうの?
ああ… 大丈夫。
何か悩んでんねやったら 聞くけど。 うん。
大丈夫。
今日から ブログ用の取材も始めんねん。 頑張らな。
行ってきます。 うん 行っといで。
「公園の落ち葉が舞って」
「飛び方を教えてくれている」
「親切にどうも」
「僕もそんなふうに」
「軽やかでいられたら」
「横切った猫に」
「不安を打ち明けながら」
「ああ 君に会いたくなる」
「どんな言葉が 願いが景色が」
「君を笑顔に幸せにするだろう」
「地図なんかないけど歩いて探して」
「君に渡せたらいい」
えっ 梅津さん まだ一首も書けてないの?
梅津さんの言語感覚ならさ ちゃちゃっと作れそうなもんだけどね。
先生は 一首ずつに 魂を込められる方なので。
魂。
私 魂のこもった梅津先生の恋の歌 すごく楽しみなんです。
梅津さん これまで 恋の歌作ったことないもんね。
え? え?
ありますよ 恋の歌。
300首の中に1首だけ。
多いな… 何だよ どれよ?
ああ これです!
「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」。
何で これが恋の歌なのよ。 本歌取りやからですよ。
この歌の下敷きになってんのは 狭野茅上娘子の和歌やないですか?
狭野茅上…。
別れざるをえなくなった 夫への思いか。 そうです。
その和歌に詠まれた情熱的な恋心が
まるで 隠しきれない 炎のように
梅津先生の歌に 見え隠れ してるんです。
したがって 君というのは 恋の相手です。
なるほど… よく気付いたな。
先生と私には 特別な絆がありますから。
けどさぁ 何で こんな分かりにくいのかね。
慎み?
慎み… 慎みいらない。
梅津さんには 情熱を そのまま歌にしてほしいのよ。
記念すべき 1回目のブログは
笠巻さんのインタビューを載せたいと 思ってます。
いや~ 俺は ええて 口下手やしな。
もう… 仕事戻るで。
ああ… 笠巻さん お願いします。
お話 伺いたいんです。 何でやねん。
IWAKURAで作ったねじは 何十年も残ります。
けど ねじを作った職人さんの気持ちは 残りません。
私は ほっといたら 消えてしまう その気持ちを
なんとか残して伝えたいんです。
IWAKURAを ここまで支えてくれたんは
その職人さん 一人一人の気持ちやと 思うから。
笠巻さんは 祖父の代から 誰よりも長く IWAKURAを守ってくれはりました。
どんな思い出があって どんな気持ちで働いてきはったんか
記録に残させてほしいんです。
分かった。 何でも聞いてくれ。 ハハ。
ありがとうございます。
ほな まず 入社された時のこと 教えてください。
あれは 25の時やったから… もう 44年前やな。 ハハハ。
従業員3人のちっちゃい工場やったけど 高度経済成長期でな。
ねじは 作れば作るだけ売れたよって。
機械は 毎日 フル稼働やった。
ただいま。 お帰り。
お母ちゃん ええブログになりそやで。 そう。
よかった 元気そうや。 ん?
最近 何や 沈んでたやろ? 心配しててん。うん。
ビーフシチュー? うん。
2時間 煮込んで ブランデーも入れた。
前に 貴司君が教えて…。
2時間か…。
今日も また デラシネ行けへんかったんやね。
貴司君 今 大変な時やし 秋月さんも いてはるから…。
舞 もうちょっと わがままになったら? わがまま?
ホンマに人好きになる時なんか 一生のうち 何べんもあれへんねんで。
そん時ぐらい 自分の気持ちのままに動いたらええねん。
お母ちゃんな お父ちゃんのこと好きになった時
自分の幸せしか 見えてへんかった。
わがままやったわ。
せやけどな お母ちゃんは 後悔してへん。
ちょっと行ってくる。 うん。
ごちそうさんです。 ごちそうさん。
ありがとう。 近く寄ったら 絶対 また来てね!
はい!ありがとう! ありがとう!フフフ。
おばちゃん。 舞ちゃん。
貴司君 おる? ああ まだデラシネや。
ああ… そっか。 うん。
あっ よろしく頼むわな。 はい!
ほなね 舞ちゃん。 また。
こんばんは。 こんばんは。
梅津先生に ご用ですか?
はい。 けど 急ぎやないんで。 ほな。
舞さん。
先生のこと どう思ってはるんですか?
ホンマに ただの幼なじみですか?
私は 先生に 自分の気持ち ちゃんと伝えます。
こんばんは。
いらっしゃい。
これ 差し入れです。 ありがとう。
秋月さん 前も言うたけど 差し入れとかええで。
私にできること これぐらいしかないですから。
先生。
短歌できへん時って しんどいですよね。
真っ暗な地下に閉じ込められて
冷たい地面 手探りして
言葉 探してるみたいで…。
そうやな。
私 先生のともし火になりたいです。
ずっと そばにおって
先生のこと 明るくしたり あっためたりしたいです。
秋月さん…。
ごめん。
悪いとこあったら 直します。
悪いとこなんてないよ。
僕な 秋月さんのこと すごい歌人やと思ってる。
一緒に短歌の話 してたら 目の前が広がってく気ぃすんねん。
そやのに 駄目なんですか?
舞さんのことが 好きやから?
それやったら 何で 気持ち伝えへんのですか?
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