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「君が跳んだ 水たまりへと」
「街の翳が」
「雪崩れてゆくよ」
「不意に 微笑う」
「ただそれだけで」
「胸の棘が抜ける気がする」
「手のひらの上に太陽を乗せて」
「心の暗がり照らし出しておくれ」
「Dreaming Girl Dreaming Girl」
「雨上がりの少女」
「Dreaming Girl 君と」
「めぐり逢えた」
「素敵な奇跡」
「Dreaming Girl」
(リキ) 「母 急病。 すぐ来られたし」。
あづさ先生の母上 うららばあさんのSOSに
故郷 福島へ駆けつけた 2人でありましたが…
(うらら) えらぐ 早かったない。
来るまでに 全部 片づけておくつもりだったのによ。
(のぞみ) おばあちゃん 大丈夫なの?
はあ? (あづさ) ゆうべ 具合が…。
さあ 早く うちさ 行こう。 あの~ 餞別に いいシャケ もらったから
ざっぱ汁の用意しておいたんだ。 懐かしかっぺ? うん? ヘヘヘ…。
餞別って?
何してんだい? 早く来!
(うらら) 「あなた 変わりはないですかァ 日ごと寒さが つのります」
「あなた~ 恋しい~ 北~の宿」 …っと。
あれ? 何してんだ? 座れ 座れ。
どういうこと? 何が?
「何が」って… 病気は どうなったの?
それに 一体 これ…。
ああ… きれいに まとめたっぺ? 大変だったんだから。
あ~ ケチケチして 暮らしてきたようでも
いざ まとめるとなっと 要んねえもんだらけだ…。
まとめる?
あ~れ うまそうだ!
ほ~ら 見てみい。 今日は 頭だけでねくて 一匹丸ごとの豪華版だべ?
さあ 食わっせ!はい。 まだ 食べちゃ駄目!
先に 説明して。
何だい? おっかねえ顔して… ねえ?
おばあちゃん… ウソだったの? 病気。
心配したんだよ。
「切ない~ ウソの~ つける人ォ~」 …っと。
お母さん! ウソでねえ!
ここんとこ 本当に 具合 悪がったんだ。
どこが? 頭。えっ?
当たりめえだんべ。 父ちゃん死んで 半年だぞえ。
一番寂しい時だっぺ? そだのに ろくに電話も かけてよこさねえで。
こだ 広いうちさ 1人でいたら 頭も おかしくなっぺよ。
お母さん…。
こだ 寂しいとこは たくさんだ。 要らねえ。
じゃあ おばあちゃん… どっか 引っ越すの?
(みどり) あっ 姉ちゃんだ!
姉ちゃん! ひどいんでねえの!
そうだら そうと 前もって 言ってくんねえと
こっちだって 心の準備っつうもんがあんべよ。
(松男) そんでえ 構わねえんですか? 本当に 東京のうち…?
何のこと? えっ?
東京のうちって どういうこと? はっ?
私と お母さん ゆうべ おばあちゃんが病気だって聞いて
飛んできたんです。 病気!?
冗談でねえ! 私ら さっきなあ
母ちゃんが 東京さ 引っ越すことになったって
電話してきたもんだから タクシー飛ばしてきたんだ。
母ちゃん どういうこと?
東京に引っ越すって どこに引っ越すの?
あんた家さ。
「あんた家さ」って 谷中の? ほかに別宅でも あんのかい?
えっ!? (みどり) 何だべ!?
なら 姉ちゃん 聞いてねえの?
電話では しゃべらんねべした。 来たら言うべと思ってた。
それで 仮病を? 何 考えてんの!
(松男) いくら何でも横暴だべよ お義母さん。
ああ うっつあし! うっつあし! んだ 横暴だ。
私 横暴になることに決めたんだわい!
これまでは 働いて 父ちゃんに仕えて
二十歳で 娘産んで でかくして 嫁さ やって
父ちゃん 見送って…。
とにかく 我慢して我慢して 昭和ヒトケタの女 やってきたんだわい。
でも はあ~ 嫌だ。 我慢は 嫌だ!
私… あづさや のぞみと一緒に 暮らしてえ。
人生最後の時間を 娘や孫と一緒に暮らしてえ。
長女のあんたに 死に水 取ってもらいてえ。
それを横暴だっつうんだら 言ったらいかっぺ。
…んでも 今までに 何一つ わがまま 通したことはねえんだ。
まあ とにかく 私は東京さ行く。
今日でも 明日でも あづさと のぞみと 一緒に新幹線さ 乗んだ。
あっ みどり… いいかい?
あ~ 私が連絡したら 運送屋に頼んで 荷物 送ってもらってくれ。
金は ここさ入ってっから。 見積もりは ちゃんと済ましてあっから
ちょっきりのはずだぞ。 そんだ…
いくら何でも 急すぎんでねえの?
姉ちゃんだって 昨日の今日じゃ 困っぱい?
それから この牧場のあとについては
篠原さんとこが 酪農やってみてえって 言ってくれてっから
牛ごと借りてもらうことにした。
狭いけっども 父ちゃんと2人で やっとこ 手さ入れた地べただから
すぐ売る気には なれねがんない。 まあ おらが死んだら
売っ払うなり どうだりして 2人で金 分けたらいかっぺ。
そんだこと 言ってねえばい!
急でねえと できねえ…。
おら 一生に いっぺんだけ わがまま 通してえんだわい。
私… あづさや のぞみと 一緒に暮らしてえ…。
おばあちゃん…。
気持ちは分かったわ。 でも 東京のうちには
私とのぞみ 2人で 住んでるわけじゃないのよ。
向こうのお義母さんや 達也がいるのよ。
構わねえ。 構うわよ! 向こうが構うの!
うちだって そんなに大きくないの。 お母さんが来ても 寝るとこないわよ。
私は… 台所さでも 廊下さでも 構わねえぞい。
おめえらと 一緒に住めるなら 玄関さでも構わねえぞい。
そんな…。 それだったら 私の部屋 使うといいよ。
昼間は 会社でいないんだし… ねっ?
はあ~ なんて優しい子だっぺ…。 本気なの? お母さん。
東京のうちに入ったら お母さんが 肩身の狭い思いするのよ。
居候で ちっちゃくなってなきゃ いけないのよ。
私は小さくなんかなんねえ! 強がったって駄目よ!
仮に 明日 東京に行っても
お母さんの お茶わんもなければ お箸もないの! うん?
そんなとこ 居心地がいい?
茶わんと箸は 向こうさんが ちゃんと そろえておいてくれるっつうっでた。
向こうさん?
「大船さ 乗った気持ちで 上京してください」だと。
あっ!
(薫乃) 大船に乗った気持ちで 行ってらっしゃい。
もしかして… 東京のおばあちゃん 知ってるの?
う~ん? 何やら密約のにおい…。
どうやら昭和ヒトケタの女とやらは なめてかかっちゃ いけねえようです
(達也) いつから知ってたの?
1か月ぐらい前かしらね。 電話をもらったのよ。
「さみしい。 娘や孫と 一緒に暮らしたい」って…。
(達也) いきなり? う~ん よっぽど思いあぐねてのことよ。
だから言ったのよ。 「だったら出てきてください」って…。
「ただし あづささんは 絶対 遠慮するでしょうから
作戦を練りましょう」って。 (達也) へえ~ やるじゃん。
(薫乃) まあね。 でも いいの?
そんな いいかっこしてさ 「いいわよ」なんて言っちゃって…。
分かるもの…。 福島のおばあちゃんの気持ち。
そりゃあね 一度は 娘や孫と 一つ屋根の下に暮らしたいもの。
けど 絶対 もめるぜ。 そうかしら?
そうだよ。 ババ抜きのババってさ 1枚だから 最後に残るんだぜ。
アッハハハ…。 いや 笑ってる場合じゃねえと思うけど。
もう! 若い人ほど怖がるんだから。 えっ?
私はねえ…
うまくいかなかったら その時 考えればいいと思ってるのよ。
あの電話もらった時 「ああ 分かる。 分かります」って思ったんだもの。
あとの事は それから…。
心配いらないわよ。 おばあちゃん こう見えても苦労人ですからね。
うまく やっていきますよ。 大丈夫…。
(うらら) そりゃ おめえ 一生に一度のことだもの。
やる時ゃ やるんだわ。 「やる時ゃ やる」か…。
んだ。 欲しいもんはない 欲しいって言わねくっちゃ
誰も分がってくんねえもの。
ばあちゃんない… 65年生きて やっと そいつが 分かったんだぞい。
あ~ もう 頭 痛い! えっ?
この調子で 「あれも欲しい これも欲しい」 って言いだしたら どうしよう!
言わね 言わね。 おら おめえらと一緒に暮らせたら
ほかには何にも欲しくねえんだ。 本当だぞい。
はい はい はい。
おばあちゃん。 本当に 私の部屋 使っていいからね。
えっ いいのかい?
しばらく 仕事も忙しくなりそうだし…
結婚したら出ていくしね。
あら 結婚! おめえ 結婚すんのかい?
今ね… 進行中なの。 いや~ そりゃ おめでとうさん!
サンキュー! 初めてだよ。 おめでとうって言ってくれた人 アハハ!
お母さん 賛成してくれるの? 最初から 反対なんかしてないでしょう。
自分の気持ちを確かめろって 言っただけ。
理屈っぽいからね。 この人は…。
(あづさ) そりゃあね 働いて 子供育てて 親の心配してりゃね
理屈っぽくもなるんです!
んだ んだ。 あづさ おめえ 遠慮することねえべや?
えっ? だって そうでねえか?
おめえは 出ていった亭主を待ち続けて みんな 養ってきたんだから
おらが行ったぐれえで 遠慮することねえべよ。
やめて 母ちゃん!
んだけど… そうでねえか? ああ?
尋常でねえべ? 今まで 言わねべと思ってきたけんども
出征兵士なら まだしも この時代に 20年も
1人の男 待ち続けるなんぞ…。
尋常なんかでねぐったって構わねえ。 私は 耐えてるわけでねえ。
病院や達也のために 我慢してるわけでもねえ。
待ちたくて待ってんだ。 放り出して 逃げてしまうのは簡単だけっど
そしたら 恨むことも 許すことも できねえもんない。
はあ~ ご立派なことで!
ご心配 どうも!
初めて聞いた。 えっ?
お母さんの福島弁。 フフフ そう…。
いいよ。 何か いいよ そうやって 好きなこと 言い合ってるの。
んだって 母ちゃん!
「久しぶりに手を引いてェ~」
「親子で~ 歩ける うれしさにィ~」
いいかげんにしなっし!
☎ あれ? 誰だべ? 今頃…。
☎
はい。 え~っと… 長沼です。
☎(ひとみ) 南田さん? はい…?
☎春日です。
ごめんなさいね 旅先にまで…。 ひと言だけ…。
決心ついた?
今 あなたにとって 結婚が大事か 仕事が大事か…。
☎あ… はい。
そう… じゃあ いいわ。
あえて 今は 聞かない。
月曜日には 部長も あなたの返事を待ってますからね。
はい! 失礼します!
返事だけは 威勢がいいようですが うららばあさんの一件で
すっかり会社のことを忘れていた のぞみ嬢ちゃんでありました。
反省…
(食器の割れる音)
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