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Original subtitles

・~

(雨の音)

・~

(不二子)気を落としちゃダメよ

(四禮)でも この手ではもう

何を言ってるのよ

ペットは握れなくても あなたには歌があるわ

何千 何万というファンが あなたを応援してるのよ

それに 私もいるわ

ヘックション! (監督)カット カット カット!

ごめんなさい フフ 大丈夫?

(助監督)すいません NGです もう1回お願いします

(四禮)どうもすいません いいわよ 何度でもやりましょう

(四禮)すいません どうもすいませんでした

おい 四禮君 どうなってんだよ

(マネージャー)すいません 監督さん 昨日から風邪気味でして

チーン (はなをかむ音)

(助監督)ロールチェンジします (監督)これだよ

不二子ちゃん ごめん 休んでてよ

はーい

(スタッフ)おい 飯の支度どうする? (スタッフ)はい あと30分でOKです

(根本)楽しそうだね

あら それどういう意味?

しかし NGを面白がるのは→

あんまり 褒められたことじゃないけどね

やだ やだやだやだやだ

やいてるの? あんな新人に みっともないからね

「微笑」なんかにゴシップを 書かれんのは 君に隙があるからだ

(あき)あれは 映画会社の宣伝部が仕組んだ→

でっちあげでございますよ 旦那様も→

芸能人なんでございますから あのねえ

そのぐらいのことは お分かりでございましょう?

僕は芸能人じゃありません 芸術家です

それに よりによって 「微笑」とはなんだよ

来週は 「平凡」「パンチ」 それに 「ポスト」「現代」と載ります

バカバカしい 大体 君には→

プライドってもんが ないんですか?

(あきの息をのむ音)

(スタッフ)あきさん すいません ちょっとライト直しますんで→

お願いします (あき)はい

あなた あきさんが かわいそうですよ

あんなひどいこと言って

それに この間だって クリーニングに出すとか言って→

あきさんの部屋に 勝手に入り込んで→

カーテン外したし 親切でやったことです

あきさんにも プライバシーがあるのよ

女の気持ちが 全然 分かってないところが→

あなたの唯一の欠点ね

(監督)何をゴチャゴチャ 言ってんだよ 根本ちゃん

たまに遊びにくるのはいいが 痴話ゲンカは はた迷惑だよ

ところでね 不二子ちゃん… (スタッフ)ねえ あの人 誰?

(スタッフ)衣笠不二子の旦那様 (スタッフ)え?

映画監督の根本昌平 (スタッフ)ああ あの→

「夜明けのエクスプレッソ」撮った (スタッフ)エクスプレス

あっ そっか (スタッフ)23歳で異例の監督デビュー→

オマケに その映画の主演女優と ゴールイン→

そのころはカッコよかったんだけどね (スタッフ)カッコよかったよね

「久々の監督と主演女優の ロマンス」なんて→

大騒ぎになったじゃない (スタッフ)ああ そうだったそうだった

あの監督協会の新人賞も 取ったんだよな

(スタッフ)ところが あの映画 玄人受けはしたんだけど→

興行的には大コケ しかも その当時→

出せば何でも当たっていた 衣笠不二子主演物の唯一の不入り

それ以来 7年間 1本も撮ってないんだよね

ああ 映画界の窓際族か

今じゃ スター女優のヒモっていう噂よ

俺たちゃもう ヒモにもなれないよ

全く行く末 暗いよな (スタッフ)うん 暗い暗い

それにさ 不二子さんだって今じゃ→

アイドル映画の おつきあいだもんね

(助監督)お待たせしました (スタッフたち)はい

(スタッフ)監督 お願いします (監督)うん

じゃあ 本番いこうか!

じゃ 頼む

あなた 気になるから ステージ出ててよ

(スタッフ) はい 雨のスタンバイよろしく

(雨の音)

(助監督)はい シーン128 テイク3 本番

(開始ブザー)

(リポーター)根本監督さんですね? ええ そうですよ

でも まだちょっと発表できないな (リポーター)発表って じゃあ ついに

いや 構想中なんですよ 目下 (リポーター)構想中?

離婚のですか? 離婚? 新作の話だけど

(リポーター)そんなことは どうでもいいんですよ

奥さんの衣笠不二子さんと 共演中の新進歌手→

四禮正明との 恋愛問題についてなんですがね

何かひと言 (リポーター)2人でホテルから出て→

一緒に出てくるのを 見たっちゅう人いるんですけどね

(リポーター)ご主人として 何かひと言 バカバカしい

(リポーター)今年で結婚して 7年目だそうですね

『七年目の浮気』ってのが あるでしょ トワイラーの

あれはワイルダーです

ビリー・ワイルダー 1955年度作品

原題は『The Seven Year Itch』

出演はマリリン・モンローと ジャック・レモン

トム・イーウェル (リポーター)おう イーウェル イーウェル…

(リポーターたち)うわっ (リポーター)待ってくださいよ

(リポーター) 何かひと言 お願いします あっ

カット カット おい 根本ちゃん 頼むよ

本番中だぜ 『七年目の浮気』

・「POISSON D’AVRIL」

・~

・~

・~

・ 目をふせて

・ 少しだけ 笑って

・~

・ 虹色の 風を 見つめた

・~

・

・

・~

・ 季節のガラスごし 見つけた

・~

・ やさしげな 想いを ひろって

・~

・

・

(店員)いらっしゃいませ どうぞ

(店員)ありがとうございます

(店員)3150円 頂きます ありがとうございました

(店員)いらっしゃいませ

(店員)こちらへどうぞ

こちらへどうぞ いえ いいんです

(レジのスキャナー音) (店員)保存

(レジのスキャナー音) (店員)保存

(レジのスキャナー音) (店員)青果

(レジのスキャナー音) 青果

(レジのスキャナー音) (店員)アーデンビーフシチュー

2700円になります 3000円お預かりいたします

300円のお返しになります ありがとうございました

いらっしゃいませ

あら いつも大変ね いいえ

(レジのスキャナー音) (店員)鮮魚

(レジのスキャナー音) (店員)青果

(レジのスキャナー音) (店員)MYベーキング

(レジのスキャナー音) (店員)P・ダブリル

P・ダブリル? そう ポワソン・ダブリル

フランス語で 「四月の魚」っていう意味

エープリルフールの意味もあるよ エープリルフール

この場合は お菓子の名前だよ

フランスでは 昔から4月1日になると→

魚の形をしたお菓子を作って 配る習慣があるんだ

そもそも 4月1日ってのは… (女性)もしもし

はい 急いでるんですけど

ああ すいません ウフッ

・「POISSON D’AVRIL」

・ 遥かな時を とびこえて

・~

・ 誰かの声が 聞こえる

・ 四月の夢よ

・ このまま 覚めないで…

・~

・~

・ 目をふせて

・ 少しだけ 笑って

・~

・ 虹色の 風を 見つめた

・

・

・~

(チャイム)

ただいま

あなた また勝手口から入ったのね

おかえり あれ? 開いてたでしょ 玄関

今夜はベニエだよ

郵便受けの中の手紙が そのまんまなんだもの 分かるわよ

いつも言ってるでしょ ちゃんと玄関から出はいりしてよ

お手伝いみたいに 勝手口から入られたんじゃ→

それこそ みっともないわ

だけど こっちのほうが 便利なんだよ 台所に近くって

それでなくても 私が年上だから→

あなたを押さえつけてるとか もういろいろ

そんなことじゃ 「微笑」は来ませんよ

昌平! 先生

英語のファンレターが 来ております

英語の? (あき)ええ

ああ ほら 私が出た→

日米合作映画 「闇将軍」のファンからよ

まあ いよいよ 国際スターでございますね

あなた ねえ 読んでちょうだい

お願い 今 忙しいんだよ

んー ねえ 料理中なんだから

なに? 「ムッシュー ショウヘイ・ネモト」

僕宛ですね それに英語じゃなくてフランス語

君宛じゃないよ あっそう

で? 誰からなの?

んー 「パーナーポーラー・ハンダ」

えっ パナポラ酋長からだ

誰なの? そのパナポナ… なんとかって

パナポラだよ ほら 5年ぐらい前に→

CMの撮影で ロトンガ諸島へ行ったでしょ

ああ 根本昌平 幻のCMね

・~

あれがお蔵になったのは 僕の作風に→

南の島が合わなかっただけ それより ほら そのとき現地で→

コーディネーターをしてくれた 日系の2世で→

アラニラ島って島の酋長と 意気投合したって話したでしょ

日系人なら どうして日本語で書かないの?

うん しゃべるのは上手だけど 書くのは下手なんだろ

それで? その酋長さんが なんのご用?

ん? あーと 「ショウヘイ コマンタレブ」

(フランス語)

ウーララ! なあに?

いや こういうとき フランスでは ウーララって言うんだ

そんなことは どうでもようございますから

いやね あのー 日本へ来るんだよ パナポラ酋長が

3月31日 金曜日来日

当日はパシフィックホテルへ 泊まるけれど→

翌土曜日の夜 我が家を訪問するって言うんだ

ねえ 土曜日っていったら?

(あき)4月の1日 エープリルフールでございます

あっ じゃ 結婚記念日だ 私たちの

よし じゃあ 歓迎パーティーだ

酋長さんの? よいしょ

ああ 5000人の部落の大酋長

(あき)5000人も 来るんでございますか?

一人だよ 酋長一人

ビックリするような ごちそう作ってやるぞ

明治屋に 材料 注文しとかなくっちゃ

そんなにお世話になったの?

当たり前だよ 国賓待遇だったもの

その木彫りのお面も あの玄関の水牛の角も→

海亀の剥製も みんな酋長のプレゼント

それより ねえ あなた

たまには2人で ゆっくり話しましょうよ

あなたのお料理 頂きながら ウフ

それは無理だね 何しろ僕と酋長の間だ

男の友情は大切にしなくっちゃ

まっ 女の気持ちは 分からなくてもね

それに ビジネスの話が あるかもしれない

ビジネス? うん

たとえば 合作映画の企画とか

何しろ酋長は資産家だ

そうなると 僕も久々に 映画が撮れるんですよ

ストーリーを考えなくっちゃ

本は藤沢に書かせよう

久々に あいつも張り切るだろう

何しろ今は しがないテレビの 台本書きだからな

でも また南の島なんでしょ?

もうやーよ 幻は 何を言うんですか

大体 僕の映画はね 非常に芸術的で→

コマーシャルなんていう 俗っぽいものは…

うわー!

アハハハ…

バカにするんじゃありませんよ だから いつも言ってるでしょ

僕の料理の邪魔をするなって

僕のフランス料理はね 芸術なんですから

あきさん 外で食べましょう

そういたしましょう

ねえ 何を食べにいくの?

今夜は和食にします

(あき)ホウマサですか そうねえ

納豆だけは やめたほうがいいよ あら 納豆のどこがいけないの?

君には似合わないよ

納豆は植物性タンパク質で ございますから→

体にはいいし 頭にも よろしいんでございます

何を言うんですか

大体あんな腐った物ばかり 食べてるから→

君みたいに脳みそが腐るんですよ

腐ってるって言うんだったら あなた

チーズだってそうでしょ? チーズは発酵させた物です

腐ってなんかいないの

いいわ あきさん もう行きましょう

ねっ はい

フン

「何千 何万というファンが あなたを応援してるのよ」

「それに 私もいるわ」

んん…

・~

(波の音)

ハァ 腹 減ったなあ

・~

・~

ノーラ

ノーラ

ウーララ

もしもし ああ もしもし あっ 藤沢君お願いします

いや 違う違う 脚本家の藤沢富士夫君

あっ 藤沢? 僕 僕 根本だけどね

いや 元気だけどさ それどころじゃないんだ

大至急 相談したいことがあるんだ

あっ じゃあ うん またあしたにでも電話するよ

うん はいはい そうそう はい

どなた? いや 藤沢のヤツに電話してたんだ

本の件で あいつも張り切ってた

ハァ 私のほうもね→

ホウマサから 事務所の社長に電話したらね→

宣伝になるから 大いに酋長を歓迎なさいって

まあ お料理は あなたが腕を 振るってくださるからいいとして

そうそう ほら

後援会のニシマルさんから 結婚祝に頂いたワイン

ほら あれ なんていったかしら… ああ 「ジュヴレ・シャンベルタン」ね

ああ そうそう あれ あれ 開けたらどう?

あの1本30万円もする… だからよ

こういうときでもなければ 開けられないでしょ 恐ろしくて

そうだね しかし あれに合う 料理を作るとなったら大変だよ

あら そうだ あれに合うドレスも大変だわ

トイレ 洋式にしておいて ようございました

ああ ねえ トイレのタイル欠けてたわよ

ああ あれは修理頼んどいた ふーん

(あき)それでは 私は先に休ませていただきます

おやすみなさいませ おやすみ

おやすみなさい

あなた 顔色がよくないわよ そお?

あの大きなベニエ食べたんでしょ

おなか壊すわよ まさか

あら じゃあ 何にも食べてないの?

おなかすいたでしょう

何か軽い物でも作りましょうと 言いたいところなんだけどさ→

おっかないわね

いいよ いいよ それより早く寝なさい

美容に悪いよ 夜更かしは

あなたも早く休まなきゃダメよ

うん

あっ それから あしたの夜は→

「水曜バラエティーショー」の ゲストで四禮君と出ますから→

夕食いらないわ

・~

ウーララ

ウーララ

不二子さんや 不二子さん

(ビルマ)《ウーララ 腹 減ったなあ》

(藤沢)おい なんだよ 相談事って

早く言ってくれよ

俺 結構 忙しいんだからよ 映画だよ

藤沢 久々に映画 作るんだよ

「夜明けのエクスプレス」の 黄金コンビの復活だ

お前 また映画の脚本 書けるんだぞ

もうワンパターンなテレビドラマ なんか書かなくていいんだよ

なんだと この野郎 お前 よく見ろ お前

こっちのお前 テーブルではな お前 ほら→

シリアスドラマだ こっち メロドラマ書いてあるだろ お前

俺にもバラエティーがあんだぞ お前 分かってるか お前 ヘヘ

しかし おめえも相変わらずだな おい

で なんの映画作んだ ん? お前 いい話のあれだろうが

電話じゃ ずいぶん慌てとっただろ ん?

うーん 実は映画を実現する前にね→

どうしても片づけなきゃなんない 難問題があるの

おお お前がそんな弱気を 見せるなんて珍しいな

困ってんだ 頼みがあるんだ

絶体絶命なの 追い詰められてるんだ

黄金コンビ復活のために頼む

どっちがいいかしらね

やっぱり南国の方だから パーッと派手なほうがいいかしら

それとも日系の方だから→

たまには和服姿のほうが 魅力的かしら

(あき)あの 先生 トイレの件でございますけれども

なあに?

向こうの 島の方でございますから→

やはり 和式のしゃがむほうで ございましょうか

だって フランス領だったんでしょ?

ではございますけれども やはり日系の方でございますから

やっぱり しゃがむほうではないかと

酋長よ

ではございますけれども どちらなんでございましょうね

さあ どっちかしらね

♪ ラララララ

するとなにかい その島の習慣つうのは→

友情の証しに かみさんを一晩提供するってわけ

そうなんだよ

♪ ラ~

で なんだ おい その酋長の かみさんのノーラって女→

一晩提供されて よろしくやったのか?

最初は断ったよ おい

だけど それじゃあ 酋長との友情にヒビ入るし→

それに なんたって 首狩り族の村だ

とかなんとか言って この色男 色魔 スケベー! スケベー!

これじゃ 色っぽすぎるかしら 私

何もやってねえって? ホントかよ

どちらなんでございましょう

星の数 数えてたって?

どういうことだよ

うん かなりのとこまで数えるとね→

そん中の1つが スーッと流れて消えるわけ

そうすると また始めから数え直すの

一晩中か うん

その女とかよ うん

ノーラと

・~

(藤沢)分かった! また出たな

お前のプラトニック 女性崇拝症候群がよ

だから ダメなんだよ

お前のその時代錯誤がな→

このバイオレンスとセックスの 現代社会において→

お前の作品を 生み出さないでいるんだよ

そのノーラって女 色は黒いが→

なかなか美人なんだろ?

もったいねえなあ

だけど そんなこと 酋長に言えないだろ

友情にヒビ入るし まあ そりゃそうだわな

あ… ありがとう 酋長 ありがとう ノーラ

あんたらの友情は ブチ深いけん

きっと お返しする日が くるでしょう

いつかきっと 日本に 来てください オールボワール 酋長

後先のことを 考えなかったのかね 全く

オールボワール 南の島 いや あんときは感動しちゃって→

ただ南の島への思いを 絶叫しちゃったんだよね

(藤沢)立派だよ 君は 国際親善のお手本だね ええ?

冗談じゃないよ 酋長 土曜日には うち来るんだよ

で なにかい 不二子さんは その酋長相手に→

夜伽でもするって言うのか? ああ? ハハハ…

喜劇だろ おお? 大喜劇だ ハハハ…

悲劇だよ 日本の悲劇だ ハハハ…

で 不二子さんのお気持ちは どうなのよ お?

そんなこと 不二子に話せるわけないだろ

いいじゃねえか ヤってねえならよだから かえってややこしいんだよ

なぜだよ お前 不二子さんに操を立てんだから→

いいじゃねえかよ

心だよ あ?

お前には分かんないだろうけど 心の問題なんだ

ローラとは美しい思い出の夜 過ごしたわけだし

それに 芸能リポーターたちによると→

僕と不二子の仲は うまくいってないらしいんだ

おしっ よいしょーしょー しょーいと

そんで どうすんだい それを相談してんだよ

お前もな かつては城戸賞受賞の 気鋭の脚本家だったんだ

ちょっと1つ プロット ひねり出してくれりゃいいんだよ

(藤沢) んー 考えましょ 考えましょ

んー ラストはハッピーエンド そう

テーマは かみさんの貞操を守る男 それ絶対

常に国際親善の輪に ヒビが入らないようにすること

そのとおり そのとおり んー うん

うん 最も安全な方法は 酋長とかみさんを→

会わせないようにすることかな それは不可能だよ

不二子抜きのディナーパーティーなんて 無礼極まるもん

待てよ 吹き替えって手がある

吹き替え? お前 ドラマと現実 混同しちゃ困るんだよ

大体 お前のは荒唐無稽なんだよ (藤沢)な… 何 言ってんだよ お前

お前こそ つまんねえとこで 芸術家ぶってるからよお→

イメージが低下すんだよ スターが使えなかったらな→

吹き替え使うのが 映画の魔術じゃねえか バカ

(足音)

(男性たち)御用だ 御用だ…

ライターは頭ん中だけで 組み立てるから→

そんなムチャ言えんだよ

現場でやる立場になってみろ ごまかしは利かないんだから

ライターは 火をつけるだけで済むけど→

現場は それこそ灰皿 もうすっちゃかめっちゃか

テレビの客なら ごまかせるかもしんないけど→

映画は そうはいかないよ

大体 「夜明けのエクスプレス」だって コケたのはね

コケたのは お前の 芸術家ぶりっ子のせいだろうが

ケンカしてる場合じゃねえよ なあ

大体このシチュエーションはあれだ ちょっと通俗すぎだ だせえ

もうこういうことはな テレビ屋の俺に任せろよ なっ

おう いいか まずな かみさんを 実家にでも帰しといてな→

その間にな 吹き替えを仕込むんだよ

その吹き替えと酋長を 一夜過ごさせりゃ→

3本丸く収まんだろうよ ストーリー的に→

なんの破綻もねえだろうよ その吹き替え どうする

ああ? 相手は酋長だよ

VIPよ ベリー インポータント パーソンだよ

いいかげんな女性を あてがうわけにいかないんだよ

だから 人選は 俺に任せとけっつってんだよ

ある劇団の新進女優にな いいのがいるんだよ

容姿 スタイル抜群 ねっ 性的にも自由奔放

もう こんな話したらね すぐ乗っちゃうよ

そんな子 うち入れんの?

(藤沢)いい子だよ

何でも1度な どっかの 兄ちゃんに引っ掛かってよ

本気で惚れやがってよ 捨てられてな

それで お前の言う心っていう ややこしいやつもな→

一緒に捨てちまったんだってよ

この役にはピッタリの子だよ

んーんっと

(むせる音)

だけど 不二子 どうやって実家 帰す?

(藤沢)お? そりゃあ お前→

酋長がノイローゼだから 危険だとかよ

襲いかかるとかなんとか言って 脅かして追い出しちまえいいんだ

たった一晩の辛抱だろうよ なっ

いいシナリオじゃねえか

(テレビ:司会者)ところで 衣笠さん 四禮君との仲が→

いろいろ問題になってるんですが その辺の事情ひとつ

だって 私には主人もおりますし→

四禮君は弟みたいなものですから

僕にとっては お姉さんというより 大先輩で→

いろいろ 教えられることが多いです

かわいいのよね

羨ましいですねえ ええ?

さあ それでは ただいま撮影中の 「嵐を呼ぶララバイ」から→

ワンシーン見てみましょう

・~

(あき)全くもう 4月バカとは よく言ったものでございます

ああ 恐ろしや 恐ろしや

ノイローゼの酋長だなんて 首をちょん切られたり→

スープにでもされたりしちゃ 大変でございます

ナンマンダブ ナンマンダブ… じゃあ 元気でね

何かあったら電話して はいはい

(あき) さあ 早く逃げ出しましょう

では カーット

藤沢 シーン1 OK

よーし シーン2 スタートだ うん

おう マリか ああ 昨日 頼んどいた件だけどな うん

いよいよ うん 始まんぞ 頼むわ あ? ああ 軽い軽い軽い…

よしよし よーし

「もう二度と恋なんかしないわ」

うん マリ うまくやれよ うん

・~

・~

(店員)いらっしゃいませ

どうぞ

いらっしゃいませ

・~

(店員)あっ あっ…

あー …ッテえ

(店員)あー 痛い…

すみません

あれ? 君は あら あなた

(男の子)すいませーん (店員)あっ はい

(男の子たち)ありがとう

(店員)大変 大変

青果 鮮魚 よいしょっと

はい あなたのうち この近く? うん すぐこの先

じゃあ 私と同じだ

じゃ 荷物持ってあげる あっ ありがとう

ウフ よいしょ ウフフ

今日は休みだったの? (店員)そう もともと→

アルバイトだから で これからどこへ?

(店員)うん 本職のほうでね 本職?

(店員)ちょっとね

フフ (店員)なあに?

いや やっぱり エープリルフールだなあと思って

君とこうやって歩いてることが

(店員) あっ そういえば この間 ほら→

エープリルフールのお話を してたでしょ

ああ ポワソン・ダブリルね

(店員) そうそう その続きを聞かせて

えーっと どこまで話したっけ

えっと 確か4月の1日には→

魚の形をしたお菓子を 配るってとこまで

ああ そうか つまりね 4月の1日は→

昔は 1年の始まりだったんだ

それで そのときに みんなで 軽いジョークやなんかを→

言い合って楽しんだのが ポワソン・ダブリル

エープリルフールの始まりなんだ

そして そのときに プレゼントの交換をする習慣が→

魚の形をしたチョコレート菓子を 配るってふうになったわけ

その中に そっと ラブレターを入れたりしてね

(店員)うわお!

ところで 四月の魚って なんだか分かる?

(店員)えー 分かんない なあに?

サバなんだよ (店員)サバ

うん サバはね 4月になると餌を何でも食べる→

すぐに捕まるバカな魚って 言われてるの

それと もう1つ サバはマクロー 誘惑者っていう意味もあるよ

誘惑者?

うん 春になると 誘惑者の手が 女の子に伸びるってわけ

誘惑者ねえ

えっと あれ?

ん? (店員)あっ ちょっと待って

あっ 私 こっちだ 君も そっち?

(店員)え? あなたも? うん

(店員)ふーん

何これ

スリーズ ノワール 黒いサクランボ

へー これデザートに使うの?

デザートなんだけどね 特別の意味のあるデザートでね

(店員)ふーん ああ じゃあ 僕ここだから

(店員) あっそう じゃ これ返す はい

大丈夫? うん 大丈夫

じゃあね ありがとう 君は?

もうすぐだと思う じゃあね

じゃあね

・~

「じゃあね」

(ビルマ)《人の上をまたぐなよ》

(チャイム)

さあ 吹き替え登場 シーン2 本番

やあ いらっしゃ… あら

き… 君は… えっ あっ じゃあ→

あなたが根本昌平監督?

すると 君が藤沢の紹介の?

(マリ)はい 劇団「屋根裏」の女優 万里村マリです

ふーん

わお フフッ

上がってもいいですか? はい どうぞ どうぞ

そこ 閉めてくれる? はい

いやー こりゃまさに 本物のエープリルフールだ

こんにちは へー ステキなおうちね

で 藤沢君には どう聞いてきたの?

うん ここで 演技テスト受けなさいって

演技テスト なるほどね

それにしても あなたが根本監督だったなんて

あっ そうか じゃあ 衣笠不二子さんの旦那さんなんだ

君 いくつ? 19

って言いたいんだけど 本当は21

経験はあるの? 男性経験?

いや 演技の経験を 言ってるんですよ

やだ もっとも二十歳 過ぎた女に→

男性経験なんて聞くわけないよね うん 聞くわけない

過ぎてなくても聞くわけない

私たちの劇団はね 全員で共同生活をしているの

一夫一婦制打倒が旗印なの

すると あの… 誰とでも?

セックス? うん そのセックス

フフッ フフ フフ…

まあね

「ガウロイツェ」 「ゴロワーズ」でしょ それは

あっ そっか

で マリちゃん え?

藤沢君とも そういう関係? 藤沢さん

あの人は 私のお医者様 お医者様

仲のいい友達の監督さんが→

どうしても演技の研究のために 助手が欲しいって

それで あなたのテストを受けにきたの

じ… 実は僕も 一夫一婦制については→

懐疑的… なのだ どうしちゃったの?

いや つまり 現代人の性は どんどん解放されるべきで→

特定の相手と永久的独占契約を 結ぶのは不自然だ

そうよ

「2人の変わらぬ愛のために」 なんてナンセンスよ

あっ じゃあ 監督さん どうして結婚してるんですか?

早まったと思ってる 後悔してるんだ

フフッ フフ フ…

君とは気が合いそうだ 採用しよう

じゃあ 合格ね

ギャラは頂けるんでしょ? 5万円

わおー いや 君なら一晩10万円でもいい

一晩? えっ じゃ 泊まりがけ?

残業手当つき で どんな役をするの? 私

この家の主婦 僕の奥さんの役

私は女優よ

コールガールじゃないんだから おいおい

勘違いしちゃ困るよ 勘違いしちゃ困る

最初から話すとね 今夜ここに外国からお客が来るの

外国から? そう 極めて大切なお客

ところが 家内は ロケーションで出席できない

分かった 雇われホステスだ

そう 雇われホステスっていうか 1日女房っていうか→

君は 僕の奥さんの役を演じる

ふーん 面白そうね

セリフは全てアドリブ お酒の相手にダンスの相手

そして… ダメだ 私

ん? だって 英語弱いもん

その点なら心配ないよ 外国からっつっても→

相手は日系の2世 日本語は ちゃんとしゃべる

若い人? いや 若くはないけど偉いんだ

彼とは思想的にも芸術的にも 共感している

彼も一夫一婦制については 反対なんだ

だから 彼をもてなすためには 最愛の妻も提供するかもしれない

進んでるう

進んでるか やっぱり

で スウェーデンかどっかから?

いや 南の国からだ 南の国?

うわー 男性的

引き受けてくれるよね?

でも おかしいわ どうして

だって 一夫一婦制反対なんだから→

奥さんなんていないほうが スッキリするじゃない

そうはいかない 儀礼上の習慣ってもんがある

じゃあ 奥さんは 儀礼上の存在なの?

そのとおり 奥さんはパーティー用

冠婚葬祭用の装飾品だ

フフ フフ フ…

・~

これ履いて あっ かわいい

ねえ 断ってもいいんだよ え?

面白いわ それに10万円のアルバイトよ

乗っちゃう 乗っちゃう

そう

シーン3 スタート

シーン3? そう 料理のシーン

♪(レコード:「POISSON D’AVRIL」)

♪~

お料理のテーマさ

へー で 何作るの? スパゲッティ?

そんなヤボなもんじゃ ありませんよ

フランス料理 メーンのうち テリーヌ ド ポワソンは→

昨日のうちに作って 冷蔵庫の中に冷やしてある

分かるね? はいはい

なんだ その返事は 君は 僕の奥さんの役を→

演じるんだよ 返事は 「はい あなた」

はいはい はい あなた

はい これ着けて

ところで 何やってるの? バターオイル

フランス料理ではね バターをオイルにしてから→

用いることが多い へー

(せきばらい) はい あなた

そうそう

で 今から作るものだけど オードブルは ババロア ド トマト

メインが ジゴ ダニョー ロティ

シュプレーム ド カイユ ビネロン オ フランボワーズ

そして スフレ オ ウルソン へー 何それ

ほらまた… あっ そうそう

なあに? あなた そう

ジゴ ダニョー ロティ これはね 子羊のもも肉の蒸し焼き

そして またの名を 「香りのマントを羽織った子羊」

へえ カッコイイ …は あなた

でしょう ウフ

♪ Si je mets de temps en temps

♪ Un poisson sur le grill

シュプレーム ド カイユ ビネロン オ フランボワーズ

えー 「ブドウ畑のオシャレなウズラ」

かわいい 君もね

♪ ララララ ララララ

♪(2人)ララララ

フッ ウフッ

そして次は スフレ オ ウルソン ウニのスフレ

ウニなんて 生で食べればいいじゃない

生なんかじゃ食べないの 料理は芸術なんだから

クリエーティブな作業なんだよ はい あなた

ところで それ 誰が作るの? もちろん 僕と君とでだよ

えー 無理よ 私には 監督さん

ほらまた 腹の底から 僕の女房になりきらなきゃ

腹の底から? それが演技ってもんでしょ

スタニスラフスキーのいう 「もしの働き」だよ

たとえボロが出そうになっても 最後まで強引に→

僕の女房で押し通す そのためのリハーサルでしょう

ふーん はいはい あなた

それは? 料理を作るとき飲むワイン

は? そのグラス取ってくれる?

わおー

あなたー

はい

とっとっと とーっと

はい

うん 小石の味がするだろ?

ん? このワインは「グラブ」といってね

フランスの小石の多い土地で できるワインなんだ

へー 面白いわね

面白いっていうより 僕は むしろ悲しくなってくる

サラサラ サラサラっていう音が 聞こえてね

サラサラ サラサラ?

イメージを膨らませてごらん

広い広い 小石ばかりの河原があって→

そこに明るい日の光がさして→

そして サラサラ サラサラって 流れていくんだ

うーん うんうん うん

さて 小石の上に 今しも1つのチョウがとまり

あっ それ 私だ

淡い それでいて くっきりとした 影を落としているのでした

やがて そのチョウが見えなくなると→

いつの間にか 今まで 流れてもいなかった川底に→

水はサラサラ サラサラと 流れているのでした

うわお フフ

おいしい?

おいしい それから なんだか悲しい

悲しい? ウフフ 演技よ

私は悲しくなんてない 涙なんて知らないのよん

『汚れつちまつた悲しみに』か

中原中也 僕の大好きな詩人だ

♪~

監督さんって何でもできるのね

腹の底から はい あなた

あなたって何でもできるのね

失礼 まっ 育った所が→

フランス料理店の隣だったからね 「門前の小僧」

わっ 監督さんって 小僧さんだったの あなた

それは物事の例えですよ

で 私は何をするの? あなた

んーっと そこの鉢植えの→

2番目と4番目と5番目から 4本ずつぐらい取ってくれるかな

えー 何? これ

んー ハーブ 香り草だよ

2番目がタイム 4番目がチャービル

5番目がローズマリー

瓶に入ってるんじゃないの?

うん それの本物がこれだ

これがローズマリー

昔 『ローズマリーの赤ちゃん』っていう 悪魔の映画があったでしょう

小学校のころにね あれ?

じゃあ 『アラーの使者』知ってる? 知らなーい

あれ じゃあ 『怪傑ハリマオ』は? 知らなーい

(せきばらい) ローズマリーっていうのはね→

昔 ヨーロッパで 魔女よけとして使われてたの

今でも迷信深い家は 家の周りに植えてあるよ

へー そして その草は→

羊に食べさすと 羊がさらわれないんだ

これ どうするの? それはね→

えっと そこに器があるから その中に刻んで入れて

これ? そう

そして 粗塩30g 大さじ1杯→

中に入れて よくかき混ぜる はい あなた

♪~

それから? えー はい これ

なあに? これ 肉に穴を開けます

肉に穴を開けるのね そう

きゃ~ はい ニンニク

ニンニクね も1つね

うう~

おお うう… うう~

(笑い声)

あら? どうしたの?

いや 別に 何でもない

ちょっと そこのバター取ってくれる?

はいはい はい あなた

ニンニクとハーブの香りを→

この肉の内側に 送り込んでやったら→

この残った塩をね 全体に よくもみ込んで→

そして このバターを→

上に塗ってやる

へー

「ブドウ畑のオシャレなウズラ」

オシャレしてあげなきゃね

ハッ

残酷

料理とは残酷なものです その点 愛に似ている

愛に?

犠牲を払わなければ 愛は得られない

おいしさも そういうものだよ

ふーん

ウフッ

ん? ウフッ

でーきた うん

じゃあ そこのバターの入った鍋 取ってくれる?

♪~

はい ♪ 遥かな時を とびこえて

♪~

♪ 誰かの声が 聞こえる

♪ 四月の夢よ

♪ このまま 覚めないで…

♪~

♪~

♪ 目をふせて

♪ 少しだけ 笑って

♪~

♪ 虹色の 風を 見つめた

♪

♪

・~

アチッ ああ… 大丈夫?

あら? これ さっきの瓶詰じゃないの?

ああ スリーズ ノワールね そこに落ちてた?

うん これもデザート作るときに 使うんでしょ? あなた

うん そうだけど?

そのデザートにも 何か意味があるなんて→

言ってなかった? うん

ねえ なんなの? あなた

まず調理法だけどね→

そのサクランボを ジュースで煮てね→

そして そのお鍋の上で オレンジの皮に→

キリッシュ まあ チェリーのお酒ね

それを注いで火をつけて ソースを作る

それを温かいうちに 冷たいアイスクリームの上にかけるんだ

何か大変そう

そのお菓子を スリーズジュビレって言ってね→

もともとは金婚式を祝う菓子

まあ 末永く 2人の愛をっていう意味の→

めでたいお菓子だ ふーん

はい あなた はい まあ 僕たち2人も→

毎年 結婚記念日には それを作ってたんだけどね

毎年?

うーん 正確に言えば 最初の4~5年かな

ここ2~3年は忙しくってね お互いに

ふーん

ねえ あなた ん?

その 私たちの結婚記念日って いつなの?

4月1日

えっ? って 今日だ

へー 面白い

エープリルフールが 結婚記念日だって

ステキ ウソみたい

ホント 全くウソみたいだよ

じゃ 今日は あなたと私とで お祝いをするのね

このスリーズジュビレで

そうだね 君と僕との 2人の変わらぬ愛のために

えっ? いや 演技のテスト

うん

・~

いいよ 美しいよ そう 近づいて 近づいて

・(小林)おっ おっ うわー うわー ・(ビルマの鼻息)

・(小林)うう…

うーうーっ くっ ああ…

(うめき声)

それそれ

へ? それ あげるの

だって これ あたしの大好物で

おおー おおー ビルマも好物なの

だから 舌がバカになるんだよ (小林)はい

ごめんね ごめんね ほら

フゥ やれやれ

ところで あなたは? ああ 小林工務店から来ました

トイレのタイルの 張り替えのご依頼で

あー 待ってたんだ どうぞ はい

この バンバンバンッ (ビルマ)《フンッ》

ああ なかなかセクシーな犬ですね ハハハッ

フゥ

あっ すいません

トイレどこですか?

不二子 トイレの人 小林工務店でーす

根本の家内でございます んばっ

わおー わおわお… わおわお…

トイレは玄関の脇だから はいはい

・ 不二子

電話 取って ・ はい

あっ 丁寧にね ・ はい あなた

それと 酋長かもしれないから ・ 腹の底からね

はい あなた

酋長? もしもし

はい ここ (小林)はい 分かりました

はい 家内は私ですが

そこなんだけどね (小林)はいはい えーっと

あれ タイル壊れてますよ これ うん そうなの

ああ そうですね じゃあ→

あたし ちょっと 用を足させてもらいます ヘヘッ

バカなこととは 何でございますか?

♪(小林の歌声)

根本は取り込み中ですの あっ 藤沢だなあ

ですから 家内は私でございます

はい 腹の底から

では ごきげんよう (受話器を置く音)

何だって? 間違いでしょう あなた

ああ またか よくあるんだよ イタズラ電話

有名税だな

でも いい調子だよ もうすっかり僕の奥さん

あきさーん! (あき)ございました

ございました お釣りは40円でございます

ハッ ああっ ぐっ!

うう~っ ああーっ!

ドレスと着物と どっちがいいかな

着物なんて着らんないもん

ああ そう じゃあ ドレスだ

んー これなんかどう?

ダメ? そうか

あっ これステキ あなた

ああ それ 新婚のころ作ったやつだ

不二子のすごいお気に入りのやつ

これ これいいわ あなた それ…

これね

あれ ああ ああ あっ

あっ 下着も貸してもらえないかな

下着も?

だって このドレスに このランジェリーじゃ→

合わないじゃない

そういうもんなの? うん

そういうものよ あなた そう

えっとね んーっと そこの引き出しが→

多分 下着だと思うよ

どう? ああ

ダメだ

(せき込み)

・~

あっ これならピッタシだわ うわ もうピッタリだね それ

どう? ほら あっ ピッタリ

・~

おお おお

あーら 自分の奥さんの裸なんて 見飽きてるんでしょ?

ねえ あなた まあね

ねえ あなた 後ろ止めてくださらない?

これ んん

私たちもね 芝居やってるときは 衣装替えが大変なの

もう舞台裏ではスッポンポンで 走り回ってるのよね

スッポンポンね

あーら どうしたの?

風邪をひきます 早く洋服を着なさい

そんな怖い顔しないで

んっ

・「BRAND NEW DAY」

・~

・

・

・

・

・

・

・~

・~

(チャイム)

シーン4 スタートだ

ああっ

(パナポラ)ムッシュー ネモト

ボンソワ! ハハハ いやあ ボンソワ! ハハハ

トレベール トレベール ご機嫌いかがですか?

ムッシュ パナポラ ウィ マダム

お目にかかれて光栄ですわ

主人が あなたの島で 大層お世話になったそうで

わしらの友情は ブチ深いけんのう

マファム 私の奥さんです んん…

トレベール トレベール ワハハ

かわいい かわいい ワハハ

トレベール トレベール

ワハハ かわいい ハハハ

あら? (パナポラ)ん?

これ 何かしら

オウ これ 私の島 アラニラ島だけで採れる貝

アムール貝ちゅうて 縁結びの貝

まあ ステキですのね ワハハ

昌平 あなたの奥さん若い

幸せなこと アハハ…

中へどうぞ

(パナポラ)オウ トレビアーン トレビアーン 美しいのう

私の心尽くしのフランス料理です どうぞ召し上がってください

(パナポラ)メルシー メルシー マダム

これ わしのお土産 わーお

(せきばらい) 不二子 開けてごらん

(パナポラ)シルブプレ やったー

ふふ… 不二子

(せきばらい) メルシー ボークー

オウ ボン んまっ

(マリとパナポラの笑い声)

お… 奥さんは元気ですか?

オウ ノーラ 元気元気元気 子供でけたし

へ? ハハハハ

いや わしにソックリの子じゃ

ハハ ハハ…

セ・ラ・ヴィじゃのう へ?

人生じゃのう セ・ラ・ヴィじゃのう ウィウィウィ

(パナポラ)んむむ… んーまっ ワハハ はあ… はあ

では 乾杯をいたしましょう

(パナポラ)オウ シャンパーン あら 怖い

・~

オッホホホ

トレビアーン トレビアーン

うん セビアーン (パナポラ)うん トレビアーン

トレビアーン トレビア~ン

んーまっ ワハハ

オウ ブリティッシュ スタイル

いや すばらしいね キレイね

んー トレビア~ン んー

(マリ・パナポラ)んー

あのー それでは… それでは再会を祝しまして

アボトールサンテ アボトールサンテ

アボトールサンテ んん

んー アー ボンボン

んー ババロア ド トマトです

ボーン ボーン んー

(パナポラ)トレボーン フフフ

トレボーン マダム ボン

マダム マダムマダム この料理よりも もっとおいしそう

冗談ばっかり

不二子 これ テリーヌのお皿 はい はい

(パナポラ)メルシー メルシー

フフフ… メルシー どうぞ

(パナポラ)おいしそうなテリーヌ メルシー

(パナポラ)そして コンソメ

テリーヌ コンソメ ワハハ

不二子 不二子

マダム マダム 旦那呼びよるが

は… はい あなた

そっちの明かりも消してくれる? はい あなた

はい アナータ

オウ セクシー ボークー

オウ トレビアーン トレビアーン いやあ

わお

不二子 はい あなた

(パナポラ)はい アナータ (せきばらい)

えー このウニのスフレ スフレ オ ウルソンはですね→

三陸直送のウニと帆立て貝の→

ムースを合わせました 絶品でございまして→

私の最も得意とする 料理でございます

(パナポラ)メルシー アボン

どうぞ (パナポラ)メルシー ボークー

あーら かわいいウニ子ちゃん アチチ

どうぞ 酋長さんに1つ オウ ヘヘヘヘ

あー ウニ燃えてます

あっしの心 もっと燃えてます また ご冗談ばっ…

アイタタ どれどれ… どれ

んっ んっ んっ んー

(せきばらい)

ママのが かわいい指 ウニよりも もっとおいちい ハハハ…

あっ 昌平 はい

わしの島にな 観光ホテルできるで

観光ホテル? うん

ホテルですね おー 海青い 空青い

緑ぎょうさんあるしの スモッグないけんのう

行きたいわ 観光ホテルっていうと どんな?

ウィウィウィ 日本の会社と わしとで→

資本出し合うて 英語でいう フィフティー・フィフティーじゃ

フィフティー・フィフティー なるほどね

ホテル 8階建て

ヨットハーバーあるし サーフィンできるし→

山にはケーブルカー作る予定 ケーブルカー

日本のその金持ち→

ぎょうさん来よるで 来よるで

若者たち 旅行好きじゃけんのう

島 見物しに来よる

買い物もぎょうさんしに来よるで それは成功

もう成功間違いなしですよ ウィウィウィ

なんてったってアラニラ島は 現代のパラダイスですからね

いいわあ 若者の島

恋の島 バナナやパパイヤが実り→

海にはハンドバッグが泳いでる ハンドバッグ 泳いでる ハハハ…

あら 忙しいのね 忙しいのね

宣伝が肝心ですよ 酋長

島を舞台にした 大ロマンス映画を作りましょう

ウィウィウィウィ それは今 考えとるけん

ぜひやりましょう 私が引き受けます

ハハハ

私たちの友情はブチ深いけん

・~

ねえ 酋長さんの島では 奥様 何人まで持っていいの?

私 第3夫人ぐらいには なれるかしら

あーら 冗談ですわよ ウイットですわよ

さて いよいよ ジゴ ダニョー ロティ

「香りのマントを羽織った 子羊」の登場

酋長 私の友情の証しです

本日 用意しましたるワインは→

ブルゴーニュ産の 「ジュヴレ・シャンベルタン」です

では いよいよ開けます

・~

わあ キレイ

んっ 出た

はあ

・~

(パナポラ)んー

フフフ…

うみゃあのう ハハハ

喜んでいただいて光栄です

うみゃあのう

うみゃあ うみゃあ それじゃあ お皿を

うん お皿 お皿 お皿 はい

(パナポラ)はいはいはい はい はい どうも

うみゃあ 私にも

ビアンシュー ビアンシュー

んー もう1杯

ほんに ほんに ウィウィウィ…

ビアンシュー ビアンシュー… んー もっともっともっと…

ねえ それ 1本30万円…

あっ あーっ あーっ あーっ

ああ ボン

(マリとパナポラのはしゃぐ声)

いない いない (マリ・パナポラ)バー

いない いない バー

バー ハハハッ

(マリとパナポラの騒ぐ声)

ハックシュン

お皿をどうぞ はいはい

はいはい (パナポラ)はいはい

はいはい はいはい

はいはい はいはい

はいはい

♪ 木曽のナー なかのりさん

♪ 木曽の御嶽さんは ナンジャラホイ

わしなあ 戦争中 日本の兵隊さんと一緒じゃった

米英撃滅でのう

兵隊さん ジャングルで この歌 歌いながら泣いとった

♪ 夏でも寒い ヨイヨイヨイ

♪ ヨイヨイヨイノ ヨイヨイヨイ

わお (パナポラ)あー

お茶漬けが食べたいのう

あっ あのですね このジゴ ダニョー ロティ→

あの 子羊の… (チャイム)

不二子 ちょっと

♪ 木曽のナー ♪ ナー

♪(マリ・パナポラ)なかのりさん ヤッホー

♪(マリ・パナポラ)木曽の御嶽さんは ナンジャラホイ

ホイホイ どなた?

ふっ ふっ ふ…

どうしたの? 顔色が変わったようね

事故でもあったの?

事故は こっちでしょ

・(マリとパナポラの笑い声)

酋長をダシにして 女を引っ張り込んだのね

違う違う 違うかどうか…

それは違う 私が確かめます

いやいや 冷静に 冷静ですとも

私は妻として お客様に ご挨拶したいだけ!

それが困るんだ 君が出て 君のペース…

離してー!

(あき)あうあう… あっ

あのね お願い 不二子 僕の立場を…

うるさーい!

ウーララ ねっ

オーウ

ごめんあそばせ

あっ 衣笠不二子だ

あっ 私のドレスだ

ロケーションじゃ なかったんですか?

あなたね? さっきの電話

電話? とぼけないでちょうだい!

(パナポラ)あー 紹介いたします この人 昌平のマダーム

はーい あなた

さようですか 私は根本の家内でございます

(フランス語)

は?

分かった あなた 昌平のお母さん

アハハ…

失礼ね さあ 出てってちょうだい 不法侵入で訴えますよ!

酋長さん 気にしないでね この人どうかしてるのよ

酋長さん あなた だまされてます

(パナポラ)だまされて? オー ノーノーノー…

私は根本の妻なんです 妻は私です 腹の底から

出てくのは あんたのほうよ 話になんないわね

酋長さん この女の言ってることは デタラメなんです

私が根本の妻なんですのよ ウィウィウィウィ…

あなた 第2夫人 第2夫人?

ノンノンノン… ノー

あっ ハンドバッグが 第1夫人 アリマス

主人はどこかしら?

そうねえ 主人の口から はっきりさせましょう

(小林)こんちは あれ? まだいたの

えっ? どっかお出かけですか? うん

ちょっとね ああ いいね

あなた? あなた?

あなた? あなた?

(マリ・不二子)あなた? (あき)ああっ

あなた?

・(マリ・不二子) あなた? あなた? ・(パナポラ)アナータ

ああ 地獄だ ギロチンだ こりゃ ええ… 夢だ 夢だ

悪夢だよ ええ

あなたー! あなた!

アナータ くそ 酋長までだよ

(小林)そうそう その酋長ね うん

出てらっしゃいよ あなたー! 出てらっしゃいよ あなた!

(パナポラ)出てらっしゃいよ アナタ

・ あなたー! ・ あなた!

・(パナポラ)アナータ

・ あなた 出ていらっしゃいってば

いけねっ いつもの おヒステリーの前兆だ

(トイレの水洗音)

はいはい ただいま

・~

(あき)ああっ

こんちは

(一同)アボートルサンテ

まあ なんと言いますか そのですね→

皆さん いろいろと ご不満もおありでしょうが→

ここは平和的に 食事でもいたしましてですね→

シュプレーム ド カイユなんか いかがですか?

ブドウ畑のトットちゃんっつって このコショウなんか振りかけてね

あなた はい!

まず最初にドロボウ猫を つまみ出してちょうだい

ドロボウ猫って私のこと?

決まってるじゃありませんか あったまに来ちゃうわね この女

なんだって? どこが私がドロボウ猫なのよ

冗談じゃないわよ 失礼ね

(マリと不二子の言い争う声)

あー ちょっとまあ 2人とも そう興奮しないで もう

ああ ちょっ ああ… ほら 見ろ

何よ それ 魔女よけよ えーい!

チョコザイな! しょ しょ しょ…

昌平 これは一体どがんしたんや

(フランス語) 2人とも 今そういう話→

終わりますからね あなた ホントの妻は→

どっちなの? ヘヘヘ どっちもどっちも

どっちなの? いや…

そうだ この人に 聞いてみましょうよ (小林)は?

ねえ このうちの奥さんは だあれ?

どうも 奥さん ちょっとね 喉 乾いちゃってね

これ1杯 ちょっと頂きますよ ああ それ 30万円…

うん これマンズワインですね

何を言って… この人 誰よ

この人ね トイレの人でね あっ 小林工務店から来ました

こんちは オバサン オバサン? 何 言ってんのよ

私 まだちょっと 修理が残ってますんで どうも

あなた はっきりさせてよ はい

酋長 こちらジャポンの 有名な映画スターで→

あの… 衣笠不二子さん んー

トレビアーン おー メルシー

えっとね 代表作はですね 「かわいい女は嘘をつく」

そうそうそう そんなことは どうでもいいのよ

分かってる 分かってる えっと 話は硬くなりますけれど

おい おみゃあ顔色青い 病気じゃないかのう

いや 病気かもしれません 何が病気よ

私と一緒に6年も暮らしながら アハハ

とうとう泣きが入ったわね なんだって?

ああ 僕の芸術的立場から 言いますとですね→

このジゴ ダニョー ロティを 食べたあとは→

このジュレ ド マント ミントのゼリーを食べるのが→

いいんではないかと ねえ 不二子さん

え? そういう問題じゃないか ウィウィウィ…

わしゃ ホテルへ帰るけん いや またどうして?

おみゃあ 色男 女のトラブルしゃーないけえ

わしゃな 遠慮しとくわ

しかし… ヘヘヘ おやすみ

セ・ラ・ヴィじゃのう 根本の主人は私ですから

いいえ 私が主人です 腹の底から

僕が主人なんだけどな ウィウィウィ…

いや とてもとても楽しかった

私がお送りしましょう ほんに?

もち六本木のディスコに ご案内いたしますわ

妻の務めですもの 君…

出しゃばりね! (パナポラ)ああ ちょいちょい…

ちょいと待ってくれや 昌平

わしは 若いほうの奥さんと デートするけん 大丈夫よ

それは… ものすごく大丈夫

おお それならば行きましょう セ・ラ・ヴィじゃのう

んー 悔しい!

ああっ

あなたー!

私たちの部屋にまで あの女を連れ込んで

恥知らず!

あー それ 私んじゃない

あの女のね

あの女と何したのよ!

着替えてただけなの パンティーまで?

いや そりゃ誤解だよ 彼女は 君の吹き替えを→

演じてただけなんだから なんで吹き替えが必要なのよ

いや その件については 今度ゆっくりね 説明する…

分かったわ

あの女と2人で→

このうち乗っ取る気ね? 違う

そんなことさせるもんですか

このうちはね 私の稼ぎで建てたのよ

あれ? あれ? そういう言い方はないでしょ

大体 あの女は何よ!

んー いつからの関係!?

関係なんか別にないんだよ ウソおっしゃい なれなれしい口→

利いてたじゃないの! それは演技してただけなんだ

何が演技よ 人をバカにしないでよ!

あのね 不二子ね 僕は君がね 君のことを思って→

もしものことがあっ… うー 近寄らないで汚らわしい!!

あー これも あの女の

いーっ!

んっ!

分かんないかなあ 酋長に パートナーを提供しただけなの

提供? そう

あなた ポン引きなんかしたの?

ポン引き? なんてことを 仮にも僕は→

日本映画監督協会新人賞を 受けた映画監督ですよ

違うの あの これはね 酋長へ お返しをしただけなの

お返し? ああ…

なんのお返しよ あなた そういう借りでもあるわけ?

いや 玄関で あきさんが倒れたままかな?

あなたー!

お疲れさま あっ おかえり

監督さん 私の芝居どうでした?

あれ? 酋長は? 車の中で待ってるわ

ああ そっか 私 ギャラもらいに来たの

あっ ギャラ ギャラね

ああ これ 領収書は?

領収書 そんなのは あとでいいよ

住所は? 藤沢にでも聞いて

とうとう尻尾を出したわね あっ

あなた 売春婦だったのね ちっ ち…

冗談じゃないわよ 私は これでも女優なのよ

芝居してギャラをもらったのよ あとは自由恋愛でしょ

その程度の芝居で ギャラもらおうなんて おこがましい

駆け出し女優のくせに!

おっしゃいましたわね

続くメロドラマ路線専門の 大根女優が!

なんだって? 私は俳優座養成所の→

第16期生ですよ ああ そう

悪いけどね 私はね 監督さんにヒイヒイ頼まれて→

けなげにも あんたの吹き替えを 務めたんですからね

お礼ぐらい言ったらどうなのよ! 僕が悪かった もうごめんなさい

スターだかなんだか知らないけど あんまり のぼせないでよね!

あなた この女を黙らせてちょうだい!

私のドレス 脱いでちょうだい! おー ノンノンノン

あんたにはもう 似合わないけんのう

お黙り! あっ 酋長さんのプレゼント

ふざけないでよ! あら どうして?

これは私のために 持ってきたのよ

バカみたい 私のためよ どうして?

根本の妻は私ですよ

受け取ったときは私が妻よ ねっ ああ そう

あんときは そうだったの そんなこと認めるもんですか

法律的に結婚してるのは 私なんですから

監督さんは後悔してるみたいよ 「早まった」って

そんなこと言ったの?

違うの それ 言葉のアヤなの 不二子 いや あの…

僕は あくまでも結婚一般論をね… 悔しい

みんなで よってたかって… 違うの

私をなぶり者にして

吹き替えなんかいらないわ

酋長さんに言ってちょうだい

吹き替えも前張りもなし 私が お相手をいたします

何を言ってるの ねえ

私は国際親善のために 犠牲になりますわ

そして 3日たったら→

3日たったら毒をあおって→

死にます

あっ 不二子 落ち着いて ねっ

フンッ まるで 出来損ないのクレオパトラね

ああ… シェークスピアを侮辱する気?

じゃ 尊敬する人は? 愛と演劇に殉じた松井須磨子先生

あっ ダメだ こりゃ 心配ご無用

酋長はね 中年女には興味ないんですって

南の島では30過ぎたら おばあちゃんなの 引退なのよ

ああ… 私が おばあちゃんだって言うの?

引退興業だって言うの?

だから 監督さんは 若い私に 吹き替えを頼んだんじゃない?

違う それは違う 全然違う

あっ それ フォアグラ フォアグラ

ダメダメ それ フォアグラ

んんっ

悔しい! ♪(小林)ティリリ

ああっ

わお やあ

わおわお わーお

わおわお わおわお

わお 終わったの?

お疲れさま ごちそうさま

あれ? これ ルコントですね これね

・(クラクション) 酋長さんが呼んでるわ

ああ 行くの? 消えるのよ チョウは

逃げ出してもいいんだよ 酋長には僕から→

あとで謝っとくから 大丈夫

それにもう感づいてるみたいよ 酋長さん

んん? 行くわ さよなら

やっぱり酋長と?

楽しまなくっちゃ 夜は長いんだもの

私 まあまあだった? うん 楽しかったよ ありがとう

2人の変わらぬ愛のために

サラサラ サラサラ

では 衣笠不二子さん

いずれスクリーンの中で 勝負しましょう バイバイ

ああ 私のハンドバッグ

ああーっ! ああっ!

ごめんなさい

ああっ

バキューン

あーっ あーっ…

・~

ああ ああ…

あーっ

ザッツ ミー

もうイヤ

・~

・~

・(ビルマの鳴き声)

・(小林)うわーっ!

・ ズボンが! ズボンが!

♪(クラブのBGM)

♪~

ハハハ ちーと待ってや 行こ行こ

・~

・~

・~

こんな惨めな気持ちは 生まれて初めてよ

あなたも大したもんね

国際的プレイボーイってわけね

酋長の奥さんって 美人だった?

・~

♪(パナポラ)まっ まっ 待ってくれや

♪ セッ セッ セ・ラ・ヴィじゃのう

♪ まっ まっ 待ってくれや

♪ セッ セッ セ・ラ・ヴィじゃのう

♪~

僕たちも これまでだね

君が怒るのも当然だもの

夜が明けたら 僕は この家 出ていくよ

白々しい えっ?

私が炊飯器のコマーシャル やってること知ってるわよね?

あれは 理想的な主婦という設定なの

スポンサーとの契約事項に→

契約期間中は 離婚できないことになってるのよ

へー そう

何が 「へー そう」よ

あなたは それを知ってるはずよ

知ってて出ていくなんて お芝居をしてるんだわ

そんなことはない 俺は本気だよ

・

もしもし

藤沢さん?

♪~

あっ ええ それは ごもっともなことです はいはい

しかしですけどね はい はあ

いえいえ そのとおりでございます はい

あのー ですけど あの 昌平から 全てお聞きになりました?

はあ いや いやいやいや 実はですな はい

ええ

はあ?

はあ

はあ はあ

はあ~

はあ

はあ はあ

そうなんですよ はいはい はあ はい どうも そう そうです

はい 失礼いたします はい どうも ごめんくださいませ

はい どうも

ハァ チェッ 昌平のヤツ 何やってもドジりやがって

あいつの演出 俺の台本 何でも→

メチャクチャに しやがるんだ チェッ

ああっ チクショウ

ったく ああっ ああっ!

♪

♪

・~

あなた さっき出ていくって言ったわね

うん だから悪いけれど CMのほうは なんとか契約変更

そうね で どっから出ていくの?

どっからって?

まさか いつも出入りしてる 勝手口からじゃないでしょうね?

え? 仮にも一家の主が→

勝手口から出ていくなんて みっともないものね

分かったよ 玄関から出てくよ 今度は

何 言ってるのよ うちを出ていくのに→

玄関から出てくなんて 世間の目ってものがあるのよ

「微笑」に載るかもよ

じゃあ どっからも 出ていけないじゃないかよ

出ていけないんなら→

しばらくいれば? え?

そのかわり 私の言うこと何でも聞く?

何それ 朝ごはん 納豆食べたい

えーっ

それから さっきの女の子

ああ あれは だから アルバイトに雇った→

ただの劇団の子だって 一晩中 一緒に→

星を数えていたいと 思っただけなんでしょ?

え? あなたの好みのタイプよね

分かってるのよ

ホントに 星を数えていただけなの?

このワルがっ

アイタッ 大丈夫? 見せて

大丈夫じゃない ホントに痛い

冷やさなくちゃ

あら?

ああ

スリーズジュビレ

・~

(藤沢)ん?

あらあらあら…

・~

・~

ライターっつうのは 火をつけるだけかいのう

フゥー

(あき)停電かしら

・~

・~

・~

甘い

(ビルマの鼻息)

・~

・~

(レジのスキャナー音) 青果

(レジのスキャナー音) お菓子

酋長さんから メッセージがあるの

メッセージ? うん

私のこと フィフティー・フィフティーだって

フィフティー・フィフティー?

そう ノーラもピンチヒッター とかって言ってたわ

ねえ そんな名前の野球選手いた?

(レジのスキャナー音) 青果

(レジのスキャナー音) 保存

(レジのスキャナー音) お菓子

(レジのスキャナー音) 鮮魚

(レジのスキャナー音) 青果

ん?

それ 買ったんじゃないよ え?

僕からのプレゼント

え? 何かしら

開けていい? うん

・~

ポワソン・ダブリルだよ

・~

わお

(パナポラ)セ・ラ・ヴィじゃのう

(男性) <ポワソン・ダブリル 四月の魚>

<エープリルフールの ウソから出た真実>

<人生には時として 粋な神様の演出があります>

<根本昌平監督は 不二子夫人と テレビのお料理番組に出演>

<仲のよさが評判になり レギュラー番組の司会を担当>

<羨ましいですね>

いってきまーす

<一方 万里村マリさんは→

パナポラ酋長から アラニラ島へ招待され→

島での体験をつづったエッセイ→

「太陽にいちばん近い島」が ベストセラー>

<近く映画化されるという 噂もありますが→

これまた羨ましいですね>

(スタッフ) すいません お待たせしてます

監督 お願いします そろそろ いこうか

(ビルマ) 《うめうめ こりゃ うめえや》

よーし じゃあ 本番いこうか

(助監督)本番いきまーす (スタッフ)本番いきまーす

マリ アラニラ島の空は青いよ

元気で行ってこいよ はーい

よーい

(せきばらい)

スタート!

・「POISSON D’AVRIL」

・~

・~

・ 目をふせて

・ 少しだけ 笑って

・~

・ 虹色の 風を 見つめた

・ Ile sont porte’s par les vents

・ Qui nous viennent des iles

・ Tous ces parfums que souvent

・ Nous trouvons inutilrs

・ Si je mets de temps en temps

・ Un poisson sur le grill

・ J’aime surtout le printemps

・ Pour son poisson d’Avril

・~

・ 遥かな時を とびこえる

・~

・ あの頃、 僕は夢を見た

・ 四月の夢よ

・ このまま覚めないで…

・ 目をふせて

・ 少しだけ 笑って

・~

・ 虹色の 風を さがした

・~

・ C’est une vague d’un temps

・ Ou j’habitais la lune

・ Qui reviens de temps en temps

・ Et m’evoque les dunes

・ D’ou je guettais nez au vent

・ J’etait si loin de svilles

・ Le petit reflet d’argent

・ De mon poisson d’avril

・~

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