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あれ? ナカちゃんさん まだ 電話してるんだ?
僕らが サウナに入る前からだから もう 1時間以上ですよ。
サウナにも入らないで 誰と 電話してるんだろ?
赤井くん 赤井くん! (赤井)はい?
ちょっと ちょっと ちょっと…。
ナカちゃんさんの電話の相手 誰?
あ~ チラッと 女性の声 聞こえましたけど。
女の人!? (赤井)はい。
マジで!? (赤井)はい。
おい 100円 あげるから 盗み聞きしてきて。
わ… わかりました。 だめですよ!
なに 考えてるんですか 2人とも。
(せきばらい)
(ナカタ)はぁ~ ふぅ~。
あの ご注文は?
ああ ごめん…。
食欲が ないから ウーロン茶だけでいいや。
あっ はい。
あぁ…。
食欲 ないそうです。
ああ…。
食欲がない 相手は 女性。
ってことは… ナカちゃんさん 恋じゃないか?
恋? うん。
あの感じだと 悲しい恋かもしれない。
好きになっちゃいけない人を 好きになっちゃった的な?
えぇ~!?
確かに いつもより 物憂げですね。
うん…。
はぁ~。
ナカちゃんさん 何が あったのよ?
偶然さん… 蒸し男くん…。
話してみてよ。 相談に乗るよ!
じゃあ… ちょっと 聞いてもらっていいですか?
相手 誰?
取引先の 女性なんですけど…。
ううっ…。
泣いてる…。
ホントに 悲しい恋?
でも やっぱり 恥ずかしいんで いいです…。
今更 何が恥ずかしいのよ~。
お互いの裸は おろか➡
お尻の穴まで 見せ合った仲じゃな~い。
誤解を生む言い方 やめてください。
でも… ホントに大丈夫です。
ん~ もう 水くさいなぁ!
掃除してない 水風呂くらい 水くさいですよ~。
ナカちゃんさん 悩みは 話すと 半分になるって言いますから。
ありがとう…。
じゃあ 正直に言います。
はい。
さっきの電話➡
決まりかけてた仕事が 白紙に なっちゃって…。
聞いてくれるって 言ったじゃないですか。
仕事の悩みでしょ? 全然 つまんない。
一瞬でも 恋だと思った自分を 恥じてます。
恋!? ねえ 何の話ですか?
これ 切実な問題なんです!
今回だけじゃなくて 去年のコロナから➡
もう 相当 俺 影響 受けちゃって…。
そんなの 私の会社だって おんなじ。
今 営業車 廃止になって➡
みんな レンタサイクルで 外回りしてるんですから。
偶然さんの会社 大丈夫ですか?
はぁ~あ…。
もう その ため息つくの やめてくんない?
ため息を 一つ つくたび➡
水風呂の温度が 1度 上がるんですから!
はぁ~ あ~ あ~ あ~。 はいはい はいはい はい!
水風呂 今 もう 23度になりました。
もう ぬるま湯です! すみませんね 暗くしちゃって。
はぁ~。 大丈夫ですか?
ここんとこ 仕事で トラブル続きで。
この間も 朝から 取引先と もめちゃって…。
そういうときは サウナ!
だから 行ってきましたよ 錦糸町 黄金湯。
(タムラ)ちょっと イメージと違うかなぁ。
違いますか? (タムラ)うん…。
うち ただでさえ 地味な会社だから➡
ホームページに載せる イラストくらい 明るくポップに したいんですよ。
なるほど…。 うん…。
でも 社長 前回の打ち合わせでは シックな感じが いいって…。
言いましたけど➡
言ったとおりに描くだけなら うちの娘でも 描けますよ。
あなた イラストレーターでしょ? はい…。
プロでしょ?
じゃあ… 俺を超えてくださいよ。
お願いしますよ。 はい…。
そこの社長 二代目なんです。
前の社長さんと違って あたりが きつくて…。
ん~ そういうタイプか…。
俺を超えろって そもそも お前を 知らないっつうの!
そういう 理不尽なことは よく あるよな~!
しかも 急に 締め切り 早められて 徹夜で 仕上げたんです。
メールで送って 寝ようかなぁと思ったら➡
朝一番に 呼び出されて…。
<マズい… 今すぐ サウナに行きたい。
池袋かるまるなら 電車で 30分。
新橋アスティルなら タクシーで 10分。
いや でも この時間だと➡
まだ 開店前のところも多いな…>
んっ? 朝から やってる。
<サウナ激戦区 錦糸町。
この街に 朝から営業している➡
銭湯サウナが あるという。
黄金湯。
看板は 年季 入ってるけど➡
外観は ハイセンス>
≪いらっしゃいませ こんにちは…。
はい。
♬~
<誰の名前だろう?>
木札とチケット お預かりします。 はい。
はい ありがとうございます。
入り口 右手のほうに なっております。 はい。
ごゆっくり どうぞ~。
< すごい清潔感>
< なんだ? お~ って>
< きれいだけど ザ・銭湯 って感じのつくりだな>
< まずは 体を清めて…>
< お湯の種類 充実してる>
♬『そなちね』
<浴室に 音楽が流れてるって 珍しいな>
♬『そなちね』
< おっ… 壁画か…。
変わってる>
あの壁画は 『きょうの猫村さん』の ほしよりこさんが➡
描いたんですよ。 あっ そうだったんだ。
うん。 んっ? 猫村さん? 誰? それ。
えっ 知りません? 猫が 家政婦さんの漫画。
猫が 家政婦? なに? それ ドラえもんじゃない。
じゃあ 今度 漫画 貸します。
でも あれ 不思議な壁画だったな~。
子どもが産まれて 成長して➡
そのあとは 女湯のほうに 描いてあるから 見られなくて。
えっ そんな壁画 あった?
私 何回も行ってるけど 全然 気にしてなかったわ。
あれ あのあと あの子どもが成長して➡
運命の人と 出会うんです。
そして 結婚して 子どもが産まれて➡
親子で 黄金湯に来る… っていう流れになってるんですよ。
へぇ~! うん。 ちょっと待て 蒸し男くん。
その先は 女湯に入らないと 見られないんだろ?
いくら かわいいからって 女湯に入っちゃ だめだろ。
黄金湯は 毎週 水曜日 女湯と男湯を 入れ替えるんです。
あ~ なんだ そういうことか。
じゃあ 今度 水曜日に行ってみます。 うん。
あの 壁画だけじゃなくて➡
設計は 有名な建築家が 手がけたり➡
あの のれんのロゴとか看板とか➡
有名なアーティストが 手がけてるんですよね。
うん すごい おしゃれだったよ!
でも あそこは なんといっても サウナが いいんだよね!
そうなんです。
正直 侮ってました。
<サウナは… ここだな>
< なんか 秘密基地みたい>
♬~
<100度>
< んっ? これは ヒバの木かな?
いい香りだ>
(オートロウリュの作動音)
<オートロウリュ。
灼熱のサウナストーンに 水が はじける音>
(水蒸気になる音)
<三半規管まで 水に 支配されていく…>
<広くて 深い>
<静かな洞窟の中に いるみたいだ>
<コンパクトな作りで 見事な動線だ>
♬~
<日差しが 気持ちいいな~>
あのとき いろんなモヤモヤが 頭の中から 消えてました。
あそこって サウナスペースに 入った瞬間から➡
別世界に なるよね! ええ。
でも どうして サウナに入ると 雑念が 消えるんですかね?
そりゃ 野生に戻れるからでしょう。
野生に? ええ。
人が まだ サルだったころ 誰もパンツなんて はいていなかった。
本来 そっちのほうが正しいの。
だから 私はね 日頃から➡
みんな 全裸で 過ごすべきだと思っています。
ほう… それは 言い過ぎです。
はい 言い過ぎました。 ええ。
いえ それほど 遠くないと思いますよ。
あくまで 僕の論ですが サウナに入ると 雑念が消えるのは➡
思考から 感覚の世界に 切り替わるからだと思うんです。
ほう…。 どういうこと?
日々の雑務や やるべきことの 意思決定。
更には ミスを犯したり 嫌なことを 言われたり…。
一日の ほとんどは 頭の中の 思いや考え➡
つまり 思考の世界にいます。
でも サウナに入ると…。
あっ 「熱い」 「冷たい」 「気持ちいい」だけの➡
「感覚」の世界に 切り替わる?
そうです! おお~。 余計なことを考えることが消え➡
今 この瞬間に 気持ちが フォーカスされるんです。
はぁ~ わかる。
そういえば 子どものころ ケンカして 泣きながら 家に帰ったとき➡
おふくろが 口の中に 甘い卵焼きを入れてくれたんです。
それで 一瞬で 泣きやんじゃって…。
まさに 思考から 感覚に切り替わったからです。
フラれたとき うまいすしを食べたら 元気になったのも そうか。
うん 食だけじゃなくて➡
いい景色を見たり 美しい音楽を聴いたり➡
あと スポーツも いいでしょう。
感覚の世界に浸ると➡
生の喜びのようなものを 思い出すんです。
なるほど。
だから あの日の黄金湯も…。 んっ?
(田中)徹夜明けのサウナ 最高だな。 (藤吉)そうすね。
しかし 俺らが 必死に プレゼン資料 あげたのに➡
課長 お疲れも言わなかったな。
それどころか その資料 自分が作ったって➡
上の人に 言ってましたよ。
(田中) なんか モチベーション だだ下がり。
(藤吉)そうっすよね… 自分が 徹夜しろって話っすよ。
(田中)なあ。
俺を超えてくださいよ。
それで 全然 集中できなくなっちゃって。
感覚から 強制的に 思考の世界に 戻されちゃったんですね。
あるある そういうこと。
彼らの気持ちも わかるんです。
私だって イライラして サウナに 逃げ込んだんだから。
今 それは ちょっと つらいですね…。
ただ それで 終わりじゃないんです。
いやいや いやいや いや…。
そんなこと ないでしょ。
なんか 俺 あの人だけは勘弁…。
♬~
< うん いい感じ>
(田中)前回のミーティングも そうだっただろう?
(田中)俺が出した アイデア 自分が考えたみたいにしちゃって。
(藤吉)ありましたね。
(田中)あの人って マネジメント能力不足っていうか➡
そもそも キャパオーバーなんだよ。
フッ 向いてないんじゃないっすか?
今更?
<気にしないように すればするほど➡
話が 耳に入ってくる>
(藤吉)言ってくださいよ。 (田中)俺が?
(田中)マジで 言おうかと思ったよ。
< もう 限界だ…>
(オートロウリュの作動音)
< あの瞬間 私たちは➡
思考から 感覚の世界に 切り替わった>
♬~
< ととのった~>
<2人:ととのった~>
すみません オロポ ください。 はい。
<昼から ビール うまいんだろうな>
< んっ?>
お風呂で 流れてる音楽って ここから 流してるんですか?
はい そうです。 あっ そうなんですか?
はい。 へぇ~。
こちらの 経営者の方? はい。
あっ そうなんですか。 はい 主人と一緒に。
あっ ご夫婦で? はい。 そうですか。
あの すごく いい銭湯でした。
あっ ありがとうございます。 最高でした。
ここって 経営されて どのくらい たつんですか?
3年 たちます。 3年? はい。
それまで なに やられてたんですか?
あっ 我々 夫婦で あの 近くにある➡
大黒湯 っていうところを➡
親から 継がさせてもらって やってました。
あっ そうですか。
突如 父のほうが 病で倒れてですね➡
ホント 右も左も わからない状態で 継がさせてもらったんです。
大黒湯 やって 黄金湯 やって?
はい あの~ ちょうど ここの 前オーナーさんが➡
ご高齢ということで➡
店を閉じるということを 聞いたんですね。
そのときに あの~ どうしても➡
銭湯を残したいっていう 考えになって➡
引き継がさせてもらいました。 あっ そうなんですか。
あっ 1個 聞いていいですか? はい。
あの 木札の裏に 名前 書いてあったんですけど➡
あれ 誰の名前なんですか?
クラウドファンディングを やりまして➡
そのときに ご支援していただいた方の➡
お名前になります。 あ~ クラウドファンディングで➡
ここを やられたんですか? はい そうです。
あっ いいですね。
ご主人は もともと 違うお仕事を されてたんです。
だから 銭湯を継ぐときには なかなか 大変だったみたいで…。
そんなこと言ったら ナカちゃんさんに ダメ出しした➡
取引先の社長も 後継ぎなんでしょ?
ん… まぁ… そうですね。
その人は その人なりに➡
親の後を継いで 必死に やってるんじゃないの?
コンサルしてても 事業承継のトラブルは 多いですから。
まあ 特に 経営者の方は 今は コロナで大変だと思いますよ。
みんな 立場は違っても➡
それぞれ 必死に 闘ってるってことか…。
あれ? 急に 悩みが晴れました。
あっ 確かに いつもの表情に戻りましたね。
ホントだ。 笑いジワ 復活してる!
(笑い声)
なんか サウナ 入ってないのに ととのっちゃった。
(笑い声)
じゃあ もう一回 ととのいましょうよ。
おっ いきますか。 いきますか!
いきましょう…。 あっ そういえば!
黄金湯で もう一つ。
あっ…。
ミロ 来てたんだ…。
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