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牛バラ肉の 赤ワイン煮込みでございます。
あっ!? (グラスが割れる音)
大丈夫ですか? おケガは ありませんか?
(三舟/志村)失礼いたしました。 あ~ もう…。
はい。 君が➡
テーブルのギリギリに ワイン 置くから こんなことになるんだぞ。
ほら! あっ いえ 私は➡
テーブルの中央に 置いたと思うのですが…。 ほら!
いや ぬれてますか? はぁ?
おう 俺が ウソを言ってるとでも言うのか!!
あっ いえ あの…。
ただ お客様が 飲まれたあとに➡
あの こちらのテーブルの端に 置かれたのを➡
お忘れに なられたのかと…。 なに?
まあ…。 (せきばらい)
まあ いい。 謝れば 許してやる。
いえ… していないことで 謝ることは できかねます。
なんだと!? お客様!
たいへん 申し訳ございませんでした。
どうしてくれんだよ ビショビショだよ…。
あぁ…。
チクショウ いいかげんにしろ…。
たいへん 申し訳ございませんでした。
僕 ホントに テーブルの真ん中に 置きました…。
知ってるよ。 えっ?
じゃあ なんで 志村さん 謝ったんですか?
お客様が それを 望んでるからだろ。
やっぱり おかしいと思います。
やってもないこと 謝るなんて…。
ああ すみません…。
気にすんな。 はい…。
すみません お会計 お願いします。
はい かしこまりました… 南野!?
はい そうです お久しぶりです。
お~! おっ 三舟シェフ!
南野ですよ 南野!
お願いします。 はい。
あれ? 全然 驚かないんすね 南野なのに。
えっ 気付いてたからなぁ。 さすが すごい観察力。
店に入って すぐに 声をかけようとしたんですけど➡
忙しそうだったんで 先に 食事を させていただきました。
あ~ 三舟シェフと志村さん お知り合いなんですね。
うんうん。 3~4年前までかなぁ➡
俺が フランス修行 終えて➡
日本に帰ってきて 働いてた店で ずっと 一緒だったんだ。
そこで僕 見習いをしてまして。 はぁ~。
あっ 志村さんとは? あっ 俺はね➡
その店の料理が 気に入って よく 通ってたの。
で そこで 三舟シェフと出会って 南野とも 出会って…。
ふ~ん そうなんですね。
懐かしいなぁ!
今日は ご報告しにきたんです。 (志村)んっ?
実は 僕 とうとう 店 出したんですよ。
(志村/三舟)えっ? ル・ヴァンテアン っていうお店で➡
ここから車で 10分くらいの場所です。
へぇ~。 へぇ~。
あ~ おうおう 今度 食べにいくよ。
ありがとうございます。
2か月前に オーナーシェフとして 店を出したんです。
バタバタしていて 結局 報告が 今になってしまって。
へぇ~ その若さで オーナーシェフか。
誰か 出資してくれる人でもいた?
まあ… そうです。 へぇ~。
こちら お返しになります。 はい。
ありがとうございます。
じゃあ このあと あるので また ゆっくり来ますね。
じゃあ また! 頑張れよ。 ありがとうございます。
ごちそうさまでした。
ありがとうございました。
今度 僕も お店に おじゃまさせてください。
ここには 負けない料理を 提供しますよ。
はい…。
料理人としての プライドです。
ありがとうございました!
プライド…。
<ランチを終え ディナーの準備が終われば➡
オープン時間までの間は➡
僕は 特に やることはない。
こういうとき 気付いたら してしまうのが➡
スマホを 手にし SNSを 見てしまうことだ。
この パ・マルにも いろいろな SNSがある>
んっ?
なんだ? これ…。
ちょっと これ 見てください! なに? なに?
パ・マル… 最低だった!?
ラタ・トゥイユ… 食べられたものじゃない!
なんだ? これ! ちょ これで この 文句 返してやるから➡
どうやって どうやってやるの? これ…。
あっ それ それは だめ… それは やめてください。
炎上しちゃうから ちょっと…。 その人は そう思ったんだろ。
んっ? え~ それだけですか?
どうしたんですか? ちょっ これ 見てよ。
何? この投稿。 ねぇ 腹立つよね! 立ちますね!
なのに 三舟シェフの反応 なに あれ。 逆に シェフに 腹 立っちゃうよ!
あんな おいしい料理 作るのにさ プライド ないのかな!
どうやって やんの? どうやって やんの?
だ だから やめろって だめだってば。 どうやって やんの?
いや えっとね…。 教えるなよ!
書いちゃ だめなんだって。 炎上しちゃうから…。
ちょっ…。 いいじゃんかよ。 なに 言ってんの?
こういうの なくすように がんばんのが アンタの仕事だろ。 静かに!
☎
はい こちら ビストロ・パ・マルです。
はい… はい 松平様。
2名様で 本日 17時半から ご予約 承っています。
はい… はい➡
はい 少々 お待ちください。
志村さん。 へっ?
今日 ご予約のお客様で➡
予約時に言うのを 忘れていたみたいで…。 うん。
ヴィーガン用の食事を 用意してほしいそうなのですが。
うん。 乳製品は だめで➡
白砂糖も抜きで お願いしたいって。 ああ ああ…。
あっ 無理だったら キャンセルしても いいって言われました。
う~ん…。
あと… 1時間20分後ですね。
今から 特別な材料 仕入れるの 無理だしな~。
フレンチの味の基本は バターですからね そんな乳製品 厳しい…。
だめですよね! そのお客様➡
断ったら キャンセルするって 言ってんのか?
はい。 う~ん じゃあ 豆乳 使うか~。
それだと フランス料理じゃ なくなりますよ?
金子 お待ちしております と 伝えてくれ。
わかりました!
<三舟シェフには フランス料理人としての➡
プライドが ないのかもしれない。
その日から 僕は 三舟シェフに対して➡
少し 不信感を 覚えるようになってしまった>
いらっしゃいませ。 (金子)いらっしゃいませ。 どうも。
(志村)いらっしゃいませ。 いらっしゃいませ。
予約してる 松平です。 はい お待ちしておりました。
では こちらへどうぞ。 (松平)は~い。
お待ちしておりました。 こんばんは。 どうぞ。
ありがとうございま~す。 よいしょ…。
高築くん メニューについては 私から 説明します。 はい。
本日は 特別メニューを 用意しておりますので。
(松平) あっ ありがとうございます。
ヴィーガンの方 増えたよね。
あっ… 一句 できちゃった。
どうですか? 感想 教えてください!
≪すみませ~ん! やった! はい!
うわ~。
お待たせいたしました。 (2人)ありがとうございま~す。
2色のオリーブと マッシュポテトのグラタンです。
マッシュポテトは 豆乳とオリーブオイルで 滑らかにしてあります。
うん。 グラタンは 絹ごし豆腐 もち米粉➡
白味噌とオリーブオイルで ホワイトソースを 作っています。
あぁ… いただきます。 いただきま~す。
どうでしょう? おいしい! おいしいです!
よかったです。 う~ん!
もともと お肉って そんなに 好きじゃなかったし…。
あっ 今 インスタとかで よく セレブが➡
グルテンフリーとかヴィーガンとか 言ってるでしょ? うん。
<健康とか 環境の理由ではなく➡
単に はやりに乗っただけ…。
こういう方は きっと すぐに それにも飽きて➡
次のはやりに 乗っかるのだろう>
あそこのテーブル どんな関係ですかね?
う~ん… 友達にしては 年が 離れてる気がするし➡
親子って感じでも ないよね。
女性同士でも カップルかもしれないし。
あ~ その可能性は 考えてなかったな…。
好きなもの 頼んでいいわよ。
これも 勉強だから。 ありがとうございます。
勉強 って言ってるから ソムリエか料理人かな?
にしては 若い人のほう 少し メークが濃いな…。
香水も つけてたし。 んっ?
ソムリエや料理人は 嗅覚が 大事だから➡
化粧をしても 薄化粧が ほとんどなんですよ。
ふ~ん そうなんだ…。
(塚本)これ スープ・オ・ピストゥですよね?
はい そうです。 実は 私たち➡
フランス料理を 食べるようになった きっかけが あるんです。
きっかけ? (塚本)そう。
ル・ヴァンテアンって 知ってますか?
あっ 店には 行ったことありませんが➡
知ってますよ。 お父さん ル・ヴァンテアンに➡
出資も してるんです。 うん。
(松平)そこの スープ・オ・ピストゥ ホントに おいしいんですよ。
(塚本)うん。 ル・ヴァンテアンの 南野シェフが➡
いっつも 言っていて うちのピストゥは➡
フランスの伝統のピストゥ だって 自慢らしいですよ。
ほ~う。 (松平)すっごい ピストゥだよね。
(塚本)すごいよね~。 うん。
こちらも フランスの伝統の ピストゥですよ。
じゃあ いただきま~す! いただきま~す。
どうぞ ごゆっくり。
同じ料理なのに➡
ル・ヴァンテアンのほうが 風味が もっと あった気がするよね。
(塚本)ホント それ。
やめとけ。 (松平)間違えちゃったのかな~?
祖母が かなり 体調が悪いんで➡
3日くらい 実家に帰りたくて…。
わかったわ。 ありがとうございます。
ただ…。
両親と あまり 折り合いが よくなくて➡
もう 5年くらい 実家に 帰っていないんです。
帰るのも すごく 気まずいんですよね…。
両親とは 何か あったの?
ここの お店の料理 おいしいですね。
フフッ そうね。
やっぱり このお店の味…。
どうしたんですか? ちょっと 知ってる味に似てて…。
大きい人…。
邪魔… ちょっ…。
すみません。 はい。
ここの シェフのお名前 聞いてもいいですか?
ええ 三舟忍です。
三舟くん!? やっぱり!
えっ? あれ!? アハハハ…!
鈴子さん!
<三舟シェフと 羽田野様は➡
15年前に フランスのリヨンで➡
一緒の店で 修行していたらしい。
それ以来の 再会みたいだ>
まさか 三舟くんと 再会するとはね~。 ええ。
で 鈴子さん 今も 料理人を?
今は ちゅう房に入ってないの。
腰を痛めてしまってからは 立ち仕事は もう できないわ。
あぁ~。 その代わり➡
今は フレンチレストランを経営してるの。 えっ?
彼女は そこで働いてるパティシエよ。
岸部彩香といいます。
三舟忍です。
今度 よかったら食べにきて。 はい。
えっ!? 3軒も 経営してんですか!?
料理人より そっちの才能があったみたい フフッ。
1軒目の Viandeは…。 ありがとうございます。
肉料理に特化した ビストロなの。 ありがとうございます。
2軒目 Signeは ゴージャスなコース料理を提供する レストラン。
で 去年の秋に開店した 3軒目の カミヨネットは➡
従業員が 全員 女性なの。 へぇ~。
3軒とも 全く違うコンセプトで お店を出してるんですね。
従業員が 全員 女性っていうのは これまた 特徴的ですね。
岸部さんは その カミヨネットで働いてもらってて➡
彼女の作るマカロンは なかなかのものなのよ。
あぁ 鈴子さん デセール あんまり 得意じゃなかったですもんね。
まあ! よく そんなこと覚えてるわね~!
あの~ それまでは➡
どこか 別のお店で 働いてたんですか?
大帝国ホテルで 働いていました。
それって 老舗ホテルじゃないですか!
あそこは 厳しいから スタッフの入れ代わりが激しいって➡
聞きますよ。 そうなんですよ。
女性では なかなか 体力的にも厳しくて➡
辞めてしまいました。 (志村)あ~ そうなんですね~。
よかったら どうぞ。 フフッ ありがとう。
いただきます。 はい。
もう 閉めちゃってくれ。 はい。
よいしょ…。
あの~ どうしました?
(羽田野)岸部さんに 言わなきゃいけないことがあるの。
(岸部)はい なんでしょう?
前に 店の従業員みんなで 相談して決めたんだけどね➡
香水は つけないでほしいの。
それと メークも 仕事中は禁止。
やはり においが気になるし アイシャドーの粉なんかが➡
料理の中に入ってしまうと 困るから…。
そう… ですよね。 ええ…。
言わなくても 働き始めたら みんなの姿 見て➡
気付いてもらえるかも って 思ったんだけど…。
これからは お願いね。
わかりました… 気をつけます。
あっ 別に 怒ってるわけじゃないのよ。
そのことは ちゃんと伝えなかった 私も悪いんだから。
だから 次から… お願いね。
(志村) お待たせ~ 今日は ムサカです。
えっ おいしそう!
食べましょう! よっし!
よいしょ~。
いただきま~す! (3人)いただきます!
あ~ うまい! うん。 めちゃくちゃ おいしい!
うんうん。 あとで 作り方 教えてください。
え~。 う~ん。 いいよ!
なんだよ? 変な顔だ…。
変な顔 って言うな。 (ドアが開く音)
う~ん!
あっ すみません 今 休憩中で…。 あっ ちょっと 食べててくれ。
また あの人だ。 あっ うん。
冷めちゃうから 食べちゃおうぜ。 そうですね。
志村さん。 んっ? 賄いって➡
わざと フレンチじゃないものに してるんですか? だめ?
おいしいですけど…。 うん。 だって 飽きちゃうだろ?
あっ 水 出すの忘れてた。
確かに。 いっけね!
なあ 放置すんなよ。 さみしくなるだろ。
三舟シェフは 毎回 和食ですよね?
⦅いつも フランス料理 作ってると 他のを 作りたくなんだよ⦆
こだわりを 感じないよね。
三舟シェフも 飽きないように してるんですかね?
いや~ 単純にさ 三舟シェフはさ➡
プライドとか そういうの 持ってないんじゃないの?
SNSの件も そうだしさ。
⦅その人は そう思ったんだろ。 え~!?⦆
やっぱ おいしいな~。 今度 作ってあげよう。
絶対 喜ぶだろうな~。
(志村)ごちそうさまでした~。 ごちそうさまでした~。
ムサカって名前の由来 知ってる? 知らないです。
人の名前じゃないよ。 人じゃないんですか?
誰なんですか? 人じゃねえって。
では 引き続き よろしくお願いします。
また 連絡いたします。
はぁ~。 (ドアの開閉音)
誰なんですか? あの人。
何度か 来てますよね?
探偵だ。 探偵!?
どうして 探偵を?
人を 捜してるんだ。 三舟シェフがですか?
ああ。 どなたを?
おやじだ。
お父さん…。
フランスに 修行に行ってるころに 失踪したんだ。
ごちそうさまでした。
あっ 洗っときます。 あぁ すまん。
んっ? また グラグラすんなぁ…。
修理しなきゃな…。
見つかりそうなんですか?
かなり前から 捜してもらってるけど➡
一切 手がかりなしだ…。
<知らなかった…。
三舟シェフの お父さんが 失踪していたなんて…。
ディナーも 無事に終え 店を閉め➡
後片づけを しているときだった>
三舟くん ごめん。
ちょっと 相談したいことがあるの。
いいかな? どうしたんですか? あぁ…。
これが 岸部さんから 送られてきたの。
彼女は これを うちの店に送ってきて➡
そのまま いなくなっちゃったの。
どうして 急に いなくなってしまったのかしら?
あの~。
あの… この間 来られた日の 次の日に➡
偶然 駅でバッタリ 岸部様と お会いしたんです。
ああ そう言ってたな。 そのときは➡
ショートカットのウイッグを つけられていて…。
ウイッグ ですか? ええ。
まあ 少ししか お話しできなかったんですけど➡
まあ ウイッグは ファッションで➡
たまに つけられると言ってました。
だから 特に変わった様子は なかったと…。
そうだ! あの そのとき➡
明日から 実家に帰るって言ってました!
それは 聞いてるわ。 はぁ…。 おばあ様が 具合が悪く➡
最後に会いたいと 相談されたから➡
だから 3日間の休暇を あげたの。
でも そのあとから 連絡が取れなくなってしまって…。
送られてきたのは これだけですか?
ああ カードが 1枚 ついてたわ。
もしかしたら…。
もしかしたら…。 (金子)何か わかったんですか?
ああ いや…。
あっ で➡
その 岸部様の ご実家には 連絡されたんですか?
ええ 番号 知らなくて…。
だから 前に 岸部さんが働いていた➡
老舗ホテルに 電話はしたの。
実家の番号を 知ってるかも と思って…。
どうだったんですか? それが➡
岸部彩香は 過去に働いていない と言われて。
働いてたことは ウソだったってことですか?
どうだろう…。
ただ そのホテルの 製菓部門で 働いていた人の中に➡
岸部 という名字の 男性は いたみたいなんだけど…。
男性か…。
その人 どんな人だったか 聞きましたか?
きゃしゃで 女性的な容貌と しぐさの人だ って言ってました。
鈴子さん。 はい?
その 岸部という方が➡
この前 一緒に来た 岸部彩香様かもしれません。
もしかしたら 岸部様は➡
トランスジェンダーなんじゃ ないでしょうか?
はぁ?
トランスジェンダー。
出生時に 割り当てられた性別とは➡
別の性自認で 生きる人 ってこと?
彼女は 男性として 育てられたけど➡
女性として➡
生きようとしてるのでは ないでしょうか?
岸部様は 伝えたかった…。
彼女は 老舗ホテルで働いていた。
そして 料理業界は➡
まだ マッチョイズムのようなものが 根強く 残っている。
⦅おい 岸部 お前 なに ちんたら やってんだよ。
仕事中は 帽子かぶれ って 言われてんだろうが! はい⦆
だから 老舗ホテルでの仕事は 彼女にとって➡
苦痛なことが たくさん あったのかもしれません。
そして 彼女は あるとき 限界になった…。
そこで 彼女は 女性スタッフが集まる カミヨネットで働くことにした。
⦅ねえ! 新作のケーキ 試してみようと思うの。
どう思う? えっ いいじゃ~ん!⦆
その職場は 岸部様にとっては 心地よかった。
自分にとって しぜんな装いで 働き始めた彼女に➡
2つの壁が 立ちはだかった。
1つは 祖母の病気。 高築から➡
鈴子さんたちの テーブルでの会話を 聞きました。
岸部様が 長いこと ご実家に帰られてないこと➡
ご両親と うまくいっていないことを…。
ああ…。
⦅いいか? 考え直せ!⦆
つまり 両親は➡
それを 受け入れてくれないのだと 想像できます。
だから 実家に戻るために➡
ショートカットのウイッグを つけていたのかもしれない。
もう1つ あの日 彼女は➡
仕事中に メークをしてはいけないと 鈴子さんに言われた。
⦅そう… ですよね⦆
あの香水もメークも 彼女にとって➡
女性としての実感を 得るものだったのかもしれません。
三舟くんは いつ 気付いたの?
このマカロンを 見たときです。
マカロン? 日本で よく知られてるのは➡
オレンジやピンクなど かわいらしいパステルカラーで➡
壊れやすそうな 繊細なお菓子です。
でも これは マカロン・ダミアン。
ピカルディ地方の アミアンという街で 焼かれている マカロンです。
ピカ… ピカルディ地方➡
ピカルディ地方の アミアン… アミアン?
アミアン 載ってないから。
マカロンっていうのは いろんな種類が あるんですね。
フランスの地方菓子には いろんな種類のマカロンがある。
でも 今の日本で知られてるのは マカロン・パリジャンだけ。
着色して 香りをつけた 美しいお菓子だけ…。
これは 女性の状況に 似ていると思いませんか?
美しく装った女性だけが➡
女性であるかのように 存在している。
マカロンは マカロンなのに…。
マカロン・ダミアンは マカロンだ。
世界には いろんなマカロンがある。
これは 彼女のメッセージです。
マカロンは… マカロン…。
女は 女…。
みんな 同じ女…。
もしかすると 戻ってこられないのは➡
家族と もめているからかもしれません。
もうひとつの不安としては➡
戻ってきたとしても➡
居場所が あるかどうか わからない。
言ってくれれば よかったのに…。
言えないくらい➡
これまで 傷つけられてきたのかも しれません。
そうね…。
大切なのは 女性だけのお店とか➡
男性だけのお店を 作ることよりも➡
お互い 尊重し合える人同士で➡
お店を 作っていくことなのかも しれないな~ って➡
私 思うんです。
三舟シェフも 志村さんも➡
私が 同性愛者だということを 知っても➡
何も変わらなかった。
何か あったら なんでも相談してほしい って…。
違いますかね…。
いいえ そうだと思うわ。
スタッフや料理人が 働きやすい店を作ることに➡
私は 経営者としての プライドを持って やってきた。
なのに…。
留守番電話に 残すわ。
化粧や香水は うちの店に関しては NGだけど➡
あなたは あなた。
おいしいマカロンを 作ってくれるかぎり➡
待ってるわ って。
彼女が 女性だということを 私が守る。
それが 経営者としてのプライドね。
連絡… くるといいですね。
うん ありがとう。
それと 岸部様ご自身が その話題を 出されるまで➡
知らなかったことにしたほうが いいと思うんですが…。
ああ そうだな。
そうね。
岸部さんが戻ってきたら また 一緒に来るわ。
お待ちしております。 フフッ。
あっ… 食べません?
ああ ぜひ!
いいんですか? いただきましょ。
いただきます。 あっ わかった!
コーヒー いれますね。 うん。
羽田野さんは プライドを持って 働かれていて➡
かっこいいですね。
あっ できてるかどうか わかんないけど…。 いえ…。
あの… 三舟シェフは➡
料理人として プライドを 持っていると思いますか?
えっ どうして? いや~。
SNSで 料理の 否定的な感想 書かれても➡
何も 反応しなくて…。
変わってないな 三舟くん。
昔から 言ってたのよ➡
お客様の 味の感想に対しては すべて 受け入れる。
絶対に 否定しない って。 ふ~ん でも➡
最近 プライド あるのかな って 思わされることが多くて…。
三舟くんは しっかり持ってる人よ。
そして そのプライドを➡
どんなときも 見失わない人だと思うわ。
南野さん… あっ 南野さん…。
えっ? 南野さん!
(ドアが開く音)
あっ 南野。 三舟さん➡
あなたでしょう? うちのホームページの コメント欄に➡
これ 書き込んだのは! おいおい どうしたんだよ?
三舟さんですよね? どういうつもりですか?
これですよ しらばっくれないでください。
昨日 うちの店に➡
松平さんと塚本さんが 来店して➡
パ・マルに行ったと聞いて ビックリしましたよ…。
しかも ピストゥの話をしたと 言っていましたし➡
正直 肝が冷えました。 そして 今日です➡
うちのホームページの コメント欄を見たら こんなことが書き込まれていて…。
三舟さんですよね? これ 書き込んだの!
俺は そんなことはしていない。 ウソ つかないでください。
このコメントを あの2人が 見ればいいと思って➡
書いたんでしょ? (志村)なに 言ってんだ お前。
俺がな あの2人に このこと 言おうとしたら➡
三舟シェフに 止められたんだよ!
⦅うちのピストゥは フランスの伝統のピストゥだ って。
やめとけ⦆
そうなんですか…。
俺は こんなこと書いてない。
そうでしたか すみません…。
じゃあ 偶然 誰かが書いたんだな。
これを 松平さんたちに見られたら➡
終わりだから 消しておかなきゃ。 ちょっといいか?
はぁ~。
少し 思ったんだけどな…。 はい…。
俺の 考えていたとおりみたいだな。
ピストゥ… ですか?
ああ…。
僕の気持ち 三舟さんにも わかるでしょう?
もう いいかげん うんざりなんですよ。
出資者の娘だからといって 大きな顔して やって来て➡
やれ 肉は 体質に合わないだの 乳製品は 使うなだの➡
白砂糖は 使うなだの…。 だから ウソをついたってわけか?
ウソなんか ついてませんよ。 最近は 黙っていれば➡
自分たちの 思いどおりの料理が 出てくると思ってますからね。
ちゃんと フランスの伝統的なピストゥです と➡
説明して 出している。 嫌なら食べなければいいんですよ。
素人の彼女らに わかるわけがない。
フランスの 伝統的なピストゥが➡
豚の背脂で 作られてるってことはな。
「この店の スープ・オ・ピストゥは➡
本格的なフランスの 伝統のピストゥで➡
他では なかなか 食べられないものだ。
オリーブオイルではなく➡
ちゃんと 豚の背脂を 使っている」。
だから 松平様たちに 見られたくないって言ってたんだ。
ふだんは うちの店も 豚の背脂を使ってる。
そのほうが ワンランク上の風味が 出るからな。
⦅同じ料理なのに➡
ル・ヴァンテアンのほうが 風味が もっと あった気がするよね⦆
しかし 彼女たちの条件を聞いて オリーブオイルにした。
だけど お前は…。
彼女らは それを 食べたからといって➡
体調を 崩すわけではない。
それに 食べても 気付かないんですよ。
大笑いだ! 大笑いなのは お前のほうだ。
そんな 陰険ないたずらをして それで 気分が晴れるのか?
陰険とは 嫌な言い方ですね。
別に 食べられないものを 食べさせたわけじゃない。
どうせ しばらくしたら➡
普通に 肉もケーキも 食うようになりますよ。
お前は 料理人として➡
決して してはならないことをした!
その人が食べたくないと 思っているものを食べさせたんだ。
そんな 大げさな言い方 しないでください。
彼女らは おいしい おいしいって 喜んで食べてんだから!
料理人は なんでもできる。
前の客の残り物を 使うことも➡
古い食材を 使うことも…。
でも だからこそ➡
それは してはいけないこと なんじゃないのか!
そして それが 料理人のプライドなんじゃないのか!
お前が笑ったのは あの2人の客じゃない。
料理人としての 自分自身だ。
それを 忘れるな。
ラタとトゥイユの間に 点を入れるのは あの店だけだ!
(ドアの開閉音)
確かに そうだった。
お前だったのか あの投稿…。
どういうことですか?
高築くんが見つけた➡
うちの店の 批判的意見を書いた投稿➡
ラタとトゥイユの間に 点が入ってた。 そうでしたっけ?
普通 ラタトゥイユの間に 点なんか入れない。
確かに うちの店も 点は入ってないです。
でも 三舟シェフと南野が➡
もともと働いていた あの店では 料理長の こだわりか➡
ラタとトゥイユの間に 点を入れて 表記していた。
その名残が お前には 残ってたんだろう。
なんで そんなことを…!
この店で➡
久しぶりに 三舟さんの料理を食べて➡
おいしくて…。
近くに 同じフレンチ店を出す者として 怖くなったんです…。
南野さん…。
南野様 うちの店のSNS 見たことありますか?
いいえ…。
これです。
SNSの更新は 私が 担当なんですけど➡
南野様が 店を出したと 報告しにきてくれた 3日後➡
三舟シェフ 初めて SNSで投稿したんです。
「シェフの 三舟です。
昔 一緒に働いていた見習いが 店を出したので➡
昨日 その店に行って 食事をしたが➡
とても美味しく ビックリした!
昔から 思っていたが 彼の腕は 確かだ。
本物だ!
ル・ヴァンテアン 是非 足を運んで下さい。
美味しさは 保証します」。
店に 三舟さんが 来てくれていた…。
お前に 気を遣わせちゃうからって➡
目立たないようにして 1人で行ってきたみたいだよ。
三舟シェフは 南野様のことを 応援してるんですよ。
志村さん 俺…。
すみませんでした…。 俺に謝って どうすんだよ!
ほら まだ 近くにいるはずだから… ほら!
はい…。
<三舟シェフの 料理人としてのプライド➡
かっこよかった。
僕も ギャルソンとしてのプライドを持って 働こうと思った>
私 なんで 志村さんが 三舟シェフの下で働いているのか➡
ちょっと わかった気がします。 僕もです。
まあ あの人は 大事なことは 間違わない人だからね。
大事じゃないことは 間違うんですね。
そうそう そういうのは しょっちゅう… って おい!
おい! おい! うわっ…。 うわって なんだよ?
放置すんなよ。
寒い…。 えっ?
< これからは 食事に来られた方 全員に➡
笑顔で 帰ってもらおう>
俺が 寒いの? うん。 俺が 寒いの? はい。
< そう 心に決めた> (ドアが開く音)
あ~ 南野 もうひとつだけ! あれ? 南野は?
あ~ 今 三舟シェフ追いかけて 出ていきましたけど。
ウソだろ! 南野 コラ~!
謝りたいって 言ってましたよ!
タイミングも 抜群に悪い。 確かに…。
あっ マカロン 食べちゃお! ああ いいよ。
楽しみ ダミアン…。
ダミアン… 僕のダミアン! ごめん!
なんで 食べちゃ… あっ…。
どうぞ って言ったから。 じゃあ 口から出せば?
☎先日は 私の不注意で➡
ワインを テーブルの端に置いてしまい 申し訳ありませんでした。
あぁ いえ またのお越しを お待ちしております。
失礼いたします。
(羽田野) まだ 開いてないですよね?
羽田野様。 三舟シェフ➡
ちょっと早いですけど いいですか? いいよ!
お待ちしておりました いらっしゃいませ。
はい はい ありがとうございます。
どうぞ。 カウンター席へ。
(羽田野)ありがとうございます。
いらっしゃいませ!
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