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(時計の秒針の音)
(徳永(とくなが))山下(やました) 起きてるか?
(山下)うん
(徳永) 昨日の漫才バトル 見たか?
(山下)見たよ 優勝せえへんかったけど
馬油(バーユ)とアロエの漫才が 一番面白かったな
(徳永)お前も そう思った?
(山下)なあ 二人で漫才せえへん?
お前とやったら めっちゃ おもろい漫才できると思うねん
ほんでな 天下 取って フェラーリ 買いたいねん
(徳永)何色の?
(山下)グレーや
めっちゃスピード出したら アスファルトと同化して
カッコええやん
(徳永)お前 アホやな
(山下)ほんで もう1つがな…
(徳永)なんや
忘れたんか?
(山下)う… うん
(徳永)ハハッ…
お前 やっぱりアホやな
(波の音)
(人々が遊ぶ声)
(子供たち)大丈夫ですか?
何やってるんですか?
大丈夫ですか?
おい 大丈夫ですか?
何やってるんですか?
なんで埋まってんですか?
なんでタバコ 吸ってるんですか?
更に顔まで埋まってるし
変だよね?
誰ですか?
おかしいよね
(祭囃子(まつりばやし))
(男性) へい いらっしゃいませ いらっしゃい
(男性)いらっしゃいませ どうぞ
(人々のにぎわう声)
(出囃子)
(山下)どうも〜 スパークスです (徳永)よろしくお願いします
(徳永)えー 僕が徳永と言いまして
彼が大変申し上げにくいんですが 山下です
(山下)申し上げていいよ 普通の名前やがな 山下なんか お前
(山下)僕が山下でーす (徳永)お願いします
まあ 二人でね スパークスという コンビやってるんですけどね
名前と顔だけでも 覚えて帰ってくださいね
(徳永)まあもっとできる人は 顔と名前と あと出身地
血液型 あと好きな女性の タイプなんかもね
(徳永)覚えて帰ってくださいね (山下)多すぎるわ お前 情報が
んなもん お前 肝心な漫才 覚えてもらわれへんやろ
(山下)名前と顔だけでええねん (徳永)そうか?
(山下)ちょっと相方 聞いてくれ (徳永)なんや
俺 ちょっと一人暮らしが 寂しいから ペット飼いたいねん
ペットやったら お前 インコとかどうや?
インコ?
インコやったらお前 よう しゃべってくれるから楽しいで
ああ なるほど ペットと 会話できたら楽しいもんな
どんなこと しゃべってくれんの?
ちょっとずつでも 年金 払っときや
死にかけのジジイか 俺は
あのデッドスペースは もう あのままなんやな
(暴走族のバイクの爆音)
そんなこと 気にすんなや インコが
(徳永)折り入って大事な話が あんねんけど
(山下)なんやねん 気になるな インコが なんか折り入って話って
(バイクの爆音)
(不良)遅(おせ)ぇーわ!
面白い?
全然 知らねーわ
(不良) なんか面白いこと 言えや
もっと面白いことやれや!
笑わせてくれや
(不良たちの野次)
悔しないんか
え… インコが そんなこと言うの?
(花火の音)
(人々の歓声)
(花火の音)
(不良)早くやれよ おい!
早くやれってんだろうが
インコは貴様じゃ!
(不良)はっ? ハハハ…
どうも ありがとうございました
(神谷(かみや))敵(かたき) とったるわ
(大林(おおばやし))はい どうも あほんだらです お願いします
(神谷)いやー 皆さん 今日は花火大会ですか?
いいですね 花火
俺らもネタやるより ドーン ドーン 言うてるほうが
見てくれるんちゃうか
こんな二人がドーン ドーン 言うて 何がおもろいねんな
ドーン!
ドーン!
(大林)ほら 言わんこっちゃないがな お前
お客さん 皆 きょとんと してはるわ
(神谷)ヒュルルルル…
ドーン!
一緒や 一緒や お前 ヒュルルルやあらへんがな お前
花火いうもんは 音だけを 楽しむもん ちゃうねんや お前
私ね 霊感が強いからね 顔面見たらね
その人が天国に行くのか 地獄に行くのか分かるの
なんか変なん 出てきましたよ
地獄!
(不良)誰が地獄だよ!
すんませんね
地獄
地獄
地獄 地獄 地獄
地獄 地獄 地獄 地獄
地獄
なんやの 罪人(つみびと)ばっかりやないの あんたら ちゃんとしい!
お前が ちゃんとせえや
つまんねえぞ 面白いこと言えや! コラ
なんじゃ コラ
(神谷)地獄 地獄 地獄 地獄
(不良たちの騒ぐ声)
地獄 地獄 うわーっ 地獄
地獄
地獄ーっ
うーわ 地獄!
うーわ 地獄!
う う う う うーわ 地獄!
地獄 地獄 うーわ 地獄
うーわ 地獄!
地獄 地獄
楽しい地獄
フフッ
(神谷)地獄
地獄 地獄
地獄 地獄 地獄 うーわ 地獄
地獄!
(主催者)君たちさ
地方の営業 ナメてんじゃない?
漫才しに来てもらったんだから
ケンカされちゃ 困るんだよね
(芸人たち)お疲れした
あっ どうも
あの…
地獄 地獄っていうのは 何が面白いの?
僕 いっこも 面白くないんだけど
(神谷)すいません
あ… 分かんない僕が悪いのか
まあとにかく もう二度と呼ばないから
帰っていいよ
お疲れした
お疲れした
(大林)来週 電話するわ (神谷)おう
お疲れした!
(神谷)自分 東京の芸人?
飲みに行かへんか?
はい
(徳永)改めまして スパークスの徳永です
(神谷)あほんだらの神谷です
(徳永) あの… 相方さんは一緒じゃなくて よかったんですか?
(神谷)自分ら何年目? (徳永)2年目です
(神谷)なるほど あんな
芸人は相方とは 飲みに行かへんし遊ばへん
プライベートは別々や
相方はあくまで相方であって 友達でも家族でもないねん
まあ
しいて言うなら 一番身近なライバルや
おお ありがと
自分 変な持ち方するな
(徳永)すいません (神谷)ありがと
ありがと
(徳永)僕ら 上京してきて 知り合いもおらんし
事務所も役者中心の事務所で 芸人 僕らしかいてないんで
いまだに遊びます
相方の山下は中学から 付き合ってる彼女と
同棲してますけど
まっ 何年か経ったら いろいろ変わってくるわ
あほんだらって すごい名前ですね
名前付けるの苦手やねん
いっつも親父が俺のこと あほんだらって呼ぶから
(神谷)そのまま付けたってん (徳永)へえ…
お前らのコンビ名 英語でカッコええな
お前 親父に なんて呼ばれてたん?
お父さん
です
ビックリするから 急にボケんなや お前
ボケなんか 複雑な家庭環境なんか
親父がアホなんか 一瞬 分からんかったわ
すんません
いや 謝らんでええねん
いつでも思いついたこと 好きなように言うて
はい
その代わり笑わしてな
でも俺が真面目に質問した時は ちゃんと答えて
はい
もう1回 聞くで
お前は親父さんに なんて呼ばれてたん?
オール・ユー・ニード・ イズ・ラブです
お前は親父さんを なんて呼ぶん?
限界集落
じゃ おかんは お前をなんて呼ぶねや
誰に似たんやろな
おかんを お前は なんて呼ぶん?
ホンマやな 誰に似たんやろな どっちか言うたら おかんかな
会話になっとるがな お前
二人がかりで 時間かかったな
お笑いって こんな難しかったっけ?
いや 僕もちょっと 吐きそうになりました
お互い まだまだやな
とりあえず飲もう ここは俺がおごるわ
いや 払いますよ
アホか 先輩が後輩におごんの 当たり前や
ああ ありがと
(神谷)自分 変な持ち方 すんなあ (徳永)すんません
あの…
(神谷)はい
弟子にしてください
えっ?
弟子にしてもらえませんか?
(神谷)何それ ボケで言うてんの? (徳永)本気です
ええよ
あっ でも 1個だけ条件あるわ
えっ なんすか?
俺のこと忘れずに 覚えておいてほしいねん
(徳永)もう死ぬんですか? (神谷)アホか
お前どうせ 俺のこと すぐ忘れるやろ
いやいやいや
(神谷)せやからな 俺のこと 近くで見て
俺の言動を書き残して
俺の伝記を作ってほしいねん
伝記?
(神谷)せや
それができたら免許皆伝や
(店員)そろそろ ラストオーダーになりますが
ああ ごめん お姉さん あと2本だけいい?
いいですよ 観光ですか?
土地の神です
ハハハッ…
お姉さん 何ヵ月?
あっ 9ヵ月です
わー あともうちょっとやん いい?
いいですよ
めっちゃ かわいい女の子
あっ 分かります?
(客)お姉さん! (店員)はーい
(徳永)でも師匠 (神谷)ん?
伝記って その人が死んでから 出版されるんですよね?
お前 俺より長生きできると 思うなよ
えーっ…
(神谷) まあ生前に前編 出版して 死後に中編 出版やな
いや もう後編が気になって 文句 出ますよ
それぐらいのほうが おもろいやんけ
(神谷)ええか? (徳永)はい
お前の言葉で 今日 見たものを
生きてるうちに書けよ
はい!
なかなか ええ店やったな
はい
まあ ちょっとビール ぬるかったけどな
(神谷と徳永)ハハハハ…
今日はホンマに ごちそうさまでした
(神谷)全然 全然
ありがとうございました
(神谷)お前 どっちや?
僕 こっちです
(神谷)ああ そうか ほな またな
はい ありがとうございました
はいよ
イタッ…
(トイレの水を流す音)
(徳永) 神谷さんは大阪の 大手事務所に所属していたので
東京で活動している僕は なかなか会う機会がなかった
それでも神谷さんは 頻繁に連絡をくれた
誰とも話していない 1日の終わり
携帯電話が振動し 液晶に
“神谷才蔵(さいぞう)”という文字が 表示されると
妙に心が躍った
はい
(神谷) ういっす どこいてんの?
いや 東京ですよ
もうあの熱海のクソ営業から 1年っすね
(神谷) 何それ 俺 そんな営業 行ってへんで
何 言うてんすか? じゃ あれ 誰やったんすか
(神谷)土地の神です
めちゃめちゃ覚えてますやんか ハハハハ…
(女性)あっ 徳永君 おった!
ほな 私 バイト行ってくるから 終わったら電話してな
ああ 気いつけてな
徳永君 頑張ってね
(徳永)うん
(徳永)ええ どうも〜 スパークスです
よろしくお願いしまーす
テレビを買い替えよう 思うてまして
(徳永)でもテレビって高いやん? (山下)うん
だから どうしょうかなって
そんなもん まけてもらったらええやん
まける?
結構 電化製品って値切って まけてもらえるからさ
いや でも俺 そんなん したことないで
ほんなら 練習しよ 値切る練習しよ
俺があの… 店員やるから お前 ちょっと客で来いや
分かった
いらっしゃいませ
(徳永)乾電池ください (山下)何 買(こ)うてんねん お前
(徳永)乾電池 (山下)いや 違うやん
乾電池
いや 違うやん お前が欲しかったのなんやねん
(徳永)テレビ (山下)テレビ 買えや!
(若手A)お前 俺の友達と 浮気したってことかよ なあ!
(若手B)違うわ! (若手A)ふざけんな
相手 誰だ 言えよ
言えねーなら 携帯に写メあんだろ 出せ!
貸せよ! どうせしょうもない…
竹野内 豊(たけのうちゆたか)?
竹野内 豊?
ホントごめんなさい
ごめんなさいじゃ ねえだろ お前
謝って済む問題じゃ ねえだろ
俺が一体どんな… 竹野内 豊?
ホントごめんなさい
ごめんなさいじゃねえだろ お前 謝って済む問題じゃねえだろ
俺が一体 どんな… ああ もうダメだ 我慢できない
すげえ!
すげえ!
竹野内 豊?
(徳永) 僕たちの主戦場は 依然 小さな劇場で
そこに出演するためには 月に1度の
ネタ見せと呼ばれる オーディションを
受ける必要があった
入ってから言えよ お前 アホ
いらっしゃいませ
テレビを買い替えよう 思いまして
テレビですか じゃ こちらはいかがでしょうか
えー 最新機能搭載型の 40インチのテレビ
5万9800円です
5万9800円
いや ちょっとそれは高いっすね もっと安くなりませんか?
いや うちは地域最安値で やってまつからね
最安値でやってますからね これが限界ですね
さっきの店のほうが もっと安かったですよ
うちより安い店 ありました?
ありましたよ さっき見てきた 牛丼のほうがもっと安かったのに
何と比べとんねん お前
牛丼とテレビで 比べんなや お前
最新機能搭載型やぞ
でもさっきの 紅ショウガ搭載型でしたよ
“搭載”言わへんねん それは
紅ショウガ のっけてるだけや そんなもん
(いびき)
(作家)スパーキングだっけ?
あのー
えー ツッコミのほうの子?
(山下)はい
えー 店員さん やったことあるの?
いえ ないです
(作家)ないよね?
全然 リアリティーがないから やってることに
うん…
あとボケも 積み重なっていってない
オチに向かって
ボケを積み重ねていかないと
スパーキングの場合は もう 漫才になってないから
なあ? 毛塚(けづか)
(毛塚)はい (作家)なっ
ほら
だから スパーキングの場合は…
(徳永)すんません (作家)ん?
スパークスです
えっ?
(女性A) デブのこだわりみたいなん よう分からへんから
(女性B) 私たちデブが食べることに どれだけ懸けているか
あなたには分からないでしょうね!
(女性A)いや 分からんよ
(徳永) 僕たちは表現の場を 得るために
発言の権利を得るために
あるいは 貧困から脱するために
それぞれのやり方で 格闘していたのだ
(女性B)見るな! (女性A)見てへんやん
(若手)お前ちょっと ちっちゃいぐらいやないか
お前が2メーターないから チビに見えへんねや
いきなりやな お前は 待て 待て 待て
トントン手をかけ ランボルギーニ〜!
(山下)お前の考えたネタ ええと思うけどな
あいつら最初から 笑う気なかったやろ
ネタは絶対 おもろいって
(徳永)うん…
(山下) なんやの あいつらホンマ
(芸人)パオ〜ン
(徳永) テレビでは 同世代の芸人たちの一部が
(徳永)活躍し始めていた (芸人)アニマルジャンケン
(芸人)ジャンケンポン!
(女性客)アハハハ…
ねえ 知ってる? アニマルジャンケンって
(ヤンキー)いや 知らんな
アニマルジャンケンってやつ
ふーん
アーハハッ…
猫舌… アーハハハハ
めっちゃ面白いじゃん
大好き あれ
おい
何 勝手に チャンネル替えてんだよ
(山下)こんなん おもろいっすか?
あ?
やんのか コラ
(山下)いえ
すんません
おもんないんじゃ! メガネゴリラ!
(ヤンキー)待て コラ!
(徳永) その頃 神谷さんが 拠点を東京に移すことになったと
連絡が来た
大阪での活動に 限界を感じたようだった
(徳永)神谷さん
神谷さん
ご無沙汰してます 2年以上ぶりですやん
おお 前から変な妖怪 歩いてきた思うたら徳永か
いや こっちのセリフですわ
神谷さんがおったら 吉祥寺(きちじょうじ)も天王寺(てんのうじ)ですな
やかましわ
(神谷)どこ行く? (徳永)どこ行きます?
(神谷)久しぶりやな お前 (徳永)いや 久しぶりですよ
(神谷)元気してた? (徳永)元気っすよ
(神谷)めちゃめちゃ元気や
めっちゃええ感じやん
でしょ? ここめっちゃいいでしょ?
(神谷)池あるやん (徳永)そうなんすよ
(神谷)乗ろうや (徳永)えっ?
(神谷)気持ちええわ! (徳永)ビックリした もう今
(徳永) 絶対 飛び込んだと思った
めっちゃビックリしましたよ 今 全然 聞いてへんやんか
(神谷)気持ちいいっすか? (徳永)聞くな
ホンマに迷惑ですから ねっ
(徳永)気持ちいいっすか? (神谷)聞くんかい!
(神谷)怖がってはるわ
それはそうと いつ来たんすか?
東京 来たんやったら すぐ連絡くださいよ
まあ いろいろあってな
(神谷)なんか飲もうや (徳永)はい
(女性部員たちの掛け声)
何 飲む?
(徳永)えっ うーん じゃコーヒー お願いします
(神谷)ブラック… 微糖…
(徳永)微糖で はい
微糖ください
(徳永)小銭ありますよ (神谷)要らん
別にそんなんしても 小銭 増えませんて
分かっとるわ
ここでお前に出さしたら 割り勘なってまうやろ
はい ありがとうございます
(太鼓の音)
なんで やめんねん ちゃんとやれや
お前に言うとんねん!
お前がやってんのは表現やろ
家で誰にも見られへんように やってんねやったら そんでええけど
でも外でやろうと 思ったんやろ?
俺はそんな楽器 初めて見た めっちゃカッコええと思った
だからどんな音すんのか 聞きたいねん!
せやのに なんでそんなイケズすんねん
聞かせろや!
(若者)いや そういうんじゃないから
(神谷)そういうのって なんや
俺 なんか変な奴みたいに なってんのかな?
いや 完全に変な人ですよ
すいませんね あの ちょっとだけでいいんで
すぐ立ち去るんで 音 聞かせてもらってもいいですか?
(テンポが落ちる太鼓の音)
(テンポが上がる太鼓の音)
(テンポが落ちる太鼓の音)
(テンポが上がる太鼓の音)
♪ 太鼓の太鼓のお兄さん 太鼓の太鼓のお兄さん
♪ 真っ赤な帽子のお兄さん
♪ 龍よ 目覚めよ! 太鼓の音で
(徳永)別に歌わんでも ええんちゃいます?
(雷鳴)
(神谷) ♪ 真っ赤な帽子のお兄さん
♪ 龍よ 目覚めよ! 太鼓の音で
♪ 太鼓の太鼓のお兄さん 太鼓の太鼓のお兄さん
♪ 明日は何があるのかな 何かいいことあるといいな
♪ 太鼓の太鼓のお兄さん なんだか雨が冷たいな
♪ 明日はいい天気に なるといいな
♪ 太鼓の太鼓のお兄さん 太鼓は太鼓のお兄さん
♪ 結局 太鼓はお兄さん
♪ 太鼓と真っ赤な帽子と太鼓
(徳永)おおー! (神谷)♪ 太鼓の太鼓のお兄さん
♪ 太鼓の太鼓はお兄さん 結局 太鼓にお兄さん
♪ お兄さんは太鼓が上手!
♪ あっ太鼓 あっ太鼓で
(神谷)♪ 太鼓は太鼓は太鼓で太鼓 (徳永)♪ 太鼓! 太鼓!
(神谷) ♪ 太鼓の太鼓でお兄さん
ああーっ!
(徳永)太鼓の太鼓のお兄さん…
龍よ 目覚めよ! 太鼓の音で
日本昔話か
徳永 帰ろ
例えが貧弱で心配やから お前 修業したほうがええわ
じゃ… 帰ります
始発で帰ります
お前 もう酔うてるから 俺の家 来い
何を言うてますの
僕は絶対に帰ります
(神谷)家 近いし ええから来いよ
(徳永)あ… ビリいうた
もう大丈夫っすよ 僕 帰れますよ
もう大丈夫ですって もう帰れますって
イタッ!
アハハ…
(徳永)痛いのう
(徳永)なんで蹴んねん (神谷)怒んなや
お前 酔うてるから心配やねん とりあえず俺の家 行こう
(徳永)なんで蹴ったんや
そこにケツがあるからや
(徳永)登山家か!
どこまで行くんですか?
もう青梅(おうめ)街道ですやん
(神谷)もうすぐ もうすぐ
ここや
おはようございます
(配達員) おはようございます
(徳永)すいません お邪魔します
徳永に水 飲ましたってくれ
(真樹(まき))おかえり (布団に倒れる音)
(真樹) ああ 朝だから下の人に 怒られちゃうよ
徳永です
いらっしゃい 真樹です
お前 もうはよ寝ろ
(真樹)フフッ
(神谷)コンビニ行くけど なんか要るか?
こいつ寝とる
なんかこいつ ムカつく弟みたいやわ
(真樹)やめなよ
徳永の顔面に ブラック・ジャックみたいな
日焼け痕 作ろ〜
それの何がおもろいんですか
めっちゃ おもろいやんけ
おい お前 顔 隠すんせこいぞ!
(徳永)せこないです
(真樹)徳永君 寝かせてあげたほうがいいよ
(徳永)うおーっ ちょ ちょっ… あ… ちょっ…
何をしてますの
このほうが きれいに焼けるやん
なあ ピノコ
真樹さんも なんで手伝ってんですか
ごめんなさい
ごめんなさいね
いや… 何してんすか
なんで… ハハハッ
いやいや いやいや
神谷さん? あの…
いや もう… どう… どうしたんすか 二人
(神谷)腹 ピーピーや (徳永)言わんでええねん
(真樹)お大事に フフフ… (徳永)言わんでええねん
(真樹)徳永君 何を祈ったの?
いやいや なんでもいいじゃないですか
なんでもいいこと 祈るんかい
芸人として売れることですよ
徳永君は 頑張ったら絶対 売れるよ
真樹さん 何を祈ったんですか?
うん? 秘密
(徳永)ヘヘヘ
神谷さんは 何を祈ったんですか?
5円玉で神さんに 何 祈んねん
売れたいな
お前 さっきから 何 書いてんの?
(徳永)うん? 別に
(山下)うまっ
(携帯電話の振動音) (山下)誰やねん これ
はい 師匠 お疲れさまです
(神谷)今日 バイトあんのか? (徳永)いや ないです
(神谷) じゃ メシ食いに行かへん?
(徳永)はい すぐ行きます はい 失礼します はい
(徳永) ベージュのコーデュロイの パンツをはいてる奴は
コーデュロイの よさを全く分かってない
いろいろ勘違いした奴やと 思うんですよ
(神谷)徳永 (徳永)はい
(神谷)俺 それ持ってる (徳永)えっ?
(徳永) 僕たちは吉祥寺を 定点観測するかのように
ほぼ何年間 毎日出没し 当てもなくさまよい歩き
疲れるとハーモニカ横丁の “美舟(みふね)”で
肉芽(にくめ)という料理を 1皿だけ注文し
それを あてに夜中まで飲んだ
(店員)肉芽 お待たせしました
肉芽で? 肉芽でよろ… よろし…?
(店員)お待たせしました (神谷)言わんのかい!
(神谷)おらっ (徳永)52
(徳永)53
54
はいっ!
はいっ!
(テレビから聞こえる ホラ貝の音)
(神谷)甲冑(かっちゅう) ええなあ
甲冑 着て漫才やったら おもろそうやな
甲冑漫才
大林に落ち武者 やってもらおうかな
俺はあえてリクルートスーツで
お互いがその時代…
出陣じゃ!
めっちゃ影響 受けてますやんか もう
(徳永)やっぱ真樹さんの キムチ鍋 最高っすね
(真樹)うれしい 徳永君のおかげだよ
お前 人の話 聞いてんのか
(徳永)聞いてますよ
だから速いテンポで話したほうが 情報いっぱい 伝えれるやん
そら多く打席に立てたほうが ええに決まってるで
だから速く話したほうがええのは 確かやねん
でもお前は それができへんのやろ?
でもそんなお前やからこそ 人とは違う表現ができるんやんけ
(徳永)はい
あの話 してや
(徳永)えっ?
お前の家 めっちゃ貧乏そうやな
はい めちゃめちゃ貧乏でした
姉は紙のピアノで
“ねこふんじゃった”の 練習してましたね
ええな
姉は家にエレクトーンとか ピアノのある友達に
後れ取らんように必死でしたね
(真樹) 頑張り屋さんだったんだね
(徳永)はい
で 初めてのレッスンの日…
(先生)徳永さん どないしたん?
(姉)音が出ません
電源 入ってなかったんやな
♪「ねこふんじゃった」
(徳永) 姉は本物のエレクトーンを 弾いたことがなくて
電源があることを 知りませんでした
いつもは優しくて 頼りがいのある姉の
そんな姿 見てたら僕 悔しくて 悔しくて
(母親) あんた なんちゅう顔して 見てんの?
お姉ちゃん 頑張ってんで
ええ話やな
(徳永)ほんで その夜も 姉は家 帰ってからも紙のピアノで
一生懸命 練習してたんで 僕も横に行って
めちゃめちゃ大声で 一緒に歌ってあげてたんですよ
そしたら親父に “じゃかしいや 猫踏むな”って
怒鳴られたんですけどね
何をしてんすか?
(徳永)せっかくええ話 してんのに (真樹)うんうん
(徳永) 全然… うんうんうんやあらへん 全然 聞いてないじゃないですか
ええな そんなお前にしか 作られへん笑いが絶対あるんやで
はい
(スタッフ)それでは まもなく開場いたしますので
階段の前で1列になって お並びください
(若手A) ダハハハ さて参るとするか
(若手B) 気をつけろよ そうそう… やっぱ当たんのかい!
なんや その歌
♪ 85の夜〜
15の夜や
なんやねん その歌 盗んだ杖ついてどこ行くねんな それ
近所の公園で オール 行くねん
オール すな!
ジジイがオールすな! そんなもん
茂三(しげぞう)と梅吉(うめきち) 待っとんねん
ジジイやんけ
(大林)もういいかい?
(神谷)まーだだよ
(観客の笑い声)
(大林)もういいかい?
まーだだよ
(大林)もういいかい?
(神谷)もういいよ
誰やねん
(司会者)それでは 渋谷(しぶや)オールスター祭(さい)
第1位の発表です
(ドラムロール)
第1位は…
鹿谷(しかたに)くーん!
(司会者)おめでとう! (鹿谷)いやいや…
(徳永) 1位は僕が本来なら 最も苦手なタイプの
2年目のピン芸人 鹿谷だった
彼はいわゆる クドい顔をしており
キャラは女性的で ヒステリックな一面を持つ
(鹿谷)でも大丈夫 こんな言葉を付けたら
かわいく なっちゃいますよ
どうぞ
(観客の笑い声)
(鹿谷)胸キュン中毒
ドン! おっ おお…
おほほっ…
(鹿谷)ヤバーい! あっ 待って
あ… 待って
(鹿谷)アハハ… これ… これね 次のやつ
(徳永) このアンバランス加減から 真顔になるだけで
爆発的な笑いを 巻き起こした
(鹿谷)ありがとうございました! (観客の拍手)
(徳永)スパークスは6位
あほんだらは4位だった
(芸人たち)お疲れした
お疲れした お疲れした
徳永 徳永 こないだの ありがとう
あっ はい
俺ら まだもう1本あるから 先 出るわ
(徳永)お疲れした (神谷)ごめんな
(徳永)お疲れさまでした
(鹿谷)徳永さん お疲れさまでした〜
もしよろしかったら徳永さん 鹿谷軍団に入って—
参謀になってくれませんか?
一緒に天下 取りましょうよ
鹿谷 打ち上げ行くぞ
(鹿谷)はーい
じゃ 後ほど
(山下)先輩 俺ら なんで6位なんすか
(芸人たちの盛り上がる声)
(スタッフ)徳永君 大阪選抜だったんでしょ?
なんで サッカー やめちゃったの?
サッカー やってたほうが よかったですか?
いや そういうわけじゃないけど
(山下)すいません 後ろ すいません
申し訳ないです すいません
(山下)お疲れさまです (スタッフ)お疲れさまです
おい 隅で飲んでんと お前 作家さんとか来てんねんから
いろいろ話せよ お前も
すいません
(芸人たちの盛り上がる声)
(男性) おっとっと お〜とっとっと…
(アナウンサー) 昭和を代表する しゃべくり漫才で人気を博した
浪花おおいし・こいしの こいしさん
本名 田辺誠一郎さんが 25日午前0時35分
神戸市内の病院で亡くなりました 78歳でした
(こいし) どんな物が好きですか?
(おおいし) ああ 私が 一番好きな物ってのは
(おおいし)決まってんねん (こいし)ほう どういう物?
(おおいし)鍋やね (こいし)え?
鍋
あんた 鍋 食べんの?
(おおいし) 鍋 食べんねやがな
立派な歯 しとるなあ
そこいくと僕なんか 歯が弱いから いけませんな
ところで鉄の鍋と土鍋 どっちがおいしいんですかね
違う! 鍋 食う言うたら 中身や
(こいし)ビックリするがな
鍋の中身やったら 中身と言うてくれんと
(徳永)お願いします (山下)どうも スパークスです
(山下)よろしくお願いしまーす
(徳永) いや最近ね おとなしい子供が 増えてるみたいですね
(山下)おとなしい子?
(徳永)反抗期のない子供も いるみたいなんですよ
(山下)ホンマかいな そんなもん
(徳永)そんな子供が怖いのが ジジイになった時ね
なんや ジジイになった時って
今まで1回も経験してないから ジジイになってから…
なんやねん その おたふく風邪みたいな発想は お前
山下 俺のセリフ 聞いてから反応せえや
ちょっと早いわ 今の
いや 何回もやってるネタやねんから 聞いてくれ 言われても…
だから1回も経験してないから
ジジイになってから 反抗期とか来たらヤバいで
なんやねん そのジジイになった 反抗期って どんなやねん それお前
タバコを吸い始めたり…
ジジイになってからかい 体に悪いやろ そんなもん お前
国からの年金も受けへんで
受け取れや! んなもん
早い やっぱり
そのさ なんかやる気ないん?
やってるやん
“言うたらええやん”みたいな テンションやん
(山下)チッ
ネタ合わせ 大事なんは 分かるけどや
今日もバイトあったし
急はやめてや
ほな 先言えや
(携帯電話の着信音)
おっ
徳永 どないしたん
あっ お疲れさまです
あの今 ネタ合わせしてまして
相方にムカついてきまして
ちょっと殴ったろうかなと 思ってんすよ
(神谷) 殴ったら解散やで だから手は出したらあかん
めっちゃ腹立つんすよ
(神谷) ネタ合わせ 終わったら 家 おいで
一緒にメシ食おうや
お前が 一番好きな食べ物 なんや?
えー 焼き肉っすかね
(神谷)ちゃうやん
お前が 一番好きな食べ物 なんや?
お前が 一番好きな 食べ物 なんやって聞いとんねん
鍋です
(神谷)鍋?
(徳永)はい 鍋です
(神谷) あんた 鍋 食べんの?
いや ちゃいますやん
(神谷) えらい丈夫な歯 してんねんな
いやだから ちゃいますやんって
(神谷) 僕は歯が弱いから あれやけど
鉄の鍋と土鍋と どっちがええの?
(徳永)いや 何を言うてんの?
(神谷) どちらが かじりやすい?
(徳永)いや 鍋って別にその
鍋そのものは 食べないんですよ
(神谷) え? お前 鍋 食う言うたやないか
いや 言いましたけど 鍋の中身を食べるんですよ
(神谷) 鍋の実かいな
(徳永)そうです
(神谷)鍋の実?
鍋のどこをむいたら 実が出てくるん?
(徳永) いやもう 果物みたいに 言わんといてくださいよ
水炊きとかキムチ鍋とか 一緒に散々やってるでしょ
(神谷) つまり鍋料理のことを 言うてんの?
いや そうですよ
なんで急に アホになったんすかもう
しつこくて ちょっと怖かったっすよ
(神谷)じゃ 牛(うし)の牛肉 買っとくわ
いや 牛肉は牛です
(徳永)アホやなあ
難しいな じゃもう今日は ジンギスカンにしよ
いや よけい 難しなってますやんかもう
お前 あのジンギスカン用の 鍋持ってるか?
持ってるわけないでしょ もうええわ!
ちょっとは頭 スッキリしたやろ
はい
ありがとうございます
(神谷)ほな 後で
はい
3つ謝るわ
まず1つは
ネタ合わせより大事な予定がある みたいに言うてもうたこと
もう1つは
ネタ考えてるの お前やのに ネタのこと言うてもうたこと
もう1つが…
お前が… 俺が…
お前に…
俺に…
お前 ひょっとして忘れたん?
お前は ホンマにアホやな
ほな 俺 帰るわ
俺の自転車や
ウソつけ
行く?
(後輩芸人) はい 人生は勝ち負けです
勝って勝って 勝ちまくりましょう
はい ざんぱーい!
負けとるがな
俺が滑ったみたいに なってるがな
なんでデブでボーダーやねん
(後輩)デブ 関係ないでしょ (神谷)隠せ 隠せ
(後輩)オシャレ オシャレ (神谷)縦にせい 縦に
好きな男性のタイプゲ〜ム
いきなりですか! イエーイ
(神谷)はい (女子A)ムキムキの人
(後輩)ムキムキ
出た ムキムキ 出た ムキムキ
(神谷)他には? (女子B)頭いい人
お前 そのX軸とY軸の上に グラスを置け
(後輩)賢(かしこ)っ
(神谷)え?
(女子C)外人 外人
(神谷)キョウハ ムチャムーチャ タノシイです
大丈夫? 大丈夫?
はい
なんか違うの 飲む?
ああ…
でも おいしくないよね あんまり
そう うん
なんか もしあれなら メニューとか頼んでみる?
あ… だ… 大丈夫っすよ
いいの? 別に でも…
どこに座っとんねん! お前 どこに座っとんねん
私 嫌われちゃったんですかね?
いや そんなことないねん こいつは引っ込み思案やねん
じあん君やねん
なあ こいつ なんか中学生みたいやろ?
(女子C)ちょっと分かるかも (神谷)でも こう見えて
こいつ 盗聴が趣味やねん
盗聴?
(神谷)せやんな? (徳永)はい
(後輩)えー めちゃくちゃ ヤバい人じゃないすか?
(神谷) ヤバいよ! 俺 めちゃめちゃ 聞かれてんねんもん 普段
なんで盗聴で興奮すんですか?
まあ やはりその対象者が 誰かに聞かれることを前提として
放ってる音では ないからですね まあ本来 聞けないということで
(女子B)えー 研究者じゃんね?
X軸とY軸をこう…
(後輩)なんで研究者に 対抗しようとしてるんですか
いいんですよ…
(アナウンス) この電車は 急行 吉祥寺行きです
途中 止まります駅は 下北沢 明大前…
(神谷)今日も盗聴 行くん?
いや もう急に あんなフリ やめてくださいよ
いや 俺らはな 二人だけで ずっとしゃべってたら
ホンマに趣味の世界まで 行ってまうから
だから たまには 他の人と会話して
自分がどういう人間か 分かっとかな あかんねや
でも笑ってたやん
いや 笑われてただけでしょう
笑われたらあかん 笑わせなあかんって
すごくカッコいい言葉やけど
あの言葉のせいで 笑われるフリがしにくくなったよな
“ああ あの人は アホなフリしてはるだけで”
“ホンマは賢いんや”って
本来 お客さんが 知らんでええことやん
そうすね
お客さんが笑かされてるって 自分で気づいてもうてんのって
なんか もったいないよな
まあ だからこそ そっから生まれる 笑いもあるんでしょうけどね
まあ その点 お前は自分の面白いとこに
自分で気づいてへんやん それがええねん
やかましわ 誰がホンマのアホや!
あの 神谷さん
真樹さんとは 付きおうてはるんですよね?
いや 家に 住ませてもらってるだけや
え… でも一緒に住んでて
付き合うって話には ならないんすか?
何回かなったな
でも“ちゃんとした彼氏 つくり” 言うた
それで真樹さん なんて言うんですか?
分かったって
なんか嫌… 嫌です
好きじゃないんですか?
まあ家賃も入れてないし
あんだけ いろいろ やってくれてるから
俺もちゃんとしたいねんけど
俺なんかと 本気で付き合ったら地獄やで
そうすね
否定せいよ お前
(アナウンス) まもなく吉祥寺 終点です
お前 明日 バイト早いん?
いや 早くないです
じゃ まあそうやな
ハーモニカ横丁で 飲み直そうか
はい 行きましょ
真樹の金でやけどな
えっ?
あいつな 徳永君と行くんやったら 言うてな
いつも金 持たしてくれんねん
だから俺 毎日 お前と 遊んでることになっとる
(アナウンス) 到着した電車は 折り返し
各駅停車 渋谷行きです
吉祥寺 吉祥寺 終点です…
(徳永)茂三 死んでん
誰が殺してん ほんなら茂三…
お風呂? 今入ろうとしたとこじゃ
ほな言うな 出てけ クソ野郎
ヘルパーさんに 言うとったんかい
全国制覇
間に合うか…
(黒服)ああ… はいはい… 大丈夫?
あー 泣かない 泣かない 泣かない
あっ ちょっと待ってね みんな いろいろあるんだから
泣かない 明日いける? いけるよね
はい はい はい 誰も悪くない 誰も悪くないよ
はい 泣かない 泣かない 明日もいける? いけるよね
いける? 大丈夫 また はい
(ドアを開ける音)
(店員)いらっしゃいませ
おはようございます すんません 遅(おそ)なりました
神谷さん 今日 どこ飲みに行きますか?
あの 僕 ちょっと いろいろ相談したいことが…
ちゃうねん
あ はい どうしたんですか
あんな 真樹の家に 荷物 取りに行きたいから
ついてきてほしいねん
はい 全然大丈夫ですけど
え? なんか ケンカでもしたんすか?
(神谷)真樹な… (徳永)はい
(神谷)男 できてんて (徳永)えっ!
ウソでしょ?
ビビってもうたわ
あいつ 吉祥寺のキャバクラで 働いてる言うてたやろ?
はい
あれな 実は風俗やってんて
なんか上京してすぐ 渋谷歩いてたら
キャバクラのスカウトに 声かけられて
ほんで後日 面接に行ったら なんや
幽霊の格好してサービスする 風俗やってんて
あいつ そういうの 断られへんやろ?
で ずっと働いててんて
うらすじや〜
(神谷)なんでお前が そんな顔しとんねん
すんません
まあ俺も真樹に好きな人が できたんやったら文句ないけどな
年齢的なこともあるし 俺がどうにかしたかったけど
間に合わんかったな
まあ ここで ごちゃごちゃ言うのも ちゃうしな
他に選択肢も なかったんやろなとも思うねん
で 荷物全部 出すんすか?
いや まだ家 決まってへんから
とりあえず 明日 出番あるし
漫才衣装と着替えだけ 取りに行きたいねん
ほんで
(神谷)1個だけ問題があってな (徳永)なんすか?
実は その男が もう家におんねん
そうなんすか?
俺のことは居候や言うて 説明してるらしいねんけど
そんな部屋 気まずくて お前 一人で行かれへんやろ?
いや そうすね
お前 そんなんお前 俺が荷物一人で取りに行って
お前 その男に文句でも言われたら 俺 殺してまうかもしれんから
だから一緒に ついてきてほしいねん
はい 二人のほうが 殺しやすいですしね
お前 止めろ 止めろ お前 止めんかい お前!
あかん 部屋 行くの怖い
僕 一人で行きましょか?
いや 俺も行くわ
ほんで男に何 言われても 真樹のためや思うて黙っとく
でも 悲しいのも惨めなんも 嫌やねん
だからな お前 真樹の部屋 入ったらな
はい
ずっと勃起しといてほしいねん
勃起っすか?
(神谷)うん ほんで感情的にヤバなったら
お前の股間 見るわ
“こいつ 先輩が大変な時に 勃起してるやん”思うたら笑えるし
平常心 保てるやろ
それ 僕 リスク高くないですかね?
ほんで その男に気づかれたら 問答無用で殴られますよ
殴られる理由としては 珍しいからお前
顔面に傷でも負ったら お前 売れた時に
クイズとして出題できるで
いや するか!
ほんで俺 そんな 下ネタ好きちゃいますからね
(神谷)俺もや (徳永)なんでやねん!
(徳永)なんで言うたんや じゃあ!
頼むわ 挑戦だけでもしてみて
分かりました
(真樹)はーい
あー 徳永君
ありがとね
おっす
(テレビの音声)
(テレビ:男性) お前らだけは
許さん!
お邪魔します
大体必要なもんは 詰めれたし
すまんけど あとは捨てといて
(真樹)うん
整理して 送れる物は送るね
あほんだらやな
フッ
ほな行くわ
(真樹)うん
いろいろすまんな
ありがとう
体に気をつけてね
もうええわ
(神谷)プッ
お前…
何 勃起しながら 半泣きなっとんねん
性欲強い赤ちゃんか
(徳永) 自分が命令したんでしょ
(神谷) ほんで お前 部屋でお前 ずっと手で触ってたやろ?
(神谷)あれ せこいぞ! (徳永)せこいって なんなんすか
(徳永)しょうがないでしょう
尊敬する師匠と 優しくしてくれた姉さんの
お別れですよ
その状況で あんな粗い画像だけじゃ 無理ですって
いや もう勃(た)ってへんわ
(神谷)なんか うまいもん 食いに行こうか?
(徳永)はい (神谷)なあ
(神谷)何がええ? 中華 和食
焼き肉
(美容師) 頭皮 大丈夫だった?
(徳永)はい
(美容師)ふーん 強いんだね
仕事 何やってんの?
(徳永)芸人やってます
(美容師)へー 芸人目指してるんだ
私の知り合いもね
芸人の養成所 通ってんだよ
へえ… そうですか
(アシスタント)はい 今回が初登場のスパークスです
どうぞ
(出囃子と拍手)
(山下)どうも〜 スパークスでーす
スパークスの山下です
スパークスの徳永です 趣味はアリを踏みつぶすこと
おいおい おいおい! 何を明るく怖いこと言うとんねん
(笑いと拍手) (鹿谷)ありがとうございまーす
(司会者) いや ダンスは かわいらしいけども
ちょっと鹿谷君 チャンピオン席が 似合ってないんだよな
いやいや ここに座ってる僕が 一番 分かってますから それ!
(徳永) この年は 都内だけではなく 地方の学園祭にも呼ばれた
(司会者) はい じゃ できた方? 挙手!
(若手)はい はい
(司会者) はい じゃ スパークス参りましょう
購買部で万年売り上げ ワースト1の物は?
(山下)2万5000色ペン! (司会者)多いな!
(司会者)どうぞ (芸人たち)はいはい…
(司会者) はい じゃレッドスパイダース
(黄色い声援) (司会者)ムチャクチャ人気ある
(徳永) 若者に限った 一時的な人気であることは
テレビ番組に出ている 全ての芸人が理解していたと思う
僕たちは勘違いをするには 年を取りすぎていた
勘違いしたフリをして ひんしゅくを買うことさえも
仕事だと思えるほどに 年を取りすぎていた
(徳永)だからゾンビが来たら 懐中電灯でもなんでもええから
顔にバーッて光を当てたったら 逃げてまう
(山下)光 当てたらええねんな? (徳永)そういうことや
(踏切の音)
(観客の笑い声)
(大林)なんて?
(神谷)余命3ボケです
(観客の笑い声)
(大林)はあ?
“余命3ボケ”って それ 余命2年とか3年とかいうやつ?
うん
あと3回ボケたら 死ぬんです 僕
(大林)なんの病気や それ (神谷)職業病なんやろな
(徳永)アホ! (山下)イタッ
(徳永)俺は お前に 死んでほしくないんや
だから お前にゾンビの対処法
今日は なんも聞かずに 覚えて帰ってくれ ホンマに
頼むわ 頼むわ!
いやいや… お前のほうが怖いわ!
(観客の笑い声)
大好きなお父さん お母さん
これからは隣にいる “顔 デカ夫さん”と幸せになります
名前で呼べや! もうええわ
(拍手)
(司会者) はい ありがとうございました
ぽってり夫妻の2本目のネタを 見ていただきました
面白かったねえ
さあ 続いて登場するコンビは
1本目 会場を 大爆笑の渦に巻き込んだ—
あほんだらの登場です!
さあ 2本目はどんなネタで 笑わせてくれるんでしょうか
あほんだら いってみよう!
(出囃子と拍手)
はい どうも〜 あほんだらです
よろしくお願いします
いかつい2人が 出てきましたけどもねえ
(録音した神谷の声) 余命3ボケです
(録音した大林の声)なんて?
(神谷の声)余命3ボケです
(観客の笑い声)
(大林の声)はあ?
“余命3ボケ”って それ なんやねん
(神谷の声) あと3回ボケたら 死ぬんです 僕
(大林の声)なんの病気やねん それ (神谷の声)職業病なんやろな
(神谷の声) ステージ4まで いってるらしいわ
まあ このステージの上で 別のステージの話 すんのも…
まさかこんな感じで 終わりが来るとは思わんかったな
(大林の声) 何をごちゃごちゃ ごちゃごちゃ言うとんねん
(神谷の声) 医者に宣告されたんや あと3回ボケたら死ぬて
お前に俺の気持ちが 分かんのか?
(録音したオバはんの声) ちょっと あんたら!
ちゃんと音声に合わせな 全然 漫才 成立してへんやないの
あの人ら 本当アホだな あれ
(オバはんの声) 台無しやで もうグダグダやないの
はい! ということで全てのコンビ
2本ずつ ネタが終了しました
総評のほうを お願いしたいと思います
(審査委員長)いやー 楽しませていただきました
まっ 一部 音響を使った—
漫才ではないコンビも いましたが
あのコンビを除いては かなりレベルの高いものを
見せてもらったかなという そういう印象ですね
(司会者)あほんだらも ウケてましたけどね
(審査委員長)ウケてても あれは 漫才とは言えませんからね
(司会者)なるほど! いやー 厳しい! ねえ
(審査委員長)でも全体的には
年々レベルが 高くなってきてますから
今後が楽しみなコンビがもう 何組もいましたね
(芸人たち)おおーっ!
(司会者) ちょっと みんな 聞いた?
おい… あるぞ〜!
(山下)最近 テレビの仕事 けえへんな
テレビのディレクターに スパークスのネタは面白いけど
それだけやったら難しいって 言われたで
面白かったらええやんって 言うかもしれへんけど
面白いだけやったら あかんねん
お前 神谷さんの影響 受けすぎなんちゃうか?
俺は前のほうが おもろかったで
神谷さん 別に 売れる気ないやん?
神谷さんは 自分が おもろいと思ったことに
背いたことはない
芸人からしたら 面白いかもしれへんけど
笑いは 分かりやすいほうが ええねん 絶対
俺らは世間相手に 漫才してんねん
芸人相手に漫才してんのと ちゃうねんで
神谷さんが相手にしてんのは 世間やないねん
世間を振り向かせるかも しれへん何かやねん
なんやねん それ
そんなん 世間から 逃げてるだけやん
ちゃうの?
お前に神谷さんの 何が分かんねん!
(子供)やーだ あっちに行きたくない
(母親)もう なんで あなたは いつもそうなの?
俺ら東京 来てから ずっと風呂なしのアパートやで
(スタッフ)お願いします お願いします
(スタッフ)お疲れさまです (徳永)お疲れさまです
言うてる意味が さっぱり分からん まあでも…
もうちょい もう1回
(ネタ合わせを続ける声)
(漫才師A) パチンコもキックボクシングも
熱くなったら負けだから
(漫才師B) いや いい加減にしろ!
どうもありがとうございました
(出囃子)
(徳永・山下) どうも〜
(山下) どうも スパークスです よろしくお願いしまーす…
(徳永) まったく 先が見えない状況の中—
得体の知れない後ろめたさや
恐怖に苦しみながらも なんとか必死でやっていた
(山下)俺がゾンビに食われる?
3日連続で? それ なんの夢やねん それ お前
(電車が通りすぎる音)
(携帯電話の振動音)
おはようございます
(大林)最近 調子どう?
(店員)はい 生お待ち
(徳永)まあ生活は 全然 変わんないっすね
今月 1万8000円でした
そんなことより 大林さん 今日は下駄 履いてないんっすね
(大林)いや 履いてたことないわ
犬は電柱に くくってきたんすか?
くくってへん
なんで俺 いつも 西郷隆盛の設定やねん
フフフ…
(大林)何 笑(わろ)とんねん (店員)はい 焼き鳥 お待ち
ありがとうございます
(大林)それより知ってる? (徳永)なんすか?
神谷 もう首まわらんぐらい 借金 デカなってもうとんねん
え… マジっすか? そうなんすか?
あいつ お前の前やと カッコつけすぎるとこあるからな
それが神谷のおもろいとこでも あんねんけどや
マジで もう漫才やめな あかんかもしれへん
ハアー すんません 僕 いつもごちそうになってて
あの今後 僕と一緒の時は
なるべく お金 使わせんようにしますね
お前は悪(わる)ないで別に
神谷 徳永の話 する時 ごっつ うれしそうやもん
(テレビCMの音)
しゃーけど 売れたいのう
そうっすね
あっ
鹿谷 出てるやん
(徳永)最近 よう鹿谷 見ますね
(大林)俺らがやってきた 100本近い漫才
鹿谷は生まれた瞬間に 超えてたんかもな
(雨の音)
(徳永)ハア…
(雷鳴)
(携帯電話の着信音)
(神谷)徳永
何してんの?
久しぶりにメシでも 食わへんか?
(神谷)おはようさん
おはようござ…
1回金髪にして色抜いてから 銀にすんねやな
頭 痛かったわ
メシ食いに行こうや
あ… 僕 大丈夫です
そんなこと言わんと付き合えや
実はな 女がメシ作って 待ってんねや
(徳永)え?
(由貴(ゆき))えーっ!
テレビで見たことある人だ!
スパークス 徳永です
(神谷)なっ? 仲ええ 言うたやろ
すごーい! どうぞ
じゃーん 餃子もあるよ
(神谷)こいつ 餃子 めっちゃ好きやねん
(由貴)ホント? (徳永)僕 餃子 めっちゃ好きです
何個くらい入れよっか?
2回戦目で入れよう
なんなん? お前 ダイエットしてんの
(徳永)いやいや (由貴)あー! ねえ
スパークス 出てるよ
すごーい
せやねん 言うて…
俺にもし アホな彼女ができた時の ためにも練習したいねん
ちょ… ちょっと待って アホな彼女はそもそも つくるな
お前に俺の恋愛の権利を奪う 自由な権利はないやろ
(山下)なんで権利 2回言うねん (由貴の笑い声)
そら そうかも しれんけどやな お前
(徳永)お願い やろうや〜 (山下)いやいや ちょっと待って…
(徳永)やりたい〜 (由貴の笑い声)
(由貴)ちょっと…
(由貴の笑い声)
(由貴の笑い声)
まあ この次の週には 負けてまうんですけどね
(神谷)へえ
あく取り ちょうだい
(徳永)神谷さん どうでした?
僕らのネタ
せやな
もっと徳永の好きなように
面白いことやったほうが ええんちゃうかな
できないんですよ
あっ 私 コンビニ行ってくるね
(神谷)うん (由貴)じゃビール買ってくる
うん
面白くなかったんでしょ
僕らのネタ
いや おもろくないってことじゃ ないねん
俺 徳永が面白いの 知ってるから
徳永やったら もっとできると思ってまうねん
ほな 自分がやったら よろしいやん
ごちゃごちゃ 文句 言うんやったら
自分がオーディション受けて テレビ出て
面白い漫才やったら いいですやん!
(神谷)せやな
神谷さんみたいにね
僕だってね
いや 僕だけじゃないですわ
全ての芸人にはね
絶対おもろいって—
自分の中でおもろいって 思うことがあるんですよ
でも それは 伝えなあかんから
その努力を怠ったら
その努力を怠ったら 自分の面白いと思うものが
なかったことになるから
考えすぎちゃうか
もっと気楽に 好きなことやったら ええんちゃうか
趣味やったらね!
趣味やったら それでいいんですよ!
でもその努力を怠ったら
自分の好きな漫才を
続けられへんくなるから…
怠っちゃダメでしょ
神谷さん!
自分のその 捨てたらあかんもんを
絶対に捨てたくはないから
ザルの網の目を 無理やり細かくしてるんですよ
でも それでも ほんなら 細かくしてもうたら
無駄なもんも そら ようさん入ってきますよ
でもそんなもんは
僕だって いつでも捨てられるんですよ
捨てられることだけを 誇らんといてくださいよ
神谷さん その髪形も 僕の真似ですよね?
服装も僕の真似ですよね?
神谷さん 人の真似だけは 絶対に嫌やとか言うてましたよね
てか自分自身の模倣すらも
したくないとか 偉そうに言うてましたよね
もう これは模倣じゃ ないんですか?
お前の髪形 見てな
カッコええな 思うてな
完全に模倣ですやん
おしっこ
(神谷)おいおい… ベッカム 目指したら
水前寺清子(すいぜんじきよこ)みたいに なってもうた
チータにも 全くなってないですよ
(神谷)ハハ… あかん?
じゃあ何?
ちょうだい
はい
はい
ちょうだい
(クリスマスの曲)
(山下)せや
バイトで余ったピザ 持って帰って
(徳永)おお ありがと
もうめっちゃ冷たなってるけど
もう1本 缶コーヒー飲もうかな
自分は? 要る?
ううん ええよ
よいしょ
(山下)20円 持ってる? (徳永)ないんかい!
徳永 カッコええ服 着てんな どこで買ったん?
なんか 話 あるんちゃうの
うん
そうやねん
なんの話やねん
俺ら このままやってたら もうあかんと思うねん
下からも ドンドン出てくるし
もうちょい頑張ろうや
自信ないねん
漫才の自信はあるで
でも この生活 続けていく自信がないねん
俺 芸人 向いてなかったんかな とか思って
どないしてん?
俺や
彼女と籍 入れてん
お腹に赤ちゃん おんねん
生まれてくる子供の ためにって言うたら
言い訳に なるかもしれへん
けど
生まれてくる子供が 背中を押してくれたんは
確かやと思うねん
漫才やろう言うたんは お前やぞ
(山下)ごめん
おめでとう!
おめでとう
ほんなら あれやわ あの
急いで4人で暮らせる家 探さなあかんな
(山下)いや お前 一緒に住まんでええねん!
向こうの親に なんて説明すんねん!
ハハハ…
(山下)行くわ
(徳永) 僕たちが事務所に 解散することを伝えると
いくつかの決まっていた 営業の仕事だけは
消化してから ということになった
誰一人 僕たちの解散を 止めたりはしなかった
(客A)カラオケ 行きましょう (客B)ああ いいね
(客B)ごちそうさん
(客A)ごちそうさまでした (店員)ありがとうございました
(徳永) 神谷さんとは あれ以来 会っていなかった
あほんだらの噂も 耳にしなくなった
(徳永) 僕は同じ時代に
同じ劇場で 共に戦った全ての芸人たちを
誇らしく思う
汚れたコンバース
同じような貧相な 格好をした連中が
たくさんいた
彼らは つかの間
自分が世間から 置き去りにされてることを
忘れさせてくれた
永遠とも思える 救いようのない日々は決して
ただのバカ騒ぎなんかでは なかったと断言できる
それは—
ダメな竜宮城みたいなもの だったかもしれないけど
ひと言も 話したことなどなくとも
もし彼らがいなかったら
こんな狂った生活を10年も 続けることはできなかっただろう
自分が考えたことで 誰も笑わない恐怖
自分が考えたことで 誰かが笑う喜び
一度しかない人生において
結果が全く 出ないかもしれないことに
挑戦するのは怖い
臆病でも
勘違いでも
救いようのない バカでもいい
常識を覆すことに 全力で挑める者だけが
漫才師になれるのだ
(出囃子)
(山下)どうも〜 どうも スパークスです
よろしくお願いしまーす
世界の常識を覆す漫才を やるために
(観客の笑い声) (徳永)この道に入りました
僕たちが覆せたのは
努力は必ず報われるという 素敵な言葉だけです
いや あかんがな! それやったら あかんやん それ
感傷に流れすぎて
自分の思ってることが うまいこと 伝えられへん時ってあるやろ?
うん あるよ
だからな あえてな
あえて今から 反対のことを言いますと—
宣言をした上で
自分の思ってることと 逆のことを全力で言うたら
明確に思いが 伝わるんちゃうかなと思うねん
お前 最後まで 訳の分からんこと 言うな
まあま やったら分かるわ アホのお前でもやったら分かるわ
(山下)アホ言うな (観客の笑い声)
ほな いくぞ
おい 相方!
なんや?
お前は ホンマに 漫才がうまいな
(観客の笑い声) (山下)ちょっと喜びかけたけど
お前 思うてることと 反対のこと言うてんねんな
(徳永)お前は 一切かまへんし (観客の笑い声)
顔も声もええし
実家は大金持ち 最高やな!
(観客の笑い声) (山下)腹立つな お前!
なんやねん
天才やな
しばいたろか お前
まっ そんな天才のお前にもな いくつか大きな欠点があるぞ
(山下)おお なんや? (徳永)まず—
部屋が汚い
(山下)しょぼいねん (観客の笑い声)
俺ちょっとな 部屋は 小ぎれいにしてるほうやけど
もっと他にあるやろ お前
小食の遅食い
僕ね 大食いの早食いなんですよ
俺 アホみたいやんけ
彼女がブス
いや それ うれしいけど それ うれしいけど
俺のこととちゃうやんか
相方が 素晴らしい才能の持ち主!
ああ?
そんな素晴らしい才能の 天才的な相方に
10年間 文句ばっかり言うて
全然ついてきて くれへんかったよな!
そんなお前と ずっと一緒やったから
もう一切おもろなかったわ うん
全然 楽しくなかったわ!
俺が世界で一番不幸じゃ!
ほんで 客!
お前らも ホンマ 賢いやっちゃな
こんなめちゃめちゃ 売れてる—
将来性のある芸人のライブに
一切金も払わんと 連日 通いやがって なあ!
お前ら ホンマに 賢いやっちゃで… うん
おかげで—
毎日 苦痛やったぞ ボケ!
お前 口 悪いな
僕の夢は—
子供の頃から 漫才師ではなかったです
子供の頃から 漫才師に なりたかったってことやな
もう絶対に—
漫才師になんかなったるかと 思ってました
絶対なりたくないと 思ってました
もう絶対に
せやけど
中学時代に
この相方と 出会ってしまったんですわ
そのせいで 漫才師になってもうたんです
もう最悪ですよ
そのせいで僕は死んだんです
殺されたんですわ!
俺はこいつに 殺されたようなもんですよ
よっ! 人殺し!
たまにね
僕らのことを 褒めてくれる人もいるんですよ
そいつらが
すっごくうれしくてね
ホンマに人生を 肯定されたような
喜びを得るわけなんですよ
でもそんな中
水を差してくる奴らもいてね
それが
お前ら!
聞いとるか ボケ!
お前らは “スパークスは最低だ!”
“見たくもない”とか言うて
俺らの人生を 否定してくるわけですよ!
山下 徳永 スパークスの人生を!
否定してくるわけですよ
ホンマに…
大嫌いじゃ ボケ!
何を一生懸命 聞いとんじゃ ボケ!
僕ら スパークスは
今日が最後の漫才では ありません
これからも毎日
皆さんとお会いできると思うと
すごくうれしいです
僕は10年間… この10年間を糧に
生きません!
だから どうか皆さんも
適当に死ね!
死ね!
死ね!
死ね! 死ね!
死ね! 死ね! 死ね! 死ね!
死ね! 死ね! 死ね!
全員 死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
お前は家族と別々に死ね!
やかましいわ
何を笑うてんねん お前
お前も笑うてるやんけ
お前な
何さっきから暴言 吐いてんねん
客 泣かして どうすんねん お前
漫才っていうのは
お客さんを 笑かさなあかん
お前 こんなん
どこが漫才やねん
ほんなら お前
最後の最後に
常識を覆す漫才が できたっちゅうことやな
やかましいわ
ほんならお前も 漫才の最後に なんか言うことないんかい?
相方
なんや
お客さん
僕は皆さんに
なんの感謝もしてません
お前 最低な奴やな
(観客の笑い声) いや 俺も逆のこと言うたんや
(山下)分かるやろ (観客の笑い声)
お前はホンマに 漫才がうまいな
もうええわ!
(山下・徳永) どうもありがとうございました
(観客の拍手)
(徳永) もっと漫才をやりたい
ずっと漫才を続けたい
こいつの声は 本当によく通る
俺のことを信用して ついてきてくれたのに
悔しい思いとか
つらい思いとか いっぱいしたやろ
ホンマ… ごめん
お待たせしました
こちらの物件とか いかがでしょうか
(若者A)わーっ めっちゃきれい
(若者B)和室のある 物件とかないですかね
和室ですか? そうですね…
(若者A・Bの笑い声)
(徳永)気に入って いただけてよかったです
駅 あちらなんで 僕は ここで失礼します
(若者A)ありがとうございます (徳永)ありがとうございました
よし 行くぞ
(男の子)ママー! (真樹)うん?
あーっ いいねえ くれるの?
ありがとう じゃ 一緒にフゥーしようか?
もっと もっと
(真樹の笑い声)
(真樹)せーの!
付いちゃった こっち向いて
はい 取れた 取れた
じゃ 行こっか
お池 見る? 魚
(メールの受信音)
おはようさん
神谷さん
今まで 何してはったんですか?
相方に顔面 思いっきりどつかれたわ
何があったんですか?
徳永 聞いてくれ 最悪やねん
(徳永)はい (神谷)あんな
今日 事務所に 謝りに行ってんけどな
もうあかんらしいわ
いや そら そうですよ
借金 デカなってな どうしようもなくなって
大阪 帰って 走り回って金つくってんな
返せたんですか?
いや 結局 自己破産して 危ないとこだけ なんぼか返した
(神谷)徳永 絶対 借金すんなよ (徳永)はい
(神谷)借金取り 怖いで〜
(徳永) なんですか それ
Fカップです
はっ?
どうせやったら 大きいほうが おもろい思うてな
シリコン めっちゃ入れてん
あんな 俺 今まで キャラクター っていうもんを否定してたけどな
それも ちゃうな思うてん
キャラクターに負けるような 面白いことはな
全然 面白いことじゃないねん
無理ですよ
こんなん 胸にしか目 いきませんもん
誰が笑うんですか?
なんでやねん おもろいやんけ
(波の音)
(馬のいななき)
全然 面白くないですよ
これで テレビ出れると思うてん
出れるわけないでしょ!
30代の巨乳のおっさん見て
誰が笑うんすか?
あのね
神谷さんは
おっさんが巨乳やったら—
おもろいやろな〜ぐらいの 感覚やったと思うんですよ
でも 世の中にはね 性の問題とか
社会の中で ジェンダーの問題とかで
悩んではる人が たくさんいると思うんですよ
そういう人が—
この神谷さんの状態 見たら
どう思います?
不愉快な気持ちになる
そうですよね
全員が神谷さんみたいな人 ばっかりやったら
もしかしたら なんの問題もないかもしれません
あるいは—
神谷さんが 本当に純粋な気持ちで
女性になりたいのであれば
なんの問題もないですよ
でも そうじゃないでしょう
そういう 人をバカにした—
変な人が いることを僕たちは
世間の人たちは 知ってるんですよ
神谷さんのことを 知らない人が見たら
神谷さんを そういう人やと思いますよ
いや 神谷さんが 悪気ないことは知ってますよ
知ってるけど
もう僕たちは 完全には
世間を無視できないんすよ!
徳永 もう言わんといてくれ
俺が悪い
ホンマに あほんだらや
花火…
花火 見に行きませんか?
神谷さん 花火 見に行きましょうよ
今頃 どこでやってんねん
いや やってますよ
行きましょう
中学の時の修学旅行 思い出すわ
おお 海や
(徳永)いいっすね (神谷)ああ ええなあ
来ましたね
いや 熱海もう着きますよ
ああー
(神谷)徳永 (徳永)はい
一緒に風呂入られへんけど ごめんな
やかましいわ
っていうか 俺 どっちの風呂に入ったらいいの?
(徳永)知りませんよ! そんな
(神谷) おお! おお!… おお おおお…
ホンマか!
おおーっ!
おおおーっ
おお 徳永 見てみい
見てますわ
うわー おい
確か ここ座ったよな?
そうでしたっけ?
全然 変わってませんね 僕ら 10年前にも来たんですよ
覚えてはりますか?
(客)ごちそうさま
(店員) あっ ありがとうございました
さあ… すいません
(娘)ママ ここ 分かんない
あっ はいはいはい
うーんとね こっちでやろうか
(神谷)あれ? これ 明日やんけ
(徳永)え? ああ そうですね
出ようや 二人で
いや もう 締め切り終わってますよ
なんとかなるやろ
なりませんよ
(神谷)お姉さん
ごめん 勉強中
これ 今からでも出れるの?
ああ なんか飛び込みでも OKみたいですよ
うわっ 全然人気ないやん
やろうや
(徳永)やりませんって (神谷)やろうて
嫌です
お前 師匠の頼みが聞けんのか?
僕 もう引退したんですよ 芸人
徳永
はい
俺な
芸人には 引退なんてないと思うねん
徳永は10年間 面白いことを 考え続けたわけやん
ほんで ずっと劇場で 人を笑わせてきたわけやろ
たまに 誰も笑わん時も ありましたけどね
たまにな でも ずっと 笑わせてきたわけや
それって とてつもない 特殊能力を身につけた いうことやで
ボクサーのパンチと一緒やな
あいつら 無名でも 簡単に人 殺せるやろ
芸人も一緒や ただし芸人のパンチは
殴れば殴るほど 人を幸せにできんねや
だから 芸人やめて
他の仕事で メシ食うようなっても
笑いで どつきまくったれ
お前みたいなパンチ 持ってる奴 どっこにもいてへんからな
漫才はな
一人では できへんねん
二人以上じゃないと できへんねん
でもな
俺は二人だけでも できへんと思ってんねん
もし 世界に漫才師が 自分だけやったら
こんなにも頑張ったかなって 思う時あんねん
周りに すごい奴らが いっぱいおったから
そいつらの やってないこととか
そいつらの続きとかを 俺らは考えてこれたわけやん?
ほんなら もう 共同作業みたいなもんやで
同世代で売れんのは 一握りかもしれへん
でも 周りと比較されて 独自のもん 生み出したり
まあ淘汰されたり するわけやん
この壮大な大会には 勝ち負けがちゃんとある
だからおもろいねん
でもな
淘汰された奴らの存在って 絶対 無駄じゃないねん
まあ やらんほうがよかったって 思う奴も いてるかもしれへんけど
じゃ 例えば
優勝したコンビ以外はやらんほうが よかったんかって言うたら
絶対そんなことないやん 1組だけしかおらんかったら
絶対そんな おもろくなってないと思うで
だから1回でも 舞台に立った奴は
絶対に必要やってん
絶対に
全員 必要やってん
だから これからの全ての漫才に 俺らは関わってんねん
つまり 何をやってても
芸人に引退はないねん
ありがとうございます
だから やろうや 漫才
マジすか!
ネタ作るぞ
ハア…
せっかく来たんやから
温泉でも入って ゆっくりしましょうよ
いや もうやる気満々ですやん
ゆっくりしましょうよ
すいません すいません
(神谷)おい 徳永 (徳永)はい
とんでもない漫才 思いついたぞ
ええーっ…
あんな 漫才中ずっと横にな
ホームレスのおっさん 立たしとくねん
でもな 俺らはそのおっさんに 全く触れんと漫才するんやけど
突然 そのおっさんが
家族に向けた めちゃくちゃ感動的な ポエム 読み始めんねん
なんでやねん
(徳永) 僕たちは生きている
生きている限り バッドエンドはない
僕たちは まだ途中だ
これから続きをやるのだ
(神谷)やろうや 漫才
やりませんって…
♪ お前と会った 仲見世の
♪ 煮込みしかない くじら屋で
♪ 夢を語った チューハイの
♪ 泡にはじけた 約束は
♪ 灯りの消えた 浅草の
♪ コタツ1つの アパートで
♪ 同じ背広を 初めて買って
♪ 同じ形の ちょうたい作り
♪ 同じ靴まで 買う金は無く
♪ いつも 笑いのネタにした
♪ いつかうれると 信じてた
♪ 客が2人の 演芸場で
♪ 夢をたくした 100円を
♪ 投げて真面目に 拝んでる
♪ 顔にうかんだ おさなごの
♪ むくな心に またほれて
♪ 一人たずねた アパートで
♪ グラスかたむけ なつかしむ
♪ そんな時代も あったねと
♪ 笑う背中が ゆれている
♪ 夢はすてたと 言わないで
♪ 他にあてなき 2人なのに
♪ 夢はすてたと 言わないで
♪ 他に道なき 2人なのに
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