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すてきだね。
なんで これ 出してないのか不思議。
ホントだよ。 めちゃくちゃいいじゃない これ。
<25年後 まったね~!>
それでは 来週も 夜6時25分から 空港で お会いいたしましょう。
せ~の。 (2人)『Youは何しに日本へ?』。
<私 栗原一止は 24時間 365日対応を標榜する➡
長野県は松本平の 本庄病院に勤務する➡
6年目の消化器内科医である>
白糸の菊本まで お願いします。
<崩壊寸前の地域医療を➡
満身創痍で 支え続ける私たちが➡
あるはずもない寸暇をかき集め かかる宴を開いたのは➡
本庄病院に赴任して すでに数か月が経った➡
我が友 進藤辰也と➡
新しく赴任する消化器内科医 小幡奈美先生に➡
熱烈なる歓迎の意を 表すためである。
ちなみに 私の話しぶりが➡
いささか古風なのは ご容赦願いたい。
これは 学童期から敬愛する 夏目漱石先生の影響である>
お疲れ栗原 仕事は片付いたか?
もちろん まだだ。
タツ 主賓が片隅で何をしている。 僕も さっき来たところでね。
それに主賓っていうより 主賓のおまけだよ。
言うまでもない あれ 怪獣は?
大腸穿孔のオペ中らしい。
次郎は 近ごろ 執刀医を任されている。
甘利先生からの信頼が 厚くなった証拠だ。
よろしく 小幡先生。
先生だなんて 小幡くんで結構ですわ 甘利先生。
さあ皆さん 注目!
大体 メンツがそろったので➡
改めて うちの内科の 新しいエースを紹介します。
小幡奈美先生です。 よろしくお願いします。
小幡は不肖 私 板垣が 信濃大学病院で➡
手塩にかけて育てた 逸材であります。
その後 ERCPでは 日本トップクラスの➡
札幌稲穂病院に移りまして 知識と技術に磨きをかけた➡
消化器内科12年目の旬!
まさに旬の 超優秀な内科医であります。
超音波内視鏡のドクター教育を 行えるほどの➡
日本でも有数の エキスパートでありまして➡
その小幡が うちに来るというので➡
あの渋ちんの金山事務長が大奮発。
なんと 超音波内視鏡を 購入したのであります。
EUSを。 というわけで➡
小幡奈美を 一つよろしく。
EUSか 帝都大学祈念病院ですら 数台しかない高級品だ。
大したものだ 私は 触ったことすら… あっ。
栗原先生 小幡です。
同じ信州のゴッドハンドの弟子同士 よろしくね。
栗原です よろしくお願いします。
ああ いえ 結構です じゃあ先生 一献。
下戸なの。 あ… あ じゃあ…。
あ 失礼。 (バイブ音)
はい 栗原です。
吐血の急患が来た 緊急内視鏡をお願い。
引きの栗原の当直じゃないから 今夜は楽勝だと思ってたんだけど。
すぐに。 戻る。 お疲れ。
(東西)そのEUSって超音波内視鏡 そんなにお高いの?
100万円くらい? 少なくともお前の年収よりは高い。
は~ テンション下がる~。
先生 大丈夫? 何がだ 東西。
あ いや 金山事務長に にらまれてるってウワサよ。
栗原先生をやめさせて 浮いたお金でEUSの代金➡
払うつもりかも。 やだ~ そんなことになったら➡
私 どうしたらいいの?
残念ながら 私の年収でも やはりEUSは買えない。
それに私は妻のある身だ 東西。
はいはい 世界で いちばんおいしいコーヒーを➡
淹れてくれる奥さんがいたっけね。
どうせ私は いつまで経っても2番目よ。
言うまでもない。 東西主任。 ん?
昨夜 救急に運ばれた 吐血の患者さんが➡
今からこっち 内科病棟に 上がってくるみたいです。
あ~ 36歳のマロリーワイスね。 (水無)はい。
外村先輩から聞いてる。 (外村)はい 動かしますね。
調子はどうです 榊原さん。
だいぶ落ち着きました 栗原先生のおかげです。
ぜん息の持病もあるようですね。
マロリーワイスの経過も含め しばらく入院で様子を見ます。
はい よろしくお願い…。
ナオミ?
シンちゃん?
ナオミ? シンちゃん?
(バイブ音)
はい 栗原です あっ 小幡先生。
はい もちろんです すぐに行きます では。
動かしますね。
あっ。
何 人の顔見て そんなに驚く?
あ いや 顔ではなく 距離に驚いたのです。
ボーっとしてるから 起きてんのかなと思って。
女のことでも考えてた?
これ よかったら食べて 実家が リンゴ農家なの。
小幡先生 雑念があったのは 認めます 続きを。
終わり 教えてもらうなら 予習くらい しとかないとね。
すみませんでした 次回は 必ず予習をしますので➡
また ご指導お願いできますか? 気が向いたらね。
栗原くんに負けないくらい 私も クソ忙しいの。
何? あ いや 別に何も。
主任 大丈夫ですか?
何が?
あ~ やだ シンちゃんのこと?
なんでもないのよ ただの昔の お と こ。
なんてね~。
マロリーワイスは 完全に止血しました。
ぜん息発作も ほぼ見られません。
しかし 肝機能の数値が悪く 黄疸が…。
すみません なぜ黄疸なんか?
CTに 異常はありませんでした 薬の影響かもしれません。
薬…。
恥ずかしい話ですが 最近少し 酒の量が➡
増えていました そのせいかも。
飲酒直後ならまだしも 普通は➡
入院後2~3日で 黄疸は消えます。
薬を変えます。
ありがとうございました 栗原先生。
まだ何か? あ~ 私は古典を愛好する者です。
よもや それはロマン・ロランの 『ジャン・クリストフ』ではないかと。
あぁ はい。
いろいろと手放してきた 人生ですが➡
この本だけは 肌身離さず お守りのようなものです。
『ジャン・クリストフ』 ある音楽家の生涯を 描いた フランス文学の金字塔。
ベートーベンをモデルにしたと言われてるが 定かではない。
装丁も見事だ。
美術品といって過言ではない。
どうぞ 手にとってご覧ください。
あぁ 催促したようで お恥ずかしい 失礼。
なんという香りだ。
積み重なった時間と 上質な紙とインクの香り。
天金の輝き。
これは下巻ですね 上巻は?
上巻は どこかへ なくしてしまいました。
なくした? なんと惜しいことを。
あ… 失礼 興奮がすぎました。
私も昔 ジャン・クリストフのように 作曲家の道を志していました。
その夢も 今は昔。
「芸術家とは いかなる嵐の中でも➡
常に 北を指し続ける羅針盤だ」。
『ジャン・クリストフ』の一節です。
先生…。
たとえ 今が嵐でも➡
ともに北を目指しましょう 榊原さん。
はい 活力が湧いてきました。
栗原先生 317号室 内村さんが VFです。
VF? 失礼します 行こう。
助かったよ 栗原。
助かったのはお前ではない お前の患者だ。
夏菜は? 夜中なら おふくろが見てくれる。
もし 夏菜に何かあれば 次も 栗原に任せて家に帰るさ。
それでいい。
あとは僕が見るから 君はそろそろ家に帰れ。
帰ってもいいが ハルは今 東京にいて留守なのだ。
東京に? 出版社との打ち合わせだ。
次の山岳写真集の企画を 詰めているらしい。
この病院って ホントに 次から次へと患者が来るのね。
当直ですか? おつかれさまです。 おつかれ。
これじゃ 論文が全然進まない。
今月中にリバイス 2本もあるのに。 はい よかったら食べて。
すごいですね。 先週も投稿されてましたが。
当然じゃない。
最新医療は進み続けてる。 勉強をサボれば➡
知識は すぐに時代遅れ。 臨床医だから➡
論文書く暇がないなんて 信じられない怠慢だわ。
すみません。
あ~ 小幡先生 相談したい症例があります。
マロリーワイスで入院した榊原信一さんに 原因不明の黄疸が出ており➡
CTに病変はありませんでした。
念のため 榊原さんに EUSをお願いしたいのですが。
しなくていい。 なぜ?
(バイブ音)
はい。
了解。 救急戻るわ。
ったく なんて忙しい病院なの?
容赦ないな。 痛いところを一突きされたよ。
おつかれさまです 外村看護師長。
こんな時間にご帰宅?
おつかれさま。
東西はどう? ちゃんとやってる?
シンちゃんと ナオミですか。
まっ 特に変わらないようです。
重体ね。 えっ?
まぁ あいつのことだから 持ち直すとは思うけど➡
たまには お酒の一杯も つきあってやんなさいよ 先生。
どうして私が?
先生ってさ➡
山ほど本読んでるくせに 女心が全然わかんないのね。
さっ そろそろ戻るわ。
まぁいいか。
病室を変わるんですか? 今すぐ ただちにです。
少し時間をください。 荷物まとめないと。
荷物はこちらで すべて移動します。
いや そんな迷惑かけるわけには…。
迷惑なのは この状態を続けていることだ!
あっ いや これは…。
あっ。 肝機能の悪化も 黄疸も➡
薬の副作用ではありませんでした。
あなたが入院後も ひそかに酒を買い➡
飲んでいたからだ。
まずは個室へ移動してください。 そのうえで➡
断酒療法のある 精神科の病院に転院するか➡
ここで治療を継続するか 話し合い…。
東西?
何をやってるの? シンちゃん。 ナオミ。
ずっと こんな生活を?
世界一の交響曲を書くって夢は?
答えてよ シンちゃん。
あんな形で学校をクビになった 僕の交響曲を➡
誰が聴いてくれるっていうんだ? ナオミ。
すべて失って➡
ぜん息と マロリーワイスだけが残った。
やりきれなくてね。
酒を飲んでは 血へどをはく。
そんな10年を経験すれば 誰だって…。
いや 違う。
これは僕が選んだ人生だ。
君が責任を感じることは ないんだよ ナオミ。
もちろん責任なんて感じてない。
でもね 芸術家は➡
どんな嵐の中でも 絶対に北を見失わない➡
羅針盤なんでしょ!
私は あれから10年 一度も北を見失ってない。
どうしてだか わかる?
ここは病院です 榊原さん。
たくさんの人が 病気と闘っている場所です。
治す気がないなら 出て行ってください。
点滴を抜くのは 適当な行為ではない。
泣きたいのに 涙すら出ない。
死にたいのに➡
苦しくて救急車を呼んでしまう。
点滴くらい いつでも自分で引き抜けるのに➡
それもやらない。
ダメ人間ですよ 僕は。
自虐が過ぎますね。 病気が人を弱くする。
あなたに もう1つ 『ジャン・クリストフ』の一節を贈ります。
「忠実な友が 君と一緒に泣く限り➡
人生は苦しむ価値がある」。
東西は あなたのために泣いていた。
雨だ。 知ってる。
持っていけ。 いらない。 先生がぬれちゃう。
やむをえぬ。 人が2人いて 傘は1本だ。
アルコール依存患者の点滴を 引っこ抜いた件なら➡
気にせずともいい。
あのままでは 私が 引っこ抜いていた。
先生。
一杯だけ つきあって。
(東西)10年前➡
女子高時代の音楽の先生だったの。
気が弱くて ぜん息持ちで イケメンで➡
才能があった。
教師をしながら 作曲家を目指してたのよ。
きれいな曲を作ってた。 私 好きだった。
やはり恋仲だったか。
ブブー! 一方的な片思い。
ほら 私はグイグイ行くほうだけど シンちゃんは シャイで良識派で➡
それに…。 生徒と教師だ。
10年前 シンちゃんが 3年がかりで やっと完成させた交響曲が➡
新人賞を取ったの。
で 私 お祝いの花束を持って おうちに押しかけた。
シンちゃんも 珍しくテンション上がってて➡
自分のお気に入りのレストランに 連れてってくれたの。
(東西)すごく幸せだった。
憧れのアイドルとデートしてるみたいな。
夢の中にいるみたいな。
そのお店に 女子高の関係者がいたのよ。
教師が生徒と何事か。
大問題になったわ。
シンちゃんは 校長からも 同僚からも 保護者からも➡
さんざん責められて 学校を辞めた。
⦅ごめんね シンちゃん ごめんなさい…⦆
町から消えた 私のせいで。
(東西)そのあと 私 クラシック関係の雑誌を買い続けたわ。
シンちゃんは きっと どこかで 作曲家になってくれる。
またきっと きれいな曲を書いてくれる。
私にできるのは信じることだけ。
(叫び声)
♬~
(東西)私が 看護師になろうと思ったのは➡
シンちゃんが ぜん息で苦しんでたからなの。
発作で ゼーゼー言いながら 作曲してる姿を見て➡
ああ こんなふうに 命がけで夢を追いかける人の➡
サポートしたいって 本気で思った。
それが私の夢になって…。
10年。
別にね 別に この10年➡
ずっとシンちゃんだけを 思ってきたわけじゃないわ。
つきあった人もいるし 仕事にやりがいも感じてる。
でもね…。
落ち込んだとき 泣きたいとき➡
絶望しかけたとき➡
私の羅針盤は ゼーゼー言ってたシンちゃんだった。
ゼーゼー言いながら きれいな曲を書いてた人。
その人が あんな…。
先生… 私 悔しい。
えっ…。
そこまで興味ないっすか。
イテッ!
どうぞ。
<諸君 私が どこから寝ていたかを探るのは➡
野暮というものである>
マスター ハルには ないしょに願います。
栗原先生 ここは 居酒屋久兵衛ですよ。
<諸君 私も野暮であった。
数日後 榊原さんが転院となった。
断酒療法のできる 精神科の病院へ行くことを➡
自ら申し出たのである>
ナオミは… いえ 東西さんは どうしてますか?
今日は たまたま休みです。
あっ これ。
『ジャン・クリストフ』の上巻です。
先生 どうやって手に…。
私ではなく 東西から。
女子高時代 あこがれていた 音楽教師から➡
拝借したそうです。 ナオミに貸してた?
ああ… そういえば確かに。
まだ読めていないからと➡
ずっと返却を 引き延ばしていたそうです。
これさえあれば いつでも 会いに行く口実があるからと。
困ったヤツです。
読んだ痕跡が… ない。
難しすぎて 早々にギブアップしたと。
東西とは そういうヤツです。 心配はいりません。
彼女は 昔からそうです。
太陽のように明るくて➡
ゼーゼー言ってる私を 横から笑わせてくれた。
笑わせるのは 治療としては 不適切だ。
ナオミが持っていてくれたんですね 上巻。
ええ 不純な動機ながら 10年も。
迎えが来られました。 はい。
先生 私は…。
「おお 我が友よ。
君は木が育つのに➡
雨よりも 水差しが必要だと 言うつもりかね!
土よりも 鉢が必要だと言うつもりかね!」。
「目を開いて見たまえ。 広大な大地が広がっている!」。
何ですか それ?
『ジャン・クリストフ』の一節です。
栗原先生。
♬~
<小幡先生が 救急部の患者を検査もせず➡
一晩放置したのは➡
それから 間もなくのことであった>
<小幡先生が 救急部の患者を検査もせず➡
一晩放置したのは➡
それから 間もなくのことであった>
横田さんは? 悪いわね 先生。
ちょっと心配で。 当然です。 横田さん? 横田さん?
外村看護師長 もう何時間 この状態ですか?
6時間です。
横田さん! あ~ よかった 気がついた。
俺は もう飲めねえぜ ママ。
ママではなく 外村看護師長です。 こりゃ 栗原先生。
また運ばれちまいましたか 面目ねえ。
検査をします 血液検査でアンモニアを。 了解。
検査の結果 横田さんは➡
重度の肝性脳症を 再発していました。
そう 迷惑かけた。
なぜ検査もせず 一晩も放置を。
カルテには 飲酒で肝性脳症を 繰り返してるとあった。
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