Afrikaans
Akan
Albanian
Amharic
Arabic
Armenian
Azerbaijani
Basque
Belarusian
Bemba
Bengali
Bihari
Bosnian
Breton
Bulgarian
Cambodian
Catalan
Cebuano
Cherokee
Chichewa
Chinese (Simplified)
Chinese (Traditional)
Corsican
Croatian
Czech
Danish
Dutch
Esperanto
Estonian
Ewe
Faroese
Filipino
Finnish
French
Frisian
Ga
Galician
Georgian
German
Greek
Guarani
Gujarati
Haitian Creole
Hausa
Hawaiian
Hebrew
Hindi
Hmong
Hungarian
Icelandic
Igbo
Indonesian
Interlingua
Irish
Italian
Japanese
Javanese
Kannada
Kazakh
Kinyarwanda
Kirundi
Kongo
Korean
Krio (Sierra Leone)
Kurdish
Kurdish (Soranî)
Kyrgyz
Laothian
Latin
Latvian
Lingala
Lithuanian
Lozi
Luganda
Luo
Luxembourgish
Macedonian
Malagasy
Malay
Malayalam
Maltese
Maori
Marathi
Mauritian Creole
Moldavian
Mongolian
Myanmar (Burmese)
Montenegrin
Nepali
Nigerian Pidgin
Northern Sotho
Norwegian
Norwegian (Nynorsk)
Occitan
Oriya
Oromo
Pashto
Persian
Polish
Portuguese (Brazil)
Portuguese (Portugal)
Punjabi
Quechua
Romanian
Romansh
Runyakitara
Russian
Samoan
Scots Gaelic
Serbian
Serbo-Croatian
Sesotho
Setswana
Seychellois Creole
Shona
Sindhi
Sinhalese
Slovak
Slovenian
Somali
Spanish
Spanish (Latin American)
Sundanese
Swahili
Swedish
Tajik
Tamil
Tatar
Telugu
Thai
Tigrinya
Tonga
Tshiluba
Tumbuka
Turkish
Turkmen
Twi
Uighur
Ukrainian
Urdu
Uzbek
Vietnamese
Welsh
Wolof
Xhosa
Yiddish
Yoruba
Zulu
とってもよかったです。
せ~の…。 (一同)ヨイトサー!
それでは 来週も 空港でお会いいたしましょう。
せ~の…。 (2人)『YOUは何しに日本へ?』。
<私 栗原一止は 24時間 365日対応を標榜する➡
長野県は松本平の 本庄病院に勤務する➡
5年目の消化器内科医である>
(泣き声)
大丈夫 大丈夫! ありがとうございます。
先生 耳…。 お気になさらず お大事に。
すみません。 じゃあ お母さん こっちに。
<本日の救急外来当直 現在 午後11時。
急患は ひっきりなしで 相も変わらず多忙である>
先生 あれ ください。 ん?
だから 花粉症の目薬をください。
昼間は会社ですから 夜しか時間なくて。
だって 開いてる病院 ここしかないでしょ?
わかりました。
< こういう人間に 救急の意味を説いても➡
医者もサービス業だと 開き直られるのが常である>
では 受付で お薬をもらってください。
しかし 目薬一本で どんだけ待たせんだよ?
《だったら ドラッグストアで買え》
吐血の急患は 54歳男性。 アルコール性肝硬変で➡
当院に通院中の横田さん。 横田さん… また? そう。
横田さん 降ろしますよ。
横田さん 病院着きましたよ。 私の声 聞こえますか?
俺は もう飲めねえぜ ママ~。
横田さん また飲みましたね?
禁酒してくださいと いつも言っているはずですが。
栗原先生じゃないの?
こんな遅くに ご苦労さんです。
外村看護師長 赤ベッド1番へ! 赤の1番 吐血が入る!
手を貸して! 1 2 3!
両腕 ソルラクトでライン確保。 気道 確保。 血圧 確認。
栗原先生 10分後 救急車です。 9歳 女児 突然の強烈な腹痛。
意識レベル 低下しているそうです。 相談します。
さすが 引きの栗原ね。 今夜も 救急部を眠らせないつもり?
遺憾ながら お覚悟ください 外村看護師長。
<私の当直の夜は ふだんの1.5倍 急患が来る。
ゆえに救急部からは 引きの栗原と呼ばれている。
ちなみに私の話しぶりが いささか古風なのは➡
学童期から敬愛する 夏目漱石先生の影響である>
栗原先生 外来のほうも そろそろ お願いします。
しばし待て。 血液検査 血液ガス➡
心電図 レントゲン チェック SBチューブも用意を。
持っててください。
クリちゃん おはよう。 朝だよ~。
ゆうべは救急車 6台と ウォークインが 36人だって?
普通じゃないね。 アハハハハハ!
あっ こちら 本庄病院の 新しい戦力 血液内科の➡
進藤辰也先生だ。 タツ!
栗原。 タツではないか!
ええ? なに? 知り合い?
ええ 進藤辰也は 信濃大学医学部の同期です。
私の唯一の友人であり 将棋部の好敵手。
元気だったか? タツ。 ああ。
栗原も… と言いたいが 医局で仮眠かい?
そうなんだよね。 これが いつもの栗原先生で➡
これが いつもの 本庄病院なのよ 進藤先生。
ってか シンちゃん。
シンちゃん?
部長先生 タツは 医学部を首席で卒業し➡
東京の帝都大学祈念病院の 研修枠を勝ち取った➡
秀外恵中の男です。
私たち 医学部の良心です。 言いすぎだよ 栗原。
言い足りぬくらいだ。 タツが来たなら百人力ですよ➡
大狸先生。 大狸って誰のこと?
じゃ クリちゃん シンちゃんの 院内の案内頼んだぜ。
はい。
大狸か。 他に 古狐先生もいる。
内科副部長だ。
⦅栗原先生は いつも私に驚かれますね⦆
大狸に古狐か。 楽しそうな病院だな。
まぁ 主観は人それぞれだが 前人未到の忙しさは太鼓判だ。
それより なぜ信州に 帰ってきたのだ? タツ。
お前ほどの男なら 東京でも内科医長くらいには➡
なれるはず。 いろいろあってね。
そうか ならば聞くまい。
あっ そうだ 如月は元気か?
千夏のことかい? ああ。
まぁね。 たしか お前たちには➡
4歳になる娘がいたな。 元気か?
まぁね。
君に会えてうれしいよ。 栗原。 私もだ。
友の凱旋を心から祝福する。
凱旋じゃない 都落ちだ。 都落ちなら更にめでたい。
出世するより人間でいられる。
さて 院内を案内しよう。 皆にお披露目せねば。
その前に 一局 指さないか。
5年半ぶりに。 賛同しよう。
栗原。 ん?
言っておきたいことがあるんだ。 なんだ?
東京より もっと 地方病院の医者不足が➡
もっと 限界を超えていることは 僕も承知している。
だけど僕は… 僕なりのやり方を通すつもりだ。
当たり前だ。 お前が根を詰めすぎぬよう➡
私が息抜きの相手になろう。
ようこそ 医療の底辺へ。
栗原先生。
ああ…。 なんで あんなにかっこいいの?
って 内科病棟の看護師たちが 大騒ぎしてるわ。
私にか? なんでよ?
新しく来た血液内科の 進藤辰也先生に。
さもありなん。 でもさぁ 進藤先生は➡
なんで 東京の大学病院から➡
よりによって こんな田舎に来たのよ?
向こうで何かやらかした?
女性関係とか? 東西?
安心して。 私は 栗原先生 一筋だけど➡
他の看護師は そうじゃないのよ。
私には細君がいる。 タツには 娘もある。
タツの実家は 松本城の近くで 蕎麦屋をしている。
母一人 子一人ゆえ タツが帰ってきたのは おそらく➡
母親を心配してのことだ。
働き盛りなのに?
タツとは そういう男だ。
高潔な青年なのだ。
ふ~ん。
あっ。 こんにちは!
栗原先生 主任さん。
こんにちは。 お散歩ですか? トヨさん。
トヨさんに お山を 見せてやろうと思って。
じゃあ 私がお連れしますよ マゴさん。
いや わしが連れていきます。
なぁ トヨさん。 はい。
マゴさんに連れてってもらうのが わしの幸せじゃ。
フフフフ…。 いってらっしゃ~い。
トヨさんは 88歳。 マゴさんは 89歳。
今年で 結婚して70年ですって。
70年。 トヨさん 家に帰れそう?
また 肺炎を起こせば 難しいだろうな。
70年。
結婚70年は 何婚式だ?
金婚式とか 銀婚式とかのあれ?
うん。
あっ…。
いたいた いた 一止!
一止! なぁ!
おい なぁなぁなぁ。 ん?
タツが来たって ホントか? 一止。 ああ。
こんな田舎の病院に 同期が3人も集まるなんて➡
すっごい奇跡だよな? お前も同期か 失念していた。
俺は覚えてるぜ。
特に 将棋部三角関係事件。
男どうしの三角関係?
ううん 女性ですよ。
大学時代の 一止の恋バナでしてね 主任!
変人の こ… 恋バナ?
東西 なぜに そこまで驚く? 詳しく聞かせて 砂山先生。
大した話ではない! 謙遜するなよ!
その文脈はおかしいが ホントに大した話ではないぞ。
あの頃 一止とタツの たった2人の将棋部に➡
1個 年下の女子が 入部しましてね。
名前が… う~ん 何だっけ?
如月だ。 そうそうそう 如月。
如月千夏だ。 一止とタツが その如月を取り合って➡
とうとう 将棋部 解散しちまって…。
ちょ… 大事件じゃない!
で 恋と友情に悩んだタツは➡
東京の大学に行って 如月が そのあとを追っかけて➡
ふられた一止は変人になって…。
やぁ 水無さん。
こ… こんにちは 砂山先生。
そ… それ 消毒?
あ… はい。
僕 今 暇なんだ。 手伝うよ。
ありがとうございます。
ごきげんよう。
タツにかこつけて 怪獣は 水無さんの出待ちだったようだな。
なんだ? 東西。
変人 栗原にも 胸キュンの青春時代があったんだ。
怪獣の話は 話半分に聞け。
ふぅ~。
(サイレン)
山下さん 病院着きましたよ もう少し頑張ってくださいね!
山下さん 52歳。 強い腹痛を訴えてます!
山下さん 病院 着きましたからね!
医学部の良心ですか。
そうだ。
あっ!
信濃大学は 老朽化が著しく 私たちの在学中の ある冬➡
医学教室の暖房機器が故障し 連日 氷点下になったことがあった。
それでは 凍えて 勉強どころではないですね。
しかし 大学は修理をケチった。
学生たちは 文句も言えず我慢の日々。
そのとき たった1人で大学に 修理を要求する男が現れた。
それが 我が友 進藤辰也である。
⦅僕は 信州育ちですから 寒さも我慢できます。
しかし 温暖な土地から来た 学生もいます。
彼らに理不尽な我慢を 強いるのは 信州人の恥です⦆
まぁ 頼もしい方ですね。
そこで私も タツに続いて 行動を起こした。
イチさんも? さすが イチさんです。
な~に 大したことはない。
当時 偏屈で名高い 生理学の教授がいたのだが…。
⦅昔の学生は 皆 この環境で学んだ。
ぜいたくを言うな⦆
それは また 居丈高な教授だな。
そこで私は 夜陰に乗じ 生理学教室へ通じる➡
暖房のガス栓を ことごとく閉めた!
あ? え? 翌朝 教授は➡
氷点下の教室で 教鞭をとるに至り➡
昔の教授は 皆 この環境で 教えたのだ とは言えず➡
暖房修理の急先鋒と転じた。 アハハハハ…。
なんと痛快な。 しかし ドクトル…。
そんなことをして イチさんは大丈夫だったのですか?
呼び出されて こっぴどく叱られた。
しかし 一方のタツは 地道に教授たちを説いて回り➡
ついに 暖房修理を勝ち取ったのだ。
以来 私たちは タツを 医学部の良心と呼んでいる。
う~ん 見事だ。
その御仁 さぞかし 女人にモテたであろうな?
ん? ああ…。
まぁ…。
⦅栗原先輩 王手です!⦆
どうかしましたか? イチさん。
ん? あ…。
男爵 その言いは まるで➡
タツと私が 女人を取り合った かのように聞こえるが。
は? え?
あ… ち… 違うのだ ハル。
昔の話だ。 昔?
昔といっても… 5年半ほど前だ。
この5年半の間 如月には一度も会っておらぬ!
如月さん。 ドクトル。
違うぞ 男爵。 如月は私の記憶の住人であるが➡
タツが来て思い出された 最近の入居者であり…。
5年半は会っていないけど 最近 入居されたんですね。
イチさんの昔の彼女。
ハル それは大変な誤解である。
ハル。
すさまじい速度で 墓穴を掘ったな ドクトル。
男爵 墓穴というのは やましいことがあってのこと。
もちろんだ。
しかし この先 万が一にも 榛名姫を泣かすことあらば➡
貴族の名誉にかけ➡
決闘を申し込む! さっさと させ。
<10日後 留川トヨさんの容体が急変した>
誤嚥性の肺炎かもしれない。 酸素を4リットル追加。
はい。 日曜なのに ごめんね。
午後から呼吸状態が悪化して。
トヨさんは もう いかんかいのう?
まだ いかんことはありません。
マゴさん 少し休んでください。
毎日 トヨさんの付き添いで➡
マゴさんまで体調崩したら大変です。
けど トヨさんのいない うちに帰っても➡
することがないでな。
おらせてください。 (ノック)
失礼します。 東西主任。 御影さん どうした?
四賀藍子さんの発熱で 39℃です。
高いわね。 えっと 四賀さんの主治医は?
進藤先生です。 電話しても つながらなくて。
わかった。 私が行こう。
すぐに戻ります。
アセトアミノフェン 400ミリ テプレノンを 50ミリだ。 はい。
じゃあ失礼します。
四賀さん 私もこれで。
重篤な患者があり 目を離せない状態なので。
何かあれば すぐにまた来ますから。
私… 死ぬんですか?
あぁ 再生不良性貧血は 少々やっかいですが➡
不治の病ではありません。
四賀さん?
進藤先生から 説明を…。 説明はしてもらってません。
していない? していないとは?
白血病と どう違うんですか?
血液の病気って どういうことですか?
聞きたいこと いっぱいあるのに 進藤先生は…。
回診で来ているはずです。 そのときに質問や説明を…。
めったに来られません。 質問したいってお願いしても➡
いつも あとで。
心配ないですから あとでって。
不安にさせて 申し訳ない。
タツか 私だ。 お前に尋ねたいことがある。
留守番電話に接続します。
発信音の…。
<日曜日のこの日 タツは一度も電話に出なかった>
留守番電話に接続します。
どういうつもりだよ タツ? お前 泉さんの主治医だろうが!
おい 何とか言えよ タツ!
昨日どこにいたんだよ お前?
俺が何回連絡したか わかってんのか タツ? おい!
昨夜 85歳の患者 泉さんが息を引き取ったらしい。
看取ったのは当直の砂山先生。
主治医の進藤先生は 最後まで 病院に現れなかったとか。
次郎 泉さんは延命治療を 希望されていなかったんだよ。
僕が来ようが来まいが 結果は変わらなかった。
おい 結果の問題じゃねえだろ! 担当患者が急変したら➡
駆けつけんのが主治医じゃ ねえのかって言ってんだ!
悲しいほど変わらないな 次郎。
止めなくてもいいんですか?
ひょひょひょ… 栗原先生 いつも私に驚く。
ふるぎ… 副部長先生 いつからそこに?
内藤先生は 最初から ここにおられた。
ホントですか?
これはね 哲学の問題だから 止めても無駄でしょう。
次郎 僕たちは もう学生じゃない。
大人になれよ。
タツ… おい 何言ってんだよ。 タツ!
次郎は ガサツだが本気の医者だ。
本気だから ガサツともいえる。
あいつから本気を取ったら ただのガサツな怪獣だ。
喫煙とは珍しい。 如月はタバコを許しているのか?
如月じゃない。 進藤だ。
僕の妻になって 如月千夏は進藤千夏になった。
千夏が どうして将棋部に入ったのか➡
知ってるかい 栗原?
もちろん知っている。
⦅あの。
信濃大学の方ですよね? 時々 キャンパスで見かけて。
何か?
すみません お財布忘れちゃって バス代 貸してもらえませんか?
あっ すみません。 あっ…⦆
如月は 律儀にも 翌日 学内で私を探し出し➡
バス代を返却した。 ついでに将棋部を見学し➡
私たちの将棋部に入部したのだ。
ついでに見学?
千夏は 前から 君のことが好きだったんだ。
一目ぼれだったらしい。
勇気を出して 知り合うきっかけを作って➡
将棋部にも入った。
《初耳である》
でも 君は 千夏の気持ちに全然気づかず➡
将棋をさすだけだった。 1年間もだ。
⦅栗原先輩 王手です⦆
見ていて千夏がかわいそうで➡
僕が千夏と つきあった。
将棋部は解散し 君と僕は別々の道を歩いた。
《諸君 これが将棋部三角関係事件 の全真相である》
別々の道だ。
僕たちは5年半 違う道を歩いてきた。
だから緊急の電話に応答せず➡
担当患者の不安を 取り除こうともせず➡
臨終すら 次郎に放り投げた 無責任を➡
私に容認しろというのか?
栗原 君も悲しいくらい 変わらないな。
その 悲しいくらいという 副詞の意図を聞きたい。
君は この病院で 1年で 3日も休んでいないそうだね。
医者には まともな食事も 睡眠も許されない。
それでいいのかという意図だ。 そんな理不尽 百も承知で➡
医者をやっている。 君の奥さんは➡
それで納得しているのか?
細君?
日本の医療は➡
医者と その家族を犠牲にして やっと成り立っている。
僕らの良心に無理強いをして やっと面目を保っている。
そんなのは… 狂ってる。
如月が そう言っているのか?
彼女じゃない。
僕だ。
千夏は帝都大学祈念病院の 小児科の医師になった。
一人娘の夏菜も生まれて 僕たちは幸せだった。
けど 産休が終わって 千夏が現場に復帰してから➡
僕たち家族は…。
何があった?
ほんの数か月の産休で 千夏は浦島太郎になった。
新しい試薬 新しい医療機器 新しい症例。
医療は日進月歩だ。
最先端医療を施す 帝都大学祈念病院では 特にだ。
千夏は 遅れを取り戻そうと 必死に頑張った。
けど… 過労で倒れた。
たった1日休んだら➡
担当していた白血病の 子どもの親に責められた。
主治医なら 患者のために命がけで働け。
それは ムチャだな。
けれど病院は 千夏を その子の治療チームから外した。
(辰也)千夏の中の何かが壊れた。
夏菜をベビーシッターに任せて 何日も泊まり込むようになった。
代わりに僕が早上がりをして 夏菜をみた。
⦅育児の片手間に 医者が務まるものかね。
すみません 医局長。 あっ 違う違う 君じゃないよ。
ご主人のほうだよ。
子どもが生まれてから 進藤先生は だめになったと➡
血液内科でささやかれてるそうだ。
ご配慮 ありがとうございます⦆
(辰也)僕たち夫婦は 言い争いが絶えなくなった。
でも やっぱり 医者は医者である前に➡
一人の人間なんだ。
去年 夏菜が百日咳にかかってね。
ママに会いたいって泣いた。
苦しそうだった。
僕は夏菜を連れて医局に行った。
でも千夏は 忙しいからと 夏菜に一目も会わなかった。
そのとき 僕の中でも 何かが壊れたんだ。
僕は辞表を出して 夏菜を連れて信州に帰った。
千夏は今も帝都大学の病院で 小児科医を続けているよ。
タツ…。
今 私に言えるのは…。
その上に 家庭を壊して 医者を続ける千夏を➡
周囲は立派なお医者様だと言った。
だから僕は ここで僕のやり方を通す。
母親のいない小さな娘を 何があっても優先させる。
だから 時間外の電話は出ない。
呼び出しにも応じない。
回診も短く済ます。
延命治療を望まない 患者の臨終は➡
他の医者に… 任せる。
戻ろう。
外来が始まる。
良心に恥じぬということだけが 我々の確かな報酬である。
覚えているか? セオドア・ソレンセンの言葉だ。
医学部時代の私たちの 好きな言葉だった。
不眠不休の 理不尽極まりない 医療現場に身を置いたとき➡
何を心のよりどころとするか。
お前は ソレンセンの言葉を引いて 私に言った。
己の良心に 恥じぬということだけが➡
たった一つの医者の報酬だ。
私は今でも覚えている。
お前は 覚えているか。
何を考えておられたんです? 栗原先生。
良心について考えていました。
ん~ なるほど。 おそらく 進藤先生は今➡
窮地におられるんでしょう。 だがね 彼のそばには➡
砂山先生 栗原先生 あなた方 友人がおられます。
窮地に陥ったとき 一人じゃないってことはね➡
とても重要なことなんですよ。
私のような変人や 次郎のような怪獣が友人とは➡
タツも存外 恵まれない男です。
(笑い声)
いやぁ 私の友人も そうかもしれませんね。
先生の友人?
板垣部長先生。
あの方とはね 医学部時代に 大切な約束を交わしてね➡
以来 40年ですよ。
いやぁ 私たちもね そりゃ 幾度となく➡
窮地に陥りましたけどもね➡
なんとか乗り越えることが できたのは➡
互いが そばにいたおかげだと…。
(くしゃみ)
思いますね。
医学部時代の大切な約束とは。
この町に 誰もが いつでも 診てもらえる病院をつくる。
あのばかデカい看板は では…。
私たちのしわざです。
部長先生が まだ中学時代に➡
お母様が突然 目の前で 倒れられましてね。
搬送先の病院でね 心筋梗塞が疑われたんですが➡
緊急カテーテル検査をね… それができたのが 当時は➡
信濃大学病院だけだったんですよ。
だから また救急車は50km走って。
その最中に お母様は 亡くなりました。
病院は3つほどあったんですよ。 本庄病院も含めてね。
ところが 循環器医がいない 救急はやっていない➡
ということでね 受け入れてもらえなかった。
で 部長先生 お母様のお通夜の晩にね➡
決意されたそうですよ。 だったら 俺が医者になると。
病院があってもさ 医者がいない 救える命も救えない。
こんな悲しいことは なしにしようじゃないかと。
じゃあ 手伝わせてくださいよ ということでね 40年ですよ。
あの看板は そういう看板です。
先生は その約束を 後悔してはいませんか?
してますよ。 ほぼ毎日 後悔してます。
だって 私は普通の医者ですよ。
普通だよ 平凡ですよ。
ところが 大狸先生はね あの人はね➡
まぁ言ってみれば 類いまれなる杜氏だね。
杜氏? 酒を造る杜氏ですか? そうそう… 杜氏。
うん あの大狸先生からの 手からはね➡
理想の医療なる吟醸酒が 尽きぬことなく湧き出てくる。
それはね 医者とか家族の 犠牲の上に成り立つ酒ですよ。
その酒がまたおいしいんだ 気に入ってね 飲むんだ。
うん うまい。
ありがとうございます。 ところがね この酒はね➡
二日酔いがひどいんだよ。
うん…。
再生不良性貧血の 四賀藍子さんです。
先生は お薬を変更されたので 変更された理由を➡
四賀さんが知りたがっています。 ご家族もです。
今 病室におられます。
インフォームド・コンセントは明日する。 四賀さんにも ご家族にも➡
明日 朝9時半からだと伝えて。
進藤先生 私は今 お願いしてるんです。
僕の勤務時間は あと5分だ。
いいかい 簡単に説明できる 内容じゃないんだよ。
でも いつも早上がりで 電話がつながらない。
ちょっとしたICすら 時間がとれないなんて➡
御影先輩も 私たちも 全然納得できません!
とにかく 新しい薬は 予定通り遂行だ。
ICは明日だ。
そんな先生のサポート… できません。
私も サポートなんかしません。 私もです。
私もいたしません。
カフェインは大脳皮質に作用し 眠気や疲労感を取り除き➡
思考力 集中力を高める効能が 指摘されている。
カフェインの効能を聞いた覚えはない。 そうか。
お前があんまり寝ぼけたことを 言っているから➡
カフェインが足りぬのかと思った。
東西主任 捜してきて。
変人と冷血が殴り合ってるって。 はい。
栗原…。
いくら僕でも 我慢できることと できないことがあるぞ。
人生は はなから 不条理でできている。
お前が 渾身の力を その櫂に注いでも➡
進めぬときは たびたびある。
櫂?
それでも船を進めたいなら➡
我は どこそこへ向かうゆえ 道を開けてくれと➡
他の船に呼びかけるのが筋である。
看護部に 事情を説明してから帰るか➡
四賀さんのもとに 顔を出してから帰るか。
お前が どうしても 船を進めたいなら➡
どちらかを選ばねばならない。
君の破天荒ぶりは…。
学生時代を思い出したよ。
それは 今まで 忘れていたという意味か? タツ。
私は一度も忘れたことがない。
お前との友情もだ。
どっちも時間がかかる話なら…。
患者を選ぼう。
栗原➡
君の白衣を貸してくれないか。 お安いご用だ。
クリーニング代は君持ちだぞ。
当然だ。
いくらなんでも コーヒーぶっかけるなんて。
お前が あの場に いなかったのが悪いのだ。
もう2時間も経ってる。
様子見に行ったほうが いいんじゃない?
御影さん 進藤先生は?
私… 誤解してました。
今度は何だ?
進藤先生のIC すごく丁寧で➡
四賀さんとご家族の どんな質問にも➡
しっかり答えてくださって…。
私 横で聞いてて なんだか泣けてきて…。
四賀さんも 進藤先生のこと やっと信頼されて。
主任 私 ICで こんなに感動したの初めてです。
もう これから 絶対 いろんなことがうまくいきます。
それで 進藤先生は? せっかくだから➡
他の患者さんも 回診されるそうです。
回診!? えっ 今から? はい。
正直 これまでとは別人というか。 それは違う。
これまでが別人だったのだ。
≪あの~ すみません。
お見舞いの時間は もう終わりましたが。
いえいえ… いつも お世話になっております。
私 進藤辰也の母の 進藤せつと申します。
孫です。 あ~ 夏菜 ほら 皆さんにごあいさつ。
夏菜。 こんばんは。
ごめんなさいね 人見知りが激しいうえに➡
母親がいないもんですから ちょっと不安定で。
(2人)いない? ママー!
シーッ! ダメよ 夏菜。
夜は 私が店があって➡
辰也が世話する 決まりなんですけど➡
今夜 遅くて。 泣き止まないから 連れてきちゃいました。
パパー!
パパー! パパね 今 患者さん診てるの。
ごめんね もうちょっとだからね。
夏菜ちゃんっていうの? 今 おいくつ?
夏菜ね ちゃんと我慢してるよ。
パパ!
夏菜。
どうした? 寂しかった?
進藤先生 ICは 明日に回したって➡
命にかかわることじゃありません。
なんで 言ってくれなかったんですか?
そうですよ なんで看護部に➡
相談して くださらなかったんですか?
進藤先生。
進藤先生が 帰り支度をされるまで➡
夏菜ちゃんは 私たち看護師が 責任を持ってお預かりします。
どうぞ お母さんは 安心して お店を開けてください。
ありがとうございます。 よろしくお願いします。
主任 ありがとう。
お待たせしました。
何をお願いしていたのだ?
進藤先生のご家族が 元通りになれますようにと。
ハルの願いなら 神様もきっと 聞き届けてくれるだろう。
ああ…!
あ~ 栗原先生。
この頃は 珍しく 院外で会いますね。
始終院内で会うより 極めて 健全です。
あっ 細君です。
はじめまして。 栗原榛名と申します。
こっちが 妻の千代です。
はじめまして。 内藤の妻の千代と申します。
お散歩ですか? はい。
久しぶりに イチさんが お休みなので無理を言って➡
連れてきてもらいました。
うちも 私たち 歩くの大好きなんです。
夫も 私も 大学時代は 山岳部でしたから。
えっ 山歩きをなさるんですか? 私もです。
あ~ 栗原榛名さんって 山岳写真家の?
はい。 まぁ…。
私 ハルさんの 写真集 持っていますよ。
本当ですか? うれしいです 奥様。
奥様だなんて 千代で。
お千代さんで。
まるで 小鳥のさえずりを 聞いてるような心持ちです。
まことに平和です。 稀に見る平和な。
はい 栗原です どうした 東西? ご苦労さまです。
おや まぁ 私にも。
はい 内藤です。 なるほど。
わかった すぐに行く。 了解しました はいはい 後ほど。
千代 悪いが。 はい 頑張ってください。
ありがとう。 頑張ってください イチさん。
任せておけ。 参りましょう。
私たちは もう少し お散歩しません? ハルさん。
はい 喜んで。
あっ…! あっ 先生!
なんか 踏み外したみたいで。 参りましょう。
前に 先生と 医者の良心と➡
酒について 語ったことがありましたね。
はい。 実はね 私は➡
もう臆病なだけなんですよ。
泊まり込みを続けるのもね➡
自分の判断が 間違っていたんじゃないかとか。
患者さんの変化を 見落としてるんじゃないかとか。
もう そんなふうにね もう いつも ビクビク ビクビクしてるんですよ。
100歩譲って 内情がそうであれ➡
古狐先生に 多くの患者が 支えられているのは事実です。
でもね いつも 病院にいるってことは➡
いつも 家族のそばに いないっていうことなんですよ。
会田さん おやつを食べたでしょ?
食べてません。 本当ですか?
隠れて食べていませんか? いや 本当に食べてません。
<東西からの緊急呼び出しは➡
糖尿病で入院中の 会田さんの血糖値が➡
500を超えたというものであった。
どうも怪しい>
会田さん 血液検査 格段に進歩しています。
食事マーカーというものが ありましてね➡
パンやケーキを いつ どのくらい 食べたかまで➡
詳細に調べることができます。
えっ?
ウソです。
もう なんだ もう! やだ!
すみません 実は パンケーキをこっそり おやつで。
ごめんなさい!
< このような患者に ハルとの貴重な休日を➡
ぶち壊しにされるとは…>
もう 二度と 二度と➡
隠れて 食べません。
(歌声)
♬「夏でも寒い ヨイヨイヨイ」
♬「ヨイヨイヨイノ ヨイヨイヨイ」
あっ…。
見事な 『木曽節』です。
トヨさんは わしの 『木曽節』が 好きじゃったもんで。
ちょいとでも こっちに 戻ってこんかなと思いまして。
なぁ トヨさん?
♬「ヨイヨイヨイノ ヨイヨイヨイ」
もう 聞こえんかのう。
1年目は 紙婚式と言うそうです。
2年目は 藁婚式。
3年目は 革婚式。
7年目 銅婚式。
11年目 鉄鋼婚式。
25年目 銀婚式 50年目 金婚式。
60年目 ダイヤモンド婚式。
70年目は プラチナ婚式と 言うそうですよ マゴさん。
わしらも 大したもんじゃのう。
トヨさん。
お疲れさまです。
栗原先生 急患 いかがでしたか?
パンケーキが原因でした。
はさみ将棋ですか。
栗ちゃんとシンちゃん 見てると 俺たちもな。
昔 取ったきねづかだ と。
イヒヒヒ…。 あ~っ。
これ 私の勝ちですね 板垣先生。
ある名将の言葉に 勝ちに 不思議の勝ちあり。
負けに 不思議の負けなし。 普通に 悔しいもんだな。
あれ 板垣先生 ヤクルトファンですか?
わいは タイガーズファンや。
バース 掛布 岡田の3連発!
回診に行ってきます。
《糖尿病患者が何をしている?》
さぁ こんなの一瞬です。 うまいですよ 四賀さん。
先生からも たくさん食べて 体力つけなさいって➡
言われてるんでしょ?
食欲不振は 薬の副作用だから➡
ここは頑張って 食べてくださいって…。
だめですよ 四賀さん。 もっと食べないと➡
病気に負けちゃいます。
ほら こんなふうに…。
私ね 若い頃に 女房を 病気で亡くしましてね。
エリテマトーデスっていう病気で あっという間に 腎不全で。
その女房と 四賀さんが似てるんです。
あっ… あの 変な意味じゃなくて。
うちのも色白で なかなかの美人で。
もう 俺は悔しくてね! だから 四賀さんには➡
元気になってもらいたいんです。
ああ これ これ ホントうまいですよ。
う~ん こりゃ 最高だ。
だめですよ 会田さん。 糖尿病なのに。
四賀さんが ごはんを 食べてくれるなら➡
私の血糖値なんて いくらでも 上がりやがれってなもんですよ。
四賀さんは 新しい薬で 回復軌道に乗ったようだな。
ああ 問題は副作用の 食欲不振だったけど➡
ここ数日は摂取量も回復している。
会田さんの血糖値は 反比例して悪化している。
亡き細君の面影がある 四賀さんの食欲を呼び込もうと➡
会田さんがともに 食事をしているのだ。
バクバク食べてると言っていい。 それは…。
大問題ですね。
(2人)おっ! ひょひょひょ… お二人揃って➡
恐縮です。 ふるぎ…。
内藤先生 いつから そこに?
いつでも ここに。
もし 私がね 栗原先生の立場だったら➡
会田さんに 糖尿病の 新しい治療を提案しますね。
新しい治療ですか? うん まずは➡
会田さんの食事内容を もっと厳格なものに変更します。
加えて 毎日 1日 5回 病棟の1階から5階まで➡
階段での昇降運動。
それで 会田さんに 音を上げさせようと?
いやいやいや… そしてね 水分摂取はね 水とお茶だけ。
ジュースは不可 で 日中は 極力➡
ベッドを離れて 動き回っていただくと。
古狐先生 それは治療ではなく お仕置きでは?
いやいや… そしてね 四賀さんの 食欲が回復するように➡
更に 努力していただくと。 なるほど。
つまりね 治療に患者を 合わせるんではなくて➡
患者に治療を合わせるんですよ。
そうすると 道は開けます。
ウフフフ 私は これで。 え~ 失礼いたしました。
よいしょ。
では。
先生! 先生…!
先生 大丈夫ですか?
今朝一番に撮った 内藤鴨一内科副部長のCTだ。
血液検査の数値は正常の範囲内だ。
よく CTを撮ったな。
状態から見て 正常範囲なのが 逆に怪しいと思いました。
よく引っかけた。
俺なら もう少し 遅れたかもしれない。
診断は?
大動脈沿いのリンパ節の ことごとくに 腫瘍があり➡
肺 胃 肝臓を圧排しています。
悪性リンパ腫 アンアーバー分類で ステージⅣB。
全身転移のリンパ腫です。
ひどいものですね。 ひどいものだ。
いや~ おかげで 合点がいきましたよ。
妙な咳に 背部痛 倦怠感 微熱。
過労のわりには ずいぶん いろいろ症状があるもんだなと。
症状は いつからだ?
う~ん 3か月ほど前からですね。
ただでさえ 医者が足りねえってのに バカめ。
申し訳ないです。
はぁ… さてと。
確定診断のためには➡
リンパ節生検 内視鏡 PET-CTも欲しいところですが…。
今の私の状態で 検査に耐えられるか どうか。
心配するな!
カメラは 全部 俺がやる。
ヘヘヘ…。
心強いかぎりです。
あら 栗原先生 板垣先生。
このたびは どうも。
着替えですね。 ありがとう 千代。
どうやら 長い入院になりそうです。
家族へのICは 私のほうから。
おう。 任せた。
お二人とも なぜ そんなに 落ち着いていられるのですか?
俺たちは医者だ。 やることをやるだけだ。
俺は アイツと大事な 約束してるんだよ クリちゃん。
この町に 誰でも いつでもみてもらえる病院を作る。
副部長先生から聞きました。
部長先生と副部長先生は医者です。
しかし 千代さんは一般人です。
夫から妻にICをさせるなんて。 せめて 私が…。
あの夫婦なら… 乗り越えられる。
内藤と千代ちゃんは学生結婚だ。
結婚して すぐ臨月の千代ちゃんが 大量出血してな。
救急車で病院に運ばれた。
胎盤早期剥離だった。
その病院に 緊急の帝王切開が できる婦人科医はいなかった。
早く手術しなけりゃ 胎児も母体も死んじまう。
できる病院まで そこから 30分以上もかかった。
やっと到着したとき 胎児は死んでた。
女の子だったそうだ。
そのうえだ。
手術中に 母体がショック状態になって➡
それ以来 子どもがもてなくなった。
確定診断は まだですが➡
おそらく 間違いないでしょう。
いやよ。
私は いやです。
こんな…。
どうして こんな…。
私もね 神様には 文句を言いたい気分ですよ。
だがね こういうときに➡
そばに あなたがいてくれるほうを➡
私は 神様に感謝します。
あなた…。 うん。
これから忙しくなるよ。
力 貸しておくれよ 千代。
(泣き声)
(板垣)医者が足りねえんだよ クリちゃん。
どうやったって 医者が足りねえ。
だから 俺たちはやる。
まだ 途中だよ。 まだまだ途中だ。
クソッ!
パニクったり泣いたりしてる余裕は 俺たちには ねえんだよ。
<リンパは 血液内科の領分である。
古狐先生の主治医となったタツは➡
あらゆる検査を着実に実行し➡
確定診断を下した>
病名は リンパ芽球性リンパ腫です。
あす 最後の検査結果を確認しだい➡
強力な化学療法を開始します。
こういうときにね➡
血液の専門医がいるというのは 頼もしいね。
すべて お任せします… が。
う~ん… 治療の開始をね➡
2~3日 待っていただけないでしょうか。
なぜです? 内藤先生。
1日遅れれば それだけ不利です。
2~3日 猶予をお願いします。
古狐先生。
主人は こう見えて とても頑固なんです。
40年近く連れ添った 私が言うんですから➡
間違いありません。
ヘヘヘ…。
<古狐先生の深刻な病状は➡
私たちから 活気を奪った>
はぁ… タツ まだいたのか。
ああ。 化学療法を遅らせた場合の➡
1日ごとのリスクと 対処プランを作っている。
治療に患者を合わせるんじゃない。
患者に治療を合わせるんだ。
夏菜は? 今日は 店が定休日だ。
おふくろがみてくれてる。
(アラーム)
トヨさん…。 東西! はい!
< この夜 酸素投与で➡
ギリギリの低空飛行を続けていた 留川トヨさんが➡
静かに呼吸を止めた>
2月8日 午後10時15分。
死亡を確認とさせていただきます。
キレイな顔じゃ。
トヨさんは 苦しまんといけた。
先生 主任さん。
このまま 2人で 一緒におらしてくれんかのう。
かまいません。
先生 いいよね? ああ。
後で また来ます。
トヨさんは 88歳。
大往生だと思う。
♬(孫七)「木曽のナー 中乗りさん」
♬(孫七)「木曽の御岳さんは ナンジャラホーイ」
♬(孫七)「夏でも寒い ヨイヨイヨイ」
♬(孫七)「ヨイヨイヨイ」
マゴさん?
ストレッチャーを トヨさんのところに。 マゴさんが!
マゴさん? マゴさん 聞こえますか?
マゴさん!?
<マゴさんが亡くなったのは➡
それから 2時間も経たぬうちであった>
トヨさんと マゴさんを 離れ離れにするのは➡
神様も さすがに気が引けたんだよ。
医者のくせに 坊主のようなことを言う。
栗原。
(会田)寒くないですか? (四賀)大丈夫です。
あっ! えっ?
ありがとうございます。
キレイだったので。 ホント キレイ。
人が亡くなるばかりが 病院じゃない。
当たり前だ。
元気になる人も いてくれなくては。
保育園がね 僕が本庄病院の医者と知ったら➡
夏菜の早朝預かりを 申し出てくれたよ。
(会田)気のせいか。
24時間365日対応。
保育園も病院に 助けてもらってるからって。
すごいよ。
(会田) もうちょっと行きましょうか。
(四賀)お願いします。
よし 行こうか。
あっ…。
(内藤)ああ おはようございます。
栗原先生ね。 はい。
あの向こうに見えるのが 常念岳ですよ。
(千代)大学時代 初めて 一緒に登った山なんですよ。
当時 板垣先生がね 音頭をとってね➡
学生ばかりで 登ったことがあるんですよ。
今で言う 合コンですよ。 ああ。
あの山で… 私は千代に会いました。
(内藤)登山口で見た瞬間から➡
もう気になって 気になって。
(千代)山頂の常念小屋まで 片道6時間。
(千代)つかず離れず 登ったんですよね 私たち。
(内藤)そのようすを見た 板垣先生が➡
常念小屋で イタズラを。 ヘヘヘ…。
(内藤)私には 薪を取ってくるように命じ…。
(千代)私には 水を 汲んでくるようにおっしゃって。
⦅いや どうも。
あの… 他の人たちは⦆
(内藤)キャンプファイヤーだと言いながら➡
私たち2人きりを残して➡
山荘の中に 隠れてしまったのです。
(千代)あの時は 恥ずかしいばかりで➡
私 とっさに…。
⦅星が キレイですね。
星のことは いいんです。
私にとって 大事なのは あなたです!⦆
(千代)私 ビックリしてしまって。 思わず…。
⦅どうも… ありがとうございます⦆
(内藤)あの時の星空は➡
一生 忘れませんね。
ああ… つまらない昔話を。
勘弁してください。
2人とも けさは徹夜明けなもんでね。
いささか 気分が高揚しているんですよ。
これを…。
私が担当している患者さん33人の 申し送り事項です。
千代も手伝ってくれました。
これを作るために 治療を待ってほしいと?
お待たせしました 治療を始めてください。
みんなと一緒に戦いを始めます。
主人のことを どうか よろしくお願いいたします。
< その日から 抗癌剤4剤併用の 化学療法が始まった。
しかし 古狐先生の状態は 改善がみられず➡
意識状態が しばしば悪化するにいたった>
悪性リンパ腫が 中枢神経に浸潤…。
はい 髄液の中にも 腫瘍が見つかりました。
ときどき意識を失うのは そのせいです。
治療内容を変更し 髄液注射を併用した➡
更に強い化学療法に変更します。
頼む。
失礼します。
(ドアの開閉音)
負け戦だ…。
あと1か月…。
もたねえ。
<久しぶりに帰宅した私は➡
細君を連れて外に出た。
すでに深夜であるが➡
胸中にわだかまる 感情のやり場がなく➡
足が向いたのは やはり…>
おや 栗原先生。 榛名さんも おそろいで。
やはり もう看板ですか? はい。
こんな時間にどうしたんですか?
どうしてもお酒が飲みたいんです。 ダメですか?
今からですか?
今からです。
榛名さんのご希望で?
はい 私です。
栗原先生の頼みなら お断りするところですが➡
榛名さんのお願いなら 断れません。
ちょうど新酒が入ったので➡
味見に付き合ってくださるなら…。 はい。
内藤先生 よくないんですね。
ハル そんな勢いで飲んでは 体に悪い。
苦しいお酒は イチさんの分まで飲みます。
楽しいお酒は イチさんと一緒に飲みます。
任せてください。
あぁ はいはい…。
いけませんよ イチさん。
苦しい酒は これでしまいだ。
仕切りなおしだ。
常念岳とは どのような山なのだ?
北アルプスの南側の三角形の山です。
標高2, 857m。
日本百名山の1つで 星空が見事です。
そうか…。
常念の星空が なんですか? 栗原先生。
あぁ いや 内藤先生ご夫妻のなれ初めです。
40年前の常念岳で➡
初めてお二人で見た 星空だそうです。
あぁ あれは圧巻です。 昔は 町なかでも➡
山頂に負けないくらい 星が見えましたが➡
今じゃ ふもとが明るくて…。
それに 町のど真ん中に 24時間365日➡
消えない電光看板まで ありますから。
はい。 たしかに あれは目にうるさい。
7日に一度くらいは 消えてほしいものです。
いけませんよ 先生 あれは この町の宝です。
真夜中を過ぎれば星も増える。
だが 常念岳の山頂の星空は➡
この何十倍も見事なのだろうな。
ハア…。
イチさん…。 うん? どうした?
貧血が進んでいる。
内藤先生の化学療法は 中止せざるをえない。
すまん…。
タツ 相談がある。 うん?
本気かい? 本気だ。
お前が嫌なら 私1人でもやる。
良心に恥じぬということだけが 私の確かな報酬だ。
違うよ 栗原 僕たちの報酬だ。
(砂山の鼻歌)
うん? どうした?
(砂山)うん?
よし 俺がとびっきりうまい 砂山ブレンドいれてやるから➡
待ってろ。
♬~
うん?
今 目と目で会話したろ。
言え 何を企んでる?
同期じゃねえか 俺だけ外す気か?
さすが怪獣だ 背中にも目があるか。
いや しかし…。 内藤先生のためなら➡
俺も一肌脱ぐぜ。 えっ?
フフフ。
救急部の協力が必要です。
いくらか派手で…。
上から目をつけられるかも しれませんが…。
何よ それ むちゃくちゃじゃない。
ハア…。
フッ やるわ。
検査部の協力が不可欠です。 無理でしょうか?
本庄病院の検査部に 無理という言葉は ない。
前代未聞ではあるが 内藤先生のためならば➡
循環器科は 問題ない。
ありがとうございます。
そんなの無理に決まってるでしょ。
進藤先生や砂山先生が やたらウロウロしてるなと思った。
たく 何考えてるのよ。
お断りします。
やりましょうよ 主任。
御影さん 進藤先生に何か言われた?
どう思う? 水無さん。
はい 先輩 私もやりたいと思います。
あぁ 水無さんは砂山先生かしら?
いえ 自主的に…。
ふ~ん…。
看護部の外堀は もう埋めてるのね 栗原先生。
残るは 本丸 お前だけだ。
お前だけだって もう1回言って。
これは冗談ではないのだ 東西。
ハア いったいいつやるつもりなの?
2日後の夜だ。
御影さん 水無さん 明日のお昼➡
看護部の緊急全体会議やるから みんなに伝えて 極秘で。
(2人)はい。
< そして 2日後の夜が来た>
足元 失礼します。 フウ…。
でも 栗原先生➡
こんな真夜中に いったいどこへ?
まだ秘密です。
まいりましょう。
おやおや 進藤先生。
お待ちしていました。
おぉ オホホ…。
♬~
本庄病院の展望デッキは➡
松本平で いちばん高い場所にあります。
地上では 星にいちばん近い場所です。
星?
まぁ。
おぉ なんと…。
何十年も働いてきた場所なのに➡
こんなすばらしい星空が 見られるところがあったとは。
いやぁ すてきなプレゼントです。
ありがとう 栗原先生 進藤先生。
私からもお礼を言います。
まるで 常念岳の星空みたいね。
あぁ お前もそう思いましたか 私もですよ。
内藤先生 千代さん もう少しお待ちください。
いやいやいや もう お気持ちは 十分いただきましたから。
ねぇ 千代。
はい あなた。
十分ではありません。
先生と千代さんが 40年前に見た星空は➡
まだまだ こんなものでは なかったはずです。
10 9 8 7 6…。
(2人)5 4 3 2 1 0。
♬~
あっ…。
あぁ。
まぁ…。
♬~
これは… あなた。
うん あのときの あのときの…。
♬~
< それは 診療部 看護部 検査部 救急部から➡
古狐先生夫妻への 1分間の星空のプレゼントであった>
♬~
長い間 ありがとうね。
千代。
♬~
<翌日 私たちは 病院の実質的経営者である➡
金山事務長から 呼び出しを受けた>
昨夜 深夜0時5分から およそ1分間➡
当院で停電がありました。
< この手帳は 金山事務長の虎の巻である。
病院の全職員の弱みが➡
すべて 書き込まれている と いう うわさだ>
しかし 奇怪なことに 1分後に復旧。
しかも 停電中 医療機器だけは 問題なく稼働していたと。
同時刻に エレベーターから 展望デッキへ向かう あなた方を➡
見たという目撃情報があります。
深夜に展望デッキとは 実に奇妙であり➡
あなた方が アクシデントの原因ではないかと➡
考えざるをえなくなります。
ただの停電じゃないですか 事務長。
ちなみに 同時刻 砂山先生が 屋上へ続く非常階段を➡
上っていたことが 目撃されています。
ご釈明を。
先生方は非常にご多忙 と 聞いています。
なのに 夜中に展望デッキに上って 遊興とは…。
先生方の務めは患者の治療です。
それ以外の行動は 慎んでいただきたい。
医者は 患者の治療だけしてればいいと?
たとえ 病気が治らなくても➡
医者には まだ できることがあると➡
事務長は考えないんですか?
理想論ですね。
では 質問を変えましょう。
多くの人々が 命を預けている院内において➡
病院のスタッフと結託し 電気を消して回ることが➡
医者として許されるのですか? 進藤先生!
しかし…。 先生については➡
ふだんの業務において 苦情が報告されています。
理想論の前に クリアしなければならないハードルが➡
いろいろと おありのようですね。
では 事務長。
治らぬ患者と相対するのが➡
医者の領分ではない と おっしゃるなら➡
そういう患者を どうしろと?
残念ながら 現在の医療現場において➡
先生方が言うような理想論を 追求する余裕はありません。
ベッドの稼働率は 常に100%前後。 しかも 入院待ちの患者もいる。
治らぬ患者は 病院から出て行けとでも?
あえて言うなら そのとおりです。
地域医療は 金銭的にも人的にも まったく余裕がないのです。
それは 先生方も 十分 ご承知と思います。
承知はしていても 譲れないものがあります。
それでは議論になりませんね。
あなた方は医者として まず 医者の領分を尽くすことを➡
第一に…。 医者の話ではない。
人間の話をしているのだ!
私たちは人間だ。
その人間が死んでいくのが 病院という場所だ。
いやしくも 一個の人間が 生死について語るなら➡
手帳も そろばんも 肩書きも 投げ捨てて➡
その身ひとつで 言葉を発するべきではないか!
栗原先生 あなたね…。
かかる態度を くだらない理想論と 笑うのも結構。 しかし!
あえて このバカバカしい理想論を➡
押し立て かつ 推し進めていかなければ➡
いったい 誰が この救いがたい環境のなか➡
正気を保って 働き続けられるというのです!?
満床のベッド 過酷な労働環境と医者不足。
そんなことは わかりきっている。 しかし!
かかる ひっ迫した環境でも なお 医者には➡
なしえることが あるという確信を 決して捨てないこと。
その確信があればこそ➡
24時間 365日 私たちは 働き続けることができるのです。
(ノック)
あぁ! どうも どうも 事務長。
遅れて 申し訳ない。
板垣先生 あなたを お呼びしてはいませんが。
いえね 昨夜の停電の件 報告書が あちこちから上がってきましてね。
お持ちいたしました。 (金山)報告書?
え~っと まずは… 検査部 松前技師長から。
「昨夜 不慣れな特殊検査機械を 使っていたために➡
ブレーカーが落ちたことを報告する。
今後二度と このような事が ないように気を付ける」。
始末書も付いております。 いや しかし…。
こっちは 救急部 外村看護師長から。
「夜間に電気系統の確認を していたところ➡
誤って 電源を落としてしまった。 以後 気を付ける」。
これも始末書付きで 循環器科…。
バカな!
じゃあ 病棟は どう説明します!?
すべての病棟の電気が一斉に 勝手に停電など ありえない!
あぁ… はい はい!
その件も病棟看護師を代表して 東西主任看護師から報告書が。
え~っと…。
「そんなアクシデントは無かった」。
(金山)はぁ!?
どうも 停電は 何かの勘違いのようですな。
帰るぞ。
待ってください!
板垣先生… これでは 組織として けじめが つきません。
なんらかの処罰が必要です!
処罰?
誰の処罰だ?
内藤が倒れて 火の車の病院を➡
必死に切り回してくれてるのが この若い連中だ。
ボーナス出すなら ともかく…。
誰の処罰だ? 事務長さん。
それとも… なんですか?
経営は 現場と戦争 おっ始めますか?
なるほど。
停電は…。
何かの勘違いです。
よかった~!
事務長の理解を得られて うれしいかぎりです。
コイツらには 俺から きっちり お灸を据えますんで。
ひとつ よろしく。
青二才どもが!
部長先生。
次 やるときは 俺も交ぜろ。
<大狸先生の声が寂しげに響いた。
もう 次はないと 私たちは皆 知っていた>
<1週間後の午後2時20分。
多忙な私たちを気遣うように➡
ひっそりと 古狐先生は呼吸を止めた>
< そばにいた千代さんすら すぐには気づかなかったほど>
<通夜には 先生が かつて 診ていた患者や その家族が➡
ひっきりなしに訪れた>
<皆 泣いていた>
大狸先生は まだか? あぁ…。
当直だ。
俺が当直をするから クリちゃんは 通夜の手伝いをしろと言われた。
そうか。
一止… 大丈夫か?
私は大丈夫だ。
正直… まだ現実とは思えない。
無理するなよ。
そうだぜ 一止。 無理すんな。
あぁ。
<弔問客は夜半過ぎまで続いた>
どうぞ。
朝ごはんを作ります。
お台所をお借りしますね 千代さん。
ありがとう ハルさん。
栗原先生も。
何から何まで…。
(扉が開く音)
当直 終わったぞ。
内藤。
救急車2台と ウオークイン20人だ。
なかに 今どき珍しい好青年がいたぞ。
腹痛で来てな 「こんな夜ふけに すみません」と➡
やたら 恐縮して…。
なんだか若い頃の…。
お前みたいで。
潰ようで胃に穴が開いてた。
心配するな。
ちゃんと外科につないだぜ。
内藤。
今までみてぇに 「ご苦労さまでした」って言えよ。
なぁ!
言ってくれよ。
内藤!
(泣き声)
< このとき 私たちは 初めて泣いた>
<人が死ぬということは➡
大切な絆が1つ 失われたということである>
< そして 数か月後。
私 栗原一止は過去最大の窮地に 陥ることになる>
Can't find what you're looking for?
Get subtitles in any language from opensubtitles.com, and translate them here.