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(女子高生たちの歓声)
(斗和(とわ))ほら 昔から 少女漫画とかでもあるだろう?
特に何もしなくても
周りの女子の大半が 好きになるっていう―
常に女子に囲まれてる いわゆる愛され男子
それが俺
どうやら俺が 愛され男子だったのは
生まれた時からだったみたいで…
ホントに可愛いですね~
(斗和)そう 幼稚園の時も…
(律(りつ)・惟智也(いちや)・龍生(りゅうせい)) はーい 下がって 下がって!
(斗和)小学校の時も 中学の時も
俺は愛され男子の本領を発揮
(律)すいません! すいません すいません
(律)すいません! すいません すいません
高校に入ってからも そのポジションは揺らぐことなく
高校に入ってからも そのポジションは揺らぐことなく
高校に入ってからも そのポジションは揺らぐことなく
(惟智也) ちょっ すいません…
高校に入ってからも そのポジションは揺らぐことなく
高校に入ってからも そのポジションは揺らぐことなく
(龍生) すいません すいません
俺はずっと愛されキャラのまま―
順風満帆な スクールライフを楽しんでいた
(龍生)くっそ なんで あいつばっか
言うだけ むなしいし
つうか 少しぐらい こっちにも回せっつーの
いや そうだよ
これじゃクラスの懇親会じゃなくて 斗和を囲む会だぞ
誰か 突然 斗和がブッサイクになる 呪いとか かけられねーのかよ
(律たち)それな!
いやぁ 愛されちゃってんなぁ 俺
みんな 何かごめんな
よいしょ メロンソーダ…
(惟智也)やるぞぉ~ (律・龍生)ハァ~イ
あっ ちょ ちょっと 痛い 痛い…
あ あ… おい あいてっ (律)おい 斗和! お前 コラ
(広司(こうじ))なぁなぁ なぁなぁ… 聞いてくれよ
何だ?
実はさぁ…
彼女できちゃった
(斗和たち)か… 彼女!?
見たい? 見たい?
ねえ 見たい? 見たいよね よし
(斗和たち)お~
うお~
うお~ エッロ~!
だろ?
おいおい どうしたよ 広司
(広司)ハハハ… (惟智也)お前 いつの間に…
何だよ 広司 お前も結構モテんじゃん
律も惟智也も龍生も 頑張んねーとだな
おいおい おいおい
何 ちゃっかり リア充組に 交ざっちゃってんだよ 古谷(ふるや)
いや まぁ 俺は リア充中のリア充だしな
(広司)あ いや でも お前―
彼女 いたことねえじゃん
え?
生まれてこの方 ずっといないだろ?
ハッ いや そ… そ それは
俺がみんなに 愛されちゃってるからなわけで
あー チッ チッ チッ…
それはお前 あれだ
観賞用男子
(女性たちの歓声)
(広司)女子はみんな お前を見て
眺めてるだけで 満足ってこと
はい?
そんなんで ちやほやされても お前―
コイツらと何にも変わんねぇじゃん
(携帯電話の着信音)
もしもし あっ 俺 俺 ハハハ…
(斗和)俺が? 観賞用男子?
あ もしもし
(斗和)俺が観賞用男子?
俺が… 観賞用男子?
俺は絶対に 観賞用男子なんかじゃない!
古谷斗和 彼女 作ります!
あっ そう 頑張って
(惟智也)律 龍生 購買部 行くぞ
(斗和)あ おい おい!
おい ちょ ちょ… ちょっと待てって
その“またコイツ 変なこと言い出したよ”的な
残念オーラ やめろよ (惟智也)つーか
相手は?
斗和 好きなヤツいないだろ
あっ…
(女子たち) ワン ツー スリー フォー…
(惟智也)斗和の彼女 斗和の彼女
(律)ほい ほい ほい ほい ほい
お~ チアリーダーじゃん
あの子は? スポーツ系女子
却下
あっ あの 何とかっていう雑誌の読モ
あの おしゃれ番長にしろ (斗和)却下
(龍生)あっ (惟智也)なんでだよ
よし あの準ミス汐美(しおみ)高にしろ
(惟智也)可愛い文化系か イイねぇ
まだまだ
おい 斗和
あのさぁ
お前 さっきから聞いてたら 何様のつもりだよ
あのさ この古谷斗和様が コクる相手だぞ
簡単に手が届きそうな女じゃ ダメなんだよ
(惟智也) シメちゃって いいスか?
(龍生・律)許す
うわっ! いた! うお!
(龍生)絞めろ 惟智也 (律)いけ!
いけ!
(龍生)ほら ギブ? なあ ギブ? なあ ギブ? ギブ?
(龍生)ワン
(龍生・律)ツー
(龍生・律・惟智也)スリー
(龍生・律・惟智也)フォー
(惟智也)おい 斗和?
(龍生)斗和?
(律)斗和くん?
(龍生)斗和?
決めた
(龍生・律・惟智也)え? 三輪(みわ)美苑(みその)かよ
(律)“神に選ばれし美少女” “神奈川の奇跡”
そして “17年に1人の逸材”と―
ありとあらゆる賞賛を 欲しいままにしている あの!
美しすぎる女子高生 三輪美苑だぞ
17年に1人って 何が根拠だよ
とにかく難攻不落なんだよ 三輪美苑は
(龍生) 今まで どれだけの男たちが コクって撃沈したと思ってんの?
(律)つけいる隙が 全くないっていうかさ
(惟智也)同(おんな)じクラス しゃべったことあるヤツいるか?
あのさ
俺を誰だと思ってんの?
そうか
斗和だったらイケるかも
イケるよ イケる!
え~ 大丈夫か?
今朝 斗和の乗ってきた バスのナンバー
“4444”だったぞ 完璧 死亡フラグ立ってるって
出たよ 龍生のネガティブ発言
だからぁ
この古谷斗和様に 落ちない女がいるわけないっしょ
だな そんな女 いるわけない ない!
(律)ない ない!
よし 行ってくる
(斗和)三輪!
(美苑)え?
古谷…
何か用?
俺…
前から三輪のこと気になってて…
(美苑)え?
あっ!
俺の彼女になってくんねえ?
(斗和)この顔で言い寄られて―
彼女にならない選択肢なんて ない
え? な 何…
安っぽい告白
え?
(犬の遠吠え)
(惟智也)おーい 斗和 (律)斗和?
(惟智也)いつまで うじうじしてんだよ
起きないと くすぐっちゃうぞ
くすぐるよ~ (龍生)そうだ
(惟智也)おい (律)くすぐっちゃうぞ
(龍生)おい
なんで…
愛され男子の この俺が…
何が悪かったのか わからない
(律)まさか 斗和がフラれるなんてなぁ
だから言ったじゃん 死亡フラグ立ってたって
あ いっちーな…
(惟智也)もう いいじゃん 次 行こうぜ 次
あとは 2組の西脇(にしわき)由真(ゆま)だろ
それから 新体操部の相原(あいはら)莉子(りこ)…
あたりとつながる女子 狙ってくれよ
何だ それ
やっぱ お前 斗和に女の子 紹介してもらおうとしてんな
(惟智也)ああ そうだよ 悪(わり)ぃか?
よし 俺ら―
“DDD” 結成すんぞ!
(律・斗和・龍生)DDD?
脱…
…同盟を結成すんだよ
(律・斗和・龍生)えっ? 何同盟?
だから…
(惟智也)脱…
お…
(律・斗和・龍生)おい!
それでDDDか
(惟智也)いつまでも 子どもの まんまじゃ いられねえだろう?
だから4人で力合わせて 彼女みっけて
大人の階段 上らねぇと!
(龍生)おぉ~ 乗った!
斗和
ハッ! なんで俺がお前らと?
顔面偏差値 違いすぎるだろう
それでは 第1回 DDD会議を始めます
まず 新しいターゲットだな
はい
え? (惟智也・龍生)え?
(律)何これ 嘘(うそ)だろ?
(龍生) 律の検索タイム キタ~ッ!
なあ 斗和 次はよく食べる女の子 狙ってけ
えっ なんで?
いや あの これさ ちょっと… ハハ ハハ…
(律)女の 食欲と… (惟智也・龍生)うん うん
(律)その せ… 何 性欲? は その
何ていうの その イ… イコールなんだって
(惟智也・龍生)え~?
(龍生)だから よく食べる女は 落としやすいってわけか
(惟智也)お前 いやらしいこと 言ってんじゃね~よ
(龍生)そーだよ
なぁ 斗和 斗和
次は その辺のタイプの子を 狙っていけよ
そうだよな…
ハァ… 攻め方 間違えたわ 俺
三輪みたいなクール系女子には 甘えん坊キャラだよな
(律・龍生)えーっ! 諦めねえのー? (惟智也)えーっ! 諦めねえのかよ?
愛され男子の名が廃(すた)るだろ
(斗和)ハハッ…
み~そ~のっ!
昨日は ごめん
何か すご~く緊張しちゃって
俺 自分から 告白とかしたことなくってさぁ
エヘ…
何ていうか 俺 モ… モテちゃうっていうか…
って いないし!
ちょ… 待てよ!
うわ!
あっ!
(美苑)あ…
(斗和)う…
あ…
ねぇ 古谷
は… はい
私のこと―
好き?
あ…
好き… だけど
ホントに?
うん
彼女が欲しいだけじゃなくて?
あ…
カッコ悪い男
(斗和)もっとこう 何か あるじゃん リアクションがさぁ
男に押し倒されても 焦りもしない
顔色ひとつ変えないって どうなんだよ
(律)一度フラれた相手に 再告白して
恋愛リベンジに成功したのは 4人に1人の25%
(龍生)へぇ 意外と確率 高(たけ)えんだ
でも タイミングも シチュエーションも何も考えずに
ただコクっただけだったし
テク なさすぎたよな
(惟智也)だよなー
まずは女の子を 胸キュンさせないと
お! 女子が好きな―
胸キュンシチュエーション ランキングだって!
あっ
ハァ ハァ… いて…
あっ
(律)第8位 思いがけない場所で偶然出会う
(斗和)あのさ 三輪美苑には 胸キュンも何もねえよ
あいつ たぶん 恋なんかしねぇんだよ
(斗和)恋愛とか男とか 見るからに興味なさそうだもんな
(美苑)あの 大丈夫ですか?
(女性)あ はい 大丈夫です
あの…
席 譲ってください
(男)はぁ? (美苑)お願いします
(男)なんで俺なんだよ 他にもいっぱい いんだろう
そこ 優先席ですよ 早く立ちなさいよ
めんどくせぇな
どけ! ああ くそ!
(美苑)どうぞ
(女性)どうも ありがとう
いえ
(斗和)あっ
(男)おい
(バス運転手)ドア閉めまーす (斗和)あっ あ… 降ります!
(ICカードの電子音)
放してよ!
うるせぇ ギャーギャー騒ぐなよ!
やめろ~!
あ? (美苑)古谷?
(律)第5位 ピンチな時に さっと現れて 助けてくれる
(斗和)うわああ!
(美苑)あっ…
ううう…
わ! ああ…
(男)何じゃ お前
(斗和)うう…
やめろよ
(男)どけよ
離れろよ オラッ! やめろ!
うっ いてっ! 何じゃ てめえ!
(男)放せよ
もしもし 警察ですか?
(男)くそっ!
(美苑)古谷 大丈夫?
うっ… あっ…
大丈夫… あっ… あっ…
大丈夫 大丈夫
エヘヘ はぁ…
大丈夫? 顔とかケガしてない?
(律)第3位 2人で一緒に 危機を乗り越える
(律)えっ? それじゃ―
昨日 三輪を助けるために ボコられたってこと?
うん
えー? そういうの お前のキャラじゃねーじゃん
(龍生)そうだよ (斗和)だよな
あっ
(斗和)美苑
(美苑)フフッ
(斗和)何だよ その顔
昨日きっかけで 美苑も俺のこと…
み 美苑…
ありがとうございました
(柾木(まさき))おい 浜田(はまだ) 寝癖ついてるぞ
柾木先生 おはようございます
おはよう 三輪 次の絵の題材…
(斗和)おい 何だ? その顔は
いやいや
嘘だろ
美苑のヤツ まさか柾木のこと…
(柾木) 授業の前でも 放課後でも いいから いつでも声かけて
あぁー 終わった
(さくら)えっ 斗和くん どうしたの?
(律)あ いや 大丈夫だからさ
また明日 バイバイ
(さくらたち)何? 何なの? (龍生・惟智也)さよなら
な 斗和
斗和の思い過ごしなんじゃないのか?
そんなことねえよ
俺にはわかる
美苑は 柾木のことが好きなんだよ
まあ だとしても
それって ただの 憧れレベルの話なんじゃないのか?
(惟智也)そうだよ ただの憧れ 憧れ!
俺には そうとは思えない
(女子)斗和くん バイバイ (斗和)うん バイバイ
(律)なあ 斗和
なんで そこまで 三輪美苑にこだわるんだよ
うん 斗和の取り巻きの女子なら
彼女になってくれるヤツ いると思うけどな
(惟智也)そうだよ 他のヤツじゃ ダメなのかよ
うーん…
まあ 斗和のはあれだ
ツァイガルニク効果ってやつ
ツァイガル… 肉?
ううん ツァイガルニク効果
人間は達成できなかった物事や 中断している物事に対して
より強い記憶や 印象を持つっていう―
心理学的現象のことを言うんだよ (斗和)何 それ?
つまり 斗和は三輪のこと なかなか落とせないから
気になって 追いかけ続けてんじゃ ないのかって話
(惟智也)ああ 確かに
三輪にコクっても 相手にされねーから 三輪のことが
好きな気がしちゃってるだけ なんじゃねーのか?
いや
でも それだけじゃない気がする
うん
(律)あっ (斗和)ん?
あ!
(惟智也たち)ああ!
やめとけって どうせウザがられるんじゃねーの?
なんでだよ あ あ… 美苑!
(龍生)ダメだって
だって また変な男に 絡まれるかもしんねぇだろ
じゃーな
(律)ああ ちょっと… (龍生)あ…
またボコられたら どーしようとか
全然 考えてねー顔だな ありゃ
確かに “それだけじゃない”かもな
美苑! 一緒に帰ろうってば
断る
また?
おい 美苑 ちょっと待てって
美苑!
もう なんでついてくんのよ
だって 昨日のヤツがいたら困るじゃん
俺が守ってやっからさ シュッ!
いいよ (斗和)え?
もう着いたし (斗和)えっ?
(カラスの鳴き声)
(斗和)ここが美苑んち?
あ ちょっと 美苑 待てって
(美苑)もう帰んなよ
(斗和)あのさ
俺 決めたから
毎日 美苑に告白する
覚悟しとけよ
俺―
美苑のことを本気で…
あ!
あ… ごめん
別にいいよ 大家さんに言っとくから じゃあね
(斗和)あ ちょ ちょ ちょ… 美苑
ハァ…
あ…
(弥生の話し声)
(弥生)ホントに卑怯(ひきょう)よ
(秀明)何とでも言えばいいさ もう終わりだね
(弥生)ちょっと待って! まだ他に道があるから やめて…
(弥生)ああ やめて! アハハ やられたー
ひっくり返ったー
(斗和)ただいま (弥生)もう…
あ おかえり (秀明)おー 斗和 おかえり
何だよ 父さん 帰ってたんだ
(弥生)今日ね 本社で会議だったんだって
(秀明)でも明日の朝イチで 福岡 戻んないとだけどな
よし 晩ご飯 食べ行くぞ
あっ 何食べる? 焼き肉? お寿司?
(斗和)あぁ あの… 俺 いいや
(秀明・弥生)え?
2人で行ってきなよ ね? デート デート
デート? (弥生)じゃあ お父さん
久しぶりにデート行こっか?
デート? (弥生)えっ 嫌なの?
(秀明)あ いや… (弥生)何 今の顔
(秀明)そんなことないだろ (弥生)ちょっと待ってよ
(秀明)なんでだよ
(弥生)“デート?”って…
よし
(斗和)よし… ハァ
よし
ハァ…
(ハンマーで打つ音)
古谷?
えっ? いった…
え ちょっと…
あ… ハァ ハァ…
何やってんの バカ
いっつー…
ふう…
ヘヘヘ…
あのね 古谷がケガしたから
仕方なく 家に上げてあげただけだから
いいから いいから そんな言い訳しなくったって
フフ…
ふーん ここが美苑んちか
はい おしまい
いって… あぁ…
ドSかよ
(美苑)じゃっ
あっ… ちょっ…
(斗和)どっか 出かけてたのか?
(美苑)あ うん バイト
こんな遅くまで? もう9時 過ぎてんじゃん
あ… 親 帰ってきたら やばくねえ?
帰ってこないよ 水商売だから
だいたい朝帰りだし
ふーん
(斗和) ってことは ずっと2人きり?
あ もしかして… 晩飯?
(美苑)うん バイト先で工場長がくれるの
(斗和)おー…
古谷も食べる? いっぱいあるし
うん! ヘヘ…
お邪魔しまーす
いただきまーす
それ 食べたら帰ってね
わかってるよぉ
うん うん
なぁなぁ 美苑って 兄弟は いんの?
(美苑)1人っ子 (斗和)へぇ 俺と一緒じゃん
うん…
あのさ あの…
俺 スパイシーバンドとか 好きなんだけど 聴いたりする?
(美苑)聴かない
あの チョコの柿の種って 食ったことある?
あれ めっちゃうまいんだけど…
(美苑)食べたことない
あ クラッシャー井上(いのうえ)の動画 見てる? あれ やばくない?
ほらぁ あの ねえ
いろんなものを ククク… クラッシュしていく…
あのさ
え… ん?
黙って食べれば?
あ…
だって 俺 もっともっと 美苑のこと知りたいもん
(斗和)まさかのスルー? 距離感が全く縮まらねぇ
ハハ…
あの絵って 緑(みどり)公園の あの丘の?
あ… うん
お父さん 小説とかの挿絵 描いてたんだけど
あれが最後に描いた絵
お父さんって いつ…
私が9歳の時
病気で
そうか
大変だったな
大変だったのは 私じゃなくて お母さんだけど…
なぁ 美苑
そ… その…
毎日 こんな感じなのか?
ああ テレビ? つけようか?
ああ いやいや ちげーよ
ほら
1人だったらさ その…
友達とか 呼び放題だなーと思って
フフ… うん
バイトで帰りも遅いし
こんな時間に遊びに来る非常識 めったにいないし
美苑… あのさ
あの 美苑さえよかったら―
今度 差し入れとか持って 遊びに来ようか?
いい
あ いや あの… そーいうことじゃなくて…
もう全然 慣れっこだから
勝手に1人ぼっちで寂しいとか 思わないで
美苑…
私は別に平気だから もう帰って
(斗和)あ…
(秀明)おー
(弥生)もう いいね うーん… ん~
(弥生)もう いいね うーん… ん~
(ドアが開く音)
野菜は もう少々お待ちくださいね
大丈夫よ これ いける
(秀明)おお (弥生)ああ 斗和 おかえり
あれ? デートだったんじゃなかったの?
(弥生)だって 斗和1人で ご飯なんて寂しいじゃない
(弥生)ほら 座って (秀明)座れ
食ってきちゃったんだけど
(秀明)寂しいこと言うね え?
久しぶりに帰ってきた親父(おやじ)と
一緒に飯食おうとか 思わない? ハハ
一緒にツラ合わせて っていうのが
人の営みだとは思いませぬか
そーだ そーだ お父さん いいこと言う
(秀明) ありがとうございまーす
(秀明)よし 奥様 (弥生)あ いただきまーす
(秀明)はい どうぞ
あ… あのさ
ちょっと 相談したいことがあるんだけど
(目覚まし時計のアラーム)
ハァ…
ハァ…
ん… うーん…
おはよう
はぁ?
隣に越してきた古谷斗和です よろしく
(美苑)は? なんで?
そんなの決まってんじゃん
美苑のそばにいたいからだよ
美苑
俺…
お前のことが… (美苑)ありえない…
おい! (カーテンを閉める音)
(斗和)“えー なんでいるの?”
“私のこと そこまで考えてくれてたんだー”
“斗和くん 好き”
なあ これが 正しいリアクションじゃね?
(律)な 斗和 マジでそんなこと 期待してたのか? あの三輪に
期待するだろう! (律)い… いて
やぁ~ もう びっくりさせようと思って
引っ越しのこと内緒にしてたのが 敗因だったかな~
おめでたいヤツだな
でも 3日で引っ越すとか 奇跡だよな
たまたま隣が空いてたからさ
(龍生)え 親は? よく許してくれたよな
ま 母ちゃんには めっちゃ反対されたけど
親父が味方してくれてさ
(龍生・律)へえー
まっ 何はともあれ (斗和)ん?
祝 1人暮らしっつーことで
(龍生・斗和・律)おっ お?
はいっ 引っ越し祝い
お~ サンキュー
(惟智也)開けてみ (龍生)すっげえ
(律)何 これ? 何 何 何?
(龍生)すげえの? すげえの? 早く…
(龍生)すっげえ! エッロ~イ
ほら エロくね?
(さくら)斗和くんが エッチなの持ってる
(優奈)そういう子が趣味なの?
べ べ… 別に
興味ねぇし 全然 全然
(チャイム)
(チャイム)
(チャイム)
(さくらたち)だよねー (斗和)全然ない
(女子たち)キャッ! 柾木先生
ほら 席つけ
柾木… (晴翔(はると))あれ 奥村(おくむら)先生は?
風邪でお休みだ
(柾木)出席取るぞ~
(斗和)違う… 違う違う
(斗和)違う… 違う違う
(柾木)新見(にいみ) (律)はい
(柾木)新見(にいみ) (律)はい
(柾木)浜田 (浜田)はい
古谷
(斗和)ただの憧れ…
(柾木)古谷 (斗和)ただの憧れ…
ただの… (柾木)古谷
ただの憧れ…
おい 古谷
はい
どうした? トイレか?
あ いや…
ち… ちげーよ!
(生徒たちの笑い声)
何だよ もう
ハァ…
(斗和)あ…
もう 斗和くんたら
(斗和)うわああ
うわっ…
(ドアをたたく音)
(ヤス)三輪さーん! (斗和)あ?
(ヤス) まるしローンの者ですけどー
(ヤス)三輪さーん 返済日ですよぉ
わかってますよねぇ
借金取り?
金 借りてんのかよ 三輪家
(ヤス)今日は娘 バイト休みのはずなんですけどね
うわっ! あ…
(鍵をかける音)
やばい やばい やばい やばい… どうしよ
あ… どうしよ
あっ
(ヤス)開けろっ 開けろっ
(ドアをたたく音)
開けろっ 開けろっ
開けろ コラー!
いるの わかってんだぞ このガキ!
オラー! (強くドアをたたく音)
(窓をたたく音)
(斗和)美苑! (窓が開く音)
古谷?
あ…
来い! 早く!
この状況で その態度かよ
ブレねーな 三輪美苑
(ドアをたたく音) (ヤス)出てこいや オラー!
中にいるのは わかってんだぞ!
ふざけんなよ クソガキー!
あー もう!
俺のこと嫌いなのも知ってるし 頼りねぇのも わかるけど
ここには俺しかいねぇんだから とりあえずでも―
藁(わら)にもすがっとけ な?
(ドアをたたく音)
(斗和)よし!
俺が先に行く 下がってて
ふっ
(ドアをたたく音)
ふっ やあ!
うっ! (美苑)あ! あ…
(ヤス)開けろ コラァ (ドアをたたく音)
(斗和)美苑!
(美苑)あ…
(斗和)くっ
もうちょっと
(美苑)あっ
何だ? 鍵 壊れてんじゃねぇかよ
うっ うう…
うっ!
うっ! (美苑)あっ!
あっ!
(ヤス) 逃げやがったみたいっすね
あっ (美苑)う…
(荒木)行くぞ
(ドアが開く音)
(美苑)あっ… (斗和)あ…
あ… い…
(ヤス)おい お前 何やってんだよ
そいつ こっちによこしな
か か… 帰ってください
おい!
殴られてえのか てめえ!
うっ うっ うう…
帰ってください!
帰るぞ
(ヤス)え?
え マジっすか? 兄貴 なんでですか?
(斗和)ハァ…
(ヤス)マジっすか?
ハァ ハァ…
(美苑)古谷
痛い
あっ あ…
ご… ご… ごめん…
帰る
ん? 何?
えっ? え え… えっと
その…
めっ 飯
食ってけ… よ
(ドアの開閉音)
ハッ…
そうだよな
(ドアが開く音)
あ… あの ちょっ…
え?
(美苑)ご飯 食べるんでしょ?
あ…
うん! 食う 食う!
(美苑)うん
あ そうだ あの
ビーフシチューとか カレーとかもあるけど食う?
ビーフ
作り置き 家から持たされてさ ヘヘ…
は… あっ!
あ… ヘヘ
あの 美苑も 食うの手伝ってくれよ
な? エヘヘ
あのね 言っとくけど 関わるの ご飯だけだからね
(斗和)うん うん エヘッ
どれにしようかな~
フ~ン フフフ… (美苑)え?
何 これ?
いつか美苑と 飯 食う時のためにと思ってさ
バカ…
エヘッ…
フフ…
(斗和)でまあ そんな感じかなー
(律)ふーん
え? 一緒に め…
あ… ハハッ…
一緒に飯食った? (斗和)うん
(龍生)えー 何だよ いつの間にか進展してんじゃん
ああ それじゃ それじゃ―
“お風呂にします? ご飯にします?”
“それとも…” とかも やっちゃったのか?
(斗和)何 そのオッサンな発想
(さくら)ね~ね~ 楽しそーだね
何の話してんの?
内緒話 してんの
(さくら・優奈) キャー! カッコいい~!
(さくら) 斗和くん 今日もカッコいい!
あ… あれ?
ホントに 飯だけの関係ってことだな
ちょ ちょ ちょ…
構図はいいぞ
でも―
描く対象の質感を もっと意識して
はい ウフフ…
(柾木)おい 古谷
な… 何か用スか?
お前 全然 進んでないじゃないか
もう みんな 今日で仕上げだぞ
しょうがないなぁ
放課後 残って頑張れ (斗和)は?
出来上がるまで 毎日来いよ
え じゃ… えっ…
えー!
(チャイム)
(奥村)届きましたよ 石膏(せっこう)像
(柾木)奥村先生 わざわざ すみません
三輪はどうですか?
毎日 指導してくださってるんでしょ
来年の沢美(さわび) 大丈夫ですかねぇ?
はい 三輪なら 大丈夫だと思います
(奥村)そうですか!
よろしくお願いします
(柾木)はい 頑張ります
(奥村)ハハハ
お 頑張れよ
はい
古谷 来たか
うん… 美苑に絵 教えてるんだ?
(柾木)ああ うん
授業の前とか放課後とかにな
へぇ…
(柾木)三輪には絶対に 美大に行ってほしいんだよなぁ
三輪のレベルなら 奨学金も狙えると思うし
ああ…
な… なぁ 柾木先生
み 美苑のこと…
好き?
好きだよ
え えっ?
絵も すごく頑張ってるしなぁ
それに優しいし 賢いし よく気がつくし
たまに ちょっと―
おっちょこちょいなとこも あるけどな
そういう“好き”かよ… ハァ…
(柾木)古谷はどうするんだ?
進学するんだろう?
ああ まあ…
もうすぐ3年になるんだぞ
いろんなことに興味があるのは いいことだけどな
でも そろそろ1つのことを 突き詰めていくっていうのも―
大事なことだぞ
うん
なぁ 古谷
先生 お前たちのこと 応援してるからな
いつでも何でも相談に来いよ
うん
(美苑)失礼します
美苑…
(柾木)今日も頑張ってくか?
あっ はい
(柾木)よし じゃ やるか (美苑)お願いします
今日は 遠近感を意識していくか…
はい (柾木)そうだな…
(斗和) 美術室に飾ってある絵
あれ 美苑が 描いたやつだったんだ
(美苑)うん
私 将来はお父さんみたいに 絵の仕事がしたいんだ
だから美大に行きたいの
でも うち お金ないし
だから奨学金 取るためには 特待生 ならなきゃだけど
何か すげえな 美苑
俺 将来のことなんて全然だし
ホント すげえよ
すごくなんかないよ
私には無理だって 思ってたんだけど―
先生が 美大狙えって 背中押してくれて…
あ だから―
柾木先生には すごくお世話になってるから
何かお礼がしたいなって 思ってるんだけど何がいいかなぁ?
うん…
手作り系かな? シュークリームとか?
でも ハードル高そうだよな
(律)で どうしたんだよ 斗和
自ら DDD会議の招集かけて
うん
あぁ…
(せき払い)
俺は…
ヘタレだ (律・惟智也・龍生)知ってるよ
だよな
だから 何だよ
俺は美苑のこと めっちゃ好きだけど―
美苑は…
柾木のことが好きだから…
柾木は―
俺には敵(かな)わない相手なんだよ
でも―
美苑のこと 諦めたくない
カッコ悪いヤツって思われても―
情けないヤツって 思われてもいいんだ
どうしたらいい? 教えてくれよ
やっぱ あれだろ
当たって当たって当たって 行くっていうのが その…
惚(ほ)れた女に対する 礼儀なんじゃねーの?
でもなぁ 一つ屋根の下より 上級イベントって何だろ~な
隣に引っ越すより 濃いのだろ?
ったく 後先考えず突っ走って ハードルなんか上げるから
ごめんなさい…
(律)お…
男子高校生にオススメの
告白シチュエーション ランキングってのあるぞ
(惟智也)花火大会やクリスマス 初詣などの
季節のイベント系が オススメだってさ
全部 終わっちゃってんじゃん (惟智也)ホントだ
(律)こーなったら 初心に帰って学校行事だな
(龍生)とりあえず 目先のイベントっていったら…
(斗和たち)宿泊学習!
ちょうどいいじゃん 2年最後のお泊まりイベントだし
(龍生)家とか学校より 絡めるんじゃない?
(律)よし! こうなったら 一気に三輪美苑と―
お前との仲を進展させるぞ! (斗和)よーし よし
よし まずは班分けだな 絶対 同じ班になってな
あ… あとは? あとは?
(律・龍生・惟智也) バーベキュー! バーベキュー!
俺 肉焼く!
(惟智也)肉を… 肉を提供する (律)おいしいやつ
(龍生)あっ あと 野菜 野菜…
(4人のはしゃぎ声)
(美苑)いただきます
(斗和)どう? (美苑)うん おいしい
ホント? (美苑)うん
ハハ…
よかったぁ~
(美苑)う~ん
これね あの 古谷家直伝のレシピで
味噌(みそ)が入ってるの
(美苑)えっ そうなんだ
そう で 味噌を入れることによって
よりマイルドに仕上げてるの
(斗和)あぁ~
(美苑・斗和) ごちそうさまでした
お皿 洗うね
ああ いいよ あとでやっとくから
ううん おいしいスープのお礼
俺も手伝うよ はい じゃあ俺 これ持ってく
(美苑)ありがと
何よ
(斗和)いやぁ
何かさー
これって 同棲(どうせい)生活っぽくね?
バカじゃないの?
フフ…
(美苑)はい (斗和)はい よし!
(美苑)あ 何 これ? (斗和)ん?
あ…
ほら 宿泊学習 もうすぐだろ
うまい弁当 作ってやっからさ
楽しみにしてろよ~
フフ…
何 作ろっかな~
フ~ン…
あっ 可愛い
あっ なあ なあ なあ なあ…
同じ班になったら どうする?
ねえ
同じ班…
あのね
(斗和)ん?
宿泊学習なんだけど…
(斗和)うん
え? 三輪 宿泊学習 参加しないの?
(斗和)うん
はぁ? なんでだよ
いやぁ 俺も 理由 聞いたんだけどさ
“とにかく私は参加しない”って 言うだけで…
マジか…
(柾木)どうだ 三輪?
どうしても お父さんと同じ色にならなくて
お父さんと同じ色を出す必要なんか ないんじゃないか?
三輪にしか出せない色を 出せばいい
はい
(柾木)三輪も 三輪のお父さんも
この風景が好きなんだな
娘も同じ場所を 大好きになってくれて―
お父さんも喜んでるな きっと
そんなことないかも
え?
いえ 何でもありません
(ヤス)おせぇんだよ!
(ヤス)足りねぇじゃねぇーか
すいません
美苑
しょうがねーな
母ちゃんに 来月は ちゃんと払うように言っておけよ
はい
じゃあな
あ…
(荒木)ふん! (斗和)うわあ! ああ! わわ…
何ですか?
おい ちょっとツラ貸せ
え? え…
(荒木)あの美苑って娘の 母親とは
かれこれ 6年のつきあいになる
あいつの母親は あちこちで金 借りて
もう まともな所じゃ 借りられなくなって―
うちみたいな所に 飛び込んできたんだよ
あの…
なんで美苑のお母さんは 借金なんか…
旦那が脳梗塞(のうこうそく)で死んだんだよ
まさか旦那が急にいなくなるなんて 思ってもみなかったんだろうな
旦那のいない寂しさを 紛らわそうとして
派手な買い物したりしてるうちに 貯金も底ついて…
それから これじゃいけねーって あの母親も頑張ってるんだけど
いかんせん 借りた額が額でな
母親が働くだけじゃ足りなくて―
娘は修学旅行やら 何やら全部 我慢して
バイトまでして 借金 返してんだよ
だから あいつ…
なぁ 兄ちゃん どうするよ?
高校生風情じゃ 何もできることなんかねえか
じゃあな
ちょっと待ってください!
(斗和)“出前! うまいから食え!”
ん?
ハッ…
(斗和)“これからしばらく さびしい思いさせちゃうけど”
“毎日スープ作ってやるからな”
“ちゃんとあっためて食えよ!”
寂しくなんかないし
(電子レンジが鳴る音)
いただきます
ハァ…
ああ…
ハッ…
(ドアの開閉音)
(あくび)
(斗和・先輩)せーの よっ!
(先輩)よし
(先輩)おい 大丈夫か! (斗和)あっ すいません…
(先輩)ゆっくりな いくぞ
はい (先輩)よいしょ
マジかよー (律)でな そのまま…
痛い 痛い…
(律)ここ? (斗和)痛い 痛い… あっ…
あ 美苑 おはよう
ねぇ…
よし! ニコちゃんマークだ
ハハハハ…
ああ…
(さくら)どうしたの~?
どうしたの? 何 何?
寝ちゃってる
(さくら・優奈)可愛いね~!
(優奈) やっぱ斗和くんだよね~
(先輩)はい 次
おっ… (先輩)お~し
やった…
ついにゲット~
ハハハハ あぁ~
待ってろよ 美苑~!
ハァ…
あ… (柾木)おう 古谷 どうした?
先生 ちょっと話があるんだけど
そうか
3分 待ってくれるか?
あ うん
(柾木)待たせたな
今度の宿泊学習で 先生の手伝いをしてもらえないかな
先生のアシスタントって 言えばいいのかな
(斗和)美苑…
いろいろ手伝ってもらえると 助かるんだ
三輪には補助の仕事を やってもらうことになるから
もちろん 宿泊の費用も必要ない
どうだ 手伝ってもらえるか
お気遣い ありがとうございます
でも…
大丈夫です
(柾木)待ちなさい
いいか 三輪
申し訳ないなんて 考える必要ないんだ
三輪はまだ高校生なんだから
大人みたいな遠慮するな
(美苑)先生…
(美苑)古谷?
どうしたの?
何でもない
あれ? 鍵…
うち 来て
いいよ
風邪ひいたら どうすんの? いいから来て
(美苑)古谷 薬
柾木に似てるよな
(美苑)え?
(斗和)似てるよ 美苑のお父さんと柾木
そうかな?
(斗和)何なんだよ もう
古谷?
なぁ…
俺にしとけよ
美苑
(美苑)え?
そんな顔すんな
(斗和)ああ… あ…
ああ…
えっ? え ちょ… 何?
ああ… (美苑)熱い
ねえ ちょっと 大丈夫?
(斗和)一緒に…
飯…
2人で…
(鳥のさえずり)
あれ?
ん ん…
み み み み… 美苑?
あ… あ… ハァ… あ…
古谷 起きたんだ
あ! あ… いや…
手 振っても振っても 放さなかったから
(斗和)あ…
気分悪いなら 倒れる前に言えばいいのに
あっ! あ… あ いや… あの
ご ご ご… ごめん 美苑 あの 俺 俺…
別にいいよ 熱ある時くらいは面倒かけても
美苑…
古谷 今日 学校休むでしょ?
早く自分の部屋で寝なよ 先生には言っとくから
(体温計の測定音)
ハァ まだちょっとあるなー
ずっと一緒にいてくれた
やべえー めちゃくちゃ うれしいんだ…
ああー うーん
あの… 何ですか?
お前 いい彼氏 持ったな
え?
合宿 参加できるように なったんだろう?
あいつ 見かけによらず 骨があるな
え?
ねえ お肉 食べる人
やーだ!
(奥村)おい 龍生! (龍生)はい
(奥村)お前 たくさん食べろよ! (龍生)はい 食べます!
(優奈)私のも あげる (さくら)はいっ
(龍生)サンキュー!
(さくら)えー? なんでー? (女子たち)ちょっと~
(男子たち) 汐美高・宿泊学習恒例!
王様ゲーム! (一同)イエーイ!
5番と18番が 3回廻(まわ)ってワン!
(一同)2 3
(晴翔・さくら)ワン!
(優奈)尻文字!
(一同)汐美の“し”の字は どう書くの!
(惟智也)やっぱ 王様ゲームっつったら これっしょ
7番と15番
キス!
あ 俺だ
(惟智也)注目の15番は?
はいはいはい 美苑です!
(優奈)うっそー!
(さくら)美苑?
(一同)キス キス…
(律)惟智也 惟智也…
お前 どうすんだよ!
いやいや だってまさか あの2人に当たるとか思わねぇし
(一同)キス キス… (柾木)はい やめ やめ!
(龍生)どうすんだ 惟智也 (惟智也)あー もう知らねえよ
(龍生)うわ 開き直った!
(一同)キス キス キス… (柾木)もう わかったよ!
え…
(女子たち)え~?
(女子たち)え~?
えっ!
(女子たち)えっ? え…
(女子たち)キャーッ!
(男子たち)え~!
(柾木)“え~”じゃないだろ!
(女子たちの騒ぎ声)
ハァ…
ほら 早く ちょっと こっちに来い
(斗和)ん? 何?
(律)斗和 お前 結局 どーすんだよ?
(斗和)何が?
三輪のことに決まってんだろ
このまま 大人の余裕 ブッこいてる柾木に
やられっぱなしでいいのかよ
(惟智也)よし!
星空告白だ
(律・龍生・斗和)星空告白?
え 告白だったら 今までもしてんじゃん
(惟智也)今までは 勢いで テキトーにコクっただけだろ?
夜 いつもと違う知らない場所
満天の星の下
2人っきりで いい雰囲気で―
“好きだ”と言われて 揺るがない女子がいるか?
(律・龍生)いない いない!
(律)おまけに流れ星なんて 流れたりしちゃったらさぁ!
流れ星… (龍生)おぉ!
女子の大好物じゃん!
勝負は天体観測
すっげえ告白 食らわしてこい!
わかった
もう これ以上ない っていうくらいの最高の告白―
ぶちかましてくる!
(惟智也・律・龍生)よっしゃー!
よっしゃ!
(奥村)は~い
(手をたたく音)
みんな 集まってるな~?
(一同)は~い
よし
じゃあ 展望台の丘まで登って 見た星座を記録して
1時間で帰ってこい
(斗和・律・龍生)はい
記録しなくていいから お前は結果を残せ
オッケー (奥村)気をつけて行ってこいよ!
(律)よっ (斗和たち)はい
(柾木)地図と懐中電灯は 持ってるな?
(惟智也・律・龍生) まだ まだ まだ…
(惟智也)落ち着け (龍生)よく見ろ よく見ろ
(惟智也)まだ… まだ まだ…
(律)早く行け! 健闘を祈る!
(惟智也たち)頑張れよ 斗和!
(律)行け
(龍生) 早く! 早く 早く 早く…
(美苑)古谷
行くぞ 美苑
(美苑)えっ? え…
(奥村)はい はい はい はい 気をつけてな
(フクロウの鳴き声)
2人ぼっち だな ヘヘ…
(美苑)そうだね
あ… 寒くない?
(美苑)大丈夫
あ… そうだ コーヒー 飲む?
(美苑)ううん いい
うん ハハッ
(カラスの鳴き声)
あのさぁ
美苑
(美苑)うん
あの…
俺…
ん? うん
ねぇ 古谷
私たち 迷ったんじゃない?
え?
(美苑)え? ここ どこ?
あれ? あれ?
あれ? あれ?
ああ… あ あ ああ…
あ あ あ あ ちょ…
お お お… 落ち着け 美苑 な?
あの こういう時は 今来た道を 引き返せば帰れるはずだ
そっちじゃないよ 古谷 落ち着いて
ハッ ハハ… わ わかってるよ うん
そんなにルートからは 外れてないはずだから
ここを抜ければ…
大丈夫だ よし
(美苑)うん
ハァ どっちだ え?
(美苑)歩き疲れたでしょ
ああ 平気だよ うん 平気
(美苑)ちょっと休もっか
あ… うん
(美苑)休もっ
ごめん 美苑
ホント ダメだ 俺
ううん ダメじゃないよ
ほら 見て
(美苑)星空 キレイだし
(斗和)うん
(美苑)ねぇ 古谷
(斗和)ん?
聞いたよ バイトしてくれてたんでしょ?
私を宿泊学習に 参加させようとして
あぁ…
頼んでもないのに そこまでするなんて
ホント バカだよね 古谷って
あっ… ハハ…
だよな うん ハハ…
でも…
うれしかったなぁ
フフ…
ホント ありがとね 古谷
うん
(美苑)あっ
ねぇ 流れ星とか出ないかなぁ
なあ 美苑
(美苑)ん?
前に言った告白
全部 取り消す
中途ハンパな言葉じゃ―
意味ないって わかったから
うん
うん
(生徒たちの話し声)
(斗和)ん?
(斗和)流れ星も流れず 告白もできなかったけど…
(斗和)あっ みんなだ
(美苑)あっ (斗和)あ… ハッ…
行こう
(斗和)何だか少しだけ…
うん
(斗和)美苑に近づけた気がした
(奥村)浜田 (浜田)はい
(奥村)古谷
(斗和)はいっ
(奥村)小島(こじま) (小島)はい
(奥村)頑張ったな (惟智也)見せろ
(奥村)えー 吉田(よしだ) (吉田)はい
(斗和・律・龍生)せーの
(惟智也・斗和)うお お お…
上がった 上がった
うわ すげえ上がってる
上がった?
頑張ったじゃん
お前ら もう3年になるんだからな
(奥村)あと1週間で 休みに入るけど
気緩めずに頑張れよ!
(一同)はーい
(奥村)それから 今日は1つ みんなに残念な報告がある
このクラスの副担任を 務めてくださっていた柾木先生が
今学期いっぱいで この学校を辞めることになった
(生徒たち)えーっ?
(さくら)なんでですか?
(奥村)ご家庭の都合だ
お父さんのお体がよくなくてな
地元の北海道に 戻られることになったんだ
(女子)あっ ああ…!
美苑!
(女子)大丈夫?
大丈夫か?
大丈夫
(柾木)ポイントは
白いテーブルとイスと…
(斗和)なあ なあ なあ なあ 何にする?
お!
トロトロ卵のオムライスだって これ うまそうだなー
何だよ 早く決めろよ
なあ 何か あ… あれだな その…
チキンライス こっち
(龍生)お! (律)わあ! ほら
ビーフステーキ! 1880円
じゃあ 頼も
(店員)こちらで いかがでしょうか?
これでお願いします
(店員)ありがとうございます
ありがとうございました
お父さん
今日が8回目の命日だね
大好きな人…
みんな いなくなっちゃう
私 また 独りぼっちになるのかなぁ
(美苑)失礼します
(柾木)ああ 来たか
これが 三輪の
持てるか? (美苑)はい
それから これ
僕が使ってたやつだけど
よかったら使ってくれないか
はい 大切にします
(柾木)僕がいなくなっても
このまま描いていれば 絶対 沢美 大丈夫だから
頑張れよ 三輪
はい
美苑
持ってってやるよ な?
いい
今日は1人で帰りたい
(斗和)わかった
じゃ 失礼します
(柾木)うん
(美苑)ありがとうございます
(柾木)気をつけてな
(美苑)はい 失礼しました
(斗和)なぁ 先生
俺 柾木先生になりたい
古谷?
大人になったら―
俺も 好きな人のために…
いっぱい できるようになりますか?
(斗和)そして 終業式の日がやってきた
(呼び鈴の音)
美苑
おはよう
美苑?
ハァ… ハァ…
美苑? ど… どうした?
今日… 行けない…
ちょっ… 美苑? え?
すごい熱
美苑 よいしょ…
よいしょ
病院は?
(美苑)薬 飲んだから…
今日 柾木の最後の日なのに
(美苑の荒い息遣い)
(斗和)え?
(美苑)私…
いつも こうなんだ
大事な人に―
大事なことが… 言えないの
え?
(美苑)お父さんと―
どうでもいいことで―
喧嘩(けんか)しちゃって…
謝れないまま
間に合わなくて…
お父さん… 死んじゃった
美苑…
(美苑)お願い…
ハァ…
わかった
わかった
本当にやばくなったら すぐに携帯鳴らせよ
なっ (美苑)うん…
よし
(美苑の荒い息遣い)
(校長)文武両道
学生の本分であります 勉強をおろそかにせず―
部活動にも 力を入れていただきたいと思います
今日で 3学期が終了します
1人1人 健康に気をつけて―
新学年を迎えてほしいと思います
それでは 今年度をもって退職される―
柾木先生に ご挨拶をお願いしたいと思います
(柾木)みんな
今日まで本当にありがとう
これからも 自分の夢や目標に向かって
1歩1歩 進んでいってください
先生は この学校が大好きでした
今回は先生の都合で ここを去ってしまいますが
ここで見た学校の景色 みんなの笑顔
一生の宝物です
この先―
みんなには輝ける 未来がね 待ってると思いますが
ここで学んだこと
そして ここで出会った仲間
そして自分を信じて…
(柾木)なぁ 先生
大人になったら―
俺も 好きな人のために…
いっぱい できるようになりますか?
大人は何にもできないよ
ただ1人で決められるだけだ
俺は お前たちのほうが きっと…
何だってできるんだって思うよ
(斗和)何だって できる…
ハァ ハァ ハァ…
古谷…
行こう
えっ?
柾木のこと 好きなんだろう?
(美苑)え…
告白しろよ
このまま行かせちゃっていいのかよ
今 お前がしんどいのは よくわかってる でも…
大事な人に大事なことが 言えないなんてダメだ
俺が連れてってやるから
な!
古谷…
ちゃんと柾木に―
今のお前の気持ち 伝えよう
うん
(斗和)気をつけて (美苑)うん
ゆっくりでいいから
寒くないか?
(美苑)うん
(律・惟智也・龍生)斗和!
お前ら…
(律)柾木 学校出ちゃったぞ
(美苑・斗和)えっ?
飛行機の時間があるからって
あっ
(龍生)これ 親父の病院から借りてきた
(惟智也)ほら 早く乗せろよ (斗和)ああ
(律)大丈夫?
(美苑)うん
(龍生)気をつけて
(龍生)間に合うかな?
(惟智也・律)間に合うよ!
そうだな
しっかり つかまってろよ
よし 行くぞ!
(惟智也たち)おう!
(美苑)あっ…!
美苑 大丈夫か? (律)おい
親父に怒られる
いいよ 一緒に怒られてやるよ (龍生)うん
美苑 背中に乗れ
早く!
うん
行くぞ よし
(律)あっ 15時半に 急行あるぞ
(惟智也)おっ
(惟智也)行け! 行け! 諦めるな!
(龍生)絶対 間に合うからな!
頑張れ!
ありがとな
いいから早く行け
さっさと行け!
(龍生) 絶対 大丈夫だからな!
行けー!
行ける! 行ける!
頑張れ!
すいません
(美苑)ハァ…
(斗和)大丈夫
絶対 間に合うから
美苑
雪だ
高速バス乗り場
どこだ
柾木… どこだ
ハァ…
どこだよ…
よし! 行こ!
柾木… ハァ ハァ…
柾木… 柾木…
いた! ハァ…
柾木
あ?
ごめんなさい
くっそ
大丈夫 絶対 見つけてやるからな
ハァ ハァ… ハァ
ハァ ハァ
柾木… どこだよ…
いた
柾木!
古谷
(斗和)行けるか?
(美苑)うん
三輪?
ありがとう 古谷
いいから行け
うん
(美苑)先生
三輪 大丈夫か?
はい
先生に どうしても 聞いてほしいことがあります
うん
先生
私…
先生のことが好きでした
その好きっていう 気持ちのおかげで―
今日まで いっぱい 頑張ってこれました
本当に…
ありがとうございました
(柾木)ありがとう 三輪
三輪が好きな道に進める 手助けができたとしたら
うれしいよ
じゃあな
(美苑のすすり泣き)
(美苑)大好きな人 みんな いなくなっちゃう…
私 また 1人ぼっちになるのかな…
(美苑の泣き声)
(美苑)あ…
俺…
お前の父ちゃんになる
兄ちゃんにだって 弟にだって
犬だって 何にだってなってやる
だから―
お前は1人じゃない
俺が ずっと一緒にいるから
古谷
私ね…
たぶん―
先生のこと お父さんと重ねてたんだと思う
古谷が 気づかせてくれたんだよ
降参
私も古谷のこと 好きになった
えっ?
好きだよ 古谷
(斗和)えっ…
嘘だ
ホントだよ
う う… 嘘だっ!
ホントだってば
ハイ 嘘!
ホント
絶対 嘘だ
だって 何にでもなってくれるって 言ったでしょ?
(斗和)それは…
おう まかしとけっ
じゃあ 犬で
よろしく
(美苑)ハッ…
いいよ お前の犬になってやるよ
だけど犬は そのうち―
オオカミになるかもしれないよ
風邪 うつるよ
いいよ
(美苑)え?
♪~
~♪
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