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20 00:01:43,670 --> 00:01:48,940 １００年に一度ともいわれている大変なことが起きている今➡ 21 00:01:48,940 --> 00:01:52,510 見て頂きたい物語です。 22 00:01:52,510 --> 00:01:55,910 戦争の詩を朗読してきた私に➡ 23 00:01:55,910 --> 00:02:04,550 いつしか　体験者や被爆者の方からお手紙が来るようになりました。 24 00:02:04,550 --> 00:02:09,930 「私は　戦時中戦闘機のパイロットでありました。➡ 25 00:02:09,930 --> 00:02:14,660 大勢の同期生が　散華いたしました」。 26 00:02:14,660 --> 00:02:21,570 「被爆者に対する無理解と偏見で私の戦後は　死ぬまで続きます」。 27 00:02:23,370 --> 00:02:27,910 今回　その思いをもとに➡ 28 00:02:27,910 --> 00:02:33,520 さまざまな分野で活躍する方たちと作品を作りました。 29 00:02:52,000 --> 00:02:55,870 １つ目の物語の舞台は　ヒロシマ。 30 00:02:55,870 --> 00:03:01,780 詩人　林　幸子さんの手記が没後　新たに見つかりました。 31 00:03:03,910 --> 00:03:07,780 ７５年前の記憶が　よみがえります。 32 00:03:07,780 --> 00:03:12,390 「あの日」の記憶です。 33 00:03:12,390 --> 00:03:24,000 ♬～ 34 00:03:24,000 --> 00:03:30,840 「晴れた夏空に　巨大なきのこ雲が弄騰しながら　天にのぼる。➡ 35 00:03:30,840 --> 00:03:38,410 雲の塊が異様にふくれあがりまくれかえり生きもののように弄騰する。➡ 36 00:03:38,410 --> 00:03:49,060 きらきらと　ちかちかと　青　黄　桃　紫妖しく　きらめく光の微粒子が➡ 37 00:03:49,060 --> 00:03:54,560 雲のなかではげしく明滅してやまぬのだ」。 38 00:03:56,400 --> 00:04:01,070 あの日　８月６日　午前８時１５分。 39 00:04:01,070 --> 00:04:08,910 原子爆弾は　市の中心部上空　約６００メートルで　爆発しました。 40 00:04:08,910 --> 00:04:12,280 そのとき　林さんは　勤労動員で➡ 41 00:04:12,280 --> 00:04:17,120 広島市の西部　己斐町の工場で働いていました。 42 00:04:17,120 --> 00:04:19,920 家族が心配でたまらず➡ 43 00:04:19,920 --> 00:04:25,330 実家のある　下流川町に向かったそうです。 44 00:04:28,160 --> 00:04:31,800 「市内に入る道を探しては進む。➡ 45 00:04:31,800 --> 00:04:36,370 だが　逃げてくる群衆が多くて前に進めない。➡ 46 00:04:36,370 --> 00:04:46,850 人々の流れに逆らって進むと　あちこちで『痛いっ』という悲鳴が上がるのだ。➡ 47 00:04:46,850 --> 00:04:56,560 延々と広がる　がれきの焦土。焼け野原。　廃虚」。 48 00:05:00,430 --> 00:05:05,300 「やっと燃えていない橋に行き着いた。➡ 49 00:05:05,300 --> 00:05:10,840 橋のたもとには　生きているのか死んでいるのか　わからない　屍が➡ 50 00:05:10,840 --> 00:05:14,810 ごろごろ転がっている。➡ 51 00:05:14,810 --> 00:05:17,910 二つ目の橋を渡る。➡ 52 00:05:17,910 --> 00:05:23,720 三つ目の橋　住吉橋に来た。➡ 53 00:05:23,720 --> 00:05:39,830 ああ…　累々と　地面を覆い尽くす夥しい　屍　屍　屍。➡ 54 00:05:39,830 --> 00:05:44,210 まだ息がある屍。➡ 55 00:05:44,210 --> 00:05:52,480 累々と横たわる砂や灰にまみれた鮪のよう…➡ 56 00:05:52,480 --> 00:05:55,380 もう人間ではない。➡ 57 00:05:55,380 --> 00:06:03,990 死は　尊厳を棄て　汚物となり果て打ち棄てられてしまった」。 58 00:06:07,130 --> 00:06:11,830 「もう励ましの言葉なんてからからに干涸らびてしまった。➡ 59 00:06:11,830 --> 00:06:15,570 汗も干涸らび　唇が塩辛い。➡ 60 00:06:15,570 --> 00:06:24,650 町が燃え　空が燃え　地面が燃え　川が燃え風が燃え　樹が燃え　草が燃え　花が燃え➡ 61 00:06:24,650 --> 00:06:27,580 石が燃え　水が燃え…➡ 62 00:06:27,580 --> 00:06:34,090 家族が燃え　生活が燃えた。➡ 63 00:06:34,090 --> 00:06:41,830 暑い　暑い　熱い➡ 64 00:06:41,830 --> 00:06:46,670 熱い➡ 65 00:06:46,670 --> 00:06:49,870 こんなときに　日陰がない。➡ 66 00:06:49,870 --> 00:06:52,770 そよとも風がない。➡ 67 00:06:52,770 --> 00:06:58,380 こんなときに　凪だなんて…」。 68 00:07:01,480 --> 00:07:03,420 林さんは　ようやく➡ 69 00:07:03,420 --> 00:07:06,920 下流川町の家にたどりつきましたが➡ 70 00:07:06,920 --> 00:07:14,760 家は跡形もなく父　母　弟の姿も　ありませんでした。 71 00:07:14,760 --> 00:07:19,500 もしかすれば比治山に避難しているかもしれない。 72 00:07:19,500 --> 00:07:24,510 林さんは　疲れきった足を踏み出すのでした。 73 00:07:26,610 --> 00:07:33,050 「少しばかり歩いたらがれきの中から声をかける人がいた。➡ 74 00:07:33,050 --> 00:07:39,790 振り向くと怒髪　天をつくという言葉のように➡ 75 00:07:39,790 --> 00:07:48,260 髪ぼうぼうの小母さんが懐かしそうに近寄ってきた。➡ 76 00:07:48,260 --> 00:07:56,710 ぶかぶかの浴衣　紐の代わりに縄を結んで顔色は　異様な青白さだった。➡ 77 00:07:56,710 --> 00:08:04,450 後で思えばすでに　死相のあらわれた顔だったのだ」。 78 00:08:04,450 --> 00:08:12,820 林さんでしょう？林さんとこの　お嬢ちゃんでしょう。 79 00:08:12,820 --> 00:08:21,530 うちですよ。　ほら　ここで洋裁店をやっていた　松本ですよ。 80 00:08:21,530 --> 00:08:26,670 「痩せて　おしゃべりで　元気なおばさんはいつも店先で　ミシンを踏んでいた」。 81 00:08:26,670 --> 00:08:32,270 主人と子供がねぇあそこで死んだんですよ。 82 00:08:32,270 --> 00:08:36,440 きっともう骨になってしもうたんじゃろうねぇ。 83 00:08:36,440 --> 00:08:43,150 「私は絶句した。　身内の死をひと事のように　しゃべっている」。 84 00:08:43,150 --> 00:08:48,390 あんときうちは　店で仕事をしとったんです。 85 00:08:48,390 --> 00:08:52,960 主人と子供は　奥の部屋におりました。 86 00:08:52,960 --> 00:08:59,070 ぱぁっと光ったら今度は　真っ暗ですけんねぇ。 87 00:08:59,070 --> 00:09:04,240 うちは　もう　すぐそばにあった非常袋を持って逃げるのが➡ 88 00:09:04,240 --> 00:09:07,440 精一杯じゃったんよ。 89 00:09:07,440 --> 00:09:11,880 主人と子供の声が奥の方からするんじゃけど➡ 90 00:09:11,880 --> 00:09:17,690 下敷きになってしもうてよう助けられませなんだ。 91 00:09:17,690 --> 00:09:27,030 うちはねぇ　このミルクの缶を持って逃げるのが　精一杯じゃったんよ。 92 00:09:27,030 --> 00:09:30,530 「ミルクよりも　なによりも➡ 93 00:09:30,530 --> 00:09:36,400 主人と子供を助けるのが先ではないかと私は思った」。 94 00:09:36,400 --> 00:09:41,180 この浴衣はね比治山の裏に逃げていったときに➡ 95 00:09:41,180 --> 00:09:45,950 どこかの奥さんが気の毒がって　くれたんですよ。 96 00:09:45,950 --> 00:09:51,720 うちは　真っ裸だったんですよお嬢ちゃん。 97 00:09:51,720 --> 00:09:57,590 爆風が強うて着ておった服が　ちぎれ飛んだんです。 98 00:09:57,590 --> 00:10:04,200 「小母さんは　そう言うと袂から　ミルクを　もう一缶　取り出す」。 99 00:10:04,200 --> 00:10:07,400 ねぇ　お嬢ちゃんも行くところがないんでしょう。 100 00:10:07,400 --> 00:10:10,000 一緒に２人で暮らしましょう。 101 00:10:10,000 --> 00:10:15,310 このミルクさえあれば生きていかれますけんねぇ。 102 00:10:15,310 --> 00:10:20,280 でも　うちは　お父さんと　お母さんを探しに　比治山に行くんです。 103 00:10:20,280 --> 00:10:28,620 なにを言いなさるね。　あんたのうちの人はもう死んどってのに。 104 00:10:28,620 --> 00:10:31,630 いんでも無駄ですよお嬢ちゃん。 105 00:10:31,630 --> 00:10:34,000 それじゃあ　小母さん。 106 00:10:34,000 --> 00:10:39,800 やっぱり比治山に行くん？はい　行きます。 107 00:10:39,800 --> 00:10:44,110 無駄じゃあ言うとるのに。 108 00:10:46,670 --> 00:10:49,110 林さんは結局➡ 109 00:10:49,110 --> 00:10:52,980 家族に会うことはできませんでした。 110 00:10:52,980 --> 00:10:54,980 己斐町に戻って➡ 111 00:10:54,980 --> 00:10:58,420 眠れぬ一夜を過ごした翌日➡ 112 00:10:58,420 --> 00:11:04,130 姉が嫁いでいた楽々園という土地を訪ねたのでした。 113 00:11:06,730 --> 00:11:14,470 「楽々園の駅を降りると　八幡川の土手を海に向かって歩いて行った。➡ 114 00:11:14,470 --> 00:11:20,980 姉の家は　芋畑の中の一軒家だった。➡ 115 00:11:20,980 --> 00:11:27,580 夏の午前の日差しの中を一足ごとに近づいてゆく」。 116 00:11:31,950 --> 00:11:36,460 「玄関の格子戸は　閉まっていた」。 117 00:11:38,690 --> 00:11:44,430 「前庭に入ると　居間の窓が開け放たれて➡ 118 00:11:44,430 --> 00:11:53,710 そこに　すっかり別人のように面変わりした父の顔を見た。➡ 119 00:11:53,710 --> 00:12:00,720 激しいショックと共に一切を了解した」。 120 00:12:05,950 --> 00:12:10,490 「あのとき　父の話によれば➡ 121 00:12:10,490 --> 00:12:18,270 父と母と弟の３人は　激しい爆風で家屋の下敷きになっていた。➡ 122 00:12:18,270 --> 00:12:25,940 父は　ようやく　がれきから這い出し母の名を呼び　弟の名を呼ぶと➡ 123 00:12:25,940 --> 00:12:31,780 がれきの底の方から　母の声がした。➡ 124 00:12:31,780 --> 00:12:38,520 『お父さん！祐介は　死んでしもうたようです。➡ 125 00:12:38,520 --> 00:12:43,990 何遍　呼んでも返事をせんのです』。➡ 126 00:12:43,990 --> 00:12:50,430 父は　母を助けようとしたが１人の力では　どうしようもなかった。➡ 127 00:12:50,430 --> 00:12:55,670 父は救助を求めて　兵器廠へ向かった。➡ 128 00:12:55,670 --> 00:13:02,940 通りに出ると　阿鼻叫喚とはこのことだった。➡ 129 00:13:02,940 --> 00:13:08,280 泣き　叫び　喚き➡ 130 00:13:08,280 --> 00:13:18,730 子供らは　おろおろと親を探しながら女は髪逆立ち　男は血走った目を怒らし➡ 131 00:13:18,730 --> 00:13:22,700 我勝ちに逃げる　襤褸の群れ。➡ 132 00:13:22,700 --> 00:13:29,440 父は　兵隊さんたちを連れて家に戻ろうとした。➡ 133 00:13:29,440 --> 00:13:33,940 急に　雨が降り出した。➡ 134 00:13:33,940 --> 00:13:37,580 雨は　土砂降りとなった。➡ 135 00:13:37,580 --> 00:13:41,180 夜ともまがう暗い空。➡ 136 00:13:41,180 --> 00:13:47,720 逃げる人も　みんなはびしょ濡れも構わず駆け続けた。➡ 137 00:13:47,720 --> 00:13:52,390 突然　落雷の音が　轟き渡った。➡ 138 00:13:52,390 --> 00:13:55,300 『空襲だあっ』➡ 139 00:13:55,300 --> 00:13:59,200 『爆弾じゃあっ』➡ 140 00:13:59,200 --> 00:14:05,810 兵隊たちは　そう叫ぶと『うわあーっ』という悲鳴を上げて➡ 141 00:14:05,810 --> 00:14:09,610 手に持った鋸や　てこ棒などを投げ捨てて➡ 142 00:14:09,610 --> 00:14:14,980 蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。➡ 143 00:14:14,980 --> 00:14:22,490 父は大声を上げて　泣きながら路上に棄てられた道具を拾って➡ 144 00:14:22,490 --> 00:14:27,300 しのつく雨をものともせず　走り続けた。➡ 145 00:14:27,300 --> 00:14:32,600 鶴見橋のたもとに　たどりつくと兵隊が立っていて➡ 146 00:14:32,600 --> 00:14:41,310 『こっから先は危険だ』と言って対岸を指差した」。 147 00:14:46,150 --> 00:14:55,490 「広島全市が火炎に包まれて一面　火の海であった。➡ 148 00:14:55,490 --> 00:14:57,760 父は兵隊に頼んだ。➡ 149 00:14:57,760 --> 00:15:02,960 『あそこに家内が下敷きになっとるんじゃ』。➡ 150 00:15:02,960 --> 00:15:06,770 兵隊の制止を振り切り橋を渡り　土手を走り➡ 151 00:15:06,770 --> 00:15:14,340 まだ火の届かない道を探し我が家の方へ向かっていった。➡ 152 00:15:14,340 --> 00:15:16,840 八軒堀の近くまで来ると➡ 153 00:15:16,840 --> 00:15:25,350 すでに前方全域は　物凄い熱気と共に紅蓮の炎が　ごうごうと　うねりながら➡ 154 00:15:25,350 --> 00:15:33,860 火の粉をまき散らしながら　火柱を天に　まきあげながら　燃え続けていて➡ 155 00:15:33,860 --> 00:15:39,070 もう一歩も前には進めなかった」。 156 00:15:41,600 --> 00:15:56,620 「『ああ　そんとき　わしゃ火の中に飛び込んで　死のう思うたよ』」。 157 00:16:02,890 --> 00:16:08,130 「そのとき父は　数えで　５５歳。➡ 158 00:16:08,130 --> 00:16:17,540 痴呆の老人のように　幼児のようにいつまでも泣きじゃくるのであった」。 159 00:16:25,550 --> 00:16:30,950 「泣いているような弱々しい声。➡ 160 00:16:30,950 --> 00:16:36,290 ふと　お父ちゃんは虚空を見つめ➡ 161 00:16:36,290 --> 00:16:45,030 『風がひどい　嵐が来る　嵐が』と言った。➡ 162 00:16:45,030 --> 00:16:49,940 ふーっと大きく息をついた。➡ 163 00:16:49,940 --> 00:16:55,540 そのままがっくりと崩れて動かなくなった」。 164 00:16:58,980 --> 00:17:07,790 「ひとつきもたたぬ間に私は　ひとりぼっちになってしまった。➡ 165 00:17:07,790 --> 00:17:17,130 涙を流しきったあとの焦点のない私の体。➡ 166 00:17:17,130 --> 00:17:23,270 前を流れる川を見つめる。➡ 167 00:17:23,270 --> 00:17:30,680 美しく晴れ渡った広島の青い空」。 168 00:17:38,490 --> 00:17:41,890 （せみの鳴き声） 169 00:17:41,890 --> 00:17:44,830 （テレビ）「新型コロナウイルスの影響で倒産した企業は➡ 170 00:17:44,830 --> 00:17:50,400 昨日までに　４００社を超えたことが民間の調査会社の調べで分かりました。➡ 171 00:17:50,400 --> 00:17:52,830 調査…」。 172 00:17:52,830 --> 00:17:59,510 ねえ　うちは大丈夫なの？う～ん…　今のところはね…。➡ 173 00:17:59,510 --> 00:18:04,680 お父さん　何もせんのもヒマじゃって小さいの作っとったんよ。 174 00:18:04,680 --> 00:18:10,350 はづきのために　河原で上げようかって冗談かもしれんけど言っとったよ。 175 00:18:10,350 --> 00:18:14,860 でも　今年はなかなか帰ってこれんかったからね…。 176 00:18:16,560 --> 00:18:20,460 うん。今年は　帰るつもりなかったんだけど…。 177 00:18:22,130 --> 00:18:24,570 あれでも　お父さん喜んどるんよ。 178 00:18:24,570 --> 00:18:29,370 毎年　はづきに花火を見せるの一番　楽しみにしとるんだから。 179 00:18:31,070 --> 00:18:34,640 あんたが小さい時　言っとったんよ。 180 00:18:34,640 --> 00:18:39,050 はづきと一緒に花火を見るのが一番　好きじゃって。 181 00:18:39,050 --> 00:18:42,250 （風鈴の音） 182 00:18:45,820 --> 00:18:57,060 ♬～ 183 00:18:57,060 --> 00:19:03,870 「八月六日　あの日の夜のことでした。➡ 184 00:19:03,870 --> 00:19:07,210 『こんばんは』➡ 185 00:19:07,210 --> 00:19:14,020 遠慮しいしい　そう言うて一人のおじいさんが訪ねて見えました。➡ 186 00:19:14,020 --> 00:19:20,760 なんでも　小さいお子さんが火傷で　大分　弱っとって➡ 187 00:19:20,760 --> 00:19:26,030 みかんの缶詰を欲しがっとると言われる。➡ 188 00:19:26,030 --> 00:19:30,030 何軒も探し求めておられた様子が気の毒で➡ 189 00:19:30,030 --> 00:19:37,940 私ちょうど　配給のみかんの缶詰があったので　差し上げました。➡ 190 00:19:37,940 --> 00:19:47,720 原爆が落ちた日ですから　うちにも大勢避難の人が来とって　大変な騒ぎで➡ 191 00:19:47,720 --> 00:19:51,220 そのまま　おじいさんのことは忘れておりました」。 192 00:19:53,420 --> 00:20:02,830 「やがて　八月十五日の敗戦の日が過ぎて秋口だったでしょうか➡ 193 00:20:02,830 --> 00:20:08,400 いつかのおじいさんが　さつまいもを一切れさげて訪ねてこられて➡ 194 00:20:08,400 --> 00:20:15,180 みかんの缶詰を喜んで食べた小さい人の話をされました」。 195 00:20:15,180 --> 00:20:24,590 「今年　小学校へ上がったばかりの孫は家の横手の空地で遊んでおりまして➡ 196 00:20:24,590 --> 00:20:31,360 ピカに　あいました。はい　女の子でありました。➡ 197 00:20:31,360 --> 00:20:39,100 夏じゃけえ　短い服を着とりましたで体中に火傷をしましてのー。➡ 198 00:20:39,100 --> 00:20:44,910 嫁が学校へ行って　油をもろうて来て塗っては　やりましたんですが➡ 199 00:20:44,910 --> 00:20:53,510 なんせ　体の皮が　ぐるっと　一むけむけとりましたで　助かりませなんだ。➡ 200 00:20:53,510 --> 00:21:01,360 痛いとも　なんとも　いいませなんだがのなんぼうか痛うありますつろうに➡ 201 00:21:01,360 --> 00:21:06,930 黙って寝とる孫が　かわゆうてのう。➡ 202 00:21:06,930 --> 00:21:12,170 『なんか欲しいもんあるかい』　言うたら➡ 203 00:21:12,170 --> 00:21:17,970 『みかんの　かんずめが　たべたい』そう言います」。 204 00:21:19,940 --> 00:21:27,080 「みかんの缶詰戦争中では　それはそれは貴重なもので➡ 205 00:21:27,080 --> 00:21:33,320 戦地へ向かう若者が出征の時ぐらいしか食べられんものでした。➡ 206 00:21:33,320 --> 00:21:39,930 私どもには子供がおりませんでしたのでその缶詰を差し上げたのです」。 207 00:21:39,930 --> 00:21:44,400 「それで　孫の欲しがっとるみかんの缶詰➡ 208 00:21:44,400 --> 00:21:46,330 どこぞで持っとられる家があったら➡ 209 00:21:46,330 --> 00:21:51,010 ごむしん言うてもろうて来てやるけえ待ってろよ　言うて➡ 210 00:21:51,010 --> 00:21:55,840 わしは暗い外に飛び出しました。➡ 211 00:21:55,840 --> 00:21:59,350 一軒一軒　声のする方に向いちゃあー➡ 212 00:21:59,350 --> 00:22:05,790 『みかんの缶詰　持っとられやしませんかのー』言うて歩きました。➡ 213 00:22:05,790 --> 00:22:08,590 『孫が　もう息を引き取りそうだけえ➡ 214 00:22:08,590 --> 00:22:14,400 一口でようがんすけえみかんの缶詰やってつかあさいやあ』➡ 215 00:22:14,400 --> 00:22:20,500 わしゃあ　もう　なりふりもかまわずそう言うて歩きましたんです。➡ 216 00:22:20,500 --> 00:22:26,810 どこの家も　あなた火傷の人がいっぱい来て寝とりましたで➡ 217 00:22:26,810 --> 00:22:31,310 うめき声が外まで聞こえてくる家ばかりでの➡ 218 00:22:31,310 --> 00:22:36,920 わしの言うことに　とりおうてくれられる家は　ありゃあしませなんだ。➡ 219 00:22:36,920 --> 00:22:45,330 もう一軒　ごむしん言うて駄目ならはあ　しょうがなあ　戻ろう思いまして➡ 220 00:22:45,330 --> 00:22:52,430 庭木の間から　灯のもれとったお宅に頼んでみましたんです。➡ 221 00:22:52,430 --> 00:22:59,540 お…　奥さんが　みかんの缶詰気持ちように出してくれられて➡ 222 00:22:59,540 --> 00:23:04,380 わしゃあ　うれしゅうて　うれしゅうて急いで戻りました。➡ 223 00:23:04,380 --> 00:23:10,180 『みかんの缶詰　親切な奥さんがくれられたんで　食うてみい』。➡ 224 00:23:10,180 --> 00:23:15,020 わしゃあ　匙で掬うて口に持っていってやりました。➡ 225 00:23:15,020 --> 00:23:20,730 孫は　はあ　そんときゃ大きな口を開ける力は　ありませなんだ。➡ 226 00:23:20,730 --> 00:23:26,070 『食うてみい。　ええみかん　みかん言うとった　みかんでえ』。➡ 227 00:23:26,070 --> 00:23:32,810 わしは汁を掬うて　口の中に入れてやりました。➡ 228 00:23:32,810 --> 00:23:36,110 ゴクンと　一口　飲みました。➡ 229 00:23:36,110 --> 00:23:42,680 『ああ　よかったのうああ　うまかったかい』。➡ 230 00:23:42,680 --> 00:23:50,520 みかんの汁が　孫の　のどを通ったのでちょっと安堵しとりましたら➡ 231 00:23:50,520 --> 00:23:53,660 警報になりました。➡ 232 00:23:53,660 --> 00:24:00,070 町内の人が『警報　警報　灯消せえ』言うので➡ 233 00:24:00,070 --> 00:24:04,870 嫁は孫を連れて防空壕へ逃げる言うので➡ 234 00:24:04,870 --> 00:24:07,540 『ああ　今　動かしちゃあ悪かろうで➡ 235 00:24:07,540 --> 00:24:13,780 わしが　ここで見とったるけえあんた　下の子と逃げとりんさい』。➡ 236 00:24:13,780 --> 00:24:20,350 そんとき　わしゃあ　もしもんときは孫と　ここで死んでもええ➡ 237 00:24:20,350 --> 00:24:24,220 そう思いました。➡ 238 00:24:24,220 --> 00:24:30,860 『おぢいちゃん　逃げんさいうちは　もう　ええけえ』。➡ 239 00:24:30,860 --> 00:24:34,740 そう孫がいいました。➡ 240 00:24:34,740 --> 00:24:41,810 利発な子でありましたけえ　わしのことを気づこうてくれましてのう。➡ 241 00:24:41,810 --> 00:24:43,840 『ええよ　ええよ➡ 242 00:24:43,840 --> 00:24:48,180 お前のような　罪のなあ子どもがバクダンにやられて➡ 243 00:24:48,180 --> 00:24:51,090 こんとな　ひどい目におうてから➡ 244 00:24:51,090 --> 00:24:54,420 わしのような年寄りが生きとってもしょうがないわ。➡ 245 00:24:54,420 --> 00:24:57,190 ここに　こうしておっちゃるけえ➡ 246 00:24:57,190 --> 00:25:00,030 心配せんでええ』。➡ 247 00:25:00,030 --> 00:25:01,960 そう言うて➡ 248 00:25:01,960 --> 00:25:07,230 孫の所に座っておってやりました。➡ 249 00:25:07,230 --> 00:25:09,640 飛行機の爆音を聞いて孫が➡ 250 00:25:09,640 --> 00:25:14,040 『おぢいちゃん　こわいよー』言うて起き上がろうとしました。➡ 251 00:25:14,040 --> 00:25:15,980 『寝とれ寝とれ➡ 252 00:25:15,980 --> 00:25:18,880 もしもの時は　おじいちゃんが背中におうて逃げちゃるけえ➡ 253 00:25:18,880 --> 00:25:20,850 心配せんで寝とれ』。➡ 254 00:25:20,850 --> 00:25:23,250 それでも孫は➡ 255 00:25:23,250 --> 00:25:27,760 昼間　自分の身にふりかかった　バクダンのこわさに➡ 256 00:25:27,760 --> 00:25:29,690 緊張したのでありましょうて➡ 257 00:25:29,690 --> 00:25:33,560 何遍も起き上がりそうにしました。➡ 258 00:25:33,560 --> 00:25:39,500 それから間ものうがくっときましてから➡ 259 00:25:39,500 --> 00:25:44,200 『おじいちゃん　暗うて暗うて➡ 260 00:25:44,200 --> 00:25:48,180 もう目が見えんようになったよー。➡ 261 00:25:48,180 --> 00:25:54,950 さぶい風が吹くばっかりで　さぶしいよー』。➡ 262 00:25:54,950 --> 00:25:57,120 『さぶしいことはなあ➡ 263 00:25:57,120 --> 00:25:59,520 おじいちゃん　ここにこうしておっちゃるけえ➡ 264 00:25:59,520 --> 00:26:02,060 しっかりしとれよ➡ 265 00:26:02,060 --> 00:26:06,990 どこぞ痛うはないかさすってやろうか』。➡ 266 00:26:06,990 --> 00:26:12,030 そう言うてさすってやろうとしましたが➡ 267 00:26:12,030 --> 00:26:18,170 火傷で　あなた　さすってやる所はありゃあしませなんだ。➡ 268 00:26:18,170 --> 00:26:25,850 そいでの　頭をさすってやりよりました。➡ 269 00:26:25,850 --> 00:26:29,720 その内に警報が解けて➡ 270 00:26:29,720 --> 00:26:37,390 嫁も戻って来よりまして灯をつけてやりました。➡ 271 00:26:37,390 --> 00:26:42,730 『ああ　明るうなったろうがい』。➡ 272 00:26:42,730 --> 00:26:47,970 言うてみましたら➡ 273 00:26:47,970 --> 00:26:55,310 はあ　孫は　息を引き取っとりました。➡ 274 00:26:55,310 --> 00:27:00,150 きれいな顔をしとりました。➡ 275 00:27:00,150 --> 00:27:05,650 なんにも悪いこともしとらん子供が➡ 276 00:27:05,650 --> 00:27:18,230 短い…　命をこうして終えてしもうてからのう。➡ 277 00:27:18,230 --> 00:27:30,810 バクダンを落とされて　こんとな目におうたことを　恨みもせんでからのう。➡ 278 00:27:30,810 --> 00:27:33,710 わしゃあ➡ 279 00:27:33,710 --> 00:27:40,250 残りのみかんを孫に持たせてやりました。➡ 280 00:27:40,250 --> 00:27:50,400 『こりゃあ仏様のおひざにいって食べるんでえ…』。➡ 281 00:27:50,400 --> 00:27:55,840 そう言うてのう」。 282 00:27:55,840 --> 00:28:01,640 「おじいさんは『春先に孫と一緒にうえた芋です。➡ 283 00:28:01,640 --> 00:28:07,150 初物ですけえ孫と二人のお礼の気持ちです。➡ 284 00:28:07,150 --> 00:28:09,920 食べてつかあさい』。➡ 285 00:28:09,920 --> 00:28:16,820 そう言うてお芋をひとつ　置いてゆかれました」。 286 00:28:20,660 --> 00:28:25,170 「あれから　随分　年月がたちました。➡ 287 00:28:25,170 --> 00:28:32,640 私の家も　おじいさんの家も太田川放水路になりまして➡ 288 00:28:32,640 --> 00:28:38,850 その頃のことを知るよすがももうございません」。 289 00:28:55,030 --> 00:28:59,700 黙ってても美味しいものが出てくる実家って　やっぱ最高。 290 00:28:59,700 --> 00:29:03,340 なに贅沢言うとるん。ウフフッ。 291 00:29:03,340 --> 00:29:09,140 でも　私の絵　なんでもかんでも飾るのやめてほしいんだけど。 292 00:29:09,140 --> 00:29:16,150 お父さんが飾るんよ。　いつか　あんたが有名になったら自慢するんだって。 293 00:29:17,990 --> 00:29:21,990 有名にねぇ…。　なるのかな？　私。 294 00:29:25,260 --> 00:29:28,700 ⚟（物音と　うめき声） 295 00:29:28,700 --> 00:29:30,800 え？ ⚟（うめき声） 296 00:29:32,470 --> 00:29:35,170 ちょっと　お父さん！ 297 00:29:35,170 --> 00:29:37,870 お父さん！すごい熱！ 298 00:29:37,870 --> 00:29:42,980 （救急車のサイレン） 299 00:29:44,610 --> 00:29:48,020 お父さん　ただの風邪だよね…。 300 00:29:49,580 --> 00:29:54,990 だと思うけど…。ちゃんと調べてないの？ 301 00:29:54,990 --> 00:29:57,760 だって　お父さん嫌がるんだもん。 302 00:29:57,760 --> 00:30:01,060 医者には行かん周りには　絶対　言うなって…。 303 00:30:01,060 --> 00:30:14,070 ♬～ 304 00:30:17,080 --> 00:30:20,080 お父さんはなんで花火職人になったんだろう？ 305 00:30:22,950 --> 00:30:30,620 お父さん　小さい時から　おばあちゃんに原爆の話　聞かされてたでしょ。 306 00:30:30,620 --> 00:30:35,330 だから　空を見るのが怖かったんだって。 307 00:30:37,460 --> 00:30:42,800 でも　花火じゃったら見上げられるって。 308 00:30:42,800 --> 00:30:48,010 じゃけえ広島の空に綺麗な花火が上がったら➡ 309 00:30:48,010 --> 00:30:51,810 みんな　空を見上げて笑えるって。 310 00:30:54,210 --> 00:31:01,390 先生　もう一人　受け入れ要請　来てます。またか　医者の数が足らんよ。 311 00:31:01,390 --> 00:31:03,320 ⚟受けますよ！ 312 00:31:03,320 --> 00:31:17,840 ♬～ 313 00:31:19,770 --> 00:31:26,510 戦争で　２０万人以上の人が犠牲になった沖縄。 314 00:31:26,510 --> 00:31:32,650 今年１月　私は　平和を祈る朗読会を開きました。 315 00:31:32,650 --> 00:31:43,830 「この　青くて美しい空を　アメリカの軍用機が　爆音を立てて飛んでいる」。 316 00:31:43,830 --> 00:31:46,100 壮絶な現場で➡ 317 00:31:46,100 --> 00:31:48,870 兵士たちの看護に当たった女性たちが➡ 318 00:31:48,870 --> 00:31:52,670 いました。 319 00:31:52,670 --> 00:31:59,980 その一人だった　島袋淑子さんの手記をもとにしたドラマです。 320 00:31:59,980 --> 00:32:04,820 バカヤロー！　今まで何してたんだ！見殺しにするつもりか。 321 00:32:04,820 --> 00:32:07,250 看護の方は　誰もいないんですか？ 322 00:32:07,250 --> 00:32:12,690 三日前　交代だと言って出ていったまま誰も来ないんだぞ。　どこに行ってたんだ？ 323 00:32:12,690 --> 00:32:16,160 え　でも…。私たちは十分前に命令を受けて来たんです。 324 00:32:16,160 --> 00:32:18,370 いいから来い！ 325 00:32:21,130 --> 00:32:23,900 「担当したのは　第十七壕。➡ 326 00:32:23,900 --> 00:32:28,740 中に入ると　狭い所に　負傷兵が五十人以上もいました」。 327 00:32:28,740 --> 00:32:32,610 動くな！　じっとしてろ！（叫び声） 328 00:32:32,610 --> 00:32:38,950 ＜想像を絶する状況。　泥だらけの地面に枯草を敷いて兵隊さんが座り➡ 329 00:32:38,950 --> 00:32:42,420 残りは奥に寝かされていました。➡ 330 00:32:42,420 --> 00:32:47,390 学生として看護のお手伝いをするはずが医療従事者が全く足りていません＞ 331 00:32:47,390 --> 00:32:49,660 水をくれ！ 332 00:32:49,660 --> 00:32:54,400 （叫び声と　うめき声） 333 00:32:54,400 --> 00:33:00,210 （うめき声）あの～　大丈夫ですか？ 334 00:33:00,210 --> 00:33:02,540 あっ！　あああ…！ 335 00:33:02,540 --> 00:33:08,550 よっちゃん　どうしたの？下あごが　全部なくなっていて…。 336 00:33:14,150 --> 00:33:18,160 大丈夫　まだ息がある。　こっちは任せて。 337 00:33:18,160 --> 00:33:21,860 ⚟水をくれ！ 338 00:33:21,860 --> 00:33:23,960 はい！　今　持っていきます。 339 00:33:27,600 --> 00:33:29,700 ⚟おい！ 340 00:33:33,840 --> 00:33:36,310 勝手に水をやるな。 341 00:33:36,310 --> 00:33:41,210 せっかく止まった血が出血する。わかりました…。 342 00:33:42,980 --> 00:33:49,320 「その兵隊さんはその晩　亡くなってしまいました。➡ 343 00:33:49,320 --> 00:33:57,060 それから私は　水を欲しがれば　殴られても水をあげようと心に決めました」。 344 00:33:57,060 --> 00:34:04,570 （荒い息） 345 00:34:04,570 --> 00:34:14,750 よっちゃん　全部　終わったらいっぱい　ご飯食べようね。うん。　うん！ 346 00:34:14,750 --> 00:34:20,250 急げ！こっちだ　来い！ 347 00:34:20,250 --> 00:34:24,490 「しかし　日を追うにつれ戦争は激しくなっていきました。➡ 348 00:34:24,490 --> 00:34:27,960 一晩で　二百名の負傷兵が運ばれてくるようになり…」。 349 00:34:27,960 --> 00:34:30,560 おい　手術だ　手伝ってくれ！ 350 00:34:32,300 --> 00:34:35,840 でも私は　手術場勤務では…。そんなこと言ってる場合か。　押さえてろ！ 351 00:34:35,840 --> 00:34:37,770 化膿すると死ぬから切断するぞ。 352 00:34:37,770 --> 00:34:42,610 え　でも　麻酔は…？そんな時間ねーよ。　おい　近づけろ！ 353 00:34:42,610 --> 00:34:45,010 やめろ！　やめろ！ 354 00:34:45,010 --> 00:34:48,720 あーっ！　ぐあっ…！ 355 00:34:48,720 --> 00:34:50,650 （切断する音） 356 00:34:50,650 --> 00:34:53,650 「そうやって切断された兵隊さんの多くは➡ 357 00:34:53,650 --> 00:34:57,660 その晩か翌日には亡くなっていました」。 358 00:35:00,330 --> 00:35:04,530 切ってしまった手足は置いておくわけにはいかないので➡ 359 00:35:04,530 --> 00:35:07,930 外に捨てに行くしかありません」。 360 00:35:12,070 --> 00:35:18,610 学生さん　その手足を捨てに行くのか？それを煮てくれよ。 361 00:35:18,610 --> 00:35:20,950 何　言ってるんですか。 362 00:35:20,950 --> 00:35:24,480 （笑い声） 363 00:35:24,480 --> 00:35:29,760 ＜日々　負傷兵も増え続け次第に狂気じみていく。➡ 364 00:35:29,760 --> 00:35:32,790 治療も医療品も全く追いつかず➡ 365 00:35:32,790 --> 00:35:38,200 このままでは　看護する側も　みんな倒れてしまうのではという状況でした。➡ 366 00:35:38,200 --> 00:35:40,500 そして＞ 367 00:35:40,500 --> 00:35:50,780 （爆音） 368 00:35:50,780 --> 00:35:53,680 まさか　まさか…。 369 00:35:53,680 --> 00:36:04,260 ♬～ 370 00:36:04,260 --> 00:36:08,960 「壕の中は　地獄の有様でした。➡ 371 00:36:08,960 --> 00:36:15,270 声を出していることで　生きていることがわかるといった状態で➡ 372 00:36:15,270 --> 00:36:19,640 足元には　血まみれで倒れている人たち」。 373 00:36:19,640 --> 00:36:21,570 ⚟誰か…。 374 00:36:21,570 --> 00:36:26,410 「その中から私の　よく知っている声が聞こえました」。 375 00:36:26,410 --> 00:36:29,280 ⚟誰か…。 376 00:36:29,280 --> 00:36:35,890 あ…　大城さん！　大城さん！ 377 00:36:38,960 --> 00:36:42,930 腹部をやられています！誰か来てください！ 378 00:36:42,930 --> 00:36:48,100 ⚟後で行くからお前が応急処置を始めろ！ 379 00:36:48,100 --> 00:36:53,370 待っていて。今　軍医の人が来てくれるからね。 380 00:36:53,370 --> 00:37:01,820 よっちゃん…　私は　もう助からないから他の人を先にして…。 381 00:37:01,820 --> 00:37:09,120 わかったから　何も言わないでかすっただけだから大丈夫。 382 00:37:09,120 --> 00:37:12,630 軍医さん　まだですか！ 383 00:37:15,260 --> 00:37:19,130 ミ…。 384 00:37:19,130 --> 00:37:24,940 ＜腹部をやられている人に水をあげるともっと苦しむことは知っていました。➡ 385 00:37:24,940 --> 00:37:28,640 だけど　私は…＞ 386 00:37:28,640 --> 00:37:32,080 大城さん　水よ。 387 00:37:32,080 --> 00:37:41,290 ♬～ 388 00:37:41,290 --> 00:37:46,090 天皇陛下　万歳。 389 00:37:46,090 --> 00:37:57,840 ♬～ 390 00:37:57,840 --> 00:38:05,910 「大城さんは　腸が飛び出したまま息絶えました。➡ 391 00:38:05,910 --> 00:38:12,690 それから一晩中　泣く時間もないまま応急処置を施しました。➡ 392 00:38:12,690 --> 00:38:19,930 そこで　沢山の友だちと別れてしまい…。➡ 393 00:38:19,930 --> 00:38:26,030 そんな壕にも　解散命令が出たのです」。 394 00:38:31,270 --> 00:38:33,970 いよいよ敵は　一キロ先まで来ている。➡ 395 00:38:33,970 --> 00:38:35,910 この壕から今すぐ出ていけ。 396 00:38:35,910 --> 00:38:39,450 この壕から出さないでください。行く場所がないんです。 397 00:38:39,450 --> 00:38:41,780 ここを最後の場所にさせてください。 398 00:38:41,780 --> 00:38:45,950 この壕に残れるのは傷を負った者と病人だけだ。➡ 399 00:38:45,950 --> 00:38:49,660 這ってでも歩ける者は　出ていくのだ。 400 00:39:07,370 --> 00:39:10,780 大城さん…。 401 00:39:33,470 --> 00:39:39,740 ＜どこに行けばいいかもわからずすぐ近くで起きる爆破。➡ 402 00:39:39,740 --> 00:39:43,380 食べ物も　飲み物もなく➡ 403 00:39:43,380 --> 00:39:49,820 仲間や上司と合流しては息絶えると置き去りにして。➡ 404 00:39:49,820 --> 00:39:55,560 ただただ歩き続けて。➡ 405 00:39:55,560 --> 00:40:05,230 気づいたら　足を四ヶ所やられていて精神的にも　とっくに限界…。➡ 406 00:40:05,230 --> 00:40:12,340 私は　持っていた手りゅう弾で自決しようと思いました＞ 407 00:40:16,480 --> 00:40:18,410 あっ…！ 408 00:40:18,410 --> 00:40:27,190 （荒い息） 409 00:40:27,190 --> 00:40:29,190 あっ…！ 410 00:40:29,190 --> 00:40:33,330 （爆音） 411 00:40:33,330 --> 00:40:40,030 ＜自決すらできませんでした。死ぬ覚悟は　できていたはずなのに…＞ 412 00:40:43,970 --> 00:40:50,440 （英語） 413 00:40:50,440 --> 00:40:57,320 ＜このまま捕虜にされて殺されてしまうと覚悟しましたが➡ 414 00:40:57,320 --> 00:41:03,320 このアメリカ兵に助けられて今も生きているんです＞ 415 00:41:38,320 --> 00:41:53,810 ♬～ 416 00:41:53,810 --> 00:42:01,910 「『へいわってすてきだね』小学１年、　安里有生➡ 417 00:42:01,910 --> 00:42:04,780 へいわってなにかな。➡ 418 00:42:04,780 --> 00:42:07,790 ぼくは、　かんがえたよ。➡ 419 00:42:07,790 --> 00:42:09,960 おともだちとなかよし。➡ 420 00:42:09,960 --> 00:42:12,390 かぞくが、　げんき。➡ 421 00:42:12,390 --> 00:42:14,330 えがおであそぶ。➡ 422 00:42:14,330 --> 00:42:16,830 ねこがわらう。➡ 423 00:42:16,830 --> 00:42:19,070 おなかがいっぱい。➡ 424 00:42:19,070 --> 00:42:24,040 やぎがのんびりあるいている。➡ 425 00:42:24,040 --> 00:42:29,480 けんかしてもすぐなかなおり。➡ 426 00:42:29,480 --> 00:42:32,380 ちょうめいそうがたくさんはえ、➡ 427 00:42:32,380 --> 00:42:38,020 よなぐにうまが、　ヒヒーンとなく。➡ 428 00:42:38,020 --> 00:42:41,520 みなとには、　フェリーがとまっていて、➡ 429 00:42:41,520 --> 00:42:46,330 うみには、　かめやかじきがおよいでる。➡ 430 00:42:46,330 --> 00:42:50,730 やさしいこころがにじになる。➡ 431 00:42:50,730 --> 00:42:55,570 へいわっていいね。へいわってうれしいね。➡ 432 00:42:55,570 --> 00:43:02,340 みんなのこころから、へいわがうまれるんだね。➡ 433 00:43:02,340 --> 00:43:05,980 せんそうは、　おそろしい。➡ 434 00:43:05,980 --> 00:43:13,620 『ドドーン、　ドカーン。』ばくだんがおちてくるこわいおと。➡ 435 00:43:13,620 --> 00:43:19,190 おなかがすいて、　くるしむこども。➡ 436 00:43:19,190 --> 00:43:23,760 かぞくがしんでしまってなくひとたち。➡ 437 00:43:23,760 --> 00:43:31,940 ああ、　ぼくは、　へいわなときにうまれてよかったよ。➡ 438 00:43:31,940 --> 00:43:35,610 このへいわが、ずっとつづいてほしい。➡ 439 00:43:35,610 --> 00:43:40,810 みんなのえがおが、ずっとつづいてほしい。➡ 440 00:43:40,810 --> 00:43:45,080 へいわなかぞく、へいわながっこう、➡ 441 00:43:45,080 --> 00:43:51,190 へいわなよなぐにじま、へいわなおきなわ、➡ 442 00:43:51,190 --> 00:43:57,330 へいわなせかい、へいわってすてきだね。➡ 443 00:43:57,330 --> 00:44:01,930 これからも、ずっとへいわがつづくように➡ 444 00:44:01,930 --> 00:44:09,140 ぼくも、　ぼくのできることからがんばるよ」。 445 00:44:09,140 --> 00:44:17,350 ♬～ 446 00:44:26,660 --> 00:44:31,960 私　いつか　この街を舞台にした　アニメを作りたいんだ。 447 00:44:36,100 --> 00:44:38,740 お父さん➡ 448 00:44:38,740 --> 00:44:43,410 来年は　おっきい花火上げてよね。 449 00:44:43,410 --> 00:44:45,810 おう。 450 00:44:45,810 --> 00:44:50,220 （花火の音） 451 00:44:50,220 --> 00:44:54,790 （花火の音） 452 00:44:54,790 --> 00:44:56,990 （花火の音） 44994