Afrikaans
Akan
Albanian
Amharic
Arabic
Armenian
Azerbaijani
Basque
Belarusian
Bemba
Bengali
Bihari
Bosnian
Breton
Bulgarian
Cambodian
Catalan
Cebuano
Cherokee
Chichewa
Chinese (Simplified)
Corsican
Croatian
Czech
Danish
Dutch
Esperanto
Estonian
Ewe
Faroese
Filipino
Finnish
French
Frisian
Ga
Galician
Georgian
German
Greek
Guarani
Gujarati
Haitian Creole
Hausa
Hawaiian
Hebrew
Hindi
Hmong
Hungarian
Icelandic
Igbo
Interlingua
Irish
Italian
Javanese
Kannada
Kazakh
Kinyarwanda
Kirundi
Kongo
Krio (Sierra Leone)
Kurdish
Kurdish (Soranî)
Kyrgyz
Laothian
Latin
Latvian
Lingala
Lithuanian
Lozi
Luganda
Luo
Luxembourgish
Macedonian
Malagasy
Malay
Malayalam
Maltese
Maori
Marathi
Mauritian Creole
Moldavian
Mongolian
Myanmar (Burmese)
Montenegrin
Nepali
Nigerian Pidgin
Northern Sotho
Norwegian
Norwegian (Nynorsk)
Occitan
Oriya
Oromo
Pashto
Persian
Polish
Portuguese (Portugal)
Punjabi
Quechua
Romanian
Romansh
Runyakitara
Russian
Samoan
Scots Gaelic
Serbian
Serbo-Croatian
Sesotho
Setswana
Seychellois Creole
Shona
Sindhi
Sinhalese
Slovak
Slovenian
Somali
Spanish (Latin American)
Sundanese
Swahili
Swedish
Tajik
Tamil
Tatar
Telugu
Thai
Tigrinya
Tonga
Tshiluba
Tumbuka
Turkish
Turkmen
Twi
Uighur
Ukrainian
Urdu
Uzbek
Welsh
Wolof
Xhosa
Yiddish
Yoruba
Zulu
(秒針の音)
(マッチを擦る音)
(夢二(ゆめじ)が息を吹く音)
(夢二)僕は… 死んだ
♪~
~♪
(セミの鳴き声)
(風鈴の音)
(赤ん坊の泣き声)
(たまき)おいで… よいしょ はい… よいしょ
はいはいはい…
(乳を飲む音)
(乳を飲む音)
はい
(乳を飲む音)
(夢二)まあちゃん
散歩でも行こか
おなかがすいて それどころじゃありませんよ
(木箱の蓋を開ける音)
(豆腐屋のラッパの音)
(夢二)夕飯までには 帰るわ
(たまき) ちゃんと描いてくださいよ
(波の音)
死ぬんは…
い… 嫌や
(カモメの鳴き声)
(夢二)ああっ…
(女性)あっ あ あ…
(夢二)僕にとって…
筆を動かすんは―
息をするんと同じなんや
そやのに今…
苦しいて しゃあない
死にそうや
いや…
もう死んでるんかもしれん
(女性)良いものを 見せて差し上げますわ
マツヨイグサ
すてきな眺めでしょう
僕は 毎日スケッチしに来ますよ
あしたも あさっても
あなたは それを 監視しに来てください
おしまさん
(女性)おしま?
私(わたくし)の名前は… (夢二)いや…
君は僕にとって おしまさんなんや
(おしま)まあ… フッ フフフ…
ご自由に
フフ…
(おしま)いいお天気
(夢二)ああ… そやな
(おしま)あっ あの島
先生 (夢二)ん?
(おしま)私 去年 あそこに遊びに行ったんですのよ
(夢二)そうか
(おしま) 今度 先生も一緒に どうかしら?
どうかされたんですか?
はっ…
きゃっ… フフフ…
フフッ…
気持ちいいですわよ 絵描き先生
アハッ…
フフフ フフ…
フフフ… アハハ… ウフ…
(たまき) あした モデルをしましょうか?
(おしまの笑い声)
(たまき)私では もうダメだと?
もう描けないと おっしゃりたいのですね
“お前というモデルが そばにいなけりゃ 俺は いけない”
そう言ったのは どこの誰かしらね!?
(赤ん坊の泣き声)
(茶わんと箸を置く音)
(たまき)はっきり おっしゃったら どうですか?
(戸が開く音)
(戸が閉まる音)
(たまき)私は…
人形では いられないのです
生きねばならないのです
(戸が開く音)
(夢二の父)おるんかいのう?
(戸が閉まる音)
はい どちら様?
はい どちら様?
(たまき)お義父(とう)様…
(夢二の父) あんたも てえへんじゃなあ
絵描きなんぞになりおって
あのバカが
着るものを売って 飢えをしのいでおりますが―
もう 売るものも底を尽きて…
お義父様 あの…
わしも あんなに 金 貸しとったんじゃ
(たまき)えっ?
何じゃ 何も聞いてなかったんか?
寝耳に水でございます
私の着物が 1枚ずつ なくなって―
パンになるのを 泣く泣く見送っていたのに
憎らしい
どうじゃろうか
虹之助(こうのすけ)をしばらく うちに来させんかね?
うちは商家じゃ 食うものには困らんしな
それに このままじゃったら あんたの体が もたんじゃろう
せえでも 一度 離縁したものを―
何で また懲りずに 戻ってくるんかのう?
これで どうやって 食ってきゃいいのさ!
一体 誰のおかげで―
有名な先生様に なれたというんだえ?
私がモデルを してやったおかげで―
夢二の世界が 出来上がったんじゃないのかえ?
みんな そうおっしゃるよ
とにかく売れる絵を 描いてちょうだい!
どんなでもいいからさ!
(夢二)うっ (たまき)ひゃっ…
(ほおをたたく音)
(夢二)どんなでもええやと!?
何が 先生様じゃ
(電気のかさをたたく音)
(夢二)しょせん くだらん大衆人気やないか!
こっちはな 画家のプライドなんか 全部 捨てて―
小銭になる絵描き 続けとんじゃ!
(たまき)私のような者より―
もっと芸術とやらを 分かってくれる―
細君をもらったほうが いいんじゃないの?
子どもまで奪われて…
(たまきの泣き声)
(たまき) 虹之助に会いたい… うっ…
(たまきの泣き声)
(描く音)
(恩地(おんち))アハハ… もはや 君も立派な流行作家だな
(夢二)いやあ… 恩地君が彫る版がええからや
(恩地)いやいやいや…
それで 今は 何をやろうとしてんだい?
(夢二)ああ…
洋行したいと思ってる
洋行? (夢二)うん
(恩地)ハハ… 君の師匠の藤島(ふじしま)先生でさえ―
ヨーロッパで腕を上げても 美術学校の講師の仕事をしてる
君は もう 大衆人気で 十分 飯が食えるだろう
(夢二のため息)
(夢二)僕には僕の考えがあるんや
(夢二の食べる音)
(友人) 岡田(おかだ) 三郎之助(さぶろうのすけ)先生にも―
君は君の天分を生かせと 言われたんだろ
我が道を行けと
洋行などして 今更 アカデミズムの連中の尻を追うのか
(夢二)いや…
そういうわけやなくて…
(夢二:小声)離れたい
(さお竹屋の物売り声)
(たまき)はあ…
しばらくの間 時間と空間を隔てて 向き合(お)うたほうがええ
とはいえ ほったらかしには できんだろ
また子どもができたんじゃ
君の言う 大衆人気で商売するんや
(恩地)商売?
(彦乃(ひこの)の鼻歌)
(彦乃と たまきの鼻歌)
「カチューシャの唄」ね
一緒に来た上の学生さん 恋人?
(彦乃)あ…
いえ…
フフ… いいのよ
ねえ…
気が向いたら たまに 店番に来てくださらない?
(女性客)すみません
これは 最近の絵柄ですか?
そうですよ 最近 夢二が描いた絵柄です
(夢二)師弟の関係は断るわ
(男子学生のため息)
(夢二)あ でも―
友人として 絵見るぐらいやったら してもええで
君の絵は 面白いんちゃうかな?
ま いつでも おいで
(足音)
(戸が開く音)
(たまき)パパさん もう 売り切れてしまいそうですよ
どんどん描いてくださいね どんどん売りますから
ねえ パパさん 聞いてますか?
(たまき)ちょっと
一体 誰の店だと思ってるの?
フッ… 君の店や
いつも きれいな まあちゃんでいてや
(階段を下りる音)
(階段を下りる音)
あ… 先生!
(階段を下りる音)
(女性客)あ… 先生
(女性客)あっ 夢二先生だ
(女性客)あの… 夢二先生
(女性客)夢二先生 あらま どうしましょ
(足音)
あの… (夢二)悪いけど―
1人にしてもらえるか?
(彦乃)すみません 勝手に足が向いてしまって
面白いこと言うな
さっき 店に おったな?
(彦乃)笠井(かさい)彦乃と申します
絵を… 私の絵を 見てもらいたいのです
(夢二)フッ
僕なんかに見てもろて どないするんや?
ああ…
“夢二に見てもろた”とかて言うて 自慢すんのやろ?
くだらん
(彦乃)夢二が“僕なんか”などと おっしゃらないでください!
へっ?
フッ… おぼこいな
(たまき) どうもありがとうございます
(女性客)うれしいわ お世話さま
(たまき)お気を付けて
(不二彦(ふじひこ))母ちゃん 母ちゃん
(たまき)あら チコちゃん ちょっと早いんじゃない?
(ばあや)すみません 奥さん
チコちゃん おなかが痛いって 泣いてばかりでして
少し お顔だけでもと
(たまき) もう 甘えん坊で困ったもんね
母ちゃんは お仕事中よ
なあに それ?
(ばあや)ご近所の方が たくさん 生まれたからと 坊ちゃんに
あ そう…
まあ お二階に上がって 待っていてちょうだいな
チコちゃんの面倒 お願い
はい
君に会いに来たわけじゃない
すいません
悪いわね
絵を 見てもらいたいんでしょうけど…
今日も あの人 帰らないの
売るものがなくてね
描いてくれないものだから
先生の模写ばかり 練習しておりまして
ねえ…
夢二の代わりをしてちょうだいな
(たまき)アトリエに行きましょう
(階段を上がる音)
(夢二)はい
(不二彦)ありがとう パパさん
(夢二)まあちゃんは?
(ばあや)あの…
また お出かけで
(夢二)ふーん
え… またって? どこ行ったんや?
(ばあや)ご近所の皆さんが うわさして 困っております
(夢二)うわさ?
(ばあや)竹久(たけひさ)の奥さんは 旦那様の留守に その…
若い男とチャラチャラ歩いていたと
誰や? そいつ
(ばあや)存じません
(足音)
(夢二)ああ… 君か
絵 持ってきたんか?
(男子学生)あ… いえ
たまたま 近くに参りましたので 寄ってみただけです
ハハ… こんな はように
ええ
お邪魔でしょうから いずれ 失礼します
(たまき)あら いらしてたの?
(夢二)ああ
おかしなヤツやな あれは
(たまき)そう?
その白菊だって 買ってきてくださったのよ
若いのに気が利く人
才能もあるし
もしかして 彼は よう来るんか?
(不二彦)お兄ちゃん? 来るよ
お兄ちゃんと母ちゃんね パパさんがいないときに寝たよ
坊ちゃん そんなこと 言うもんではありません
(夢二)そうか…
兄ちゃんか
(夢二の うなされる声)
ああっ… ハァ ハァ…
(女のいびき)
(蹴る音)
ああっ! (女)きゃっ
ああっ! (女)きゃっ
いった…
ああ…
(夢二)“お前が 不義を働いた夢を見た”
“相手は分かってるやろ”
“いや 全く身に覚えがなく 後ろ暗いことがなければ―”
“この電報を受け取りしだい すぐに 宿まで来い”
何にもありゃしませんよ バカなことを
夢で見たことなんかで
あ…
何ですよ この人は…
ん… あっ…
ああ…
(たまき)あ…
(たまきのあえぎ声)
そうよ…
あなたと私は 離れては いられないのに
(夢二)僕は この女に もう一度 産んでもらいたいんか?
この女に…
こんなに良くしてくれれば…
何も 他でしないのに
他で?
あいつのことか?
(たまき)何するの!
思い知らせたる!
(たまき)嫌です! (夢二)やかましいわ!
とにかく ついてこい
(足音)
(夢二)うっ… (たまき)ひゃっ…
一体 どうしたいのです!
こんなとこで心中しても チコが悲しむだけです
(夢二)心中やと!? 俺は死なんわ!
(たまき)何て人!
(夢二)あいつなんかと…
(たまき)しちゃいません!
(夢二)あんな若造と!
(たまき)しちゃいないんです!
気が狂ってしまったの?
(夢二)くそみたいな弟子と! (たまき)きゃっ…
(夢二)コケにしやがって!
謝れ!
土下座せえ!
今すぐ ここで土下座せえ!
(たまき)人でなし
身勝手な あんたのほうが よほど くだらないわ!
(夢二)何やと!?
うわあっ! (たまき)きゃーっ!
(刃物が落ちた音)
(たまき)悔しい…
あんたが私の骨まで しゃぶり尽くして―
捨てたようなもんじゃないのかえ?
あんたのせいで 空っぽになった!
(夢二)うっ…
(たまき)返して 私の… (夢二)あっ…
(たまき)あ~! (夢二)分かった
(たまき)ああ あ~… (夢二)やめ…
(たまき)ああ~!
あ~ あああ…
(夢二)分かった やめや!
うっ…
離せ!
はよ…
(たまき)ああっ!
(夢二)もう分かったから! (たまき)ああっ…
(夢二)やめ
(たまき)んっ…
(夢二)うっ あ… (たまき)ううっ…
(夢二)もう分かったから
やめ… 離せ
もうええ もうええ!
もうええ言うてるやろ!
分かったわ
(たまき)ああ~!
ううっ…
きゃっ…
(夢二)ああっ…
やめ… もう分かったから
分かった言うてるやろ
君と僕との交渉は―
もう一切 何もなくなった
ただ…
たまきの夫としてのみ 君に意味がある
これまで君が たまきに抱いていた好意は―
今の たまきには 必要なくなったんや
(男子学生)そういう あなたは! (夢二)お互いに これからは…
互いの人生を 創造していかなあかん
(不二彦)母ちゃん はい
(戸が開く音)
(戸が閉まる音)
私となんか別れてよ
(夢二)あ?
(たまき)子どもなんてもの どこへでも やっちゃえるんだから
お前…
何やと!?
(不二彦) 母ちゃんをぶっちゃダメ!
はい これ 母ちゃんとパパさんの
だからね パパさん 母ちゃんをぶっちゃダメ
(不二彦の泣き声)
(たまき)パパさん さようなら
(時報)
(たまき) 私は疲れ果ててしまいました
チコさんをお願いしますよ
(彦乃)先生
(夢二)どないしてたんや
(彦乃)ずっと描いていました
これは…
フッ… 無条件に すばらしいわ
(彦乃)よかった
私 美術学校 卒業しましたら―
いつか 先生のような 画家になりたいのです
(夢二)ハッ…
画家なんて やめてくれ
僕は ただ 生きるために絵を描いてる
ほんまは詩人になりたかったんや
でも 詩やと パンは買えん
そやから 詩を書くように絵を描く
(彦乃)絵を描くことは お好きではないのですか?
(夢二)フッ… まさか
好きや
どの道より僕に 適してる
(彦乃)そうですわよね
そうでなくては あんなに 美しいものを描けるはずがないわ
あのような絵を描けるなんて 幸せですもの
(夢二)ハハッ…
幸せか…
そやな 幸せや
(彦乃)よかった
(夢二)ハハッ…
救われた気分や
えっ?
(夢二)いや…
(夢二)あ これ
(ばあや)まあ
坊ちゃん 喜びますわ
今日は 何かあったか?
(ばあや)えっ? あ… 別段
静かやな~
(戸が開く音)
(夢二)んっ
よしてください
食べや (彦乃)邪魔しないでください
(夢二)何やねん!
私は必死なのです
先生には才能が おありになるから 分からないのです!
(夢二)ああ 分かれへんわ
必死で筆振る姿なんか 見たないんや!
ひどい…
ん んっ… 放して
(夢二)あっ…
(彦乃)えっ?
(夢二)ほくろ…
(彦乃)ほくろ?
(夢二)うん
ほくろが…
(彦乃)フッ…
フッ フッ… フフフ…
すまん
僕は…
どうしょうもない…
欠陥人間や
(落ちた音)
(彦乃)恥ずかしい…
(彦乃)んっ… 先生… い… 痛い
ん… んっ… んっ…
(夢二)何て愛しいんや
(彦乃)先生は私を 受け入れてくださったのね
うれしい
いや…
喜びが深いんは…
むしろ 僕のほうかもしらん
(雨の音)
(彦乃)きゃーっ!
どないしたんや!?
どないしたん?
わっ…
(夢二)何してんねん
(たまき) 子どもができましたよ パパさん
ん… 何のことや?
(たまき) 3人目の子どもですよ 私たちの
あなたの子を 授かることができるのは―
私だけなのですから
ちょいと 店を見てまいりますね
この子のためにも稼がなきゃ
他の女を愛することは 許しませんから
(彦乃)生まれてくる赤ん坊に―
罪は ないですものね
でも…
これだけは教えて
私と そうなってから…
(たまきのあえぎ声)
そんな悲しいこと言わんといてくれ
俺の床は清いままやった
全ては お前のために あったんや
ごめんなさい
私ったら…
(戸が開く音)
(たまき)彦乃ちゃん
あなたも ずるいお人だこと
(夢二)これは…
父が決めた いいなずけです
父が勝手に
そのような方を愛することは 私には できないのです
許して
何を許すと言うのですか
あなたは すっかり汚れているの
そうよね?
フフッ… 早く お帰りになって―
お父様に ご安心を お与えになったほうが―
よろしいのではないかしら?
(たまきの笑い声)
(彦乃のあえぎ声)
(ベッドがきしむ音)
(彦乃のあえぎ声)
(彦乃)私の体は 先生しか知らないのです
これからも…
先生…
(彦乃のあえぎ声)
(彦乃)私は 家に戻らなければ ならないのですね
そして… あなたも
何も悪いことなどしていないのに 逃げ隠れして…
これから君は…
僕の“しの”や
しの?
そや
君のこと…
しのって呼ぶから
(たまき)しの…
(たまき)やはり 一緒にいなくては ダメなんですよ
夢二を作ったのは 私なんですし
かわいい子どもが もう1人 生まれるんですから
(たまき)ほら パパさん
草一(そういち)のお鼻ったら パパさんのお鼻に そっくり フフ…
やっぱり あなたの子ね~
(夢二)こんなとこ来んと 店の切り盛りしてこいや
(たまき)私だって いつでも 再婚できますからね
言い寄る男は いくらでもいるんだから
(夢二)そうか
僕らは とうに離縁してんねや 好きにせえや
(たまき)手切れ金は たんまり もらいますからね
(夢二)ああ
私には あなたしか いないのは 分かってるでしょう?
ね そうだ
しのさんを あなたのお嫁さんに もらいましょうよ
あなたの芸術のためには あのような人が必要なんですよ
ねっ?
それで みんなで 暮らしましょう 一緒に
ねえ そうしましょうよ
(笑い声)
(夢二)チコ
草一のこと 頼んだで
パパさんな 今から 展覧会で 京都(きょうと)行かな あかんねん
あとで ばあやと おいで
(戸の開閉音)
(彦乃の父)いやあ…
竹久先生には―
娘をお弟子にしていただき―
お世話になりました
いいえ こちらこそ お世話になっておりますの
は?
はっきり申し上げます
しのさんを うちの主人の お嫁さんに下さい
(たまきの声)しの?
娘さん 彦乃さんです
うちの主人のお嫁さんに下さい
(たまきの声)あんた…
何を言ってらっしゃる
自分が言っておること 分かっておるのかね!?
ええ もちろん
あんた 奥さんだろ
ええ 内縁ですけどね
子も3人
一体 どういう了見だ
うちの人には しのさん…
彦乃さんが必要なんですよ
絵を描くためにも
この… 気でも狂ったのか!?
(赤ん坊の泣き声)
とにかく!
金輪際 絶縁願う!
(時報)
(赤ん坊の泣き声)
(女性)たまきさん?
たまきさ~ん?
(赤ん坊の泣き声)
(女性)ああっ…
まあ 何て ひどいことを!
(足音)
(不二彦の泣き声)
我慢していたのだろう 今 初めて泣いたぞ
(夢二)すまんかったな 恩地君
でも 何で子どもだけで おったんや
たまきさんが いとまを出したんだそうだ
(夢二)あいつ…
ばあさんに知らせは出しておいた 驚いて飛んでくるだろうな
チコ
もう大丈夫や
(不二彦)母ちゃん 僕を縛って いなくなったの
どこ行ったの? うう…
チコ
母ちゃんな…
もう帰れへんわ
(不二彦)どうして?
(不二彦の泣き声)
(ウグイスの鳴き声)
(夢二)会いたかった
(彦乃) チコさん どうしています?
(夢二)元気や
よう来れたな
(彦乃) 女学校の先輩がいる下宿先で―
絵の勉強をするからと
(夢二)よかった
ほんま よかった
(夢二)おい
しの!?
おい
どこ おんねん! なあ!?
(戸が開く音)
(戸が開く音)
しの…
(戸が開く音)
(転んだ音) (夢二)痛っ
(彦乃)おはようございます
チコさんと お散歩に 行ってまいりました フフッ
どうされました?
(夢二)何でや
何で 君は笑うてられんねん?
(彦乃)え?
(夢二)不安で たまらん
どうしようもなく さみしなるんや
(彦乃)バカね
何が さみしいもんですか
こうして一緒に 暮らせるようになったのよ
私は これ以上 もう 何も いらないわ
笑っていちゃダメ?
私は…
あなたのそばで笑っていたいの
(彦乃)折って 折って もう1回 開いて…
そしたら 反対は 尻尾だから そのままです
さあ あとは開くだけ
開いてみてください
(彦乃)すみません
(夢二)大丈夫か?
(彦乃のせきこみ)
(夢二)京都の冬が 少し こたえたんやろ
すぐ治るわ
(彦乃のせきこみ)
(戸が開く音)
(彦乃の父)ここが 下宿屋か!
(ばあや)大変です! 旦那様
(足音)
(彦乃)お父様
(彦乃の父)ここは下宿屋だろ
下宿してる娘を連れに来た
(夢二)娘さんは 冬の寒さで 少し 体調を崩してるんです
(彦乃の父)触るな!
ああ…
彦乃
ああ… こんなに やつれて…
どうして こんなことに
(彦乃)いえ…
幸せですよ
こんな所で無理をしてるから 病気など なるんだ
返してもらいます さあ 東京に帰ろう な?
(夢二)ちょっと待ってください
話し合いましょう (彦乃の父)話など ない!
(彦乃) お父様 先生のおかげで 私…
(彦乃の父)せっ… せ… こっ…
こんな ろくでなしが先生だと!?
あ… そうそう 世話になりましたな
娘の下宿代や食費…
支払っときます これで足りますか
さあ 行こう
ち… ちょっと待ってください
全て ご存じなんでしょう?
(彦乃の父) そんなことは どうでもいい!
下宿代が嫌なら…
援助で どうだ あ?
金が いるんだろ こんな暮らしして え?
金なんか いりません!
(彦乃の父)何?
(夢二)金やないんです! (彦乃の父)何?
(夢二) 金なんか いらん 心なんです
愛なんです
愛こそが…
全てなんです
(彦乃の父)もう…
許してくだされ
私の大事な娘なんです
これからの娘なんです
もう これ以上 つらい目に遭わせたくない
親に うそをついてまでして 家を出て…
このザマだ
(夢二)私にとっても…
大切な人なんです (彦乃の父)いや~ もう!
どうか…
どうか…
返してくだされ
この… 後生だ
(不二彦の泣き声)
(夢二のため息)
(ばあや)あのう…
(夢二)どうした?
しの様から 私宛に お手紙を頂戴いたしました
(彦乃)“いろいろ ありがとう”
“やっと東京へ着きました”
“家へ帰ったとは 言いたくございません”
“どうぞ パパさんを お願いいたします”
“パパさんが さみしがらないように―”
“お願いいたします”
“力をつけてあげてくださいまし”
“パパさんを頼みます”
“チコさんにも会いたいけれど…”
“言いたいことばっかり”
“さようなら しの”
(すすり泣き)
(セミの鳴き声)
(夢二のため息)
(夢二のため息)
(彦乃)フフッ… フ…
しの!?
夢ちゃうんか?
ハハ… 夢ちゃうんか!
(夢二)届いたで
僕の詩に 多(おおの) 忠亮(ただすけ)っちゅう人が 曲つけてくれたんや
読めるか?
(彦乃)でも… ほら…
(彦乃)でも… ほら…
(バイオリンの演奏)
(バイオリンの演奏)
(バイオリンの演奏)
(夢二)ん?
(バイオリンの演奏)
僕は これから長崎(ながさき)や
そのあと 島原(しまばら)から別府(べっぷ)に行くから―
療養がてら そこで会おう
ええ
(彦乃)♪宵待草(よいまちぐさ)の
♪やるせなさ
♪今宵(こよい)は月も
♪出ぬそうな…
(彦乃)ほんと いい歌ね
(夢二)フッ うん
(彦乃)ごめんなさい
(夢二)何がや?
(彦乃)こんな体じゃ…
何のお役にも立てないわね
(夢二)そんなこと言わんでええ
僕のそばで…
笑うとってくれたら それでええから
(彦乃)先生のそばで 死にたい
(夢二)死ぬって…
二度と そんなこと 言わんといてくれ
(彦乃)あなたといられて…
幸せ…
(彦乃のせきこみ)
先生…
(彦乃のせきこみ)
(夢二)大丈夫や
お仕事は?
心配せんでええ
大丈夫や
先生…
(夢二)ん?
どうぞ…
心おきなく ご自分のお仕事に 専念してください
(夢二)うん
お前と連れ添ってから…
俺は…
お前の若い夢…
全部 食べてしもたな
涙も…
飲み干してしもた
ほんまに すまん
愚かな俺を…
許してくれ
(夢二のすすり泣き)
(彦乃の父)貴様!
貴様とは… (夢二)いや…
ちょっと待ってください (彦乃の父)絶縁したはずだ!
(夢二) もうちょっとだけ 一緒に…
もうちょっとだけ (彦乃の父)出ていけ!
(夢二)しの… もうちょっとだけ お願いです
もうちょっとだけ そばに おらせてください
(彦乃の父)出ていけー! (夢二)お願いします!
しの… しの!
しの!
(彦乃の父)うう… (夢二)お願いします!
しの!
ああ…
ああ…
(倒れた音)
(倒れた音)
お願いです もうちょっとだけ そばに おらせてください
お願い… 離せって
お願い… 離せって
(彦乃)先生…
(彦乃)先生…
(彦乃)先生…
離せ… 離せって… ああ… (彦乃の父)ううっ…
離せ… 離せって… ああ… (彦乃の父)ううっ…
(夢二) 離せ 離せ 離せ… 離せって…
(彦乃の父)でりゃっ (夢二)うっ…
あの子は 俺に会いたがってんねん
どけ!
(彦乃の父)うう~ (夢二)しの! しの!
(彦乃の父)二度と 来るな!
(階段から落ちた音)
(階段から落ちた音)
(夢二)うっ うう…
この悪魔が
(夢二の荒い息)
何でや!
(夢二)うわあっ うわあっ…
うわあ~ うわあっ うわあっ…
うっ うわあ~
うわあ~ ううっ…
うわあ~っ
うわあ~っ!
ちく…
(すすり泣き)
うわあ~っ!
(彦乃)先生
(マッチを擦る音)
しの…
(彦乃)私を描いてちょうだい
ありがとう 先生
しの…
しの!
(女性) フフッ… くすぐったいですわ
もう どうされましたの?
(女性の荒い息)
(女性) い… 息をさせてくださいな
(描く音)
君は…
お葉(よう)や
(お葉)はい?
(描く音)
♪~
~♪
Can't find what you're looking for?
Get subtitles in any language from opensubtitles.com, and translate them here.