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時間が経てば 傷は 全くわからなくなるからね。
心配しないで。
言っとくけど 誰がやっても→
傷が わからなくなるわけじゃなく→
そこは医者の腕ね。
つまり あなたは運がいい。
あなたは よかったのに。
課長に押しつけて→
知らん顔というわけには いきませんよ。
お大事に。
ありがとうございました。
ご迷惑おかけしました。 大丈夫ですから もう…。
何針 縫いました?
あとで数えて お知らせしまーす。
ハハハハハ…。
なんなら 診断書 取っといたほうがいいですよ。
よしなさい つまらない挑発は。
おはようございまーす。
どうした? それ。
突き落とされました。
何っ!?
はいはい はいはい。 ほら 入れ 入れ。
やめてくださいよ 面白半分に。 面白半分の どこが悪い?
俺らの原動力は野次馬根性だ。 いいから座れ。
はあ…。
詳しく教えろ。
甲斐峯秋だな。
これは 衣笠藤治。
内村完爾と…。
中園照生だ。
社美彌子。
青木年男。
怪我を負ったのは 風間楓子さんでしょうかねぇ。
このおでこは間違いないですね。
しかし 警察の6人を容疑者扱いとは→
なかなか気合の入った記事だな。
ですね。 ええ。
先月の27日の午後9時過ぎ→
6人と邂逅したわけですね。
邂逅って漢字で書けます?
そうです。 ルシアナホテルで 偶然会ったんです。
スマホに助けてもらって どうするんですか。
6人が立ち話してたんですね?
珍しい取り合わせですね。 ええ とても。
どうして君は そんな時間 ルシアナホテルに?
そこで ばったりとね。 ああ そうですか。
偶然ですね。
どうも。 『週刊フォトス』の風間です。
ああ… どうも。
『フォトス』って あのお騒がせの? 写真週刊誌ですよ。
知ってるよ。
時に我々に喧嘩を売るような 記事も載ったりしてて→
大変面白く読ませて頂いてます。
恐縮です。
それじゃあ…。
上京してきた母と食事をして→
そのまま 部屋まで送って その帰りですね。
転落した時の事 聞きたいんじゃないんですか?
うん 続けて。
誰かに押されたんです。
えっ? それ 確かなの?
そうじゃなきゃ 落ちたりしませんよ。
それで あなたは警察を呼んだ。
突き落とされて 怪我をしたとなれば→
傷害事件ですからねぇ。
警察呼んだのは 私じゃありません。
はい?
大丈夫? 見せて。
はあ…。
すいません 救急車を。
さあ これで…。
私だ。 怪我人が出たんだ。
救急車を頼むよ。 大丈夫です。
ルシアナホテルの1階だ。 大丈夫ですから!
はあ… あっ…。
それより…。
誰ですか? 背中 押したの。
背中を押した?
君の背中を我々の誰かが→
押したとでも言うのか? ええ。
突き落とされたとでも 言うのかい?
わざとかどうかは わかりません。
けど 押されて落ちた事は 間違いありません。
本当だとしたら 穏やかじゃないね。
そんな事 誰が 一体 なんのためにするんですか?
勘違いじゃないのかね? 勘違いのしようがない。
ならば 警察呼びましょう。 何?
お巡りさんに その旨 話せばいい。
必要ならば 被害届でも出しなさい。
よしたまえよ 馬鹿馬鹿しい。
ちゃんと白黒つけなきゃ ある事ない事 書きますよ。
うっとうしいじゃありませんか。
課長も それで 散々だったでしょ?
あっ もしもし。
エスカレーターから 女性が転落して→
怪我をしたんですけどね…。
青木の奴が…。
記事によると 駆けつけた警察官に→
あなたは まるで 相手にされなかったとありますが。
警察関係者6人が相手じゃ 歯が立ちませんよ。
この人の前でなんか お巡りさん 直立不動でしたもん。
あのね 上でね 我々 立ち話をしてたんです。
そしたら 彼女が突然ね 落ちてったんですよ。
申し訳ありません。
この写真 君が撮ったの?
お巡りさんと話してるところを サクッとスマホで。
おでこ 血まみれだったでしょ? 見上げた記者魂。
結局 被害届は出さなかったんですね。
出したって無駄でしょ。
でも 泣き寝入りは嫌だったから こうして記事にした。
編集長が どうしてもって言うから。
でも 君だって その気はあったわけでしょ?
じゃなきゃ サクッと 写真なんか撮らない。
そんな事より 誰が犯人か 突き止めてくださるんですか?
それとも 単なる暇つぶしで 話を聞きに?
ひとつお聞きしますが→
当日 あなたは どんなアウターを お召しでしたか?
雨降りで寒かったですからね 厚手のコートでした。
モコモコのデブコート。
なるほど。
ちょっと すいません。
おはよう。
このでこ あんたやろ?
「私のおでこ そんなに わかりやすいかな」
ひどい目に遭うたなあ。 あの晩やろ?
うん。
「なんで言うてくれへんの?」
「すぐ近くにおったのに…」
余計な心配 させたなかったからよ。
もう 水くさいなあ。
ねえ ごめん。 今ちょっと 取り込み中やから また電話する。
「あの… あっ あの… 楓…」
お母さん? …ええ。
君 関西の子?
大阪です。
やっぱり お嬢でしたか。
そやな。
いや 相手にしなかったなんて事は…。
じゃあ 親身になって 話を聞いてあげた?
あー… 親身だったかって 言われますと…。
フッ… 副総監以下 錚々たる顔触れの前だもんな。
無理だろうな。 ええ。
一介の巡査が あの面々に 疑いの目を向けるなんて→
どだい無理な相談です。
いきおい被害者に 冷たい態度になったとしても→
責められないと思います。
だが その動向が→
格好のニュースダネに なってるわけだからな。
増えてますか? 抗議。
ああ 着々とな。
取り合う事ないでしょう。
別に 被害届が出てるわけじゃないし。
傷害罪は親告罪じゃない。
まさか 本気で調べるつもりですか?
それなりに 格好をつける必要が出てきた。
えっ?
三上冨貴江女史から 問い合わせがあった。
三上冨貴江って あの国家公安委員の?
ああ。 全く知らん顔 というわけにはいかない。
開いてみろ。
6人全員が身元特定されるのも 時間の問題だな。
クソッ 特定厨め…。
お加減いかがです?
天下御免の向こう傷にならないか 怯えています。
全治2週間なんて聞くと 大怪我のように思えますが→
傷害罪という観点から 申し上げれば 軽傷。
仮に 起訴となっても→
略式起訴で罰金刑が相場 ってとこでしょうね。
ご教示ありがとうございます。
…で?
転落当時の状況を 改めてお聞きしようと思いまして。
聞いて頂けるんですか。 もちろん。
我々は 親身になって お聞きしますよ。
確か こうだったと…。
ありがとうございます。
うん うん うん…。
楽しそうですね。
僕ですか? それは言い掛かりですよ。
楽しいどころか これは 僕にとっては もっと切実で…。
とおっしゃると?
目の前に横たわっている謎を 解かないでいると→
体調が 優れなくなるものですからねぇ。
それにしても 珍しい6人の取り合わせですね。
どういう いきさつで?
甲斐さんと食事をした帰り…。
副総監と青木くんに ばったり。
衣笠くん。
これは これは。 お食事ですかな?
そればかりか 刑事部長と参事官にも…。
ディナー帰りの3組が→
偶然 出くわした というわけですか。
そう。
でも 正確には→
刑事部長と参事官は お茶してたそうだけど。
3組が偶然に会ったのは 間違いないわ。
あの 4人おそろいで これは一体…。
我々もね そこで ばったりと。
ああ そうですか。
そんな立ち話のさなか 風間楓子が現れた。
…ええ。
どうも。 『週刊フォトス』の風間です。
ああ… どうも。
当日は あいにくの雨でしたが 傘はお持ちでしたよね?
はい。
皆さん お持ちでしたかね?
さあ どうでしょう?
ああ でも 甲斐さんは お持ちじゃなかったと思います。
合同庁舎の駐車場から→
車で 直接 ホテルへいらしたようですから。
なるほど。 まあ だからといって 直ちに→
容疑者からは 除外出来ませんがねぇ。
えっ?
風間楓子転落時 この位置関係だと→
甲斐さんは 彼女を手で押せますから→
傘は必要ない。
あっ 逆に言うと→
甲斐さんと向かい合わせだった 内村部長の2人を除いては→
傘がないと風間楓子を押せない。
腕を伸ばして押すには 距離がありますし→
無理に押そうとするならば→
相当 身を乗り出す必要が ありますからねぇ。
中間位置にいる私は 傘を持っていましたから→
容疑者のままというわけですね。
あっ 便宜上 容疑者と 言っているだけですから→
気になさらずに。
ところで 突き落としましたか? 傘で。
はあ?
あなたが突き落とした という事であれば→
この件は ここでケリがつきます。
真面目に聞いてます? もちろん。
黙秘します。 結構。 当然の権利です。
仮にですよ 素手にしろ傘にしろ→
誰かが風間楓子を押したとしたら 他の5人全員とは言いませんが→
誰かが その瞬間を目撃しても おかしくありませんよね。
それなんですよ。
つまり たまたま 他の誰にも目撃されずに→
犯行を成し遂げたのか→
あるいは 犯行は目撃されていたけれど→
目撃者が 口をつぐんでいるのか…。
はたまた そもそも 犯行はなかったのだから→
目撃者などいるはずもなく とどのつまり→
誰かに押されたというのは 風間楓子の誤解だったのか。
現状 いろいろな可能性が 考えられるんです。
犯行はあったけれど 誰にも目撃出来なかった。
その可能性もあります。 はい?
風間さんが転落する直前→
赤ちゃんの大きな泣き声が 響いたんです。
みんな それに気を取られて…。
それは興味深い情報ですねぇ。
杉下さんの体調管理に→
何ほどかでも 役立てばいいんですけど。
つまり こうです。
6人の容疑者は それぞれ→
風間さんを押していないと 主張しているわけですが→
今 社さんのおっしゃったとおりと するならば→
相互監視という状況になかった という事になり→
犯行の目撃者が いない事をもって→
直ちに 犯行がなかったとは 言えなくなるわけですよ。
「ダークナイト・パパ」
特定厨とか言う輩の仕業らしいね。
彼らは 画像の中の わずかな手掛かりを元に→
対象の身元などを 突き止めていくようですねぇ。
その調査力は侮れませんし 根気と執念は驚嘆に値します。
で 何を聞きたいんだね?
君らの食いつきそうなネタだから→
早晩現れるだろうと 待ってはいたんだがね。
それじゃあ 単刀直入にお伺いします。
風間楓子 突き落としましたか?
んっ!?
ハハハハ… 答えは ノーだね。
僕には 彼女を突き落とす理由がない。
故意ではなくても→
何かの拍子に触れて 転落させたというような事は…?
過失かね。 ないね。 もし そうだったとしたら→
素直に その場で 非を認めて謝罪し→
それ相応の責任を取ってるよ。
それぐらいの良識は 持ってるつもりだがね。
失礼しました。
転落当時 あなたの向かいに→
刑事部長が いらっしゃったようですが→
部長が突き落とした というような事は…?
それがね ちょうど あの時 赤ん坊の泣き声がしてね…。
つまり 自分については→
突き落としたりしないと 断言出来るが→
他の連中については→
肯定も否定も出来ないというのが 正直なところだ。
あっ そういえば 衣笠くんは『週刊フォトス』を→
愉快に思っていない 口ぶりだったね。
いや しかし だからって→
そこの記者を 突き落としたりはしないだろう。
いや 彼の位置からでは 突き落とせないか。
副総監は 傘をお持ちじゃなかったですか?
傘?
なんとか ご協力を。
副総監が 応じてくださったとなれば→
他は拒否出来ませんから。
ならば行こうか。
えっ… えっ? どちらに?
取調室だよ。
君たちは 容疑者である この僕の 事情聴取がしたいんだろ?
行くよ。
勘弁してください…。
確かに ちょいちょい 警察を批判したり→
おちょくったりするような記事は 掲載されてましたけどね。
こういう手合いの雑誌は それが身上でしょう?
ゴシップ 体制批判。
いちいち怒ってても キリがないですしね。
とはいえ 気にしだせば 不愉快この上ないのも確かだぞ。
報道の自由を盾に 言いたい放題だからな。
でも その腹いせで 突き落としたんだとしたら→
あまりにも 子供じみてると思いますが。
腹いせとは限らん。 ん?
ここだけの話にしてくれよ。 ええ。
『フォトス』が→
警視庁幹部と暴力団組長との 癒着について→
探っているという情報があるんだ。
こんなご時世 そんなものが記事になったら→
相当の痛手だからな。 警察にも本人にも。
まさか 副総監が暴力団と…?
いや 違う。
「内村」…。
調書など適当に作れ。 くだらん!
も… 申し訳ありません。
でしたら 出来上がった調書に 署名だけでも頂ければ…。
署名は お前が代わりにしとけ。
いや それは… 勘弁してください…。
刑事部長ならば 腹いせじゃなく 警告って事ですか?
記事にしたら承知しないぞって。
まあ そんな感じになるかな。
でも 今は 警察と暴力団の仲は 冷え切ってるんじゃありません?
うん…。
暴対法に始まって→
ついには 全国的な暴排条例だからな。
「三ない主義」というのが 徹底されているようですねぇ。
警察の人間を事務所に入れない。
警察の人間には会わない。
警察の人間には情報を渡さない。
持ちつ持たれつだったのは 今は昔だよ。
両者が そういう関係にありながら なおも癒着ですか…。
法律を挟んで 組織対組織として 対立しているが それはそれ→
昔からの個人的な絆だとしたら 簡単には断ち切れんだろう?
しょせんは人間だからな。
確かに 刑事部長ならば→
余計なもの使わずに 突き落とせますけどね。
どうも! さあ 本日も 気張っていきますか…。
こっちでも捜査中ですか。
「こっちでも」って 他でも捜査してるのか?
捜一のお二人がね 大河内首席監察官の命を受けて→
この無実の6人の 事情聴取してますよ。
こっちじゃ 6人を 容疑者と称してるがな。
どうかしてますよ。 女記者の妄想 真に受けて。
のんきに チェスなんかしてる場合か?
お前が こんな大事にした 張本人だぞ。
それは なんですか?
警察沙汰にした事を 言ってるんですか?
聞き捨てなりませんねえ。
押した押さないの水掛け論に ケリをつけるために→
警察呼んだんですよ。 当然でしょ?
そのための警察でしょ。 結局 女記者は→
被害届すら出さなかった。 妄想だからですよ。
ああ…! うわっ…。
ちなみに 君は この夜→
衣笠副総監と 一緒だったそうですねぇ。
それが何か?
副総監は 傘をお持ちでしたかねぇ?
傘? ええ。 こうもり傘。
ああ 無論 番傘や唐傘でも 構わないのですがね。
衣笠さんが 傘で突いたんじゃないかって→
疑ってるわけですか?
なるほど。 確かに この位置だと 手は届かない。
けど 手で押されたか 傘で突かれたかなんて→
本人 わかるんじゃありませんかねえ。
その辺を曖昧にしてるのも→
あの記者の妄想だという 証拠じゃありませんか。
しかし 当夜 彼女は→
厚手のコートを お召しだったようですからねぇ。
いわく モコモコのデブコート。
背中に圧力を感じつつも→
それが傘か手か 判然としなくても 不自然ではないと思いますよ。
まあ それについて 杉下さんと 議論するつもりはありませんけど。
どうでしょうねぇ。
副総監は 傘をお持ちでしたかね?
覚えてませんか?
残念でした。 持ってませんでした。
確かか? あのね 雨だからって→
傘を持つのは部長まで。 ん?
副総監ともあろう人が 傘なんて持つわけないでしょ。
あの地位までいくと→
濡れないところから 濡れないところへ→
車で移動するのが普通です。
なるほどな。
ヤクザ系が 得意な記者はいますけど→
今現在 どんなネタを何本ぐらい 追いかけてるのかは知りません。
仲間と言えども その辺りは秘密主義ですから。
それが今回の件に 関係するんですか?
するのかしないのか→
目下 皆目見当がつかない状況です。
杉下さん 暴排条例 なんとかならないでしょうか。
はい? なんですか? 藪から棒に。
皆さんが ヤクザのお話をしてらしたので→
せっかくだからと思って。
あのね 一般市民に責任おっかぶせて→
どうするつもりなんでしょうか。
みかじめ料を要求するヤクザが 罰せられるっていうのは→
当然だと思うんです。
でもね 払ってしまった私たちにまで→
罪が及ぶっていうのは なんか おかしいと思いません?
確かに 暴排条例は暴対法と違って→
その対象となっているのは 市民ですからねぇ。
警察は 本気で ヤクザと戦おうなんて→
思ってないからですよ。 生かさず殺さずです。
それを証拠に 暴力団は 合法組織ですよ 日本では。
世界中探したって そんな国ありません。
うわあ…!
えろうすんまへん! うう… うっ… うっ…。
平気でっか?
うう… うう…。
平気じゃねえよ…!
過失傷害でしょ。 だから 親告罪でしょ。
だから 被害届 出すって 言ってるんですよ。
いや お前だから ぶっちゃけるけどさ→
罰金30万の過失傷害なんて わざわざ立てさせんなよ。
当事者同士で話し合って カタつけろ。
刑事より 民事を 強くおすすめします。
いいんですか? そんな職務怠慢で。
しかるべきとこへ 報告しちゃいますよ。
あ?
しかるべきとこって どこだ?
しかるべきとこは しかるべきとこですよ。
今 伊丹さんが 思い浮かべたとこですよ。
うーん…。
なんとか 立件 考えますか。
失礼します。 ただ今 加害者の照会をしてたんですが→
あの男 暴力団の構成員ですね。 えっ…?
「あの記者 確か 風間っていいましたよね?」
そうだけど それがどうした?
東京の人間ですかね?
確か 大阪だって言ってたけど。
大阪…?
もしもし? もしもし?
どうも。
見てください。
予想以上のスピードで 全員 晒されてますけど。
不謹慎を承知で あえて申し上げれば→
敵ながら あっぱれですねぇ。
おい 聞いたか?
ゆうべ 青木が 帰り道 階段から落ちて 怪我したそうだ。
まあ そりゃいいんだがな その加害者の男がな…。
檜山与一 知ってる?
与一が何か?
青木を 過って 階段から突き落としたそうだ。
青木 わかる? あの6人のうちの…。
いや わかります。 あの小さい人。
えっ… 「過って」?
いわゆる 前方不注意で→
青木くんに接触してしまった という事らしいですが…。
あの… 青木さんの怪我は?
全治2週間。 くしくも君と一緒。
過失傷害って事になりますか…。
ええ 現状は そうなりますねぇ。
警察には 指定暴力団の構成員の データベースがあってね。
知ってます。
照会したら 檜山与一は→
広域指定暴力団 銀龍組傘下 風間燦王会の構成員だった。
その風間ってのに 青木が過敏に反応してね。
調べてみたら…。 ええ。
風間燦王会は実家です。
私はヤクザの娘です。
その事について→
とやかく言うつもりは ありませんがね→
このタイミングですからねぇ。
報復だと?
はあ 当人は そう騒ぎ立ててます。
まあ 加害者の素性から見れば→
単なる過失傷害だったと 考えづらいのも 事実です。
昔のヤクザは 基本的には 警察には手は出さなかった。
だが今は 場合によっては 殺しも辞さんからな。
まさか 今回の件が→
殺しまで発展するとは 思えませんが…。
どっちにしても 証拠はないんだろ?
故意に突き落としたという。
はあ 今のところは。
いい気味だ。 …は?
そう思わんか?
あの小僧 副総監との関係をいい事に→
調子にのりやがって。
確かに 虎の威を借る狐のごとき振る舞い→
目に余るものがありました。
警察職員たるもの 見苦しく騒ぐなと言ってやれ。
はあ…。
あっ あの… 部長!
ちょっと お耳に入れておきたい事が…。
なんだよ? いや…。
いや だから なんだよ!? じゃあ… ちょっと こちらへ。
なんだよって だから! ちょっと お願いします。
ここじゃあ ちょっと…。 えっ?
ああ…! なんだよ もう!
ちょっと… ちょっとお願いします…。
余計なお世話だよ。
ご覧のとおり 全員 身元が 晒されてしまってるんですよ。
だからといって 警察官が 自らを警護対象として→
護衛を付けるなんて真似 出来んよ。
みんな やられちゃいますよ。 いいんですか?
相手はヤクザですよ! まあ 落ち着きたまえよ。
落ち着いてる場合じゃない!
報復だというのならば→
それなりの証拠を 挙げる必要がある。
こんな目に遭ってるんですよ!
折れたのかい?
折れてませんが 腫れてます。
そう お大事に。
素性がわかった今 前方不注意でしたは通らねえぞ。
はあ… しつこいなあ もう。
認めるまで いくらだって粘るからな。
あの6人も これぐらい しつこく追及しはったんか?
何?
嫁入り前の女の顔に傷付けた 6人の容疑者どもですわ。
しつこくやらはりましたか?
それとも 警察の人間には あっさりで→
ヤクザは こってりでっか?
語るに落ちたな。
今ので お前が故意にやった事は明白だ。
報復だった事がな。
どないな解釈しようと そちらさんの勝手やけど→
どうしても 傷害で挙げたいんやったら→
証拠 持ってこんかい! コラ!
なんだと コラ! まあ まあ まあ まあ…!
やんのか? コラ。 君も そう興奮すんなって。
ふう…。 ああ あと 言うとくで。
若いもんは わし一人やないさかいな。
フッ… 脅しかよ。 上等じゃねえか。
何も脅してまへんがな。
さて… そろそろ去のうかな。
おかげさんで 宿賃 一泊 浮きましたわ。
朝飯も おおきに。 ごっそさんでした。
おい! ちょっと待てよ。 まだ話 終わってねえよ。
なんの容疑か知りまへんが→
もっと 僕と おしゃべりしたいんやったら→
おフダ 持ってきなはれ。
そうでっしゃろ?
外れた。
姐さん…。
東京まで来て 何しとんねん。
お勤めサボりよってからに うちの人 カンカンやで。
すんまへん…。
こんなとこで なんやけどな→
謝って済むんやったら 警察いらんわな。
うちの子が えらいご迷惑を お掛け致しました。
ほな 行くで。 はい…。
バッグ。 はい。
どうぞ あちらに。
警察のお方… ましてや 江戸の警察のお方と→
お目にかかる筋合いは おへんのですけど→
桑田の親分さんが どうしてもって言わはったんで。
桑田に無理言って 連絡させて頂きました。
桑田はんとは 古いお付き合いですか?
かれこれ30年ぐらいですかね。
まあ そんな事は どうでもいいんです。
お話って なんですの?
聞かなくても わかるでしょう。
フフフフ… 警察のお方やなあ。 すぐに 言質取ろうとしはる。
ああ これは失敬。 決して そんなつもりでは。
ご想像のとおりですよ という意味で言ったんです。
おたくの若い衆に 報復なんて真似はしないように→
徹底して頂けませんか?
ほなら どないか 筋 通してもらえまへんやろか?
筋…。
あんたはんも含めて どなたはんが うちの娘 突き落としたんか→
はっきりさせてください。
この件に関しては 事態を重く見て 首席監察官が調査した結果→
突き落とした事実は ありませんでした。
ハハハ…。 警察は 身内に甘うおまっさかいな。
にわかには 信じられまへん。
まずは信じて頂かないと 筋の通しようがない。
まずは 下手人 挙げて頂かんと→
うちの子ら 止めようがありまへんわ。
合意出来ずに 残念ですな。
こちらもです。
ああ… なんだ 早く行け 早く!
ああ… お願いします…! すいません…!
実は 私…→
突き落とすのを 見てしまったんです。
えっ!?
聞いてます!? 杉下さん。
ええ 聞こえてますよ。
お願いしますよ!
だから 右京さん 乗り気じゃないの。
見りゃわかるでしょ。
どうして? 目の前に解明すべき事案がある。
気になって 夜も眠れないでしょ!
もはや報復である事は 明白ですからねぇ。
でも その証拠を挙げないと→
あのヤクザ とっ捕まえる事 出来ないんですよ。
だから 頼んでるんじゃありませんか!
気持ちは わかりますがね ものには優先順位があります。
優先順位?
僕には 風間さん転落の件のほうが ずっと気になる事案でしてね。
ぜひとも早急に 真相を究明したいと思っています。
それが済めば 君の件にも取り掛かりますよ。
そうですか。 もう頼みませんよ!
くれぐれも 夜道は気をつけてください。
みんな 同じ目に遭えばいいんだ!
うわっ!
うおっ… うわーっ!
おい おっちゃん! 大丈夫か? 何しとんねん お前。
うわっ! やってもうたなあ。
はい。
き… き… 傷 残ります?
ああ 残るよ。 構わんだろ。
しらばっくれたって 通らねえぞ。
しらばっくれるて…。
申し訳ない事したて 認めてますやん。
救急車かて 俺が呼んだんですよ。
わざと突き落としたんやったら すぐに逃げとるでしょ。
お縄になりますからね。
よく言うよ 風間燦王会の組員のくせして。
何しに 東京 来たんだよ?
せやから 東京見物や言うてますやん。
はあ… えらい災難や。
災難だと?
ナメてんじゃねえぞ コラ!
おお 怖っ。
東京の刑事さんも 迫力ありますね。
「ナメてんのか コラ」。
おはようございます。
お… おはようございます。 おはようございます。
おはよう。
大丈夫ですか?
聞きました。 傷の具合 いかがですか?
一生消える事のない傷を負った。
ああ…。
お前たち2人は→
我々6人を 容疑者と称して 疑っていると聞いた。
便宜上ですよ。
細かい事はいい。
我々6人の中に 犯人がいると言うのなら→
とっとと特定しろ。
はい?
早く犯人を突き止めてみせろと 言ってるんだ。
どうせ 出来やしないんだろうなあ…。
出来もしないなら これ以上 首を突っ込むな。
わかったな?
捜査に必要なものがあるなら 言ってこい。
はい? 特別に俺が用意してやる。
突き止められや しないんだろうけどな。
参事官 どうしちゃったんですかね?
さあ…。 頭打ったみたいだからな。
明らかに 我々を挑発してますよね。
ええ。
だけど なんで こんなタイミングで?
しかも 捜査に必要なもの 全部 用意してくれるみたいだし。
確かに タイミングとしては 不可解ですし→
協力姿勢も 不気味ではありますがね→
いずれにしても 昨夜の事が きっかけとなっているのは→
間違いないでしょうねぇ。
うん。 やっぱり 頭打って おかしくなったんだ。
まあ その可能性も 捨てきれませんがね。
中園くんまで やられたとなるとね…。
さすがに 黙っては いられないね。
こんな理不尽を許しておく事は 出来ませんよ。
重過失傷害なんて 生ぬるい事は言わずに→
立派な傷害罪で挙げましょう。
確かに こっちは軽傷。 送検しても 通常ならば→
略式起訴の罰金刑がいいところの 案件ですが 相手はヤクザです。
もっと重い罰も 十分 期待出来る。
花の都 東京で好き勝手した 大阪ヤクザに→
きっちり 落とし前つけてもらわないとね。
はい!
うちにも コーヒーちょうだい。
はい かしこまりました。
傷は どないや?
見せてみ。 ああ ええよ。
もうええから 座って。
東京にいると思わへんかった。 フフフ…。
ほな 連絡したほうが よかったんか?
水くさいのは お互いさまやない。
与一 迎えに行って ひっぱたいたって?
あ… しょうもない事 しよったさかいな。
あんたが ひどい目に遭うたの 聞いて カッとなったんや。
あの子 あんたのファンやさかいに。
やめてよ つまらん真似。
きつう言うとく。 お父ちゃんにも叱ってもらうし。
下手な芝居は ええの!
お母さんの差し金やって わかってるし。
だから やめて。 お願いやから。
迷惑するの こっちやし。
お待たせ致しました。
あんたも ヤクザの娘いう事で…。
フフフ…。 散々 迷惑被ってきたもんなあ。
せやかて 大事な顔に傷つけられてんのに→
雑誌でピーピー言うてるだけの あんたが→
お母ちゃん もう 歯がゆうて歯がゆうてな…。
やめてほしかったら→
きっちり落とし前つけたりぃ。
出来るんかいな?
えらい お世話になりました。
誤解が解けて ほんま よかったですわ。
あっ 中園はんにも お大事にって伝えといてください。
道草しないで 大阪帰れよ。
東京見物や 言うてますやん。
おっ… ハハハ…。
これから ちょっと 楽しんできますわ。
ほな。 ハハハ…。 とっとと消え失せろ。
いきなりですか?
ああ。 いきなり バチーン! って。 びっくりやわ。
まあ すぐに お芝居してはるの わかったさかい 合わせたけどな。
芝居ですか…。
ああ そりゃそうや。 しばかれるいわれ ないがな。
≪
おっ! 兄貴 あれ! おお~!
- あれかいな!? - まんまですやん これ。
次 ここ 行きましょうや。 おう 土産でも買おうか。
邪魔だよ!
おいおいおい…。 おい ちょい待ちぃな。
悪ぃな 急いでんだ。
待て言うとるやろ おっさん。
なんだ? この手は。 放せ。
相手見て 喧嘩売れよ。
ん? やるのか? やってやろうじゃねえか 小僧!
なんやと コラ。 やめとけ。
口だけ小僧が。
おい! もっかい抜かしてみぃ コラ!
おい! やめとき言うてるやろ。 はよ放したれ。 なっ。
ああっ 痛っ…!
イテテテ… 痛え…!
アホか。 下手な芝居すな。
アホとはなんだ この野郎!
おい この口が言ったのか!? この口が!
うるさいな おっさん コラ。 ああっ! 痛え… 痛え…。
おお…! どうした どうした?
暴行…! こいつが肩で こいつ指。
ゲンタイ よろしく。
ちょっと来てもらうぜ。
お前と もっとしゃべりたくてな。
おフダは そのうち届く。
それで いいんだろ?
えげつない事しますなあ。
だから 道草しないで大阪帰れって 言ったじゃん。
おい。 あんたら ヤクザ以下やな。
昼間 母に挑発されました。
はい?
やめる代わりに きっちり落とし前つけたりぃ。
出来るんかいな? あ?
わかった。 やるから。
その代わり お母ちゃんは もうやめて。
ほな 待っとくわ。
せやけど しばらく待っても らち明かんようやったら→
そん時は お母ちゃん 黙ってへんで。
報復は いったん止まってる って事ですね。
母は 普段は もっと思慮深い人なんです。
娘の事で 見境がなくなってるだけで。
とはいえ 落とし前つけさせるって 啖呵は切ったものの→
私には 具体的な当てなどなく…。
ここは お二人に すがるしかありません。
なんとか 犯人を 捜し出してもらえませんか?
このままだと 母が潰れるだけじゃ済みません。
組にも波及する。
昔と違って 今は→
ヤクザってだけで 相当の不利益を被る時代ですから。
実は くしくも 我々も今朝 挑発されましてね。
えっ? 早く犯人を捕まえてみせろと。
まあ 多方面から ニーズがあるようで→
ここは 本腰入れるっきゃ ありませんよ。
ですね。
「おい そろそろ なんかしゃべれよ ボケ関西人」
どうですか?
奴らも トーシローじゃない。
48時間粘れば 逃げ切れると わかってますからね。
おはようございます。 おはようございます。
上っ面を さらっとなでてるだけの 供述調書ですね。
うん。 まあ 体裁を整えるだけの 代物だからな。
ええ そこなんですよ。
なぜ わざわざ体裁を整える必要が あったのか。
まさしく 洟も引っ掛けない対応を していたにもかかわらず。
その辺りの事情は ご存じありませんかね?
≪どうぞ。
雑誌の記事を見て 気になったものですから。
いけなかったかしら? とんでもない。
しかし こういった個別の案件に対して→
指導なさるというのは 極めて異例と思いましてね。
アハハ… 指導なんて…。
そもそも私たちに 警視庁を直接 指導 監督する権限なんて→
ありませんから。 ええ。
あなた方の管理なさっているのは 警察庁ですからねぇ。
しかし 先生は今回 警視庁の首席監察官に→
直接 連絡なさったそうじゃ ありませんか。
個人的に問い合わせただけですよ。 記事が気になって。
たとえ 個人的だろうと→
国家公安委員の問い合わせは 十分な圧力になります。
…おわかりでしょうけど。
本当に 先生の個人的興味だけ だったのでしょうかね?
ああ… ちなみに 国家公安委員会の運営は→
警察庁の長官官房が 担当していますよね?
長官官房 甲斐峯秋 ご存じですか?
三上教授は 大いに憤慨していたよ。
フッ… まるで 取り調べにあったみたいだって。
不愉快を感じさせて しまったとしたら おわびします。
よしなにお伝えください。
今度の件の内部調査が 僕の差し金だったのは→
何か問題かね?
ちっとも。 むしろ 率先して内部調査を仕掛けた事は→
あなたが 風間楓子転落事件の 犯人ではないという傍証にもなる。
潔白だからこその行動だと。
ならば 容疑者から 僕は外してもらえるかね?
いえ 逆の可能性もありますからねぇ。
ん? 潔白だからこその行動…→
と思われる事を見越して 仕掛けた可能性も捨てきれません。
内部調査が おざなりなものに ならざるを得ないのは→
容疑者の顔ぶれから見て 予想出来ますから→
調査を仕掛けたという事実だけが 注目されて→
結果 あなたは 潔白であると判断されます。
相変わらず 意地の悪い見方をするね。
事実など 見方次第だという事ですよ。
だからこそ 真実を見極める事が大事です。
…なんて 格好のいい事を 言ってますが→
右京さんは 底意地悪いだけかもしれないって→
最近 とみに感じております。
ハッハッハッ…。
自浄作用を期待して 僕は 内部調査を仕掛けた…→
そういう見方は どうかね? かなり素直な見方だと思うがね。
十分 あり得ます。
まあ 期待は 脆くも崩れ去ったがね。
副総監を含め 幹部連中の容疑は→
内部では 本気で検証出来ないようだ。
残念だがね。
まあ しかし ある意味 それは 組織の真実でもある。
自浄作用への期待…。
冠城くんが同意したように あり得るでしょう。
しかし それは半分かもしれない。
半分? もう半分は→
首尾よく 犯人が特定される事によって→
その人物が 失脚を余儀なくされる事を→
期待していたのではないかと。 まあ 有り体に言えば…→
あなたは 副総監が犯人である事を→
期待しているのでは ありませんかねぇ?
いや… どうも 僕は 底意地が悪いので→
次から次へと 妄想が頭をよぎってしまいます。
どうか お気になさらず。
いや… 今さら 君の物言いに いちいち腹を立てたりはせんよ。
それより 頑張って 早く犯人を特定したまえ。
そうすれば おのずと 私の潔白は 証明出来るわけだからね。
まあ 私は 君らの活躍を 大いに期待しているよ。
風間楓子は 固辞したそうじゃありませんか。
なのに どうして 無理やり 病院に付き添ったんです?
女の子が 顔に傷を負ったのよ。
それに 頭も打ってる。 心配だからよ。
ええ 調書にも そうありましたねぇ。
お読みになったんでしたら→
どうして聞くんです?
真実かどうかの確認ですよ。 はい?
課長の供述が嘘だなんて 言ってません。
ただ 全てを語ってるかどうかの確認。
他に何があるっていうんですか?
風間楓子に 因果を含めようと なさったのではないかと。
雑誌を使って 事をややこしくするなって。
彼女の記事は 一種の武器ですからねぇ。
使いようでは強力な。
それは あなたも身をもって 体験なさっていますからねぇ。
だからこそ 釘を刺しておきたかった。
広報課長として 当然だと思います。
記事になんかされたら→
うちのダメージ 大きいですもんね。
あなたと風間楓子には 浅からぬ 因縁がありますからねぇ。
それなりに 彼女を説得する自信が あったのではないかと。
そこに とんだ邪魔者がいた。 青木…。
なんなら 診断書 取っといたほうがいいですよ。
風間楓子を やたら挑発していた 青木が一緒じゃ→
具合悪いですよね。
彼女だって 反発して 課長の話に 耳を貸さないでしょうし…。
結局 課長は 目的を断念せざるを得なかった。
ああ!
あなたが 風間さんの怪我を 心配なさった事を→
疑うつもりはありません。
しかし 加えて 付き添いには→
今 申し上げた目的が あったのではないでしょうか。
私が怪我への気遣い以外の目的を 持って→
彼女に付き添ったとしたら→
例の容疑が 深まったりするんですか?
とんでもない…! その件とは なんら関係ありませんよ。
じゃあ なんのために?
供述調書の信頼性を見極めるため …でしょうかね。
えっ?
おかげさまで 内部調査による供述調書が→
やはり おざなりである事の 確証を得ました。
冠城くんいわく 上っ面をさらっとなでただけ。
他の連中のも 推して知るべしですね。
どんな形にせよ→
お役に立てたのであれば 光栄です。
なんか用ですか?
用がなきゃ来ないよ。
手短に。
なんで わざわざ お前 病院について行った?
は? 風間楓子の病院だ。
ああ~ そういうのは 下っ端の役目だと心得てますから。
ましてや 社さんが行くってのに 一番下っ端の僕が→
のほほんとしてるわけに いかないでしょ。
お前 課長から その時 「いらない」って言われたよな?
言われましたよ。 だったら ついて行く事ないだろ。
これだから キャリア崩れは…。
なまじ キャリアなんか経験してると→
下っ端の本当の苦労が わからないんですねえ。
あのね 上の者の言う事を 真に受けてるだけじゃ→
下っ端は務まらないんですよ。
上の者が 本心から そう言ってるのか→
しっかり確かめて 行動しないとね。
「あなた 来なくていいわ」 「あっ そうですか」で→
行かなかったのに あとで→
「ああ言われたって 普通は来るわよね!」→
「あの子 立場を わきまえてないわね」なんて→
理不尽な非難をされてから 臍を噛んでも遅いんですから。
君の宮仕え論 非常に興味深く拝聴しましたが→
実は 我々は もっとシンプルに→
君の病院への同行を 考察しているんですよ。
シンプル? ええ。
考察って?
お前が犯人だ。
はあ!? 犯人にとっての気掛かりは→
被害者の動向です。
往々にして 疑心暗鬼に陥るため→
被害者の言動などを 素直に 受け取る事が出来なくなる。
「誰に押されたか わからない」と 言っているが→
本当だろうか? 実は わかっているのに→
なんらかの魂胆があって とぼけているのではないか等々→
猜疑心は 底なし沼。
そんな不安を解消する手立ては→
可能な限り 被害者のそばから 離れない事ですからねぇ。
その理屈で言えば 社美彌子だって 犯人の可能性があるでしょ。
ええ もちろん。 じゃあ 社美彌子だ。
根拠は? 犯人は 僕じゃないから。
こんな与太話で 時間 取らせないでくださいよ。
ああ もうひとつだけ…。
お断り!
お前たち2人に 付き合ってる暇はない。
出て行け。
お時間は取らせませんので→
ぜひ 6人の容疑者に関する 我々の考察を聞いて頂いた上で→
部長の意見など 拝聴出来ればと。
いらん。 出て行け。
そもそも 「6人の容疑者」など 不愉快極まりない。
我々の考察は ごくシンプルでしてねぇ。
転落当時の位置関係から見ても→
突き落とす事が出来たのは 風間楓子に最も近かった2名→
つまり 甲斐さんと 部長 あなたです。
傘があれば 遠くからでも突ける。
そのとおり。
でも 部長は 傘のいらない 位置だっただけじゃなくて→
突き落とす動機があるから 分が悪いですよ。
動機?
我々も 子供の使いじゃ ありませんからねぇ。
ただ単に 手が届くというだけで 部長を犯人扱いはしませんよ。
俺が犯人扱いとは… 杉下 お前も焼きが回ったな。
面白い。 俺が犯人だという動機を 聞かせてもらおうじゃないか。
部長と暴力団の交際を 『フォトス』が追ってるからです。
…ですよね?
本当か!? それ。
また とぼけて…。
どこからの情報だ?
それは言えません。
たとえ それが本当だとしても 突き落としたりはしないよ。
そうでしょうか? 当たり前だよ!
女記者を突き落として済むような 生易しい話ではない。
なるほど。
聞きましたよ。
あの くだらない記事の 尻馬に乗って→
我々6人を 容疑者扱い してくれてるんだって?
君たちらしいね。
まあ 座りたまえよ。
で 成果は どうでしたか?
そうですねぇ 早々と副総監は 容疑者から外れた事でしょうか。
僕の容疑は晴れたの?
だって 当夜の副総監の位置からじゃ→
手も届かないし 傘もお持ちじゃ なかったみたいですし→
突き落としようが ありませんもんね。
まあ そのとおりだがね。
しかしね そもそも 犯人捜しに 無理があるんじゃないかな。
そもそも 突き落としたなんていう 事実はない。
あの クソみたいな三文雑誌の記事を→
うのみにしている事が 大間違いだ。
「クソみたいな三文雑誌」ですか…。
副総監ともあろうお方が→
いくらなんでも お口が過ぎるのでは?
これでも 言い足りないぐらいだよ。
なんだよ お前… どうした?
なんですか? はい?
「なんですか?」とは なんでしょう?
さっきですよ。 「もうひとつだけ」って。
その件ですか。
気になって戻ってくるぐらいなら 最初から聞いとけよ。
言いたい事があるなら いくつでも聞きますよ。
では お言葉に甘えて。
君の供述調書を 読んだんですがね…。
また なんか ケチつけるつもりですか。
思う存分 どうぞ。
いえ 君の供述調書は詳しくて とても参考になります。
他のが上っ面なだけに 余計 際立ちます。
…と言おうとしたんですよ。
何も言わないでください。 わかってますよ→
とんちんかんな奴って 思ってるんでしょ?
おあいにくさま。
とんちんかんは 今に 始まった事じゃありませんから。
思わせぶりに こんなの書いちゃって!
実際のとこ 捜査は進んでるんですかね?
おかげさまで 容疑者は3人に絞られています。
3人に?
刑事さん 恥ずかしないの? こんな真似して。
人権問題でっせ。
…と まあ 騒ぎ立てたかて 「ヤクザのお前が言うな」って→
世間から袋だたきに遭うのが オチやろうけど。
刑事さんも わしらと同じ 上の命令は絶対やからな→
わからん事もないねんけど。
言うたかて 刑事には 刑事のプライドがあるやろ?
今時 ヤクザからは 喧嘩しかけへん。
せやけど 売られた喧嘩は買うんや。
相手が誰であろうと。
それが ヤクザのプライドや。
俺は恥ずかしい…。
ヤクザの正論に 返す言葉がなかった。
大丈夫ですか?
しっかりしてくださいよ。 弱気になってどうするんですか。
やりすぎじゃねえか?
でも あいつらがね 報復という名目で→
警察官に怪我を負わせたのは 間違いないんですよ。
仲間がやられたら 徹底的に相手をたたき潰す。
これ 警察の伝統ですから。
しかし 原因があって 結果があるわけだからな。
その原因を ないがしろにしているのが→
どうにも後ろめたくて…。
そもそも 先輩に プライドは似合いませんよ。
はあ… だよなあ。
…って うるせえよ 馬鹿野郎!
わざわざ 大阪から…。
大変だねえ。 はい!
新幹線か飛行機か 結構 迷うたんですけどね→
飛行機は嫌いやよって 新幹線にしました。
ああ… はいはい。
電話でも言ったとおり→
2人とも 今現在 取り調べ中でね。
会わせるわけに いかないんだよ。
しかし まあ 「はい そうですかー」言うて→
引き下がってたら 商売あがったりなんでね。
とりあえず押しかけて 接見交通権を盾に→
暴れたろかしら思てね!
なんだと?
冗談でんがな。
やっぱり 東京の刑事さんは 冗談通じまへんな~。
お茶とか出まへんの? あの… おまんじゅうとかも。
おっと! ととと…。
う~ん。
接見拒否ですわ。
まあ 電話で問い合わせた時から そういう答えやったんやけど…。
せっかく 上京するんやし ついでや思うて行って→
あいさつ かましてきました。 う~ん!
そら ご苦労さんやったな。 はあ~。
で ご所望の これ…。
預かってきましたで。
あっ… うん。
うちの人…→
なんか言うてた?
「あれは 言い出したら 聞かんさかい→
好きにさしたり」 言うてはりました。
もう~。
おおきに!
離婚って 本気やの?
「誰に聞いたん?」
お父ちゃんから 連絡 来た。
本気やで。
お父ちゃんにも組にも 迷惑はかけられへん。
これはな… お母ちゃんの落とし前や。
結果次第で 離婚届 出す。
結果って?
あんたが 自分で 落とし前 つけられへんかった時や。
「そん時は お母ちゃん あいつらのタマ取ったるわ」
はあ!?
このとおりです。
一刻も… 一刻も一刻も早く 犯人 見つけてください!
要するに お母様は 覚悟を決めている。
そういう事ですね? ええ。
君が 犯人を割り出さずに→
責任取らせる事が 出来なかったら→
離婚届を出した上で 事を起こすと。
離婚届提出は→
一応 組に迷惑をかけない 配慮のようですけど。
直前の離婚が→
どれだけ効果があるのか 疑問ですけどね。
いやあ それは 本人も わかってますよ。
だから 覚悟なんです 彼女なりの。
暴排条例以降→
ヤクザの身内ってだけで 銀行口座を作れなかったり→
いろいろと 不利益があるからって→
ヤクザの世界で 偽装離婚が 流行ったりしましたけど→
その時には→
離婚なんて おくびにも 出さなかった彼女だからこそ→
本気度が伝わってきます。
普段は もっと思慮深い。 えっ?
しかし今は 娘の事で 見境がなくなっている…→
そう おっしゃっていましたが あなたの話を聞く限り→
およそ 思慮深さとは縁遠い 人物像が浮かびますねぇ。
あの… 何げに うちの母親 ディスってます?
思慮深さがある一方で→
非常にエキセントリックで デンジャラスな人なんです!
ああ… なるほど。 いや そりゃそうでしょ。
極道の女房 やってるぐらいですから。
物騒なもん 持ってなきゃいいんだけど…。
ぶ… 物騒なもん?
チャカとか?
あの… 警察官2人を前にして→
そういうの言うの やめてもらえませんか?
っていうか そんなの持ってる可能性は…。
いや わかりません。 でも 昔は実家にあったし…。
なあなあ お嬢は 大きなったら なんになるん?
お嫁さんや! お嫁さん!
俺で どう? お前たちは無理だ!
おい!
じきに ガサ 入りよる。 チャカ隠せ。
へい。 へい…。
フーは向こう行っとき。 うん。
はよせんか! オラッ! はよ持ってこい!
はよう! 遅いで…!
≪はよせえ おい!
いつまで待たせとんじゃ! こっちだ! おい。
鍵 締まっとるやんか! おい!
何しとんねん お前ら…。
うまいか? うん。
そうか。 ≪鍵!
今 思えば のどかな時代でした。
あの… 懐かしんでる場合ですか?
おはようございます。
おはようございます…。
どうかしましたか? いえ…→
これ。
また 挑発されてますね。
筆跡が わからないように→
利き腕じゃないほうで 書いたようですねぇ。
関西弁っていうのも 気になりますが→
誰の仕業か調べますか?
ほっときましょう。 時間の無駄ですよ。
6人が3人に?
ええ。
絞られたって? そのようです。
それは めでたいね。 はっ。
本当かねえ?
ブラフじゃねえの? じゃあ 誰と誰だか言ってみろよ。
フンッ フフッ…。
失礼ですけど…。 はい?
えらいすんまへん。 何してはりますの?
いやね さっきから→
下りては上り 下りては上りって 繰り返してはるし。
いえ 私 そこの喫茶で→
モーニングしてましたらね 目についたんです。
ずっと 我々を 眺めていらっしゃった?
ええ…。 何してはるんかな? って 気になってしもて。
実は 少し前→
このエスカレーターから 若い女性が転落しましてねぇ…。
風間楓子さんの お母様ですね?
それほど 難しい事じゃありませんよ。
十分すぎるぐらい 手掛かりがありましたからねぇ。
こちらのホテルに宿泊している事は 知っていましたし→
その関西弁。
もちろん その いでたちも 大きなヒントでした。
そして 何より→
あのエスカレーターに 関心を持ってらっしゃった。
そもそも エスカレーターが 気になっていたからこそ→
奇妙な行動をしている我々が 目についたんですよ。
そら 恐れ入りました。 フフフ…。
けど 案外 あの子 やりよるなあ…。
はい?
いえ… 現役の警察官のお方を 味方につけてるやなんて。
少々 見くびっとったわ。
アホな母親やと 思ってはるやろけどねえ→
ほんま はたから見たら アホな母親やけど→
これだけは言わせてください。
娘 傷つけられるんは→
我が身 傷つけられるんより ずっとずっと痛いんですわ。
ズキンズキンって 夜も眠れへん。
せやし もし この件が うやむやになるようやったら→
うち…。
殺しまっせ。
上から順に。
立場上 今のは 聞き流すには いささか過激なご発言でしたが→
ここでは あくまでも→
あなたの怒りを 比喩的に表現したものと→
理解しておきます。
おおきに。
ほな…。 あっ このコーヒー 経費で落ちまっしゃろ?
ほな ごちそうさん。 あっ!
もうひとつだけ!
おたくの若い衆2名が 逮捕された事を→
どうやって お知りになりましたか?
警察は わざわざ 「逮捕しました」なんて→
関係者に 知らせたりしませんからね。
下手すると 行方不明状態で 騒ぎになってたりする。
なのに あなたは 昨日の今日で→
素早い対応をなさってるのが 気になって。
楓子に聞いてまへんのか?
「警察のお方に聞いた」 言うてましたで。
お二人の他にも 警察に 味方がいるんちゃいますか?
ウフフフッ…!
皆さん お忙しいんですよ。
やるなら ちゃっちゃとやったら どうですか?
そうやって やたら ピーチクパーチク騒ぐの→
お前の悪い癖だ。
直しなさい。 偉そうに!
青木くん 君には感謝しています。 えっ?
調書ですよ。 群を抜いて詳しい 君の供述調書は→
今回の件を検証するのに 大いに役に立ちました。
別に 杉下さんに感謝される筋合い ありませんけど。
僕は ただ 今回の件に 真摯に向き合っただけですから。
容疑者は3人に絞られたと 聞いたが。
よしませんか 甲斐さん 容疑者なんて言い方は。
そうですよ。 そもそも この件に 容疑者なんていないんですから。
フフッ… 狐が。
ああ… 失敬。
靴がきつくて 気になってね。
容疑者というのが 不愉快かね?
便宜上なんだから→
目くじら立てる事はないと 思うがね。
私は みんなの気持ちを 代弁しただけですよ。
あなたの配下の2人が 仮にも 位の上の者をつかまえて→
面白半分に 容疑者と呼んでいる事に→
批判を込めつつね。
失礼千万。 無礼この上ない。
2人の無礼は→
今に始まった事じゃ ありませんけどね。
ん…?
容疑者という呼称が お気に障ったのならば 謝ります。
その言い回しは 謝る気のない人の謝り方ですよね。
そのとおり。
皆さん 容疑者なんて呼んで ごめんなさい。
これからは 容疑者はやめて→
風間楓子を 突き落としたかもしれない人→
って呼びますね。 ちょっと長いですけど。
調子にのるな!
もう 不毛な話は やめようじゃないか!
やめましょう もう。
不毛は 私の頭だけで たくさんだ。
聞くが…。 …はい。
ひょっとして 最後のは→
場を和ませようとでも したのかい?
そのつもりでしたが…。
見事にスベったね。
申し訳ありません!
ですが ですが… その ですが…→
この際 呼び名は なんとなれ→
問題は いかなる理由があろうとも→
女性を後ろから 突き落としたりするような→
卑怯者が 本当に この6人の中に 存在するか否かです。
すでに 容疑者を3人に絞り込んだという→
相変わらず もったいぶった この2人は→
腹立たしい限りですが→
ここは そういった感情を いったん収めて→
とりあえず 話を聞いてみましょう。
賛成だね。 賛成です。
僕も賛成だ。 賛成だよ。
大賛成です。
早く進めろ!
その前に ひとつだけ。
蒸し返すようで悪いのですが→
容疑者とお呼びした事は 改めて おわびしますが→
その前段 「面白半分に」 という部分については→
大いに誤解であると 申し上げておきます。
我々は 決して 面白半分などではありませんよ。
ええ。
そう。 よーくわかりました。 先に進みなさい。
絞り込んだ3人というのは 誰なんだね?
もったいぶらんで言いたまえよ。
申しましょう。
青木くん 君と…。
刑事部長 あなた。
そして 副総監 あなたです。
ほう…。 僕が入っているとは意外だね。
先日の君たちの口ぶりからも→
真っ先に 僕の容疑など 晴れてるもんだと思っていたがね。
ご説明します。 頼むよ。
今回 容疑者を3人に絞れた きっかけは→
参事官の挑発でした。 挑発?
ええ。
我々に 犯人特定してみろって けしかけたんですよ。
ほう…。
不思議にお思いのようですねぇ。 我々も不思議でした。
実は犯人捜しに積極的だった 甲斐さんに→
けしかけられるのならば いざ知らず 参事官ですからねぇ。
だって 参事官は犯行否定派でしょ?
副総監の見解を 支持してたはずなのに→
なんでまた? って。
甲斐さんが 犯人捜しに 積極的だったとは初耳ですね。
僕は どうも へそ曲がりでね。
衣笠くんの反対に 行きたくなるんだよ。
フフフ…。 よろしいですか?
とにかく不思議に思い 参事官の意図を推し量った結果→
ひとつの結論に達しました。
それは…。
参事官は犯人を知っている。
中園くん 君…。
そんなものは お前の想像に過ぎない。
ええ。 しかし 僕は間違っていないと思います。
若い衆の報復を受けて→
怒り心頭に発するのは 当然としても→
警察側の犯行そのものを 否定しているのですから→
今 現に行われているように→
なんとか あの若い衆を 懲らしめてやりたいと→
躍起になるのが自然ですよ。
それが 風間楓子を突き落とした 犯人を特定してみろなんて→
真反対の行動じゃないですか。
この変節は 一体 なんなのか。
風間楓子転落事件の 犯人への怒りですよ。
その人物のせいで→
自分は 理不尽な報復を 受ける羽目になった。
一生消えない傷を負って…。
我々6人の中に 犯人がいると言うのなら→
とっとと特定しろ。 はい?
早く犯人を突き止めてみせろと 言ってるんだ。
その憤りが あなたを 真反対へと突き動かしたんです。
我々への挑発が 報復を受けた 直後のタイミングというのも→
そのせいですよ。
まさしく 怒り心頭に発していた。
若い衆にではなく 風間楓子転落事件の犯人に。
もしも 犯人を知っているのならば→
ややこしい真似せずに 告発すればいいわ。
けれども それが出来ないから あなた方をけしかけた。
そういう事かしら?
当たり。
平たく言えば 犯人は→
自分の口からは言いづらい 人物なのですよ。
もしも僕が犯人なら→
中園くんは ためらいもなく 告発してるだろうと思うよ。
ええ そのとおり。
それが社さんであっても 同じでしょうねぇ。
あなた方6人は→
社さんのヤロポロク問題の 対応を見ても わかるとおり→
二派に分かれています。
ですから 甲斐さんと社課長は 容疑者を外れました。
お二人だったならば 躊躇なく告発出来るのに→
参事官が それをしないって事は→
つまり 犯人じゃないって事に なりますからね。
随分 都合いい解釈だな。 えこひいきしてるみたいだ。
ああ 早合点しないでくださいね。 この事だけをもって→
お二人を容疑者から 外したわけではありませんよ。
えっ?
風間楓子が転落する直前の 皆さんの位置関係を→
もう一度 思い出してください。
せっかくです 再現しましょうか。
ここをエスカレーターとして→
進行方向 向かって右手側に→
甲斐さん 社課長 中園参事官の 順で並び…。
並んで頂けますか?
ご協力お願いします。
そして 左手側は→
内村刑事部長 青木年男 衣笠副総監の順でした。
さて 左右に分かれた6人の間を 突っ切る形で→
風間楓子はエスカレーターに 乗ろうとしたわけですが…。
君ですよ。
えっ… 俺が風間楓子ですか?
他に誰がいるんですか。 嫌ですよ~。
お願いします。 はい…。
まさに!
足を踏み出そうとした その時→
印象的な出来事が 起きましたねぇ。
赤ん坊です。
耳をつんざくような泣き声が→
こちらの方向から。 そうでしたよね?
ええ。 間違いないね。
しかし お二人は 泣き声に気を取られて→
犯行の瞬間 こちらを振り向きました。
そうですね?
犯行を隠すために そう言ってるのかもしれませんよ。
自分は よそ見してたから 突き落とす事なんか出来ないって。
その時 お前も 赤ん坊の声のほう 向いたんだよな?
調書に そう書いてあった。 そうですよ。
お前の位置からだと→
たとえ振り向いたお前の焦点が 向こうの赤ん坊に合ったとしても→
視界の中に2人の動きが入っても 不思議じゃない。
甲斐さんか社課長 どちらかが→
風間楓子を 突き落としたりしてたか?
いや はっきりわからなくとも→
それを疑うに足りる おかしな動きをしてたか?
もし そんなのを 目撃していたとしたら→
君の人一倍詳しい供述調書から→
そのくだりが抜け落ちる なんて事は考えられませんし→
それより何より もうとっくに お二人には→
強い容疑が かけられているはずですよねぇ。
つまり 君の供述調書は→
お二人の証言の信憑性を 十分担保しているという事になり→
お二人は犯人たりえない という結論を→
支持する結果になるわけですよ。
よろしいですか?
まあ いいでしょう。
さて 申し上げたように→
犯人が 参事官の口からは 言いづらい人物となれば→
おのずと人物は絞られます。
それが さっきの3人。
副総監 刑事部長→
青木 お前だ。
オブジェクション!
僕は 参事官が遠慮するような 人物じゃない。
確かに お前は下っ端だけど→
副総監と 無視出来ない繋がりがある。
はっきり言って かわいがられてる。
そんな人間を犯人だなんて 軽々しく指摘出来ない。
ですよね?
ここで白状します。
以上の理由をもって 3人まで絞ったわけですが→
それ以上は 絞りきれませんでした。
ここまでが限界なんです。
決定打に乏しい。
それ 本気で言ってるの? それとも 何かの引っ掛け?
課長もご存じのとおり→
我々 正直を モットーにしてますから。
どうでしょうねぇ 参事官。
ここは ひとつ 思いきって→
あなたのご存じの犯人を 明かして頂けませんかねぇ?
だから 俺が犯人を知ってる なんていうのは お前の想像だ!
あなたの口から言って頂くと 手っ取り早いのですがねぇ。
しかし 参事官 あなたは先ほど→
ほぼ犯人を名指ししたような 発言をなさっているんですよ。
1人に絞れました? ええ。
あなたは 先ほど 犯人を こう形容しました。
「女性を後ろから 突き落としたりするような→
卑怯者」と。
「卑怯者」。
あなたは 副総監や刑事部長を念頭に置いて→
「卑怯者」などという→
あからさまな侮蔑表現は 出来ませんよ。
出来るとしたら… 青木くんに対してだけでしょう。
つまり…。
犯人は 君ですね。
実は 私 突き落とすのを 見てしまったんです。
えっ!?
青木が 持ってた傘で…。
突いたのか? はい…。
どうしましょう?
いや 青木を庇い立てする 筋合いなどないんですが ただ…。
あの狐は どうでもいいが 背後の虎だな…。
は… はい…!
下手に騒ぎ立てると その虎の顔に 泥を塗る事になりますから→
私の口からは とても…。
俺にも言えんよ。
えっ… どうしましょう!?
違う! 僕じゃない。 こんなの言い掛かり…。
あーっ!!
思い出した。
君 確かに 傘で突いたよね。
さっきの視界の話で にわかに記憶が喚起されたが→
君が隣で おかしな動きをしたのを 僕は視界の端で捉えていた。
間違いない。
あれは君が 傘で女記者を突いた動きだ。
そうだろう? 白状したまえよ。
僕は 君とは ある種 特別な関係にあるが→
無条件に君を 庇い立てるつもりはない。
だが… 君の態度次第では→
僕は 全力で君の力になろう。
だから 本当の事を言いなさい。
…呼び止めたんです。
呼び止めた?
傘でツンって。 そしたら落ちちゃった!
呼び止めただけなんです! 突き落としたりなんかしてない。
だから 過失ですよ。
過失傷害だ!
なるほど。
ならば 聞きますが→
彼女を呼び止めるのに 声を掛けるのではなく→
わざわざ 傘で突かなければならなかった→
合理的な理由を 述べてもらえますか?
それは…。
なんと言われようと わざとじゃありません。
明らかな故意を 過失と言い張るか…。
今 捕まってる若い衆と一緒だな。
おい。
事ここに至ったら→
若い衆 とっとと解放すべきでしょう。
うーん…。
屁理屈を承知で申しますが→
こちらが怪我を負わせたのは 一般人で→
向こうが怪我を負わせたのは 警察官。
同じ秤ではかるのは どうかと。
しかし こちらが怪我をさせたのは1人で→
向こうは2人だ。
ならば こう考えませんか?
一般人と警察官を同等に見るのは やはり不公平です。
わかりやすく数値化しましょう。
一般人を1として 警察官は0.5 2名で1。
すなわち 1対1の痛み分けという事では。
屁理屈極まれりだな。
恐縮です。
いずれにせよ 我々が提案すると 反発を受けるだけなんで→
課長から 上に掛け合ってください。
ええ。
うーん…。
どうぞ。
失礼します。
どうかね?
主張は変わりません。
ちょっと 2人にしてもらえないかな?
承知しました。
ちょ… ちょっと来なさい。
座りなさい。 はい 座って。
まさか 僕以外にも 目撃者がいたとは思わなかったよ。
赤ん坊のほうを振り向いた時 自然に君が視界に入るのは→
あの位置にいた僕だけだからね。
いいかい?
とにかく 過失という線は 絶対に譲るな。 いいね?
僕が 『フォトス』を始め→
ああいう雑誌に 強い不快感を 持ってる事を知ってるから→
君は あの記者に ちょっかいを出した。
それは わかってる。
わかってるからこそ 口をつぐんでいたが→
もう それは通用しない。
けれど 出来るだけ 君を庇いたい。
お咎めなしは無理だろうが→
なるべく穏便に済ませたいと 思っている。
彼の処分についてなんだが…。
島流しの刑の青木年男です。
これから ご厄介になります。 よろしくどうぞ。
これって どう解釈すればいいんですかね?
一種の 我々への嫌がらせでしょうねぇ。
副総監の? ええ。
特命係の青木~。
ちょっと来~い!
なんですか?
えっ? ちょっと! 来い来い…。
ちょっと 冠城さん! 杉下さん! 冠城さん…!
あっ 小松さん! 大木さん!
入れ。
風間匡子です。
風間楓子の母親ですわ。
極妻…。
身柄は置いていきますから ご自由に。
えっ? ちょ… ちょっと 部長…!
部長! 部長… 部長…!
ごめんなさい… ごめんなさい…!
いわば 警視庁の伝統でも あるようだからね。
わかってます。
島流しと称して しくじった人間を 送り込んできたんでしょ?
そもそも 君のように 望んで特命係に入った人間は→
初めてだって聞いたよ。 そうなんだろう?
彼は変わってますからねぇ。
右京さんに言われたくないです。
特命係が陸の孤島だろうが 一向に構いませんけど→
それを副総監に利用されて 幕引きに使われたんじゃ→
今の甲斐さんの立場から言って 業腹でしょ?
しかし 今の甲斐さんの立場ですから→
青木くんの件は 事前に聞かされたのでは?
そりゃ 当然さ。
承認したんですか? 奴が うち来るの。
いずれ 特命係じゃ使い物にならないと→
追い出すのも 愉快かなと思ってね。
追い出したら これ幸いと→
サイバーセキュリティに 戻りますよ。 副総監が動いて。
とにかく今 彼を特命係で引き受ければ→
事態は沈静化する。
落としどころとしては ギリギリの線だ。
あなたにしてみれば→
副総監に貸しを作った というところでしょうかねぇ。
それより 今回 君にしては寛容だったねえ。
実質 傷害事件なのに。
普段の君なら もっと杓子定規に 対応してると思うがね。
実は 被害者の処罰感情を 確認したところ→
犯人さえわかれば それでいい という事でしたのでね。
まあ 非公式ではありますが 示談が成立したようなものです。
傷害事件は 被害者の処罰感情が 大きく影響しますからねぇ。
落とし前を強く望んでるのは 母親で→
被害者本人は むしろ その母親をなだめるために→
犯人特定を強く望んだだけで。
あっ… どうした? それ。
転んだんです。
どこで? どこだっていいでしょ!
とにかく転んだんですよ!
それは とんだ災難でしたねぇ。
あっ すいません。
母は 内心ホッとしてると思います。
振り上げた拳を なんとか 無事 下ろす事が出来て。
あの… 改めて 今回は ありがとうございました。
私自身はもちろん→
父にも成り代わって お礼を言います。
感謝の気持ちがおありならば ひとつ お願いがあるのですが。
若い衆逮捕をあなたに教えたのは 誰ですか?
教えて頂けませんかね。
それは…。
言えません。
そうですか。 ごめんなさい。
ちょっと すいません。
もしもし。 うん どないしたん?
えっ!? なんでよ?
あっ… うん わかった。 すぐ行くから待ってて。
母からでした。
なんか 拳を骨折したみたいで。
拳を?
だから 病院に連れてけって。
ごめんなさい 行きます。 じゃあ また。
拳を骨折ですって。 災難ですね。
そんなに気になるなら 調べればいいじゃないですか。
ええ そのつもりですよ。 必ず突き止めてみせます。
そんな ムキにならなくても。
気になって 夜も眠れませんから。
そのうち 僕が 風間楓子から聞き出しますよ。
いえ 結構。 自分で突き止めます。
さっきは お願いしたくせに。
なんですか あの頑なな態度。
僕の闘志に火がつきましたよ。
まあまあ まあまあ… 頑張ってください。
目に物を見せてやります。
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