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明日は 朝食会のあと 香港支社とのオンライン会議。
11時からは プラント部門の プロジェクト会議です。
うん。 資料を用意しておいて。
はい。
ああ そういえば 君 今日の午前中 休んでたみたいだけど。
両親が 知人の結婚式で 上京してきたもので 迎えに。
うん。
専務と楓奥様も 来月は銀婚式でございますね。
ああ。
25年なんて 長いようで あっという間だね。
もう8時過ぎよ。 今日中に届く約束なのに…。
大丈夫ですよ 奥様。
まだ 最終の宅配便が 回ってる時間ですから。
私が出るわ。
はい。
「お荷物 お届けに参りました」
まあ~ 素敵!
オーダーメイドした甲斐が ありましたねえ。
ただいま。 あっ おかえりなさいませ。
おお~ 銀婚式の招待状。
いいのが出来たじゃないか。 そう。
どうかしたの?
思っていたのと 違っていたものだから…。
玄関扉の前に 灯油を撒かれた…。
貴城商事の 専務の家だそうです。
貴城商事というと 総合商社の? ええ。
「単なる いたずらだろうが 奥方は車椅子でもあるしね→
エスカレートしないうちに 犯人を見つけて→
諭してもらえないか」と 甲斐さんに頼まれたもんですから→
まあ 俺は「いいですよ」と…。 安請け合いをした。
すぐに片付きますって。
まあ ご近所トラブルかなんかでしょ。
あれ?
おや 人が集まってますねぇ。
事故かなんかですかね?
こちらから ずーっと→
散歩で上に 上がっていったんです。
それで 上の自動販売機で たばこを買って…。
その間に 止めてた車椅子が→
ブレーキが緩んだんでしょうか ザーッと…。
私が不注意だったんです。 本当に こんな事になるなんて…。
まずは落ち着きましょう。
最初から話して頂けますか?
妻は 車椅子を使っているんですが…。
久しぶりに 私が車椅子を押して→
散歩に出たんです。
小一時間ほど歩いたあと→
たばこを切らしていたのを 思い出して→
自販機で買おうと思ったんです。
多分 妻は疲れたんだと思います。
うとうとしていたので→
起こさないように そっと車椅子を止めました。
その時に うっかり 駐車ブレーキをかけ忘れて。
私が目を離している間に…。
えっ?
あっ あっ… ああっ!
うっ… ううっ!
奥様は今 どちらに?
お医者様の話では 脳波にも 骨にも異常はありませんって。
ですから もう心配ないんですよ。 それは よかったですねぇ。
あっ 警視庁特命係の杉下です。 同じく 冠城です。
瀬川楓と申します。 どうぞ お座りになって。
失礼ですが そちらは? 介護士の牧野くんです。
そうですか。 では 失礼して…。
どうぞ。
いやあ… 僕のせいで 本当に申し訳ない。
これに懲りて たばこ やめてくださる?
いや いずれは やめるつもりでいるんだが…。
瀬川さんは ヘビースモーカーのようですねぇ。
たばこの焼け焦げ。
ここ。 それから ここも。
火事にならなかっただけ よかったと 諦めているんです。
火事といえば 玄関先に 灯油が撒かれたそうですねぇ。
実は僕たち その件で お邪魔するとこだったんです。
どうかなさいましたか?
いえ… あの事は 騒ぎ立てるのもどうかと思って→
警察には届けていないんですが。
私が 警察に 調べてもらってくださいと→
辰臣様にお願いしたんですよ。
貴城商事代表取締役の 貴城辰臣さんは→
楓さんのお兄さんなんですよね? ええ。
私たち 早くに母を亡くしましたので→
セツさんが母親代わりで。
兄はセツさんに 頭が上がらないんです。
こういう事は→
きちんと調べてもらったほうが いいんですよ。
僕も そう思いますねぇ。 ああ… 早速ですが→
灯油が撒かれた先週の木曜の午後 皆さんは どちらに?
私は 辰臣さんと千葉のほうへ 釣りに行っていました。
セツさんは? 私はスーパーに買い物に。
牧野くんが お休みの日だったので 奥様は家に お一人だったんです。
物音か何かには 気づかれませんでしたか?
いいえ 何も。
エントランスは オートロックで→
外部の者は 簡単に出入り出来ませんから。
マンションの誰かの いたずらでしょう。
いいえ。
あの日は引っ越しがあって→
オートロックが 解除されてましたから→
外部の人も 自由に出入り出来たんです。
では 何か わかりましたら お知らせに上がります。
失礼します。
あっ!
最後に もうひとつだけ。
楓さんが乗っていらした 簡易型電動車椅子。
あれは 乗ったままで→
手動から電動に 切り替えられますよねぇ。
ええ。
坂道では ブレーキレバーを引くよりも→
電動に切り替えたほうが→
車椅子は安全に止められたと 思うのですが…。
そうしようとしたんですが うまくいかなくて…。
うまくいかなかった?
人間って 動転すると駄目なものですね。
車椅子は もう 自分の体の一部みたいに→
思っていたのに→
慌てると 簡単な切り替えも 出来なくなるなんて→
自分でも驚きました。 なるほど。
失礼ですが いつから…?
21の時に。
私 乗馬が 大好きだったんですけれど→
落馬してしまって…。
そうでしたか。 失礼しました。
楓さんは 自分が死にかけたという実感が→
まるでないようですねぇ。
車椅子が 電動に切り替わらなかったのも→
自分が慌てたせいだと 信じているようですし…。
やっぱ 右京さんも考えてます?
何か 車椅子に 細工されてた可能性。
もし そうだったとしても ここまで破損しているのでは→
その痕跡を見つけるのは まず無理でしょうねぇ。
だが 車椅子に細工が可能なのは 家の中の人間だけ。
ええ。
今回の灯油が撒かれた一件と 関係あると思いますか?
それは まだわかりませんがね。
ですよね。 じゃあ ちょっと 俺 調べたい事あるんで。
はい お疲れさま。
名札ぐらい返していっては どうでしょうねぇ…。
むう…。
楓さんと巧さんの関係について 教えて頂けますか?
出会ったのは 楓が高校生の頃。
巧さんは大学生で 楓の家庭教師だったんです。
でも 楓の両親は 2人の交際に反対で。
楓はアメリカの大学に 留学したんですけど→
2人は遠距離恋愛を続けてたの。
でも… 落馬の事は ご存じ?
ええ。 21歳の時だったと伺いました。
事故の時は 巧さんも一緒だったから→
彼は随分 責任を感じたみたい。
自分に一生 楓の面倒を見させてくれって→
頼み込んだらしいわ。
それで 楓さんのご両親は 2人の結婚を許して→
一族が経営する貴城商事に 巧さんを入社させた。
そう。 結局 正解ね。
2人は今でも 恋人同士みたいだもの。
楓さんなんですがね→
最近 何か変わった様子などは ありませんでしたか?
そういえば 招待状が来てないわね。
招待状?
来月 2人の銀婚式のパーティーが あるんですけど→
その正式な招待状が まだ届いてないの。
はい はい はい はい…。
あらま! 私より お上手。 それは どうも。 フフフ…。
それで 銀婚式の招待状なんですがね…。
あれはね デザインが→
奥様のイメージと 違ってたからですよ。
楓さんは今 どちらに? 気分転換に山荘のほうへね。
私は あの招待状 きれいだと 思ったんですがねえ…。
それでは 僕は これで。 はい?
失礼。 はい? はあ?
ただ今 戻りました。
あっ。 見てよ このアップリケ。
タヌキ? ハクビシンです。
えっ? 額から鼻にかけて→
白い筋があります。
考えてるんですか? 聞いてるんですか?
両方です。
甥っ子のボールが 木に引っかかっちゃってさ。
恐らく 年甲斐もなく木に登り ベストを引っかけた。
そこ 推理しなくていいから。
俺が言いたいのは かみさんが アップリケをしてくれて→
むしろ おしゃれになったと。
お… お… お… おしゃれ? なんだ? その懐疑的な目は。
冠城くん 報告を。
はい。 まず 介護士の牧野くん。
手首に古い傷痕があったんで→
ひょっとして タトゥーを 消した痕じゃないかなと思って→
マエを洗ってみたんです。
ビンゴ?
バイクを盗む窃盗グループに いました。
18歳当時の牧野の個人カード 指紋も残されてる。
未成年だったので 保護観察処分になっていて→
前科は残ってません。
しかし 雇い主にバレたら 職を失う可能性大だな。
それと もうひとつ。
灯油が撒かれる2日前→
楓さんは 顧問弁護士の事務所を 訪ねていました。
通常 人が弁護士と会う場合→
厄介事 もめ事の相談である場合が 多い。
つまり 彼女は なんらかのトラブルを→
抱えてる可能性がある。
「冠城くん 一日で大変な収穫です!」。
君 大丈夫ですか?
よかったら 何が気になってるのか 教えてもらえませんか?
銀婚式の招待状です。
僕は 彼女が 招待状をオーダーメイドした→
デザイン事務所を 訪ねたのですが…。
ご依頼がありましたのは 8月の初めでした。
はあ… そんなに早くからですか。 ええ。
記念になるものだからと 奥様は とても熱心で。
こちらが決定したサンプル。
こちらが納品したものです。
寸分違わぬ仕上がりですねぇ。
納品後 楓さんから 何か要望のようなものは?
いいえ 私どものほうには何も。
じゃあ 思ってたのと 違っていたというのは→
奥さんの嘘か?
ええ。 彼女は嘘をついた。 それも 家の中の人間に。
そして 招待状は2週間経った今も 出されていない。
もしかすると 彼女は もう 銀婚式のパーティーを→
やるつもりは ないのかもしれませんねぇ。
節目を祝うというのは 末永くという気持ちがあっての事。
まさか 旦那と別れる気だって事か?
理由は わかりませんがね。
彼女が弁護士を訪ねたのも その件かもしれませんね。
だとすれば 巧さんは 心中穏やかではないはずです。
彼の今の地位は 創業一族の娘婿だっていう事と→
無縁じゃないでしょうから。
彼女が勝手な事をする前に この世から消えてくれたら…!
ええ。 巧さんが楓さんの死を望む 動機が成立する。
という事は 坂道での車椅子の事故は…。
いえ これは全て→
楓さんが離婚を考えているという 仮定の上での話です。
えっ 楓がですか?
離婚の事を 考えているなんて→
全く知りませんでした。
妹は 自分の事は1人で決める 性分なので→
まあ わかりませんが。
仮に お二人が そういう事になれば→
巧さんの将来に 何か影響出たりしますか?
私のような創業一族の者が 代表を務めていると→
旧態依然の企業と 思われがちですが→
うちでは 仕事の能力とプライベートは→
全く切り離しています。
では 離婚は 巧さんの将来に なんら影響がない。
彼は有能で 組織に必要な人間ですから。
来年から 貴城アメリカの社長に 内定してましてね。
右京さん ひとつ聞いていいですか?
なんです?
どうして そう 瀬川巧さんに こだわるんです?
事故現場で初めて見た時 彼は 動揺した様子で→
警察官に事故の経緯を 説明していましたよね。
怪我を負った妻は半身不随ですよ。
普通ならば 救急車に同乗して 病院へ向かいませんかねぇ。
今日は 山荘に行ってたんだって?
やっと決心がついたわ。
あなたの提案どおりにしようって。
じゃあ あの山荘を売って→
海の近くに新しい別荘を買う事に 賛成してくれるんだね?
そのほうが あなたも釣りが楽しめるでしょ?
いやあ 海風は君の健康にだって いいはずだよ。
あの山荘には お小さい時分からの思い出も→
たくさん おありでしょうに…。
でも 古い調度を維持していくのも 年々 大変になるし→
いつかは手放さなければいけない と思っていたの。
お兄様は寂しがるでしょうけど 売却する前に→
写真を撮って お送りする事にするわ。
だったら 僕たちで あの山荘へ行って→
銀婚式用に買った ビデオカメラで→
映像に残しておくってのは どう?
お義兄さんも そのほうが喜ぶんじゃないかなあ。
そうね。 それがいいわね…。
≫こうせい 焼きそば出来たから→
お皿 持ってきて。
おや? 誰か来てるみたいだね。
今日は行楽日和だから。
少し早いけど→
セツさんのサンドイッチで お昼にしよう。
撮影は それから。 そうね。
じゃあ 行こうか。
13日 瀬川家に 銀婚式の招待状が届く。
17日 瀬川楓さん 顧問弁護士の事務所を訪ねる。
19日 瀬川家玄関前に 灯油が撒かれる。
27日 三田東不動坂で 瀬川楓さん 車椅子の事故が発生。
この出来事が 全部 繋がってると思いますか?
恐らく この順番で事が起こる 必然があった。
その必然の意味がわかれば→
次に何が起こるか わかるはずです。
まだ何か起こると 思ってるんですか?
≪ああっ… あっ! ≪
えっ…!?
≫
「この廊下が全部見えるように 撮ってくださいね」
「了解!」
「ここを売る事→
このビデオメッセージで お兄様にお伝えする事にするわ」
「きれいに撮ってくださいね」 「オーケー」
「いいよ しゃべって」
「お兄様。 今日は お兄様に→
ご報告しなければならない事が あります」
「いろいろ考えて この山荘を 売却する事にしました」
「子供の頃からの思い出が 詰まった…」
「」 「あっ 時計」
「ああっ…!」
「ああっ… あっ!」
「あっ… うわっ!」
ああ… こりゃ 自分でバランス崩して落ちてるな。
やっぱ 事故っすね。
なんで ここにいるんすか!?
あっ! 今の見てた!?
…のならば おわかりでしょうが これは間違いなく事故です。
無駄足 ご苦労さまでした。 失礼。
大丈夫ですか?
ええ…。
牧野さんも 一緒に いらしてたんですか?
えっ 知り合い? ちょっと。
その人は 家政婦に頼まれて→
奥さんの忘れ物を届けに来たんだ。
常備薬入りのピルケース。
何時頃 こちらに?
来たのは 瀬川さんが転落したあと。
こちらの ハイキングに来ていた 堺さんが見ていた。
どのような 状況だったのでしょう?
家族で バーベキューをしていたら…。
≪ああっ… あっ! ≪
どうしました? 大丈夫ですか?
人が階段から落ちて…。 すいませんが 救急車を…。
私は医師ですので。
じゃあ お願いします。 はい。
それで 私は 110番通報をして…。
瀬川巧さんが 階段から転落した時→
この山荘には 巧さんと奥さんの2人だけで→
その奥さんは 2階の廊下の奥にいた。
どう考えても 事故以外にないでしょう。
楓さん 柱時計が鳴った時→
巧さんは とても驚いていたようですが→
それは なぜでしょう?
あの柱時計は→
父が 晩年 眠りが浅くなって以来→
ずっと 鳴らないようにしていたんです。
もう一度 鳴らしてみよう という事になって…。
もう壊れているかもしれない と思っていたので→
私も きれいな音に驚いたんです。
あの… もういいですか?
ええ。 3人とも帰って結構ですよ。
堺さん ちょっとよろしいですか? はい。
最初に遺体をご覧になった時に→
何か おかしな点などは ありませんでしたか?
いえ 特には。
遺体そのものでなくても 何か不自然な事とか…。
そういえば ほんの少し 妙なにおいがしていました。
妙なにおい? ええ。
髪の毛の燃えたような 焦げ臭いにおいでした。
冠城くん!
たばこの焼け焦げです。
これ 新しいですね。
重要なお知らせとは なんでしょう?
瀬川巧さんの事故死の件→
嗅ぎ回ってると 聞いたものですから。
どうしようかな? 教えようかな?
これ かなり重要だと 思うんですよね。
奥さんの事ですし。
もったいつけて つまんない話だったら→
お前の恥だぞ。 じゃあ 知ってます?
この間 奥さん 車椅子に乗ってて 坂道で死にかけたって話。
右京さん 飯 行きましょうか。 僕は そばがいいですねぇ。
あれあれ? いいのかな? これ見なくて。
通行人がスマホで撮って ネットに上げてたんですよ。
楓さんの顔 アップに出来ますか?
出来ますよ。
「怪我してるんです。 意識はあります。 大至急…」
奥さんは 旦那の殺意に気づいていた?
動画には映っていませんでしたが→
彼女が見つめていたのは 大破した車椅子でした。
あのまま車椅子に乗っていたら 自分は間違いなく死んでいた。
そして 夫は それを望んでいた。
そう悟ったからこそ 彼女は…。
しかし もしそうなら→
彼女は なぜ お前さんたちに 助けを求めなかったんだ?
大体 離婚しても→
旦那には なんのデメリットも なかったんだろ?
それじゃあ 奥さん殺す動機がないじゃない。
何? 何? このアップリケが どうしたの?
ちょ… えっ?
待ってたんですよ。
誰か二人きりで 別れを言いたい人が→
来るんじゃないかと思って。
巧さんの秘書の片岡美加さん。
杉下です。
巧さんには愛人がいました。 秘書の片岡美加さん。
妊娠3カ月だそうです。
ただ 妊娠の事は 巧さん以外 誰にも話してないから→
楓さんが知ってるはずがないと 言ってます。
彼女には 会った事もないそうです。
片岡美加さんに ひとつ 確認してもらいたい事があります。
わかりました。
ああ それから→
伊丹さんと芹沢さんも 山荘に連れてきてください。
嘘!? じゃあ これ 殺人だったんだ。
いや 仮に今 警部殿が おっしゃったとおりだとして→
それを どうやって証明するんですか?
瀬川巧さんが亡くなった日に→
この山荘に残されていた 吸い殻です。 15本あります。
フィルターのDNAを調べれば→
この中のひとつから 必ず 楓さんのDNAが出るはずです。
しかし あの日 たまたま気が向いて→
たばこを吸ったって言われたら それまでですよ。
問題は いつ吸ったかです。
巧さんが転落する瞬間まで 撮影していた動画の中では→
楓さんは口紅をしていました。
しかし その後の彼女は 口紅をしていませんでした。
吸い殻には いずれも口紅の跡はありません。
そして 巧さんの転落後 すぐに駆けつけた堺さんは→
楓さんが たばこを吸うのを 見ていない。
つまり 楓さんが たばこを吸っていたのは→
巧さんが転落したあと 堺さんが駆けつけるまでの間→
という事になります。
普段は たばこを吸わない楓さんが たばこを持っており→
なぜ そんなタイミングで 吸ったのか→
少なくとも 事情聴取は可能だと思いますよ。
実は 悪い知らせなんですけど→
お兄さんの話では→
彼女は 明日 葬儀が済み次第 日本を離れるそうです。
明日!? いやいや いやいや いやいやいや→
DNA鑑定してもらうには→
順番を待たなきゃ ならないんですよ。
おまけに 吸い殻は15本もあるし。
彼女が逃亡する気なら 間に合いませんよ。
犯行の手口は その人間の内面を映し出します。
彼女は 実に大胆で冷静です。
逃げ切れると考えれば こちらを安心させるために→
DNAサンプルの提供に 応じるかもしれません。
それで どうやって間に合わせます?
被疑者に 海外逃亡の恐れありとして→
捜査一課から 最優先で申請を出してもらいます。
他に方法はありません。
彼女が予約したの 午後のニューヨーク便ですよね?
もう時間ないっすよ。 わかってるから→
お前 少しは落ち着け! はい。
杉下です。
「たった今 結果が出ました」
「吸い殻のDNAは→
いずれも 楓さんのものと 一致しませんでした」
それ 間違いないんですか?
「ああ。 彼女のDNAは出なかったんだ」
伊丹さん もうひとつ 調べてもらいたい事があります。
杉下さん…。
お別れを言いに 来てくださったの?
飛行機に乗るおつもりなら→
このキャリーケースは ご自分で運ぶ事になります。
ええ。 牧野くんは 今 署のほうに来てもらっています。
山荘にあった吸い殻のひとつに なぜ 彼の指紋がついていたのか。
指紋は いつ ついたのか。
彼は 一切 黙秘しています。
彼は 瀬川の死とは無関係です。
ええ それを証明出来るのは→
あなただけだと ご存じのはずですよ。
奥様 お迎えのお車が参りましたが…。
車を帰してちょうだい。
もしかしたら こんな日が来るかもしれないと→
思っていました。
銀婚式の招待状 それが宅配便で届いた夜→
全てが始まったのですね?
8時過ぎ 招待状が届くのを 心待ちにしていたあなたは→
注文どおりの招待状が 届いたにもかかわらず→
思っていたのと違っていたと 嘘をついた。
その10分足らずの間に→
あなたに何かが起こったのだと 思いました。
僕は あの夜の出来事を 片岡美加さんに確かめてみました。
午前中に 病院で妊娠を確認した美加さんは→
その事実を まだ 巧さんに伝えていなかった。
運転手と楽しげに 銀婚式の話をする巧さんが→
たまらなかったそうです。
それじゃあ。
ごめんなさい。 書類を渡し忘れたわ。
巧さん! 待って。
はい。
「子供が出来たの」
彼女は 巧さんに妊娠の事実を告げ→
5年越しの自分たちの関係を あなたに話すように迫った。
「わかった。 全て僕に任せてくれ」
思っていたのと 違っていたものだから…。
その言葉は 事実を知った衝撃で→
混乱した あなたの胸の内 そのままだった。
瀬川が 子供がいる人生を 望んでいるなら→
私に止める事は出来ない。
落馬の事で 瀬川は→
責任を感じて 苦しんできたんだとも思いました。
それで あなたは 黙って弁護士事務所を訪ねて→
離婚の手続きを始めたのですね?
愛情がなくなった相手に しがみつくのは 惨めですから。
ところが 2週間近く経っても→
巧さんからは 離婚に関して なんの話もなかった。
そんな必要ないのに 彼なりに 出来るだけ→
私を傷つけない切り出し方を 考えているんだと思いました。
しかし あなたは→
思いもよらぬ 巧さんの殺意を知った。
車椅子は細工されていた。
ええ。 でも それよりも…。
坂を下り始める前→
私 どうしてだか 急に眠たくなって…。
なんとか助かって 壊れた車椅子を見た時→
突然 思い出したんです。
あの時も全く同じだったと。
同じように 突然 意識がもうろうとした。
ずっと 暑さのせいばかりだと思っていた。
でも そうではなかった。
瀬川は 駆け落ちした私とではなく→
創業家の娘である私と 結婚がしたかったんです。
どんな事をしてでも。
そして 今度は 別れるだけではなく→
私が相続した遺産も 手に入れたがっていた。
お前は 瀬川楓の夫殺しを手伝った。
目的は金か?
正直に言え!
俺が… 全部やったんです。
あの人は関係ない。
そうじゃないだろ。
坂道の一件で 君は→
車椅子に細工されてたんじゃ ないかと疑った。
自分以外に それが可能なのは 巧さんだけだと気づいた。
あの日 山荘へ行ったのも→
楓さんと巧さんを 二人きりにさせるのが→
心配だったから。
だから こっそり 彼女のバッグからピルケースを抜いて→
あとを追う口実を作った。
なんで そこまで…?
楓さんは 君の少年時代の前歴を 知ってたんじゃないのか?
あの人は そんな事 気にしなくていいって言ったんだ。
俺の事 立派な介護士だって。
牧野くんは何も知らなかった。
何もかも 私一人で考えた事です。
ええ。 あなたは あらかじめ山荘を訪れて→
全ての準備を整えた。
そして 巧さんが撮影する映像が→
事故を証明するものになるように 仕組んだ。
あなたは 廊下全体を撮るように頼んで→
巧さんを あのラグの上に立たせた。
了解!
それから 廊下の奥で ビデオメッセージを話し始めた。
巧さんは 自然と あなたの顔にズームして→
カメラを見ている彼には あなたの手元が見えなくなる。
そうしておいて…。
あなたが使ったのは 恐らく 巧さんの趣味の釣り道具。
フックには 強度のあるテグスが結ばれ→
もう一方の端は やはり フックでラグに留めてあった。
あなたは カメラに語りかけながら 1階で柱時計が鳴るのを待った。
もちろん 時計が鳴るようにしてある事は→
巧さんには話していなかった。
そして 鳴らないはずの時計が鳴り…。
あっ 時計。
後始末をする時間は 十分あるはずでした。
ラグに残った犯行の痕跡は→
たばこの焼け焦げで 隠すつもりだった。
そうすれば 巧さんが誤って→
焼け焦げを作ったのだろうと 思って 誰も怪しまない。
牧野くんが来るなんて 思ってもみなかった。
≫どうしました? 大丈夫ですか?
彼は あなたの役に 立ちたかったのだと思いますよ。
巻き込んでしまった以上→
私は 彼を置いていく事が出来ない。
そう確信していらしたのね?
あなたは そういう人ですから。
たばこの吸い殻なんて 誰も気にしないと思っていました。
僕自身 堺さんから 転落直後に→
何か焦げ臭いにおいがすると 聞かなければ→
気にも留めなかったかも しれません。
もうひとつ。
巧さんの殺意に気づいた時 なぜ 話してくれなかったのですか?
あの時に話してくれていれば→
その後の全てが 変わっていたはずです。
私は 自分が何をしたのか わかっています。
愚かだと思われるでしょうけど→
25年間 ずっと信じてきた愛情を→
法律で 裁いてほしくなかったんです。
見当はついてたと思いますが→
灯油を撒いたの 片岡美加さんです。
すいませんでしたと 伝えてほしいと言ってました。
そう。
楓さん。
美加さんさえいなければと 思った事ありませんか?
これは瀬川と私の問題でしたから。
それに その人が瀬川の事を 本当に愛しているのなら→
彼の事を失う以上に 悲しい事はないでしょう。
私には もう 悲しむものもない。
それでも→
あなたの行為を悲しむ人は いると思いますがね。
ああ…。
いらっしゃいませ! いつも全力投球って感じで→
すがすがしいんですよ。 殺したのは俺じゃない。
ケンちゃんには いくつか 不思議な事がありますねぇ。
めったにない逸材だと。 ケンちゃん 一体 何者なんだ…。
この手のひらに書かれた文字は…。 ダイイングメッセージ。
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≫こんばんは。
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