All language subtitles for 九月の恋と出会うまで.2019.WEBRip.Amazon.ja-jp[sdh]

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Original subtitles

(平野進(ひらの すすむ))物語は… その恋を見つけた日から始まる

(シャッター音)

(北村志織(きたむら しおり))フフッ

(男の子)ごめん

(女の子)うん…

(志織)あっ 危ないよ

あっ うーんと… 大丈夫 お姉ちゃん 取ってあげるから

(平野)しかし—

時間が巻き戻ることは ないのだ

(男の子)大丈夫? お姉ちゃん (志織)わあ びっくりした

大丈夫 ハハハハッ

(平野)だからこそ 美しく…

私は 今 深い悲しみの淵(ふち)にいる

(プリンターの印刷音)

(チェロの音色)

ん?

(チェロの音色)

(権藤(ごんどう))おお ハッ (一同の拍手)

(権藤)いやいやいやいや…

こんにちは

あっ 北村さん こんにちは

(倉(くら))おっ 君か

(志織)え?

B棟4号室の倉です よろしく

あっ 2Bに引っ越してきました 北村志織です

よろしくお願いします

北村さんは… えっ 何してる人?

はい?

(祖父江(そぶえ))ちょっと… こ〜れ

あっ すいません ハハッ

彼女はね 4Aの祖父江さん

なんで あんたが紹介すんのよ

(倉)美人でしょ〜? もお〜 アッハハッ

彼女はね 女優さんなの

(祖父江)…って いっても 小さい劇団のね 今度 観にきて

はい よろしくお願いします

ハア〜 これで 2階も埋まっちゃったかあ

え?

(祖父江)私 あなたの入った部屋に 越したいって言ったのよ

風通しも 日当たりも よさそうだし

でも オーナーから 却下されちゃって

そうなんですよ

ここではね 部屋を変えんのはね お断りしてんです

死んだ女房がね 口癖のように言ってましてね

“部屋が人を選ぶのよ 人が部屋を選ぶんじゃない”って

(祖父江)そう言われたら 何も言えないわあ

(門が開く音)

あっ 平野君 ねえねえ

2Bに越してきた 北村さん

(志織)あっ 隣に越してきました 北村です

よろしくお願いします

(倉)え? えっ 平野君

(倉)え… 平野お?

(祖父江)うわ 何あれ…

(倉)平野君って 何してる人でしたっけ?

卵

(倉)た ま ご?

(香穂(かほ))何か 変わった人ばっかり

(香穂)住んでそうですね (志織)うん

他にも 漫画家さんとか彫刻家とか

あっ 元々 オーナーさんも 画家らしくて

パリのサロンみたいに してきたみたい

サロン? あっ ネイル?

芸術家たちが集うほう

そういう人たちばっかり 住んでるっぽいの

へ〜? へっ 先輩は?

芸術って 何かしてましたっけ?

私は 趣味で 写真やってるだけだけど

写真…

芸術か… なるほどなあ

“なるほどなあ”って何?

いや 私… 女子力 高めつつ いろいろ 研究中で

なんっとかして 誕生日までに 彼氏 作りたいんですよね

ほら 女子は やっぱり 恋をしないと

(男の客と女の客)すいませーん

(志織と香穂)あっ いらっしゃいませ

(志織)うん…

ハア…

(CDの音楽) (志織)よいしょ…

(時計の針が動く音)

(途切れ途切れになる音楽)

(音楽が切れる音)

(風の音)

(CDの音楽)

(平野)…村さん

え?

え?

(平野)北村さん

(志織)はっ

(平野)北村志織さんですか?

奇跡だ

え?

(平野)よかった…

(志織)あの…

(平野)ホントに よかった

(志織)えっと どちらさま… ですか?

(平野)平野です

シ… ん? シ… シラノさん?

(平野)違います ひ… ひらの 平野です

平野さん? え… あの 2Aの平野さん?

(平野)はい… はい そうです 2Aの平野です

(志織)あの… えっ どこから 話してるんですか? これ…

エアコンの穴が つながってるってこと?

え… そんなわけないですよね?

(平野)そちらは 今 何年ですか?

(志織)はい?

(平野)何年か 教えてください

(志織)2018年ですけど…

(平野)2018年の… 何月何日の何曜日ですか?

9月14日の… 金曜日です

(平野)間に合った

は? ちょっと… 一体 何なんですか? これ

(平野)こちらは 2019年

1年後の未来です

あっ いや… 何を言ってるんですか?

(平野)信じられないかも しれませんが

このエアコンの穴が 時間を隔てて

僕の部屋と 北村さんの部屋を つないでいるんです

そんなこと あるわけないじゃないですか

(平野)あるんですよ

あるわけないことが 今 起きてるんです

え…

(平野)北村さん 聞いてますか?

(平野)北村さん 聞いてますか?

(志織) あ… はい

(志織) あ… はい

このことは…

他の人には 言わないでください

特に… そちらの僕には 絶対に

いや 言えるわけ ないじゃないですか

こんなこと 話したら 頭のおかしい人だって思われます

一体 何なんですか? これホントに…

(平野)助けてほしいんです

はあ?

(平野)お願いします

だって… 1年後の未来からなんて

そんなの 絶対 信じられませんよ

(平野)そうですよね

でも 信じてもらわないと 何も始まらない

明日は 大きな雹(ひょう)が降ります

東京は 豊島(としま)区と葛飾(かつしか)区で積もります

(アナウンサー) 1週間続いた真夏日から一転

(アナウンサー) 1週間続いた真夏日から一転

(香穂)ヤバッ 先輩 あれ…

(香穂)ヤバッ 先輩 あれ…

(香穂)ヤバッ 先輩 あれ…

都心で雹が降りました

都心で雹が降りました

(志織)ん?

(志織)ん?

関東地方では 大気の状態が 非常に不安定なため

関東地方では 大気の状態が 非常に不安定なため

池袋(いけぶくろ)など 都内の各地では 昼前に 雹が観測されました

気象庁によりますと…

気象庁によりますと…

えっ

気象庁によりますと…

(風の音)

(平野)もしもし

そこにいますか?

あっ いま… す

(平野)よかった… また 今日も話せました

どうでしたか? 雹は

降りました

(平野)じゃあ…

あ… でも 天気を予想しただけだし

詳しい人になら 誰にでも できますよね

(平野)タレントのAIRI(あいり)と—

プロ野球の高城信之(たかしろ のぶゆき)選手が 結婚発表して ニュースになります

史上最年少プロ棋士が 竜王(りゅうおう)戦でタイトルを獲得します

女子レスリングの小笠原舞(おがさわら まい)が 逆転で金メダルをとります

どうでした?

これで… 信じてもらえますか?

北村さん?

信じるしか… ないと思ってます

(平野)よかった

それで その… 助けるっていうのは?

(平野) 尾行をしてもらいたいんです

尾行?

(平野)はい 僕 つまり そちらの 平野のことを…

無理です 尾行なんて

…っていうか なんで 過去の自分の尾行なんですか?

(平野)それは…

今は 話せません

ちょっと 待ってください

理由も分からないのに そんなことできませんよ

助けるって…

何か 事件に 巻き込まれるんですか?

(平野)危険な目に遭うことは 絶対にありません

北村さん どうか… どうか 僕を助けてください

理由は しかるべき時がきたら 必ず お話ししますから

お願いします

せっかくの 休みなのに

なんで こんなこと 引き受けちゃったかな

来たっ

(平野) 僕は 13時半には営業に出ます

(シャッター音)

(シャッター音)

(平野)尾行している最中は 可能な限り 写真を撮ってください

普通に止まってよ もう…

会社を出て 電車に乗って

駅前のコンビニで買い物

最後に郵便物を入れて ポストにお辞儀

以上です 特に 何もありませんでしたけど

(平野)そうやって 改めて聞くと つまらない男ですね 僕も…

どうして 自分の尾行なんですか?

(平野)すいません 理由はまだ…

そんな… 私だって暇なわけじゃ…

(平野)分かっています

でも 北村さんにしか お願いできないんです

僕を助けると思って 明日も お願いします

(志織)今日は 寝ぐせ頭で本を探す

(女子高生1)行こ〜 (女子高生2)じゃ 行こっ…

あっ

自分が 落としたわけじゃないのに…

(平野)お願いします

フッ

おっちょこちょい

フッ

おっ

(香穂)先輩

駅前にできた ワインバー ちょこっと 寄ってみません?

あ… ごめん 約束あって…

怪しいなあ

あ… 違うの ちょっと 頼み事されちゃってさ

人助け的な?

ふ〜ん

(志織)今日も 寝ぐせ頭でお仕事中

フッ

(商談相手)じゃあ 引き続きよろしくお願いします

(シャッター音)

(志織)ハハハハッ

(平野)そんなに 笑わなくたっていいじゃないですか

(志織)だって こんなに おっきなパフェ 1人で食べるなんて

何か もう… かわいくて

(平野)男だって 甘いものを 思い切り食べたくなる日もあるんです

(志織)ウフフッ フフッ

(平野)恥ずかしいなあ… もう

(平野)恥ずかしいなあ… もう

(志織)フフッ

尾行も考えもんですね

でも…

北村さんが 笑ってくれるだけで 何だか とても うれしいです

もし 僕と北村さんが 会うことができたら

お礼に 街で1番のレストランで ごちそう させてくれませんか?

え?

(平野)時間の壁が厄介ですけど

いつか… 必ず

はい

(香穂)先輩?

先輩

どうしたんですか? 遠くを見つめちゃったりなんかして…

あ… ううん 何でもない ごめん

男だな

そんなわけないでしょ

あっ まさか あの元彼?

再会したとかですか?

それとも 何? はっ 新しい… 恋?

違うってば ホントに 何でもないから

怪しい 最近 会社終わると すーぐ 帰っちゃうし

怪しすぎ …ってか 羨ましすぎー

分かったから ほら 仕事する 仕事

この仕事は バイト代 出ないのかしら

未来から 振り込みで

それにしても 今日もまた派手な…

いい目印になるけど

あれ?

(たたく音)

(電車の走行音)

(志織)わっ!

(祖父江)ごめん そんな 脅かすつもりなかったんだけど

(志織)祖父江さん…

あっ ちょっと 聞いてもいいですか?

ん?

あの… 平野さんって どんな方なんですか?

どうかしたの?

あっ いえ… まだ ちゃんと ご挨拶できてなかったなと思って

(祖父江)ああ…

でも あんまり 関わらないほうがいいのかも

え?

(祖父江) 倉さんから聞いた話だから

どこまで ホントか 分かんないんだけどね

(見ちゃったんだって)

見ちゃった?

(祖父江)部屋の中で 振り回してたんだって

包丁を

(志織)包丁?

(祖父江)怖いよねえ

振り回しては 首をかしげて

何かを 考え込んでる 雰囲気だったって

真面目そうに見えるけど

何 考えてんのか 分かんないキャラだし

気を付けたほうがいいのかも

(時計の針が動く音)

(風の音)

(平野)もしもし

北村さん 今日はどうでしたか?

誰なんですか? あなた

(平野)え?

どうして 自分の尾行なんですか?

あなた 平野さんじゃないでしょ

尾行の目的は 何なんですか?

(平野)どうしたんですか? いきなり…

見たんです 私…

どうして 自分の尾行をさせるのか 今すぐ 全部 説明してください

(平野)それは…

言えないんですか?

(平野)はい 今は まだ…

だったら これ以上 何もできません

(平野)ちょっと 待って ちょっと 待ってください

だって 当たりまえでしょ

(平野)明日

え?

(平野)明日が終わったら すべて お話しします

だから どうか あと1日だけ

9月27日は 一日中 僕を尾行してください

明日…

終わったら…

尾行の理由を 全部 教えてくれるんですね?

(平野)はい お約束します

だから どうか 明日まで…

どうか 最後まで 僕を助けると思って お願いします

(志織)ハア… 最悪

あっ

ハア…

遅いなあ

来たっ

ハア…

(時計の針が動く音)

(風の音)

何? 今の

(せき込み)

ハア… 最悪だ

え?

(鍵が開く音)

(鍵を抜く音)

何これ

(人々のざわめき)

(住人1)おお お疲れさま (住人2)何かあったの?

(住人1)空き巣だね 空き巣 (住人2)空き巣?

(警察官1)ピッキングの 痕跡があったので おそらく犯人は—

ここんとこ 何件か連続してる 空き巣と同一犯だと思われます

何か 気が付いたことがあったら すぐに 署のほうへ連絡もらえますか

分かりました

(警察官1)では

(ドアが閉まる音)

ねえ… そこにいないんですか?

ちゃんと やりましたけど

なんで?

なんで エアコン つけちゃったんですか?

えっ え?

あっ あの… 何か問題ですか?

え? 声が違う…

あの…

あっ ごめんなさい あの… 気にしないでください

え… どういうこと?

ハア…

(平野)んーん?

(志織)はい

あ… すいません 2Aの平野ですけど…

(インターホンが切れる音)

(開錠する音)

あ… すいません 平野です 2Aの あのお…

何ていうか…

全く 音がしないっていうことは ないと思うんですけど

“なんでつけちゃったんですか?” って言うほどの…

え? 北村さん?

ああ すいません あの…

風邪ひいちゃったみたい

(平野)あっ

え?

えっ

北村さん?

え…

ハア…

(失礼します)

うわっ え?

何してるんですか?

あっ 勝手に すみません あの… 失礼します

え?

あの 簡潔に結論だけ 言っておきたいんですけど

あなたは 不用心過ぎます

はい?

(平野)男性に対して チェーンもかけずにドアを開けるし

そもそも そんなに 風邪ひいて熱があるのに

室内とはいえ 薄着ですし

とにかく 僕が帰ったら チェーンをきちんとかけて

ここにあるもので 何か 栄養をとって

服を着て しっかり寝てください

あと エアコンの苦情に関しては また受け付けますんで

では 失礼します

(ドアが閉まる音)

(志織)あ…

(志織)あの! (平野)わっ わっ わあっ

ああっ あっ うわあっ

ごめんなさい そんな 驚かせるつもりじゃ…

(平野)あっ いえ…

えっと あの… また エアコンの件ですか?

いえ 違います

あの 昨日は ありがとうございました

あっ それと いろいろしていただいたのに

すみませんでした

あ… いえ こちらこそ 病人相手に

キツい言い方をしてしまって すいませんでした

風邪は もう よくなられたんですか?

はい 一晩ですっかり

あ… これ いろいろ 買ってきていただいた分の—

(志織)お金 (平野)ああ… 大丈夫です

よくなられて よかったです それじゃあ 失礼します

あ… あの

あの 私…

未来の あなたと話したんです

そこから 聞こえてきたんです

信じられないと思うんですけど ホントに そこから

それで 僕がエアコンを つけたせいで

声が聞こえなくなった… と?

本当に すみません

信じられないですよね こんな話 普通に考えたら

信じますよ 僕は

え?

あなたは ウソをつくような人じゃない

平野さん?

あ… いや 印象の話ですよ あくまで 人物の印象としての

タイムスリップについては 今まで 何度も調べたことがあります

世界には タイムトラベラーの目撃情報や

記事が たくさん 存在してる

はあ…

あっ いや… 実は 僕 こういう話が嫌いじゃなくて

というより 大好物でして

ただ… 仮に その声の主(あるじ)が 言うとおり

本当に 彼が未来から 話しかけていたとするなら…

するなら?

彼は ウソつきだと思います

え… どうしてですか?

(平野)まず…

未来の平野 えっと ややこしいので…

今 伺ったお話から シラノとしましょう

シラノは… 僕じゃないと思います

それは 何となく 私も そう思いました

(平野)それに

自分の部屋から 話しかけていたっていうのも

シラノのウソでしょう

今ま 僕が調べた タイムトラベルの事例から考えても

時間がずれるんだとしたら… ここ

つまり 同じ場所で ずれるのが自然です

つまり シラノは 未来のこの部屋から

過去の北村さんの この部屋に話しかけてた

え… それって 1年後

私は この部屋に 住んでないってことですか?

だって 引っ越してきた ばっかりですよ?

1年後も 絶対に 住んでると思うんですけど

(平野)うーん…

それで シラノは 何て言ってたんですか?

助けてほしいって…

だから 過去の自分を尾行してほしいって

尾行?

あ… だって 仕方なかったんです

どうしても 助けてほしいって 言われたら 無視できなくて

明日で最後ですからって 昨日も… 1日中

信じられない

すいません

あの…

あ… もし 平野さんが その…

犯罪を犯すほど 思いつめているとしたら…

犯罪?

一体 何の話ですか?

これは…

(ドアチャイム)

はい

(警察官1)警察ですが

(開錠する音)

(警察官1)どうも

夜分 すいません 空き巣の件で

(警察官2)あの… あちらの方は?

(祖父江)真面目そうに見えるけど

何 考えてるのか 分かんないキャラだし

気を付けたほうが いいのかも

あ… お隣の方です たまたま 話があって

(警察官2)あ… そうですか

(警察官2)犯人…

先ほど 逮捕されましたよ

え? あ… 犯人 あ… よかった

実は ただの空き巣だと 思ったんですが 捕まえてみたら

強盗殺人で 逃走中の犯人だったんですよ

え?

(警察官2) ニュースに なってたでしょ?

侵入したとこに出くわした主婦を 刺して逃げたっていう…

(警察官1)おい

供述によると—

ここには 15時に侵入したようですから

その時 家にいらっしゃらなくて ホントによかったですよ

現金3万円の他に

何か 盗まれたものは ありませんでしたか?

あ… はい

(警察官1)そうですか

では… 夜分 失礼しました

(平野)空き巣って 北村さんの部屋だったんですね

変な言い方になったら すいません でも

3万円だけで済んで よかったっていうか

巻き込まれなくて よかったです

はい

この写真は…

いい歳して 恥ずかしいんですけど

実は僕… 小説家を目指してまして

あの ホントに ただ 目指してるっていうだけで

皆さんみたいに 芸術家だったりしないんですけど

小説家…

(平野)はい 今—

犯罪を扱った SF小説を書いてまして

自分で 凶器の 検証をしてみたりして

ああ… そうだったんですか

まさか 尾行までされて

写真まで 撮られるとは 思ってませんでしたけど

(志織)ホントに ごめんなさい (平野)いや 大丈夫です

これも 小説のネタになりそうな 感じですし

お疲れですよね

風邪ひいて 尾行に 空き巣に 警察まで来て

話は また 今度にして 今日は もう 帰りますね

あ… はい

何か すみません

(平野)いえ では

ただ…

そうですね

刑事さんの話を聞いてて 感じたっていうか…

これは 僕の 勝手な想像で あくまで 憶測なんですけど

何ですか?

尾行には 意味があったんじゃないでしょうか

意味?

シラノは 北村さんに

ただ 部屋にいてほしくなかった だけなんじゃないでしょうか

北村さんが もし 部屋にいたら

強盗に遭って 殺されてしまうことを知っていて

だから 部屋にいさせないために

尾行を…

でも それだったら 始めから そう 言えばいいんじゃないですか

確かに そうかもしれません

でも… いきなり 未来人と名乗る男が—

“この日 部屋にいると 殺されます”なんて 言われて…

信じられますか?

それは 確かに…

事件に遭ってしまった過去を 変えたいと思った 誰かが

1年後の未来のこの部屋から

僕の名前をかたり 北村さんに話しかけた

そう仮定すると すべてが しっくりきます

その誰か…

シラノは 過去を変えて

北村さんの命を救うことに 成功した

つまり 未来は修正されて 北村さんは 今 こうして生きてる

だから タイムリープの必要性は なくなり

声も聞こえなくなった

あ… あくまで 憶測です

まだ 病み上がりですもんね

ゆっくり 休まれてください おやすみなさい

おやすみなさい

(ドアが開く音)

(ドアが閉まる音)

(権藤)ああ おかえりなさい

こんにちは

怖い思いをさせちゃって 申し訳なかったですね

最新の物と 変えときましたから

ありがとうございます

時間に身をまかせてください

え?

(権藤) 時と共に 自然に忘れるように

犯人は捕まりました

もう このようなことは 二度と起きません

はい

(権藤)あっ そう… 孫が急に帰国することになりまして

もう 空き部屋はないぞって 言ったんですけどね

何かうちに しばらく居候することになりまして

(志織)お孫さんが… (権藤)ええ

年の頃は 北村さんと一緒ぐらいかな

まあ 芸術には あんまり 興味ないようですけど

明るいやつです 紹介しますよ 番犬ぐらいにはなるでしょう

(志織)ハハッ 番犬 (権藤)ハハッ

ハア…

(ドアチャイム)

あ… はい

(平野)どうぞ

(志織)お邪魔します

(平野)すいません 散らかってて

(志織)いえ…

どうぞ

実は どうしても もう1つ お話ししたいことがあって

整理してたら 徹夜になっちゃって 会社も休んじゃったんですけど

え?

体調は大丈夫ですか? 今日は

あ… はい

よかった ここ 座ってください

(志織)あ… はい

タイムパラドックス?

(平野)タイムトラベルを することによって—

生じてしまう 矛盾のことです

“親殺しのパラドックス”っていう 有名な話があって

ある人物が—

自分が生まれる前の世界に戻って 自分の親を殺すとします

タイムトラベラーが 自分の親を殺すと

自分は 生まれることができなくなる

しかし 自分が生まれないと タイムトラベルができずに

今度は 自分の親を 殺すことができなくなる

ここに 矛盾が生じる これが タイムパラドックスです

えっと…

シラノは—

北村さんが 強盗犯に 殺されてしまった過去を変えようと

北村さんが 強盗犯に 殺されてしまった過去を変えようと

(強盗)ああっ (志織)キャア!

(強盗)ああっ (志織)キャア!

(強盗)ああっ (志織)キャア!

2019年の未来から 1年前の9月

2019年の未来から 1年前の9月

つまり 過去の北村さんに話しかけた

(シラノ)北村志織さんですか?

(平野)そして 北村さんは 助かったわけですが このまま

北村さんが 生き続けていると

来年 2019年の 9月27日になった時には

今度は シラノには 北村さんを助ける理由がない

つまり…

タイムパラドックス 矛盾が生じてる

ん? そうなると どうなっちゃうんですか?

大きく分けると 3つの説があります

まず… 1つめは…

“ループ説”

どこかの時間に 何度も戻り 矛盾を繰り返してしまうパターン

2つめは…

“パラレルワールド”

北村さんが殺された世界と 殺されなかった世界が

別々に同時に 存在してしまうというパターン

そして…

一番最悪なのが… 3つめの説

“歴史の修正”

歴史の修正?

本来の歴史の流れを 守ろうとする力が働いて

北村さんの存在そのものが この世界から 消し去られてしまう

周りの人間たちの記憶も すべて 消える

周りの人間たちの記憶も すべて 消える

(香穂)出発日が 10月6日の…

(香穂)出発日が 10月6日の…

つまり… 北村さんは—

歴史上 存在しなかった人物に されてしまう

あ… そんな…

でも 1つだけ

それを 回避する方法が 1つだけあります

え?

つじつまを 合わせてしまえばいいんです

矛盾が始まるのは 来年

2019年の9月27日です

それまでの間に シラノを探し出して

もう一度 1年前の北村さんを 助けてもらえばいい

タイムリミットは 2019年の9月27日です

北村さんが—

シラノに 一番最初に 話かけられたのは 何日ですか?

9月の… 14日

(平野)9月の14日 2週間前か

シラノと話した内容を できるだけ思い出しておいてください

正確に再現しないと 北村さんは—

もう一度 殺されるか 存在ごと 消し去られてしまう

(志織)おはようございます (平野)おはようございます

あれ 今日は早いですね

ああ… はい

いろいろ 考えてたら 全然 眠れなくて…

ですよね 心配ですよね

タイムパラドックスを調べてたら 小説が出てきて

死ぬはずだった主人公が 生きてることで

代わりに 身近な人が不幸になる みたいな内容で

確かに 過去を 塗り替えたっていうことは

運命に 逆らったってことだから 何かしら 不具合っていうか…

予測だにしない未来が 生まれてしまう可能性はあります

そうなんですね

でも 悲しい話ばっかりじゃ ないんですよ

例えば 事故で死んだ母親を 助けるために

主人公が何度も タイムリープを繰り返して

最後には 誰も不幸にせず 母親も救えるっていう

恥ずかしいぐらいの ハッピーエンドだってあります

ハッピーエンド?

はい でも それは小説で…

ハア… 僕が書いたんですけど…

え… 平野さんが?

はい… あの 北村さんに 今 起きているのは現実で

小説なのは分かってます あの でも その…

前例がないっていうか

いや 何か すごく 恥ずかしくなってきました

それに これは 小説大賞に落選した ただの駄作なんです

いえ い… 今のは 聞かなかったことにしてください

ハハッ 無理ですよ もう聞いちゃいましたもん

とにかく シラノのことは 僕も 一緒に捜しますから

どうして 平野さん 会社休んだりしてまで そんなに

だって… 殺人があったマンションに

住みたくないっていうか… それに

小説のネタに なりそうだなっていうのも

それは 失礼なんですけど とにかく これは—

僕のためなんです

ありがとうございます

心当たりは ありませんか? 北村さんを思う一心で

過去を変えてしまえるほど

北村さんを助けたいと 思っている人

シラノが誰なのか

えっ

わっ わっ イヤッ

先輩?

どうしたんですか? 急にまた…

ううん ごめん ごめん

(平野) 過去を塗り替えたってことは

運命に逆らったってことだから 何かしら 不具合というか…

予測だにしない 未来が 生まれてしまう可能性はあります

香穂さ…

何か 最近 身の回りで 変わったこととか起きてない?

彼氏ですか?

できてませんよ てか 紹介してください

いや そうじゃなくてさ 他に おかしなこと

最近…

先輩の様子が おかしいことくらいです

いや そんなことないよ ごめん

(香穂)う〜…

意外とお高いですねえ ここ OLのランチには だいぶ

彼氏とディナーにくるなら ステキなレストランですけどね

(シラノ)もし 僕と北村さんが 会うことができたら

お礼に 街で1番のレストランで ごちそう させてくれませんか?

(志織)街で1番のレストラン?

(森秋真一(もりあき しんいち)) そう いつか そのレストランに

志織を連れていきたいんだ

うん

OK?

じゃあ 約束な

(志織)うん

(ドアチャイム)

(平野)あ…

すいません あ… お食事中でした?

大丈夫です

北村さん もし ご飯まだでしたら これから 一緒にどうですか?

えっ

作りすぎちゃって

(志織)あ… あっ いいんですか?

ぜひ

じゃあ

(平野)どうぞ

(志織)お邪魔します

いただきます

(平野)どうぞ

おいしい

よかったです 自分で誘っておきながら

お口に合うかどうか 心配になってました

(志織)んっ あ…

ちゃんと お礼 言えてなかったですけど

あの おかゆも すごい おいしくて 全部 ぺろっと食べちゃいました

よかった 一人暮らし長いんで

料理の腕だけは 上がっちゃったんですかね

小説書く腕は 全然 上がらないんですけど

今度 読ませてくださいね 平野さんの小説

あ… いやいやいやいやいや

あ… いやいやいやいやいや

(志織)ん?

(志織)ん?

(志織)ん?

それは 恥ずかしいんで やめてください

それは 恥ずかしいんで やめてください

僕の小説なんて もう…

僕の小説なんて もう…

フッ

とんでもないです それはもう とんでもなさすぎます

そんなことより 北村さん

何か 思いつかれたんですか? シラノのこと

あ… そのために来たのに 思わず忘れるところでした

誰か 思い当たる人が?

1人だけ

もしかしたらって人を 思い出して

誰ですか?

大学の時に 付き合ってた人がいて

彼に“街1番のレストランで ごちそうする”って—

言われたことがあったんです 一緒に行こうって—

約束もして

実は シラノにも お礼にって

全く 同じことを 言われたことを思い出して

2人の約束を知っているなら シラノの可能性が高いですね

連絡は とれますか?

それが 彼 アメリカの大学院に 進学したんです

向こうに行って 携帯も解約しちゃったみたいで

ああ そうですか…

北村さんの生年月日は?

1989年の10月4日です

(平野)10月4日

(平野)その彼のお名前は?

真一です 森秋真一

(平野) 彼が これを利用していれば

自動的に リストアップされるんで すぐに 見つかると思います

ああ… ハア

出ませんね

ダメですか

(平野)北村さん 次のお休みは—

(平野)来週の木曜日ですか? (志織)はい

大学に行ってみましょう

もしかしたら その後の彼の消息が 分かるかもしれない

(志織)あっ おはようございます (平野)おはようございます

(平野) え… 何か 変ですか? 僕…

(志織)あっ いえ…

(志織)あっ いえ…

(志織)あれ?

(志織)あれ?

(志織)あれ?

(平野)あ… じゃあ 行きましょうか

(平野)あ… じゃあ 行きましょうか

(志織)はい (平野)はい

(志織)寝ぐせがない…

あれから… 過去を変えたことの 不具合というか…

身の回りで 何か 気になることは 起きていませんか?

実は… 自分が殺されたり

消えていく妄想 みたいなのを 何度か見てしまって

それが あまりにも生々しくて

だから 怖くて あんまり 眠れなくて

そうでしたか

正確に つじつまが合えば 矛盾は消える

おかしなことも 起きなくなると思います

はい

そういえば 平野さん

今日 お休みじゃなかったんですよね?

うん 有給とっちゃいましたから

すみません 私のために

たまってたから ちょうど よかったんです

それに これは 僕のためでもありますから

ありがとうございます

(いえ)

順調なんですか? 小説のほうは

ああ… あまり 進んでません

奇をてらってしまうというか…

なかなか 自分に正直な物語が 書けないというか

才能がないのかもしれません

オーナーの権藤さんには

小説家の卵ですね なんて 言われて 入居したんですけど

一生 殻が破れないのかもって 思うことはあります

そんなことないですよ

あれだけ 小説や物語の世界が 好きなんですから

きっと ステキな作品ができますよ

ありがとうございます

そんな風に励まされたの 初めてかもしれません

次の作品が完成したら

絶対に 読ませてくださいね

いやいやいや ですから

それは 絶対にダメですから 恥ずかしすぎます

いいじゃないですか 応援してますよ

ファン第1号に なるかもしれないのに?

絶対にダメです

ケ… ケチですね

ケチで結構です

ケチ

ケチでいいです

ケチだなあ

ケチでもいいです

なんで そんな かたくなに ケチ…

(平野)ケチで結構です

(志織)ホント ケチですよね

(平野)ケチです (志織)ケチ

(平野)ケチで結構です

(志織)ケチ

ケチです いつまで 続けるんですか? これ

(志織)行きましょう (平野)はい

ハア 懐かしいなあ

写真は 大学の頃からですか?

あ… はい

キャンパスにいる時も ずっと 首からカメラ 下げてました

写真を始めた理由とかって あるんですか?

理由ですか?

うーん…

答えになってないと 思うんですけど

何か 安心するんです 写真 撮ってると

安心?

うーん… うまく言えないんですけど

その一瞬 その風景を

自分だけのものにできる みたいな気がして

いいですね それ

僕も 大好きな小説とか映画に 出会ったりすると

そんな気がします

ちょっと 違いますかね 写真とは

うーん… おんなじだと思いますよ

あ… ああっ

すごい…

(シャッター音)

(平野)あれ? もしかして 今 僕 撮りました?

さあ 何のことでしょう?

(平野)とぼけるんですか? (志織)フフフッ

平野さん

はい

シラノが 一番最初に 言った 言葉って

何だと思います?

突然 なぞなぞですか?

はい

状況からすると 奇跡だ… とかですか?

何ですか 正解?

内緒です

教えてくださいよ

うーん… ダメです

ケチ

ケチで結構です

(平野)ケチ

(志織)ケチで結構です (平野)また 始まった

(志織)フッハッ (平野)フフフッ ハハハッ

(志織)あっ この建物です

(平野)はい

(事務局員)お待たせしました

持ち出しや 名簿の写真撮影などは ご遠慮いただいてますので

(志織) はい ありがとうございます

森秋…

あっ 北村さん これ

(志織)あっ

(志織)ハア… 更新されてない

大学時代の住所のままです

そうですか

(平野)あきらめませんよ 僕は

(志織)え?

(平野)あの連絡先から 不動産屋をあたってみます

実家の住所が 分かるかもしれない

(志織)ありがとうございます

(平野)いえ…

ちょっと 寄り道しませんか?

(志織)ん?

うわああっ きれい…

これ… あのー よかったら

え?

お誕生日 おめでとうございます

(志織)あ… (平野)僕なんかに 祝われても

うれしくないかもしれませんが

新しい鍵に よかったらと思って

気にいらなかったら 捨ててもらっていいです

遠慮なく

(志織)ああっ え?

これ… 平野さんが 選んでくれたんですか?

(平野)はい

あまりに 僕が 悩みすぎたのか

お店の中 うろうろしてたら

そのたんびに 店員さんに “大丈夫ですか?”って声かけられて

(志織)ハハッ フッ…

(志織)ありがとうございます (平野)いえ…

ちょっと 笑い過ぎです

(志織)すいません おかしくって フフフッ かわいい

でも 僕は…

北村さんが 笑ってくれると

何だか とても うれしいです

私 全然 ダメですね

今日が 誕生日だったこと

完全に忘れてました

もしかしたら

最後の誕生日に なるかもしれなかったのに

最後になんか させません

来年も 再来年も

絶対 誕生日は来ます

信じてください 大丈夫です

はい

あっ 写真 撮りませんか?

(平野)はい (志織)一緒に

はい チーズ

(シャッター音)

(志織)いい感じです (平野)はい よかった

(平野)撮りました?

(平野)僕 また 入れないでください (志織)ハハッ

(平野)フッ ハハッ

真一?

えっ 志織? なんで?

(権藤)あれ? 真一 北村さんを?

(真一)うん 大学で一緒だった

(権藤)ふーん (真一)志織 ここに住んでんの?

うん

あっ もしかして 海外から帰ってくる お孫さんって…

(権藤)ハハッ 娘の長男

これから ここに 居候すんだって

(真一)ちゃんと 家賃は払うから

(権藤)しかし 北村さんと真一が知り合いだなんて

そういう 運命のいたずらが ここでは よく起きる

あ… 森秋です

あ… 平野です じゃあ 僕はこれで

(平野)失礼します (志織)え?

でも ホントに びっくりしたな

志織 近々 時間取れる?

ああ うん

(ラインの通知音)

(平野)真一さん 見つかってよかったですね

シラノのこと 正確に 再現してもらってください

僕は 小説に集中することにします

(平野)シラノを探し出して

もう一度 1年前の北村さんを 助けてもらえばいい

正確に再現しないと 北村さんは—

もう一度 殺されるか 存在ごと 消し去られてしまう

(支店長)北村さん 話あるんだけど ちょっといい?

はい

(志織)茅ヶ崎(ちがさき)支店ですか?

(支店長)そう 急に 営業チーフが 産休 入っちゃったっていうから

北村さん 推薦しようかと思って

引っ越したばかりなの 知ってるけど

昇進だし 悪い話じゃないでしょ?

はあ

(支店長) なるべく 早めに 返事ちょうだい

(志織)分かりました

(携帯電話の着信音)

もしもし

(真一)そこの店さ 最近 有名らしくて…

あの頃 お互い 金がなかったから

いっつも 安い店ばっかり 行ってたよな

(志織)うん

思い出すと いちいち 懐かしいな

うん

なあ 志織

(志織)ん?

俺たち やり直さないか?

え?

アメリカに行って 一人前になれたら

迎えに来ようって ずっと思ってた

あの時は 就職 決まったばっかりの志織に

アメリカに ついてきてほしいって どうしても 言い出せなかったけど

誰かいるの?

付き合ってる人とか

結婚 考えてる人

あ… 結婚なんて そんな人 いないけど…

(真一)ああ よかった

じゃあ 返事

今すぐじゃなくていいから 考えてみてよ

俺 本気だから

ねえ 真一

(真一)ん?

2人でした約束って 覚えてる?

(真一)約束?

(志織)今日は 私が有給とっちゃいました

(平野)だからですか

北村さん 日曜日も お仕事ですもんね

(志織)はい

この公園 好きなんですよね

引っ越してきた時にも 写真を撮りに来ました

(平野)真一さんとは 話せたんですか?

(志織)ごめんなさい 小説でお忙しいのに…

(平野)ああ… いや

僕も ああは書いたけど 気にはなっていたんで

(志織)真一には まだ ちゃんと話せてなくて

今日はそのことと もう1つ 相談したいことがあって

(平野)もう1つ?

実は… 茅ヶ崎支店への 異動の話がありました

異動…

転勤ですか?

まだ 返事はしてないんですけど

受けたら さすがに 引っ越すことになりそうで

条件は そろいましたね

え?

北村さんは 茅ヶ崎に引っ越して

その部屋に 真一さんが入る

来年9月

真一さんがシラノになって 北村さんを助ける

オーナーは 運命のいたずらだなんて 言ってたけど

全部 運命のとおりに 進んでただけだったんですね

僕なんかが 余計なことを する必要は 全然なかった

いや… 余計なことだなんて

平野さん

私… まだ 茅ヶ崎に 行くかどうか 迷ってるんです

どういうことですか?

あの部屋が好きだし あのアパートも

住人の人たちも好きだし それに…

それに?

私は 自分の気持ちに 正直に 生きたい

自分の好きな場所で

自分の好きな人と 一緒に暮らしたい

たとえ 1年後に

何が起こったとしても

消えてしまっても いいって言うんですか?

ホントに そうなるかどうか 分からないのに

自分の気持ちに ウソをつきたくないんです

(平野)バカなこと 言わないでください

正確に 再現しないと あなたは死んでしまうんだ

平野さん

平野さんじゃ… ダメですか?

平野さんが シラノになって

私を助けてはくれないんですか?

ダメです

僕には… その資格はない

資格って…

いい加減にしてください

小説のネタになるかと思って

絶対に見つけるとか 調子のいいこと 言っちゃいましたけど

負担ばっかり 大きくて 小説を書く暇すらなかった

これじゃ 本末転倒だ

もういい加減 付き合えません

勘弁してくださいって 言おうと思ってたんです

ウソですよね

ウソじゃない はっきり言います 僕は シラノじゃない

過去を変えてしまえるほど あなたのことを 大切に思っていない

だから助ける資格がないって 言ったんだ

誰だって 自分のことが大切です

だから 北村さんも もっと 自分のことを大切にしてください

真一さんに… シラノのことを 全部 話して

茅ヶ崎に転勤することを 約束してください

約束してください

はい

キツい言い方してしまって

すいませんでした

さようなら

(平野)北村さんが笑ってくれると

何だか とても うれしいです

(志織のすすり泣き)

(すすり泣き)

(泣き声)

ハア…

(志織)その日 私の恋は終わり…

(香穂)せんぱ〜い

(男性社員)おめでとう

(志織)それからの時間は あっという間に 過ぎていった

短い時間だったけど 大好きな場所だった

ステキな人たちとの

ステキな時間があった

いよいよ 明日ですね

いやあ… 寂しくなりますよ

以前

時間に身をまかせてくださいって 言いましたよね

あれは…

投げやりに生きろって いうことじゃなくて

後ろを向かずに 前を向いて 歩きなさいっていうことなんです

はい

結局—

さよならを言うことは できないまま

私は その部屋をあとにした

ホントに お世話になりました

(権藤)どうも また 遊びにきてね

(志織)ありがとうございました (権藤)はい

気を付けて

(志織の足音)

(女性社員)チーフ

ツアーのアンケート リストに まとめたので見てもらえますか

うん

(女性社員)今日 午後から お休みでしたよね?

あ… そう ちょっと用事あって よろしくね

(女性社員)はい

(志織)9月27日 15時まで—

あと5分

もう一度 奇跡が起きなければ 私は消える

静かに 待ちたかった

たった1つだけのことを信じて…

(携帯電話の着信音)

(携帯電話の着信音)

もしもし

(平野)北村さん

僕は間違っていました

シラノは僕だった

すべて 成功しました

やっかいな時間の壁を—

ようやく 越えられそうです

あの日—

北村さんが 引っ越していって

僕は 新しい小説に 打ち込むことにしました

でも—

何か月 経っても—

僕の頭の中から 北村さんのことが 消えることはなかった

確かめずには いられなくなって

真一さんを 呼び出しました

シラノって… その話は 確かに 志織からされました

けど 正直 言って 信じられないというか…

当然です 信じられないような話ですから

でも… 正確に再現してくれないと

北村さんは 消えてしまうんです

平野さん 申し訳ないですけど 僕は力になれそうもない

どうしてですか?

(真一) あなたに言うことではないけど

志織にはプロポーズして 断られました

え?

(真一)それに—

バンコクの新しい事務所を 任されることになったから

部屋を移るどころか 月末には 日本を離れるんです

(平野)真一さんは シラノでは なかった

あの部屋に 入らなければならない

お願いします

部屋を移らせてください

北村さんのいた 2Bに移りたいんです

どうしても 移らなければならない 事情があるんです

部屋が 本当に 人を選ぶんだとしても

今 僕が行かないと

どうか… どうか お願いします

ハア… ハア… ハア…

殻を破る—

覚悟は?

え?

小説家の卵ではなく

本当の小説家になれたら …と オーナーに言われました

自分が シラノになれるのか

不安でした

残された半年で 間に合うのかも分からなかった

それでも 僕は—

自分を信じるしかなかった

初めて 自分の気持ちと 正直に 向き合い続けて

(司会)第32回小説文彗(ぶんすい) 新人賞の 平野進さん どうぞ

(平野)結果は出ました

新人賞の授賞式は 9月14日

あなたが 初めて シラノの声を聞いた日です

僕は走った

ハア… ハア…

部屋に入れたのは—

9時 ギリギリだった

でも… その時にも まだ—

奇跡を起こせる条件は—

そろっていなかったのかも しれません

最後になんか させません

来年も 再来年も—

絶対 誕生日は来ます

(志織)はい

もう一度…

会いたい

(時計の針が動く音)

(風の音)

(CDの音楽)

北村さん

北村志織さん

え?

(平野)奇跡だ

(鐘の音)

(鐘の音)

矛盾点は消えました

9月27日の15時を過ぎても—

こうやって 目の前に—

あなたがいることが その証拠です

はい

私は—

信じてました

(平野)あなたは—

自分の気持ちに 正直に 生きたいって言ってくれたのに

僕が… 自分の殻を破って

北村さんに 気持ちを伝えるまで

1年の月日がかかってしまった

それでも—

間に合ってよかった

(志織)はい

男は みんな—

奇跡を起こしたいと思ってる

好きになった人のために

北村志織さん

僕は—

あなたのことが—

大好きです

やっと聞けた

そういえば 1つ 気になってたことがあって

何ですか?

どうして 一番最初のシラノさんは

私のこと よく知らないのに

助けてくれたんですかね?

その記憶は 僕も一緒だから分かります

北村さん 引っ越してすぐ

公園で写真 撮ってましたよね

はい

実は あの時 僕も同じ場所にいたんです

小説を書くのに行き詰まって 会社を休んでしまって

はっきり言って 一目惚(ぼ)れでした

ハッ

(平野)過去を変えた

2人の奇跡の物語です

ハッピーエンドですか?

もちろんです

(志織)フフッ

(平野)へヘッ

(男の子)わあ 大丈夫? お姉ちゃん (志織)わあ びっくりした

大丈夫 ハハハハッ

(平野)物語は… その恋を見つけた日から始まる

〜♪

〜♪

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