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Original subtitles

⟨文学オタクのルナと 専業主婦の涼子⟩

⟨文学の知識で さまざまな事件を 解決してきた2人⟩

(ルナ) つながった。

⟨ルナと確執を抱えた父の→

パソコンの パスワード探しに大苦戦⟩

(美里) 手術しないとダメだって 成功率は20%。

(ルナ) 会えると思う? (涼子) いいかげんにしなよ!

⟨いよいよ最終章 2人の運命や いかに⟩

(涼子) 手術? お父さんが?

(ルナ) 医者の不養生とは よく言ったものよねぇ。

父は いつも言ってた。

人をよく見ろ 窮地にあれば助けろ。

医療と法律の知識があれば 大部分の人間を救うことができる。

だから 医師か法律家のどちらかを 目指しなさいって。

(涼子) でも 文学も好きなんでしょ?

(ルナ) 読解力を鍛えるための勉学として 必要だと思ってるだけ。

文学では人を救えない ハッキリそう言われた。

(田村) お見舞いには?

(ルナ) 父の真意が分からないことにはね。

(涼子) 真意?

(ルナ) パソコン あの中には何らかの 父の真意が隠されてる気がして。

(涼子) ママがそう言うなら→

何としても パスワード見つけよう。

(ルナ) うん。

実は うちの常連さんで→

銀座で画廊のオーナーを している方がいてね。

ここで毎晩のように 文学談義をしていたの。

(富士子) 〔「月がキレイですね」→

…が漱石の名言っていわれるのは 納得いかないのよね〕

〔彼の作品の中には→

もっと素晴らしい愛の表現が たくさんあるじゃない〕

(ルナ) 〔富士子さん 何がお好きですか?〕

(2人) 〔せ~の 「夢十夜」!〕

〔ハハハ…〕

(2人) 〔「100年 待っていてください」〕

〔ハハハ…〕

(ルナの声) 富士子さんも 夏目漱石先生が大好きで→

好き過ぎて 夏目先生が生まれた街に→

お家を買ったぐらい。 (涼子) ハハ… ママ顔負けのオタクだ。

(ルナ) メールしてるんだけどね 返信が来なくて。

(涼子) 電話してみたら? 善は急げだよ。

(ルナ) そうね。

(涼子) じゃあ 私はそろそろ。 (小湊) あっ どうも。

仕事 戻んの?

(田村) これから徹夜で報告書作りです。

てか田村君さ うちの店 食堂だと思ってない?

(田村) え? ヘヘ…。

いや エヘヘじゃないよ。

(涼子) どうしたの?

(ルナ) 富士子さん…→

4日前に亡くなったって…。

(涼子) えっ!?

(ルナ) 2年前に脳梗塞を患ってから→

同居の娘さんが ずっと介護をしていたんですって。

それだけでも 大変だったでしょうに→

去年の秋に がんが見つかったって。

(涼子) ご主人は?

(ルナ) 若い頃に離婚してる。

離婚した後は 女手一つで お子さん3人を育て上げたって。

(涼子) そうなんだ…。

あっ ここが夏目坂?

(ルナ) 夏目先生の随筆によると→

先生のお父さまは この辺りの地主だったそうよ。

(涼子) へぇ~。

(涼子) 日本を代表する作家の ゆかりの地か。

(ルナ) 先生の作品で 一番読まれている「こころ」は→

名実ともに 日本の小説の 最高峰といっていいと思う。

大学生のわたくしが出会った先生。

わたくしは 先生と交流を深めるうちに→

謎多い先生の人生に 強い興味を抱いていきます。

明治の末 父の看病のために 帰省していたわたくしの元に→

先生から分厚い書簡が届きます。

「あなたが この手紙を 手に取る頃には→

私は もう この世にはいないでしょう」。

そんなふうに始まる手紙には 先生が抱えてきた後悔と苦悩が→

赤裸々に書かれていました。

(ルナ) 裏切ったり裏切られたり 恋やお金が人を狂わせたり。

文学が描き出す 人間の業については→

富士子さんとも よく語り合った。 (涼子) へぇ~。

(ルナ) 実はね 彼女→

私が小説家だってことに うすうす気付いてたみたいなの。

(涼子) えっ そうなの?

(ルナ) いつか きちんと 打ち明けようと思ってるうちに…。

もっと早くに言えばよかった。

(菊雄) 池松君。 (池松) あっ。

いや~ まさか僕が重原先生の 担当をさせてもらえるなんて→

夢みたいです。

(菊雄) あの人は いろいろ大変だけど やりがいあると思うよ。

タイトルはどうなった? あぁ それがですね…。

(菊雄) え? まだ決まってないの?

暫定で主人公の名前にしようか って話にはなってるんですけどね。

「三四郎」とか 「アンナ・カレーニナ」みたいな。

あぁ…。

お待ちしておりました 次女の菜名子です。

(ルナ) 闘病していたことも存じ上げず 申し訳ありません。

いいえ。

どうぞ。

(ルナ) キレイなお庭ですね。

母は この家が大好きでした。

ちょうど私が生まれた頃に 買ったそうです。

(ルナ) 若々しくて お元気な方でした。

(涼子) お会いしてみたかったな。

(ルナ) この方は?

啓介さんです。

半年前に再婚したんです。

(ルナ) 再婚?

病院の院内図書館で知り合って→

夏目漱石の話で 意気投合したみたいです。

(涼子) 文学がつなぐ ご縁だったんですね。

最初は きょうだいみんな 反対したんです。

でも 会ってみたら とてもいい方で。

この家で母が息を引き取るまで→

付きっきりで看病してくれました。

(涼子) 最期の時間を 好きな方と過ごせたんですね。

はい。

(雄太郎) 姉ちゃんばっかり ずるいって言ってんの!

母さんに家 買ってもらったり→

子供の学費まで 出してもらってんだろ?

(美央子) きょうだい3等分で いいじゃない!

(美央子) どうして自分だけ多めに もらおうって発想になるの!?

(菜名子) やめて! お客さま 来てるんだから。

お母さんのお友達 お線香上げに来てくださったの。

母が生前お世話になりました 長女の美央子です。

長男の雄太郎です。

お恥ずかしいところを お見せしてしまって…。

(ルナ) 富士子さん 遺言書は残して いらっしゃらなかったんですか?

見つかりました。

初七日が明けてから開封する ことになってるんですけど。

姉も兄も 口を開けば お金の話ばかりで。

2人とも介護にはノータッチで お見舞いにも来なかったのに→

3等分っていうのも何だかな って感じなんですけどね。

(涼子) 介護は 菜名子さんお一人で?

啓介さんが来てくれるまでは そうでした。

(涼子) あの… 配偶者の方の相続は?

あっ ごめんなさい 立ち入ったことを。

いえ。

啓介さんは結婚する時に→

相続を放棄するという念書を 書いてくれたんです。

資産が目当てと 思われたくないからって。

(ルナ) そうでしたか。

ごちそうさまでした。

お邪魔しました。

お帰りになる前に 母の形見分けを させていただけませんか?

母の本をお分けしたいんです。

啓介さん。

(啓介) 菜名子さん そちらは?

あっ お母さんのお友達の ルナさんと涼子さん。

お参りに来てくださったんです。

妻がお世話になりました。

何してるんですか?

早いとこ売ろうと思いましてね。

本ですよ。

まぁ こんなもの→

二束三文にもならないと 思いますがね。

待ってください 母が大事にしていた蔵書ですよ。

面倒な遺品整理は 迅速にやった方がいいんです。

遺族だと感情的になって なかなか進まないでしょう。

(ルナ) ご主人も ご遺族ですよね。

もちろん 僕だって悲しいですよ。

でも 家を売る前に 少しは整理しておかないと。

は? この家は売りませんよ!

でも 美央子さんも雄太郎さんも 売る気満々ですよ。

2人は今更 ここに住む気もないでしょうし。

そんなことさせません。

ここは 母が愛した大切な家です。

いや そもそも あなた方に権限はないんですよ。

家と土地の権利は 僕が持つことになるんで。

(菜名子) えっ でも→

遺産は放棄するっていう 約束ですよね?

そうでも言わないと 結婚させてくれなかったでしょ?

法律上 配偶者には 遺産相続の権利があるんです。

ご存じですよね?

(啓介) 遺言書には→

不動産・金融資産を含む 全ての財産を→

僕に譲ると書いてあります。

頼んだわけじゃないですよ。

彼女の遺志です。

(ルナ) 1つ お聞きしても よろしいでしょうか?

はい?

(ルナ) 夏目漱石先生がきっかけで 親しくなられたと聞きました。

富士子さんとは 夏目先生について どんな話をされたんでしょうか?

あなたに お話ししたところで 分からないでしょう?

(ルナ) 夏目先生の作品にも→

相続問題を扱ったものが たくさんありますよね。

ああ そうですね。

(ルナ) どの作品が印象に残ってます?

いろいろあり過ぎて すぐには出てきませんけども。

(ルナ) 例えば 「門」はどうでしょう。

その箱の中にも 入っているようですけれど。

あ~ 「門」ね! 確かにそうだ。

(ルナ) 「坊っちゃん」や「こころ」も そうですよね。

いや~ たくさんありますよね。

啓介さん 漱石が好きだなんて ウソなんじゃないんですか?

もう今更どうでもいいでしょう。

いいわけないじゃないですか!

(涼子) あの~ 私たちは そろそろ…。

最初から家も財産も 乗っ取るつもりだったわけね。

変だと思ったんだよ。

いい年した ばあさんに 言い寄るなんてさ。

(ルナ) 富士子さんはステキな方です 年齢は関係ないかと。

あんたに財産を分ける気は これっぽっちもないから。

念書だって書いたんだろ。

全財産を僕に譲ると 彼女は遺言書で明言してるんです。

ウソだと思うなら 今ここで 遺言書を開封したらどうですか。

(解錠音)

ない! 遺言書 なくなってる!

えっ? (雄太郎) は?

朝 金庫 閉まってたよね?

うん。

暗証番号 知ってるのは あなた方だけですよ。

つまり 3人のうち誰かが 持ち出したってことですよね。

持ち出すって 何のために?

全財産を僕に託すという 文面を見て→

慌てて隠したんでしょう。 (雄太郎) ちょっと待てって。

おっさんに全財産を相続させる って話が そもそもウソだろ!

持ち出したのは あんただ!

だから僕は 暗証番号を知らないんですよ!

遺言書を捜すしかない。

中身を読めば 全部ハッキリするでしょう。

(ルナ) 部外者は いない方がいいですね 私たちは これで。

(啓介) いや お二方。

捜索に 立ち会っていただけませんか?

(涼子) は? いや 私たちは…。

遺言書を隠した人間が 捜すふりをして→

こっそり 処分してしまうかもしれない。

だから見張っててほしいんですよ。

(涼子) 見張りって…。

(ルナ) 分かりました。

ここは 助っ人に来てもらいましょう。

どうも 元刑事です!

(ルナ) 家宅捜索も見張りも お手の物な方たちです。

連絡したら お休みだっていうので 来ていただきました。

さぁ 始めましょうか 二手に分かれて捜しましょう。

(田村) ガサ入れでチェックする場所は 一通り調べましたけど→

見当たりませんね。 (涼子) うん。

えっ! このフォーク まだ取ってあったんだ。

(菜名子) あ~ これ懐かしい。

家族全員分のおかずが ど~んと豪快にのってたな。

お母さん 仕事 忙しかったからね。

(富士子) 〔目玉焼き〕

(菜名子の声) それでも必ず ご飯は作ってくれてた。

〔座って食べなさい〕

ハァ~。

この席で お母さん 何 考えてたんだろう?

飯 どうするかな~ とかじゃないの?

それだけじゃないでしょ。

家族でも 分からないことって いっぱいあるよ。

(田村) この前 ノッピーのお母さんが 言ってたんですよね。

あいつのこと理解したくて いろいろ勉強したって。

(涼子) ママも パソコンを開くことで→

お父さんを 知ろうとしてるんだよね。

(田村) う~ん 最初は そうだったかもしれないけど…。

今は時間稼ぎして 逃げてるようにも見えるんです。

親父さんと向き合うことから。

♪~

(英介) この部屋のものは 全部 処分してくれ。

(美里) えっ? でも…。

身を軽くしておくに 越したことはないからな。

この前 処分してくれって 言われたパソコン→

あれ あの子に渡しちゃった。

(英介) また 余計なことを。

まぁいい。

パスワードもかけてるし どうせ開けん。

意外と解けちゃうかもよ。

あなたに似て 負けず嫌いだから。

フンっ。

いや~ 経験が生かせなくて面目ない。

(ルナ) いいえ お休みの日に 駆り出しちゃって ごめんなさい。

いや~。

バーでの経験は 割と役に立ってるんですけどね~。

マーキームーンで 作り方 覚えたカクテル→

この前 実家で親父に出したら すごい喜んでくれましてね。

意外なとこで 親孝行できちゃいました。

刑事さん辞めて バーで働くなんて 親御さん驚かれたでしょ?

いや~ 意外とそうでもないですよ。

いい年になってくると 子供は思い通りにならないって→

分かってくるんでしょうね。

お前の人生だ 好きにしろ って言ってくれてます。

(美央子) あっ このミシン まだあったんだ。

これ動くのかな?

母がよく 私たちに 服を作ってくれてたんです。

洋裁が趣味だったんで。

そう これ! 懐かしい。

(ルナ) ステキです。

しかし まだまだ物が多いなぁ。

早いとこ整理しないと。

へぇ~ この部屋 今 こんな感じなんだ。

ここは元々 客間だったんですけど→

リフォームして 母と啓介さんの寝室にしたんです。

(涼子) あっ ここにも本棚。

(田村) 本の間も捜してみましょうか。

(涼子) 漱石。

「こころ」 「坊っちゃん」 「道草」。

え~と…。

(田村) あっ 「虞美人草」ですね。

(涼子) くびじんそう?

これ 全部2階にもあった。

(田村) 同じ本が2冊ずつ…。

(カーテンを開ける音)

(雄太郎) あれ? こっち側にも 庭つくったんだ。

(菜名子) あぁ 裏庭。

(涼子) あぁ お花かわいい!

ワンちゃんも遊べそうですね。

あ~ 犬は入れないんです 柵があるんで。

(涼子) あっ そうなんですね。

リフォームと庭づくりは 啓介さんに任せてたんで→

よく分からないんですけど。

犬に踏み荒らされるのが 嫌だったのかもしれませんね。

犬が好きなふりを してただけなのかも。

絶対そうだろ。

(啓介) 結局 見つかりませんでしたね。

仕方ありません。

不本意ですが 法定相続分で我慢しますよ。

えっ?

配偶者が受け取れるのは2分の1 約3億ですね。

(小声で) 3億。

(啓介) あなた方にも それぞれ1億は入ります。

よかったですね。

おっさん 変じゃね?

遺言書が見つからないなら なおさら全財産よこせって→

言いそうなのに。

(田村) っていうか 特に何にも解決してませんよね。

(ルナ) 遺言書は出てこない 持ち去った犯人も分からない。

動機も。 (犬の吠え声)

(啓介) \ヘクトー! こら ヘクトー 何してるんだ/

またスリッパ グチャグチャにして。

(ルナ) 啓介さん 今 何て?

スリッパ そろえても すぐグチャグチャに。

(ルナ) そうじゃなくて ワンちゃんの名前。

ヘクトーですけど。

(涼子) ママ?

(ルナ) もしかして ガラス戸の中…。

(ルナ) この部屋は?

(涼子) 夫婦の寝室として リフォームしたんですって。

(ルナ) リフォーム… ここかもしれない。

ガラス戸が付いた家具なら 2階にもありますけど。

(ルナ) あっ ごめんなさい。

そういう意味で 言ったんじゃないんです。

「ガラス戸の中」ではなく 「硝子戸の中」。

夏目先生の随筆のタイトルです。

♪~

(ルナ) あった。

えっ…。 ウソ…。

(田村) 我々は もういいんじゃないすかね。

けど この子がさぁ。

ねぇ。

(ルナ) 「硝子戸の中」には→

夏目先生の家に 泥棒が入った後の ことが書いてあります。

「そのことがあって以来 私の家では 柱を切り組みにして→

その中へ 有り金を隠す方法を講じた」。

漱石マニアの富士子さんは リフォームの時に→

同じ細工をしたんじゃないかと 思ったんです。

ん?

材木を切って 組み合わせてるやつ。

ほら 日本酒の升とかさ。 (田村) あ~。

何のために そんなこと…?

好きな作家と同じことをしたい という遊び心というか→

ファン心理というか。

お母さん 万年筆も→

漱石が愛用してたのと 同じものを使ってた。

(田村) 推し活みたいなもんか。

何であんな所に新しい飾り柱を 立てたんだろうとは思ってたけど。

(ルナ) この引き出しの存在を 知っていたのは 恐らく ただ一人。

リフォームの後→

この部屋で富士子さんと 一緒に過ごしていた相手。

啓介さん。

(涼子) でも 金庫の暗証番号 知らないって。

(ルナ) 暗証番号は 例えば 富士子さんのお誕生日とか?

そうです 何で?

(ルナ) きょうだい全員が覚えやすい数字。

啓介さんにも 予想しやすい数字です。

(雄太郎) 遺言書は おっさんが隠したってことか。

これを私たちに見られたら 困ると思ったってことよね。

開けてみましょう。

♪~

「高坂富士子の財産は 全て三人の子供→

長女・美央子 長男・雄太郎 次女・菜名子に→

等しく相続させる。

配偶者・啓介には 相続させないものとする」。

(涼子) 自筆の日付も入ってるし 印も押してある。

(ルナ) 富士子さんの遺言書で 間違いなさそうですね。

やっぱり おっさんは外されてたわけだ。

私たちをだまして この家を 売ろうとしていたあなたを→

ちょっと待って。

僕だって 遺留分を 請求できるわけだから→

この家に とどまる権利がある。

(ルナ) 残念ながら 啓介さんには その権利はありません。

はぁ!?

(ルナ) 民法891条。

被相続人の遺言書を 偽造し 変造し 破棄し→

または隠匿した者は 相続人になることはできない。

つまり あなたは既に 相続権を失っているんです。

余計なことを! あんたのせいで…。

(ルナ) ヒントをくれたのは 啓介さんですよ?

あぁ?

(ルナ) あなたの一言で 隠し場所を 発見することができたんです。

「ヘクトー」 ワンちゃんの名前を 呼びましたよね。

それが何です?

(ルナ) 夏目先生が かわいがっていた 犬の名前も「ヘクトー」。

これも「硝子戸の中」に出てくる エピソードです。

その名前を聞いて もしかしたらと思ったんです。

早く出ていってください!

ここは お母さんと私たちの家です。

何で そんなに この家にこだわるんです?

不動産屋が言ってましたよ 大した資産価値はないって。

でも土地は かなりいい値段で 売れるみたいなんで→

早いとこ査定して…。 いや 売らねえから!

ん? 雄太郎さんと美央子さんは 売るつもりでしたよね?

売らないわよ!

(啓介) 荷物をまとめてきます。

では ごきげんよう。

野宮さんたちのおかげです。

本当に ありがとうございました。

(美央子:雄太郎) ありがとうございました。

(ルナ) 今日は ありがとう いてくれて心強かったです。

いやいや よし じゃあ 飲み行くか。

(田村) あ~ ちょっと これから 実家に顔出してきます。

何か 急に親の顔 見たくなっちゃって。

(小湊) うん 失礼します。

(涼子) 漱石のお父さんが この辺りの地主って話も→

もしかして 「硝子戸の中」のエピソード?

(ルナ) そう。

(涼子) 漱石情報が満載なんだね。

その本 富士子さんの所にも あったよ 2冊。

オタクあるあるってやつ?

(ルナ) えっ 「硝子戸の中」が 2冊あったってこと?

(涼子) うん 他にもあった。

ほとんどが漱石の本だった。

あっ かわいい ポピー。

富士子さんのお庭にも あったよね?

(ルナ) え? あの日本庭園みたいなお庭?

(涼子) あっ そうか ママは見てないんだ。

リフォームした寝室から見える裏庭に いっぱい咲いてたの。

(ルナ) ワンちゃんがいるのに ポピー?

(涼子) 確か 柵がしてあって→

ワンちゃんが入れないように してあるって言ってた。

(ルナ) 2冊あった夏目先生の本 タイトル覚えてる?

(涼子) えっと 「こころ」でしょ。

「坊っちゃん」と「道草」 「虞美人草」。

♪~

(ルナ) 《柱の引き出し…》

(菜名子) 〔好きな作家と同じことをしたい という遊び心というか…〕

(ルナ) 《庭のポピー…》

(涼子) 〔柵がしてあって ワンちゃんが入れないように…〕

(ルナ) 《ヘクトー…》

(啓介) 〔ヘクトー! こら ヘクトー〕

(ルナ) 《2冊の本…》

〔啓介さん 漱石が好きだなんて ウソなんじゃないんですか?〕

♪~

(ルナ) つながりました。

涼子 戻りましょう。

ちゃんと出ていきますよ。

もう荷造りも終わったんで。

(ルナ) 裏庭を見せていただけませんか?

どうぞ。

(柵を閉める音)

(ルナ) 啓介さん。

100年 待つつもりですか?

はい?

(ルナ) これ 百合ですよね?

違いますよ。

(ルナ) いいえ 百合です。

だからヘクトーが 入ってこないように→

柵をしてるんですね。

百合はワンちゃんには毒ですから。

もちろんポピーも。

また思い込みでグダグダと。

(ルナ) もうやめませんか?

夏目先生のこと 知らないふりするのは。

漱石は 彼女に近づくための口実ですよ。

あなたが僕の化けの皮を 剥がしたんでしょ。

(ルナ) 剥がしたのはニセモノの皮。

私も すっかりだまされました。

あなたは間違いなく 夏目漱石という共通の話題で→

富士子さんと引かれ合ったんです。

(涼子) どういうこと?

(ルナ) ポピーの別名は 虞美人草。

2冊ずつあった本は 1冊が富士子さんのもの。

もう1冊は 啓介さんが ここに越してくる時に→

持ってきたものですよね?

そして この百合。

「100年 私の墓のそばに座って 待っていてください。

きっと会いに来ますから」。

夏目先生の「夢十夜」の中で→

亡くなる女性が 男性に告げるセリフです。

そして100年後 彼女は百合になって戻ってくる。

富士子さんが 大好きだった小説です。

あなたも 相当お詳しい。

(ルナ) 教えていただけませんか?

なぜ 財産を乗っ取ろうとする 悪者を演じようとしたのか。

ここを守りたかっただけですよ。

彼女は よく→

この家で家族と過ごした思い出を 話してくれましてね。

私は天涯孤独なもんで うらやましかった。

(啓介) それに ここがなくなったら→

菜名子さんの居場所も なくなってしまうでしょう。

富士子さんは 菜名子さんのことを→

最後まで気にかけていたんです。

苦労をかけるばかりで→

何もしてやれず 申し訳なかったと。

さっき 雄太郎さんと美央子さんが→

ハッキリ言ってくれました。

「家は売らない」と。

安心しました。

これで もう→

僕が ここにいる理由が なくなったってわけです。

(ルナ) 啓介さん もしかして→

あの時 ヘクトーの名前を 呼んだのは わざとですか?

ええ。

あの柱の隠し場所を 誰も見つけてくれなかったんで。

遺言書が出てこないことには 話が進みませんからね。

漱石にお詳しい あなたなら→

「硝子戸の中」のエピソードから→

あの柱に たどり着いて くれるんじゃないかって。

(ルナ) まんまと 乗せられてしまいました。

富士子さん 笑ってるかも 1本取られたわねって。

フフ…。

おっさん まどろっこしいこと しやがって。

リフォームした時ね→

「このテーブル買い替えたら?」 って言ったの。

でも お母さん 「このままがいい」って。

懐かしいね。

子供の頃は 毎年 お誕生日会やったりね。

(幼い菜名子たち) 〔お母さん お誕生日おめでとう!〕

〔息を吹きかける音〕 〔はい プレゼント!〕

〔うわ~ ありがとう!〕

〔いただきま~す!〕

〔ちょっと! 取り分けてからでしょ〕

〔あっ いけないんだ!〕

〔おはよう〕 〔おはよう〕

〔座って食べなさい 行儀悪い〕

〔お母さん 私 半熟がよかったんだけど〕

〔じゃあ 自分で作りなさい〕

〔いってきま~す!〕 〔いってらっしゃい〕

〔あっ お弁当 忘れてる!〕 〔あっ ありがとう〕

〔は~い お母さん 先 食べててね〕

〔ありがとう いただきます〕 (菜名子) 〔は~い〕

♪~

(菜名子) ねぇ。

年に一度でいいから→

ここに集まれないかな 3人で。

(美央子) うん…。

最初は 婚姻届を 出すつもりはなかったんです。

ただ そばにいて 彼女の人生最後の時まで→

寄り添えたら それでいいと。

でも ある時 彼女に言われたんです。

(富士子) 〔啓介さん〕

〔私と結婚してくれない?〕

〔え?〕

〔困らせちゃうって 分かってたけど→

自分が今 どうしたいかを 大事にしたいなって思ったの〕

(涼子) 自分が どうしたいか…。

ええ。

僕には もったいない ステキな人でした。

(涼子) 彼女の望みをかなえて 添い遂げた啓介さんもステキです。

いや そんなことはないんですよ。

なぜ僕が 遺言書を隠したと思います?

もうひとつ 理由があるんです。

「金さ君。

金を見ると どんな君子でも すぐ悪人になるのさ」。

(ルナ) 「こころ」に出てくる 先生の言葉ですね。

富士子さんを愛していたのは 本当です。

でも 僕だって聖人君子じゃない。

1億とか2億とか→

人生が変わる数字を 目の当たりにしたら→

理性を失って 金が欲しいと 思ってしまうかもしれない。

(ルナ) 理性があるうちに→

相続資格をなくしておこうと 思ったんですか?

人間なんて 弱いもんですからね。

(ルナ) 生前 富士子さんは 言っていました。

〔もうね 私 男なんて信用してないの〕

〔それより こうして→

友達と好きなものの話を してる時間が一番幸せ〕

(ルナ) 「こころ」の先生は 自分も人も信用できなかった。

でも最後に 主人公のことを信じると決めた。

富士子さんも そうだったんじゃないでしょうか。

再婚を決めたのは→

最後に信じたいと思える人に 出会えたから。

♪~

(涼子) ⟨富士子さんの形見分けの本は 啓介さんが選んでくれた⟩

⟨ママは 「硝子戸の中」⟩

⟨私は 「吾輩は猫である」⟩

(涼子) パスワード 思い付いた?

(ルナ) 富士子さんのお参りに 行ったせいかな。

「吾輩は猫である」の モデルになった猫が→

亡くなった日かもしれないって。

(涼子) 命日?

(ルナ) 猫が亡くなったのは 明治41年9月13日。

1 9 0 8→

0 9 1 3。

(モニタ)(エラー音)

(ルナ) 違ったか。 (涼子) ハァ…。

チャンスは あと2回。 (ルナ) だね。

(涼子) ねぇ ママ。

もし このパソコンが 開けなかったら どうするつもり?

(ルナ) どうするって…。

📱(振動音)

(ルナ) はい まーくん?

(正義) おじさんの容体が急変した!

(ルナ) え?

\降ろしますね/

野宮英介さん 67歳…。

今 野宮病院に 救急搬送されたとこ。

(ルナ) 連絡ありがとう それじゃ。

(涼子) 大変! 救急搬送って…。

(涼子) ママ? 行かないの?

(ルナ) 行けるわけないでしょ。

(涼子) どうして?

(涼子) もう いいかげんにしなよ!

ママ 逃げちゃダメだよ!

お父さんの真意より→

今は ママが どうしたいかじゃないの?

あの日→

ママが大阪に 連れ出してくれたおかげで→

私は 前に進むことができた。

あの旅に出るまで→

私の時計が ずっと止まってたみたいに→

ママの時間も 止まってるように見える。

ねぇ…→

ママは どうしたいの?

♪~

こちらで お待ちください。

お父さん!

(涼子) ママ。

♪~

(ルナ) バブリーちゃん お店 お願い。

(涼子) ⟨その先に待っているものが 希望でも絶望でも→

私はママの味方でいる⟩

⟨どんな時でも 味方でいるから⟩

(ルナ) ありがとうございます。

♪~

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