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(金子(かねこ)) 先生方 よろしゅうございますか?
医者が“お医者様”と呼ばれ
病気を治せれば それでいいという 時代は終わりました
これからの医療の主体は あくまでも患者様
病院にとって 一番大切なのは
患者様の満足
すなわち “クオリティ・オブ・ライフ”
医療の基本は 真心とサービスです
患者様のご希望を
しっかりと聞く“傾聴”
そして
患者様の感情に寄り添う“共感”
この2つが 何よりも重要でございます
一方的な説明や
上から目線の 物言いだけは
絶対にやめてください
不満が爆発した状態の
モンスター・ ペイシェントには
常識やルールは 通用いたしません
まずは傾聴と共感をもって
相手をなだめることです
その時に“ですから”“でも”
“だって”“だから”
この言葉を使いがちですけれども
これらは全て禁句です
もう一度 繰り返しますよ
“ですから”“でも”
“だから”“だって”
これらは全て禁句でございます
加地(かじ)先生 加地先生
病院にとって 一番大切なのは?
(加地) はい ええ~ 患者の満足です
(金子)患者“様”
失礼しました
患者“様”の満足と クオリティ・オブ・ライフです
(金子) 次 城之内(じょうのうち)先生 医療の基本とは?
(城之内博美(ひろみ))真心とサービス
はい 原(はら)先生
(原)傾聴と共感
(金子) はい そのとおりでございます
患者様を モンスター化させないためには?
傾聴と共感
はい そのとおりでございます
それでは皆様 繰り返していただきますよ
せ~の はい!
(一同)患者様の満足
クオリティ・オブ・ライフ
真心とサービス
傾聴と共感
(金子)はい 結構でございます
大門(だいもん)さん 大門さん!
あなた今 寝てましたね?
(大門未知子(みちこ))なんか…
これ 医師免許なくても 全然よさそうな会議なんで
パスします
(金子)待ちなさい 待ちなさい!
一体 誰のための これ
緊急コンプライアンス会議だと 思ってるんですか?
は?
(鳥井(とりい))反省の色が 全くないようだな
事務長 例の物を
この人に見せてやって ください
はい
これは 1週間前の
インフォームド・コンセントの 記録です
ウソ 隠し撮り?
(鳥井) 面談の様子は 患者様の了解を得て 全て録画してある
訴訟になったときの用心だ
だって 今ちゃちゃっと 切っちゃえば
矢野さんの前立腺がん 根治するんだから
(母) “ちゃちゃっと”ですって?
がんになった息子の気持ち 先生 全然 分かってません!
ですから お母さんは 黙っててください!
息子さん もう いい大人なんだから
(矢野) 正直 手術は怖いです
だってね
今 手術したらビンビンですよ
でも このまま放置したら 確実にがんは進行する
し… 死にたくない
だったら この同意書にサインを
(森本(もりもと)) 大門先生…
ママ~!
だから 切るの?
切らないの?
どっちなの?
怖っ…
これは いくら何でも
(金子)ありえない!
“ですから”“でも” “だって”“だから”
禁句のオンパレードじゃないですか
でも この患者さん
前立腺がんの手術 大成功して退院しましたよ
ねえ!
(金子)患者様のお母様から 苦情のお手紙が届いています
“息子は大門という医者に”
“脅かされて同意書にサインをし”
“精神的に深い傷を負いました”と
なんで? 命 助けたのに!
(金子) それが傲慢(ごうまん)だっていうんですよ
手術が成功しても 患者が満足しなかったら
訴えられることだって あるっていうんですよ!
患者様
あっ… そのとおりです
(毒島(ぶすじま)) まあ その辺でいいでしょう
でも 訴訟は困ります
経営に関わる ゆゆしき事態ですから
御意!
(金子)御意! (半田)御意!
大門君 よろしくお願いしますね
ハア… ギョーイ
な~んちゃって~
(ドアの開閉音)
(クリック音)
(森本)医者って いつから サービス業になったんですかね?
患者さんのためにと思って することも
向こうが気に入らないと 訴えられるなんて
なんか悲しくないですか?
って こんな話 大門先生にしてもムダですよね
そっ ムダ
はい
(ノック)
(三恵(みつえ)) 今日 特別室に入院した 花山(はなやま)でございます
わたくしの手料理を 差し入れに持ってきました
ほんの名刺代わりです
花山三恵さんだ
誰?
知らないんですか?
美人料理研究家で テレビにも出てるし
ブログのアクセスも すごいんですよ
(三恵)腕によりをかけました どうぞ召し上がってください
(原)うわ~ 花山先生の 手料理が頂けるなんて光栄です!
(三恵)どうぞ (原・加地)うわ~!
(加地)じゃあ いただきます (原)いただきま~す
うわ~ ハハハ…
いかがですか?
さすがに おいしいです
(笑い声)
このコロッケも…
(マネージャー) フォアグラの納豆コロシアムで ございます
とにかく絶品ですよ! ハハハ
(三恵)そちらの女医さんも
そんな おにぎりなんか 食べてないで どうぞ
やっぱ こっちでいいです
遠慮なさらないで
幸福感のない食事は 心を貧しくしますよ
ホント いいです
どうして? フォアグラの納豆コロシアム
わたくしのレシピの中でも 大人気なのよ
ネーミングが変だし
まずいので
大門君 すてきなネーミングじゃないか!
なあ!
はい!
女医さんのお口には 合わなかったみたいね
さあ 皆さん どうぞ!
(三恵)召し上がってください (医師たち)ありがとうございます
(加地)花山先生の 幸福感あふれる料理の味が
この女医には分からないんですよ
見てのとおり 患者の臓器 見ながら
バクバク食える女ですから
うん さあ 腸閉塞(へいそく)のオペ 行くよ
(森本)えっ? ちょ… ちょっと待って
あっ… (ドアが閉まる音)
♪~
(ナレーション) これは 一匹狼の女医の話である
(男)飯はまだか? 何時間 待たせんだよ!
(理恵(りえ))順番に 配膳してますので…
(男)腹が減って 病気が悪くなったら
どうしてくれるんだ! 痛(い)たたた…
(園子(そのこ)) ここは寒いので お部屋に…
(男)うるさい! 早く 飯 持ってこい!
(女)頼んでないわよ! いや~ もう!
(半田)まあまあ まあまあ
(ナレーション) 大学病院の医局は弱体化し
命のやり取りをする医療も
ついに 弱肉強食の時代に突入した
その危機的な医療現場の 穴埋めに現れたのがフリーランス
すなわち 一匹狼のドクターである
例えば この女
群れを嫌い 権威を嫌い 束縛を嫌い…
専門医のライセンスと たたき上げのスキルだけが
彼女の武器だ
外科医 大門未知子
またの名を ドクターX(エックス)
~♪
(金子) コンプライアンス強化対策として
院内5か所に 目安箱を設置しております
これが本日の苦情とご意見です
“外来の待ち時間が長いです”
“隣の患者のいびきが うるさくて眠れません”
“ナースと職員がブスばっか どうにかしてくれ”
チッ… 失礼な!
まあ クレーマーが モンスター化しないよう
しっかり対処してください
(金子)御意 (半田)御意
最近ではね インターネットの 掲示板やブログも
影響が大きいですからね
24時間 目を光らせておりますので
(三恵の声) 検査のために入院した 帝都(ていと)医大第三病院でも
わたくしのお料理が評判です
特に独身のドクターたちが
みなさん喜んでくださいました
“おいしい 絶品だ”って
(神原(かんばら) 昌(あきら))“でも 1人だけ”
“すごく感じの悪い 女医さんがいたんです”
これ 未知子のことじゃないの?
えっ?
(神原)“その女医さん”
“私のお料理にケチつけて おにぎり かじってました”
“たぶん 手術オタクで”
“お料理を作ってあげる 彼氏がいなくて”
“さびしい人生を 送っているんでしょう”だって
花山三恵だって 三十路過ぎて独身なのにね
(未知子)晶さん なんで こんなブログ読んでんの?
(神原)“男の胃袋をつかむ! 絶品モテカボチャ”っていうのを
作ってみたの
(未知子)絶対まずいよ それ (神原)フフッ
(神原)ううん すごくいい
(未知子)いい?
あれ?
おいしい なんで? おいしい…
今度は これ 作ってみよう
“女の胃袋を満たす! イケメン男爵ソテー”
めちゃくちゃ おいしい
なんで?
(鳥井)食道がんのステージⅡ(ツー)か
もう本人には告知したの?
はい 花山さん 気丈に受け止めてましたけど
料理研究家にとって 食道は つらいですよね
(鳥井)手術 できるだけ急いだほうがいいな
(原)はい
(未知子)おかしいですね
食道がんは 味覚障害には ならないはずなのに
何を言ってるんだ?
君は この患者とも 入院早々 もめたそうじゃないか
まずい料理を まずいと言っただけです
それがダメだと言ってるんだ
患者のプライドを 傷つけてるじゃないか
この人 今に訴えられますよ
(未知子) あの人の差し入れ 食べたでしょ?
えっ あれ ホントにおいしかった?
みんな 舌おかしいんじゃないの?
(医局員)確かに (医局員)うん…
バーカ!
患者様の満足のために
おいしいと お世辞を言ったまでだ
(森本) ちょっと変わった味付けでしたね
ああ 俺の食ったコロッケは 香辛料の味しかしなかった
ああいう味付けが はやってるのかな?
なんだ やっぱり まずかったんだ
料理のプロに向かって 言えないでしょ
君たちはコンプライアンス的に
(鳥井)非常に正しい (原)はい!
(未知子) レシピの料理は おいしいのに
本人の作った料理は まずいと
(加地) 教授 この人 切るつもりですよ
(鳥井)冗談じゃない
ああいう繊細な女性の患者は 精神面のケアが大切だから
オペは原君に頼もう
はい!
助手は そうだな…
大門君 君が原君の助手をやれ
(未知子)えっ 私が? (原)えっ?
(加地) こんなの助手につけて 大丈夫なんですか?
手術 行ってきます
この際だから 原君
しっかり教育してやれ 医療というものを
(原)分かりました
患者に寄り添う 心の医療を教えます!
(鳥井)ただし 患者の前では ひと言も発言するな
黙って助手を務めればいいんだ
これ…
病気のことは極秘にしましょう
幸せとヘルシーを追求する 花山三恵のイメージがあるもの
(マネージャー)はい
(ノック)
どうぞ
(理恵)失礼します
(理恵)花山さん お食事ですよ (三恵)どうも
何 これ? これで味付けしてあるの?
えっ…
こんなの食べられない
でも…
(原)中村さん まだ手術の傷 痛みますか?
痛いときは 我慢しないで言ってくださいね
(中村) はい ありがとうございます
(原)あら! 斉藤さん 今日 顔色いいですね
(斉藤) 先生 うちの孫が来てくれてね 肩もんでくれたのよ
ああ そうですか よかったですね
ありがとうございます
どうも
う~ん
患者さんの話を聞いてあげるのも 医療のうちだよ
心が通い合えば治療に役立つ
まあ 医師免許のいらない仕事は
やりたくないと君は思うのかな?
は~い 時間のムダなので
そのうち 分かるよ
患者さんの心に寄り添うことが 医療の基本だと
(背骨が鳴る音)
(原)おい
は~い
(ため息)
ああ
お待たせしました 執刀医の原です
あら
(原)ああ 助手の大門です
(三恵)先生 万が一 何かあるといけないので
弁護士の先生に 同席してもらいます
(本多(ほんだ))こういう者です
(原) ああ どうも 弁護士さんですか
昨今は 医療トラブルも 多いものですから
では 手術のご説明から 始めさせていただきます
花山さんのがんは 食道の この部分にあります
このがんを取り除いたあと
胃を ここまで伸ばして
食道を再建する手術を行います
その手術 大丈夫なの?
職業上 食べることに関するトラブルを
気にしていらっしゃいます
え~ それは…
本来 胃に当たる部分が 小さくなるため
術後の食欲低下や
体重減少なども 起こる場合があります
まれに
反回神経麻痺による 声の異常
また 嚥下(えんげ)困難などが 起こります
それは?
そしゃくや飲み込みが 困難になります
そんな障害が残ったら
料理研究家としての私は どうなるの?
(原)ああ ご心配は分かります
でも 術後 全ての患者が そうなるわけでは ありません
我々も 細心の注意を払って 取り組みますから
一緒に頑張りましょう
よく そんなことが言えるわね!
じゃあ 先生も 食道がんになってみたら?
そうしなきゃ 私の気持ちなんか 分からないでしょ!
申し訳ありません 無神経なことを言ってしまって
やっぱり やめます
私 手術しません
えっ?
手術以外にも 治療法はありますね?
抗がん剤か 放射線治療に切り替えます
あっ だからといって 内科治療に切り替えてしまっては
手術しなければ 根治できない可能性が高まります
手術の同意書には サインできません
(原)分かりました
ウソ なんで?
君はいいから
私に切らせてください うまくやるから
あなた 私の料理を まずいと言った人でしょ?
信用できないわ
花山さん 味覚障害ありますよね?
自覚症状ありませんか?
私は料理研究家よ! 失礼ね!
(原)大門!
申し訳ありません!
訴えるわ!
名誉棄損で この人 訴えて!
承知しました
絶対 切ったほうがいいって
とにかく 手術は絶対しません
(ドアが開く音)
あっ…
(ドアが閉まる音)
(鳥井)バカ者!
弁護士から 内容証明で謝罪要求が来たぞ
謝罪って お金ですか?
(金子)その態度が
いいえ あなたの その存在そのものが
コンプライアンスに反するの
私 本当のこと 言っただけですけど
それがバカ者なんだ
ただでさえ おびえてる患者の前で
ホントのこと ペラペラしゃべる 医者がどこにいる?
申し訳ありません 私がついていながら
外科医は 切ってなんぼでしょ?
それに あの患者は切れば 100パーセント根治するんだから
この際 そんなことは関係ないの!
病気が治ろうが治るまいが
患者から訴えられなきゃ それでいいんだよ!
(毒島)事務長 (金子)はい!
あっ… 申し訳ございません
私としたことが 取り乱してしまいまして
以後 厳重に気をつけてください
私は これから 本院での集まりがありますので
失礼しますよ
(金子)お車の手配を!
(半田)はっ!
ああ… ハア…
あなたってさ トラブルばっかりだけど
保険には 入ってるんでしょうね?
保険? なんですか それ?
医師賠償責任保険
訴えられたときのために
えっ? まさか入ってないの?
(未知子)はい (原)えっ?
なんですって?
バカ者!
フリーターの外科医が 保険に入ってないなんて
それ 手術に失敗したときの 保険でしょ?
私 失敗しないので
(原)よろしくお願いします
(内科医)よろしくお願いします
花山さんが望んでるんだから
内科に引き継ぐのは しょうがないじゃないか
私 別に何も言ってませんけど
何 言い訳してるんですか?
(ため息)
(白木(しらき))大門先生 また騒ぎ起こしたらしいですね
(加地) フリーターなんだから 早く辞めてくれよ
(原)しかも 勤務医の保険にも
(原)入ってないらしいですよ (白木)あっ そうなんだ
破産しちゃえよ
(白木) そういえば 城之内先生も あのときは大変でしたね
あれは 確実に患者の言いがかりで 裁判には勝ったんでしょ?
それでも1年かかったわ
しょっちゅう呼び出されて 仕事になんなかった
災難だったね
離婚の裁判と どっちがキツかった?
うちは 加地先生と違って 円満離婚ですから
ですよね
森本君 どうした?
(森本)あっ… 最近 僕 よく思うこと あるんですけど
もし 自分が患者さんだったら
口がうまい外科医より
手術がうまい外科医に 巡り合いたいし
もし 患者で切ってもらうんなら
感じがいい外科医より
腕がいい外科医に 切ってもらいたいですよね
それは 大門君のこと 言ってんのか?
えっ? いえ…
お前 いつの間に デーモンに洗脳されたんだよ?
あの女医は危険だよ
(未知子) 面談では すみませんでした
(三恵)それで謝ってるつもり?
よかった もう内科に移ったから
あなたの顔 見なくてすむのね
花山さん
やっぱり 切ったほうがいいですよ できるだけ早く
まだ そんなこと言ってるの?
私にとって がんが治るというのは
繊細で完璧な味覚を 取り戻すことなの
クオリティ・オブ・ライフ
プロとして当然のことよ
外科医のプロの意見も 聞いてください…
それ以上 意見したら
本当に訴えるわよ
(神原)どういう風の吹き回し?
まさか 未知子も料理覚えて 女子力アップする気?
(未知子)まさか
よく歯医者に行く人だな
“また歯医者に行きました”
“右の奥歯の辺りが 気のせいか痛むので”
“でも 歯肉炎も虫歯もなくて すご~くきれいな歯だと”
“褒められました”
この人のブログ 自慢ばっかりじゃない?
でも こんな古いブログ 読んでどうすんの?
早く手術したほうがいいんだよね
でも これ以上 意見すると 訴えるって
えっ 未知子 訴えられてるの?
弁護士から内容証明が届いただけ
大変!
ブログなんか 読んでる場合じゃないでしょ
こういうときは 早く手を打たないと!
(マネージャー)水 入れてきます
(三恵)あっ はい
(着信音)
もしもし
花山先生 お電話で失礼いたします
大門未知子のマネージャーの 神原でございます
こちらに失礼があったのは 心から おわびいたします
これから メロンでも持って おわびに伺いたいと思いまして
もちろん大門も 一緒に
心から おわびしたいと 申しております
(小声で)なんで? 嫌だからな!
お断りします
あの女医の顔を 思い浮かべるだけで
ムカムカしちゃう
まっ そう おっしゃらずに
(三恵) ホントに吐き気がしてきたわ
もしもし? あっ… もしもし?
あれっ どうしたんだろう? 急に黙って…
もしもし? もしもし?
花山さん?
(三恵)うっ… あっ… (未知子)花山三恵さん?
(三恵)うう…
(マネージャー)先生! 先生!
先生!
(未知子) もしもし?
ムカムカして 吐き気がするって言ってた
あっ メロンは?
(原) 食道がんの病巣から 動脈性の出血確認
(医師)なんだ 君は? (原)大門君!
花山さん 吐血したんですね? 止血は?
クリップで試みてるが…
(未知子)邪魔! どいて! (原)はっ?
(未知子)内視鏡じゃ 止血 無理!
(未知子)すぐオペ室へ (原)えっ? えっ?
緊急オペ!
(原)待て! 緊急オペなんて冗談じゃないぞ
同意書がないじゃないか
空いてるオペ室は?
ダメだ 待て! 花山さんは手術を望んでいない
手術するには 本人かご家族の 同意をいただかないと!
あれ?
大門先生 今日 お休みじゃ?
これからオペだから 城之内先生 呼んで!
えっ? オ… オペって?
いいから 大至急!
は… はい!
(原)ダメだ!
その前に家族の同意を!
そんなこと言ってる間に 死んじゃうんだよ!
(森本) どにかく 早く来てください!
無理! 今日は行けない
(森本)お願いします 緊急オペみたいなんです
当直の麻酔科医がいるでしょ
(森本) ほかの先生じゃダメなんです
大至急 城之内先生を呼べって 大門先生が
無理なもんは無理 取り込み中
あっ 鳥井教授 お休みの日に申し訳ありません
何? 勝手に手術?
本人は意識不明 ご家族とも連絡がつかないんです
ダメだ やめさせろ
でも このままでは 出血死の危険が…
ダメなもんはダメだ とにかく輸血で命をつなげ
同意なしに手術したら 訴えられるぞ
(藍)教授!
このあと レストランも予約しちゃったし
お買い物もしたいな
なんとかして手術を止めろ!
(操作音)
(操作音)
(未知子)点滴のスピード速くして
(看護師)はい
(未知子)口腔(こうくう)内 吸引して
(森本)分かりました
お願いします
(看護師)はい
(森本)吸引しますね
(未知子) 分離肺換気の準備
(森本) こんなことして 大丈夫なんですか?
同意書ないってホントですか?
(麻酔科医) えっ? 冗談じゃないぞ
コンプライアンスに違反する 俺はできない
(未知子)体位は左側臥位(さそくがい)
(麻酔科医)断る!
(金子)ハア ハア… お疲れさま
ハア… やめなさい おやめなさい! ハア…
(博美) 訴えられたら どうすんの?
(森本)城之内先生!
(未知子) 分離肺換気の準備 お願いします
(博美)ちょっと待って!
あなた 保険にも 入ってないんでしょ?
(未知子)はい
(未知子)MAP(マップ)10単位 急いで (看護師)はい!
(博美) 病院は あなたのことなんか 守ってくれないんだからね
ダメか… (着信音)
あっ もしもし
あっ 院長
(毒島) ああ 鳥井教授から 聞いたんですがね
大門君が 同意なしの手術を しようとしているそうですね
止めたんですが 緊急であるのも確かで…
いいんじゃないですか
えっ?
大門君は正式な医局員では ありませんから
万一の場合は病院ではなく
医師個人で責任を取らせます
手術が成功したら
うちの名声が また高まる
いい話じゃないですか
じゃあ よろしく頼みますよ
(心電図モニターの同期音)
(未知子)麻酔は? (博美)OKです
(原)待ってくれ (未知子)待てません
(原)せめて家族との連絡だけは…
(博美)家族の同意と 患者の命 どっちが大事なの?
(心電図モニターの同期音)
(原)私が第1助手に入る
(森本)はい
(未知子) 食道がんによる動脈性出血
まずは開胸し 出血点を止血後 食道切除
更に開腹し 結腸による再建を行います
(原)えっ?
(森本)け… 結腸による再建?
(未知子)メス (看護師)はい
(未知子)コウピン (看護師)はい
(未知子)肋骨剪刀(せんとう) (看護師)はい
第1助手 早くコウピン持って
(原)コウピンください (看護師)はい
(未知子)さっさと肋骨 出す
開胸器
(博美)もしもし 舞
ごめんね ママ 途中で抜けちゃって
かけっこ転ばなかった?
(舞)うん ママ! 転ばなかったよ 1等賞!
1等賞? すごいじゃん やったね!
急いで迎えに行くから
先生の言うこと聞いて いい子で待ってんのよ
うん は~い
(未知子)お嬢さんですか?
週末に呼びつけんのは これっきりにしてよね
(未知子)お疲れさまでした
ハア…
(ノック)
失礼します
(鳥井) 原君 花山さんの弁護士さんだ
患者に無断で行った手術について
詳しくお聞きしたいのですが
出血性ショックで 命を落とすところでした
止血するために 手術が必要だったんです
花山さんの容体は?
一時は非常に危険な状態でしたが 今は安定しています
命を助けていただいて ありがとうございました
しかし 花山さんは もう1つの命である仕事のために
手術そのものを拒否していました
花山さんの意識が戻りしだい 訴訟を起こします
(金子)えっ?
いや… ああ…
命を助けても 訴えられることがあるって
分かってるでしょうに!
なんとか言いたまえ
訴えられません
何?
大門先生は花山さんが拒否した 手術はしていませんから
どういうことですか?
私が 最初に しようとしていた手術は
切除した食道の代わりに 胃を伸ばす 胃管再建術です
その場合
術後は 嚥下に障害が残るなど
料理研究家としての 仕事に
支障をきたす 危険がありました
しかし 今日 大門先生が行ったのは
胃ではなく結腸を 食道の代わりとして使う術式です
胃機能温存食道再建術
大変 難しいオペですが
胃の大部分を残せるため
食生活に影響が少ないと 思われる―
ベストの手術です
花山さんの食道がんは 完全に取り切れました
容体 安定してます
(原) 料理研究家としても
これまでどおりの活躍が できると思います
それでも訴訟になりますか?
意識が戻ったら ご本人と相談してみます
(金子) どうぞ よろしくお願いいたします
よろしくお願いいたします
そんな完璧な手術 ホントにやったのか?
はい
ああ~ 気持ちいい!
ハア…
(院内放送) ただいまより 毒島教授の
外科病棟 院長回診を行います
大門君の手術 うまくいったようですね
はい 術後の経過も良好です
大変 結構です
(金子) ごめんなさい ごめんなさい…
院長 院長 院長 すみません
(毒島)どうしましたか?
(金子)やっぱりダメでした
例の弁護士が 訴えるって言ってきましたよ
大門君の手術は 成功したんじゃなかったのか?
成功しましたよ
けどね 患者様が結果に 満足してなかったってことでしょ
(毒島)まっ しかたありませんね
(金子)はい?
病院側には責任はありませんよ
無断で執刀した大門君に 責任を取ってもらいましょう
ああ 御意
未知子 大変 今度こそヤバい
“帝都医科大学付属 第三病院”
“第二外科 大門未知子医師が”
“患者 花山三恵に対して”
“十分な説明に基づく合意を 得ることなく”
“食道がん摘出手術を行った結果”
“手術後 味覚障害”
“その他の合併症が 患者に生じました”
“これにより”
“患者は 料理研究家としての”
“活動を継続することが 困難となり”
“そのキャリアと”
“名声を失うおそれに さらされております”
“患者は ここに”
“大門医師および”
“帝都医科大学付属 第三病院に対して”
“損害賠償として 金(きん)1億円を患者に支払うよう”
“請求いたします”
味覚障害 1億円…
(三恵)何なの これ?
なんにも味がしないじゃない こんなの食べられないわよ!
(園子)おかゆですから 薄い味しかついてませんけど
さあ
食べたくないって 言ってるでしょ!
うん おいしいですよ
味が分からないのは手術のせいよ
あなたのせいで 私の人生 台なしよ!
花山さん
それは手術の ずっと前からですよね?
1年ぐらい前から
味覚障害の自覚症状 あったんじゃないですか?
でも 料理のプロとして
それを周りに悟られないように ごまかしてきた
大門先生 何 言い出すんですか?
ブログ 全部 読ませてもらったんですけど
1年前から 何度も奥歯の痛みを訴えて
歯医者さん 受診してますよね?
でも その痛みは歯じゃないんです
食道がんとも関係ありません
(三恵)じゃあ なんなの?
舌咽神経鞘腫(ぜついんしんけいしょうしゅ)です
何 それ?
脳神経を包んでいる膜に 腫瘍(しゅよう)ができて
神経を圧迫し
味覚障害が起こる 病気です
そんな腫瘍があるなんて
ここの先生たち 誰も言わなかったわよ
みんな 食道がんに気を取られて 見落としてたんですよ
ちょっと気になって
詳しく画像を 見させてもらったんですけど
誰だっけ?
はっ? 放射線科の白木です
放射線科の白木です
よいしょ
分かりづらいけど ここに小さく映ってるでしょ
あっ…
これも がんなの?
舌咽神経鞘腫の 98パーセントは良性ですが
まあ 1年たっても この程度の大きさなら…
良性に間違いありません
そう…
でも ほかの先生たちは 見落としたのに
どうして あなただけが 見つけられたの?
あなたの料理が まずすぎたから
ハア… やっぱり失礼な医者!
でも 1年以上前のレシピで 作った料理は絶品でしたよ
それは どうも
手術して腫瘍を取り除けば
味覚障害は治ります
あのころの味が戻るの?
本当に?
私に切らせてください
私 失敗しないので
(三恵) この人 手術の痕もきれいだし
お願いしようかな?
よろしくお願いします
(鳥のさえずり)
(古時計の時報)
(あくび)
(神原)ねえ 未知子
花山さんから 新しい料理の本 届いてるよ
(未知子)興味なし
手紙 読んであげるね
“大門先生 お元気ですか?”
“この度 花山三恵は”
“入院中 お世話になった 内科の中野先生と”
“電撃入籍いたしました”
誰?
(神原)はい 写真
“私のお料理でイチコロでした”
“大門先生にも この幸せを分けてあげたいので”
“たまにはお料理してくださいね”
“大門先生にイチオシは 36ページです”
(神原)女子力アップルパイ…
へえ~
ふざけんな
あっ! もらうよ~
女子力ゼロね
(乱暴に戸を閉める音)
♪~
(ナレーション) 群れを嫌い 権威を嫌い 束縛を嫌い…
専門医のライセンスと
たたき上げの スキルだけが
彼女の武器だ
外科医 大門未知子
またの名を…
花山さんから お礼の 差し入れ 届いたぞ
〝独身の先生方へ 〞
〝肉食男子力 〞
〝アップルミートパイ です 〞
えっ?
肉食男子力アップル…
〝アップ 〞 うわ~ 花山さん…
(森本)おいしい!
(原)うん うまい!
味覚障害まで 治しちゃうなんて
(加地) またデーモンの話か?
そんな完璧なオペを 次々に こなすなんて
ありえないだろ?
うまい…
いや まあまあだ
(白木) 加地先生 加地先生
この間 話した 謎の医者の話
覚えてます?
うん あのキューバの すごい外科医のこと?
あの話 まだ続きが あるんですよ
ああ
〝この手術を 受けた患者が 〞
〝ひと月後に死亡 〞
“遺族は死因の解明を求めて 病院を提訴”
“しかし 現在もまだ病院側は”
“執刀したドクターXの正体を”
“明かしていない”
~♪
腹腔鏡(ふっくうきょう) 内視鏡ハイブリッド手術
(加地) そんな無謀な手術は
見たことも 聞いたこともない
(鳥井) そんなことが ホントにできるのか?
(神原) 腕が何本いると 思ってるの?
できるわけないでしょ!
私 できますよ
大門さん!
(未知子) できない 無理だわ これ
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