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越すに越されぬ大井川」>
大井川は➡
東海道五十三次 島田と金谷の宿の間にある>
江戸時代 東海道の要所とされ➡
幕府は 敵の攻撃を防ぐため わざと橋を架けさせず➡
また 舟で渡ることも禁じていた>
川越え人足の制度が置かれ➡
旅人たちは 必ず この裸虫を雇って➡
川を渡らなければならなかった>
(お静)ああっ
(辰造)おい 御新造さん
そう 片一方の手すりに しがみついちゃ➡
あっしが重くてしかたがねえって 言ったでしょう ええっ?
もっと 真ん中に座って ゆったりしてくだせえよ
(お静)でも… (権太)へっ➡
それに そう きちんと座っていなさるから➡
ふらふら体が揺れるんですぜ➡
着物の裾 押っ広げて でんと あぐらかいてもらわなくちゃ
(お静)そんな (辰造)御新造さん➡
そう 片一方の手すりに しがみついちゃ➡
あっしが重くてしかたがねえって 言ったでしょう
(松吉)ヘヘッ さあ あぐらかいて あぐらかいて
(一同)おら おら!
酒手は弾みますから そんなことを
(甚六)そいつは どうも でもね どうにでも➡
あぐらかいてくんなきゃ 担ぎにくくて 担ぎにくくて
(辰造)ほれほれ 御新造さん 危ねえじゃねえすか
慣れたお客さんならね こっちが言わなくても➡
あぐらをかいて 弁天様 拝ましてくれますぜ
(お静)ええっ!
(権太)ヘヘヘ… これが あっしら裸虫の役得でね➡
さあ 押っ広げた 押っ広げた
(一同)おら おら
やめて やめて
酒手は 1分 いえ 2分 弾みますから
(権太)間違いねえな? よし 行こう行こう
(辰造)ヘヘヘ… 旦那 酒手を2分 お願えいたしやす
(清吉) 何! 俺は 後ろで見てたんだぞ
お前たちは!
よし 川役人の方にお届けして
(権太)どうするんでい (清吉)お前たちは ゆすりだ!
お届けして 罰してもらうから そう思え
(松吉)ヘヘヘ… おう 川役人に届けるとよ ヘッ
(甚六)どうぞ どうぞ ヘヘヘ…
いくら届けたって 川役人は こちとらの言いなりよ
いいか 川役人っていうのはな➡
お上の御状箱が 無事 この川を越え➡
江戸へ向かうかどうかを 見極めるのが お役目なんだ
その御状箱を通す俺たちに 川役人が少しでも文句を言ってみろ
俺たち人足は 一人だって集まらなくなるんだぜ
そうよ 俺たち人足の御機嫌 損ねたら➡
御用が務まらなくなって すぐ これだ ヘッ
まあ うそだと思うんなら 試しにやってみるんだな
川役人は 知らん顔で➡
すぱすぱ たばこでも吸ってるのが 関の山よ
さあ 御新造さんの約束どおり➡
酒手を弾んで いただきやしょうかね 2分ね
いや 旦那が文句つけなっすったから 3分 頂きやしょうか
(お静)あんた…
♬~
(辰造) どうも ありがとさんでございやす
(一同)ヘヘヘ…
(権太)御新造さん 今夜 島田の宿でござんすか?
さぞ 旦那と しっぽりぬれて ヘヘヘ…
(甚六) どうも 道中お気をつけなすって
(一同)アハハ…
♬~
♬~
(刈造)ごろんぼ野郎 ふざけたまねしやがって
(松吉)ああ 俺っち裸虫の 縄張りを荒らすつもりだぜ
いや 待つんだ いくら ごろんぼ野郎でも➡
人斬り包丁 持ってやがら (辰造)しかし 兄ぃ
待て待て… 深みに入るまで待つんでい
なるほど 川ん中なら こっちのもんだい 野郎!
行くんだ! (一同)へい
(辰造)待ちやがれ! 勝手に川を渡るのは 御法度だぜ
おう 引き返して 俺っちの連台か 肩に乗ってもらおうかい
(権太)おう 浪人さんよ 渡し賃が ねえとは言わせねえぜ➡
こんな立派な刀 持ってんだからな (甚六)どうなんだい➡
おしかい つんぼかい 何とか返答したら どうなんだい!
(一刀)わしは なにも 川を 渡ろうとしているわけではない
(辰造)何! お前たちと同じ 裸虫の稼業が➡
わしにも できるかどうか こうして 試しておるのだ
何だと
どうだ 仲間に入れてくれぬか
(甚六)ええ? お前 正気で?
本気だ 頼む このとおりだ
しかしよ お前は仮にも 侍じゃねえか
その侍が 百姓町人を肩に乗せて 川を渡るなんて
とうに 侍であることは忘れている
食うためなのだ 頼む
(刈造) おう 飯を食ったのは 何時でい
辰の下刻だったと思う
おう ガキに飯 食わしてやれ (権太)へい
(権太)おら 食え➡
朝食っただけなら 腹 減ってるだろう 食え
俺が 思とったとおりだ (辰造)えっ?
さすがは 侍のガキだ
肝も太えが 何ちったかな しつけってやつも➡
行き届いていやがら (辰造)そんなもんですかね
こじきじゃねえから 施しは受けねえ
その侍の親子が 何だって お前 裸虫になりてえんだ
その訳は 申したはず 我ら親子が食うためにな
それが うそだってんでい!
(刈造) 親は我慢できても 子供は正直だ
手を出すに決まってら それが出さねえ
聞かせてもらおうじゃねえか 訳を
(刈造) 聞かしてもらおうじゃねえか
何度 聞かれても 同じことだ
我ら親子が 生きるため 他に訳はない
訳は ねえんだな?
(刈造)分かった すぐ仕事を 始めてもらおうじゃねえか
兄ぃ (刈造)黙ってろい
この地団太の刈造が➡
二本差しを 仲間に入れてやろうってんだい
文句あんのか (辰造)そ… そりゃ➡
兄ぃが いいってんなら 俺は 何も文句はねえ
てめえたち 文句はねえな?
(一同)へい…
決まった こいつは 俺の片腕の辰ってんだ➡
こいつは松 権… 甚六➡
あとは ぼちぼち 覚えてもらおうじゃねえか
拙者は… (刈造)いや 名乗ることはねえ
呼び名はな ああ ガキ連れにしておこう
いいな 野郎ども➡
今日から ガキ連れは 俺たちの仲間だ➡
びしびし仕事を教えてやれ➡
ガキはな 代わりばんこに 面倒見させてもらおうじゃねえか
(一同)ヘヘヘ…
(刈造)おう 飯を食え 仲間の飯だ 遠慮はいらねえよ
かたじけない 大五郎
全くよ しつけってやつは 恐ろしいもんだぜ
俺の ガキのころと そっくりだぜ (辰造)ばか野郎!
(一同)ハハハ…
あれ? 日が照ってんのに 降ってきやがったよ
それから 1尺までの増水には馬 2尺の増水で人を止め➡
それ以上の水かさになれば 川止めとなる>
御状箱だけは 止めることはない>
選ばれた川越え人足が 川渡しするのである>
(刈造)今日で 4日 ガキ連れも どうやら半人前だ
兄ぃ もう 肩越し水だ 渡れねえぞ
川止めだ 川番所 行ってこい (辰造)へへい
(新山)やむをえまい 川止めにいたす しかし辰造➡
明朝 京都所司代からの 御状箱の一行が着くゆえ➡
手慣れた者を集め 何としても 川をお渡ししなければならないぞ
(辰造)へい
御状箱である>
京都所司代 各地代官所から➡
幕府へ上申される 公用通信の書状のことである>
(新山) お待ち申し上げておりました
(甚六)親分 お役人がみえました (刈造)おう
(尾笹)用意はいいな? (新山)はっ 御状箱をお運び申せ
へい 野郎ども行くんだい (男性たち)よし おう 行くぞ
(男性)気をつけろよ!
(刈造)ガキ連れ てめえには この仕事は まだ早えや
しっかり 御用を務めるんだぞ
♬~
(男性)おい 早く入るぞ!
♬~
♬~
(尾笹)うわーっ! (役人)あっ!
(森田)取り返せ! (役人)急げ! 行け行け…
(森田)追え! 追うんだ!
♬~
♬~
♬~
(役人)逃すな! (役人)逃がさん! 逃がさんぞ!
♬~
♬~
(大五郎)ちゃん!
(男性)親方! (男性)兄ぃ!
(辰造)な… 何てことを…
(刈造)手ぇ出すんじゃねえ (松吉)あ… しかし
(刈造)お前が どんな素性で➡
どんな たくらみがあるか知らねえが➡
悪い人じゃ なさそうだ
早く 消えちめえな
いいか みんな 追うんじゃねえぞ
見ろい 何にもなかったじゃねえか
♬~
(南条)何! 拝一刀が?
水鴎流の使い手 拝一刀に間違いない
大井川の裸虫に まんまと紛れ込んで
(手下)うむ どこまでも かん知にたけたやつだ
(手下)御状箱を奪うとは 大胆不敵なやつ➡
今度こそは 我々が 草の根をかき分けても
(新吾) まだ 遠くへは行かないはずだ
(手下)よし 行こう (南条)待て! 慌てることはない
(新吾)なんと! 黒くわ衆の 長年の恨みを晴らすとき
封廻状を奪った大罪にとれば もっけの幸い
この機会を逃しては! (手下)南条氏 いかがなされた
拝一刀による 我らが仲間の 無残な最期を忘れたか!
忘れてはおらん
♬~
♬~
♬~
♬~
(手下)首領亡き後 我らが指図を仰ぐは貴公のみ
それを何とされた!
貴公が立たずば 我らだけでも!
(一同)そうだ! (南条)待て!
我ら 黒くわ衆が 隠密としての使命を何と心得る➡
亡き首領 岩根小角が残した言葉を忘れたか
しかし このような危急の際には
(新吾)御状箱の秘密が知れたら 我らのみならず 柳生の大事
隠密御用の面目が立たん (南条)黙れ!
我らが使命は いかなるときにも 表に立たず➡
敵と立ち向こうことにある すなわち忍びなり 影なり
我らが生死もまた 影なり
表に立っての行動は この南条が 断じて許さん➡
新吾 (新吾)はっ!
早速 江戸表へ早馬を立て 烈堂様の御意向を伺え
はっ!
(新吾)開門! 開門!
(役人)何者だ 馬を降りろ 人別をあらためる
隠密御用なれば 馬上にて御免!
(役人)黒くわ衆だ 何事が
♬~
♬~
(新吾)開門! 火急の使者でござる 御開門!➡
開門!
(下田)光ごけを用いて作った この液にて書かれた文字は➡
暗夜にても 月光を受ければ その姿を現す
(下田)こけの調合も 一段と 完成に近づきましてございます
(烈堂)うむ
(烈堂)しかし いずれにしても 未完であることには変わりはない
一刻も早く 完璧な物を調合せい (下田)はっ➡
柳生の一門 百草組の面目に懸けましても
≪(門弟)御前 早馬にて➡
火急の黒くわ衆の使いが 到着いたしておりますが
何! 誠か (新吾)はっ
あの御状箱を 一刀に奪われたと申すのだな
(新吾)はっ 裸虫に ふんしたる拝一刀が➡
大井の渡しにて 御状箱の一行を襲い
防ぐことは できなかったのか
うぬら黒くわ衆は 一体 何をしていたのだ!
畏れながら 我ら黒くわ者は 隠密御用
既に首領 岩根小角は 一刀のために倒されたとは申せ➡
表は姿を現さないのが 我らの職務
故にこそ こうして お知らせに参ったのでございます
もうよい!
おのれ 一刀め 御状箱を奪ったからには➡
我ら裏柳生の秘密を 嗅ぎつけおったな (新吾)はっ
たとえ あの御状箱を奪ったところで➡
一見して解読できる書状ではない
しかし もはや 一刻の猶予もならんぞ
何としても 御状箱を取り返すのじゃ
(一同)はっ!
さもなくば 我ら柳生の命運も尽きようぞ
よいか 一刀を捜し出すのだ
草の根を分けても 捜し出すのだ!
(鳥の羽音)
(高見)御前 黒くわ衆の使いばとが戻りました
皆の者 一刀の所在が相分かった 馬を引け!
♬~
♬~
♬~
(役人)何者だ 馬を降りろ 待て!
柳生烈堂じゃ まかり通るぞ
(役人)柳生 一体何事が
♬~
えい えい!
既に 拝一刀の四方は 我らが取り囲み➡
袋のねずみでございます (烈堂)うむ よかろう
まず一番手は 黒くわ衆で総掛かり
岩根小角をはじめとして 一刀に倒されし黒くわ衆は➡
既に 30有余名➡
我ら柳生がいでて 始末をつけるは たやすいが➡
それでは 公儀に名だたる 黒くわ衆の面目が立つまい
よいか 今こそ 黒くわ衆が全力を挙げ➡
一刀と 雌雄を決する そのときぞ
行け! (南条)はっ!➡
行くぞ! (手下たち)おう!
これでよし フフッ
こざかしいぞ 拝一刀
御状箱の秘密を暴き➡
あわよくば 幕閣に訴え出んとの 魂胆であろうが➡
おのれに あの御状箱の秘密が解けるか
フフフ…
笑止なり 拝一刀
蟷螂の斧をもって 天下の柳生に挑むとは
ハハハ…
《この何の変哲もない 所司代から幕閣へ宛てた書状》
《この中に 柳生の秘密が隠されている》
♬~
♬~
(諏訪守)《うう…》 (烈堂)《諏訪殿 許されい》
(諏訪守)《拝… 無念じゃ》
《しかし あのつえを かわせなんだは それがしの不覚》
《だが 烈堂は 明らかに 秘密露見を恐れて➡
こ… このわしを》 《諏訪守様》
《その秘密とは? それは何事でござりまする》
《御状箱じゃ》
《あの 六十余州から 日々 幕閣へ集まる御状箱じゃ》
《御状箱!?》
《よいか 拝 その全ての御状箱の中に➡
柳生の秘密が 隠されているために➡
わしは その全貌を つかむことができなかった》
《しかし 柳生が あの公用通信たる 御状箱を➡
私事に用いていることに 間違いはない》
《わしが それを突き止めたればこそ➡
立ち合いに名を借りて 烈堂めは》
《諏訪守様 その秘密とは?》
《何とぞ 私めに いまひと言》
《あの御状箱の中に… 拝…》
《あの御状箱の中…》
《諏訪守様!》
(鈴の音)
(鈴の音)
(鈴の音)
黒くわ衆か
公儀探索を務める お主たちが 柳生の犬となり➡
烈堂ごときの 手足となって働くのか
(南条)違う おのれは➡
我ら黒くわ一族の者 30有余名を手にかけた
ならばこそ 忍びの術は用いず 尋常に勝負を挑むのだ
たわけな
うぬらが 柳生の手足とならずば わしを敵対することもあるまいに
(新吾)問答無用! 我らが黒くわの恨み 受けてみよ!
ちゃん
♬~
♬~
♬~
ああっ!
♬~
♬~
♬~
黒くわの忍びずれが➡
姿を敵の前に現し 尋常の勝負を挑むとは
たわけ!
次の手だては よいか (松野)はっ
♬~
♬~
(松野)かかれ!
(門弟)しめた!
(松野)二手に分かれろ (門弟たち)はっ
♬~
♬~
(門弟)引き返せ!
♬~
♬~
(門弟たち)おっ! (門弟)箱車がない
(隊長)待て!➡
ここから抜けたな この先は 断崖絶壁だ➡
後を追え! (門弟たち)はっ
ちゃん!
(烈堂)今日こそ ここで おのれをしとめる
おのれの運命も これまでぞ
♬~
♬~
♬~
烈堂
黒くわ衆を総掛かりさせ➡
一門を繰り出しての うろたえぶりは やはり➡
御状箱を奪われたためか (烈堂)ほざくな!
あの御状箱に秘められた 柳生封廻状の秘密➡
必ず暴き出してみせる
あっ! ああっ!
御状箱は? (松野)はっ
(松野)これに
一刀は 封廻状を身に着けておる
一刀を捜せ 一刀を捕らえるのだ! (門弟たち)はっ
♬~
大五郎は➡
執ように襲いかかる 柳生の魔手から逃れた>
死に対する➡
深い悲しみの涙を拭って 大五郎はさまよい➡
村の藪女に 死生眼を持つ 不吉な子と言われながらも➡
ぐれんの炎の中から 赤子を救う>
大五郎にとって➡
父 一刀と巡り会えることが 次回…>
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