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♬~
♬~
♬~
♬~
♬~
(お囃子)
♬~
(良達) 年に 1度の祭りじゃというのに
どこへ行く (良達)酒だ まだ飲み足りんでな
ならん! ここから動いてもらっては困る!
(笠間)城代家老 大池詮勝は 財政立て直しのためと称し➡
始祖 家政公が家訓によって禁じた 飯縄山の伐採を敢行した➡
この事態を放置すれば 大雨の後の河川の氾濫は必定➡
お家 100年の治安を案じて➡
ここに結集された 貴公たちに問いたい➡
我々は いかに成すべきか! (侍)かん賊 詮勝を斬るべし!
(笠間)そうだ もはや 1日も いや 一刻の猶予もならぬ
(笠間)目先の利に走り 一寸先も見えなくなった詮勝に➡
藩政は任せられぬ
町や村が 渦巻く泥水の下敷きに ならぬうちに 今こそ!
(お囃子)
♬~
♬~
♬~
(侍)死ね!
しまった!
(詮勝)笠間大輔
その方 若者を扇動しての はかりごと➡
この詮勝が知らぬとでも 思っていたのか!
秩序を乱す ふていのやから 一人残らず 取り押さえ!
(笠間)騒ぐな!
(詮勝) 飯縄山の木材を切り出すことは➡
確かに 家訓によって 禁ぜられてはいる
しかし 僅か 3万石の➡
名だたる貧乏藩である 我が上田藩の➡
財政を立て直すためには やむをえぬ処置でござった
ところが 喉元過ぎれば何とやらの例え➡
昨日までの苦しさを忘れた 若侍どもが わしに盾をついた
斬っていただきたい相手は➡
当藩 先手者頭を務める 体捨流 笠間大輔
きゃつは 徒党を組んで わしの首を狙い➡
失敗するや 武器倉から 鉄砲弾薬を奪い➡
飯縄山に立てこもった
(一刀)藩内の内輪もめ なぜ お手前の手で始末なさらん
こちらが 力攻めいたさば きゃつらは 樹林に火を放つ
飯縄山 北中腹は 樹林一帯を一望できる 魔の難所
別名 吹き降ろしともいう その吹き降ろす風に火が乗らば➡
我が藩財政の命ともいうべき 杉 ひのきの木材資源が➡
瞬時にして灰となる わしの最も恐れる事態だ
何か こちらが 心覚えておかねばならぬことは?
もし 笠間たちが 江戸表におわす 主君 重広様に➡
急使を立てるようなことがあらば その急使も しとめていただきたい
重広様は お人が良いだけに 他人の言葉に左右されやすい
きゃつらは あることないこと➡
わしのことを ざん言するに相違ない
見逃すわけにはまいらぬ
他には? ござらぬ
うわーっ!
♬~
(侍)樹林に火を放つという 我々の脅かしが 効いたようだな➡
さすがの家老が 手も足も出ない
(侍)急使が 江戸より戻れば 詮勝の失脚は まず間違いない
(侍)あと 3日の命か…
(侍)それにしても 笠間殿は 用心深い 万一の場合を心配して➡
咫尺の地より 出てこようとはしない
(侍)誰だ!
坊や どこから来た
♬~
♬~
体捨流の笠間殿か?
(笠間)詮勝の手の者だな
刺客 拝一刀 試合を所望
笑止! ここは咫尺の地ぞ
「咫」は 8寸 「尺」は 10寸の例え 自由に動けぬ 狭き場所
およそ 剣に生きる者ならば 立ち入らぬ所ぞ
全て 承知の上
よかろう
水鴎流だな
この岩場の大きさに 等しい長さを持っておる
拙者を中心に 端から端まで 届かざる所なし
この鎖の回る所 そこがすなわち 咫尺の地
もはや 逃れるすべは
♬~
♬~
うっ!
お見事…
村に 祭りの日が近づいていた>
♬~
(万太郎)和尚いるか? ≪(良達)どなたじゃな
(万太郎)お… おい 坊主は 殺生しねえもんじゃねえのか?
(良達)何の こうして毎日 魚どもに餌をな➡
あっ いかん
(万太郎)ハハッ 実は 和尚 今日は 頼みがあって来たんだ➡
お前んとこの本堂を 俺っちの賭場に貸してくんねえか➡
どうせ お前 だだっ広く空いてるんだ➡
ここなら 藩の役人どもの目も 届かねえし 何かと重宝なんでな
(良達) 少々 てら銭が高いが よいかな?
(万太郎)しゃあねえや (良達)上がりは 山分け
(万太郎)ばか言うなよ お前 誰が聞いたって お前➡
てら銭は 2分って 相場は決まってんだい➡
それを 山分けとは何でえ 山分けとは!
嫌なら よすんじゃの (万太郎)何でえ このくそ坊主!
(平吉)親分! 怒っちゃいけやせん 怒っちゃ… また卒中で倒れますよ
ええい! この野郎 分かってらい (機織りの音)
うん? 何でい あの音は?
(機織りの音)
(万太郎)誰か 機を織ってるのか?
(平吉)へい 1年ぐれえ前から 侍の後家みてえのが住み着いて
それで 変なんだな ああやって 朝から晩まで➡
ぱたんこん ぱたんこん やってるのに➡
まだ誰も 出来た布を見たやつが いねえってんですから
ねえ? 和尚さん
♬~
(詮勝)千鶴 いつまで こうしてるつもりだ➡
お前の待ってる男は 二度と この地に現れはしないのだ
こんな所で 機など織って 朽ち果てることもあるまい
お前は まだ若いのだ➡
他家に嫁いで 幸せになる道を なぜ 考えないのだ
(千鶴)幸せ? それを奪ったのは 父上ではありませんか
(詮勝)まだ それを言う わしは 決して お前を…
(千鶴)お帰りくださいませ
千鶴
(良達)粗茶じゃが
のう 和尚 貴僧から いま一度 娘を口説いてみてはくださらぬか
(良達)お諦めなされ➡
肉親の父御が申し上げても 動ぜぬ お心 何で拙僧ごときが
しかし…
千鶴様のお心は 変わりますまい
あのように 織っては ほぐし ほぐしては また織って➡
ひたすら 悲願成就の日を 待ち続けてなさるのじゃ
千鶴様が お屋敷へ戻られる道は ただ一つ➡
あなた様が 政治と政の全てを お捨てなさることです
それはできぬ わしには上田藩士と その家族のなりわいを➡
支えてやらねばならぬ 大切な役目がある
そのことを いくら千鶴に申しても➡
あれは 分かってくれぬ だからこそ 貴僧に
そればかりは わしにも できそうもないのう
(良達)なあ 千鶴さん➡
あんたは 待ってる人の 顔を知らんそうじゃが 本当かな
(千鶴)はい でも お目にかかれば 分かります
また 異なことを
(千鶴)おいでになれば きっと
いいえ あの方は 必ず いらっしゃいますわ
(良達)そうかな? まあ 来てくれんことには➡
千鶴さんの願いも 達成されんのじゃが さりとて
その方に会って➡
一太刀でも 浴びせることが できれば それが本望➡
命は ここに来たときから とうに捨てております
♬~
御免
(機織りの音)
(物音)
(千鶴)まあ! 坊や よいしょ
どこの子? 村の子?
ああ あの機織りが珍しかったのね
あっ! ちょっと待っててね
はい これ あげましょう
嫌い?
(良達)ほう 死者の霊を弔いたいと 申されるか
故あって 刺客道に生きる身 手にかけた者の数も多い
お差し支えなくば こもらせていただきたい
それは 殊勝なる お心掛け 御覧のとおりの貧乏寺ゆえ➡
お構いはできぬが まあ 心行くまで 勤めなされ
かたじけない
あっ これこれ 坊や どこへ行くのじゃ
まあ この子は…
そう 施しは受けたくないの? じゃあ 頂くわね
はい ウフッ
八郎か ≪(八郎)はい
入れ
どうであった
(八郎) 拝一刀に 間違いございません
(詮勝)うむ
とうとう 来たか
おはよう
このお寺に泊まっていたのね (大五郎)うん
♬~
どうかなされたか
いいえ 失礼いたしました
♬~
♬~
間違いない
あの人こそ 待ちに待った拝一刀
あなた…
(松野)《そのように 御心痛なさいますな》➡
《そのうち よき折を見て この松野から➡
殿に よきを お取り計らいいたしますほどに》
《しかし 父上は 笠間様のことになると》
《先ほど 笠間様が おみえになったことは➡
くれぐれも 内密に頼みますよ》
(松野)《万事 承知いたしておりますゆえ》
≪(笠間)《待て 待たれよ》 ≪(武士)《やーっ!》
《あの声は》
《もしや 笠間様では》 (松野)《まさか》
《待たれよ》 (武士)《貴様のために娘が!》
(笠間)《これは御老人 ゆき殿が どうかなされたか》
《貴様に捨てられて自害した》
《結納を交わしながら 貴様は 家老の娘と!》
《そんなに出世がしたいか》
《それほど おのれの栄達が計りたいか》
(笠間)《待て 待たれよ これには子細あってのこと》
(武士)《問答無用じゃ!》
(武士)《うわーっ!》
(笠間)《御老人! 御老人!》➡
《御老人!》
(男性)《帰れ帰れ》 (笠間)《頼む 会わしてください》
(男性)《ええい うるさい》
《千鶴殿!》
《中におられるなら 笠間大輔の最後の言葉として➡
これだけは聞いていただきたい》
《私は 誠 あなただけを心に思っていた》
《拙者に やましい所はない それだけは どうか分かってくれ》
(千鶴)《離して お願いよ 松野 一目だけ 一目だけでも大輔様に》
(松野)《い… いけません》➡
《お出ししては この松野が殿から叱られます》
《父上》
《笠間は 藩士を斬り殺した罪人》
《腹を切らしてやるのが せめてもの情けじゃ》
《嫌です そんなこと嫌です》 (詮勝)《聞き分けのない》
《あのような節操なき男に どうして そのような》
(千鶴)《いいえ 違います》
《あの方は 決して そのような方ではありません》
《この千鶴が よく存じております》
(詮勝)《まだ そのようなことを》 ≪(笠間)《千鶴殿!》
《父上 あの声が聞こえませぬか》 ≪(笠間)《千鶴殿!》
《笠間には 追って沙汰があろう》
《それまで 取り乱してはならんぞ》
(千鶴)《父上 もう 一緒になりたいとは申しません》
《ですから せめて 大輔様のお命を》
《お願いでございます》
《でなかったら 私も この場で自害いたします》
(詮勝)《待て!》➡
《千鶴》➡
《お前は それほどまで笠間を》
《大輔様のためでしたら》
♬~
《千鶴殿》
(戸の開く音)
《大輔様! 死なないで!》
《父上が 千鶴の気持ちを 分かってくれたのです》
《あした お城へ上がって➡
お殿様の お口添えくださるそうです》
《千鶴殿》 (千鶴)《大輔様》
(笠間)《千鶴殿》
大池詮勝の手の者か
(詮勝)この寺は拙者の菩提寺で よく参るが➡
ここで 貴殿に出会うとは 奇遇じゃのう
誠に
あれ以来 もめ事一つなく 藩は安泰
全く 貴殿のおかげと感謝しておる
ところで 貴殿は何しにここへ
心静かに死者の霊を 慰めたいと思っていたが➡
ままならぬもの
えたいの知れぬ者どもに 襲われましてな
ほほう それはまた なぜ
いずれの家中の者か突き止めて こう お伝え願いたい
拙者と上田藩とは 恩もなければ 恨みもない
全ての関わりは とうに終わっている
黒田 人を斬りに行くとき その方➡
このような証拠になる物の持参を 許しておったのか
(黒田)はっ 申し訳ございません
(詮勝)八郎!
千鶴は 拝に名乗ったのか?
いいえ それは まだのようでございます
よし なおも動きを見張れ
万一 拝と果たし合うような そぶりが見えたら➡
すぐに知らせるのじゃ
かしこまりました
拝一刀と立ち合うて 千鶴に勝ち目のあるはずがない
笠間のことで不幸になっただけに なおさら ふびんでならぬ
そう まともに じろじろと見るなよ
坊主もな 酒でも飲まにゃ いられんこともあるのじゃ
坊やの父御も ようできた お人じゃが➡
千鶴さんの気持ちを思うとな
御坊 その話 詳しく聞かしてくださらぬか
あの機を織る女性
詮勝殿のゆかりの者と お見受けしたが
いかにも
貴殿が斬った笠間さんの妻女で 詮勝殿の娘御じゃ
♬~
機を織りながら 私を待っていたといわれるのか
所詮は 女の細腕
いかに 武芸の心得があるといえども➡
到底 貴殿の敵ではない
それなのに 一太刀 浴びせたいと
それにしても 哀れなのは女心じゃ
千鶴さんは 政治のこととはいえ➡
激しく対立していた 父と夫との間に挟まれて➡
どれだけ 心を痛め 苦しんでいたことか
(せきこみ)
(戸の開く音)
(笠間) 《起きていて大丈夫なのか 千鶴》
《あなた お話が》
《みんな 予定どおり準備を進めてくれ》
(侍たち)承知いたしました
(笠間)《何だ 千鶴》 (千鶴)《あなた》
《これ以上 父上と争うことだけは やめてくださいませ》
《お願いでございます》
(笠間) 《千鶴 お前の気持ちは分かるが➡
飯縄山の伐採は どうしても 阻止しなければならんのだ》
《父上は 我々の言葉に 全く耳を傾けようとはしない》
《だが 山が裸になったら➡
上田藩城下の田や畑が 洪水にうずもれてしまう》
《そんなことが 見過ごしにできるか》
(千鶴)《でも 血で血を洗うようなことだけは》
《それは 父上の出方しだい》
《好んで 武力を行使するつもりはない》
《私は あなたを死なせたくないのです》
《男には やらねばならぬとき というものがある》
《己が正しいと信じた道だけは 貫きたいのだ》
(笠間)《千鶴》
《あなた》
笠間さんが死んだあと➡
千鶴さんは 放心したように わしの元へ やって来た
そして あのように織り始めた
(機織りの音)
今夜中に 織り上げるつもりじゃな
織り上げたら 必ず貴殿に果たし合いを申し込む
拝殿 どうなさるおつもりじゃ
♬~
♬~
♬~
申し遅れましたが 私 笠間千鶴と申します
拝一刀と申す
粗茶なりと いかがでございますか
頂戴いたそう
あばら家ですので 略式でございますが
かたじけない
布は 織り上がりましたか?
はい おかげさまで 今朝ほど やっと
体捨流 笠間大輔殿 見事な お腕前でござった
ありがとうございます
ここは 夫の菩提寺
拝様が 心ある武士であり 再び この地を通られる折あらば➡
必ずや ここに寄られ 夫の菩提を 弔われるであろうと信じて➡
私は 待ち続けておりました
涙がかれ 年老いて 悲願の糸が擦り切れようとも➡
私は あなた様を 待ち続ける覚悟でおりました
お立ち合いくださいませ
あなたの父 詮勝殿も御承知か?
私に 父はありません
あの人にとって大事なものは 政治のこと
私に残されてるのは➡
夫の形見の鎖鎌で あなたと試合をすることです
夫の教えを受け いささか 腕に覚えはございます
私のこの願いを 是非 かなえてくださいませ
どうか お立ち合いくださいませ
承知つかまつった
して 場所は?
今夜 飯縄山中 咫尺の地にて
(詮勝)何… 飯縄山 山中にて? (八郎)はい
藩の重大なる秘密を 知っていた刺客
いずれ 斬らねばならぬと 思っていた➡
今度こそ しくじるでないぞ
はっ 必ず
策は あるのか?
はっ こちらへ
(黒田)お入りください
(黒田)何も見えませぬか?
(詮勝)おっ! これは
(黒田)下げろ
(黒田)この者たちは おのれの気配を完全に絶つ➡
死生の術を会得した 当藩 えりすぐりの侍たち
殺気を悟られずに 敵の喉元まで近づけます
いかに 子連れ狼とて➡
殺気のない者を 斬ることはできますまい
うむ (黒田)幸い 今日は祭り
この者たちを使って 一刀を 必ず しとめて御覧に入れます
(お囃子)
♬~
ハハハ… 子供じゃのう
祭り囃子が 心をときめかすとみえる ハハハ…
笠間さんが 決起した日も 祭りじゃったな
(お囃子)
♬~
(男性)面白いよ ほら
千鶴➡
その鎖鎌は もはや無用じゃ
えっ?
かかったな 子連れ狼
(黒田)死んでもらおう
うわーっ!
(詮勝)まだ分からんのか 千鶴
娘が 死にに行くのを 止めぬ父が どこにある
わしは お前のために 拝一刀を斬るのだ
父上は 私から笠間を奪い➡
今また 私の たった一つの願いを 壊そうとしている
(詮勝)千鶴 わしは 笠間が憎くて 斬らしたのではない
もしも 彼らを放置しておけば➡
藩は 収拾のつかない 混乱に陥っただろう➡
我が藩の秩序を守るために やむをえぬ犠牲だったのだ
それは 父上の勝手な言いよう 私は 笠間を愛していたのです
千鶴 笠間のことは もう忘れてくれ
いいえ 笠間は 私の全てだった 私の命
(詮勝)どこに行くのだ!
あの方との約束の場所へ
(詮勝)いかん! わしは行かせんぞ
どうしても行くというのなら 斬る!
あなたに 私が斬れるでしょうか?
(千鶴)おどきください
♬~
千鶴
遅れて すまん
いいえ
やーっ!
ああ…
♬~
あなた…
今こそ…
おそばに 参り…
♬~
♬~
ちゃん
千鶴さん 気のせいか 笑っていなさる
おばちゃん
わざと 一太刀 受けなすったな
この世の幸せは 生きることのみにあらずというが
熱い湯が沸いたで 茶でもいかがかな?
千鶴さんは 今 やっと幸せになれたんじゃ
今頃は 織り上がった布を 笠間さんに見せていなさるじゃろう
千鶴…
そして散った>
冥府魔道に生きる拝一刀の歩む➡
一筋の道に通じていた>
京都所司代から幕閣へ宛てた書状>
柳生の秘密が隠されている>
大井川で 御状箱の一行を待つ>
知らせを受けた烈堂は➡
柳生一門 総掛かりで 拝一刀の後を追う 次週…>
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