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(士郎(しろう))ハア ハア…
それで… 誰も泣かずに済むのなら
♪〜
〜♪
(足音) (アーチャー)ふん
(アーチャー) 随分と遅い到着だな 衛宮(えみや)士郎
ああ ようやく気付いた
あのペンダントが 2つあるはずがない
(士郎)あれは もともと… (アーチャー)そうだ
(アーチャー) あれは命を救われたお前が 生涯 持ち続けたもの
この世に2つとない 遠坂凛(とおさかりん)の父の形見だ
英霊の召喚には 触媒が必要となるが
遠坂凛には 呼び出すための触媒がなかった
故に 彼女は 呼び出したサーヴァントに
何の縁もないと思い込んだ
だが 偶然に 呼び出される英霊はいない
召喚者と英霊には 必ず縁が必要となる
(セイバー) 凛が触媒を 持っていなかったというのなら
(アーチャー) ああ 召喚者ではなく
呼び出された英霊自身が 触媒を持っていた
(セイバー) 英霊を記録する座に 時間の観念はない
過去の英霊も未来の英霊も ひとしく扱われる
つまり…
(アーチャー)そう
未来に現れる何者かを 召喚することもある ということだ
(士郎) アーチャー 遠坂はどうした
(アーチャー) 先に来た間桐慎二(まとうしんじ)にくれてやった
何だと!
(ランサー)焦るな 坊主 (士郎)あっ!
(ランサー) あのお嬢ちゃんなら 俺に任せろ
ランサー
(ランサー) マスターからの命令でな
元から俺は あのお嬢ちゃんを 死なせないために協力したわけだ
いや これが思いのほか 居心地良くてな
請け負った仕事を 気に入るなんてのは
俺にとっちゃ珍しい
なんで 最後まで面倒見させろ
それで お前たちとは きれいさっぱり敵同士だ
あ…
ヘッ
(士郎)遠坂を頼む
(ランサー)あいよ
(セイバー) 私は ここに残ります ランサー
本気か? 今のマスターは お嬢ちゃんだろう
(セイバー)分かっています
ですが… 私は この戦いを見守らなければ
フッ
そうかよ なら好きにしな
(アーチャー)“見守る”か
それは ありがたい
ここまできて セイバーに邪魔をされるようでは
凛と契約を切った 意味がないからな
ええ 何があろうと
あなたとシロウの 戦いの邪魔はしない
ですが その代わり答えてほしい
なぜ あなたは シロウを殺そうというのです
(アーチャー) なぜも 何もないだろう
そいつが俺を認められないように
俺も そいつを 認められないだけだよ
(セイバー)そんなはずは ない
衛宮士郎という人間の理想 英雄としての姿が あなたのはずだ
その理想が なぜ自分を否定するのです
(アーチャー) 俺は お前のように自らの光だけで 英雄になった者じゃない
死後の自分を売り渡すことで 英霊になった—
守護者にすぎないからな
守護者?
(ランサー)行け
(凛)あっ!
(慎二)何? その目つき
相変わらず空気を読めてないね 遠坂は
自分の立場を理解できないのかな
(凛)鏡を見てきたら?
分かってないのは そっちのほうだと思うけど
(慎二)強がりは よせよ
惨めだぜ
(凛)ん…
あきれた
何を言ってもムダみたいね
(慎二) そうそう それでいいんだよ
お前は僕のものだって やっと理解したわけ?
いいよねえ 程良く鍛えられた脚っていうのはさ
く…
(慎二) 嬲(なぶ)りがいがありそうで 実にいい
痛(い)て…
ん?
ぐあっ!
あ? 悪いな ガキ
口より先に手が出ちまった
あっ!
ランサー?
よう
(凛)え… な… なんで ここに?
(ランサー) いいから 今その枷(かせ)を切ってやる
あとは好きにしろ
広間へ行って バカどものケンカを止めるなり
裏口から帰るなり自由だ
あっ! ランサー 後ろ!
なに?
(言峰(ことみね))そこまでだ ランサー
協力しろとは言ったが
深入りしろとは言わなかったぞ
綺礼(きれい)!
(セイバー) 守護者だと…
守護者とは 死後 抑止力となって 人間を守る者と聞きます
なら 経緯は違えど 同じ英霊ではないですか
(アーチャー) それが間違いだ セイバー
守護者は人間を守る者じゃない
あれは ただの掃除屋だ
アーチャー?
(アーチャー)そうだな
俺は確かに英雄になった
衛宮士郎という男が 望んでいたように
正義の味方になったんだ
ん…
(セイバー)正義の… 味方に
(アーチャー) だから それが理由だよ
俺は その事実が 間違いだと知っている
その男の人生には 何の価値もないことをな
(セイバー)何の価値もなかった?
(アーチャー)ああ
分かるだろう セイバー
誰よりも過去を
過去の選定をやり直したいと 願っている君なら
(士郎)セイバー?
(アーチャー) 何だ 聞いていなかったのか
セイバーの願望を
なぜ こんな不毛な殺し合いに 身を投じてまで
聖杯(せいはい)を欲するのかを
あ…
(アーチャー) なら 俺が教えてやろう 彼女は…
(セイバー)アーチャー
シロウ
私は聖杯… 万能の願望機をもって
ある選択を なかったことにしたかった
私の過ち ブリテンの滅びの運命を 変えるために
まだ倒れるわけにはいかなかった
だから この手に聖杯が欲しい
私は理想に届かなかった
私は王になるべきでは なかったのです
ですが あなたは違う
あなたは衛宮士郎の理想を 正しくかなえた姿ではないですか
(アーチャー) “理想をかなえた”か
確かに俺は理想どおりの 正義の味方とやらになったさ
だが その果てに得たものは 後悔だけだった
生前 抑止力と契約し 死後 守護者となった俺は
霊長の抑止力として 世界のバランスを崩す者と戦った
命じられるがままに
殺して
殺して
殺し尽くした
命なぞ どうでもよくなるくらい 殺して
殺した人間の数千倍の人々を 救ったよ
求められれば何度でも戦った
何度も
何度も
何度もだ
だが 終わることなどなかった
キリがなかった
何も 争いのない世界なんてものを 夢みていたわけじゃない
俺は せめて 自分が知りうるかぎりの世界では
誰にも涙してほしくなかった だけなのにな
そこで ようやく悟ったよ
衛宮士郎という男が 抱(いだ)いていたものは
都合のいい理想論だったのだと
(セイバー)それは なぜ…
(アーチャー) 全ての人間を救うことはできない
全体を救うために 少量の人間を見殺しにするしかない
お前にも覚えはあるだろう セイバー
いずれ幸福という席から こぼれる人間を
速やかに この手で切り落とした
それが英雄と その男が 理想と信じる正義の味方の
取るべき行動だ
多くの人間を救うというのが 正義の味方だろう?
だから 誰も死なさないように と願ったまま
大勢のために 1人には死んでもらった
誰も悲しませないようにと 口にして
その陰で 何人かの人間には絶望を抱かせた
ん…
それが この俺 英霊エミヤの正体だ
そんな男は 今のうちに死んだほうが
世のためだと思わないか?
あっ!
自害しろ 衛宮士郎
て…
(ランサー) 俺のマスターは 表に出てこないのが
信条だったんじゃなかったか?
(言峰)そのような信条などない
そういう お前こそ命令違反だぞ ランサー
アーチャーの始末を 命じたはずだが?
(ランサー)ふん
あれは ほっといても自滅する
それより そこのガキは お前の差し金か?
人聞きが悪いな
彼とは協力関係だ
聖杯を手に入れるため 共に認め合った仲だが
そう
あんたが そう簡単に くたばるわけないと思ったけど
人畜無害な慎二を懐柔して どうしようっていうのよ
あれを人畜無害と とるか
この状況においても
お前は遠坂凛らしい
もう少し 出来の悪い弟子ならば 惜しむこともないのだが
待てよ 言峰
自分の教え子を救いたいって話
あれはウソだったのか?
ウソなものか
彼女は ここまで育てた大切な駒だ
10年にわたり欺き続けたのだから
そう簡単に リタイアされては つまらん
故に お前に 彼女の警護を任せたのだ
(ランサー)ん…
エセ神父
あんた 監督役のくせに ゲームに参加するなんて
反則も いいところじゃない
その割には落ち着いているな 凛
やはり気付いては いたのか
当然でしょ
けどね まさか初めっから だまされてるとは思わなかったわ
(言峰)初めから?
(凛)何よ
(言峰)いや 初めからというのが
それは どの辺りを 指しているのかと思ってな
(凛)綺礼… あんた
今回の聖杯戦争が 始まってからか?
それとも お前が言う初めてとは
前回の聖杯戦争を 言っているのかね?
ハッ
(凛)そう…
父さんを殺したのは あんただったんだ
当然だろう
恩師であったからな
だまし討ちは たやすかった
(アーチャー)どうした
自分の正体を知って何を悩む?
(セイバー) アーチャー あなたは理想に反したのではない
守ったはずの理想に裏切られ
道を見失っただけ ではないのですか
そうでなければ
自分を殺すことで 罪を償おうなどとは思わない
フッ
フフ… ハハハッ
いや これは傑作だ
俺が自分の罪を償う?
バカなことを言うなよ セイバー
確かに 俺は何度も裏切られ欺かれた
他人のために命を捨てる男なんぞ
誰に理解されるはずもない
最後には 争いの張本人だと 押しつけられて 絞首台だ
ウソだ アーチャー
あなたの最後は…
フ…
俺に罪があるというのなら
その時点で償っているだろう?
初めから感謝をしてほしかった わけじゃない
英雄などと もてはやされる気もなかった
ただ 誰もが幸福だ という結果が欲しかった
だが それが かなえられたことはない
生前も死後も
守護者というものが
自動的な装置であることは 知っていた
死後 己(おの)が存在を 守護者に預けた者は
輪廻(りんね)の枠から外れ 人類史を守る道具になるのだと
それでも 誰かを
窮地にある誰かを救えるのなら それでいいと思った
だが 実際は違う!
(凛) この!
逝き場に迷え クソ神父!
地獄だって あんたみたいなのは願い下げで
煉獄(れんごく)だって ほかの連中が ずぶとくなるんで たらい回しよ!
あんたみたいな不能者は 性に合わない天国あたりで
針のむしろに くるまってろっての!
ああ…
(慎二) 言峰 遠坂は僕がもらったんだって 知ってるだろう
あいつに用があるのは僕だけだ
いや 用ならばある
彼女には ここで
聖杯になってもらわなければ ならないからな
え?
(言峰) アーチャーとセイバーが消えれば いいかげん頃合いだ
いらぬ抵抗をされ 鮮度を落とされても困る
事は迅速に済ませてしまおう
ランサー そのゴミを始末しろ
器に心臓はいらん
(アーチャー) 守護者は人など救わない
守護者がすることは ただの掃除だ
既に起きてしまったこと
作られてしまった人間の業を
その力で 無にするだけの存在だった
霊長の世に 害を与えるであろう人々を
善悪の区別なく処理する殺りく者
バカげた話だ
無力だったころの俺と何が違う
(セイバー) 1人でも多くの人間を救う
あなたは 結局ただの 一度も
それを かなえることが なかったというのですか
(アーチャー)そうだ
俺は俺が救いたかったものをこそ
この手で そぎ落としてきた
正義の味方などという くだらない理想の果てにな
人間の後始末など まっぴらだ
だが 英霊となった俺は それを永遠に繰り返す
俺は もとより“無”
もし俺が消えられるとしたら それは…
(セイバー) 英雄となるはずの人間を 殺してしまえば
その英雄は誕生しないと あなたは考えるのですか
(アーチャー) その機会だけを待ち続けた
ただ そのときだけを希望にして
(セイバー)それはムダです
あなたは既に守護者として 存在している
時間の輪から外れているのです
今のシロウを消滅させたところで
あなた自身は消えはしない
そうだな
だが 可能性のない話では あるまい?
ついえるものが肉体だけではなく 精神を含めるのなら
少なくとも この世界に
正義の味方などという 間違いは現れまい
どうした 衛宮士郎
俺が認められないというのなら
ここで自害して果てるがいい
(セイバー)あっ!
シロウ!
(言峰)どうした ランサー
相手は少女だ 殺すのは たやすかろう
(ランサー)お断りだ
今回のは従えねえ
なに?
俺に やらせたかったら その令呪(れいじゅ)でも使うんだな
(言峰)ならば しかたあるまい
あっ!
では 令呪をもって命ず
(凛) ごめん 衛宮くん 私 先にリタイアする
自害しろ ランサー
(ランサー)うっ!
ん…
ああっ!
ぐはっ
ぐうっ!
ああ…
(凛)ランサー!
(士郎) アーチャー お前 後悔してるのか
(アーチャー)無論だ
(士郎)ハア…
それじゃあ やっぱり俺たちは別人だ
(アーチャー)なに?
俺は どんなことになったって 後悔だけはしない
だから 絶対に お前のことも認めない
お前が俺の理想だっていうんなら
そんな間違った理想は 俺自身の手で たたき出す
(アーチャー) その考えが そもそもの元凶だ
お前も いずれ 俺に追いつくときが来る
来ない
そんなもの絶対に来るもんか
そうか 確かに来ないな
ここで逃げないのなら どうあれ 貴様に未来はない
アーチャー
(士郎) いいんだ セイバー ありがとう
でも どうか下がっていてほしい
だって これは俺がするべき戦いだ
トレース
オン
俺の剣製(けんせい)に ついてこられるか
僅かでも精度を落とせば
それが お前の死に際だ
(士郎)やっ! (アーチャー)フッ!
♪〜
〜♪
(言峰) その心臓を もらい受ける
(慎二) 役立たずは 最後まで役立たずだったな
(アーチャー) 誰かを助けたいという願いが きれいだったから憧れた!
(士郎) 俺は なりたいんじゃなくて 絶対に なるんだよ!
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