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(蔦屋重三郎)え…?
長谷川様➡
このお方は…。
(松平定信)替え玉だ。
替え玉?
(長谷川平蔵宣以) 芝居町で 大崎を捜しておった時にな。
おい… 嘘だろ?
ご無礼いたします。
火付盗賊改方 長谷川平蔵と申します。
一橋様…➡
お忍びでございますか?
阿波蜂須賀家お抱えの能役者➡
斎藤十郎兵衛と申しますが。
ごめん。
少し よろしいか?
まことに瓜二つ…。➡
先生は この者のことを ご存じだったのでございますか?
(柴野栗山) 初めて あの方に拝謁しました時➡
私は 夢の中におるのかと思いました。
事故や拐かしに見せかけ➡
傀儡好きを亡き者とすれば 大騒ぎとなるが➡
替え玉がおれば 避けられる。
斎藤殿がおったゆえに➡
我らは 仇討ちに踏み切れたということだ。
(平蔵) しかし 一橋様の癖や好みを教えたり➡
さまざまな取り繕いは要る。
その役を任せることと引き換えに➡
大崎も こちらへ引き込んだのだ。
♬~
この者は 阿波蜂須賀家の斎藤十郎兵衛だ。
我々は 一橋と斎藤を入れ替えようと 考えておる。➡
入れ替える前 最中 そして その後…➡
助けてはくれぬか?
ちなみに 傀儡好きってのは…。
一橋治済。
上様の父だ。
それは 謀反にございませんか!?
斎藤様は よろしいので? 替え玉って…。
越中守様が 蜂須賀家の殿と話をつけられ➡
主命として 替え玉となるよう命じられた。
そもそも この方々に言われ 私に断れるわけがなかろう。
…今後は どうなさるおつもりで?
企みは 露見されたのでございますよね。
まさか しくじった時のお考えもなく?
しくじりなど考えては かようなことは やれぬ!
命が惜しくば➡
息を潜め 店を畳んでおれ!
♬~
♬~
当分の間 店を閉め 表に出るなって…。
何で また?
まぁ その…。
(みの吉) ちょいと 休みもらったと思ってさ…➡
店に籠もって 本でも読んで…。
みの吉!
(てい)みの吉? 大丈夫か!?
吐き切れてなかったのかも…。
(てい)吐くって 何をです? おていさん 医者を。
(うめき声) おい 何やってんだよ!
俺ら 毒饅頭 食わされたんだよ…。
毒饅頭?
(てい)あの時…➡
写楽をやろうなどと➡
言わなければようございました!
そもそも のこのこ釣られた俺が悪いよ。
諦めるしかないのでしょうね。
これが 浮世なのだと…。
今は 嵐が通り過ぎるのを 待つしかできねえ。
店 閉めて 食いもんには気を付けて…。
(たか)勘弁してくださいよ!
いくら 気を付けたって➡
井戸に毒なんか入れられたら ひとたまりもありませんよ!
気を付けるにも 限りがあるってんです。
お嬢様も 諦めるって何です!?
奉公人の身を危うくして➡
それでも 女将ですか!
旦那様!
いつ 毒盛られるか分かんねえなんて こ… 怖すぎます。
火付けだって あるかもしんねえですよね…。
俺 やめてえです! やめていいですか?
やめたら 毒饅頭 食わされねえですよね!?
うっかり…➡
毒饅頭 食わねえですかね そいつ…。
仕込んだやつが…➡
うっかり食って ぽっくりってなぁ…➡
面白くねえですか…。
そうだな 毒饅頭か…。
(一橋治済)芝居町で 白河の者が数多➡
食あたりで落命したそうであるなぁ。
はっ。
祭に繰り出し 大騒ぎをしたようで。
質素倹約 風紀粛正を旨とする お主の家中がのう。
まこと 汗顔の至りで。
ま わしは さほど大事とは思わぬが…➡
のう 本多。
(本多忠籌)風紀粛正 質素倹約を叫んだ 本人のご家中が これかと➡
御公儀は もはや 笑い物とされております!
(松平信明) 大名らの中に かほどの恥さらし➡
けじめをつけるべきという声も ございますな。
(治済)のう➡
ここは いっそ➡
隠居してはどうじゃ? 越中。
…ご容赦を!
嫡男 太郎丸は まだ4つでございますし!
では 当家から世継ぎに遣わそう。
太郎丸が大きくなるまで。
(定信)どうか… それだけは何卒!
確か➡
松前殿には➡
遊興を理由に 隠居を申しつけておったなぁ。
聖人君子でも➡
我が身は➡
かわいいものよの。
♬~
⚟(いななき)
(平蔵)刺し違えるとは!?
(定信) あやつが 殿中を通りかかるのを狙い➡
斬りかかる!
(平蔵)然様なことをなされば 末代までの恥さらしとなりましょう!
(栗山)白河のお家は断絶 家中は浪人➡
まともなご判断とも思えませぬが。
では…➡
この辱めに耐えよというのか!?
(水野為長)殿 ご無礼仕ります。➡
入れ。
♬~
本屋の相手をしておる暇は ないのだが。
そう おっしゃらず。
何せ 暇なもんで。
どなた様かの不手際で 店を休むことになりまして。
一生 店を開けられぬようにされたいか?
ちと思いついたのでございますが➡
傀儡好きに毒饅頭を食わせるってなぁ いかがにございましょう?
毒饅頭の仇は 毒饅頭で取るってなぁ➡
こりゃ なかなか 頓知が利いておりますかと。
こう うっかり➡
ぱくっと食わせちまって。
ふざけるのも いいかげんに…!
と おっしゃられても ふざけんのが 私の分にございますんで。
ああ 確か➡
きっちり 分 つとめてりゃ➡
よい世がくるのでは ございませんでしたっけ?
(栗山)毒饅頭を うっかり食わせるとは これ いかにして。➡
一橋の奥女中でも抱き込み 仕込ませるのか?
いや それじゃあ 奥女中の首が危ない。
これ以上 死人が出んのは いただけません。
(栗山)では いかに?
お一人だけ おられましょう。
誰に いくつ 毒饅頭 食わせても 許されるお方が。
まさか…!
然様なことができるわけがなかろう!
けど こりゃ 上様の分にございます。
上様ってなぁ➡
この世に 太平をもたらすためにいらっしゃる。
太平を乱す輩がいんなら➡
毒饅頭 食らわすのが 上様のつとめ 分だ。
私らには 分を 分をっておっしゃいながら➡
天下を治める公方様が➡
己の分には知らん顔ってなぁ➡
こりゃ 道理が 通らないってもんじゃございませんか?
上様のお成り~!
(徳川家斉)そなた 名は?
きく…。
(家斉)いかがした?
恐れながら 皆 怯えておるのでございます。
上様と添えば 家基様に祟られると。
(泣き声)
(定信)我らは今 上様と お話しできるお方を探しております。
清水様。
どうか… どうか!
我らの仇討ちに 力をお貸し願えませぬでしょうか!
(清水重好)ちょうど 兄上と甥に 冥土の土産をと思っておったところでな。
あの日より ずっと 仇を討てぬ己が不甲斐なく…。
あの日… とは?
兄上 先の公方様が お亡くなりになられた日にの。
(徳川家治)天は➡
天の名を騙る おごりを許さぬ!
なんと…➡
先の公方様 自ら 然様なお言葉を。
上様を傷つけぬためにか 錯乱を装われておったゆえ➡
意味は とりにくかったが。
お待ちください。
その場には 上様もおられたのでございますか?
うむ。➡
ご幼少におわしたゆえ➡
覚えておらぬかもしれぬが。
その時のことを 上様に思い出していただければ…。
♬~
(重好)此度は 梅の方様のご臨終➡
お悔やみ申し上げます。
(家斉)心遣い痛み入る。
上様 実は ここのところ➡
亡き公方様が 私の夢枕に立つようになりまして。➡
亡き公方様 そして 西の丸様の無念を晴らすと➡
物騒なことを仰せで。
…それは まことか?
⚟(治済)上様 ご無礼いたす。
おお これは これは 中納言様。
お体も おつらいと聞きますところ わざわざ 側室などのお悔やみに。
私も そう先は長くなさそうにありまして ご挨拶 差し上げておかねばと。
それは ご丁寧なことで。
まこと…。
今後の当家の家督について ご相談し申してはどうだと➡
越中に勧められたのもございまして…。
ほう 越中が?
はい。
では…。
では 上様。
(戸が閉まる音) 田安と清水か。
父上…。
近頃 亡き公方様が 夢枕に立つそうにございます!
亡き西の丸と共に無念を晴らすと!
父上 やはり ここは 改めてのご法要を!
くどい。
しかし…➡
しかし 夢枕にと清水も!
おいたわしや…。
もはや 中納言様は➡
夢か現もお分かりにならぬように…。
ああっ…!
♬~
何だ これは…。
(定信) 上様とお話しできなかったばかりか➡
私の名を出しただと?
どうも 一橋様が恐ろしかったようで つい…。
なんということを…。
これでは 全てが台なしではないか!
⚟まこと ご苦労に存じましたと お伝えくださいませ。
こちら➡
どうぞ。 ああ いや…。いえ どうぞ。
…ごめん!
うぬは たたっ斬られたいのか!
物事なんて そう思ったとおりに 運ぶわけじゃございませんでしょう。
国が治まると思って 凧あげちまった人を たたき斬ったって 何の意味もねえ。
それなら それで どう立て直すのか。
それこそが 事を収める腕ってもんじゃ ございませんか?
⚟(平蔵)ご無礼いたします。
大崎殺しの証しの方は?
何も出てこぬ。
饅頭を食うところを 見てた者くらいは おるものの➡
確かなのは 大崎が傀儡好きのほか やり取りをしていたのは➡
お主が最後ということくらいだ。
私が最後?
ありがとうございました。
(大崎)釣りは いいので。 ああ…。
釣りは 要らぬ。
その割に…。
あの…?
(栗山) 本日は こちらをお届けに上がりました。
しるべの者が見つけ➡
いかにすべきか 私のもとに持ち込みましてございます。
(大崎)「上様 お久しうございます。➡
とは申せ お手元に これが届いた時には 私は この世におらず➡
地獄への道中を 歩んでいることと存じます。➡
人を殺めてきたからにございます。➡
先の公方様 家基様 田安治察様 右近将監様➡
名も知らぬ数多の民 女子供➡
関わり方は さまざまですが➡
全ては お父上様のお指図にございました」。
(家治)悪いのは… 父だ。➡
全て…➡
そなたの父だ…。
(大崎)「お父上様は➡
生身の人を まるで傀儡のように 操ることがおできになる➡
比類なき才をお持ちにございます。➡
あのお方は 天➡
この世の者は 皆 傀儡。➡
私も 傀儡➡
ご無礼にはございますが➡
上様こそ 最たる傀儡にございます。➡
上様➡
どうか お父上様の悪行を お止めくださいませ。➡
あのお方を止められるのは➡
この世に ただお一人➡
上様しか いらっしゃいませぬ。➡
大崎」。
♬~
(栗山)まことに 大崎様が したためたかどうかは➡
私に知る術もございませぬが。
これは 大崎の字だ。➡
幼き頃より何度も見た 乳母の字だ…。
それに もし 大崎の書いたものでなくとも➡
余は 知っておる。
天は 天の名を騙る おごりを許さぬ!
ここにあることは まことだと➡
とうの昔から…。
おいたわしや…。
もはや 夢と現もお分かりならぬように…。
栗山…➡
余は いかにすべきであろうか?
家督についての相談をと 清水が 言ってまいったのでございますか?
本来なら こちらから伺うべきだが 体調がすぐれぬゆえ➡
できれば 清水の屋敷の茶室で➡
余も共にと。
上様も?
うむ。
ふ~ん。
それは 楽しみじゃのう。
(三浦庄司)では 今日➡
清水様の茶室にて 毒が?
へえ。
出される手筈となっております。
しかし 上様と清水様で うまく おやりになれるのかのう…。
そこは 信じるしかございませんよね。
奥方には 年 金3千両と米5百俵。
そのかわり 家督は 余の弟に継がせたい。
家名を残していただけること まことに ありがたく。
では 一服お点ていたします。
どうぞ。
♬~
あの お食べにならぬので?
わしも 腹具合が ようないゆえ➡
どうぞ 上様が 召し上がってくださいませ。
(家斉)美味にございますが。
ならば なおのこと 上様が召し上がるとよい。
然様にございましょうか。
では。
♬~
いかがなさいました?
いや… まこと よい食べっぷり。
末頼もしい。
美味だと申し上げたでは ありませぬか。
どうぞ。
では。
まこと 結構なお点前で。
まさか…➡
まさか もろともに!?
♬~
う…。
うう…。
おのれ…!
(戸をたたく音)
(三浦)毒は毒でも 眠る毒?
へえ。 眠ってる間に入れ替えちまえってことで。
そのあとに➡
…ということか? ああ いや➡
殺さねえで 阿波の孤島に 閉じ込めることになってます。
殺さぬのか?
お武家様は平気なのかもしれませんが➡
私には てめえが企んだことで 人が死ぬってなぁ どうも あれで。
栗山先生が➡
「どれほど外道な親であっても 親殺しは大罪。➡
義はあっても 上様は大罪を犯すことになり➡
それを仕掛けた私たちも 外道に成り下がる」と➡
おっしゃってくれて。
⚟旦那様。 うん?(足音)
いかがでございましたか? 首尾は。
(為長)無事 替え玉はお城に➡
本物は 阿波に向かい出立されました次第!
♬~
殿 若殿…。
やりましたぞ…。 やりました。➡
やりました…。
やりました…。
(泣き声)
(いななき)
本物の一橋様が 阿波に送られている頃➡
蔦屋は 営業を再開。
ありがとうございました。
あ… ああっ!
今日は いかなる御用向きで?
(定信)国元へ下るのでな。
む…。
これは?
昔の黄表紙を仕立て直しておりまして。
ああ… 今更 売れるのか?
江戸では そこそこにございますが➡
今 諸国では 黄表紙が流行っておるのでございます。
ふ~ん なるほどな。
江戸を 離れるのでございますね。
御公儀の政に➡
お戻りになると 考えておりましたが。
今 戻れば 要らぬ噂を呼ぶことになろうし➡
それに➡
外道とはいえ 上様の御父君をはめたのだ。
誰知らずとも 謀反の罰は受けるべきである。
そういうとこは 筋を通されるのでございますね。
そういうところも …だ。
というわけでな その方には時折➡
絵や本を 十郎兵衛に届けて 無聊を慰めてやってほしい。
斎藤様 うまく おやりで?
元家老であった 田沼の甥などを 内々に入れるよう計らっておるし➡
何と言っても 上様がお味方だ。➡
多少 難が出ても➡
その身は 確かな力で守られる。
その点につき➡
上様を引き込んだ そなたの考えは 秀逸であった。
褒めて遣わす。
ああ…。
あの…➡
それ おっしゃるために お立ち寄りに?
…イキチキドコキキテケ➡
ミキタカカカッタカノコダカ。
は?
え…。
「金々先生」より こちら 黄表紙は漏れなく読んでおる。
春町は 我が神➡
蔦屋耕書堂は➡
神々の集う神殿であった。
あのことは 我が政 唯一の不覚である。
あがった凧を許し➡
笑うことができれば…➡
全てが違った。
♬~
写楽ってなぁ➡
春町先生への供養のつもりで➡
取り組んだのでございます。
春町先生を唆し でっけえ凧あげさせちまったのは➡
私にございますんで。
♬~
ご一緒できて ようございました。
…では➡
今後は 随時 よき品を見繕い こまめに白河へ送るよう。
え?
抜け目ない商人に 千両も取られたゆえ➡
倹約せねばならぬ。
この後 越中守様は➡
白河にて 民の暮らしの向上につとめ➡
その政は 後の世にも大きな影響を与えました。
同時に 文化振興にもつとめ➡
自ら 「楽翁」と名乗り➡
硬軟兼ね備えたオタクとしても➡
その名を歴史に残すこととなります。
俺たちは 屁だ~!
へ! へ! へ! へ!
へ! へ! へ! へ! へ! へ!
へ! へ! へ! へ!
日の本一のべらぼうにございました。
へ!
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