All language subtitles for べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~(41)歌麿筆美人大首絵 - [1440-1920@KFMVFR.NV7-hevc10_q 230_u P7][字]

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Original subtitles

(蔦屋重三郎)身上半減って…。 一体 何やったんですか?

(須原屋市兵衛)うん?

うん まぁな 林 子平先生のな 「三国通覧図説」➡

まぁ それを出したからっていってよ。

「海国兵談」書いた人ですよね? こないだ 絶版食らった。

おう そうそう。

オロシャが 江戸の港を攻めてくるって そう書いたんだよな。

須原屋さん…。

「海国」にはな みんなが知っていた方が いいなってことが書いてあったからさ。➡

いや オロシャが 江戸に攻め込んでくる っていうことがあっても➡

おかしかねえってことだよな。

なあ 蔦重。

知らねえってことはな 怖えことなんだよ。

物事知らねえとな 知ってるやつに いいようにされちまうんだ。

本屋ってのはな➡

正しい世の中のために いいことを知らせてやるっていう➡

つとめがあるんだよ。

平賀源内風に言えばな 「書をもって 世を耕す」。

これなんだよ。

須原屋さん。 (須原屋)うん?

目にもの見せてやりましょう。

身上半減なんてしたって無駄だ。

俺たちゃ んなことで へこたれねえ。

何度でも よみがえるって。

合点承知!

…と まぁ そう言いてえところだがな➡

俺ゃ この辺りで 跡を譲ろうかと思ってるんだ。

え…?

実のところな 近頃は 本を読むのも一苦労なんだ。

蔦重。

頼むぜ。

俺ゃ 死ぬ前に もう一度…。

もう一度 見てえんだよ。

浮かれて 華やいだ江戸の町をな。

合点承知にございます。

蔦重…。

(みの吉)年明けに 新作を山ほど出すってんですか?

ああ。 狂歌本も黄表紙も ずらっと並べて 暖簾も直して 畳も入れて➡

身上半減なんて 何のその➡

蔦屋は何度でもよみがえるって 見せつけてやんだ。

(みの吉)再印本の黄表紙を 諸国の本屋に売り広めて➡

稼ぐってことですか?

それも そうだけど ひとつ 自前の書物も当てようと思ってる。

(滝沢瑣吉)自前の書物か! それは いい!

ハハハハハハ! ああ。

ってことで➡

おていさん 頼むぜ。

(てい)私に 書物の案を出せと? おう。

無理です。

無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です➡

無理です 無理です 無理です 無理です…。 頼むよ。

うちで 書物に親しんでるのは おていさんしか いねえんだ。

案ずるな 女将 俺が力になってやろう。

まず 30本 考えるだけ考えてみてくれ。

選ぶのは 俺だ。

30本か。 よし!

瑣吉は 求板する再印本を選んでほしい。

然様な つまらぬ仕事 手代に任せればよかろう…。

お前も手代なんだよ!

瑣吉先生。

俺ゃ 瑣吉先生は とびきりの作者になると見込んでんだ。

その目で 安くて面白え黄表紙を 見つけてほしい。

任せろ!

案ずるな 手代!

(みの吉)お前も手代だろ! (瑣吉)ハハハハハ!

(たか)大事ありませんか? 横になられますか?

医者 呼ぶか?

(つよ)いいよ 大したことないから。

年も年だし 大事見てよ。

案ずるなら これ以上 頭痛の種を 増やさないどくれ!

合点承知だ!

こうして 不死鳥のごとき復活を目指し➡

蔦重は 走りだしたのでございます。

♬~

♬~

(喜多川歌麿)「浮気の相」➡

「面白き相」➡

「浄き相」。

(歌麿)いいんじゃねえか? 色も綺麗に出てるし。

けど いまひとつ 地味じゃねえか?

ちょいと ちょいと。

こういった淡い色を柔らかく出してえって 注文だと こうなりまさね。

色 変えるかい?

いやぁ…。

これ… 周りを雲母摺にすると どうなります?

雲母 使うの? ああ。

周りが キラキラすりゃあ➡

この淡い色目が 面白くなりませんかね?

贅沢な気分にもなってくるし➡

雲母は 金銀ほど 値も張らねえでしょ?

そりゃ そうですが 錦絵で雲母摺なんて 聞いたことねえですよ。

いいじゃねえか!

誰も見たことがねえもんに なるってことだ。

いらっしゃいませ! いらっしゃいませ!

じゃあ 上がったら また知らせるな。 おう。

嫌だったか? キラキラすんの。

感心してんだよ。

相変わらず よく考えつくなって。 ああ…。

「十躰」は 江戸がひっくり返るほどの バカ売れ狙うからよ。

畳 入れたいから?

畳も入れてえし➡

お前を当代一の絵師にして 蔦屋の名もあげてえし➡

江戸を沸き返らせてえ。

江戸を沸き返らせたい? ああ。

皆が楽しんでいた 田沼様の頃の江戸にしてえんだよ。

蔦重は変わんねえな。

どうした? 瑣吉。

んだよ?

あ?

やはり そうだと思うのだがなぁ。

(歌麿)何がだい?

お主… 男色ではないのか?

もしくは 両刀。

(足音)

(たたく音) あっ! 何をするオババ!

無礼だろ! 親しくもない相手に いきなり!

(瑣吉)町人の分際で どっちが無礼だ!

すまねえ。 瑣吉は 無礼で思い込みの激しいやつで。

俺➡

両刀だよ 瑣吉さん。

(瑣吉)おおっ!

(歌麿)俺は 男も女も好きさ。

やはり! やはり そうか! ハハハハ!

けど 瑣吉さんは違うのかい?

俺は 筋金入りの女好きだ。 女も 俺を好きだしな。

ハハハハハハハハ! そうかい。

でも 蔦重と おつよさんだったら どっちが好きだい?

そりゃ 蔦重に決まってる!

筋金入りの女好きなのに 女より好きな男がいるのかい?

…ん?

俺は そもそも 男か女かで 人を分けたりしねえんだよ。

俺は 「好きな人」と「それ以外」で 分けてるもんでさ。

その「好きな人」は 男のこともありゃ 女のこともある。

まぁ 世間様の物差しに当てりゃあ 両刀ってことになる。

実は 瑣吉さんも そうってことはねえのかい?

う~ん… ん? んん~?

じゃあな。

瑣吉を追い出せって…。

あんなの うちに置いといたって しょうがないだろ!

お客の目の前にも出せないし 大飯食らい 余計なことしか言わないし!

まぁな。

けど 変に見どころあんだよ。

大化けする気もしてよぉ。

だったら よそに置いて 黄表紙だけ頼めばいいだろ!

けど 歌に やり込められてたし➡

一皮むけるかもしんねえぞ?

あんた あれ 歌が平気で言ってたと思うのかい?

歌から 何か聞いたのか?

見てりゃ 大抵の察しはつくよ!

昔 いろいろ あったんだろうなってことぐらいは!

あんなの置いといたら 次は 歌に 何言いだすか分かったもんじゃ…。

いった…! おい ババア ほんとに医者呼ぶか?

もう あんたと話してると 頭 痛くなってくるよ!

とにかくさ あんたは ろくに 口もきいてもらえなかったんだから➡

もっと 歌を大事にしないと➡

そのうち ほんとに捨てられるよ!

いっつ…。

つ~…。

おていさん 一度 医者 呼んで 診てもらってくれよ。

かしこまりました。

あの これ 書物の。

おお できましたか 30本。

「枯れ木も山の賑わい」と申します。

どうか そのくらいのお心持ちで ご覧いただけると。

かしこまりました。

♬~

うん…。

♬~

先生 ご無沙汰しております。

艶二郎の折には お世話になりまして。

いやいや こちらこそ。

あの 艶二郎のもとになった「手拭合」の絵 先生の手なんだよ。

存じ上げております。➡

加藤千蔭先生。➡

賀茂真淵先生の門下筆頭の和学者 和歌の名手 書家としてもご高名で➡

流麗な「千蔭流」の書は 皆の憧れにございます。

憧れ? いやぁ てれるねぇ。

先生 さあさあさあ。

悪いね。 いえいえ。

ちなみに この千蔭先生も田沼派で 閉門を受けた方です。

で 先生に 書物問屋蔦屋のお披露目の作を お願いしたいんです。

千蔭流の美しい書物の本を。

女子にも受けそうな。

女子に? 書物でかい?

はい。

美しい書は 眺めるだけで楽しいですし➡

世には 趣あふれる書を書きたい女子は 大勢おります。

更に言えば 本当は学問をなしたい女子は➡

数多おるのではないかと考えました。

けど 書物ってなぁ どうも 女子には入りにくい。

せっかく うちが書物をやるんです。

女子の客を取りにいくってなぁ 悪くねえと思いまして。

どうか お願い申し上げます。

(せみの声)

(足音)

(つよ)こないだ 悪かったね。

瑣吉が おかしなこと言いだして。

なかなか うまく返しただろ?

…うまかったよ。

旦那様は 何一つ気付かないほどにね。

フッ…。

このままじゃ あの子は 一生 これっぽっちも➡

あんたの気持ちに気付かないよ。

あんたは それでいいのかい?

(せみの声)

気付かれたとこで…➡

いいことなんて 何もねえじゃねえか。

蔦重が 同じ気持ちなわけもねえし➡

仕事もやりにくくなるだけだし。

耐えられんのかい? それで。

(せみの声)

俺の今の望みは➡

綺麗な抜け殻だけが 残ることさ。➡

せみは どんな気持ちだったか 分かんないけど➡

抜け殻だけは ずらずら残ってて。

それは➡

とびきり綺麗だったり 面白かったりして➡

誰かの心を癒やす。

2人で いい抜け殻だけを残せんなら➡

俺は 今 それだけでいいんだ。

それにさ➡

この気持ちも いつかは 消えてなくなんじゃねえかとも思うんだ。

おきよがいた時は➡

ほんとに忘れてたわけだし。

はあ… ごめんねぇ 歌。

おつよさんが 謝るようなことじゃねえだろ。

私が悪いよ! あんな朴念仁に生んじまって!

おつよさんが悪いわけでも 蔦重が悪いわけでもねえし➡

ありがてえよ。

聞いてもらえるってなぁ 心が軽くなるもんだな。

私 来るよ もっと。

いいよ。 忙しいだろ? 店。

遠慮してんじゃないよ! おっかさんの前で!

あんたは あの子の義理の弟。

だったら➡

あんたも 私の息子さ。

…じゃあ➡

よろしく頼むよ おっかさん。

フフフフ…。

(つよ)フフフ。

(足音)

おや どうしたんだい?

旦那様が お戻りくださいって。

できれば 歌さんも一緒に。

俺も? はい。

(てい)行きましょう。 (つよ)医者は… 医者はいいって。

ほんとに 大事ないから! 何ともない… 何ともないって!

怖くない。 怖くない!

怖いよ…。

もう 大変でしたよ。

ですよね。

こんな錦絵 見たことねえです。

まぁ えれえもんが生まれちまいましたよ。

歌。

こうすっと もっと すごいんだぜ。

ん? ちょいと。

わあ…。

な?

(歌麿)まるで 浮き上がって見えるよ。

あとは どう売るかだなぁ。

どう売るかって?

えれえもんには えれえもんに ふさわしい お披露目があるってもんだ。

(松平定信) 本多らが一派を作り始めておる?

(水野為長)はっ。 「海国兵談」を絶版としたことをタネに➡

殿に任せておくと 本当に 江戸の海に オロシャの船が入ってきて➡

国が滅びてしまう。

殿は 間違った判断ばかりなさると。

もっと 冷や飯を食わされたいというのか!

本多様は 一橋様に近づいているという➡

噂もございます。

一橋に?

(為長)殿が 今のように 思うままに政ができるのは➡

「将軍補佐」であることが 大きゅうございます。➡

しかしながら それは 上様が幼いが故に作られたお役目。

殿が「将軍補佐」のお役目を御免となる日も そう遠くはない。➡

恐れながら 何か手を打たれた方が よろしいのではございませぬか?

本日は 弊屋へお運びいただき 光栄の至り。

厚く御礼申し上げます。

(徳川宗睦) そなたに 折り入ってと言われてはな。➡

話とは何じゃ?

はっ。 以前より ご相談いただいておりました➡

米切手の件。

御公儀より 正式に 発行を許す運びと相成りましたので➡

お知らせいたしたく。

はあ…。

まこと ありがたい。

当家も なかなかに財政が厳しくてな。

正しき世に戻すのは 苦難の道のりにございます。

私としては すぐにも お認めしたかったのでございますが➡

一橋様が 横槍を入れてこられ➡

いささか 時が かかり。

一橋が?

私が 「将軍補佐」をお役御免になる日も そう遠くはございません。

さすれば かように事を決することも 難しくなりますゆえ。

そのころ 城中では 家斉様のご嫡男 竹千代様がご誕生。

ご嫡男誕生とのこと まことに おめでとうございます!

(徳川家斉)うむ。

大名たちは 我先にと駆けつけ 祝いの品を贈っておりました。

(一橋治済)おお これは 越中守。➡

忙しいのに 嬉しいことじゃ。

無理をせずとも よかったのだぞ。

徳川にとりまして また 私にとりまして これほどの喜びがございますまい。

上様 一橋様。

此度は お世継ぎのご誕生 まこと おめでとうございます。

(せみの声)

こちらが 私よりのお祝いの品にございます。

越中 それは?

辞職願にございます。

(家斉)…まことか?

将軍補佐と奥勤め 更に 勝手掛のお役目を免じていただきたく。

そうか。

しかし 何故 急に?

これ以降は 老中のお役目に つとめとうございます。

正直に申せば 少々 疲れておるところもございます。

(家斉)分かった。 では…。

(宗睦)上様 お待ちくだされ。

恐れながら 申し上げます。

市中の風紀や朝廷 武家の心得の徹底➡

いまだ 先行きの見えぬものは 数多ございます。➡

加えて 先年より 異国の船が諸国の沿岸に 姿を現すようになっており➡

国の守りも見直さなければならぬところ。

越中のほかの誰が この難しい形勢を乗り切れるかと。

尾張としては 承服しかねまする。

しかし 越中は疲れたと言うておる。

然様な越中守の甘え➡

聞き入れずとも よろしいかと。

しかし 奥勤めだけは 解いてやってもよいのではないか?➡

奥は 難しい形勢には関わりなかろう!

(宗睦)見事な読みであったな。

奥勤めだけは外せと仰せとは。

私が 大奥に口を出すのが よほど お嫌なのでございましょう。

しかし そこは外されて まこと 大事ないのか?

老中による奥勤めそのものを 廃する向きで進めましょうかと。

すると そなたのみが「将軍補佐」として ただ一人 奥に関われるということか。

はい。

此度のご尽力 心より御礼申し上げまする。

よろしくお願いします。

では。 一方 市中では➡

「人相見」なるものが大流行り。

これに目を付けた蔦重は…。

人相見か。 はあ~!

さあさあ 皆様 いらっしゃいませ!

今 評判の人相見➡

大当開運先生は こちらにございます! 人相見だってよ!

いらっしゃいませ いらっしゃいませ!

開運先生が来るってよ! どうぞ お並びくだせえ!

(みの吉)お帰りなさい。 おう。

こちらへ お並びくだせえ。

何だい? これ。

旦那様が頼み込んで 評判の人相見を呼んできたんでさ。

そうすりゃ おのず 店先に列が出来る。➡

並んでんのは そもそも 相学に興味がある連中。

開運先生 お願いします。 (大当開運)おう。

お願いします。

いかがでしたか? 福相でした!

お~ そりゃ めでてえ! ありがとうございます!

おていさん 「浄き相」。

そんな あなたには 「浄き相」。

ああ 綺麗ですね! でしょう?

必ず買いそうな客を 根こそぎ並ばせたってこと?

へえ。 次の売り出しの折にも また いらしていただきます。

(みの吉)「涼やかな相」「じれったい相」も お楽しみに!

来たか。

どうだ? このお披露目。

たまげた駒下駄東下駄だよ。

人相見に いくら払ったのさ? そんな払っちゃいねえよ。

面白がってくれてよ。

お前も働いてくんねえか? え?

歌麿に会えるってなりゃ 客も大喜び➡

評判になるってもんだ! ほら!

さあ 皆様! 喜多川歌麿先生がいらっしゃいました!

おおっ! ちょいと…。

今日は特別に 絵をお求めくださった皆様に➡

直筆で 名入れしてくださるそうですよ!

えっ!

(歌麿)ほんと 蔦重は 商い うまいよなぁ。

所詮 それしかできませんからねぇ。

文も書けなきゃ 絵も描けねえ。

俺にできんのは 作っていただいた品を 目いっぱい 広めることだけ。

そこは 十二分に 払わせてもらいますんで。

じゃあ ありがたく。 おう。

でな もう一つ 話があんだけど。

「十躰」は そのまま続けてくとして➡

もう一つ 揃いもんを始めるってなぁ ありやなしや?

まだ三躰しか出てねえけど…。

今 市中の美人ってのが流行ってんだよ。

水茶屋とか煎餅屋 あちこちに評判の美人ってのがいて➡

その娘たちの絵は 間違いなく売れる。

「十躰」 終わってからでいいんじゃねえの?

そうだけど 娘たちを描きゃ その店は大繁盛 市中は活気づく。

こりゃ 江戸のためになるってもんだ。

どうせ もう 入銀 取り付けてんだろ?

バレたか。 仕方中橋。 いつから出してえんだよ?

おっ。 まず 一発目は 新作年明けに どんと出してえんだよ!

どうかしたのかい?

お茶でもと思ったのですが きっと今は お邪魔ですね。

その顔は…。

もういいよ 早く描きてえよ。

描きてえよな? …描きてえのか?

背景…。

背景…。

(千蔭)背景は黒 文字は白で?

はい。 その方が 文字が より鮮やかに彫り出せますかと。

それは 石摺みたいにってことかい?

けど 余計に金はかかんねえかい?

いや 多少かかっても その方がいいんじゃねえでしょうか?

近頃 見ねえですし。

ありがとう存じます。

けど よく思いついたねぇ。

雲母摺を見て 思いつきまして。

歌さんと旦那様の錦絵の おかげにございます。

はあ そうだったか。

歌に 礼 言わねえとな。

はい。

程なくして 「源氏物語」の文を抜粋した 千蔭先生の書の本➡

「ゆきかひふり」も出来上がり➡

蔦重は それを手に➡

尾張の書物問屋 永楽屋に 交渉に向かうこととなりました。

♬~

ちょいと。

髪結い直した方がよくないかい?

そうか?

考えてみりゃ 初めてだな。

あんた いつも 髪結床に行っちまうからね。

あそこに行きゃ 世間が知れっからな。

まぁ… おとっつあんと おんなじ頭の形だよ。

なあ。 うん?

あれは 嘘なのか? あれって?

昔 夫婦喧嘩したあげく➡

「てめえは 俺の子じゃねえ」 「私の子じゃねえ」って➡

2人して 出てったろ?

駿河屋さんから まだ聞かされてないのかい?

まだ? 口が堅いねぇ。 さすがだよ。

…んだよ?

あんたの おとっつあんはさ ちょいと間抜けなとこがあって➡

博打で タチの悪い借金作っちまったのさ。

で このままじゃ まずいってんで➡

江戸から 逃げようっていうことになってさ。

うん…。

でも 逃げた先で どんな暮らしになるとも分からない。

あんたは吉原で育ててもらった方が いいんじゃないかって話になって➡

駿河屋さんに引き取ってもらえるよう 頼み込んだのさ。

でも 借金取りたちは あんた目がけて 吉原まで来ないとも限らない。

で 口が裂けても あれが親だなんて言いたくないように➡

おとっつあんも色に狂って 私も色に狂ったってことにして➡

子捨てしたのさ。

…んだよ そんな話だったのかよ。

どんな話だと思ってたんだい? ああ?

俺ゃ 公方様の隠し子で 2人は隠密で… とか➡

桃太郎だったんじゃねえかとか。 フフ…。

ハッ… ガキの頃だぜ。

こんな しょぼくれた話で悪かったねぇ。

いや いい話だ。

俺が考えてたより よほど いい。

…そうかい。

ああ。

柯理。

あんたは 強い子だよ。

でも 何で そんなに強いかっていったら➡

そりゃ やっぱり 私が捨てたせいでさ。

ありがた山です。

せいぜい 拝みまさぁ。

ごめんね。

…んだよ 調子狂うじゃねえか。

裏を返しゃ あんたは強くならなきゃ 生きてけなかったんだ。

下を向くな 前を向け➡

泣いてる暇があったら 人様を笑わせることを考えろって。

それで ここまでやってきて➡

そりゃ もう あんたは立派だよ。

でもね➡

大抵の人は そんなに強くもなれなくて 強がるんだ。

口では 平気だって言っても➡

実のところ 平気じゃなくてね。

そこんとこ もうちょっと気付けて ありがた~く思えるようになったら➡

もう一段 男っぷりも上がるってもんさ。

はい。

んだよ ババア 親らしいこと言うじゃねえか。

そうかい? じゃあ あんたも 息子らしいことしなよ。

んじゃ 土産 買ってきてやるよ。

尾張の土産 何がいい?

そういや おとっつあんも 尾張の出だったねぇ。

その辺 うろついてたら 土産に頼むよ。

合点承知!

フフッ。 よし! じゃあ 行ってくらぁ。

♬~

(せきばらい)

おっかさん。

フッ…。

頼んだよ 重三郎。

おう!

♬~

蔦重が西に向かい旅立った そのころ。

帝が 父なる君に「太上天皇」の尊号を➡

我らに お諮りもなきまま➡

贈りあそばされる ということにございますか?

閑院宮さんの御病が…。

朝廷が 幕府に断りもなく➡

「尊号」の一件を 推し進めようとしていたことが発覚。

一橋さんを通じ 将軍さんに おたずねしたところ➡

越中守も此度は 認めるであろうとの お返事でございました。

尊号の一件は 公のこと。

勝手なご返答をされては困ります。

(治済)これは そなたが上様に上呈した➡

「御心得之箇条」であるが…➡

ホレ…➡

ここに こうある。➡

六十余州は 朝廷よりの預かりものゆえ 自分のものと思うては ならぬ。

ならば 我らが朝廷に指図することは ハナから筋がおかしい。

そなたが崇める朱子学では 「孝」を大事とする。

先の短い父君に 尊号を贈りたい それは まさに「孝」の心。➡

此度は そなたは間違いなく 認めるであろうと考えた次第じゃ。

一橋様。

お心遣いは ありがたく存じますが➡

これは 御公儀の威信を損ないかねぬお話。

これより先は➡

私に お任せいただきたく!

その後 越中守様は➡

「尊号」を取りやめるよう 切々と訴えた文書を自らしたため➡

朝廷に返事。

ほっと一息と思いきや。

ご老中方 ご無礼仕ります!

オロシャの船が やって参りました!

直すとこだけ直して 手 入れりゃ 立派な歌麿作だ。

それで オロシャは まことに我が国を狙っておるのか?

ならぬ! 子ができたのでございます!

俺の借金 百両を…。 歌の女郎絵 50枚で…。

よろしくお願いします。

蔦屋さんのもとで描くだけで よろしいので?

蔦重とは 終わりにします。

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