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(吉宗)村瀬が死んだ? (久通)はい。➡
今朝方 右筆部屋に出てこぬので 見に行ったところ➡
布団の中で息を引き取っていたと 奥より知らせがございました。
かくしゃくとしておったがのぅ。
(久通)今年で御年97であったそうで。
丁重に葬り 村瀬の後継を選ぶよう藤波に。
それから。
そちらの続きを 借り出してくるのでございますね。
そうじゃ。
♬~
続きがないとは 何としたことじゃ!
(藤波)それが どこを探しても 出てまいりませんで。
盗まれたということか?
恐れながら 他の右筆によると➡
そもそも ここまでしかなかったのではないかと。
村瀬は綱吉公が亡くなるまでしか 書いておらなかったということか。
(藤波)ええ。
回想 (吉宗)村瀬とやらは そなたか?
しかし 私が会った時にも 村瀬は 何か書きつけておるようであったぞ。
恐れながら 「没日録」だとは限りますまい。
(藤波)ところで 上様。 男の好みなどをお教え頂けますか?
おもだった中臈は 全ておらぬようになってしまいました。
回想 皆の者 どうか故郷にて良縁を得➡
幸せに暮らしてほしい。
これでは 総触れも成り立ちませぬ。➡
安い禄でもよいから 上がりたいと 申す者たちも多くおりますし。
まずは 約束どおり 大奥のかかりを3分の1にせよ。
それができれば考えてやる。
しかし それでは。 お世継ぎは どうなさいますのか。
(吉宗)たわけ! 総触れなどなくとも 世継ぎは作れる!
(吉宗) なくなったのは ここ数年の記録のみ。➡
とすれば 今 大奥にいる誰かにとって 都合の悪いことが そこに記されていた➡
と考えるのが もっとも合点がゆかぬか?
その誰かが藤波様 もしくは その周りの者などであれば➡
お庭番に見張らせておきましょう。
頼む。
あぁ それから 進吉に書状を出せ。
回想 (吉宗)そなたは これで死んだ。
薬種問屋の田嶋屋では。➡
信という娘が 生涯 婿は取らぬと だだをこね➡
親は往生しておるらしい。 ここは ひとつ➡
婿となり助けてやってはどうじゃ。
町人 進吉よ。
水野を呼び戻すのでございますか?
そうじゃ。
♬~
ハハハ…。 (水野)いやあ➡
今まで こんなに見られたことはねえ ってくらい見られましたよ。
表に入ることができるのは 女のみであるからの。
笑い事じゃあございませんよ。 お城の中だけじゃありませんからね。
店から ずーっと この格好で 市中を練り歩いてきたんですから!
まぁ そう怒るな。 なかなか似合うておるぞ。
ハハハ…。
ところで 書状にて頂きました ご相談事とおっしゃいますのは。
その方に 赤面に効く薬を 探し出してもらおうと思うての。
…赤面。 うむ。
さようなもの あるわけございませんでしょう!
なぜないと言い切れるのじゃ。
上様。 薬屋だって 赤面が出る度に ありとあらゆる薬を試してきてるんです。
しかし 赤面が治らぬ では困るのだ。 この国が滅びてしまうからの。
…国が滅ぶ。
この大奥を作った 春日というババがおっての。➡
そのババが言うには この国は赤面ゆえに滅ぶ と。
赤面ゆえ。
表向きは キリシタンの禁制などとなっておるが➡
我が国が異国との関わりを絶っておる まことの理由は➡
赤面ゆえの事情を 異国に知られぬためじゃ。
お待ち下さい。 異国には 赤面はねえんでございますか?
あるのかないのか 国を閉じたゆえ それすら もはや定かではない。➡
が… 女は体は強くとも 男より腕っぷしは弱いのが常。
もし 異国に赤面がなく 男たちに攻め入られれば➡
ひとたまりもない。 春日は さように予言したのじゃ。
国が 滅ぶ。
何かよい知恵はないですか 田嶋屋。 赤面を治す薬を見つけるために。
いや うーん。 しかし…。
ん? 何かあるのだな。
いや 薬ってなぁ 土地土地によって 随分違うんですよ。
草木や生き物 要するに そこにあるもんで こしらえるってわけで。
では どこか遠くの山奥には 赤面に効く薬があるかもしれぬ と。
まぁ かもしれねえ ぐらいですよ。 あい分かった。
では 田嶋屋よ。
日の本中をくまなく 探し回れるようにしてやるゆえ➡
赤面に効く薬を探し出せ!
む… 無理ですよ!
俺 まだ婿入りしたばかりの 素人に毛が生えたようなもんで。
そなた 誰のおかげで 今日 ここにおられると思うておるのじゃ!
それは…。
まぁ せっかく生き返っても 国が滅びてしまってはな。
元も子もなかろう?
はあ…。
では 頼んだぞ。
では 話したことを素案にまとめ 私までお持ち下さいませ。
ところで 加納様 杉下さんって どうしてます?
(杉下)上様! いかにも吉宗じゃ。
悪いが時がない! 急ぐぞ!
上様! 上様 何を!
半時後には 表に戻らねばならぬ。 この隙に子を作るのじゃ。
上様! 上様! 上様!
私は 種無しにございます!
なんと。
お忙しいさなか 私との子作りほど 時を無駄にすることもございませぬかと!
お子をなすほかなら いかなる働きも 身を粉にして努めますゆえ!
そなた 今は何の働きをしておるのじゃ。
水野様がいなくなってからは 再び お三の間にて雑事を。
そなた 水野の部屋子であったのか。 はい。
この者を私の右腕にせよ と。
見よ! この着物を。 この者は最古参でありながら➡
お三の間の着物は 一度も作り直しておらぬそうじゃ。
かような男は 質素倹約は得手なはずじゃ!
恐れながら上様 この者は。
杉下。
藤波様。 水野様の一件では 無礼を申しましたこと➡
心よりお詫び申し上げます。
杉下も悔いておるし 水に流さぬか?
水野も もうこの世におらぬことであるし。
まぁ さようなことでございますれば。
(杉下)上様 仰せつかったお役目にございますが➡
私などで つとまりますでしょうか。
(吉宗)自ら 種無しと打ち明け 手つきを辞退するなど➡
そなたほど欲のない男も珍しい。
きっと目覚ましい質素倹約を成しえよう。
あ いえ そちらではなく。 藤波様の動きを見張るという。
大事ない。 そこは そなたのほかに 見張っておるものもおるゆえ➡
安堵せよ。 はっ。
ではの! 杉下。
♬~
(吉宗)市中における米の値は下がり…。
<吉宗公は 幕府の蔵に金を満たす策に取り組まれた>
もう30年も続いておる。
幕府の収入は米。
故に 米の値が下がれば おのずと 幕府の実入りも減る。➡
折からの浪費もかさみ 金蔵は かつてないほど ひっ迫しておる。
このまま捨て置けば 公儀の威信は揺らぎ 世は乱れることとなろう。
かくなる上は 市中より じかに米を買い上げ➡
米の値を上げることとしたい!
して この役目を対馬守 そなたに委ねたいのだが。
(対馬守)お… 恐れながら さようなやり方は前代未聞。
何をしたらよいものやら 皆目見当が。
(和泉守)私とて 武士の端くれ。 銭金のために働くなど できかねまする。
(河内守)わ… 私は 商人は苦手にございまして!
(吉宗)ま 思ったとおりではあったな。
対馬守様の領地は茶の産地➡
米の値にかかわらず 十分 潤うてございます。
和泉守様と河内守様は 商人たちに諸事便宜を図り➡
礼をたんまり懐に入れている という噂にございます。
しかし それもこれも 徳川より 所領を安堵されたからできること。
大本が揺らいでしまえば 我が身も 危うくなるとは考えぬものだろうか。
いずれも 世襲の殿様方にございますからね。
国が滅ぶ などとは 誰も考えもせぬということか。
上様。
一人 お会い頂きたい者がございます。 普請奉行なのですが。
そなたの采配した 旗本らの屋敷替え➡
実に見事であると 評判だそうではないか。
(忠相)私は 双方のよき落としどころを 探ったまでにございます。
実は 一つ 相談があっての。
今 米の値は安く 比して 物の値は高くなりすぎておる。
双方 よき落としどころに おさめるためには➡
何をすればよいと考える。
そもそも出回る米の量を減らすというのは いかがにございましょうか。
米の出回る量を減らす。
一旦 出回った米を じかに 幕府が買い取るのがよろしいかと。➡
出回る米の量が減れば 米の値は おのずと上がります。➡
その相場を見つつ 高値になれば➡
買い取った米を今度は売りに出し 米の値を下げる。
さようにして 幕府がかじ取りをしては いかがにございましょうか。
あ… あくまで素人考えにございますので。
大岡忠相 そなたを町奉行に任ず!
は?
かつ この件について➡
以後 そなたに一任す。 よいな!
あ いえ あの。 私 銭勘定の扱いは素人でございますし➡
そもそも そのような大事は 老中はじめ 重役方のほうが。
案ずるな。 久通。 はい。
お役御免?
はい。
(吉宗)採薬使。
はい。 赤面に効く薬草を探し 同時に諸国の薬の実情を把握するために➡
正式な薬草探索方を設けて頂きたい。
(久通)それが田嶋屋 および 本草学者たちからの嘆願にございます。
本草学者。 あやつ さようなところにも相談を。
今では 存外のめり込んでおるようで。
それは重畳。
米の値をおさめるための鍵を握るのは 大坂にございます。➡
大坂の米市場で 取り引きされている米の量は➡
江戸に比べて 圧倒的に多うございます。
いくら江戸で米を買い上げたところで 焼け石に水ということか。
(忠相)さようでございます。
上方か。 話には応じそうか。
彼らも見返りがないと 助力はいたしませぬかと。
それは さすがに許しかねる。
見返りではなく 助力せねば それ相応の罰を与えるという触れを出し。
上様。
もしや。
(杉下)ご懐妊にございますか。 それは おめでたきことで。
めでたくはあるが… 上様は総触れで相手を選んではおられぬ。
一体 誰が父であるものか 皆目見当もつかぬと申されるのじゃ。
さすがに おおよその見当は おつきになりますかと。
そうであろう!? ところが さように申し上げたところ➡
あの加納の狸ババアめは。
どの者が父親であれ 己の子であることにかわりはない。
父親など わざわざ定めずともよい と 上様はお考えです。
しかし 情がないにも程があろう。
将軍のお腹様 これは大奥の いや この世の男の夢であるのじゃぞ。
では かようにしてはいかがでしょう。
今日は 稽古総覧と聞いておったが。
誰も 稽古着もつけておらぬようじゃが。
(杉下)はい しかし この者たちの申すところによりますと➡
かつて上様と一戦をお手合わせをした その折には 稽古着はいらなんだと。
私は 大奥の男と手合わせをした覚えなど…。
あ。 本日は この中より➡
お腹様を定めて頂きた…。 父親は定めぬと申し伝えたはずじゃ。
恐れながら 上様。
父親が定まらねば 己が父だと吹き込む者➡
また 父がおらぬことにつけ込む者などが かえって入り乱れることとなりましょう。
むしろ定めぬことの方が お世継ぎ争いにも➡
つながるのではないかと 大奥は考えるに至りました。
しかし 今までの父親とて 所詮は将軍の胸三寸ではないか。
ならば いっそ 正々堂々 胸三寸いたしましょう。
どの者を父としたいか ここで上様が お決めになられればよろしいのです。
さあ。
♬~
1人 見当たらぬ者がおるのじゃが。
卯の吉。
卯の吉! ほら しっかりせよ!
<さて 吉宗公は城内のみならず➡
市中にも 質素倹約を旨とする触書を出された。➡
常ならば 民の不服を買いそうなところだが。➡
自ら手本となるよう努められたところ➡
その裏表ない姿勢は 江戸っ子の人気を得ることとなり。➡
更に 民の訴えをじかに受け付ける 目安箱なるものを設置するに至り>
上様に申し上げたき儀ある者は…。
<その評判は うなぎ登りとなった>
大したもんだよ。
<が そんな吉宗公にも従わぬ者はあった>
では 大坂の商人どもは まだ米の買い上げには応じぬと申すのか。
忠相によりますと いまだ難航しておるようで。➡
上様。 大事ない。
腹が痛うなっても そうすぐには生まれぬと…。
これ 産婆を。 ⚟はっ!上様 上様。
忠相が参りました。
これは。 (産婆)上様。➡
まだ息んではなりませぬ! まだ!
(産婆)息んで! (忠相)邪魔をしたの。 改める。
(吉宗)忠相!
待ちかねたぞ! 越前! 大坂は!
(産婆) 上様! あとになさって下さいませ!
よいのじゃ! 私が求めた! 忠相 近う!
はっ。
大坂はいかがであった。
(忠相)大坂は いかなるお話であろうと 米の買い上げには応じかねる と。
大坂は同じ直轄地とはいえ 江戸とは成り立ちが違います。➡
橋や道 掘割から港づくりまで➡
全て 力ある商人たちの手によって 成り立っております。
彼らの力の源は 米の流れを 見ることによって得た銭でございます。
お上といえど そこに手を入れるなど 承服できかねる。➡
一人として応じるものはおりませなんだ。
侮りおって… くっそおおおお 商人めぇ!
(赤子の声)
上様。 おめでとうございます。
玉のような姫君様にございますよ。
(泣き声)
(忠相)では 私はこれにて。
待て! 忠相!
いいかげんになさいませ 上様!
まだ 後産がございます! むやみに動くと お体を壊されますぞ!
要するに 大名たちに一万石につき 百石の米を献上させる。
代わりに参勤交代で 江戸にいなければならぬ日数を➡
1年から半年にする ということにございますか。
アレは 大名の身からすると 負担が重いゆえな。
米を上納させる 上米の制といった ところにございましょうか。
しごく名案でございますかと!
大名たちも喜んで応じましょうし 幕府の蔵に金は戻りましょう!
しかし 果たして これでよかったかの。
何か ずれておる気がするのじゃ。
⚟ご無礼いたします。 上様 加納様。
大奥の杉下様より書状が。
(久通) 藤波様が 大奥をお辞めになりたいと。
実家の母上の具合がよろしくないらしい。 故に 宿下がりをしたいと…。
久通。 例の件は?
藤波様に関しては何も怪しい動きはないと お庭番は申しておりますが。
何故 私は かようなお調べを 受けねばならんのにございますか。
いまだ懐が厳しくての。
金めのものを持ち出されては困る。 悪く思うな。
ところで こちらが暇金じゃ。
その額でよいか。
いきなりの荷改め 金子の話。➡
情趣もへったくれもありませんな。
俸禄は何より大事であろう。
上様 人は牛馬ではございませぬ。
ただ 飯を食い 生きておるだけで 満たされるわけではござりませぬ。
さようなことくらい 言われずとも分かっておる。
いいえ 分かっておられませぬ!
父親など誰でもよいとおっしゃられた!
種馬扱いも ここに極まれりにございます!
そなた 何を言っておるのじゃ?
(藤波)まことには そのとおり➡
ここにおる者たちは皆 上様の種馬にございます。
けれど それをあからさまにしては あまりにもむなしすぎる。
故に それをあたかも情の通ったものに 彩ってきたのが ここ➡
大奥にございます。
(鈴の音)
(藤波) 上様と語らい 季節の移ろいをめで➡
身を飾り けんを競い 華やかなお鈴廊下で選ばれる。
子作りに さようなものが入用かと言われたら➡
何一つ 入用ではございませぬ。
けれど 「上様と恋をした」。➡
卑しい無力な種馬たちは そう思いたいのです。
「上様から選ばれた」。
それは ここの男たちの 人としての誇りなのでございます!
上様。 金をかけずとも 情を示す手はずはございます。
そのお顔をお見せ下さいますこと➡
お文 お言葉 共に剣術で汗を流されても よろしうござりましょう。➡
表の政がお忙しいのは分かります。 ですが どうか向後は➡
もう少しばかり 奥の男たちにも 情をおかけ下さいますこと➡
切にお願い申し上げます。
(吉宗)何が情をかけよじゃ。
これ。 はっ。
(吉宗) よい 酒は銚子1つまでと決めておる。
これは不行き届きを。 以後 心得ておきます。
しかし 藤波の言うとおり 私には人の心など分からぬのかもしれぬ。
奥の男たちの気持ちなど 考えたこともなかった。
大坂の商人たちの心意気もくめはせぬ。
人の心が分からぬから 従えられぬ 背かれる。
産婆もあきれておった。
生まれたばかりであるのに 赤子ではなく 米の値ばかりを気にしておる と。
私は どこか 人として すっぽりと欠けておるのかもしれぬ…。
なるほど では 上様は どこか 欠けていらっしゃるといたしましょう。
それでは この私はどうでございましょう。
そもそも種もございませぬ。
何一つ欠けるところがない者など➡
果たして この世におるのでございましょうか?
ご案じのところは 微力ではございますが 私が補ってまいります。
きっと 加納様も そのように お思いのことでございましょう。
ですから どうか 上様は今までどおり 世を見据え 前を向き➡
政をなさって下さいませ。
それは 上様にしかできぬことにございます。
「市中にあふれる極貧の者 病を得ても 何の手当てもこれなく➡
無残の極みにござそうろう。➡
小川笙船」。
久通。 忠相を呼べ。 はっ。
話が聞きたければ➡
城にお召しになれば よかったのではないですか。
随分と 市中には出ておらんかったしの。
(忠相)住むところを失った無宿者➡
畑を捨て出てきた百姓親子 というところですかね。
おい!
あっ しっかりしろ。
あれが小川笙船ですよ。
上様。
どれ 手伝おう。 かたじけない。
どこへ運べばよいかの? 笙船先生。 こちらへ。
ちょっと手伝って。
ここへ。 頼む。
頑張れ あと少し。
大事ないのか。 具合の悪い者をかようなところに集めて。
しかたないよ。 行き倒れを拾ってくんだ。➡
至れり尽くせりってわけにゃあ なかなかね。
悪いけど これ頼むよ。
まず この子の体 拭いてやってくれ。
上様。 この辺りで戻りましょう。
体を拭けばよいのか。 上様。
大事ないのか この子は?
ちゃんと食わせて休ませればね。 なに おおかたのもんは治るさ。
そうなのか。
(笙船)食えないから弱り 病にもなるわけでね。
今度の上様は切れ者だっていうから 当てにしてたのに➡
ぜいたくすんな 倹約しろってばかりでさ。➡
こちとら 逆さに振っても➡
鼻血も出ないような輩も 大勢いるってのに。
ただでさえ赤面で人が死ぬんだ。
ほかには一人も飢えさせぬ➡
死なせてなるものか! って考えには ならんもんかね。
人は国の宝だろうに。➡
それとも 貧乏人なんか 人と思っちゃおられぬのかね。
そなたの言うとおりじゃ。
まこと そなたの言うとおりじゃ 小川笙船。
♬~
ま… まさか。
いかにも吉宗じゃ。
う… う…。
そなたの進言 吉宗 しかと受け止めた。
作ってやろうではないか。 そなたの望む施薬院を。
ははぁ!
病にかかった貧しき者に➡
薬をお与えになる場を ということにございますか?
幕府の蔵に金の戻る見込みも ついたことであるし➡
ひとつ その金を 民のために使うてみようと思うてな。
民のために。
不服か? いえ。
いえ 今までで もっとも優れたお考えかと!
久通は 信様は いつかこうなさると!
信。
ご無礼を。 つい。
構わぬぞ。 お通。
上様。 施薬院の場にございますが➡
思い切って 小石川はいかがでしょうか。
(吉宗)小石川? (忠相)はい。➡
小石川には 薬草を育てている 御薬園がございますでしょう。➡
既に周囲が薬草だらけなのは 都合がようございましょうし➡
何より… もっともかかりが少うて 済みますかと!
妙案じゃ! 忠相。
直ちに建物の普請に取りかかれ。 はい。
それから 久通。 田嶋屋でございますね。
ここを全て薬草畑に。
そうじゃ。 今 入用なのは 花ではなく薬じゃからの。
笙船と そなたと 本草の学者たちとで ここに何を植えたらよいか相談の上➡
薬草を育ててほしい。
上様。 この際 各地で効くと評判の薬草も ここで増やしてみませんか?
そいつをここで増やせれば 皆 助かることになりませんかね。
そなたは随分とやる気になったものだの。 ハハハ。
上様。 俺ね 分かったんですよ。
俺ぁ このために あの日 進吉になったんだって。
このため?
赤面が治る病になりゃ 男は もちろん万々歳だが➡
女も楽になるでしょ?
子種は得やすくなるし 仕事だって男に任せられるようになる。
周りの女を幸せにしてぇと思って 入った大奥から➡
世の中の女をぐるっとまとめて 幸せにするため 出ていった。
こりゃ そういう寸法だってことじゃ ねえですかね?
奥から出すのではなかったの。 はい?
どうじゃ。 そなた 私も女じゃ。 ぐるっと幸せというのなら➡
もう一度 私も幸せにしてみるというのは。
もちろん。
上様のために 赤面の薬を探し出してみせまさぁ!
…うん。 頼むの。
はい!
♬~
こちらでございます。
ここが薬部屋かぁ。
♬~
病人は こちらで とう留するのでございますね。
すばらしい普請にございますね! 大岡殿。
そもそも 普請奉行にございますゆえ。
俺 ここで暮らしたいです。
上様。 どうじゃ 笙船。
これで 一人も死なせずに済むかの。
この御恩は 終生忘れませぬ!
小川笙船 この身の朽ち果てるまで 相つとめまする!
面を上げよ。 こちらこそ礼を言うぞ。
そなたが言いだしてくれねば➡
私は かようなものを作ろうとは 思わなかった。
おかげで 将軍としてなすべきことができた。
いいえ もったいない。
喜んでくれるかのぅ。 江戸の民も。
きっと人であふれかえりますよ。
♬~
誰も来ぬ?
一人も頼ってこぬ とは いかなることじゃ!
(忠相) どうも悪い噂が立ってしまったようで。
悪い噂? はい。
身寄りのない病人が タダで療治を受けられ➡
薬も食事も宿も与えられる。 あまりにも手厚い手当てに➡
「お上が かようなことをしてくれる わけがない」と思われたようで。
そこに 近頃 薬園に➡
何やら次々と薬草が植えられている ということも知られ➡
どうも あそこを頼れば 薬の試しに使われるのではないかと。
ふふっ… ふふ… ははは…。
上様?
人の心とは まか不思議じゃ。
やはり 私には人の心など分からぬ。
上様のお心が 伝わっておらぬだけにございます。
ひとつ 伝え直してまいりましょう。
ねえ 養生所でさ 持病の腹痛 治してもらったんだよ。
しかも タダで。
薬も米も もらえるらしいよ。
<こうして➡
加納様は人を使って 養生所のよい噂を流し>
(忠相)ここが薬部屋じゃ。
<大岡様は 町名主らに養生所の中を見学させ➡
悪い噂を拭い去った>
かように整ったところとは。
先生 腹が痛いんです。
先生 胸が…。 大事ないか。 苦しいか。
よくなる。 よくなる。
人の手が足りぬほど 病人が来ておるらしくての。
それはようございました。
ん? 1つはすぎたぞ。
これは私が自ら求めました➡
上様へのお祝いにございます。
では 遠慮なく。
♬~
<採薬使らは 薬を日の本中でくまなく探す中➡
男が多く暮らす村を見つけ出した>
ここが。 ええ。
いまだ一人も赤面を出しておらぬ 猟師の村にございます。
こっち手伝って。
♬~
(吉宗)赤面に効くかもしれぬ薬?
はい。 猿の肝を干したものにございます。
猿の肝にございますか。
ハハハッ! そうなりまさぁね!
けど そこの男は この気持ちの悪いもんを口にする。
だから 今まで一人も 赤面を出してねぇんです!
信じられねえかもしれませんが 俺ぁ この目で見たんですよ!
男が女と同じほどいる村を!
⚟(忠相)上様!
奉行所の方に知らせが参りまして。
市中で 赤面が発生したと。
水野は まだ戻らぬのか!
これは 赤面との戦じゃ。
この国を滅ぼさぬために。
たあげ! 面を上げよ。
あい…。 滅びぬ道とやらは どこにあるのだ。
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