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(梨々子(りりこ))あの日 ヘルプとして 調理場に立ったのは
私です
(旭(あさひ))本当に 申し訳ありませんでした
(紘海(ひろみ))それで気が済みましたか?
あなた方は終われても
私は ずっと終われないんです!
(紘海)美海(みみ)も荷物まとめて
悪いけど 説明してる暇はないの
お願いだから早く!
(美海)左腕の肘にホクロが2つ
2015年12月6日に行方不明
結城(ゆうき)萌子(もえこ) 現在12歳
お母さん
この子 誰?
ねえ 誰?
違うよね?
違うよね? 私じゃないよね?
ごめんなさい…
なんで謝るの?
(紘海)ごめんなさい
なんで? 私なの?
ごめんなさい
私 捜索されてるの?
美海
お母さんは…
お母さんは
罪を犯しました
やだ…
私は あなたを
あなたのお父さんから…
やだ 聞きたくない やめて!
美海
最低だよ お母さん
最低だよ 最低! 最低!
(泣き声)
(テーブルをたたく音)
(望月(もちづき))あの人の子供を もう一度 奪う権利
あんたにあるのか?
(旭)あの人?
どういう意味だ?
もう一度 奪う?
中越(なかごし)さんです
待ってくれ
中越さん?
中越さんの家にいる 中学1年生の女の子
たぶん 萌(もえ)ちゃんです
肘にホクロが2つあって 父親はいない
中越さんが 萌ちゃんを育ててます
(紘海)あなたは
本当の私を知らない
私には
あなたを憎む資格なんてないんです
私は
あなたの…
(望月)どこ行くんですか?
まさか 今から中越さんの所に?
(旭)離せ
落ち着いてください
今の萌ちゃん 幸せそうに見えたっていうか
彼女にも 今の生活があって
この勢いで乗り込んだら 傷つけて取り返しのつかないことに
これは 俺の問題だ お前には関係ない
そんな言い方ないでしょ
俺は あんたのために これまで…
分かりましたよ じゃあ 辞めさせてもらいます
俺は もう用済みみたいなんで!
(携帯電話の振動音)
もしもし
中越さん? 今どこ?
(紘海)え?
(望月)自宅ですか?
(紘海)そうですけど
旭さんが 今から そこに行く
知られてしまったんです
君のお嬢さんが萌子ちゃんだって
もしもし 聞こえてますか?
あの とにかく 旭さんが…
(間仕切りカーテンが開く音)
(足音)
(美海)どうしたの?
結城さんが
今から うちに来るって…
逃げよう お母さん
逃げよう
お願い
お母さん
お母さん!
お母さん!
(旭)すいません とりあえず 西高井戸(にしたかいど)にお願いします
お母さん
(施錠音)
(美海)お母さん 行こう
(紘海)私たちは どこへ向かっているんだろう
中越さん!
中越さん?
中越さん!
(紘海)あと10分…
(美海)どこ行く?
あそこは?
長野の… ほら なんだっけ?
(美海)え?
誕生日に行こうって言ってた
姨捨(おばすて)?
そう 姨捨
マジで? いいの?
うん いいよ
やった
なんか楽しくなってきた
こっから行くなら
東京駅から かがやきに乗って 長野から篠ノ井(しののい)線
いや 待った!
それより新宿(しんじゅく)から あずさに乗って 松本(まつもと)ルートの方が楽しめるか~
どうしよう…
早く行っといで あっちにあるから
(美海)えっ?
トイレ行きたいんでしょ?
あっ バレた?
ハンカチは?
持ってる すぐ戻るから
(紘海)逃げて どうしようというんだろう
また罪を重ね
どこに たどり着こうと しているんだろう
娘は?
娘はどこだ?
娘を返せ!
時間を下さい
(旭)時間?
説明する時間を
-(紘海)美海は まだ何も… -(旭)萌子です!
萌子は 血のつながった僕の娘だ
はい
お嬢さんに 少しだけ 説明する時間を下さい
(旭)勝手なこと言うな
あの子にまだ 本当のこと 何も話せてないんです
本当のこと?
私が あの子を誘拐したと
このままでは混乱して
あなたのもとに 戻れないかもしれません
ほんの少し… 1時間でいいんです
お願いします
だったら こうしてください
あの子が あなたに 一片の未練も 残らないようにしてください
分かりました
(美海)お母さん
お母さん どうしたの?
この人 誰?
1時間後に
さあ
生きてた…
生きてた…
(美海)お母さん
さっきの人 もしかして…
逃げるんだよね? 逃げようよ
美海
お母さんね…
私ね
私ね
昔 子供がいたの
え…
(紘海)あなたの1つ年上で
灯(あかり)という女の子
3歳のときに その子を事故で失った
事故の原因となったのは ある会社の食品で
私は 愚かにも その会社の社長を逆恨みしたの
恨んで恨んで
復讐(ふくしゅう)するために その人に近づいた
それが さっきの人
あなたのお父さん
結城 旭さん
10年前の12月6日
あの日⸺
私は あなたを
盗みました
盗んだ?
誘拐したの
あなたのお父さんに 私と同じ目に遭ってほしくて
(美海)でも…
だとしても⸺
かわいかったからでしょ?
最初は 仕返しだったかも しれないけど
でも 3歳の私を見て
ああ この子 かわいいって
育てて ずっと一緒に暮らしたいって
そう思ってくれたんでしょ?
(萌子)おいしい
こんなの初めて
ミッション発生
ラジャー!
お母さん 楽しいね
(萌子)萌が悪い子だから?
悪い子だから 捨てるの?
いいよ
だったら私 お母さんの子でいい
お母さんが悪い人でもいい
ずっとお母さんの子がいい
だから⸺
一緒に逃げよう?
ねえ だから早く…
かわいかったからじゃない
あなたが かわいかったから 子供にしたんじゃない
言ったでしょ これは復讐なの
ウソ…
結城 旭さんに 仕返しがしたかっただけ
だから誘拐したの ただ それだけ
お母さん…
お母さんじゃない
娘でもない 血も つながってない
私は犯罪者
あなたの言ったとおり 最低の人間です
これまで だましてきてごめんね
警察に捕まりたくないから これから逃げます
-(美海)待って… -(紘海)邪魔だから⸺
ついてこないで!
お父さんは いい人だから
もうすぐ ここに 迎えに来てくれるから
もう二度と あの子の前には 現れないでください
それから 連絡も 一切 取らないでほしい
自首します
(旭)いや 警察には こちらから告訴させてもらう
萌子の動揺が収まったタイミングで
報いを受けてください
(ドアが開く音)
(旭)萌子…
覚えてるか? パパのこと
そうだよな まだ小さかったもんな
ずっと謝りたかった
あの日 お前から目を離したこと
(萌子)100数えたら 見つけに来ていいよ
1 2 3 4…
(旭)行かないぞ 1 2 3 4…
1 2 3 4…
それと 仕事ばかりで
ずっと さみしい思いを させていたことも
ごめんな
ごめんな
迎えに来るのが こんなに遅くなって
パパを許してくれ
お母さんのこと
通報しますか?
しないよ
ホントに?
萌子
(旭)萌子 おいで
乗りなさい
(紘海の泣き声)
(旭)覚えてるか? お姉ちゃんのこと
おかえり お前の家だ
(旭)ほら これ 3歳のころ よく遊んでた
覚えてないか?
あっ じゃあ これは?
お前が描いたんだぞ
あっ そうだ 写真
このレストラン 覚えてないか?
ほら みんなで よく行った
これが おじいちゃん おばあちゃん
パパ お姉ちゃん
萌子
どうだ?
ごめんなさい
な… なんで謝るんだ
あっ そうだ 腹減ってないか? なんか夜食でも…
あの…
休んでもいいですか? 疲れたので
あっ そうか
そうだよな 休みなさい
部屋は そのままだから
警察に捕まりたくないから これから逃げます
-(美海)待って… -(紘海)邪魔だから⸺
ついてこないで!
店長 もう1杯
もう1杯!
(店員)いや もうやめときなよ
こんな明るい時間から飲んで 仕事 大丈夫なの?
仕事 辞めたんで
無職は最高っすね
(戸が開く音) 無職は最高っすね
(店員)いらっしゃい
(望月)お会計
安心しろ 俺が出てく
それと⸺
今 萌子と暮らしてる
(戸が閉まる音)
(玖村(くむら))いやあ でも
何回 聞いても いまだに信じらんねえな
(梨々子)うん
(玖村)ピザ事件の背景に君がいて
さらに被害者の母親が 萌ちゃん 誘拐してた
(梨々子)うん
信じられないよね
(玖村)あっ ってか 大丈夫なの?
マスコミにでも嗅ぎつけられたら…
記者には もう知られてる
そう遠くないうちに ピザ事件の真相は記事になると思う
(玖村)マジか…
というわけで 私も あなたと同じ
人生 終了する予定
でも それで当然
皆川(みながわ) 灯ちゃんの命を奪ったのは 私だから
(砂羽(さわ))ううっ…
-(元木(もとき))ハァー -(砂羽)うわ!
(元木)いつになったら 記事になるわけ?
“大手スーパー役員 結城 旭は”
“娘かわいさに 過失を隠蔽した”
そう書くだけじゃない
まごまごしてたら 他に すっぱ抜かれるわよ
いや べつに まごまごなんて…
まさか 結城家に同情しちゃった?
は?
(元木)だとしたら
ジャーナリストの 風上にも置けないわね
(においを嗅ぐ音)
-(元木)臭っ -(砂羽)え?
(元木)臭っ!
うわ 臭っ!
同情なんかしてませんから!
ってか 臭くないし
ただいま
萌子?
萌子?
萌子 どこ行ってた?
トイレです
おなか すいただろう すぐ 夕飯 作るから
新しい学校はどうだ? 慣れたか?
あっ これ…
何か部活にでも入ったらどうだ?
運動部も活発みたいだし…
パパ
部活は 学校に 慣れてからでいいんじゃない?
あ… そうだな 急ぐことはないよな
今度 家族で 食事にでも行かないか?
食事?
どうだ? 萌子 ママも誘ってみるし
本当の母親だ
紹介するから
(電車の警笛)
何やってんの 早く起きなさい!
(美海)ん~ 一生のお願い あと5分
ダーメ 遅刻する!
(美海)ああ~ もうダメダメ
1分 あと1分 あと1分でいいから
(紘海) あと1分 寝て どうすんの…
(木戸(きど))例の件 どうなってる?
(旭)恐らく来週には 地元企業 買収のめどが立つかと
(木戸)その件じゃない!
萌子のことだ
告訴はまだか?
萌子が まだ落ち着かないので
誘拐は親告罪だ
被害者側からの告訴がなければ 警察は動かない
すぐにでも告訴して 誘拐犯を逮捕させるべきだ
(旭)分かっています
(木戸)あの女が
梨々子のミスのことを あちこちのマスコミに漏らせば
面倒なことになる
さっさと告訴して終わらせるんだ
(同僚)あっ そうそう 聞いたよ 玖村くん
(玖村)え?
(同僚) 昔 やらかしちゃったんだって?
家庭教師先の女の子と
君もツイてないよなあ
SNSで告発されちゃうなんてさ
どこで それを?
社内でウワサになってるけど
あれ? 知らなかった?
(踏切の警報音)
(警笛)
(雪子(ゆきこ))紘海先生
ハァー もう 連絡しても 返事がないから心配で
(紘海)黙っていて 申し訳ありませんでした
もうすぐ告訴されると思います
い… いつ?
分かりません
告訴がなければ自首します
灯を失ってから
私は 正しさから どんどん遠ざかっていきました
最初に あの人から美海を奪って
その罪を隠すために また別の罪を重ねて…
気がつけば
引き返せなくなっていました
“子ゆえの闇”
子供が かわいいあまり
暗闇の中に入ったように 正しい方向を見失ってしまうことを
“子ゆえの闇に迷う”と言うの
大昔から⸺
私たち そうだったのかもしれないね
美海ちゃんに 伝えたいことがあれば…
(紘海)ありません
(紘海)ウソだった
私は 後悔している
罪を犯してしまったことと 同じくらい激しく
ねえ だから早く…
かわいかったからじゃない
あなたが かわいかったから 子供にしたんじゃない
(紘海)なぜ あんな言い方をしたんだろう
お母さん…
(紘海)お母さんじゃない
娘でもない 血も つながってない
(紘海)ひと目だけでいい
会いたい
会って 謝りたい
萌子 ママだ
(江身子(えみこ))萌子ちゃん
私には
母親を名乗る資格はないけれど
でも⸺
できる限りのことはさせてください
お願いします
レストラン 7時からの予約なんだ
少し早いけど行こうか
ちょっと待って
(梨々子)んー ちょっと大きいかもしれないけど
これとか大丈夫だと思うよ
行きたくないの?
だったら そう言えばいいのに
あの人たち べつに怒んないよ
どういう人ですか?
え?
あの…
ママ?
じゃなくて…
パパのこと?
どういうって…
約束 守ってくれる人ですか?
うん
(梨々子)お待たせ
変ですか?
-(旭)あ… いや -(江身子)全然
すっごくかわいい
(梨々子)うん 私の妹だから当然かわいい
よかった
それじゃあ 行こうか
♪~
(紘海)どうして あのとき 伝えなかったんだろう
あなたが大好きだと
これからも ずっと変わらないと
塀の向こうからも
ずっと 大切に思っていると
あのとき⸺
どうして 言えなかったのだろう
(旭)タクシー 大通りで拾おうか
(梨々子) うん そうだね
萌子
おいで
約束…
(美海)お母さんのこと 通報しますか?
しないよ
(美海)部活 鉄道研究会に 入ってもいいですか?
(旭)萌子 今も鉄道が好きなのか?
(美海)うん ずっと好き
車掌さん目指してたこともあって
側灯 滅!
(旭たちの笑い声)
~♪
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