All language subtitles for 2005-螢火蟲之墓(Grave of the Fireflies)(LA版)jn

明治、大正、昭和、平成、四つの時代を生き抜かれた個人が、今、
安らかに旅立たれました。

どうぞ、お二人ずつで、こちらをお墓地になって、お骨を押さなください。

姉さん、どうぞ、こういうことは頂上からでしょう。

えっ?

私?

うん。

私は亡くなった大おばあちゃんの最初の娘。

あなたが一番若いひまご。

だから2人で見送りましょう。 うん。 何言ってたの?

ん?

おばあちゃん、何か言ってたでしょ、お骨を拾う時。

教えてよ、何か気になったんだ。

お別れしてたのよ。

お母さん。

長い間ご苦労様でした。

やっと戦争が終わったわねって。

そう言ってたの。 戦争って昔の戦争?

原爆とかも?

そうよ。

私があなたの年頃の時にやってた、あの戦争。

でも戦争なら60年も前に終わってるじゃん。
そうかしらね。 どういう意味?

あそこの箱ちょっと持ってきてくれる?

うん。

いいけど。

おっ。

高校生の欲しいものなんて何にもないでしょ。
うわっ。 これおばあちゃんたち?

あら。

ええ。

あっ。 え、じゃあこれが死んだおばあちゃんで。

もしかしてこのセーラー服が。 そうよ。 お菓子?

うん。 おばあちゃん、セーラー服着てたんだ。

そうよ。

これは家族が撮った最後の写真なのよ。

そうか。

お母さんちゃんと撮ってあったんだ。

まだ何か入ってるよ。 何だろう?

昭和20年の新聞よ。

タイムカッセルみたい。

何これドロップの缶かなえっどうかしたおばあちゃんそんなに驚くようなもんなのうんえっ
えっ何が言ってんのとっても大切なもの大切なものって?

あの夏。

昭和20年。

夏。

私たちはたくさんのものを失いました戦争は街も人もそして私たちの心も燃やしましたこれは
私たち家族の悲しくむごい戦争の記録です。

おかしいな。

ここって聞いたのに。

汚いやっちゃな。

おい、よそ行ってくれよ。

アメリカ軍がもうすぐ来る言うのに。

ハジやでこんな駅におったら。

もう向こう行ってくれ。

すみません。

横川聖太という人知りませんか。

は?

親戚なんです。

ここにいるのを見かけたと聞いたので。

知るわけないやろ。

毎日何人もの不老人がここで死におるんやで。

中学3年生です。

神戸一致の帽子をかぶっていて。

これくらいの妹を。

あれ?

それ運命移転モータコかなあいやそこでなあ。

あれ?

こっちも死んどるわ。

一忠の帽子やでおい。

なんでまたこんなとこで一忠勢がのたれじんどんやろ。

盗んだもんに決まったんやろ。

そうか。

そうやな。

何やこれほっとけほっとけ捨てとったらええねえほんやない

か んいかん

死 んだの、

せ いたくんも、せっちゃんも死んだの。

違うよね。

どこかで生きてるよね。

何とか言ってよ、お母さん。

2人とも殺したんだわ。

ありがとう。

大きに。

よし、泣いたらあかん。

今から絵も見せてやるからな。 1、2の3。 うわぁホタルや!

きれいやろう。

おいで節子。

この番組は、花王宝スタンダード。

トヨタと、ご覧のスポンサーの提供でお送りします。

節子!

はよ!

はよこい!

見てみん、節子。

あれがお父ちゃんの乗る船や。

連合艦隊やで。

勇ましいやろ。

お父ちゃん、お船に乗ってどこ行こ?

敵をやっつけに行くんや。

お父ちゃんは海軍大佐や。

アメリカなんか、への河童やで。

への河童やで。

お父さん、戻りました。

せつ子は出ていなさい。 なんで?

兄さんと、大事な話があるんや。

せっちゃん、いらっしゃい。

はーい。

ええ子やね。

たまごのおかえさん、しましょうね。

座りなさい、せーたん。

はい。

いい匂い。

早く開けて。

わー、赤飯。

今日はね、特別に分けてもらったの。

わー、ほんと。

早く食べよう。

やった、赤飯だ。

やったー。

お行儀悪いね。

聞こえてるよ。

だって久しぶりだもん。

ここんとこ、ずっと麦やすまばっかりだったもんね。 ねー。

おいで。

どうして、赤飯炊いてるのか知ってるの?

そんなこと知ってるよ。

お父さんが、軍隊に行くからでしょ。

軍隊に行くって、どういうことかわかってる?

敵国と戦うの。

バーン、バーン。 あんたたち嬉しいの?

お父さん、死ぬかもしれない。

お 父 さん、おめでとうございます。

お父さん、中田さん。

わざわざ、すいません。

いやー、疎開さっきから出世とは大変ですな。

しかし、大変名誉なことです。

ありがとうございます。

あ、どうぞ、赤飯炊きましたので、ご一緒に。

そうですか。

ほら、お言葉に甘えて。

ゆいちゃん。

お父さん、赤飯炊いてるの知ってきたの?

出世する家を回って、ごちそうになってんだから。

し、いいから早く呼んできて。

姉さん。

ていちゃん、また咳が。 大丈夫?

苦しい?

熱はないみたいだけど、お薬飲んでおこうか。

お薬なんかいらないよ。

え?

甘えたくて大げさにしてるんだから。

こら。

ごめんください。

お祝いにあがりました。

千人バリ持ってきましたね。

ただいま。

おめでとうございます。

お父さんいないわよ。

え?

そういえば、さっきから兄さん見かけませんね。

こんなときにどこ行ったのかしら。

父は今日、外地へ飛び立つ。

はい。 現在の日本の戦況はわかるか?

ソロモン諸島では大戦果をあげたと新聞で読みました。

すいません。

生意気なこと言うて。

いや。

ソロモン諸島で戦果をあげたのは事実だ。

ただし、ガダルカナル島やツ島ではほぼ全滅という犠牲を出した。

マーシャル諸島でも敗色が濃い。

このことは、新聞やラジオでも報じておらん。 じゃあ、日本は?

聖太、日本は勝つ。

いや、これだけの犠牲を出した以上、必ずや勝たねばならん。

私は、死ぬ覚悟でお国のために戦うつもりだ。

何が言いたいかわかるな。

私が戦地へ赴いたら、お前が、この家の大黒柱だ。

母上は、心臓に病がある。

おいしい。

セツコもまだ小さい。

父が、お国のために戦うように。

お前は、母上とセツコを守れ、決して折れるな。

はい。

自分の命に変えても、2人を守り抜きます。

余裕だ。

それでこそ、日本男児や。 はい。 何してるんですか?

ははは、雨漏りを直してんだよ。

わざわざ、出世の朝にしなくてもいいのに。

出世しちまったら、もうできねえじゃねえか。

ここは、お国を何百里、離れて遠き満州の、赤い夕日に照らされて。

やめてください。

けがでもしたら困ります。

ははは、俺は大工だぞ。

落ちるわけねえよ。

ひしゃく、お前。

やめてください。

なに向きになってるんだ。

軍隊から帰って直してくれたらいいんです。

帰れるかどうか分からないだろ。

あなたは帰ってきます。

どうだかな。

初回物の除退兵にまで、赤髪突きつけるぐらいだからな。

あなたは帰ってきます。 ぜ、絶対に帰ってきます。

うっしゃろ。

おばあさん。

あぶねえな。

死なないで。

手柄も君者も何もいらない。

絶対に無事に帰ってきて。

お願い。

サワノゲンゾウ君の出世を祝して。

万歳!

万歳!

万歳!

サワノゲンゾウ、中年の体に鞭打って戦ってまいります。

あまりが何か潰したね。

おきに。

おう!

おう!

ええ。

まあまあまあまあ。

ええええ。

ごぶ君、お祈りしております。 あんた!

門出に涙は赤やないの!

いやいや。

戦死した息子さんのことを思い出しはったやろ。

あの子は天皇陛下のために死んだんや。

何てどないすんねん。

すまんすまん。

さあさ、飲んでください。

あ、すまんやな。

OK。

さあ、タイのお頭付きもありますから。

おんまやこりゃ立派なタイのお頭付きや!

ちょっと細身やな。 おい海 軍 大佐の妻だろ?

行ってらっしゃいませ。

うん。

送ろう。

父ちゃん。

あ、せつ子。

せつ子。

切れてもうた。

お前はうちの待望の男子だ。

好き嫌いをせず、しっかり飯を食って、丈夫になれよ。

はい。

牛。

お前も、たしはでが。

ご心配なく、僕が姉さんと子供たちをお守りします。

その体で、無理するな。

それよりお前、俺のいない間に、ひさこに惚れるなよ。

兄さん、くだらない冗談を言わせてください。

シャゴ、みんなを頼むな。

心配するな。

俺は小さいときから、逃げ足だけは早いんだ。

必ず無事に帰ってくれさ。

危ないです、いつか。

よー、似合わせっちゃん。

目が回るわ。

お母ちゃん、無理しちゃらあかんやろ。

聖太さん。

これから僕が大黒柱なんやから。

僕の言うこと、聞いてもらうで。

まあ、頼もしいですね。

まあ、頼もしいですね。

こら。

きょうも出征の列車が出たんか。

陸軍も南方の砲兵部隊が足りんらしいから。 ひさこちゃん?

京子さん?

私たちが、聖太くんとせっちゃんに初めて会ったのは、 父、源蔵が出征した日のこと
でした。

私の母と聖太くんのお母さんは、いとこ同士にあたりましたが、 それまではあまり親しく付
き合ったことがありませんでした。

けれど、同じ日に、夫を戦地に見送ったことで、 目に見えない絆が生まれたそうです。

私たち一家が、 アメリカ軍による東京奇襲で家を失い、 神戸に近いマンチ谷に疎開を
して、 ちょうど半年が経っていました。

東京を出るのは勇気が言ったけど、 主人の実家も焼けてしまったし、
杖の低層が喘息だから、 空襲から逃げ回るのが大変で。

そう、大変な目に負うたのね。

京子さんのところは、2人とも元気そうね。

神戸一中って言ったら、 1校目指して勉強するんでしょ?

僕は海軍兵衛学校に入りたいと考えてます。

私、軍人さん嫌い。

だって、すごく偉そうにしてるもん。

でも、国を守ってるのは軍やないか。

兄ちゃん、ケンカはあかんよ。

えらいね、せっちゃん。 ご褒美あげようね。 ご褒美?

ええっ。 ええの?

こんな物資のないときに。

主人の弟が神戸の税課に臨時雇いに行ってて手に入れてくれたの。

子供たちにはもう食べさせたから。 開けてもええ?

それより先にお礼でしょおばちゃんありがとうおきみちゃんとご挨拶ができてえらいねあれ?

かしみ。

きれい。

これいちご。

これがぶどうだよ。 じゃあこれは?

ん?

メロン?

これはね。

ああ今日久子ちゃんに会えてよかったわ。

主人を見送ったら急に力が抜けてしもうって。

私も疎開して、やっと慣れたと思ったら赤髪で。

泣きたいぐらい心細かったの。 早送ってみ!

ホタルやホタル!

お前や!

どれ?

あそこ、明るい光ってるの見えるやろ?

わあ、きれい!

ほんとにきれい!

光っと!

東京ではホタルなんて見られないから。

この辺は酒蔵があるとこで水がきれいやから。

ホタルが多いね。

あ、あちの方だ。

あっ、あそこにもおるわ。

ほら、あそこにも。

もし困ったことがあったら、何でも言うて。

京子さん、関西もいつ空襲でやられるか知れへん。

もしものときは、お互い助けようって、子供たちを守りましょうね。

はい。

妻同士、助け合って、夫の帰りを待ちましょうね。

ええ。

約束ね。

必ず。

男たちが戦争に行ったことを除けば、
まだまだ、のどかな夏でした。 うーん。

けれど、昭和20年になると、3月10日の東京大空襲で、10万人もの帰省者が出たのに続
き、大阪や名古屋などの地方都市も、相次いで空襲に見舞われました。 大丈夫か?

大丈夫。 行こう。

神戸も例外ではなく、3月17日、5月11日と、2度にわたる大空襲で、
神戸市の西半分が全滅。

死者4000人、被災者は20万人にも上る、
壊滅的な被害を受けました。 お母ちゃん、大丈夫か?

このころになると、配給の食べ物も急激に底を突き、一般の人々にも、
戦争の本当の姿が、じわじわと見え始めていたのです。

お母ちゃん、1万6人なんですけど...
まあ、兵隊さんに比べたらマシなんやから。

はい。

そして、あの日、6月5日がやってきました。

本日は負担回帰。 よって、解散!

うーん、冷たい。

あっ。

どうも。

どうも。

誰や?

誰や?

誰や?

誰や?

誰や?

ほんまかー。 こういう人やろ?

違う!

親戚言うたら親戚や!

こういう人や。 海軍隊員の息子が伊勢高雄や!

しっかり!

お久しぶり。

空襲が多いけど、おばさんや節ちゃんおかわりない?

あっ、はい。 そちらは?

平気よ。

うちの方にはまだ空襲が来てないから。

よかった。

でも、ほんと言うと、不安。

戦地の父からは、まだ何の頼りもないし、
背景もだんだんへ。 大丈夫や!

僕の父は、絶対日本は勝つと言いました。 だから、大丈夫や。

安心してください。

そう。

ありがとう。

いえ。

あの、また今度、おばさんたちと三陰遊びに来てください。

うん。

じゃあ、今度ね。

お母ちゃん、早いな。

お母ちゃん、早いな。 兄 ちゃん、これも。

ああ。

お母ちゃん、何にせんの。

さっきに防空壕行ける言うてるやん。

さっちゃん。

僕が連れてくって。

お母ちゃんは走られへんのやから。

早いかんの。 そうやね。 はよう!

ごめんごめんほなあんたらも気ぃつけてな。 お母ちゃんお薬持った?

ありがとう持ちましたよ。

これはあんたが持ってなさい。 分かったから早いって早い!

ほなあとでな。

節子おぶさり、うん。

しっかりに、兄ちゃん捕まっとくんやで。

はい。

母、もう午後にいかれ。

父がお国の為に戦うように、お前は母の値を守り、
決して折れるな。 いや あああ ああ、 奥さん!

牛さん?

大丈夫?

大したことありません。

石爆弾の油を浴びただけです。

お勤めは神戸税関でした。

よう帰ってこれました。

軍隊には行けない体ですが、兄の代わりに留守を守っておりますので。

ああ、いや、あの、今日の空襲は尋常やないって聞いたんで。

空はB29で真っ黒でした。

真っ黒、偉いこっちゃ。

いよいよ神戸も関連や。 偉いこっちゃ!

西井さん、京子さんの家の方は?

生田から東御町は火の回りが早く、焼け野原だそうです。

焼け野原。

これが空襲のあとに浮る黒い雨か。

B29。 せつこ、どうもないか?

怪我してへんか?

けた片っぽ、あらへんようになった。

兄ちゃんがこうたるよ。

もっとええの。

あれがええ。

拾いに行こう。

今は無理や。

せつこ、ここで待っとく。

えらいきれいさっぱりしてもうたな。 おうち、焼けてしまったん?

そうらしいわ。 どないさなん?

お父ちゃん、仇とってくれるて。 母ちゃんは?

どこ行った?

防空壕にいてるよ。

心配ない。

遺産者の皆さん、三陰国民学校へ避難してください。

遺産者の皆さん、三陰国民学校へ避難してください。

ここまでは、顔を宝スタンダード、トヨタと、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

えっ。

ひさ子おばさん。

せっちゃん、大丈夫、けがしなかった。

あの、母を知りませんか。

中にいらっしゃるわ。

けがをされたそうよ。

大きに、お母ちゃん、おんたたせっつこ。

待て、瀬太さん。

瀬ちゃんは私が見てるわ。

大林さん。

よう無事やったな。

探しよったんや。 瀬子ちゃんは?

無事です。

あの、母がけがしてるって聞いたんですけど。

あっ。

おいで。

あっ。

あそこや。

防空壕に、直撃弾が2発落ちよったんや。

気の毒やったな。 あの、お医者さんは?

お母ちゃん、心臓が悪いんです。

歯読みでもらわんと。 そうやそうやったな。

読んでこよう。

お母ちゃん、お母ちゃん、
返事してえな。 お母ちゃん、お母ちゃんは?

お母ちゃんは、病院へ行かはった。

心臓で。

うん、病院へ。

お母ちゃん、どこ行きたい。

明日にしよう。

もう、遅いから。

せっちゃん、今日はおばさんのうちへいらっしゃい。

お母さんもそうしなさいって言ってらしたわよ。

ほな、寝た拾いに行って。

まあ、無理やって言うたやろ。

早い寝に行かな。

どうなってしまうや。

お母ちゃんがこうでくれなげたやろ。 う るさいな。

行かれへん、言うたら。

行かれへんのや。

お父さんの代わりで大変なの。

分かってあげてね。

大丈夫よ、瀬戸さん。

さあ、瀬戸ちゃん、着きましたよ。

よいしょ。

瀬戸君、今夜は学校に残るって。

瀬戸ちゃん、お家に入って。 おばちゃんの家嫌い?

一緒におはじきしない?

ありがとう。

ありがとう。

ちゃう。

ありがとう。

お気にや。

ありがとう。

ありがとう。

ありがとう。

さっちゃん。

お母さん気の毒やったなお

父 さんに連絡しんや。

ま

あ 頼もしいですね。

あれ?

お母ちゃんは?

節子、お母ちゃんな。 まだ心臓ようないの?

うん。 う ん。

怪我しはったしな。

もうちょっとね。

お母ちゃんに会いたい。

せや。

これ、お母ちゃんから預かってきたで。

節子にあげるやて。

うわぁ。 う わ ぁ。

うわぁ。 見て、お母ちゃん。

お母ちゃんに戻って。

きれいね。

大事にしなさいね。

うん。

お姉ちゃんなに見せてくる。

大変だったわね、瀬戸さん。

節子にはまだ言わんといてください。

何も心配しなくていいのよ。

ほな、父に連絡がつくまで置いてもろってもいいでしょうか。

もちろんよ。

ここから学校へ通ったらいいわ。

いえ、節子がいますから。

学校も勤労動員も休みます。

節ちゃんならおばさんが見てたらいいわよ。

いえ、ご迷惑をかけるわけにはいきません。

何言ってるの。

おばさんに甘えていいのよ。

お母さんともちゃんと約束したんだから。

でも。

さあ、上がって、ごはんにしましょう。

何やってんの。

わあ、きれい。 ねえ。 本物。

当たり前じゃない。

すっごい。 はい、せっちゃん。

これでなくさないよ。

ありがとう。

うん。

よかったね。

きれいだよ。

ねえ、みて。 みせて、みせて、みせて。

すっごいきれい。

いただきます。

いただきまーす。 お母さん、食べないの?

うん。

ちょっと食欲なくて。 ええ、具合悪いの?

うん、大丈夫。

初期当たりかしらね。

背景、父上様。

本日は悲しい知らせをお伝えしなければなりません。

母上が、6月5日の空襲で、亡くなられました。

僕と節子は無事で、西宮の久子おばさまの家にお世話になっております。

久子おばさまは大変親切にしてくださいますがこの先いかがすればよいのか父上様のご指示を
仰ぎたく存じます一刻も早いご返事をお願い申し上げます。

節子会ったで。

わ ー、卵だ。

卵だって久しぶりに見た。

パターもあるよ。 ほら、目干しに、にしんに。

ほら、かつおもしまう。

軍の幹部に配給になったものです。

すごいな。

なあ、お母さん。

うちではもう何ヶ月も見たことないものばっかりね。

おばちゃん、たまごのおかえさん作って。 すごい。

水、浮かばね。

山、ゆかば。 山、 ゆ か ば。 兄ちゃん、ホタルは?

ああ、おらへんな。 なんで今年はホタルいひんの?

なんでやろうな。

なんでやろうな。

さや、節子、目つめてみ。 なんで?

ええから、はよ。 ああ、ドロップや!

愚痴あったで、節子のドロップ。

兄ちゃん。

ああ、久しぶりのたまご、おいしかった。

非常時でも軍人さんだけは贅沢してるのね。

そんな言い方はしなくても。

たまごが買えるだけのお米だったら、もっと助かったのにって思っただけよ。
も っと 助 かった の に って 思 った だけよ。

もう いいわよ。

明日も動員でしょ。

早く寝なさい。

うん。

おやすみなさい。

おやすみ。

もういいって。

ごめんなさい。

ねえさん、これ、少しですが。

よしえさん。

ああ、失礼だけど、米を買う足しにしてください。

ああ、いけません。

これはあなたが一生懸命働いたお金です。

でも、

も ともと食料に限りがある上に、食べ盛りの子供が2人も増えたら、
配給だけでは、到底やっていけないんじゃないですか。

余計な心配しないでちょうだい。

よしえさんからお金取ったら、あの人になんて言われるか。

はい。

これだけですか。

今回は1人当たり、1号半しか入ってこんかったんや。

うちは子供が4人いるんです。

それは前にも聞いたかな。

はい、次。

あの、待ってください。

焼け出された子供も2人預かってて、これじゃ3日と持ちません。

ええ、かっこして。

焼け出されなんか預かるからや。

どうしても食いたいんやったら、やみ米を買うしかあらへんで。

はい。

はい、次。

これだけ。

今回の配給、いつもより少なかったのよ。

さあ、いただきましょう。

いただきます。

いただきます。 いただ きます。

勤労動員でお腹すいてる。

私も足りない。

仕方ないでしょ。

どこも同じなんだから。

一緒じゃないよ。

えっ?

人数が増えたからお腹が減るんだ。 どういう意味?

聖太兄ちゃん、来たから。

やめなさいよ、そんなこと言うのは。

でも本当じゃないか。

2人のせいで。

ごちそうさまでした。

よし、せつ子、泣いたらあかん、みんな、こうしてしまうやろ。

お母ちゃん。

せつ子、せつ子。

お 母ちゃん。 ああ。

最近よく熱だすね、テイゾ。

需要のあるものが食べられないから。

大丈夫よ。 寝てなさい。 米一緒でどう?

一緒?

江戸門はこっちではあんまりね。

これ、母が嫁入り道具に持たせてくれたものなんです。

いや、嫌やったら別にええんよ。

うちは好意でお分けしてるだけなやさか。

もうちょっと勉強してあげたらどやん。

別品さんには甘いな。

焼け出されの子を2人も引き取りはって、大変なんやから。

せっ、その焼け出されの子をやけど、さあのさん、中学生やいうのに、
勤労動員にも隣組の防火活動にも出てへんそうやないの。

母親を亡くして、小さい妹がいますので。

親を亡くした子は、他にも行さんいてますぜ。

一生で結構です。

すいません。

今、お宅へお伺いしよう思ったとこですから。 うちへ?

名誉の戦士、日本男児として、誇りに存じ、立てはずります。

戦士。

お父さん、

本当 に戦士したの。

お父さん。

お父さん。 お 母 さん。 ハニは、どんな最後?

みんなの音を出そうよ。

地上戦で、歩兵第74連隊が、突撃を命じられ、全員玉砕を。

玉砕。

ご立派な最後でしたって。

何が立派なのかしらね。 どうして死ぬことが立派なの?

久子婆さん。

おじさんは帝国陸軍の一員として、栄誉ある最後を研ぎ張ったんです。

悲しむことやなく、喜ぶことやと思います。

喜ぶ?

僕の父は日本は勝つと言っておりました。

おじさんの死を無駄にはしません。

海軍大佐として、必ずは敵を取ってくれると思います。

敵なんか、取ってくれなくていい。

おばさん瀬太君。

雨漏りを直してんだよ。

絶対無事に帰ってきてお願い心配するな俺は小さい時から右足だけは入る必ず無事に帰ってく
るさ

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軍人は国なんて守ってません。

ほたるや

ん。

爹 ちゃん。

爹ちゃん、はい。

姉さん、やはりお医者は開けてくれませんでした。

しっかり、爹ちゃん。

今日は外へ行かれへんのや、瀬津子。

お母ちゃん。

瀬太さん、体像の具合が良くないの?

少し静かにできないかしら。

すいません。

雨漏りの音がうるそうって。

何か食べるものないでしょうか。

お腹も空いてるんや思います。

こんな時間にあるわけないでしょ。

僕の持ってきたカツブシカイリダイス残ってませんか?

そんなものとっくに無くなったわ。

お母さんお医者さんのとこ行ってくるもう一度頼んでくるえっでも転送までしなせるわけにい
かないでしょ隣

に 泣いたらお帰り。

この夜を最後に母は二度と涙を見せませんでした父の戦死の知らせは母にある覚悟を促したの
です私は今もこの翌朝の出来事を忘れることができません

お 願いします。

ではいただきますいただきます兄

ちゃん うちのお米入ってええから食べ定

蔵 よくなってよかったわねしっかり食べなさいちゃんと栄養取らないと病気が治らないわよ
はいお母さんも食べるわよお父さんが亡くなったんだからお母さんが元気でないとね

お 父ちゃん、なんで返事くれへんのやろな。

知らん。

そりゃそうやな。

節子は知るわけないわな。

うちおなかすいてん。

うん、晩ごはんまで我慢し。 ママちゃんと食べられる?

当たり前やんか。

よかった。

どうしたの、瀬谷さん。

しっかり食べなさい。 軍人さんになるんでしょ?

すいません、お母さん。

何?

僕ら、ここんとこまともに食べてへんのですけど。

おかしなこと言うわね。

毎日ご飯出してるじゃない。

せやけど、その、上澄みばっかりで、米も青もほとんど入ってへんのです。

仕方ないでしょ。

配給が減ってしまったのに。

一緒にだにやられてんかったらええけど。

それもしゃあないわ。

なさの仲やし、いっそらんようになったらほっとするわな。

よしてください。

なんちこと言うね、お前は。

あ、あ、あ、あんた。 何言うの。

せいつか、行くで。 ううう。 こっつけ行け!

ここやったら安心やで明るいなこうやって見てるときれいやなお父ちゃんとお母ちゃんとい
った花火みたい

はい。

はい。

もう 大きいんだから、少しは助け合うことを考えてもらわないと。

聖太さんが隣組の防火活動に行かないことで、ご近所からいろいろ言われてるのよ。

わかってます。

でも、節子を一人にしておくわけにはいきませんから。

だったら、言いたいことがあるんだけど、お母さんの指輪ね。

その指輪、お米に変えたらどうかしら。

隣組に入らないと、あなたたちの分の配給がもらえないのよ。

理財特配なんてたかが知れてるし、
おばさんだって着物売ってたしまいにしてるのよ。 でも、指輪は.

..

その指輪なら、一頭や二頭にはなると思うけど。 一頭や二頭?

そんなに...

こう言っては気の毒だけど、もう用はないんだし、 お母さんもそのほうが喜ぶんじゃないか
しら。

無理にとは言わないけど。

わかりました。

これ、お願いします。

そう。 じゃあ。 お母ちゃんの指輪よ!

あかん!

あかん!

せつこ!

やめ!

あかん!

あかん!

あかん!

あかん!

あ か ん!

あかん!

あかん!

晩はこのお米、食べましょうね。

せつこ、見てみ。 白いお米やで。 せつこ?

あ、まだあかん!

やっぱり白いご飯はおいしいな。

食べた気がするね。

ガリー。

はいはい。

私も。

こっちも。

まだ残ってるやろ。

そうやった。 まだ食べてないの?

早くしてちょうだい。

みんなもうとっくに学校や動員へ行ったのよ。

あの、あの、夜は白いご飯炊いてもらえませんか?

せつこ、香料はよう食べるのです。

贅沢いったらいけません。

香料も貴重な食料ですよ。

いくら軍人さんの子でも、今はよそのうちにいるんでしょう。

でも、まだこないだのお米、あるはずですよね。

大事なお米だから置いてやるんです。

配給がなくなっても、みんなが食べつなげるようにしておかないとね。

あれ、うちのお米やのに。

おばさんがずるいことしてるっていうの?

そんなこと言ってません。

ただ、あれはお母ちゃんの指輪と書いたお米やから。

それを言うなら、2人は今まで誰のお米を食べてきたの?

1日中ブラブラして、ご飯だけ食べたいなんて無理な話よ。

夏も肌も勤労動員に行ってるし、おばさんも。

小さい雪や低蔵だって、隣組で畑の手伝いをしてるの。

何もしてないのは聖太さん、あなただよ。

僕 は雪子を守ってます。

お父ちゃんはお国を守り、僕は雪子を守ってんのや。

軍人は国なんて守ってません。

やがる人を無理やり戦争に行かせて、虫けらみたいに殺すだけです。

何なの、その目は。

分かりました。

そんなに不満なら、ご飯別々にしましょう。

それなら文句ないでしょ。

どうしたんやろな、おばちゃん。

お前は、こっちにドロップくれはって、優しかったのにな。

さあな。

兄ちゃん、

手 出して。

ごめんなさい。

兄ちゃん。

ええよ、雪子。

行こう。

1、2、3。

ほう。

ほう。

ほう。 ほ う。

ほう。

ほう。

奥さん、あんたそんな腰つきでやってたらね、夜になっても出けしまえんで。

ね。

頑張りや。

7月に入ると、いよいよ配給は途切れがちになりました。

東京から疎開してきた私たちには、残り少ない食料を分けてくれる親類も、
知り合いもいませんでした。 やっ、どうぞ、ありがとうございました。

どうぞ、今日はお疲れ様、ご存知でした。 はい。

7連なんかどないすんねん。

ご飯作るんです。

ご飯、おばあさんが作ってくれたはんねんやろ。

自分でやることになったんです。

包丁とお玉もください。

自分でって、無理やで、子供だけで。

お父ちゃんが帰ってくるまでの辛抱ですから。 何抱です?

全部で、200…いや、107銭だよ。

何があったか知らんけど、意地張ったらあかんで。

もうじき、うまいおかあさんの出来上がり屋で、せつこ。

ご飯よ、手伝ってちょうだい。

お母さんがきつく言ったからよ。

お母さんは間違ったこと一つも言ってませんよ。

非常時には助け合わなければいけないって言っただけです。

意地を張ってあてつけみたいなことしてるのは、せーたさんのほうでしょ。

せつこ、もうそんなにきちんと座って食べんでもええよ。

ああ、うまかった。

せーたさん。

うん?

おしになりますよ。

はい。

せーたさん。

自炊するということは、片付けに使う水も、自分たちで賄うということですよ。

で!

兄 ちゃん。

ん?

手伝うか?

それ、持っててくれたらええ。

兄ちゃん。

ん?

冷たない?

あ。

兄ちゃん。 うるさいな、あせつこは。

ホタルや。

ほんまや。

今年もホタルが来たんや。

あ!

すごいな。

うん。

うち、まちゃんとこ、もういやいや。

ほなここおうちにしようかここやったら誰もけいへんし節子と2人だけで好きにできるよふ
ん!

母は何も言いませんでしたそして私たちは何が起こっているのか気づきながらそれを言葉に
することができませんでした えらい長いことお邪魔しました。

僕らよそへ移ります。 よそってどこへ行くの?

すごいええとこです。

寝るとこも遊ぶとこも広いし、水もたっぷりあるし。

な、節子。 うん。

そう。

じゃあ、何の心配もないわね。

そんな。

お母さん。 ほら。 さいなら。 せいたくん?

せいたくん!

ここまではメナード化粧品とご覧のスポンサーの提供でお送りしました。
お母さんはお兄よ。 せつ子!

カモメの水平山。

な、なんだ、水平山。

白のシ、白シャツ、白衣服。

波にチャップチャップ浮かんでる。

ここがお台床。

こっちがお玄関。

ここが座敷で、そっちがお父ちゃんの書斎。

あっちがお母ちゃんの。

兄ちゃん、はばかりはどこにするの?

ええやんか、どこでも。

兄ちゃんがついてったる。

ふっ。

せちゃんたち、どこ行ったんだよ。 大丈夫か?

いいとこって言ってたよ。

いいとこなわけないじゃない。

おかえり。

よく平気な顔していられるわね、お母さん。 お腹すいたでしょ?

お母さん。

姉さん。

あら、早かったのね。

ご苦労さま。 本当に探さなくていいんですか?

自分で出てったんです。

私が追い出したわけじゃありません。

しかし、子供2人では生きていきませんよ。

困ったら戻ってくるでしょ。

姉さんらしかありません。

吉江さん。

お金を少し、融通してもらえないかしら。

前には断ったくせにって思うでしょうけど、 今週も配給がなかったのよ。

お米も、大豆も、私の着物も底をついてしまって、 あなたにも少し負担してもらわないと
ね。

それは、分かりました。

もうきれいごとでは生きていけないわ。

ほこりや意地でご飯は食べられないの。 間違ってるかしら?

いえ、姉さんは間違っていません。

雪子。

泣いたらあかん。

雪子。

泣いたらあかん。

せつこ、せつこ、ねえ、開けてみ。 ええか?

今からええもん見せたる。 ええもん?

せやから、こっち来て見てみ。

行くで。

1、2の3。

これで3位しないやろ。

兄ちゃんありがとうおきに。

死んでもたせ

つ こせつこせつこ何 し とんねん?

お墓作ってんねんホタルのお墓。

せつこは優しいな。

お母ちゃんのお墓も作らんな。

うち知ってんねん。

お母ちゃん、死なはったんやろ。

待ってても、帰ってきはらへんねんやろ。

せつこ、

黙 っとって。

ごめんな。

お母ちゃん、空襲でな。

醤油弾に焼かれてしもうたい。

日本が戦争に勝って。

お父ちゃんが帰ってきたら、お墓作ってもらうな。

それで3人でお墓参りに行こな。

見たかったんやろな。

これ、使ってください。

助かります。

じゃあ、僕はこれで。 本当に出て行くの?

ええ。

職場の人が下宿を世話してくれるというので。

ずいぶん急なのね。

兄も戦死しました。

足が悪いからといって、いつまでも世話になるわけにはいきませんよ。

これ以上、姉さんが変わっていく姿は見たくないんです。

そう。

仕方ないわね。

僕は大人ですから心配いりません。

どうぞ。

お元気で。

お母さん、ひどいわ。

聖太君たちを追い出して、今度は吉江おじちゃんまで。

おじちゃん、足が悪いのよ。

仕事だってやっと見つけたの。

一人で放り出すなんて冷たすぎるわ。

さあ、できた。

綿を増やしておいたから、焼夷弾も防いでくれるわよ。

こんなものでごまかされないから。

ごまかされなくて結構よ。

お米を買いに行くから、付き合ってちょうだい。

私はお母さんみたいになりたくない?

人を見捨ててまで食べるものなんて欲しくない!

じゃああなたの分は用意しなくていいの?

なら、ありがたいわね。

お米も塩もお味噌も家族5人が生きていくのにギリギリしかないの。

一人でも減ればみんな少しはまともに食べられるわ。
鬼。 お母さんは鬼よ!

10円。

こんだけで10円もするんですか?

高かったら買わんで。

もともと金で分ける気はないや。 買わへんの?

布団やら何やらでお母ちゃんのお金ようけつこうてしもうたからな。

ちょっと置いとかないな。 行こう。 兄 ちゃん?

節子、ここで待っとり。 なんで?

ええから。

お前も

仲 間か。

お前もこいつの仲間かと聞いてんのや。

お前も待てよ。 どこ行ってたの?

白いご飯炊いたわよ今日はたくさん食べなさい

それ 以来私は聖太君とセッチャンのことを口にしなくなりましたあっあっ逃げてるあっ万年
生行ってもらった誰もが生きるために必死でした誰もが生きるために必死でした。

自分を見失っていました誰もが大切なものを忘れていました明日空襲で明け死ぬかもしれない

明日食べるものがなくなって飢えるかもしれないその恐怖と不安に勝るものなどどこにも
あります でした。

節子、どないじゃんや、節子、節子。

栄養失調による衰弱ですね。

この2週間ほどろくなもんを食べてへんから。

下痢や失神もそのせいでしょう。

次の人。

ちょっと待ってください。

薬はもらえるのでしょうか。

薬より、需要をつけることですな。

需要って、需要って何ですか。

需要言うたら、魚の白身とか卵の黄身とか、腸炎を起こしてるので。

そうや、リンゴをすりおろしたのもいいでしょ。

そんなもん、どこにあるんですか。

お医者さんやったら教えてください。

どこにあるんですか。

どこに。

教えてください。

困ったなあ。

もう塩もないし。

ほんま、腹減ったな。 せつ子、何食べたい?

天ぷら。

天ぷら。 天 ぷ らか。

天ぷらか。 ええ な。

それから、お作りにな。

卵のおかえさんこれからどうぞふぅん。

この泥棒が人が甘い顔したら平気になりながってくる。

すいません。

すいません。 ど ころさんです。

えらい顔になってしまってびっくりしたやろけども。

文句言われる筋じゃいないで。

空襲ドラバーは銃材やからな。

すいません。

すいません。

文句言わせずいなお前。

すいないから。

本館の出番なわけであります。

ここはおんびんに。

おんびんに。

海軍さんの息子が盗ったったら情けない。

夫さん、今度何かあったら責任取ってもらうさかいな。

おい。

君のせいでおばさんまで怒られてしまったやないか。

立ち入った話かもしれんけど。

また面倒を見てやってもらえんやろか。

いろいろあったんやろけども。

あんたかて、このまま2人が不老人になるのは忍びないやろ。

なあ。

頭下げて。

おばさんの家に戻してもらい。

子供だけで生きてこなんて無理やで。

なあ。

悪いこと言わんから謝り。

妹さんかてまだ小さんやろ。

おばさんに食わしてもらうしかないやないか。

なんで。

あの優しいよろず屋さんがあなえに怒ったか知ってるか。

よるず屋さんの息子さんもな。

海軍で。

マレ沖海戦で戦死したんえ。

海軍さんの子が盗みをするやなんて悲しいってたまがんねや!

あの。

僕は。

僕は。

あの瀬津子が。 謝らなくていいわ瀬太さん。

謝ってもらっても困ります。

あなたとせっちゃんが戻ってきても、 食べさせてあげるお米がないのよ。

もし、あなたたちに分けるお米があるなら、 それがたとえ一粒でも、
貞蔵や夏たちに食べさせたいから。

あなたたちが憎いわけじゃないけど、 私は、 貞蔵も夏も花も雪も、
死なせるわけにはいかないのよ。

恨みたければ、 いくらでも私を恨みなさい。

聖太さん。

これが戦争よ。

戦争とはこういうことなのよ。

僕は謝るつもりなんかない。

僕は海軍大佐、横川きよしの長男や!

兄ちゃん。

節子、遅くなって悪かったな。

うん。 う ん。

隣したん。 顔。 どんどして?

こっこって、 やぶかに刺されただけや。 どっか、痛いの?

うん。

うん。 いかんねぇ。

お医者さん呼んで。

診施してもらわな。

うん。

うん。 うん。

うん。

ご視聴ありがとうございました。 兄ちゃん!

せつこ、くわいいようなったんか?

そうか、よかったな。

ドロップ食べたら元気になって。 ドロップ?

アホ!

何舐めておるんや!

おはじきやないか!

せつこ?

兄ちゃん、どうぞ。 おはよう。 お茶も欲しい?

兄ちゃん、かんといて。

うち、もうず

っと 兄ちゃんでおりたい。

せつこ。

でも、なんか食べやな。

そや、たまごとお米こうてきて、たまごのおかげさん作ったる。

そんで兄ちゃんが抱っこして、ふうふうして食べさせたる。

約束や。

こんどこぞほんまにこうてくる。 こんどこぞや!

何

や?

お はよう。

おはよう。 おはよう。 どういう意味?

日本が負けたの。

戦争が終わったのよ。

え?

戦争が終わった。 じゃあ、もう空襲ないの?

そうね。 B29も来ない?

ええ。 やったー!

やったー!

やったー!

やったー!

もう逃げなくていいんだ!

勤労動員もなくなるよね。 当たり前じゃん!

これから、どうなるの?

さあ、お父さん、戦死までしたのに。

負けるなんて。 ねえ、聖太君たちはどうなるの?

日本が負けたってことは、 聖太君のお父さんも、死んじゃったってことでしょ。

ごはんにしましょう。 こんなときに?

日本が負けようが、国がどうなろうが、おなかはすくでしょ。

あのー、すいません。

これからどうなるんだよ。

なあ、しゅうかい。 鬼畜部映画が来るんか?

あのー、なんかあったんですか?

降参したいや。

え?

降参って、日本負けたんですか?

せやな。

無条件降伏やって。

ほな、連合艦隊はどうなったんですか?

そんなもん、とうの昔に沈んでもうて、
一石も残っとらまえ。 あははははははは。

嘘や。

父が、お国のために戦うように。

お前は、母上と節子を守れ。

決して折れるな。

嘘や!

嘘 や。

嘘や。 お こちゃんが繁薦なのはまだだね。 返 所や!

嘘や。

嘘や!

嘘 や ん、 嘘やん、嘘やん、嘘やん!

嘘やん!

ってお tree-cuálさそうに?

行方だここ。 か!

姉さん、ご無沙汰してます。

吉井さん、

ご 無事だったのね。

おかげさまで。

よかった。

どうぞ。

どうされるんですか、これから。

まだ何も。

僕は早々に切符を取って、東京へ帰るつもりです。 どちらへ?

まだ決めてません。

でももう空襲はありません。

何とかなると思います。

そうね。

あの...

僕、セイタ君に会いました。

池の近くで、痩せてました。 すいません。 どうして謝るの?

私は、姉さんには偉そうなことを言いましたが、僕も自分のことで手一杯で、
何もしてやりませんでした。

僕は何にも分かってなかった。

兄さんが戦地で戦ってたように、姉さんも。

吉江さん、体

には 気をつけてください。

もう二度とお会いすることはないかもしれないけど、ご無事だけは祈ってます。

なっちゃんや、手蔵君たちをよろしくお願いします。

はよしいな。

隠しとかな。

暴動が起きたら、みんな持ってかれてまうで。

ああ。

負けたから言うて、シュンとしてたら、しゃあないやろ!

あすんまへん!

今日は親、この泥棒!

どろそさげてきょったんや!

お米と卵をください。

泥棒に売るもんはないわい。

妹が病気なんや。

いくつでもいいから、売ってください。

売ってください。 この子、おかしなと!

帰れ。

一本は負けたんや。

もう彼なんか何の家事もなくなったんや。 そんなん知らん!

彼女を売ってください。

米を分けてください。

哲子は死んでまうや。 お願いします!

お願いします!

負けてください!

私、行ってくる。

だって、戦争は終わったんだもの。

せつこ、戦争は終わったんだよ。 せ つ こ、 戻 った で!

見てみ、たまごと米や。 上、いった。

下、いった。

下、

い った。

今度は右や。

せつこ、すぐたまご入りのおかげさん作るさかい。

な?

みーちゃん、ありがとう。

大きい。

待ってて。

お母ちゃんのたまごがゆう。

うまかったな。

たまごはやわらかて、 えぇー具合にしょっぱくて、 くまと米のり、
入れてくれたん。

舌がとろけそうやったなぁ。 なぁ、せつこ!

アホやなぁ。

せつこ。

もうじき。

できるように。

たまご入れのおかげさん。

せつこ。

せつこ。

なんでや。

兄ちゃん、どうしたらいいや。

ハハハハハハハハハハ。 お母さん!

?

節子ごめんなもう片っぽ探してやれんできっとなお母ちゃんが持ってはるで。

聖太君はせっちゃんの小さな遺骨をドロップの缶に入れるとそのまま 横穴へは戻りません
でした。

聖太君が三宮駅で亡くなり、他の不老児の遺体とともにダビに付されたのは、
戦争が終わってからおよそ1ヶ月後、 戦災故事の保護が法律で定められた翌日のこと でした。

き れいやなああそこにもおるわはい気持たんだよ大丈夫や安心してくださいはいせっちゃん
これでなくさないよありがとうおいしい!

私 もう生きていたくない

だ って 私たちが死なってたのよ。

セイタグーとセイチャ。 私たちが!

何甘えたこと言ってるの?

戦争はまだ終わってないのよ。

本当の戦争はこれからなの。

死んだら負け。

死んだら終わりなのよ。

うん。

死んだら終わりなのよ。

私たちを連れて東京に戻りどんな苦労にも涙ひとつ口ひとつこぼさず私たち4人を育て上げ
ました。

そして95歳で亡くなるまで一度も戦争のことは口にしませんでした。
ここが?

そう。 ここが私たちが疎開していたマンチダニよ。

そしてこのずーっと向こうに空襲で焼け野原になった神戸の街が広がっていたの。

うーん。

すっかり変わってしまって、昔の姿は何にも残っていないけれどね。

初めてだね。

ん?

おばあちゃんから戦争の話を聞くの。

思い出したくなかったの。

戦争のことも、ここで起こったことも、亡くなったセータ君と、セッちゃんのことも。

でも、お母さんはちゃんと覚えていたのね。

それで、これを見るたびに、生きてしまった重さを、噛み締めていたのかもしれない。

戦争って、昔話じゃないんだね。

だって、大おばあちゃんが生きて、おばあちゃんが生きたからお母さんがいて。

それで、あたしがここにいるんだもんね。

おばあちゃん。

ん?

この川、どこまで流れてるんだろうね。

この。

また

一 人 真

っ 白な頬を上げて、旅立つ船に乗り、力の続く限り、 二人でも恋でゆく、
その力を与えたまえ、勇気を与えたまえ。