All language subtitles for 2012-東野圭吾懸疑故事-EP11-再生魔術之女-J

（倉敷）私が死んでいます。

間もなく 私の死体が 運びだされます。

（倉敷）ただ ミステリーの世界では

土壇場で 結末が 逆転することも あるんです。

（従業員）すいません。 ギョーザ お待たせしました。

そう。 オムライスだけでは 足りなかった 私は

ギョーザを 追加注文していた。

これから 死のうとする人間が ギョーザを 追加しますか？

あの ギョーザが 私が 自殺でないことを 証明…。

（宮崎）ああ。 俺だ。 その ギョーザ。

（倉敷）おい。 何 言ってんだよ？ （刑事）よし。 ホトケさん

運びだすぞ。 （捜査員たち）はい。

（倉敷）おい 見ろ。 おい おい。 ギョーザだ。

あれ 私が頼んだ ギョーザだ。 なっ。 おい。

おい おい。 悪い。 おい。 こいつじゃなくて

これを頼んだのは 私だってことを言ってくれ。 なあ。 みんなに…。

（従業員）毎度あり。 （倉敷）毎度あり？

（倉敷）死人に 口なし。 魔術でも 使わないかぎり

彼らの罪を 裁くことは できないようです。

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♬～

（千鶴）まだかしら？

（峰和）落ち着けよ。 （千鶴）うん。

（章代）お待たせいたしました。 （千鶴）院長先生。

（吉乃）どうぞ。 カワイイ 赤ちゃんですよ。

（千鶴）ああ。 ホントに カワイイ。

あのう。 抱かせていただいても いいですか？

どうぞ。 首を支えてあげてくださいね。

おいおい。 落とすなよ。

（千鶴）ああ。 ああ。 光君 初めまして。

これから 私が お母さんになるのよ。

お名前 お決めになったんですね。 （峰和）気が早くて。

いい お名前ですね。 （千鶴）ねえ？ あなたも。

いや。 やめておくよ。 泣きだしたら 困る。

（千鶴）駄目よ そんなことじゃ。 焦る必要ありませんよ。

ゆっくり 家族になっていってくださいね。

あっ。

よろしかったら 今日 連れて お帰りになりますか？

えっ？ いいんですか？

お互いの相性を 知ることも 大切なことですから。

でも まだ 本決まりじゃないんですよね？

養子縁組は 条件を クリアしないと

認可されない 可能性もあるって。

ほぼ 間違いなく 認可されると思いますよ。

今回の お話は 根岸さんに 特別に お持ちした話ですので。

特別にですか？ ええ。

（千鶴）いいじゃない。 そうさせていただきましょうよ。

ねっ？ 光君。 一緒に おうち 帰りましょうね。

♬～

☎（メールの着信音）

（峰和）ハァー。 何回 送ってくんだよ。

≪（ノック） （峰和）はい。

（松村）失礼します。 （峰和）おう。

ドバイの プロジェクト 決まりそうだって？

（松村）あと 一歩まで きました。 今月中には 契約までいきます。

さすがだな。

あっ。 こないだ 同期会が あったんだって？

何で 呼んでくれなかったんだよ？（松村）あっ いや。 それは…。

付き合えないか？ 社長の娘に 婿入りした男とは。

（松村）悪く取るなよ。 専務で 次期社長の お前を

居酒屋なんかに 呼べるわけないだろう。

まあまあ。 送別会には 呼んでくれよな。

送別会？ 誰か 辞めんのか？

お前だよ。

お前の部署に 吉田 真希というのが いるな？

彼女から パワハラの訴えが 出てる。 ミスを あげつらって

クライアントの前で ひどく なじったそうじゃないか。

プレゼン資料のミスを 指摘しただけだ。

そんなに 強く言った覚えは ないよ。

心療内科の診断書だ。 本人は お前を 訴えると言ってる。

バカバカしい。 誤解だよ。

事実関係を調べれば すぐに…。 （峰和）調べていいのか？

寝たのは 事実だろ？

お前 まだ 手柄が欲しいのか？

退職金は 弾んでやるよ。

確かに ３５歳から ３８歳にかけて 個人差は ありますが

妊娠率は 急激に 低下します。

でも 可能性が まったく なくなるわけでは ありません。

実際 うちの病院でも ４０歳前後で 妊娠なさる方が

少なくないんですよ。

子供だけが 人生だとは 思いません。

でも まだ 諦めたくないという お気持ちが おありなら

私が お手伝いします。

（根岸）子供は どうだ？ 千鶴は 音を上げていないか？

それが すっかり 母親の顔で。 （根岸）うんうん。

一日中 付きっきりですよ。

子供は あいつの 念願だったからな。

生みの親は どんな女だ？ 後で 面倒は 起きんだろうな？

（峰和）女子高生だそうです。

ご心配の点は 紹介した医師が 責任を持つと 言っております。

有名な女医らしいな。 （峰和）ええ。

専門は 不妊治療で その世界では 評判がいいようです。

その女には 幾ら 払うんだ？

必要ないと言われました。 何でも 恵まれない子供のための

ボランティア活動の 一環らしいので。

そういうのに限って 実は 金に汚いもんだ。

《今回の お話は 根岸さんに 特別に お持ちした話ですので》

（根岸）後腐れのないように 処理しておけよ。

分かりました。 （根岸）うん。

♬～

（峰和）先生。

お呼び立てして すいません。 いえ。

どうぞ。 すいません。

（峰和）あのう。 こちらは よく 来られるんですか？

ええ。 好きなんです。 （峰和）ああ。

実は 私も 以前 よく 使ってたんですよ。

もう 何年も前ですが。 変わってないな。

偶然ですね。

食事の前に お話を済ませましょう。

養子縁組の手続きを 進める前に

もう一度 確認しておきたいことがあります。

あっ。 はい。 里親になるための ５つの条件。

覚えてらっしゃいますか？ ええ。

赤ちゃんを 愛してくださること。 経済的に 余裕があること。

家庭内に 不和がないこと。 夫婦共に 健在であること。

それから 最後に 一つ。

ああ。 確か 両親どちらにも 犯罪歴がないこと。

もし その条件を 一つでも 満たしていないことが

分かったときには 光君は お返しいただくことに なります。

恵まれない子供のための

ボランティアを なさってると 聞きました。

ぜひ 支援させてください。

（峰和）先生には 本当に 感謝しています。

特別に 今回の話を 世話していただいて。

私が 特別と言ったのは そういう意味では ありません。

では どういう？

（従業員）こちらで よろしいでしょうか？

ごめんなさい。 勝手に オーダーしてしまいました。

（峰和）ああ。

あれ？ どうして 私の好みを ご存じなんですか？

私の好きなワインを 選んだだけですけど。

お願いします。 ああ。 いやぁ。

驚いたな。 ここの店といい ワインといい

あなたと私は 趣味が 合うようですね。

（峰和）あなたの記事を インターネットで読みましたよ。

現代の魔術で 女性を救う医師だと書いてあった。

不妊治療は 魔術ではなく 医学ですよ。

（峰和）すいません。

でも そう見えるかもしれませんね。

（峰和）えっ？

養子を考える前

不妊治療を なさっていたと 奥さまから 伺いました。

私たちですか？ ええ まあ。

原因は あなたではなく 奥さまの方だったとか？

ええ。 生まれつき 卵巣機能に 欠陥がありましてね。

色々 やりましたが 駄目でした。

体外受精は お考えにならなかったんですか？

以前と比べて 技術も格段に 進歩してるんですよ。

そうなんですか？ 日本では 考えにくいことですが

外国では 代理母になってくれる 女性が たくさん いるんです。

代理母。 それに 男性の精液の

冷凍保存技術も 確立していますしね。

うちの病院も 希望さえあれば

精液の冷凍保存を することができます。

へえー。 極端な話

すでに 他界した人の赤ちゃんを 誕生させることも できるんです。

そうなると 魔術と同じですよね。

ああ なるほど。 そういうことか。

（♪♪『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』） あっ。 この曲。

私 大好きなんです。

僕もですが もう 驚きませんよ。

（従業員）失礼いたします。

（従業員）本郷さま。 お久しぶりでございます。

（峰和）どうも ご無沙汰してます。 お元気ですか？

おかげさまで。 今日は ごゆっくりなさってください。

（峰和）ありがとうございます。

あっ。 すいません。 ああ。 本郷っていうのは 私の…。

結婚前の お名前ですよね？

決まりですので 一応 あなたのことを

調べさせていただきました。 あっ。

私たち 趣味が合うのは 当然かもしれません。

えっ？ あなたと私は 同じだから。

どういうことです？

根岸 峰和さん。

結婚前の お名前は 本郷 峰和さん。

ご両親も ごきょうだいも いらっしゃらないそうですね？

早くに 亡くなりまして。 天涯孤独の身です。

私も 家族と呼べる人は 誰もいません。

夫は 結婚して ４年目に 病気で 亡くなりました。

そうだったんですか。

でも まあ 物は考えようですよ。

一人なら いくらでも 自分の好きなように 生きられる。

あなたも そうやって 生きてきたんですか？

欲しいものは 何でも 手に入れてきた。

♬～

☎（メールの着信音）

ごめんなさい。 患者さんからの 呼び出しで。

支払いは 済んでいます。 どうぞ ごゆっくり。

あのう。 いずれ また ゆっくり。

♬～

何だったの？ 中尾先生の お話。

大したことなかったよ。 里親の条件の 確認だった。

（千鶴）そう。

ねえ。 夢みたいね。 （峰和）うん？

（千鶴）あなたがいて 子供がいて 家族 ３人の こんな生活。

（峰和）ああ。 うん。 そうだね。

（千鶴）ずっと 思ってたの。 やっぱり 夫婦の絆は 子供だって。

２人で カワイイ 赤ちゃん 育てられたら…。

《私が 特別と言ったのは そういう意味では ありません》

《欲しいものは 何でも 手に入れてきた》

（千鶴）あなた？ 聞いてる？ （峰和）聞いてるよ。

あのねえ。 今度 一度

先生を うちに 招待したらどうかと思って。

えっ？ （千鶴）里親の条件って

いい親になれるか どうかでしょ？だったら 私たちを

よく知っていただいた方が いいんじゃない？

大丈夫だろう。

先生も まず 問題ないって 言ってくれてたし。

でも 光とは 何だか 特別な縁を 感じるの。

どうしても あの子を もらいたいのよ。

分かった。 じゃあ 俺から 連絡しておくよ。

ホント？

来月 光を連れて 旅行でもしよう。

車で行けば 赤ん坊連れでも 大丈夫だろ？

うれしい。 ありがとう。

♬～

☎（メールの着信音）

「お招き ありがとうございます」

「喜んで 伺わせて頂きます。 中尾 章代」

元気そうですね。

（千鶴）日に日に やんちゃに なっていくみたいで。

今日は お招きいただいて ありがとうございます。

これ つまらないものですが。

（千鶴）ありがとうございます。

主人は ブドウに 目がないんですよ。

よかった。 （千鶴）どうぞ。 お掛けになって。

ああ。 どうぞ。

やっぱり 趣味が合うようですね。

家内には そういう話は。 変に誤解されても あれですし。

分かっています。

お口に合えば よろしいんですけど。

わあ。 おいしそう。

先生は そんなに お奇麗なのに

どうして 結婚なさらないんですか？

おい。 よせよ。

気になってる人なら いますよ。 （千鶴）そうなんですか？

≪（光の泣き声）

どうしたの？ 眠いの？ 眠いの？

（峰和）あの女 楽しんでんのか？

（千鶴）はいはい。 光君。 うん。 いい子ね。

（峰和）どうぞ。 先日 ごちそうになった お礼です。

気に入っていただけると うれしいんですが。

うれしい。

よかった。 僕の好きな 香りなんです。

ちょっと 失礼します。

♬～

つけてらしたんですか？

ええ。

そういえば あなたが 上京して 初めて住んだ アパート。

えっ？ あそこ 取り壊されて

ビルに なっちゃったんですって。 どうして そんなこと？

大家さんの娘さんと

お付き合い していらしたんですってね。

ちょっと 待ってくださいよ。 養子縁組で

そんなことまで 調べるんですか？

あのころから 長い髪の女性が 好みだったのね。

そうそう。 言おうと思ってたんですけど。

赤ん坊連れの旅行は まだ 早いんじゃないかしら。

何で 知ってる？

あなたのことなら 何でも 知っています。

もしかして 趣味が合うんじゃなくて…。

≪（千鶴）お待たせして ごめんなさい。

光 やっと寝てくれたわ。

あら 先生。 香水 つけていらしたのね？

ええ。

この香り レ・フルール・ドゥ・マルですね。

私も よく つけるんです。

もともとは 主人からの プレゼントで。

奇遇ですね。 私の妹も この香水が 好きなんです。

家族は いないと。 （千鶴）えっ？

ええ。 亡くなりました。

殺されたんです。 ７年前に。

（千鶴）そんな…。

ごめんなさい。 変な話をしてしまって。

いえ。 こちらこそ 知らなくて。 お気の毒に。

コーヒーでも 入れますね。

♬～

こんにちは。

よう。 （峰和）あっ。

どうして お二人が？ （根岸）うん。

ちょうど 車を降りたところで 声を掛けていただいたんだ。

偶然 通り掛かって。 私も 驚いてるんです。

よく分かりましたね？ 父の顔が。

以前 雑誌か何かで 拝見したものですから。

ハハ。 どうも。 じゃあ 失礼。 おう。

♬～

偶然じゃありませんよね？

それ 私なんですよ。

妹が 描いてくれたんです。

どういうつもりですか？ あなたは。

必要以上に 私のこと調べたり 会社まで来たり。

こうやって 誰もいない家に 招いたり。

いいでしょう？ この絵。

絵描きさんだったんですか？ 妹さんは。

まだまだ。 美大を 卒業して

小さな個展を 開いたりしてましたけど。

絵で食べていくのは 難しいといいますからね。

だから 時々 クラブで ホステスの バイトをしたりして。

辞めたらって 何度も 言ったんですけど

絵を描く時間が 減るのは 嫌だからって。

だから これが 妹の 最後の作品。

殺されたと おっしゃいましたね。

犯人は 捕まったんですか？ いいえ。

強盗か何か？

警察は 外国人窃盗団の 犯行だろうと 言っていました。

当時 近くで 同じような事件が 多発していたので。

部屋は荒らされ 金目の物は 全て なくなっていて。

玄関には 鍵。 ベランダ側の窓が 開いていました。

暑い夜で 妹は 窓を開けて 寝ていた。

犯人は その窓から 侵入したというのが

警察の見解でした。

（峰和）狙われてたんでしょうね。

私は 外国人窃盗団が 犯人ではないと 思ってます。

しかし 警察は 同じ手口だと みてるんでしょ？

妹は 暴行されていました。

暴行されて 命まで奪われたのは 妹だけです。

たまたま 顔を見てしまったとか。

妹を殺したのは 彼女の恋人です。

恋人？

犯人は 妹を殺して

外国人窃盗団の犯行に 見せ掛けるために偽装工作をした。

窓から 逃げたように見せて 玄関から出て 合鍵で締めた。

合鍵を持っていた 恋人だからこそ できたことです。

どうぞ。

恋人らしき男が 警察の調べで 出てきたんですか？

いいえ。 ハハッ。 だったら

全部 あなたの臆測に すぎないわけだ。

殺された日の翌日

私と妹は 新潟まで 両親の お墓参りに 行く予定でした。

お盆でも 命日でもないのに

妹が どうしても行きたいと 言いだしたんです。

（弓子）《お父さんと お母さんに 報告したいことがあって》

《何？ もしかして 結婚？ 誰よ？ いつの間に》

《まだ 決まってないの。 そのとき ちゃんと 話すから》

当日は 朝早く 私が 車で迎えに行く 約束でした。

でも 妹の家に 着いたときには もう。

《弓子？》

《弓子？》

ちょっと待ってくださいよ。

先生の言うとおり 妹さんに 恋人が いたとします。

でも だからといって 恋人が 犯人とは 限らないでしょう。

その男にとって 妹が 邪魔な存在だったとしたら？

妹は ずっと 私に 恋人のことを 隠していました。

隠さなければいけないことが あったんでしょうね。

フフッ。 また 臆測ですか？

その妹も 香りだけは 隠せなかった。

香り？

店に出るときしか 香水を つけなかった妹が

普段から 特定の香水を つけるようになった。

あなたに もらった香水と 同じ香水。

複数の女性に 香水を贈るときは

同じものにしておいた方が 賢明なんですってね。

そうしておけば 残り香で 疑われることもない。

誤解を招くような 言い方は やめてもらえませんか？

その香水は どこにでもある ブランドのものですよ。

お気の毒ですが

７年間 警察が捜査して 駄目だったんだ。

受け入れて 前に進んだ方が いいんじゃないですか？

実は 最近 ある男の存在が 分かったんです。

妹の荷物は 全部 この家に 引き取りました。

でも つらくて どうしても 触れる気にならなかった。

でも 診療室の改築を きっかけに

やっと 遺品の整理をする気に なったんです。

（引き出しの開閉音）

その中に この本がありました。

姓名判断の本です。 妹は…。

弓子は わりと 占いや運命を 信じるところがあって。

チッ。 何の話ですか？

この中に 書き込みがあります。

本郷 弓子。

恋人の名字が 本郷だったんでしょうね。

結婚したら どんな未来が 待っているのか 占おうとした。

未来なんて なかったのに。

あなたの結婚前の名字も 本郷でしたね？

ええ。

偶然ですね。

私は そのころに さかのぼって 本郷を捜しました。

本郷は 妹が アルバイトを していた店の 客でした。

他のホステスの 指名客だったから

当時 妹と本郷の関係を 誰も知らなかったんです。

本郷が ある中堅企業の社長令嬢の婿養子に納まったのは ７年前。

妹が殺されたのも ７年前。

これも ただの偶然だと 思いますか？

私は 徹底的に 本郷のことを 調べました。

出身地。 学歴。 趣味。

行きつけの店から 女性の好みまで。

それで 分かったんです。

どうして 妹が 急に ワインを 飲むようになったのか。

どうして ジャズを よく 聴くようになったのか。

どうして 急に 髪を 伸ばし始めたのか。

もういい。

何を言いたいのか 分かりませんがね

証拠は あるんですか？ こんな落書き

警察に 言ったって 何の証拠にも なりませんよ。

証拠は ありません。

だったら。 ですが

ある計画を 思い付きました。 えっ？

妹は 暴行されていたと 言いましたよね？

完璧な 偽装工作をした犯人は

妹の中に 唯一の手掛かりを 残していきました。

犯人の精液です。

実は 私 妹の体から 精液を 採取しておいたんですよ。

そして それを 私の病院で 冷凍保存しておきました。

どうして そんな？

警察なんて 信用していませんから。

私が 本郷を 見つけだしたのは １年半ほど前のことでした。

本郷を 調べてるうちに

彼らが 養子を探していることを 知りました。

さっき言った ある計画を 思い付いたのは

そのときのことです。

私は 唯一の手掛かりである 犯人の精液を使って

犯人の子供を つくりました。

精液を 遠心分離機にかけて Ｙ染色体を 選び出し

本郷が望んでいる 男の子を。

卵子は 私のものを使いました。

そして 海外で 代理母を雇って 体外受精をしたんです。

まさか そんなこと。 できるわけがない。

私は 現代の魔術を 使う女ですよ。

性交渉が なくても 子供は つくれる。

前に お話ししたでしょう。

（弓子）《ホントだったんだね。 社長令嬢と 結婚するって》

イチかバチかの賭けでした。

子供が生まれる前に 本郷が 養子を 見つけてしまえば

全て 終わりになる。

（弓子）《かわいそうな人》

《そんな結婚で 幸せになれるはず ないのに》

それでも 私には 他に 手段がなかった。

だから 子供が生まれるまで ずっと 祈ってました。

どうか 彼らが 養子を 見つけませんように。

（弓子） 《私 相手の人と 話 する》

《あなたが 不幸になるの 見たくない》

あなたが 連れて帰ったのは 妹を殺した犯人と 私の子供。

♬～

あなたは このスカーフで 妹を殺した。

（峰和）《ふざけんな！ そんなこと させるか！》

《どんだけ 苦労して ここまできたと 思ってんだ！》

《お前みたいな女にな 邪魔されてたまるか！》

《お前みたいな女に！ お前みたいな女に！》

弓子は 私の たった一人の 家族だった。

あなたという男の本性を 見抜けなかった 弓子も悪い。

でも 命まで 奪う必要 なかったはずよ。

俺じゃない。 俺は やってない。

もし あなたが 犯人じゃないなら あの子を 育てなさい。

でも きっと あの子は あなたに似てくるわ。

養子だと知らない人は 言ってくれるでしょう。

「まあ お父さんに そっくりね」

でも 奥さまは？ お父さまは？ どう ごまかすの？

あんな子供 もう 返すに決まってるだろ。

どうぞ。 でも 奥さまには どう 説明するの？

あんなに 気に入ってるのに そう簡単に 手放すかしら？

私にも あなたを 説得してくれるように

頼むかもしれないわね。

そうしたら 私も 説明せざるを得ない。

あの子は 実は ご主人が

殺人を犯したときに できた子供なんです。

黙れ。

もちろん 奥さんは すぐには 信じないでしょうね。

でも 次第に 疑いを 捨てきれなくなってくる。

あなたと あの子の親子関係を 確かめたくなってくる。

そして 現代の医学では １００％に近い正確さで

それを 調べることができるのよ。 黙れ。

どちらにしろ あなたを待っているのは 地獄よ。

何年も何年も 苦しみなさい。 終わりはないの。

あなたが死ぬまで 続くのよ。 黙れ！

♬～

（弓子）《かわいそうな人》

《そんな結婚で 幸せになれるはず ないのに》

（弓子） 《私 相手の人と 話 する》

《あなたが 不幸になるの 見たくない》

（峰和）《お前みたいな女にな 邪魔されてたまるか！》

《お前みたいな女に！ お前みたいな女に！》

♬～

（弓子）《お姉ちゃん》 《うん？》

（弓子）《ずっと 私の心配させて ごめんね》

《何よ？ 急に》

《私 幸せになるから》

《お姉ちゃんも これからは 自分のこと 考えて

一緒に幸せになろう》

《見て。 お揃い。 子供のころみたいだね》

《あっ。 ねえ。 このまま ポーズ 取ってて》

《えっ？》

《うん！ いい感じ》

♬～

あっ。 おかえんなさい。

この子は 返そう。 （千鶴）えっ？

俺は 駄目なんだ。 この子は。 （千鶴）何 言ってるの？

また すぐに 別の話が来るよ。 この子に こだわらなくても。

（千鶴）嫌よ！ この子がいいの。 （峰和）だから 俺は！

（千鶴）絶対に 嫌！ 光は返さない。

（千鶴）私 知ってるのよ。

あなたが 私なんか 愛してないこと。

（千鶴）当然よね。 年上の 奇麗でもない こんな女。

でも いいの。 見せ掛けでもいい。

子供がいて あなたがいて 家族でいられれば。

あなたと 家庭をつくりたいの。

ほら 見て。 目元なんか あなたに そっくり。

私 あなたの子だと思って 育てるから。

（千鶴）おかしな パパね。

《あの子を 育てなさい》

《でも きっと あの子は あなたに似てくるわ》

《どちらにしろ あなたを待っているのは 地獄よ》

《何年も何年も 苦しみなさい。 終わりはないの》

《あなたが死ぬまで 続くのよ》

♬～

《案外 もろかったんですね。 あなたという男は》

《自分で 命を絶ってしまうほど

そんなに 怖かったんですか？ この子が》

《本当は あなたの子供なんかじゃなかったのに》

《この子の母親は 最初に お話ししたとおり 女子高生》

《体外受精をしたなんて 全部 嘘》

《あなたに 子供を持つ資格なんて ない》

♬～

一緒に帰ろうね。

♬～

残念ながら 私には 彼女のように

真相を 明らかにしてくれる 親戚はいません。

お別れの時間です。

≪（ドアの開く音）

≪（従業員）すみません。 忘れてました。

特注の ケチャップ。

（従業員）副編集長も ケチャップギョーザ 始めたんですね？

（刑事）ギョーザに ケチャップ？

（刑事）《ケチャップです》 （刑事）《ケチャップ？》

（美雪）《ケチャップを たっぷり》（宮崎）《ケチャップ…》

（一同）《ケチャップ。 ケチャップ。ケチャップ…》

（刑事）ケチャップ。

（刑事）皆さん。 もう一度 お話 聞かせてもらえませんか？

ミステリーとは こうでなくちゃ。