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‪(男の荒い息)

‪(通行人)キャー!

‪(駕籠政)どけ! どけ!

‪どけ!

‪どけ!

‪どけ! どけ!

‪どけ!

‪どけ! どけ!

‪(通行人)わあー! 何だ?

‪-(男)おお… 何ら? ‪-(女)何ら?

‪(政)おさだ!

‪(政の荒い息)

‪(女中)ひでえもんらわ

‪うちらは女郎じゃねんだて

‪(さだの泣き声)

‪(政)誰ら?

‪誰が おめに こっつらこと

‪(言葉にならない声)

‪(さだの泣き声)

‪お武家らか?

‪おさだ! 相手は侍らんだか?

‪(むせび泣き)

(色部長門)溝口殿 今は まさしく勝負の時

我が 奥羽越列藩 同盟軍は まどまって

官軍の侵攻をここ越後で 止めねばならんごでぇ

‪(溝口内匠) ‪しかと心得ております

‪(斉藤主計)はぁ… 白々しい

‪お前だ新発田は 口先ばっかりで ‪一向に兵ば出さねんだべ

‪兵は出した

‪しかし 百姓の蜂起に ‪阻害され やむなく…

‪んだらよ

その百姓だ並べて

打ち首さ したらいいべよ

‪(色部)斉藤 言い過ぎだべ

‪こやつの非礼 許してくれ

‪しかし 官軍は既に ‪長岡‪城を奪い 目と鼻の先

‪今度ばがりは 新発田にも ‪血ぃ流してもらわんなんねなぁ

‪しかし 殿が何と言いなさるか

‪そこでよ 溝口殿

我らは 明日にも 新発田さ出向いで

若君に直接 出兵を要請すっとごよ

‪殿に?

‪もし若君が ‪出兵を拒むようなら

‪新発田は同盟軍を ‪裏切ったものと見なし

‪城さ 攻め入る

‪(女)足元 気ぃ付けなせ

‪-(荒井万之助)おおっ… ‪-(女)ほら!

‪(仙石善右エ門)ついに我らも ‪戦‪に出っ時が来たがな

‪(入江数馬)あんげに脅されては ‪殿は断ることは できねわいや

‪-(荒井)おお 仙石 ‪-(仙石)ん?

‪(荒井)当分 女はお預けらな

‪(仙石)おお ‪今日で終わりらわいや

‪(荒井たちの笑い声)

‪(女)もう 善さ~ん!

‪(女)もう!

‪(荒井)またらか

‪(小便をする音)

‪(男)新発田藩士 ‪仙石善右エ門は 誰や?

‪(荒井)何だぁ? 貴様

‪わしに何の用か?

‪(政)死ねや こらぁ!

‪(刺す音) ‪(仙石)あっ…

‪-(政)死ね! ‪-(仙石)ううっ…

‪(川に落ちる音)

‪(女たちの悲鳴)

‪(めった刺しにする音)

‪(政)死ね 死ね 死ね!

‪死ね 死ね 死ね! ううっ!

‪大事な談判に来たというに ‪刃傷沙汰‪を起こすとは…

‪入江 どうなっている?

‪(入江)私の監督不行き届きで ‪ございます

‪申し訳ありません

‪(駕籠者)おう 新発田に戻るろ

‪ほら 行くろ わっせ

‪(馬のいななき)

‪(口取り)どけ! 何ら?

‪-(内匠)ん? ‪-(口取り)どけ!

‪(やじ馬)駄目らよ 戻れって

‪(さだの泣き声)

‪(政)おさだ…

‪(荒井)どけ!

‪こやつは新発田で処刑する!

‪邪魔をするでない!

‪(さだの泣き声)

‪(言葉にならない声)

‪(荒井)この女 つんぼか?

‪どけ と申しておるのだ!

‪行くろ

‪(政)おさだ

‪(さだの泣き声)

‪(やじ馬たちの話し声)

‪(ハエが飛ぶ音)

‪(赤丹)おい! おい!

‪おめ… 何 しでかしたんだや?

‪(政)じきに死ぬ ‪答えて何になんだや

‪(赤丹)ヘッ ‪じきに死ぬんだすけ

‪気取ってても ‪しょうがねえろが

‪(槍で突き刺す音) ‪(女)いやー!

‪(非人) ‪ありゃ ありゃ ありゃ さー!

‪(槍で突き刺す音) ‪(女)うっ… うっ…

‪(血が噴き出す音)

‪(槍で突き刺す音)

‪(赤丹)戦のせいら

‪戦が おっ始まる!

‪だすけ こんげ窮屈らんだ

‪うん

‪(爆撃音)

(ナレーション)

‪(爆撃音)

‪(ナレーション)

‪♪~

‪~♪

‪(鷲尾兵士郎)家老は ‪何をぐずぐずしてるんだや

‪我ら新発田も ‪越後んために立つべきやろう

‪このままでは同盟軍の同志に ‪顔向けできねわいや!

‪(門下生)そんとおり!

‪今 官軍と戦わずして ‪いつ戦うだや!

‪家老の判断を待っておっては ‪埒‪が明かねえ

‪明日にも城に出向き ‪出兵を直訴するわいや

‪(門下生たち)おう

‪(戸が開く音)

‪(兵士郎)何者ら!

‪入江らか

‪(入江)跳ねっ返りどもが ‪謀議‪しておると聞きつけてな

‪(兵士郎)謀議らと?

‪藩が動かんすけ このわしらが…

‪(入江)藩の趨勢は ‪ご家老様が判断なさること

‪貴様らが決めることではない

‪従えんと言うのなら

‪引っ立てるまで

‪(侍)おい!

‪(もみ合う声)

‪(兵士郎)やあー!

‪(兵士郎)郷土のために戦うは ‪当然のこと

‪貴様は この道場で ‪何を学んだんだ?

‪家老の家に婿入りするとは ‪こうも人を変えるんだか?

‪(入江)何やー!

‪(荒井)おい 入江! あれ!

‪-(入江)火事ら! ‪-(侍)消すば!

‪(侍)急げ!

‪(侍たちの叫び声)

‪(侍たち)壁を越えるが! ‪火事ら! 火事ら! 火 消せ!

‪(半鐘の音)

‪-(兵士郎)まずは火消しら! ‪-(入江)水ら! 水を持て!

‪(男)あだけるな! あだけるな!

‪観念せえ ‪この あばずれが!

‪(なつ)離せてば!

‪人殺しの家に火ぃ付けて ‪何が悪いんだて!

‪この女が火付けを?

‪(男)女郎らんだてぇ

‪贔屓‪の客に 子おろしさせられて ‪逆恨みしたみてえで

‪(なつ)贔屓なもんか ‪あんげ野郎!

‪あいつは おらの子を殺したんだ!

‪ぶっ殺してやる!

‪(男)観念せえ 言うとるやろ!

‪(なつ)離せ!

‪(なつ)うっ…

‪(三途)お役人様…

‪(錠をかける音)

‪(引導)よう ねえさん ‪何したんだや?

‪愛‪しげな顔してぇ

‪こっちさ来い

‪逃げんでよか ‪どうせ すぐ死ぬんだすけ

‪怖がらんで ええやろ

‪ほら こげん喜んでねっか

‪(なつ)おめ どこ触ってんだや!

‪(引導)ほらほら

‪(殴る音) ‪(引導)うっ…

‪(引導)ああ…

‪(倒れる音)

‪(爺っつぁん) ‪やかましい クソ坊主

‪眠れんやろが

‪(風の音)

‪(官軍兵)構えを揃えれ!

構え!

撃て!

‪(銃声)

‪(官軍兵)よどみのう ‪動けるようになるまで 稽古じゃ!

‪(岩村精一郎)しっかし ‪同盟軍も往生際が悪いのう

‪この城を放っぽって ‪逃げたかと思うたら

‪まだ性懲りものう ‪抵抗しゆうき

‪山縣‪さん

‪わしは もう越後の戦は ‪飽きてしもうたぜよ

(山縣狂介)国を 足元から変えるんじゃ

おいそれとは いかんじゃろ

(岩村)そう言うたち

あと数か月も すりゃあ 越後は雪ん中じゃ

‪早‪う 片を付けんことには ‪不利になりますきのう

‪(山縣)そこで

‪この湊じゃ

‪(岩村)新潟湊?

‪(山縣)同盟軍の武器は ‪海を渡り この湊に着き

‪川伝いに 長岡や会津へと渡る

‪つまり ここは

‪同盟軍の心の臓

‪(岩村)心の臓だけに 守りは堅い

‪同盟軍は こじゃんと兵を ‪割っちゅうと 聞いちょったけんど

‪(山縣)じゃが この心の臓を ‪取り囲んじょるんは…

‪(岩村)新発田か

‪けんど やつらも ‪同盟軍に入ったんじゃ?

‪(山縣)殿様は ‪まだ子どもじゃと聞く

‪風は変わる

‪(扇子が震える音)

‪(銃声) ‪(側用人)あっ!

‪はぁ…

‪(溝口直正)どうだ 内匠 ‪見たか わしの腕を!

‪(内匠)はあ…

‪殿 同盟軍は ‪明日にも この城に…

‪事 ここに至っては ‪我がほうも兵を出さねば…

‪(里村官治)なっ…

‪何が同盟だ 笑わせるな

‪長岡は散々 我らの権益を奪い

‪我が物顔で越後を ‪牛耳‪っておった連中ではないか!

‪ですが 今は天下分け目の時

‪越後も 一つにならねば

‪(直正)どうせ 戦は官軍が勝つ

‪我らは その勝ち馬に乗ればよい

‪いや しかし 殿

‪恐れながら ‪もし仮に兵を出さねば

‪明日にも同盟軍は ‪城下に攻め入り…

‪多少の犠牲は目をつぶれ

‪いずれは官軍が救ってくれる

‪(里村)そんな…

‪(直正)とにかく ‪同盟軍を体よく追い返せ

‪それが貴様の仕事だ

‪(銃を構える音)

‪(銃声) ‪(側用人)うっ…

‪(ノロ)間違いねえ あんにゃだ

‪(政)何だ おめえ?

‪(縄を切る音)

‪痛‪て…

‪おめえ 何やってんだや?

‪(ノロ)ずっと捜してたんだ

‪今 助けてやっけっな

‪(赤丹)何でぇ この若ェしょ ‪おめさんの弟らか?

‪(政)ああ? ‪知るか こんげ汚えガキ

‪(赤丹)こら 面白え

‪おう 小僧 ‪あっちのも頼むぜ

‪(政)ああっ… あっ… うっ…

‪あっ! 痛え… 痛え…

‪(赤丹)頼むぞ こっち来い

‪おい こっち来いって

‪(ノロ)あんにゃ

‪(赤丹)おい こっち まだだぞ

‪(ノロ)待ててば おらも行く

‪待て ほら! おい!

‪おい こっち来い! おい!

‪おう 小僧 ‪あっちは置いてく気らか!

‪(木暮総七)こら! ‪貴様ら 何やってる!

‪おい! 戻らんか!

‪(ノロ)あんにゃ! あんにゃ!

‪(木暮)こら! 待て こら おい!

‪-(ノロ)あんにゃ! ‪-(政)悪かったな 小僧!

‪(非人たちの叫び声)

‪(政)どけ! どけ!

‪(通行人)こいつ はりつけの…

‪(呼子笛の音)

‪(もみ合う声)

‪(非人)押さえろ!

‪(政)離せ!

‪(杉山荘一郎)官軍参謀 ‪山縣様より 直々のお言葉です

‪直正殿に お目見えしたき故

‪明朝 先遣隊を新発田城に ‪差し向けるとのこと

‪(里村)‪官軍が殿に?

‪(内匠)おそらく ‪共闘を持ちかけるつもり

‪(寺田惣次郎) ‪それは好都合では?

‪殿のご意思は官軍に入り…

‪(里村)いやいや ‪馬鹿を言うでねえ

‪明日には同盟軍が ‪城に来てしまうんらで

‪鉢合わせでも してみろ ‪城下で戦が…

‪ご家老 ‪どうなさるおつもりで?

‪ご家老

‪ふん!

‪(足音)

‪ご家老…

‪(雷鳴)

‪(雨の音)

‪(内匠)父上は厳しいお方だった

‪政‪を司る者 剣も

‪一流で あらねばならぬと

‪よう ここで しごかれた

‪(兵士郎)恐れながら ‪本日は どのような…

‪(内匠)新発田のために ‪命を張る者は おらんのか?

‪(兵士郎)はい?

‪そう 用人どもに問うたらな 鷲尾殿

‪皆が口をそろえて ‪おぬしの名を挙げた

‪では いよいよ ‪我が藩も同盟軍に?

‪そこで おぬしに相談が…

‪(やじ馬)おい 何だ あれ? ‪でけえ のこだなぁ

‪あんにゃ!

‪のこぎり挽きと来たか!

‪こいつは ええ見世物らて!

‪(赤丹のおびえる声)

‪(赤丹)なんで あっちまで ‪のこぎりなんだや!

‪黙れ 貴様も同罪だ

‪あっちは 何もしてねって!

‪なあ 旦那 ‪のこぎりなんて ごめんだ

‪槍で突っつかれたほうが ‪まだ マシらてえ!

‪(木暮)おい やれ

‪(荒い息)

‪(おびえる声)

‪(兵士郎)待てい!

‪その処刑 待たれい!

‪(赤丹)え? え?

‪我が新発田藩は

‪同盟軍の一員として ‪いよいよ官軍との戦に出る

‪(おろしや)戦?

‪(入江)足軽は ‪明日にでも出兵するが

‪そうなると領内の守りが ‪手薄になってしもうてな

‪貴様らに ‪手伝‪うてもらいたいのだ

‪(引導)手伝うって ‪おらたちが戦を?

‪(入江)藩境にある砦を ‪官軍から守ってもらいたい

‪(赤丹)ヘヘヘ… ちょっと 旦那

‪だっちょもねえ冗談を

‪(兵士郎)冗談ではない

‪罪人であろうが ‪藩のために戦ってもらう

‪無事 役目を終えた暁には

‪全員を無罪放免としよう

‪(爺っつぁん)何?

‪(三途)無罪?

‪(二枚目)本当らか? ‪おらたち 家に帰れんだか?

‪(兵士郎)ご家老様自ら ‪そう わしに おっしゃった

‪おう 聞いたか 若ェしょ ‪やってやろうじゃねえか!

‪(二枚目)おお

‪(三途)よう 無罪らて 無罪らて!

‪(罪人たちの笑い声)

‪(政)冗談じゃねえろ

‪おめえら新発田の侍が ‪おらのカカに何した?

‪おら お前らの言いなりになんぞ ‪死んでもならねえ

‪(荒井)黙れ! ‪(蹴る音)

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(荒井)下手人が偉そうに!

‪やめんか 荒井!

‪しかし こやつは仙石を…

‪兵は限られておる ‪早まるでない

‪(入江)貴様のような逆賊にも ‪情けをくれてやろうと

‪言‪うておるのだ

‪拒むなら ‪離れの牢に入ってもらう

‪コロリの病人どもと一緒にな

‪罹‪ったが最後

‪体中のものを吐き出し ‪死んでゆく

‪貴様は どちらを選ぶ?

‪(入江)ふん

‪(引導)旦那 旦那 ‪女は どうする?

‪(兵士郎)煮炊きは できるか?

‪(なつ)もちろんらわいや

‪踊りだって踊れるてぇ

‪(兵士郎)なら 準備をせえ

‪(入江)貴様ら十名は これより

‪“奥羽越列藩同盟軍 ‪決死隊”とする!

‪準備をせえ!

‪(赤丹)なあ ‪なんで やつだけ手枷を?

‪(引導)んなもん ‪危ねえからに決まってねっか

‪米倉村‪の十人斬り ‪知ってんだろ?

‪(赤丹)あいつ あの辻斬りかよ!

‪大悪党じゃねえか

‪(爺っつぁん)阿呆

‪ここにおるんは みんな悪党じゃ

‪(赤丹)ハハハッ 違えねえや

‪地主殺しの盗賊に

‪火付け女

‪一家心中の死に損ないに

‪侍殺し

‪揚げ句は 檀家の娘を ‪手込めにしまくった⸺

‪スケベ坊主と来やがった

‪(引導)札付きのイカサマ師に ‪言われたかねえて!

‪(赤丹)ホホホッ 怖い 怖い

‪(兵士郎)入江 ‪なぜ長岡の旗を掲げる?

‪これでは我らが ‪新発田の足軽に見えねろが

‪(入江)同盟の取り決めなのだ

‪貴様は あれほど同盟軍に ‪肩入れしておったのだ

‪本望では?

‪(ふくろうの鳴き声)

‪(入江)馬は ここに残す

‪(木暮)砦は この上らがな

‪(二枚目)まだ歩ぐのか

‪(入江)止まれ!

‪(兵士郎)我らが守るは この砦か

‪(ノロ)ヘヘ ヘヘッ

‪(笑い声)

‪(内匠)ご苦労でござった

‪(斉藤)やっと重たい腰を上げだが

‪(色部)よぐ決断してくだったな

‪ぜひとも若君に ご挨拶を

‪それが…

‪昨日から ‪体調を崩されておりまして

‪(直正)離せ 無礼者!

‪なぜ わしが ‪こそこそ隠れねばならぬ!

‪(側用人)コロリにございます ‪城にもコロリの病人が…

‪(直正)貴様らでは話にならん! ‪内匠だ 内匠を呼べ!

‪撃つぞ! 撃つぞ 貴様ら!

‪(内匠)‪戦を控えた大事な身に ‪病がうつってはならぬと ご静養を

‪(色部)え?

‪そいづは残念だなぁ

‪出陣は殿も了承されておる

‪食料を補給次第 すぐに

‪(斉藤)まずは酒な

‪(内匠)酒?

‪一緒に戦うんだべ

‪酒でも飲まねど ‪始まんなごでなぁ

‪いかにも

‪では すぐに用意を

‪せいぜい今日のところは ‪楽しませ

‪明日 気持ちよく送り出せばよい

‪しかし 明日には官軍が…

‪うろたえるな

‪そのために ‪決死隊を送り込んだのだ

‪(兵士郎)よいか?

‪貴様らは 新発田のために戦って ‪初めて 自由の身となる

‪それを忘れるでないぞ

‪(赤丹)何もかんも ‪のみ込んでるっけ 旦那

‪大船に乗ったつもりで ‪いてくれりゃあ ええて

‪なあ 若ェしょ

‪(入江)それと ‪最初に断っておくが

‪もし 一人でも ‪抜け駆けする者があれば

‪貴様らの無罪は取り消す

‪(二枚目)取り消す?

‪(三途)何ねぇ

‪ゆんべは そんげこと ‪ひと言も言わねかったでねえか

‪(入江)謀反を企てる者がおったら ‪貴様らの手で処分すればよい!

‪簡単なことであろう?

‪木暮 やつも外せ

‪(木暮)うむ

‪(関節を鳴らす音)

‪(入江)早う せんか! 運べ!

‪置いたら すぐ戻れ!

‪(入江)ここに並べろ

‪早う せんか! 時がないぞ!

‪ちんたら するな ‪さっさと行け!

‪おう お前 あっちに積め

‪さっさと戻らんか!

‪早う戻れ!

‪(杭を打つ音)

‪(釘を打つ音)

‪(入江)官軍が ‪この峠を通るとすれば

‪あの橋を渡るしかない

‪鉄砲で威嚇し ‪何とか あの橋の手前で食い止める

‪(兵士郎)罪人は女を含め十人

‪やつらが どんげに働くか

‪(入江)死ぬ気でやっさ

‪無罪になっためらが

‪ここは二人で大丈夫ら

‪(木暮)腰 入ってねえねっが

‪(二枚目)腰?

‪(赤丹) ‪腰 入れるって どうすんだ?

‪(木暮)腰 入れろ

‪(兵士郎)そらろも ‪長期戦は望めねろ

‪せいぜい二日が限界だわいや

‪(入江)それは ‪ご家老様も ご承知ら

‪城下の安全が確保でき次第 ‪のろしが上がる

‪それが終了の合図だ

‪(おろしや)そらったら ‪橋を落としてしまえばいい

‪何だと?

‪(小声で)やめれてば

‪(おろしや)橋が ねえば ‪官軍は迂回せざるを得ねえ

‪一日や二日は 優に足止めできる

‪(平手打ちをする音) ‪(兵士郎)入江!

‪貴様 確か ‪城下の医者の倅だったな

‪異国船に乗って ‪おろしやに渡ろうとしたとか

‪おろしやに?

‪橋を落とせば ‪他国との商いも立ち行かぬ

‪わしらは 戦の後のことも ‪考えておるのだ

‪(地図を奪う音)

‪(なつ)おう ノロ ‪どこ行くんだてぇ?

‪ノロ!

‪勝手な真似すっと ‪ぶっ殺されっろ

‪(水を飲む音)

‪(なつ)おめさん ‪何してんだや?

‪(ノロ)ヘヘヘヘヘッ

‪(なつ)え?

‪そんな うまいけ?

‪(水を飲む音)

‪(吐き出す音)

‪-(なつ)何だ この くっせ水! ‪-(ノロ)ヘヘヘヘッ

‪(なつのせき込み)

‪(黒い水が湧き出る音)

‪(罪人たち)よいしょ!

‪(引導)よいしょ!

‪(荒井)よし 行くろ

‪(三途)よっ!

‪(兵士郎) ‪さっきの橋の話らが

‪おろしやの考えも ‪一理あるがな

‪戦況が悪化した時に ‪橋を落とすことも…

‪(入江)それは ありえんと ‪申したはずら

‪(兵士郎)なんでらや?

‪兵士郎

‪戦も しねうちから ‪そんげ弱気で どうすんだや

‪わしらが逃げ腰では

‪罪人どもは ‪まともに働かねてば

‪うんめぇ

‪うんめなぁ

‪死んだカカと あんにゃにも

‪腹くっちぇなるまで ‪食わしてやりたかったて

‪(赤丹)やめれや 辛気くせえ

‪よう ところで おめさん

‪おろしやなんざに渡って ‪何する気だったんだや?

‪医学を学ぼうかと

‪医学だと?

‪ヘッ 大きく出やがったぜ

‪国抜け脱藩は ご法度

‪ましてや 異国に抜けようなんざ ‪ご法度中のご法度だ!

‪そういや 兄ちゃん

‪何 しでかしたんさ?

‪いや

‪おら 悪いことは してねえ

‪好いたお方が ‪お武家の奥方だっただけで…

‪(赤丹)馬鹿

‪二枚目ってのは ‪生まれながらに罪なんだがな

‪(引導)違えねえ

‪一番の極悪人は あんにゃだ

‪(二枚目)そっつらこと!

‪(赤丹)おう ノロ ‪飯 盛ってきてくんねえか?

‪-(なつ)そらったら おらが ‪-(政)おらが行く

‪(赤丹)い… いいんか? ‪悪‪いな あんにゃ

‪いや~ こん中で善人は ‪ノロだけらてぇ

‪馬鹿は罪じゃねえすけな ‪ハハハハ…

‪(赤丹と引導の笑い声)

‪(赤丹)ところで おめさん ‪おろしやなんざに渡って 何…

‪あれ?

‪これ さっき聞いたかや?

‪あんにゃ!

‪(赤丹)旦那 どけ!

‪(木暮)ん? ん?

‪(赤丹)あの入れ墨野郎 ‪やりやがったぜ!

‪-(辻斬)俺が斬る! ‪-(荒井)さっさと追え!

‪(入江)クソが!

‪(政)んっ!

‪んっ! んっ!

‪(侍と罪人たちの叫び声)

‪(入江)いたぞ!

‪-(辻斬)こら! こら! ‪-(入江)早う走らんか!

‪(入江)早う せえ!

‪(入江)逃すな! ‪逃したら 貴様らは死罪だ!

‪(罪人たちの叫び声)

‪(踏み板が外れる音)

‪(侍と罪人たちの叫び声)

‪(赤丹)おい 待て こら! ‪待ちやがれ!

‪(政)来やがった

‪来やがったれ!

‪(辻斬)おら! おら!

‪(政)み… 見やがれ!

‪(兵士郎)待て!

‪-(兵士郎)官軍… ‪-(入江)何?

‪(三途)官軍だか?

‪(荒井)早う戻って門を!

‪も… もう間に合わん ‪身を隠せ!

‪(世良荘一郎) ‪あれを渡りゃあ 新発田か

‪(水本正虎)世良様 旗が…

‪(世良)旗?

‪ありゃあ 長岡の旗

‪(水本正鷹)奇妙じゃのう

‪この峠に同盟軍は ‪おらんはずじゃ

‪(世良)案ずるな

‪門は開いちょる 参ろう

‪(小声で)あんにゃ カマキリ

‪(政)馬鹿 てめっ…

‪(三途)んっ!

‪(正虎)ん?

‪何者‪! 姿を見せれ!

‪-(正虎)おい ‪-(官軍兵たち)はっ

‪(正鷹)そこに潜んじょるのは ‪分かっとんじゃ!

‪(兵士郎)この無粋者が

‪(官軍兵)何者だ? 名を名乗れ!

‪我らが領内に ‪断りなく踏み入ろうとするは

‪貴様らであろう!

‪先に名乗ったら どうだ

‪(正虎)わしらは新政府軍 先遣隊

‪新発田藩当主 溝口直正殿に ‪拝掲‪するために参った

‪戦のために参ったんじゃない

‪戦のためではない?

‪(正鷹)いかにも

‪(兵士郎)どういうことだ?

‪では 何のために貴様らは!

‪(辻斬)隙あり! ‪(斬る音)

‪(斬る音) ‪(官軍兵)ああっ…

‪(馬のいななき)

‪どうだ これで十三人目

‪次は どいつら?

‪斬れ! 斬り捨てれ!

‪(官軍兵たち)やあー!

‪(斬る音)

‪(斬り合う音)

‪(荒井)やあー!

‪うっ うっ…

‪(木暮)おめさんらは こっちだ!

‪(次々に斬る音)

‪(突く音)

‪やあー!

‪(斬る音)

‪(辻斬)やあー! ‪(刀が折れる音)

‪(辻斬)やあー! ‪(刀が折れる音)

‪(辻斬)十四人目!

‪(辻斬)やあー! ‪(刀が折れる音)

‪(正虎)ああー! ‪(刺す音)

‪(辻斬)うっ…

‪(官軍兵の叫び声)

‪(刺す音) ‪(官軍兵)ああっ…

‪-(荒井)離せ! ‪-(官軍兵)助けてくれ!

‪-(荒井)離せ! ‪-(官軍兵)助けてくれ!

‪(荒井)離せ!

‪(官軍兵)命だけは… 命だけ…

‪(刺す音)

‪(三途)ううっ! ‪(血が噴き出す音)

‪(三途の荒い息)

‪うっ! ‪(刺す音)

‪(三途)ううっ!

‪やあっ! ‪(刀を抜く音)

‪何やってんだ 旦那! ‪戦らろげ!

‪(荒井の荒い息)

‪分かってわいや!

‪(死体を蹴る音)

‪(荒井)どけ! ‪(死体を蹴る音)

‪(三途)おお…

‪(赤丹)どけ!

‪おっと こら 見たことねえもん ‪入ってねっか

‪(三途)やめれ… 罰 当たる (赤丹)何 言ってんだや 戦らろげ

‪(政)冗談じゃねえぞ…

‪あんなとこで死んでたまっか

‪(ノロ)待て おらも行くれ

‪(兵士郎)はあっ! ぐっ!

‪(政の荒い息)

‪あの馬鹿

‪(木暮)構えれ!

‪(銃声)

‪(木暮)何やってんら!

‪鷲尾!

‪(銃声) ‪(官軍兵)うわっ…

‪(銃声)

‪(辻斬)ぐわっ…

‪(辻斬のうめき声)

‪(正虎)やあー!

‪(世良)ああー!

‪(政)旦那 後ろ!

‪(世良)ああー!

‪(斬る音)

‪(世良のうめき声)

‪(世良)うわっ…

‪うわっ… うおっ!

‪あっ… ううっ!

‪(世良の叫び声)

‪(正虎)世良様!

‪世良様… 世良様!

‪(世良の叫び声)

‪(ノロ)ううっ!

‪(正虎)世良様!

‪(世良)うわあああ!

‪(川に落ちる音)

‪世良様…

‪おんどりゃー!

‪(正鷹)兄者 ‪この装備じゃ無理じゃ 退こう!

‪(正虎)やけど 世良様が…

‪(銃声)

‪(正鷹)退け! 退くんじゃ!

‪兄者 早う!

‪(官軍兵たち)退け! 退くのだ!

‪(赤丹)ヘッ ‪顔 洗って 出直しやがれ!

‪あっちらは ‪奥羽越列藩同盟軍 決死隊よ

‪よ~く覚えとけ!

‪ヘヘヘヘッ

‪(辻斬のうめき声)

‪(辻斬)うう… ううう…

‪痛‪ってえ… ううう…

‪貴様 斬るぞ… 斬るぞ!

‪死にてんだか?

‪(辻斬)クッソ!

‪あの入れ墨野郎のせいら!

‪叩‪っ斬ってやすけな くうう…

‪(政)痛ってえな!

‪(赤丹)おとなしくせえや ‪動くな!

‪(木暮)ふんっ!

‪(赤丹)観念せえて ‪この裏切り者が!

‪(三途)また余計なことしてみろ

‪腹ん中 切り刻んでやすけな

‪(赤丹)おら! ‪(蹴る音)

‪(ノロ)あんにゃ

‪(赤丹)ほら あっち行ってれ!

‪(ノロ)おらの おらの…

‪(赤丹)ああ! これ はいてれ!

‪(兵士郎)貴様 なぜ死に急ぐ?

‪御触‪は既に ‪他国にも回っておる

‪貴様らが逃げ通せる場所など ‪どこにもねえろ

‪女房のことは 無念らったろう

‪らろも ここで任を果たせば ‪また女房の元に戻れろが

‪戻ったところで ‪起きちまったことは変わんね

‪変わんねんだて

‪おら 新発田のために戦うなんて ‪まっぴららて

‪気に入らねえんなら ‪煮るなり焼くなりしやがれ

‪そらか

‪ならば死ね

‪(ノロ)あんにゃ!

‪貴様には助けられた

‪今日のところは目をつぶる

‪らろも 同じ真似をしたら

‪問答無用で斬る

‪(赤丹)おう 行くろ

‪(岩村) ‪おまんら それでも奇兵隊か!

‪おめおめと逃げ帰るとは

‪恥を知れ 恥を!

‪(山縣)待て 岩村!

‪こやつらは ‪戦に出向いたんやないんじゃ

‪無理もない

‪ところで ‪相手は新発田じゃのうて

‪長岡の足軽じゃった ‪っちゅうのは 誠か?

‪はっ

‪賊どもは この合印を

‪(山縣)長岡は この城を ‪奪還せんと兵を集めちょると聞くが

‪まだ新発田を守る余裕が ‪あったとはのう

‪フッ…

‪同盟軍は よっぽど ‪新発田が大事なようじゃのう

‪こりゃ 是が非でも ‪風を変えんとなぁ

‪まずは この砦じゃ

‪(鳥のさえずり)

‪(内匠)昨日 城に来たそうだな

‪決死隊の任地は どこか ‪探り歩いておったとか

‪(溝口加奈)夫となるお方が ‪どこで戦をしておられるのか

‪知りたいのは当然のことでは ‪ありませぬか?

‪女が 政に口を挟むでない

‪父上は 縁談を破談にする ‪おつもりですか?

‪(溝口みね)加奈

‪刃傷沙汰‪で恥をかかされ ‪入江様を見限ったのでは?

‪そなたのことを ‪誰よりも案じておるのは

‪このわしだ!

‪悪いようには せん

‪(遠ざかる足音)

‪父上にお任せするのです ‪いいですね?

‪加奈?

‪(加奈)ううっ…

‪(みね)加奈? ‪あなた どうしたの?

‪-(加奈)うっ… ‪-(みね)加奈!

‪(村娘)おにぎりでございまーす ‪どうぞ

‪はーい どうぞ

‪ご苦労さまです はいはい!

‪同盟軍の皆さん ‪ご苦労さまでーす

‪おにぎり お代わり ありまーす!

‪(斉藤)飯も酒も

‪それに 女も

‪ああ~

‪こだいに いいとは思わねがった

‪わしは新発田を見くびってたなぁ ‪ハハハハッ

‪それは何よりであった

‪では そろそろ出陣の準備を

‪足軽どもを ‪これ以上 待たせるのも…

‪(斉藤)そいつだげんどもよ ‪溝口殿

‪やはり 直接 ‪若君の意思ば聞こうかと

‪(内匠)は?

‪いや しかし 殿は病に…

‪(斉藤)その殿の気持ちが ‪変わったとか何とか言って

‪またぞろ 約束ば破られたら ‪たまんねがらな

‪ああ~

‪とにがぐ ‪若君ば ここさ連れてこい

‪ほれまで おらだは

‪一歩も動かねぞ

‪(カラスの鳴き声)

‪(引導が念仏を唱える声)

‪(兵士郎) ‪入江 のろしは まだらか?

‪(入江)なに 今日には ‪間違いなく上がる

‪(引導が念仏を唱える声)

‪(政)おい!

‪気色悪いな ‪どっか行きやがれ

‪(なつ)照れんなてぇ ‪かわいい弟じゃねえか

‪おう ノロ

‪おめさんも 中 入って ‪飯 食ってけぇ

‪(なつ)食いな

‪(政)いらねえよ

‪食えって

‪腹 減ってっすけ ‪あんげ馬鹿 しでかすんだ

‪(政)馬鹿らと? おめ

‪おめ おらのカカはなぁ…

‪新発田の侍に ‪手込めにされたんだろ?

‪もう耳に ‪たこが出来ちまったわんね

‪何だと てめえ

‪(なつ)おめさんは敵を取って ‪気分がいいのかもしんねろも

‪残されたカカは ‪今頃 どうしてんだか

‪人足‪風情のカカじゃ はなから ‪大した暮らしは しちゃいねえ

‪そこに旦那が下手人と来りゃ ‪良くて 女郎か乞食が関の山

‪-(政)てめえ この野郎 ‪-(なつ)つまりはだ

‪何が何でも無罪になって ‪カカんとこ 帰ってやれってことら

‪だすけ ほら 食えてば

‪(荒井の怒鳴り声)

‪(荒井)臭えんだよ!

‪飯が まずくなるわ

‪中に入るんじゃねえ!

‪(なつ)待ってろ

‪おめさんの分も ‪後で握ってやっから

‪(政)知ってんのかよ? あの小僧

‪(なつ)ああ

‪新発田じゃ有名な ‪花火師の倅らて

‪だろも あんにゃは ‪もう いねけどな

‪(政)いねえ?

‪(なつ)花火の事故で死んじまった

‪どうやら あの子が ‪原因だったみてえで

‪親兄弟に ひでえ目に ‪遭わされたって話らて

‪(政)そんな似てんのかよ?

‪ん?

‪いや 俺に似てんのかよ? ‪その 死んだ野郎は

‪似てねえ

‪何だよ それ

‪(赤丹)天下の薩長率いる官軍様を

‪このマヌケ面した連中が ‪ぶっ倒しちまったってんだから

‪愉快だぜ

‪この風に乗って勝負しねば ‪男が廃るってもんだ

‪どうだい?

‪勝負って 何 賭けんだや?

‪だーれも金なんか持ってねんだれ

‪(赤丹)馬鹿らな おめさんらは

‪(小声で)結構な酒 ‪飲んでる御仁が いるじゃねえか

‪(木暮)ふんっ!

‪口の減らねえ野郎ら

‪そんげに異国が偉えんか? ああ?

‪たとえ旧式の武器あっても ‪戦で肝要なのは精神!

‪武士道ら!

‪-(木暮)ふんっ! ‪-(おろしや)痛え…

‪(木暮)おい 爺い

‪こいつに武士道ってがんを ‪叩き込んでやれや

‪“攘夷攘夷”と騒いじょる連中に ‪異国の利を説いたところで

‪ぶん殴られるのは ‪目に見えちょる

‪(おろしや)この遠眼鏡だって ‪異国のもんら

‪戦となりゃ舶来品に頼るくせに ‪口じゃ攘夷を叫ぶ

‪そっつらもんが武士道らか

‪あ? あれは…

‪どねした?

‪金‪でも掘っちょるんかのう

‪入ります

‪(息を吹きかける音)

‪(荒井)よーし 半ら

‪よござんすね?

‪(荒井)すっからかんらろ ‪何 賭けんだや?

‪(赤丹)来やがれってんだ ‪こん畜生!

‪勝負!

‪-(引導)来たー! ‪-(二枚目)おおー!

‪(三途)総取りらねっか!

‪ピンゾロの丁

‪何?

‪(二枚目)ゾロ目らねっか!

‪(罪人たちの笑い声)

‪(赤丹)いや~ ‪なんか悪いね 旦那

‪勝負ってなぁ ‪分かんねえもんだてぇ

‪急にこっちに ‪風が吹きやがるんだいねぇ

‪おっと 見張りを交代しんきゃ

‪おろしやの旦那に ‪ドヤされちまうて

‪じゃ あっちは これで

‪あっ!

‪(さいころが散らばる音) ‪(赤丹)痛って…

‪(三途)あっ あっ!

‪(赤丹)ああ…

‪(荒井)貴様 イカサマを…

‪(赤丹)いや いや いや ‪あっちは そんな…

‪(辻斬)ハハハハハッ ‪ええぞ ぶっ殺しちまえ!

‪コケにしおって!

‪(斬る音) ‪(兵士郎)おい!

‪おめ やりやがったな

‪(兵士郎)やめれ ‪たかが博打で何してんだや!

‪(荒井)離せ! 離せ 鷲尾!

‪貴様も武士らろうが

‪非人同然の者どもに ‪恥をかかされて

‪ただで済むはずが ねえろが!

‪(三途)非人らや?

‪(赤丹)おう ‪聞いたか? おめえら

‪この旦那は あっちらを 馬の ‪クソみてえに見下してやがるんだ!

‪(兵士郎)貴様らも落ち着け!

‪当然だ!

‪下手人など ‪我らの視界に入ることさえ無礼!

‪だったら すぐに全員 ‪はりつけにしたら どうらんだ!

‪そうだ! ‪気に入らねかったら殺せ!

‪そうなりゃ困るのは ‪新発田の殿様ら

‪何?

‪無理らてぇ この旦那じゃ

‪官軍すらも殺せねんだすけ

‪何を!

‪(兵士郎) ‪いいかげんに しれてば!

‪(入江)もうよい! ‪ここは わしに任せろ 来い!

‪(荒井)叩き斬ってやる!

‪-(辻斬)ハハハハッ ‪-(三途)もうぞこき!

‪(入江)頭を冷やせて!

‪早‪ 下りろ!

‪こっちら!

‪(入江)貴様の気持ちは ‪分からんでもねえ

‪らろも 荒井!

‪これは ご家老様から直々に受けた ‪大事な役目らねっか!

‪分かってわいや!

‪らろも あの罪人どもと ‪寝起きを共にすんなんて

‪わしは気が狂いそうらがな

‪役目が終われば ‪どの道 やつらは口封じするねっか

‪その時は 煮るなり焼くなり ‪貴様の好きにすればいいてば

‪(半鐘の音)

‪(おろしや)来たぞー!

‪おい 鉄砲じゃ 代われ!

‪(半鐘の音) ‪(爺っつぁん)官軍が来たぞー!

‪(半鐘の音)

‪おい 何事ら? ん?

‪(官軍兵)撃て!

‪(大砲の発砲音)

‪(爆撃音)

‪(政)うおっ! ‪おい! おーい! おい!

‪おい! おーい!

‪(入江)木暮!

‪(政)おい 外せ! 外せ!

‪おーい! 外せ!

‪(入江)大丈夫か? 木暮!

‪(政)おーい! 外せ!

‪おい 開けろ! ‪開けろ! 開けろ!

‪おーい! おーい!

‪おい!

‪おめさんの言うとおり ‪逃げたほうが いいかもしんねえ

‪(政)あ? おい 開けろ! ‪鍵は あれが持ってる

‪早‪! 早!

‪(なつ)すまねえ

‪(爆撃音)

‪(入江)お前ら 何をしておる!

‪早う準備をせえ! 武器を持て!

‪(政) ‪戦って どうなる数じゃねえろ!

‪(爆撃音)

‪(荒井のおびえる声)

‪入江 無理ら! 退こう!

‪馬鹿 言うなや!

‪(荒井)そらったら ‪こやつら 行かせよう

‪わしらは城下に…

‪そんげな卑怯な真似 できっか!

‪(荒井)卑怯なもんか! ‪こやつらは どの道…

‪(爆撃音)

‪(念仏を唱える声)

‪(兵士郎)荒井! 大丈夫か?

‪(荒井)おう

‪入江 確かに撃ち合っても ‪勝ち目は ねえ

‪(入江)らろも ‪そせば どうすんだや?

‪わしに考えがある

‪(正鷹)撃て!

‪(官軍兵)撃て!

‪(爆撃音)

‪(発砲音)

‪(爆撃音)

‪(銃撃音)

‪-(正鷹)撃て! ‪-(官軍兵)撃て!

‪(発砲音)

‪(爆撃音)

‪-(正虎)行くぞ! ‪-(官軍兵たち)はっ

‪(官軍兵)正虎様

‪櫓門‪が開いております

‪逃げましたかのう?

‪まだ近くにおるはずじゃ

‪土産なしには帰れんぞ 進め!

‪(官軍兵)はっ

‪-(官軍兵)後詰めは待機 ‪-(官軍兵たち)はっ

‪(正鷹)ん?

‪何じゃ あの煙は?

‪(門が閉まる音)

‪(官軍兵たちの叫び声)

‪(正虎)待て!

‪後ろが来ちょらんようじゃ

‪(爺っつぁん)ううっ!

‪賊どもが潜んじょる! ‪油断すんな!

‪(斬る音)

‪(斬る音) ‪(官軍兵)ああー!

‪(斬る音) ‪(官軍兵)うわっ…

‪ううー!

‪(官軍兵)待て! いたぞ!

‪(辻斬)やあー! 三十人目!

‪おりゃー!

‪おらー!

‪(三途)危ねえ! 味方らねっか!

‪(辻斬)何だ おめえか!

‪うわー!

‪(官軍兵)だあっ…

‪あの森じゃ! あの森を狙え!

‪(官軍兵たち)はっ!

‪-(官軍兵)あそこを撃て! ‪-(正鷹)早せえ!

‪(官軍兵) ‪我々も出動じゃ! 続け!

‪(官軍兵たち)おおー!

‪(銃声)

‪(官軍兵)うわー!

‪(銃声) ‪(官軍兵)うわっ…

‪こんげなもん ‪あっちらに使えんのかや?

‪やるしかねえ

‪畜生 煙で見えねねっか

‪あいつら 焚き過ぎらろ

‪(銃声)

‪(官軍兵たち)やあー!

‪(政)来やがった

‪(銃声)

‪(銃声)

‪(官軍兵)上だ!

‪(官軍兵たちの叫び声)

‪当たんねねっか

‪(発砲音)

‪(爆撃音)

‪-(正鷹)撃て! ‪-(官軍兵)撃て!

‪(発砲音)

‪(爆撃音)

‪-(正鷹)撃て! ‪-(官軍兵)撃て!

‪(爆撃音)

‪(爆撃音)

‪(なつ)ノロ 大丈夫らか?

‪(ノロ)おらのは ‪こんげもんじゃねっけな

‪(なつ) ‪馬鹿! どこ行く気らてぇ?

‪(官軍兵たち)せーの!

‪(官軍兵たち)せーの!

‪撃て!

‪撃て!

‪(発砲音)

‪(爆撃音)

‪あっ…

‪(二枚目のうめき声)

‪(おろしや)おい

‪おい! おーい!

‪(せき込み)

‪(二枚目)痛え…

‪(荒い息)

‪(おろしや)おい! 大丈夫らか?

‪(絶叫)

‪(銃声) ‪(官軍兵)うわっ…

‪(政)おい これ ‪もっと鉄砲ねえと 埒 明かねえ

‪おい どこ行くんだ?

‪おい!

‪(官軍兵)行け!

‪(赤丹)来んなや 来んなってば!

‪来んなや!

‪(官軍兵)開けるぞー!

‪(赤丹)もう無理らて ‪逃げるろ!

‪早‪!

‪(赤丹)おい 何やってんだよ?

‪(銃声)

‪(赤丹)早行け!

‪(三途)うっ… ああー!

‪やあー!

‪ああー! あっ あっ…

‪痛‪ってえ! ああ 痛え!

‪(辻斬)危ねかった

‪おめえ 何やってんだや?

‪おめえ ここ いろ ‪おらが行く!

‪(赤丹)このキチガイと ‪二人きりにすんじゃねえよ!

‪(三途)痛い 痛い 痛い!

‪仲間らろげ

‪(正虎)えい!

‪(入江)あっ…

‪(刺す音) ‪(正虎)えい!

‪(入江の力む声)

‪(入江)うっ… ああ…

‪(兵士郎)やあー!

‪(兵士郎)荒井!

‪(荒井)ううっ! ううっ!

‪入江! しっかりせてば!

‪(念仏を唱える声)

‪(引導)二枚目! ‪おめさん 大丈夫らか?

‪-(二枚目)痛ってえ… 痛えよ… ‪-(おろしや)どけ!

‪おう ノロのやつ ‪どこに行ったか 知らねえか?

‪こっちは それどころじゃねえよ!

‪(政)おい! ‪鉄砲 どこら? 鉄砲!

‪(官軍兵たちの叫び声)

‪(政)おらー!

‪(政の叫び声)

‪(叫び声)

‪あんにゃ どけてー!

‪(爆発音)

‪(爆発音)

‪(引導)おめさん 何した?

‪(ノロ)ヘヘヘッ

‪(政)おう ノロ! それ 貸せ!

‪-(ノロ)あんにゃ? ‪-(政)貸せ!

‪(辻斬)どけ おら!

‪(辻斬)おら!

‪(官軍兵たち)えい! ‪(刺す音)

‪(辻斬)ああー! どけ おら!

‪あっ あっ あっ ああー!

‪辻斬 どけ!

‪(刺す音)

‪馬鹿 離せ!

‪(辻斬)ううー!

‪(爆発音)

‪(悲鳴)

‪やあー!

‪(正虎)ううっ…

‪(正鷹) ‪早う せえ! 早う せえや!

‪早う 弾 込めんか!

‪早う撃て! 撃つんじゃ! 早う!

‪(官軍兵)正鷹様 あれを…

‪(正虎)殺せ! 殺せ!

‪殺せー!

‪兄者…

‪(赤丹)さあ 起きて

‪ほら 頑張れや

‪さあ 酒だ酒 ‪祝い酒と いこうじゃねえか

‪(兵士郎)何が酒だ ‪死んだ者も おるであろう

‪(赤丹)だーすけ 飲まねば ‪やってらんねえでしょうが

‪あ~あ せっかくの二枚目が ‪台無しらてぇ

‪(引導)らろも ‪まだ官軍は退いちゃいねえぞ

‪(赤丹)構やしねえや

‪また ドカンと一発 ‪ぶちかましてやりゃあ いいんすけ

‪なあ ノロ

‪ホホホッ 似合ってんでねっか

‪おめえがいねば

‪今頃 みんな スケベ坊主に ‪戒名‪ 付けられてたとこらてぇ

‪なあ ノロ

‪あの焙烙玉 ‪また こさえられっかや?

‪(ノロ)おう

‪物置に古い玉が ‪まだ いくらか残ってっすけ

‪黒‪え水 混ぜりゃ ‪もっとすげえの出来っぞ

‪黒え水?

‪(三途)おい… おい

‪おい

‪(兵士郎)何してんだや?

‪野暮‪な野郎だねぇ

‪祝い酒に ‪なんで そんげ物騒なもん

‪全部 嘘だったんだよ

‪こいつらは おらたちを ‪無罪にする気なんかねえぞ

‪なあ?

‪(赤丹)何だよ やぶから棒に…

‪(荒井)貴様 ‪まだ そんげな戯れ言を!

‪(銃声)

‪(荒井のうめき声)

‪(罪人たちのおびえる声)

‪(引導)いよいよイカれたか?

‪(政)イカれてんのは ‪この侍どもら

‪役目が終わりゃ ‪おらたちは口封じされる

‪無罪なんて大嘘ら

‪馬鹿 言うてんな!

‪ご家老様自ら このわしに…

‪本当ら! おらは聞いたんだ

‪何?

‪入江

‪誠か?

‪答えんか

‪(赤丹)今更 はしご外されて ‪たまっかよ!

‪(二枚目)ああ 冗談じゃねえ!

‪(荒井)し… 知らぬ ‪わしは知らんぞ!

‪(兵士郎)入江 ‪貴様 なぜ嘘らと言わねえんだや!

‪入江!

‪(政)白状せえって

‪(入江)こやつの言うとおり

‪罪人どもは任が終わり次第 ‪口を封じろとのお達し

‪何?

‪(読経)

‪この愚か者!

‪同盟軍に城を乗っ取られるとは ‪何事か!

‪面目次第も ござりませぬ

‪謝って済むことでは なかろう!

‪愚か者 この愚か者…

‪(内匠)官軍に入るには

‪こうする以外 なかったのです

‪何と申した?

‪では 貴様

‪最初から 同盟軍を ‪欺‪くつもりだったと?

‪(入江)‪藩の方針は ‪既に決まっておる

‪同盟軍が城下から去るや ‪直ちに官軍を迎え入れ

‪無血開城‪する

‪何?

‪(三途)いや 分かんねんだて

‪なんで おらたちは同盟軍の旗を?

‪新発田の旗を掲げてしもうたら

‪官軍に合流するんに ‪都合が悪いからじゃろう

‪おらっては 同盟軍が ‪城から出ていくまでの

‪時間稼ぎだったってわけか

‪なるほど

‪なら あの橋を ‪落とせるはずがねえ

‪ゆくゆくは官軍様を ‪迎え入れるんだっけな

‪(引導)そらろも ‪官軍に入るったって

‪もう何人も官軍のやつら ‪殺してるねっか?

‪(政)だすけ 新発田が おらたちを ‪生かしとくわけねんだがな

‪(赤丹)何でぇ 何でぇ

‪イカサマ師は ‪おめえらじゃねえか!

‪ふざけるな

‪家老自ら ‪虚言を弄するとは…

‪ふざけるな

‪しかし そうでもせねば ‪貴様は…

‪(兵士郎)こんげな物持たせて

‪長岡の猿真似をさせおって!

‪ふざけんな!

‪すまねかった 兵士郎

‪謝って済むわきゃ ねえろが

‪え?

‪おらたちゃ いくら謝っても ‪死罪になったてに…

‪ふざけやがって ‪この てんぽこきが!

‪ぶっ殺してやる!

‪(荒井)ふん!

‪(政)てめえ この野郎!

‪(荒井)黙れ!

‪(入江)荒井 やめれ!

‪(荒井)うるせえ

‪どの道 処刑される罪人を ‪どう使おうが

‪わしらの勝手らろが

‪(赤丹)何だと てめえ!

‪(荒井)貴様らのような輩が ‪わしらに意見するなど不届き千万!

‪黙って従っとりゃあ…

‪(刺す音)

‪(うめき声)

‪入江…

‪(荒井のうめき声)

‪(刀を抜く音)

‪(荒井)入江… 貴様 何を…

‪(入江の荒い息)

‪(入江)貴様らをだまして ‪すまねがった

‪このわしが… このわしが必ず ‪放免にしてみせる!

‪ご家老様を説得してみせる!

‪だから

‪このとおりだ

‪すまねがった

‪(政)おう おう… ‪おめえら まさか

‪この野郎 信じるつもりじゃ ‪ねえだろうな?

‪(おろしや)けど 無罪になるには ‪この人を頼るしかねえ

‪そげなようじゃな

‪何 腑抜けたこと ‪抜かしてやがんだよ

‪おらたち だました野郎られ

‪おら 絶対 許さねえ…

‪(殴る音)

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(入江の泣き声)

‪(なつ)よう 旦那

‪今の言葉 ‪絶対‪ のみ込むんじゃねえ

‪(入江)すまねかった!

‪許せ… 許してくれ!

‪(荒い息)

‪あああー!

‪ああー!

‪ああー!

‪(里村)‪決死隊が出陣して ‪早‪二日

‪このままでは 官軍が砦を破るのも ‪時間の問題

‪(寺田)同盟軍を ‪一刻も早く 追い出さねば

‪この新発田で ‪官軍と鉢合ってしまいます!

‪(近づく足音)

‪(里村)あ…

‪(内匠)あっ

‪加奈が おらぬ?

‪(みね)馬も見当たらぬのです

‪奉公人たちに聞いても ‪誰も分からぬと

‪あ…

‪(みね)お心当たりが?

‪(内匠)いや ‪まさか そのようなことは…

‪(みね)あの子は今 ‪無理はしてはならぬ体なのです

‪-(みね)もし お心当たりが… ‪-(内匠)待て

‪どういうことだ?

‪加奈のおなかには ‪入江様の子が…

‪何だと!

‪(ハエが飛ぶ音)

‪(ハエが飛ぶ音)

‪(赤丹)はいよ

‪(唾を吐く音)

‪(念仏を唱える声)

‪(政)ああ…

‪(なつ)起きたか

‪無罪になるにゃ ‪ああするしか ねかったろ

‪(杉山)おーい!

‪賊軍ども! 聞こえるか!

‪賊軍ども 聞こえるか!

‪ご一同とも 話を聞かれい!

‪(岩村) ‪か~ むごいことをするのう

‪(杉山)わしらは 新発田の地で ‪戦を起こすつもりは毛頭ない

‪直ちに人質を解放し ‪門を開けれ!

‪さすれば 貴様らの乱暴狼藉には ‪目をつぶろう!

‪(政)何?

‪(杉山)朝廷様の御旗に殉ずると ‪申すんなら

‪貴様らの罪は問わず

‪官軍の兵として ‪我がほうが受け入れよう!

‪(おろしや)え…

‪聞いたか? ‪官軍が受け入れるって

‪静かに!

‪(杉山)じゃが ‪聞き入れられんと申すんなら

‪直ちに賊と見なし 叩き潰す!

‪ええか?

‪返答を待つ!

‪おう! おう 聞いてんか?

‪官軍に入りゃ 許してくれるって

‪(赤丹)ああ ‪確かに そう言いやがったぜ

‪(二枚目)助かったぁ

‪待て!

‪今日には のろしが ‪上がっかもしんねえだろ

‪(政)上がんねかったら ‪どうすんだや?

‪-(兵士郎)いや… ‪-(引導)旦那

‪目ぇ見えてねえのかよ

‪戦えっこねえて あの軍勢と

‪(おろしや)それに ‪どの道 官軍に入るんなら

‪今 恭順しても ‪変わりは ねえのでは?

‪(政)ああ そうだぜ 旦那

‪大体 おめさんらて 新発田の家老に ‪だまされてたんだろ?

‪そんなやつのために戦って

‪おっ死んだら ‪馬鹿みてえじゃねえか

‪(入江)行けや

‪こやつらの言うとおり ‪勝ち目は ねえ

‪兵士郎

‪貴様は こやつらを連れて 行け

‪らろも 貴様は?

‪わしは残る

‪死ぬ気らか?

‪官軍が城下に入れば ‪どの道 もう わしは終わりらんだ

‪そらろも…

‪せめて 最期ぐれえ

‪家老の婿らしいことを ‪させてくれや

‪こう言ってんだ

‪お言葉に甘えさせてもらおうれ

‪-(赤丹)おう ‪-(二枚目)ああ 行これ

‪(入江)早行け

‪(入江)兵士郎 何すんだや?

‪(政)おめ! 俺ら 撃つんか?

‪(兵士郎)ああー!

‪あああー!

‪(銃声)

‪(どよめき)

‪(官軍兵)何だ?

‪兄者!

‪(岩村)あれが ‪賊どもの返答じゃろう

‪準備をせえ!

‪(官軍兵たち)おう!

‪(官軍兵)大砲の用意じゃ!

‪(政)てめえ 何しやがんだ! ‪この野郎!

‪おい!

‪んんっ!

‪てめえ あの野郎 やっちまったら ‪官軍 入れねえろが!

‪おお? おい!

‪おらたちが ここを去ったら ‪どんげなる!

‪新発田は戦火にまみれ ‪城下は焼け落ちるろが!

‪おめえらのトトも カカも

‪生まれ育った村も

‪みんな のうなっかも ‪しんねんだぞ!

‪おらたちが守るしかねえろが!

‪(正鷹)ええか 貴様ら! ‪これは弔い合戦じゃ

‪我々 奇兵隊の面子に懸けて

‪絶対 負けるわけには いかん!

‪(官軍兵たち)おう!

‪(雷鳴)

‪(色部)溝口殿 ‪今日こそは 若君に?

‪(側用人たち) ‪さあ 来い! 歩け!

‪(色部)何の騒ぎじゃ?

‪(内匠)以前 申したとおり

‪我らの出兵を幾度となく ‪百姓どもに阻害されましてな

‪(側用人)ひざまずけ!

‪(おびえる声)

‪(雷鳴)

‪(雷鳴)

‪(内匠)方便でないこと ‪しかと お見せします

‪(土砂降りの雨の音)

‪橋を落とす?

‪(兵士郎)官軍の足軽は 戦地で ‪雇った浪人や百姓ばかりと聞く

‪嵐で鉄砲が使えねば ‪攻めては こん

‪(爺っつぁん) ‪確かに… じゃが どねして?

‪(兵士郎)ノロ

‪貴様の焙烙玉 ‪この雨でも燃えっかや?

‪(ノロ)おう 燃えっぞ

‪黒え水 混ぜたっけ ‪こんげ雨に負けねえ

‪なっ あんにゃ?

‪(おろしや)やろれ それしかねえ

‪(二枚目)そらな

‪入江

‪貴様も ‪文句は ねえな?

‪ああ…

‪(兵士郎)よし 急ぐろ

‪(赤丹)よし 準備するろ

‪(兵士郎)まずは導火線ら

‪濡‪れねえよう 油紙 巻くろ

‪(おろしや)おう

‪(赤丹たちの話し声)

‪(赤丹)早早!

‪(引導)しっかり持つんだ

‪ありったけの焙烙玉 入れっろ

‪(なつ)あの馬鹿

‪(なつ)え?

‪(雷鳴)

‪(おびえる声)

‪とう! ‪(斬る音)

‪(百姓たちのおびえる声)

‪(内匠)次!

‪ふん!

‪次!

‪(百姓たちの悲鳴)

‪(内匠)とう! ‪(斬る音)

‪(内匠)早う!

‪(里村)取り押さえろ!

‪(内匠)刀 よこせ!

‪ああ!? 気でも狂ったんねぇが?

‪(加奈)数馬様

‪(入江)加奈 なぜ…

‪なぜ ここに?

‪どうしても お会いしたくて…

‪帰れ… 帰れ!

‪そなたまで命を落としたら ‪わしは ご家老に…

‪(加奈)嫌です!

‪私も ここで戦います

‪(里村)ひざまずけ!

‪とう! ‪(斬る音)

‪押さえろ!

‪(色部)斉藤!

‪出陣の準備じゃ

‪おらだが出ていぐまで ‪あいつは百姓だば殺し続ける

‪(内匠)次!

‪(内匠)とう! ‪(斬る音)

‪とう! ‪(斬る音)

‪とう! ‪(斬る音)

‪(首が落ちる音)

‪(赤丹)おう 旦那 ‪何だってんだよ?

‪(兵士郎)大門が…

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(引導)あいつ ‪また やりやがった!

‪(政)おーい! おーい!

‪おーい!

‪おい! おーい!

‪(ノロ)あんにゃ!

‪-(ノロ)あんにゃ! ‪-(兵士郎)下がってろ!

‪(ノロ)あんにゃ!

‪-(ノロ)あんにゃ! ‪-(兵士郎)おい ノロ!

‪(赤丹)おろしや 入れ!

‪(引導)火 消えてねっか?

‪(赤丹)おろしや 火種は?

‪(息を吹きかける音)

‪まだ大丈夫ら

‪(政)聞いてくれ!

‪官軍に入れてくれや!

‪武器もねえ!

‪おら 本気で ‪官軍に入りてんだて!

‪これ 見てくれ!

‪決死隊の侍の首だ!

‪(官軍兵たち)どけ! どけ!

‪(政)離せ! 離せ!

‪(兵士郎)おい 焙烙玉は?

‪-(赤丹)俺 持ってるで ‪-(兵士郎)急げ!

‪(ノロ)あんにゃ! あんにゃ!

‪(政)痛えって言ってんだろ ‪この野郎!

‪(岩村)この首は貴様が?

‪おう

‪もう新発田の言いなりに ‪なりたくねえすけな

‪(唾を吐く音)

‪新発田?

‪貴様 今 新発田と言うたか?

‪おう あの砦の連中ら!

‪-(兵士郎)おい 貸せ! ‪-(赤丹)しっかり縛るろ

‪(爺っつぁん)導火線じゃ

‪(赤丹)導火線 引っ張れ!

‪早う 早う

‪ハハハ… ハハハハッ

‪ハハハハハッ!

‪すべて 新発田の ‪猿芝居じゃったとはのう

‪おう 持っちょけ

‪(杉山)どねえする?

‪(岩村)どうもこうも あるか

‪わしは新発田と ‪戦が しとうなった

‪(政)おう

‪やつらのこと ‪何でも聞いてくれ

‪(岩村)ハハッ…

‪ふん!

‪好きにせえ

‪あ?

‪おらー!

‪おい ちょっと! ‪待て… 待ててば!

‪おらも官軍らろが!

‪(官軍兵)逃げたぞ

‪(政)離せ! ‪だまされたわいや!

‪(ノロ)あんにゃ…

‪(かみつく音) ‪(引導)痛っ!

‪(二枚目)ノロ! 待ててば!

‪おい 捕まえれ!

‪(赤丹)ノロ 駄目だって! ‪何やってんだよ

‪ノロ 駄目だって!

‪-(ノロ)んっ! ‪-(二枚目)うわっ…

‪-(赤丹)兵士郎さん ‪-(兵士郎)つかまれ!

‪時がないぞ!

‪(兵士郎)ノロ 待て!

‪(赤丹)おう 戻るろ

‪早う!

‪(赤丹)早う!

‪早う!

‪(政)離せ! 離せ!

‪おい ちょっと! ‪ちょっと ちょっと!

‪待てってば 待てってば!

‪(正鷹)覚悟せえ

‪待て! 待て 待て 待て 待て…

‪待てー!

‪(正鷹)ああー!

‪(政)あっ!

‪あっ…

‪(政)うっ…

‪(正鷹)ああー! ‪(斬る音)

‪(爆発音)

‪(兵士郎)え?

‪(ノロ)あんにゃ んっ!

‪あんにゃ 大丈夫らか?

‪(政)おう おめ… ‪おめ 殺す気らか

‪-(ノロ)もう一発いくぞ ‪-(政)やめろ!

‪(杉山)うっ… 賊じゃ!

‪賊が おるぞ!

‪(岩村)追え!

‪(爺っつぁん)おう 早う 火を!

‪(赤丹)分かってって ‪うっせえ爺いだぜ

‪駄目だ ‪湿気‪っちまって付かねがな!

‪-(引導)貸せや ‪-(爺っつぁん)ノロじゃ!

‪(爺っつぁん)間に合わん ‪早う 火を!

‪(赤丹)分かってっけど ‪付かねえんだわや!

‪(赤丹)何やってんだよ? ‪何やってんだよ!

‪(息を吹きかける音)

‪(火が付く音)

‪おらが行く

‪(正鷹)待て こら!

‪(赤丹)おめさん

‪なまら最高の二枚目らて

‪(引導)そんげの ‪すぐ消えてしもうろ

‪袈裟‪ 持ってけ

‪(二枚目)ああ

‪(二枚目)早う急げや!

‪(政) ‪おい! おめえ 何すんだよ?

‪うっ!

‪(政)おい! やめろ やめろ!

‪母ちゃん すまねえ…

‪(政)やめろ!

‪(二枚目)うおおー!

‪(爆発音)

‪(爆発音)

‪(叫び声)

‪(政)ノロ!

‪(里村)ご家老 すぐに風呂へ

‪コロリが うつらんとも ‪限りません

‪同盟軍が城を出次第 のろしを

‪(里村)はっ

‪(色部)皆 出陣じゃ!

‪(同盟軍兵士)出陣じゃ!

‪(同盟軍兵士たち)おー!

‪(カラスの鳴き声)

‪(手ぬぐいを絞る音)

‪(入江)加奈…

‪(加奈)はい

‪兵士郎に…

‪(加奈)数馬様?

‪数馬様

‪嫌…

‪嫌…

‪数馬様

‪嫌…

‪(加奈の泣き声)

‪放免を約束してくれる人は ‪もう いねえってわけか

‪(引導)おらたち 十人いた罪人も ‪半分になったねっか

‪(爺っつぁんのせき込み)

‪(赤丹)なあ 橋 落としたてに ‪なんでやつらは居座ってやがんだ?

‪(爺っつぁん) ‪こん程度の砦も落とせんで

‪おめおめと帰れんじゃろ

‪(赤丹)勘弁しろって

‪もう屁も出ねえぜ

‪なあ 旦那 どうすんだや?

‪のろしも ちっとも ‪上がんねえじゃねえか

‪(近づく荒い息)

‪(引導)敵か?

‪(荒い息)

‪(政)うっ…

‪(引導)こん馬鹿 ‪まだ生きてやがった

‪(赤丹)入れ墨野郎!

‪(政)おろしや おろしや… ‪こいつ 診てやってくれ

‪(なつ) ‪おい 大丈夫らか? おい!

‪-(政)助けてやってくれよ ‪-(赤丹)早う

‪(引導が念仏を唱える声)

‪(赤丹)何やってんだよ

‪(引導が念仏を唱える声)

‪(馬のいななき)

‪(内匠)な… なぜだ? ‪なぜ出陣しておらんのだ?

‪(戸が開く音)

‪(内匠)あ…

‪(斉藤)おめだの猿芝居さ ‪だまされっどこだった

‪(色部)事情は聞いだ

‪まさが 若君の意向を無視し ‪おらだを追い出して

‪官軍さ 寝返るつもり ‪だったどはな

‪(斉藤)コロリの病人ば ‪百姓だなんて 嘘こぎやがって

‪溝口!

‪おめ 腹 切る用意 ‪でぎったんだべな?

‪(近づく足音)

‪(なつ)飲みなて

‪(政)酒は やめたんだて

‪カカと一緒んなった時に…

‪(なつ)ノロにとっちゃ

‪おめさんに先に死なれるほうが ‪辛‪かったかもしんねさ

‪(徳利の栓を開ける音)

‪(なつ)大好きなあんにゃを守って ‪死んだんだ

‪本望らこて

‪おらが先に死ねば よかったんだ

‪なんで よりによって こいつが…

‪いつも そうじゃねえかよ

‪おら みんな不幸にしちまう

‪なんで おらが ‪先に死なねえんだて?

‪なんでらんだ?

‪ここにいる連中は ‪みんな 一緒さ

‪やっちゃいけねえこと ‪やっちまって…

‪けど そうでもしてねえと ‪生きていけねえ

‪どうにもならねえ連中さ

‪そらろも おらは諦めねえ

‪諦めてたまっか!

‪まだ こうして生きてんだ

‪このまま負け犬みたいに ‪野垂‪れ死んで たまっかよ

‪死んでたまっか

‪ああ 死んでたまっか

‪死んでたまっか

‪ああ そうだ

‪おめさんだって カカんとこ ‪生きて戻んだろ?

‪おらも 好きなことして ‪生きてやる!

‪こんなとこで死んでたまっか!

‪(息を吹き返す声)

‪えがった~

‪あんにゃ 生きてたんか

‪(ノロの笑い声)

‪(政)おう! おめ…

‪(背中を叩く音)

‪(政の笑い声)

‪おめ…

‪てめっ くたばりやがれ ‪この野郎!

‪痛‪えって

‪(政の笑い声)

‪♪ 新発田よいとこ

‪(罪人たち)チョヤサ!

‪(おろしや)‪♪ 東も西も

‪♪ 北も南も…

‪(加奈)数馬様が ‪これを兵士郎様にと

‪(おろしやの歌声が続く)

‪(罪人たち)チョヤサッサ!

‪(赤丹)おう ノロ ‪地獄は どうらった?

‪いい女は いたか?

‪(ノロ)おお かわいげな女たちが ‪いっぺこと いたれ

‪あっ! あんにゃ あんにゃ!

‪(政)ええ ええて

‪(加奈)悲しんでばかりも ‪いられませぬ

‪この罪人どもの放免 ‪必ずや父に約束させます

‪それが 入江が望んだことです

‪(おろしやの歌声)

‪(罪人たち)チョヤサッサ!

‪(ノロ)あんにゃ あんにゃ

‪-(政)俺は踊れねて ‪-(ノロ)行こうれ

‪(赤丹)踊れや

‪(ノロの笑い声)

‪(吐き出す音)

‪(赤丹) ‪臭‪っせ! 何だや こりゃ!

‪(爺っつぁん) ‪官軍の足軽から盗んだんか?

‪(赤丹)オエッ!

‪あいつら 腐った水でも ‪飲んでやがんか?

‪おう ノロ ‪これ 裏山の水らろ?

‪おう 黒え水だ

‪(炎が上がる音)

‪(赤丹) ‪何だや こりゃ? オエッ!

‪(ノロ)ここらの山は ‪黒え水が湧いてんだ

‪なあ あんにゃ?

‪(政)だすけ 知らねってば

‪(兵士郎)おう ノロ

‪貴様 もしや ‪焙烙玉に この水を?

‪(ノロ)おう ‪だすけ 雨でも燃えたんだ

‪もしや あれは

‪油の井戸…

‪あの採掘場か

‪(兵士郎)敵陣の ちょうど真上か

‪ノロ あそこに井戸が?

‪(ノロ)ああ

‪あんにゃと ‪よう 油を採りに行った

‪(赤丹) ‪…ったく 早く言いやがれ!

‪はなっから あの井戸に ‪焙烙玉 ぶち込みゃ

‪こんげ苦労しねで ‪よかったじゃねえか!

‪(引導)馬鹿 ‪んなこと なぁにできろばさ

‪(ノロ)できっぞ

‪あんげやつら ‪みーんな燃やせる

‪やるけ?

‪(爺っつぁん)阿呆

‪もう 橋は ‪落としてしもうたじゃろ

‪(赤丹)まったくだぜ ‪肝心なこと忘れやがって

‪(政)川なら渡れるぜ

‪綱が全部 落ちたわけじゃねえ

‪軍勢は無理でも ‪おらたちなら渡れる

‪なあ 旦那 やろれ

‪(赤丹)やるって ‪あの井戸 燃やす気らか?

‪(政)官軍も 今日の今日で ‪攻めてくるとは思っちゃいねえ

‪すんだば 今だ

‪確かに おらたちは悪党だ

‪この戦があろうが なかろうが ‪さらし首だったんだしよ

‪だからって ‪こんげ 虫けらみたいに

‪やられっぱなしで ‪いいわけねえだろ

‪官軍だか 賊軍だか ‪知らねろも

‪おらぁ もう ‪踏んづけられっぱなしは懲り懲りら

‪あいつら全員 ぶっ飛ばして ‪やらねえと 気が済まねえ

‪なあ 旦那 やろれ

‪最後に 賊の意地 ‪見せっとすっかや

‪(赤丹の笑い声)

‪何だか 急に ‪風が吹いてきやがったぜ

‪ヘヘッ

‪(政)おらが行く

‪行こうれ ‪夜明け前には城下に戻らねえと

‪(加奈)はい

‪(山縣) ‪新発田の芝居じゃったやと?

‪(足軽)はっ

‪なるほど

‪やつらは はなから ‪わしらと戦をするつもりは

‪なかったっちゅうことか

‪-(山縣)馬を用意せえ! ‪-(足軽)はっ

‪(山縣)この砦は わしらを ‪足止めするための おとりじゃ

‪この峠を回りゃ 新発田に着くか…

‪(側近)山縣様!

‪同盟軍が城下に!

‪(山縣)こげな城は くれてやれ

‪わしらは新発田を動かし ‪湊を奪うんじゃ!

‪(側近)はっ!

‪-(側近)行くぞ! ‪-(足軽たち)おう!

‪(風の音)

‪(においを嗅ぐ音)

‪黒え水だ

‪(兵士郎)よし 掘るろ!

‪(足軽)斉藤様! 色部様!

‪(駆け寄る足音)

‪(斉藤)何だ?

‪(足軽)長岡城に攻め入りました

‪(斉藤)なぬ! ‪城さ 攻め入ったんだど?

‪(足軽)はっ ‪先ほど 八丁沖を越えたと

‪これから全軍をもって ‪長岡城奪還とのこと

‪我らも出陣を!

‪(色部)斉藤 行くど

‪(遠ざかる足音)

‪(直正)待て!

‪待て! 待て 内匠!

‪お前が死んでしもうたら ‪わしは どうなってしまうのだ?

‪あっ…

‪あ…

‪はぁ… はぁ…

‪(引導)いっくら掘っても ‪油なんか出やしねねっか!

‪(兵士郎) ‪いいすけ 黙って掘れや!

‪(政)ノロ どうしたて?

‪(ノロ)ここら

‪(政)あ?

‪うっ! うっ!

‪(政)うっ!

‪(黒い水が噴き出す音)

‪(引導)おー!

‪出たでねっか!

‪(政)オエッ! オエッ!

‪臭え! 臭え!

‪(使役兵)岩村様! 杉山様!

‪どう どう どう…

‪(岩村)同盟軍が ‪城に攻め入ったじゃと?

‪(使役兵)はっ

‪山縣様が ‪すぐに合流するようにと

‪(岩村)わしは新発田の猿らぁが

‪叩きのめしちゃらんと ‪腹の虫が治まらんがじゃ!

‪(ノロ)あんにゃ

‪(政)火ぃ よこせ

‪(政)見とけよ 外道ども

‪逃げろ!

‪(官軍兵)逃げろ!

‪(爆発音)

‪(爆発音)

‪(馬のいななき)

‪(政)ざまあ見やがれ!

‪(罪人たちの叫び声)

‪(爆発音)

‪(ノロのうめき声)

‪(ノロのうめき声)

‪(政)ノロ! ノロ!

‪大丈夫らか?

‪(政)こっちら!

‪-(杉山)賊じゃ 捕らえー! ‪-(官軍兵たち)はっ!

‪(岩村)殺せ! 殺せー!

‪(爺っつぁんのうめき声)

‪-(赤丹)よし 行くろ ‪-(引導)行くろ

‪(ノロ)ああー!

‪(政)とりゃー!

‪(銃声) ‪(おろしや)うっ… あっ…

‪(引導)おろしや!

‪(おろしや)ああー!

‪(赤丹)大丈夫らか?

‪(引導)大丈夫らか?

‪(杉山)賊どもが

‪(爺っつぁん)やあー!

‪やあー!

‪-(政)ノロ! ‪-(ノロ)あんにゃ

‪(おろしや)ああっ…

‪(赤丹)ああ… ‪早‪ 逃げろ! 早!

‪(おろしや)おらを置いて 逃げれ

‪(赤丹)何 言ってんだや

‪こんげでは ‪医者を続けることはできね

‪-(赤丹)そんげこと言うなや ‪-(おろしや)逃げれ!

‪(引導)一緒に逃げるろ!

‪(銃声)

‪-(おろしや)ああっ! ‪-(赤丹)おう どこ行くんら?

‪こんげ無駄な戦 もう終わりら

‪(赤丹)おお… おい おろしや!

‪(おろしや)うわー!

‪(銃撃音) ‪(おろしや)うっ…

‪(引導)おろしや!

‪(おろしや)うっ…

‪(倒れる音)

‪(兵士郎)おのれ!

‪(引導)い… 行くろ 早早

‪(赤丹)ああ…

‪(斬り合う音)

‪(政)ノロ! お前 先 行け!

‪-(ノロ)あんにゃ? ‪-(政)おらもすぐ行く! 行け!

‪(斬る音) ‪(政)がっ…

‪ああっ!

‪賊が!

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(赤丹)おい ノロ! ‪早う行け! 早う逃げろ!

‪(官軍兵)ああー!

‪(政)たわけやがれ ‪この嘘つき野郎!

‪(斬る音) ‪(官軍兵)ううっ…

‪ああー! どかんか 爺い!

‪(爺っつぁん)やあー!

‪ふん!

‪おい そいつを貸せ

‪(杉山)老いぼれが!

‪(爺っつぁん)んんっ!

‪元長州藩 槍術指南 ‪小柴彦八郎

‪義によりて

‪お国に逆らい奉る

‪ああー!

‪やあー!

‪(杉山)やあー!

‪(刺す音)

‪(爺っつぁん)ああー!

‪(血を吐く音)

‪(杉山)やあー!

‪(爺っつぁん)やあー! ‪(刺す音)

‪(岩村)杉山…

‪ううー! ‪(斬る音)

‪(爺っつぁん)ううっ…

‪ううう…

‪ううっ!

‪(斬る音)

‪(血が噴き出す音)

‪うう… うっ…

‪(兵士郎)やあー!

‪(血が流れ出る音)

‪やあー!

‪(岩村)猿らぁが

‪(政)旦那 どけ!

‪(銃声)

‪うっ…

‪(岩村)杉山! おい 杉山!

‪杉山… おい 杉山!

‪ああー!

‪杉山!

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(赤丹)早う 早う! 早う 早う!

‪-(引導)おう 逃げるろ! ‪-(赤丹)逃げろ! おう!

‪(綱を切る音)

‪(民衆たちの話し声)

‪(泣き声)

‪(内匠)無事で何よりであった

‪入江殿は 誠に無念

‪砦には まだ ‪兵士郎様と 共に戦った者どもが…

‪お願いです どうか情けを…

‪分かっておる 分かっておる

‪(近づく足音)

‪(里村)ご家老様 官軍が城に…

‪(戸が開く音)

‪若君

‪わしが何のために ここに参ったか

‪もう 分かっておられるんでは?

‪(内匠)はっ

‪殿は官軍への協力のご意思を ‪固められておられます

‪我ら新発田に できることがあれば ‪何なりと

‪(山縣)ああ

‪本題に入る前に ‪一つ聞きたいことが…

‪この合印をした者たちのことじゃ

‪(赤丹)それにしても ‪いい心持ちじゃねえか

‪城下に帰るって時に ‪いい陽気と来やがった

‪(兵士郎)城下に戻る気らか?

‪(政)いや 新発田には行かねえ

‪何とか カカんとこ戻って 後は…

‪まあ 野となれ山となれだ

‪やはり… 新発田を許せぬか

‪(政)いいかげん 分かったろが ‪おらのことは

‪(兵士郎)ノロは どうする?

‪あんにゃが いんきゃ ‪大騒ぎらろ

‪おら あいつの あんにゃじゃねえ

‪世話になったな

‪達者でな

‪(なつ)いや… ‪そりゃ 先立つもんも ねえし

‪くれるってんなら もらうけど…

‪悪‪いな

‪おう ちょいと待ててば!

‪何だってんだよ …ったく

‪おおっ…

‪(近づく足音)

‪(遠ざかる足音)

‪(引導が念仏を唱える声)

‪(兵士郎)よし 城下に戻るろ

‪(引導)俺は残っていくて

‪人が死に過ぎたすけ ‪供養していくわいや

‪(赤丹)ちったあ ‪坊主らしいこと言うねっか

‪(引導)来たろ 旦那!

‪間違いねえ 新発田の旗ら!

‪おーい!

‪お嬢様が 我らんこと ‪伝えてくれたんが

‪(赤丹)おーい! ‪決死隊は ここらろ!

‪(兵士郎)おーい! おーい!

‪(政)逃げろ!

‪逃げろ! 逃げろ!

‪撃て!

‪(銃撃音)

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(引導)うっ…

‪ノロ!

‪(ノロの荒い息)

‪(銃撃音)

‪(兵士郎) ‪待て! 我らは決死隊だ!

‪(里村)撃て!

‪(銃撃音)

‪我らは新発田の足軽だ ‪聞こえんのか!

‪(銃撃音)

‪来い… 来やがれ!

‪(兵士郎)我らは新発田のために ‪国のために戦ったのだ!

‪(銃撃音)

‪んっ!

‪(銃声) ‪(赤丹)ああっ…

‪(うめき声)

‪(銃声) ‪(赤丹)ああっ…

‪やめろー!

‪(銃声)

‪(うめき声)

‪(銃声) ‪(赤丹)あっ…

‪(内匠)鷲尾殿

‪おぬしには情けをかけてほしいと ‪加奈から 口添えがあった

‪安心せえ

‪まだ罪人どもは残っておるか?

‪(内匠)ん?

‪鷲尾殿?

‪(兵士郎)貴様のような卑怯者を ‪許すわけには いかねろ

‪従えんと申すか

‪なら 罪人ども同様 ‪処分するまで

‪構わねえ

‪わしは賊ら

‪(きつく締める音)

‪十一人目のな

‪斬り捨てい!

‪(足軽たち)やあー!

‪(兵士郎)やあー!

‪(兵士郎)ああー!

‪(内匠)撃て! 撃ち殺せ!

‪(銃撃音)

‪(内匠)撃て

‪(銃撃音)

‪-(寺田)行け ‪-(足軽たち)はっ!

‪(斬る音)

‪(足軽たちのうめき声)

‪(足軽たち)やあー!

‪(足軽)ううっ… ううっ…

‪やあー!

‪(刺す音) ‪(足軽)ああっ…

‪(斬る音)

‪(里村)斬り捨てい!

‪(足軽たち)はっ!

‪(政)おう ノロ ‪もう焙烙玉 残ってねんだか?

‪湿気‪ちまったやつなら ‪物置に残ってっけど

‪燃えっか どうらか

‪(斬り合う声)

‪(ノロ)あんにゃ!

‪(政)どこだ?

‪(銃撃音)

‪(政)ノロ おめ ‪おめ 裏から 川 行け

‪川 下りゃ 新発田に着く

‪あんにゃは?

‪おらも後から行く

‪嫌だ おらも あんにゃと一緒に…

‪(政)おめえみてえな馬鹿なら ‪口封じされねえ

‪逃げられるんだよ

‪なっ?

‪やだ… やだよ ‪おら もう離れたくねえ!

‪あんにゃの言うこと 聞けねんか!

‪おめにゃ 何度も助けられた

‪最後ぐれえ ‪兄貴らしいこと させやがれ

‪ほれ 行け

‪行けてば!

‪(斬る音)

‪(足軽)うおー!

‪(斬る音) ‪(兵士郎)うっ…

‪(刺す音) ‪(足軽)うわー!

‪(里村と寺田の叫び声)

‪溝口

‪剣を取れ!

‪(兵士郎の荒い息)

‪(兵士郎)うわー!

‪(銃声)

‪(兵士郎の荒い息)

‪ふぅ…

‪ああー!

‪(刺す音)

‪(斬る音)

‪(荒い息)

‪(銃声) ‪(兵士郎)あっ…

‪(荒い息)

‪(斬る音)

‪(荒い息)

‪(足軽たち)やあー! ‪(刺す音)

‪(兵士郎)ううっ…

‪(足軽たちの叫び声)

‪クソ!

‪(兵士郎)うっ…

‪(刀を抜く音)

‪(うめき声)

‪残らず処分せえ!

‪(足軽たち)はっ!

‪-(足軽)貴様! ‪-(里村)行け! 撃て!

‪(足軽たちの叫び声)

‪(里村)逃がすな!

‪(ノロ)あんにゃ! あんにゃ!

‪(足軽)逃げやがった!

‪(寺田)上れ!

‪撃て!

‪(火打ち石を打つ音)

‪冗談じゃねえ

‪冗談じゃねえろ

‪あんげ野郎に…

‪あんげ野郎に ‪殺されてたまっかや!

‪(火が付く音)

‪(息を吹きかける音)

‪(寺田)やあー! ‪(刺す音)

‪(刺す音)

‪(政)ううっ…

‪(寺田)うおっ…

‪(刺す音)

‪くたばりやがれー!

‪(爆発音)

‪あんにゃ…

‪あんにゃ!

‪(直正)我ら新発田は 帝のため ‪そして新たな日本のため

‪国を挙げて 賊どもを ‪成敗するつもりでございます

‪(岩村)ふん

‪猿芝居をしちょきながら ‪よう そんな戯れ言を

‪(山縣)もう ええじゃろ 岩村

‪新発田の協力で

‪わしらは こねえして ‪同盟軍の心の臓を手に入れたんじゃ

‪内匠 山縣様に例のものを

‪(内匠)ご所望のものでございます

‪決死隊の首でございます

‪(ナレーション)

‪(民衆たち)ご家老様ら ‪ご家老様 ほんのき ありーがて

‪(民衆)ご家老様

‪もう 戦がねえってのは ‪ほんとらんですか?

‪(内匠)ああ

‪(民衆)えがったれなぁ ‪長岡みてえにならねえで

‪(民衆)えがった えがったなぁ

‪(内匠)皆 殿のおかげじゃ

‪(ナレーション)

‪(みねが泣き叫ぶ声)

‪(内匠)何をしておる! ‪どうしたのだ?

‪(みね)触らないで!

‪(泣き叫ぶ声)

‪(内匠)加奈…

‪加奈!

‪なぜだ…

‪なぜ このようなこと…

‪許せ… 許せ 加奈

‪こうするしか…

‪許してくれ!

‪(腹を叩く音)

‪(男)やめれ! 駄目だよ

‪(花売り) ‪花 いらんけ~

‪(遠くから聞こえる花売りの声)

‪(湯呑を置く音)

‪(音が消え 静寂に包まれる)

‪(遣手婆が声をかける)

‪(何か言っているが 聞こえない)

‪(言葉を続ける)

‪(周囲の音が聞こえ始める)

‪(なつ)戻さねで

‪(街の喧騒)

‪ああ…

‪…ったく ‪どうせば信じてくれんだてぇ

‪やめれ! ‪これ あんにゃのらて

‪(なつ)こら ノロ! ‪馬鹿だね おめは

‪(泣き声)

‪あんたの旦那は

‪最後まで必死になって ‪おめさんのところに戻ろうとしてた

‪それだけは本当らてぇ

‪あの馬鹿の分まで ‪おめさんは幸せになるんだ

‪(なつ)ノロ!

‪(さだの泣き声)

‪(なつ)ノロ 行くれ

‪(チンドン屋の陽気な音楽)

‪(女)ほれ 新潟のお酒だよ

‪はい 冷や酒 お待たせ

‪(なつ)おい!

‪ごめんよ

‪(チンドン屋) ‪♪ めでたい めでたい めでたいな

‪それ!

‪♪ めでたい めでたい めでたいな

‪♪ めでたい めでたい めでたいな

♪~

~♪

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