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(ヴァン) オルツィは?
(エラリイ) 死んでる
(ポウ) もっとひどい事実が1つ
左手が 切り取られていたんだ
(エラリイ) この島で起きた青屋敷の四重殺人事件
犯人はあれに なぞらえてるんだ
(中村紅次郎) 江南くん
(江南孝明) 紅次郎さんなら ひそかに島を行き来できて
青司さんを 逃がすこともできたかもしれない
(島田 潔) 中村青司は あの島で生き続けることも可能だな
(カーのうめき声)
(ポウ) 毒だ! (カーのうめき声)
(ポウ) 心肺停止だ!
(ルルウ) しっかりしてください! カー先輩!
(雷鳴)
(ドアの開く音)
(ポウ) ベッドに寝かせてやったよ
(エラリイ) ケリをつけよう
(ポウ) ああ…
カーは何らかの毒を飲んだ
(エラリイ) コーヒーに混入していた ということだな
毒の種類の見当はつくのか?
(ポウ) そうだな
呼吸困難とけいれんを起こしてるから 神経毒の可能性が高い
(ルルウ) 青酸カリとか?
だとしたら独特の臭いがするはずなんだが それは感じられなかった
ヒ素… 亜ヒ酸… そのあたりかもな
(アガサの笑い声)
(アガサ) コーヒーを出したのは私なの
犯人は私しかいないって 話になるじゃない?
(エラリイ) そうだね
で やっぱり君なのか?
フフ… 私じゃないって言ったら 信用してくれる?
(エラリイ) それは無理だ
ハハハ… でしょ? ハハ…
(ポウ) おい 真剣に考えるとこだぞ
分かってるわよ!
(エラリイ) そうだ ポウ 誰も好んでふざけちゃいないさ
まずは 事実の確認からだ
コーヒーをいれるように頼んだのは 確か カーだったよね
そうよ
(ポウ) アガサがキッチンに立ってから だいたい15分くらいだったな
その間 キッチンにはアガサ1人
アガサが出てきた時 トレーにあったのはコーヒーカップが6つ
角砂糖の箱 パウダーミルクの瓶 そして スプーンが7本
(アガサ) 1本はミルク用に持ってきたの
(エラリイ) 僕がまず トレーからカップを取った その次が…
(ルルウ) 僕です カー先輩とほとんど 同時でした
(ポウ) たぶん 次が俺だな
(アガサ) そのあと私が取って トレーごとヴァンに回したのよ
(ヴァン) うん そうだった
(エラリイ) カーはコーヒーをブラックでしか飲まない
砂糖やミルク スプーンを介しての 混入ではなさそうだ
カーはテーブルから離れていた
カップを取ってから毒を盛ることは難しい
となると やはりそのチャンスがあったのは…
(アガサ) はっ 私が犯人なら それぞれにカップを配ってるわよ
どうやって カーに毒入りのカップを取らせたわけ?
(エラリイ) カーは たまたま貧乏くじを引いたんだ
(アガサ) えっ?
(エラリイ) もし犯人の最終目的が 僕ら全員を皆殺しにすることだとしたら――
“第二の被害者”はカーじゃなくてもいい
毒を飲むのは誰でも良かったとしたら どうだい?
(アガサ) やってないの 私はやってない!
(ルルウ) 待ってください
僕はずっと コーヒーをいれるアガサ先輩を 見ていたんです
キッチンのドアは開けっぱなしで
僕の席はちょうど 手元まで見える位置だった
でも 不審な点はありませんでした
(エラリイ) この距離だ 見落とした可能性だってある
そもそも 君は最初から アガサを監視するつもりで――
見ていたわけじゃないだろう?
すみません
謝ることはないさ
いえ… そうじゃなくて…
僕は――
アガサ先輩を見張っていたんです
どういうこと?
(ルルウ) 本当にすみません けど だって… そうでしょう?
オルツィを殺した犯人がこの中にいて それがアガサ先輩かもしれない
僕は 夕飯のクラッカーや缶詰だって 恐る恐る口にしてた
なのに 平気で最初にコーヒーを 口にしたエラリイさんこそ どうかしてますよ
(エラリイ) じゃあ 君は絶対にアガサが 犯人じゃないと言い切れるんだね
(ルルウ) それは… (アガサ) 私じゃないってば
(ヴァン) もしアガサが犯人なら――
真っ先に自分が 疑われるようなタイミングで実行するかな
(ポウ) それは同意だな
それより まずトレーに手を伸ばしたのは エラリイ お前なわけだ
(エラリイ) ああ
(ポウ) カップを取るフリをして 薬を放り込むこともできるだろ
どうだ マジシャン
(エラリイ) ハハハ… 気づかれたか
でも これはやっていないと主張するよ
うのみにはできんな
ポウ そういう君こそ かなり怪しい
そもそも 僕とルルウは文系で 毒物とは縁がないんだ
手にする可能性が高いのは 理学部のヴァンか 医学部のポウ
薬学部のアガサか…
あなたの親戚の家 薬局じゃなかった?
マジシャンのテクニックと合わせると 一番怪しいけど
参ったな 形勢逆転だ
(ルルウ) 入手経路より――
どう使ったかを考えたほうが 建設的じゃないですか?
(ポウ) あらかじめ コーヒーカップに 毒を塗っておいたとしたら?
(エラリイ) アガサ 最後にコーヒーカップを洗ったのは?
(アガサ) 島の探索から戻ったあと みんなでお茶を飲んだでしょ そのあとよ
洗ったカップは キッチンカウンターの上に置いた
(エラリイ) 犯人は 例えば 夕方のうちにキッチンに入り込み――
置いてある6つのカップから 1つを選び 毒を塗りつけた
(ルルウ) そうなると 犯人は 毒を仕込んだカップは避けなきゃいけない
でも コーヒーは全員飲んでましたよね
(アガサ) 目印がついてるとか?
(ルルウ) 小さな傷すらないですね
(アガサ) じゃあ どうやって見分けるの?
犯人は やっぱり外部の人間なのさ
(ヴァン) 外部の?
自分は飲まない 目印がなくても構わない
(ルルウ) それって…
言っただろ 中村青司だよ
オルツィの手首を切り落として 喜んでる猟奇殺人犯さ
(アガサ) どうかしてる…
(ポウ) ヴァン?
(ヴァン) 風邪が ぶり返したかもしれない
(ポウ) いったん休もう もう夜が明ける
ハア… そうだな さすがに限界だ
(ポウ) 待て
1人になるのは危険だ 全員同じ場所で寝たほうがいいんじゃないか?
(アガサ) 嫌よ! 隣に犯人がいたらどうすんの?
(ポウ) 目撃者が大勢いれば 手は出せないだろ
(アガサ) グルかもしれないじゃない 絶対 嫌!
(ポウ) ずいぶん 参ってるな
僕も同じ気分だ 1人で寝るよ
(ルルウ) 僕も そうさせてもらいます
(ヴァン) おやすみ
(ポウ) ああ…
(江南) ミス研の部室で起きた不幸な事故>
病気が原因でなかったとしたら?>
(電話の呼び出し音)
さすがに まずいか…
(電話の着信音)
(島田) おお 出た
あ… はい 江南…
(島田) やっぱり君も夜更かしだね~
ハハ… 島田さんに電話しようか ちょうど迷ってたんです
(島田) おお そりゃ奇遇だな~
ん? で 何の用?
あっ 中村千織が亡くなった時に ミス研の部室で何が起きたのか
俺たちは まず そこから始めなければ ならないんじゃないかって思って…
(島田) まだ何者でもない だから何者にでもなれる
好きに生きてて うらやましいね
(江南) 島田さんだって好きに生きてるし 何者でもないじゃないですか
(島田) んっ へ…
うん 確かに…
ん? うん…
確かに
ハハ… 確かに確かに そうだな
(島田) で ミス研ってのは 日ごろ 何をしてるんだい?
(江南) 定期的に会誌を作るんで そこに載せる原稿を書いたり――
なんとなく部室に集まって ミステリの話をしたり――
新しいトリックを考えたり 実際の事件が話題になったりもしますね
(島田) ふ~ん 四六時中 殺人事件のことを考えてるわけか
ゆがんでるね~
(江南) 推理小説研究会ですから
(島田) 何 食べたの?
(島田たちの話し声)
(島田) サバの!? (学生) サバです
(島田) アハハハ… サバか
(島田たちの話し声)
(島田) 君の友人の守須君は なかなか鋭い視点を持ってる気がするが…
(江南) 天才肌なんですよ あいつは
(島田) 天才… ああ 分かる分かる 主人公タイプだね
(江南) そうですね
(島田) 何だ? 彼に嫉妬してるのかい ワトスンくん ん~?
(江南) いえ 知ってます?
ホームズがホームズでいられるのは ワトスンがいるからなんです
ここが俺たちの部室 事故現場になった場所です
あの日 俺と守須は 早々に引き上げたんです
みんなは 推理小説談議が盛り上がって
(島田) 深夜の部室に忍び込んでパーティーか
死人が出なけりゃ 青春の1ページだったな
(江南) 確かに
楽しそうでしたね~ 彼女もみんなも
ん? 君は楽しくなかったのかい?
その頃は もう辞めようと思ってましたから
事故以来 他のメンバーも 集まりが悪くなったみたいです
(島田) そのようだね
警察の報告書では――
“持病の発作が アルコールで誘発された”とあったよ
調書も見たんだが 事件性はなかった
調書? 警察の?
まあ ちょっとしたコネがあってね
事故当時 彼らは 素人なりに救命活動もしたみたいだ
でも 助けられなかった
その逆恨み… ですかね
さあね
もし あの日 俺もここに残っていたら――
彼女を死なせずに済んだんでしょうか
君はロマンチストだね~
えっ?
もしも こうしていたら… ハァ…
そんなこと いくら考えたって 分かるはずがない
答えのないミステリを解くようなものだよ 不毛だよ
様々な偶然と必然が 複雑に絡み合って世界は動いてる
自分のせいで 何かが変わった なんて思うのは 傲慢だ
分かるかね ワトスンくん
フッ…
フッ というわけで さあ次だ
(江南) 次!? (島田) んっ?
僕らは 答えのある謎を 解きに行こうじゃないか フフッ
ハッハッハッハッ…
(ルルウ) んん…
(荒い息)
(ポウ) これは小説じゃないんだ! 本当に仲間が死んだんだぞ!
(ルルウ) ちょっと! (ヴァン) よせ 2人とも
来るんじゃなかった
帰らせて!
(カーのうめき声)
(ポウ) 毒だ!
死なないわよね?
同じだ…
(ルルウ) どうして僕らは この島に来たんだろう
まるで 呼び寄せられるように…
(ノック)
どうかしたんですか?
(ノック)
(ルルウ) ああっ…
律儀な犯人だよ
(ドアの開く音)
(エラリイ) おや?
“第二の被害者”のプレートもあるね
(ルルウ) どういうこと?
(エラリイ) 僕は 昨日の昼 このプレートをみんなの前で ここにしまった
覚えているかい?
(ポウ) ああ もし このイタズラが続くのなら――
誰かが いずれプレートを取り出す
しかし キッチンは人目につく
それを監視するためだろ
(エラリイ) ご明察
だが どうやら誰も 取り出さなかったようだ
(ポウ) つまり 犯人は――
同じものを もう1組用意していた
(エラリイ) これは 綿密に練られた犯行なんだよ
ハア…
顔 洗わなきゃ
ここまでしてくれるとは うれしくなるね
(アガサ) キャー!
(ポウ) どうした?
(ルルウ) うあああ~! ああ… ハア… ハア…
(ポウ) あっ!
(ポウ) カーの手首――
切断面は オルツィと同じだった
同一犯ってことですか?
それは分からん
だが 青屋敷事件の見立てには違いない
船 何で通らないの?
部屋で休んでたほうが いいんじゃないか
1人は嫌
(ヴァン) エラリイは何をしているんだ?
(ルルウ) 何してるんです?
(エラリイ) 探し物さ 昨日から気になってね
すべてが青に塗られた青屋敷に すべてが十角形の十角館
中村青司の奇抜な性格や趣味 こだわりが うかがえるね
だから… もしかしたら…
もしかしたら?
何を探してるんですか?
(エラリイ) あっ ポウ ちょっと そこをどいてくれ
(ポウ) ああ…
(エラリイ) やっぱり そうか
(アガサ) えっ… やっぱりって?
ここだけ違うタイルだ
同じように見えますけど
(エラリイ) あ~ この角度から見てみろよ
(ルルウ) ああっ!
(エラリイ) 日が当たると ここだけ青色が違って見える
全部 同じ青のタイルじゃない
触り心地が違う 色が違って見えるのはそのせいだ
そうか!
これは思い込みを利用した仕掛けだな
室内の明かりだと 同じ青いタイルにしか見えないだろう
だが 触れば違いははっきりしている
手がかりは 文字どおり 白日のもとに さらされたってわけだ
(エラリイ) あった!
おお…!
おお…!
(ルルウ) まさか 本当にこの中に 誰かが…
(ポウ) 気をつけろ!
ああ 分かってるさ
大丈夫
大丈… うわっ
(ポウ) エラリイ! (ルルウ) エラリイさん?
どうしたの?
(ヴァン) エラリイ!
待て! うかつに入るのは危険だ
(ヴァン) でも…
俺が行く 合図したら来てくれ
(ルルウ) はい
(ポウ) エラリイ?
こいつは…
エラリイ?
エラリイ?
大丈夫か?
(エラリイ) うかつだったよ
(ポウ) 頭は打ってないか?
(エラリイ) ああ
足を くじいたみたいだ
(ルルウ) ポウ 様子は?
とりあえず無事だ
僕らも行きます
途中に テグスが張られてるから 気をつけろ
僕は平気だから まずは その辺を調べてくれ
(ポウ) ああ…
よく見てみろよ
床だ
(ルルウ) これは…
ホウキで掃いた跡?
誰かがいたんだよ フッ ここに
(看護師)わっ ありがとうございます
(島田) ステキな時計ですね
(看護師) わっ ありがとうございます
(島田) どうぞ
(島田) こんにちは (船橋弘江) こんにちは
(船橋) あっ… (島田) どうぞ
ああ…
アハハハ… ああ…
(江南) キザだな…
(船橋) 千織ちゃんね よく覚えてますよ
あそこのお宅には 先生の往診で通ってましたから
(島田) ああ…
彼女は おじいさんと 2人暮らし… でしたよね
(船橋) ええ 優しいお孫さんでね
ご病気のおじい様のことを いつも心配してました
(島田) ふ~ん… ご両親は? ずっと角島に?
みたいですね~
まあ詳しいことは よく分かりませんけど――
少なくとも私たちがお会いしたことは 一度もありませんでした
いろいろと ご事情が あるんじゃないかとは思いますけど
そんなことねえ 聞けないじゃない
(島田) そうですよね 聞けないですもんねえ
(江南)
どうした? コナンくん
いえ 別に
それじゃあ 千織さんは いつも寂しかったのかもしれませんね
そうねえ
あっ でも お母様と 手紙のやり取りは してたみたい
手紙?
(船橋) お母様 ものすごい字が きれいなんだって
一度うれしそうに 見せてくれたことがあったから
お父さんのことは 何か聞いてますか
ん~ 彼女の口からは ないかな
お葬式の時だって よほどショックだったのか――
こっちには来られなかったんですってよ
お葬式にも来なかった?
その代わり 別府から親戚の方がいらして 取り仕切ってましたよ
別府?
(島田) やけに静かだな
(江南) 2つ 分からないことがあって それを考えています
(島田) ほう 分からないこと?
1つは――
あの看護婦さんのこと いつの間に調べたんですか
何だ そんなことか
言ったろ 警察にコネがあるんだよ
ちょっとだけ捜査資料を 拝見させてもらったのさ
ああ… それですねてただけか
違います!
もう1つは――
もし 中村青司が生きているとしても――
中村千織のことを それほど かわいがっていなかったのなら――
あんな復讐をにおわす手紙を 送りつけるのはおかしい
矛盾しています
そうとも言い切れないさ
中村青司は娘を失って初めて――
その存在の大きさに 気づいたのかもしれない
人の気持ちなんてのは その時々で移ろうものさ
確かに
などと詩的な言い回しで 矛盾をごまかすようなミステリは――
好きじゃないね 僕は
えっ?
今言ったことも含め 残る可能性は2つ
中村青司が この手紙を書いたのは 復讐のためではなく 別の目的のため
あるいは もっとシンプルに…
この手紙を書いたのは 中村青司ではなく 他の誰か
(島田) うん
(江南) ハア~…
島田さん
もう一度 紅次郎さんの家に 話を聞きに行きませんか
何 言ってんだ
もう向かってるよ フッ
ハハッ…
(ポウ) だいたい ひと晩で痛みは引く
まったく 運のいいヤツだよ
(エラリイ) 皮肉かい? こんな目に遭ってるのに
(ポウ) 一歩間違えば――
お前が“第三の被害者”に なるところだったんだ
今日は人生で一番幸運な日だと 思ったほうがいい
ああ… 確かにな
僕としたことが まんまと ヤツの仕掛けた罠にかかってしまったよ
ああ~…
(アガサ) ヤツって 中村青司?
(エラリイ) ああ あの地下室を見て分かっただろ
あそこに 誰かが潜んでいたことは 間違いない
(ルルウ) 僕らが来ることを 見越していたような気もしますね
(エラリイ) ハハハ…
(ポウ) エラリイ…
すまない
(エラリイ) どうした 急に
(ポウ) お前が引っ掛かった あのテグスは どうやら――
俺の持ち物らしい
(アガサ) どういうこと?
(ポウ) 玄関ホールに 俺の釣り道具を置いてるだろ
あそこから 一番太い釣り糸が 1巻き なくなってるんだ
盗まれたのか
(ポウ) ああ
なるほどな ここの玄関は鍵がかからない
したがって 中村青司であろうと 誰でも出入りは自由
釣り糸を盗むなんて わけがないってことだ
今夜から ホールの内側の扉は ひもで結わえよう
(ポウ) そうじゃなくて
俺はここで 各自の部屋を 全員で調べることを提案したい
所持品検査か
(ポウ) ああ
犯人は 俺の釣り糸
ナイフか 何かの刃物
もしかすると 毒薬の残りも 持ってる可能性がある
(ヴァン) それに 見つかっていないオルツィの手首もね
(アガサ) 私 そんなの見たくない!
(エラリイ) むしろ危険かもな
ああ… いや 大丈夫だ あっ…
もし 本当に この中に犯人がいるとしたら――
また 危ない仕掛けをされることも ないとは言い切れないだろ
どう思う? ルルウ
(ルルウ) えっ?
(ポウ) チッ
(風の音)
(ヴァン) 塩は ここだよ
コショウ 使う?
(アガサ) 見張りとしては合格ね
(ヴァン) アガサ?
私を疑うなら 食べなきゃいいじゃない!
(ヴァン) そんなつもりじゃ…
私は私が犯人じゃないことぐらい 一番よく知ってるわ!
(ヴァン) 落ち着け アガサ!
(アガサ) ご飯食べて また誰か死んだら 私のせいにするんでしょ!
私を犯人にしたいなら なってあげるわよ!
私が犯人だ 私が2人を殺したの! 今に みんなも殺してやるんだから!
(ルルウ) アガサ先輩 (アガサ) こっちに来ないで
分かった あんたたち4人 みんなグルで――
オルツィとカーを殺したんでしょ
次は私の番? 近づかないで!
(泣き声)
(ポウ) アガサ 大丈夫だ (アガサ) 帰りたい
(ポウ) 大丈夫だ ゆっくり息をして (アガサ) 家に帰りたい
(ポウ) アガサ (アガサ) 帰るの
(ポウ) アガサ (アガサ) 触んないで
(ポウ) いいかい 誰も君を 犯人だなんて思ってないし――
(ポウ) 君を殺したりしないから アガサ! (アガサ) もう嫌… 嫌なの!
(アガサ) 帰らせて
(ポウ) ほら これを飲めば寝れるから
ゆっくり おやすみ
嫌よ 毒かもしれないじゃない
軽い入眠剤だ
(アガサ) ウソよ! 絶対 嫌
分かった じゃあ こうしよう
ほら 何ともないだろ?
ゆっくり休めよ
ありがと
(ヴァン) 大丈夫かな
(ポウ) ああ
(ルルウ) だいたい 犯人は何で こんな狂気じみたことを始めたんですか
中村青司にしろ 誰にしろ 動機は何なんですか?
何で僕たちがこんな目に 遭わなきゃならないんだよ もう!
(ヴァン) 何か… あるのかもしれない
僕たちが思い出さなきゃならない 何かが…
(ルルウ) すみません 僕にも薬 もらえますか?
こんなんじゃ とても眠れそうにない
(ヴァン) 僕も欲しい
(ポウ) ああ
エラリイは?
自力で眠れるよ おやすみ
(ドアの開閉音)
守須…
(ラジオの声)
(江南) 来ると知ってたら もっと早く戻ってきたのに
(守須恭一) 帰りに雨が強くなって 雨宿りついでに寄ってみた
風呂も助かったよ
絵は大丈夫だった?
(守須) ああ
それより そっちは?
その後 進展はあったかい?
実は あれから 中村千織のことを調べ直したんだ
彼女のことを?
うん 悪くないね
あの手紙が ただのイタズラにせよ 何かの脅迫にせよ――
発端は彼女の死にあると考えられる
さすがだな
言い出したのは僕だけどね~
(江南) ええー 違いますよ 俺だって同じこと言ってたじゃないですか
“奇遇だな”って言ってたでしょ
(島田) ああ 分かった分かった まあ じゃあ そういうことにしておこうか
(江南) はあ? 聞いてよ 守須 この人って本当にさ…
(島田) そうなんだよ コナンくんとは 不思議と波長が合ってね
まさに ホームズとワトスンと 言ったところだ なっ?
(島田) なっ (江南) コンビを組んだ覚えはありません
ああ!? 何 言ってるんだ
君が自分で言ってたんじゃないか ワトスンあってのホームズだって
(江南) あれは 中村千織に…
ああ… もういいですよ そんなことは!
ごめん 守須 話を元に戻すと――
彼女のことを調べているうちに 中村青司のことも分かってきたんだ
彼は生きているのか?
それは 分からない
分かったのは――
中村千織は 父 中村青司から 愛されていなかったということ
そうなると この手紙を書いたのは 中村青司とは思えなくなってくる
いくつかの可能性はあるけど――
島田さんと推理して 積み上げ出した答えは――
この手紙を書いたのは 中村紅次郎じゃないかってこと
どうして 彼が?
(島田) 中村千織の実の父親は 紅さんじゃないかってことさ
青司が 中村千織を 遠ざけていたことも――
紅次郎さんとの兄弟仲が 悪かったことも――
和枝夫人を殺し 青屋敷事件の犯人だったとしても――
すべて つじつまが合う
どうだい 僕らの推理は
安楽椅子探偵の見解を聞きたいね
実は 今日も別府まで行ってきた
でも 留守で 確かめることは できなかった
最近の紅さんは家にいないことが多いね~ どこで何をしているのか
明日もう一度 別府に行きませんか 今度は戻るまで待つくらいの覚悟で
いいね~ 望むところだよ ハハ…
(守須) やめたほうがいい
えっ?
2人とも 少し踏み込みすぎじゃないですか
何だよ 急に
島田さん
ご友人とはいえ そこまで立ち入ったことを 詮索していいんでしょうか?
自分だって面白がって 安楽椅子探偵を気取ってたじゃないか
ああ そのとおりだ
だから 今は少し後悔している
ここで3人で推理合戦をしてる分には 罪はないけど――
そこから出てきた臆測だけで 確証もないのに他人のプライバシーの――
しかも その人が 最も知られたくないと思っている部分に――
土足で踏み込むようなマネは 控えるべきだよ
違うかい?
確かに そうだけど…
それに 手紙を出したのが 中村紅次郎なら――
なぜ 今になってそんなことをしたんだ
中村千織を死なせた若者たちに 復讐するつもりなら――
もっと早く行動を 起こしてたんじゃないか?
彼女が亡くなってから もう1年になる
仮に青屋敷事件で 和枝夫人が殺されたことが 引き金になったとしても――
半年も前のことです
僕は思うんです
例えば 殺意なんていう 極端な感情を――
ずっと心に持ち続けることは――
普通で考えるより はるかに大変なことだと
じゃあ 君としては――
やはり中村青司は生きていて――
何らかの目的で この手紙を送ってきたということかな
(守須) いえ それも今となっては…
自分で言っておいてなんですが――
中村青司が生きているということ自体 突飛な1つの可能性にすぎませんし
結局は 何も進んでないってことか
(守須) 案外 島へ行ったみんなが 悪ふざけでやったことかもな
江南や僕が心配して 島へ来るかどうかを みんなで賭けてるんじゃないか
(江南) 確かに エラリイあたりが考えそうなことだけど
(守須) そういうわけだから
島田さん 勝手ですみませんが 僕は ここで降りようと思います
うん もちろん構わんよ
うん だけど僕は暇だから もう少し続けてみるよ
どうぞご自由に 僕に止める権利はありませんから
うん
(守須) じゃあ 僕はこれで
明日には この絵を完成させなきゃならないから
(江南) 守須!
悪いけど 俺ももう少し続けるよ
乗りかかった船だし
それに 中村千織のためにも――
このまま 投げ出したくない
好きにしろよ 彼女も きっと喜ぶ
だといいけど
(守須) せいぜい あのおっさんに 振り回されないようにしろよ
ああ
(島田) 彼を怒らせてしまったかな
(江南) 気にすることありませんよ もともとドライなヤツですから
(島田) 残念だよ~ ハァ~ 彼の意見はこれからも聞いてみたかった
島田さん 明日 紅次郎さんの話次第では 俺も島に行ってみようかと思うんです
守須の言うとおり 誰かの悪ふざけなら それに乗せられてみようかと
そうすれば 笑って全部終わりになりますから
(ルルウ) 来るな! 来るな!
ああ… 助けて エラリイ!
中村青司は生きている
(ルルウ) そうだよ! 中村青司に襲われてるんだ! 中に入れて!
(ポウ) 動機は何だ?
動機!? 分かんないよ そんなの!
早く ここ開けて!
(ヴァン) 何かあるのかもしれない 僕たちが思い出さなきゃならない何かが…
何かって何なんだよ! 思い出せないよ!
いいから早く ここを…
うわああー!
(荒い息)
(ルルウ) 中村千織?
うう…
ハア…
中村…?
中村千織…
中村…
青司…?
まさか…
そんな…
(エラリイ) ここで 4人が殺された
誰かがいたんだよ ここに
(エラリイ) この島に潜む誰かに殺されたんだ
(ルルウ) 一瞬 何かが見えたような…
(ルルウ)
ハア…
メイクはもっと明るめにしなくちゃ
フフ…
(アガサ) ちょっとはマシか
(ヴァン) う… ううっ…
ハアハアハア… うっ…
(ヴァンの荒い息)
(ヴァン)
(ドアをたたく音)
(ポウ) どうした?
ヴァン…
(ヴァン) あ… うう… せ… 洗面所に… うう…
(ポウ) お… おい どうした? エラリイ! ルルウ! 起きろ!
また毒だ…
(エラリイ)“第三の被害者”か…
とにかく部屋に運んでやろう 手を貸してくれ
(ポウ) おい ルルウも! ちょっ… (ヴァン) あっ…
(エラリイ) ウソだろ
アガサは“第四の被害者”ってことか?
おい ルルウ!
大丈夫か?
(エラリイ) じゃあ ルルウは…
(ポウ) 入るぞ
(エラリイ) ルルウ!
ルルウー!
ルルウ!
ルルウ!
ルルウー!
ポウ! ヴァン! こっちだ!
(ポウ) この中にいるんだな 4人を殺した犯人が
(エラリイ) 君が一番怪しい
(ポウ) お前だって怪しいだろ!
(島田) 僕らの仮説が正しければ すべて つじつまが合う
許してくれ
俺はバカだ
(ヴァン) 誰がこうなっても おかしくなかったんだよ
(ポウ) ヤツが俺たちを 殺す動機なんて ないだろう!
(エラリイ) 動機なら ある
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