Afrikaans
Akan
Albanian
Amharic
Arabic
Armenian
Azerbaijani
Basque
Belarusian
Bemba
Bengali
Bihari
Bosnian
Breton
Bulgarian
Cambodian
Catalan
Cebuano
Cherokee
Chichewa
Chinese (Simplified)
Chinese (Traditional)
Corsican
Croatian
Czech
Danish
Dutch
Esperanto
Estonian
Ewe
Faroese
Filipino
Finnish
French
Frisian
Ga
Galician
Georgian
German
Greek
Guarani
Gujarati
Haitian Creole
Hausa
Hawaiian
Hebrew
Hindi
Hmong
Hungarian
Icelandic
Igbo
Indonesian
Interlingua
Irish
Italian
Javanese
Kannada
Kazakh
Kinyarwanda
Kirundi
Kongo
Krio (Sierra Leone)
Kurdish
Kurdish (Soranî)
Kyrgyz
Laothian
Latin
Latvian
Lingala
Lithuanian
Lozi
Luganda
Luo
Luxembourgish
Macedonian
Malagasy
Malay
Malayalam
Maltese
Maori
Marathi
Mauritian Creole
Moldavian
Mongolian
Myanmar (Burmese)
Montenegrin
Nepali
Nigerian Pidgin
Northern Sotho
Norwegian
Norwegian (Nynorsk)
Occitan
Oriya
Oromo
Pashto
Persian
Polish
Portuguese (Brazil)
Portuguese (Portugal)
Punjabi
Quechua
Romansh
Runyakitara
Russian
Samoan
Scots Gaelic
Serbian
Serbo-Croatian
Sesotho
Setswana
Seychellois Creole
Shona
Sindhi
Sinhalese
Slovak
Slovenian
Somali
Spanish
Spanish (Latin American)
Sundanese
Swahili
Swedish
Tajik
Tamil
Tatar
Telugu
Thai
Tigrinya
Tonga
Tshiluba
Tumbuka
Turkmen
Twi
Uighur
Ukrainian
Urdu
Uzbek
Vietnamese
Welsh
Wolof
Xhosa
Yiddish
Yoruba
Zulu
<1600年 関ヶ原の戦いで 徳川家康は➡
石田三成の家臣 島左近が放った刺客➡
甲斐の六郎によって暗殺された。
東軍 徳川家の命運は➡
影武者 世良田二郎三郎に 託され➡
その影武者の決断により➡
東軍は関ヶ原の戦いに 見事勝利した。
遅れて参戦した 家康の嫡子 秀忠は➡
重臣たちの影武者続投説を 了解するが➡
密かに 豊臣家を早急に滅ぼし➡
影武者に代わる 二代将軍の座を狙っていた。
二郎三郎を偽者と見破った 家康の側室 お梶の方は➡
二郎三郎の人柄に惚れ 強い支えとなっていく>
< そして 石田三成から➡
豊臣家の安泰を託された 二郎三郎は➡
豊臣家を滅ぼさんとする 秀忠との対立を➡
深めていくのである>
(一同)おめでとうござります。
<将軍宣下からほどなく➡
江戸で 祝賀の儀が執り行われた。
その席上において 影武者 家康と 大納言 秀忠の戦いの幕は➡
早くも切って落とされた>
秀忠。 はっ。
千姫は いくつになられたかの。
七つでございますが。
それが何か。
いや 大坂の秀頼君と どうかと思うてのう。
まさか…。
大坂の秀頼君と 千姫との縁組は➡
ご病床の太閤殿下と この家康が取り交わした➡
誓約である。
千姫付きの者は誰か。
はっ。
その方 豊臣家に申し入れ 話を進めるようにな。
ははっ。
うまく まとまればよいがの。
戦を避けるためには 格好の縁組ですもの。
淀様がお断りになるわけが ございませぬ。
しかし あの大納言 秀忠様が 溺愛されてる あの千姫を➡
すんなりと手放されるかの。
そこは 御内室のお江様が 頼みの綱。
確かに あのお方は 淀様の妹御ではあられるが。
それだけではございませぬ。
大納言様を お尻に敷いていらっしゃいます。
お尻に…。
< お江の方は 姉の淀君同様 気性が激しく➡
夫の大納言 秀忠は 側室を一人もおけぬほど➡
この妻を恐れ はばかっていた>
そなたは 千を嫁にやるつもりなのか。
申すまでもありませぬ。
わしは反対じゃ。
何ゆえでございます。
またとない 良縁ではございませぬか。
なにが良縁だ。
娘を大坂城に 人質にやるようなものではないか。
人質?
馬鹿馬鹿しい。
笑いごとではない。 戦になれば➡
千は殺されることに なるかもしれんのだぞ。
世迷言をおっしゃいますな。
なにが世迷言だ。
そもそも 豊臣家と戦をせぬために➡
千を嫁にやるのではありませぬか。
それとも…。
お前様は 私の姉に➡
戦を仕掛ける腹でも お持ちなのでございますか。
いや さようなことは。
この縁組は 大殿様じきじきの仰せです。
お前様が口を挟むのは 僭越というものです。
千殿 よくこそ まいられましたな。
こうして顔を合わせるのは 何年ぶりでございましょう。
一別以来の世の移り変わりは 恐ろしいほどじゃ。
そなたの嫁御になられる お方ですよ。
まあ 御手ずから もったいのうございます。
<婚礼は この年の七月に行われた。
千姫七歳 秀頼十一歳であった。
一方 伏見城へ戻った 影武者 家康にも➡
おめでたが待ち構えていた>
今 戻りました。
おかえりなさいませ。
お万様が また。
え? あっ へっ…。
また やや子が?
どうして お万様ばかり…。
いや そう言われてもな…。
よほどに相性が およろしいのでしょう。
いててて…。 悔しゅうございます。
< その夏 二人目の男児が生まれ 鶴千代と名づけられた。
そして 翌 慶長九年 更に一人の赤子が産声をあげた。
生まれたのは 秀忠が待ち望んだ男児 竹千代。
すなわち のちの家光である>
大納言様に お世継ぎができた。
まことか?
ついては将軍の位を➡
即刻譲るようにとの仰せだ。
それはできぬ。
また盾をつく気か。
あのお方が将軍の座に就けば 必ず天下が欲しくなる。
天下を我がものとすれば 必ず 豊臣を滅ぼそうと…。
いいかげんにせぬか。
二郎三郎。
おぬしはいったい 誰のために働いているのだ。
お家にとって 価値よりも 害のほうが大きくなれば➡
そのときは容赦なく始末されるぞ。
わかった。
そうか。
じゃがの 弥八郎。
ただでは譲らぬぞ。
ただでは譲らぬとは どういうことだ。
将軍職をお譲りする代わりに➡
駿府を賜りとう存じまする。
今度は何を企んでおる。
他意はござりませぬ。
駿府は 某のふるさと。
そこに城をいただいて 隠居をいたしとう存じまする。
城だと? はい。
何のために。
二郎三郎には 隠居したあとも➡
あくまで大殿として ふるまってもらわねばなりません。
とすれば 当然 城が要りましょう。
聞き届ければ➡
差し出たまねはせぬと 約束するのだな。
二代将軍 秀忠様が➡
この世良田二郎三郎 安寧に暮らせるよう➡
お約束いただければ。
よかろう。
城ひとつ くれてやろう。
忝のう存じまする。
約束は 必ず守る。
はい。
<慶長十年 影武者 家康は➡
征夷大将軍を朝廷に返上し➡
代わって秀忠が 二代将軍となった>
今日という日を迎えられて➡
その方も感慨ひとしおであろう。
恐悦至極に存じまする。
淀殿は わしが秀頼を差し置いて➡
将軍になったというので➡
怒り狂うているそうな。
いっそのこと戦に持ち込んで➡
打ち滅ぼしてしまってはどうか。
時期尚早でございます。
事を軽々しく進めては➡
掴んだばかりの将軍の座も➡
手の中から こぼれ落ちまするぞ。
大儀じゃ。
駿府のお城は いつ出来上がるのです?
これから縄張りだと聞いたから➡
あと一~二年 先のことであろうな。
私 待ち遠しゅうございます。
そうか はははっ。
わしはのう お梶殿。
駿府を豊臣でも徳川でもない➡
人々が分け隔てなく➡
豊かに暮らせる地にしたいと 思うておる。
誰もが仕合わせよく生きられる 自由の天地でございますね。
そうじゃ。 そこに住む者は 年貢を納める必要もない。
働けば働いた分 自分のものとなる。
年貢も取らずに 大御所様は➡
どうやって暮らしを 立てるのです?
はははっ。
かの太閤殿下のように➡
海の向こうの国々と交易を進めて 金銀を溜める。
それでよい。 ははっ。
夢じゃ ははっ。 夢じゃ はははっ。
やや子が生まれる前に 移り住みとうございました。
やや子?
やや子…。
さぁ。
さぁさぁ。 どこへ?
♬~
何を泣いておられるのです?
久しく こんな嬉しいことはなかったわ。
あぁ ええなぁ この世は。
はよ 飲んで。
ええなぁ ええなぁ。
なぁ お梶 踊りの輪に 加えていただこうか。
あ?
おぉ 元気じゃ元気じゃ。
はははっ。
入れてくれ 仲間に入れてくれ。
♬~
ええなぁ ええなぁ。
ええなぁ ええなぁ。
< それから二年の歳月を経た 慶長十二年。
影武者 家康は 齢六十五に達していた>
医者は何と?
疲れではないかと。
関ヶ原以来 溜まった疲れが 一度に出たのでございましょう。
こんなときに申し訳ないが わしは ここを離れねばならぬ。
どういうことじゃ?
今後は江戸に詰めて➡
将軍家の補佐に 専念せよとのことでな。
弥八郎 いや それは困る。
わしの相談相手が いなくなる。
倅の正純が わしの代わりを務める。
おい。 ははっ!
お久しゅうござりまする。
これまでのいきさつは すべて明かしてある。
何なりと お申しつけください。
秀康様 どうなされました。
京へ出たついでに 父上のお顔を見に来た。
来てくれて ちょうどよかった。
折り入って 秀康 そなたに 頼みたいことがあってのう。
何でございましょう?
大坂の秀頼君のことだ。
もし わしが 死するようなことあらば➡
江戸の将軍家 秀忠は➡
大坂の豊臣家に対し➡
兵を挙げるに違いない。
わしはのう 秀康。
豊臣 徳川両家が 並び立つことこそ➡
天下にとって望ましいことじゃと 思うておる。
そこでじゃ なんとしても戦を避けるため➡
秀康 そなたに尽力をしてもらいたい。
尽力と申しますと?
秀頼君の後ろ楯となり➡
豊臣 徳川の仲を 取り持ってもらいたい。
何か。
お手前は 本当の父上ではない。
そうでございましょう。
お気づきでござりましたか。
いかにも 某 徳川家康公の影。
世良田二郎三郎と 申す者にござります。
ご無礼の段 ご容赦くださりませ。
前に 越前の国を賜ったお礼を 申し上げましたとき➡
私にかけてくださいました お言葉が➡
父上らしからぬ温情に 満ちたものでありましたゆえ➡
もしやと。
なんと…。
あのとき 本当の父上には 感じたことのなかった➡
親の温もりを 私は なぜかお手前から。
忝う存じまする。
できますれば 今後も父上として 仰いでまいりたいと。
もったいのうござります。
大坂の秀頼君のこと お願いできまするか?
申すまでもございませぬ。
あははははっ…。
ご機嫌斜めか? あはははっ。
一昨年 お梶が産んだ 姫君じゃ。
市姫と申しまする。
おお 母君そっくりの 美人におわす。
兄者が伏見城へ?
このところ 足繁く お出入りなさっているご様子。
どういうことだ?
秀康様の武辺は 天下に聞こえておりまする。
味方にして これほど 心強いお方はございますまい。
影武者め 兄者と手を結んで わしに敵対する気か。
それとも 上様を 将軍の座から追い落とし➡
秀康様をお跡に。
まさか…。 あり得ぬことではございますまい。
殺せ。
生かしておくには➡
兄者はあまりにも 人望があり過ぎる。
秀康様を殺せと? 何をためらうことがある。
我らは 柳生の命運を 徳川秀忠という男に賭けたのだ。
賭けたからには 勝つために手段は選ばぬ。
気をつけて人数を揃えろ。
こちらの素性を知られぬようにな。
♬~
三左衛門!
新陰流に泥を塗る気か。
その方は? 柳生兵庫助と申しまする。
忝い。 礼などはどうかご無用に。
先ほどの刺客 拙者の叔父の 手の者らしゅうございます。
叔父とは? 柳生宗矩。
なんということだ。
すまぬが 伏見の大御所様に 使いを頼む。
お呼びでございましたか。 秀康が➡
柳生の配下に襲われたと聞いた。
その方 すぐに江戸に下り➡
将軍家に 宗矩が首 差し出すよう申しつけい。
その儀は 考え直されましたほうが およろしいかと。
何ゆえじゃ? 申しつけたところで➡
将軍家がお聞き届けに なろうとは思われませぬ。
聞かねば 力尽くで 宗矩が首 討ち取るまで。
恐れながら それは秀康様の 望むところではございませぬ。
秀康様は 憎しみから 兄弟が相打つようなことだけは➡
避けねばならぬと。 大御所様におかれましては➡
むしろ 家中のものの暴発を 取り静めていただきたいとの➡
仰せでございます。
申し上げます。
どうした? はっ。
秀康様が先ほど 息を 引き取られたよしにござります。
なに?
なんという 愚かなことをなされたのです!
黙れ。 弟が兄に➡
害をなすなどということは 天の許し給わぬところですぞ。
ことが公になれば なんとするつもりです。
将軍家の威信は 地に堕ちまするぞ。
しかし 秀康は 影武者に籠絡されて➡
将軍家に 敵対しようとしておられた。
何を申すか!
放っておけば 影武者と手を結び➡
お家に 仇をなされたに 違いないのだ。
おっしゃるとおりです。
その方に何がわかる。
二郎三郎は 決してさような➡
陰謀めいたことをする男ではない。
父上は 二郎三郎と昵懇ゆえ➡
お目が曇っておられるのです。
かの者は影武者の分際を越えて➡
豊臣家と己の身を守るために➡
お家に害をなそうとしております。
もはや見過ごしにはできぬ。
目に物 見せてやらねばならぬ。
< この年の七月 駿府に城が完成した。
影武者 家康は 側室や子供たちを引き連れて➡
念願の地に移り住んだ>
お梶 この駿府はのう 西国と江戸を結ぶ街道上にある。
将軍家を抑える重要な地じゃ。
兵庫助殿 よう足を運んでくだされた。
わざわざ使いを くださいましたのは➡
どのような 御用向きで。
兵庫助殿を この駿府の城に 招きたいと思いましてな。
知行は いかほどでもかまわぬ。
過分のお申し出 忝くは存じまするが➡
拙者には今は 仕官の望みは。
まぁ そう言われるな。
あははっ しばし この駿府の 地にて 見物などされながら➡
ゆるゆると 考えられてはいかがかな?
どうなさったのです?
駿府の見物かたがた 様子を見にな。 おふうは?
お梶様のおそばに。
なにか変わった様子はないか?
特には ございませぬが。
こちらは 柳生兵庫助様でございます。
柳生?
同じ柳生一門でも 剣の志は一様ではない。
拙者と叔父とでは 表と裏ほどの違いがござる。
お手前は表か? 言うまでもないこと。
叔父 宗矩は 柳生の庄の 当主におさまる代わりに➡
将軍家の望むがままに➡
門人たちを 暗殺の道具に使っております。
己の栄達と引き換えに 流儀を売り渡したわけか。
拙者は 流儀の正統を 継いだものとして➡
なんとしても 叔父を倒さねばなりませぬ。
だが そうなれば 将軍家まで 敵にまわすことになるぞ。
もとより その所存でござる。
今夜 大御所のお命を頂戴する。
将軍家の御上意である。
ためらわずに斬れ!
連れていくか。
♬~
(泣き声)
どうぞ!
(悲鳴)
お市が!
お梶 お梶! (おふう)お梶様は 私が。
殿 こちらへ。
うっ!
殿 お逃げくだされ!
♬~
ぐわっ…。
♬~
世良田二郎三郎。
おぬしの命運も ここで尽きたようだな。
小太郎殿 かたじけない。
(兵庫助)叔父上!
刀を引かせてください。
兵庫助 邪魔立てをいたすな!
六郎 奥へ。 はっ。
ここは一対一で➡
柳生の剣の正統を賭けて 勝負しようではありませぬか。
わしの剣に正統も邪道もない。
剣法など柳生の家を興し➡
名を高めるための方便に過ぎぬ。
刀を収めよ。 卑劣なまねをして 新陰流を貶めてはならぬ。
♬~
助左衛門 助左衛門。
うっ… おお ぶ… 無事でござったか。
助左衛門 傷は浅いぞ。
嘘をつけ…。
お… おぬし うっ…。
おぬしの役に立てて わしは… 本望だ。
なにを… 助左衛門。
助左衛門…。
助左衛門… 助左衛門…。
(泣き声)
お市が…。
お市…。 お市…。
♬~
言い訳など聞きとうない。
即刻 駿府へ取って返して 影武者めの首を取ってまいれ。
しかし 今となりましては…。 できぬと申すのか。
はっ。
もはや敵は 一分の油断もなく 警戒しておりましょう。
(笑い声)
どうしても行くのかね。
今は 一刻も早く 柳生の庄へ帰って➡
一門のために 力を尽くさねばなりませぬ。
できうれば ここに留まり➡
剣法指南かたがた 長福丸 鶴千代の➡
行く末を見守ってもらいたいと 思うたのだが。
拙者は まだ 修行中の身でございます。
わかった。 もう引き止めまい。
命を無駄になされまするな。
もし気が変わったら ここへいつでも戻ってこられよ。
<柳生兵庫助が 兵法指南役として➡
尾張徳川家に仕えたのは➡
これより八年後の 元和元年のことであった>
<本多忠勝が 駿府城を訪ねてきた>
忠勝殿。
姫君を亡くされたと聞き➡
遅まきなれど ひと言➡
詫びを申し上げねばと 思いましてな。
人として 子を失うことほど➡
世の中 悲しいことはござらぬ。
つらい目に遭わせたと➡
誠に申し訳なく思っておりまする。
いや… 何も 忠勝殿が詫びることなど…。
いや そこ許を大殿に仕立て上げた 張本人はこのわしじゃ。
そのために そこ許には 随分と➡
苦しみを味わわせてしまった。
いや…。
忠勝殿。
わしは そのおかげで 子を持つ喜びを➡
味わうことができもうした。
振り返れば 苦しいことばかりでは ござりませなんだ。
いやぁ しかし 早いものですなぁ。
関ヶ原の合戦から もう十年も。
はははっ。
これほど長う 大殿を生きようとは➡
あのときは 思いもよりませなんだ。
よくぞ ここまで やりとおしてくれた と➡
わしは 感服しておる。
しかし そこ許には まだ頑張ってもらわねば。
江戸の将軍家では 近頃➡
鉛や 火薬を大量に 買い込んでいるそうだ。
ということは…。
いよいよ 始めまするのか?
誰も望まぬ戦をな。
あのお方は 関ヶ原の戦に 遅参した恥をそそごうと➡
必死でござる。
まるで 餓鬼でござる。
しかし そのために 多くの者が死ぬことになる。
戦を仕掛けずとも 豊臣家は 時が経てば➡
しぜんに衰えるのだ。
この戦 なんとしても 止めねばなりませんな。
それができるのは その方だけだ!
忠勝殿➡
また 何もかも この世良田二郎三郎に➡
背負わせるおつもりで ござりまするか。
いや まぁ そう言わずに。
これが わしの最後の頼みでござる。
大殿!
<忠勝が世を去ったのは➡
それから 間もなくのことであった>
<数か月後 影武者 家康は 城下の寺に➡
盟友 島左近を密かに招いた>
実は 左近様➡
お力をお借りせねば ならぬことが➡
持ち上がりましてな。
何か差し迫った事態でも?
江戸の将軍家は 豊臣家を滅ぼすべく➡
戦の支度を整えておりまする。
いずれ こうなると わかってはいたが…。
ただ この戦➡
回避する手立てが 一つだけござりまする。
秀頼様が ただの大名に身を落とし➡
徳川家に臣従する。
そのとおりでござります。
豊臣家が進んで 徳川家に 恭順の意を示せば➡
戦の大義名分は失われまする。
だが 恭順と申しても➡
どのような形で表すのだ?
秀頼殿に 二条城に出向いていただき➡
このわしに 臣従の礼を とってもらえばよい。
問題は 淀殿が それを承諾するかどうかだ。
しかし 今度ばかりは➡
秀頼様を 外に出していただくよう➡
淀殿を説得して いただけねばならぬ。
それには わしよりも うってつけの男がいる。
加藤清正殿だ。
そなた 秀頼に 二条城まで わざわざ➡
頭を下げに出向け と 言いやるのか?
御意。
とんでもないことでございます。
そなた いつから関東に➡
尻尾を振るようになったのじゃ?
天下泰平を願う気持に 関東も上方もござりませぬ。
それとも お方様は つまらぬ体面にこだわって➡
御歳十九の若君に 戦をさせることをお望みか!?
(大蔵卿)なれど お方様。
これが謀りごとならば 何といたします?
謀りごと?
秀頼様をおびき出して 害し奉ろうという。
大御所ともあろうお方が➡
世の謗りを一身に浴びるような➡
さような 愚かなまねをするはずは ござりませぬ。
わかりました。
承知していただけますか?
占いで吉と出れば。
吉と書き改めよ。
さようなことをして 秀頼様に もしものことがあれば➡
わしの命はない。
言うことを聞かねば この場で命がなくなるぞ。
もっと下。 下。
念のため 今一度 占ってみよ。
はっ。
何度占っても 同じでござる。
母上 私は二条城へまいります。
なりませぬ! 万が一 襲われでもしたら…。
千のおじじ様が なんで私を 殺すことがありましょう。
よくぞ仰せになりました。
こうと決まったうえは この清正がお側を固め➡
何事があろうと 必ずお守りいたします。
ご安心召されよ。
<二条城での対面は➡
慶長十六年 三月二十八日に行われた。
この日 秀頼を 真っ先に出迎えたのは➡
頼宣 頼房と名を改めた➡
影武者 家康の子供たちであった>
いや よく おいでくだすった。
千が よろしくと 申しておりました。
おぉ さようか。
いや 立派になられましたな。
この日より 豊臣家 徳川家ともに和すのじゃ。
幼き頃よりの友は終生の友じゃ。
のう? 頼宣 頼房。
(頼宣/頼房)はい。
< しかし 二条城の対面から二か月後➡
豊臣家 徳川家 両家のために尽くした➡
加藤清正が この世を去り➡
早くも 豊臣家に 暗雲が垂れ込めた>
<事件は 突然 起こった>
<京都 方広寺の大仏殿のために➡
豊臣家が鋳造させた吊り鐘の銘が 不届きであると➡
幕府から譴責を受けたのである>
いったい 何が不届きだというのです?
この「國家安康」というくだりが➡
家康公の御名を断ち割って 呪詛するものである と…。
それは 言いがかりというものじゃ。
ですが 急ぎ 駿府へ下って 申し開きをいたさねば!
申し開きなどして 何になる!
これは 戦を始めるための口実!
これほど うまくいこうとは 思わなかった。
さようでございますか。
あのような 見え透いた言いがかりに➡
本気で食いついてこようとはのう。
人を怒らせるには➡
少々 露骨なくらい 吹っかけて ちょうどでござる。
戦にもっていくには あと ひと押し。
<豊臣家の家老 片桐且元は 釈明のため 駿府へ下った>
大御所様に お目通りを願いとうござる。
その必要はござらぬ。
今更 言い訳を聞いたところで 無駄というもの。
なれど あの銘は 南禅寺の長老に書かせたもので➡
当家としては いちいちの文言までは…。
黙らっしゃい!
和解をお望みならば➡
三つの条件を 飲んでいただかねばならぬ。
一つ 大坂城を明け渡し 秀頼殿が他国へお移りになること。
一つ 秀頼殿が 江戸へ参覲すること。
一つ 淀の方を人質として 江戸へ差し出すこと。
邪魔をするぞ。
正純…。
そなた 片桐且元殿を➡
わしに断りもなしに 追い返したそうだな。
さすがは お耳がお早い。
すぐに呼び戻せ。
呼び戻して どうなさるおつもりです?
方広寺の鐘の一件➡
大御所の名を騙った 謀りごとだと且元殿に知らせる。
何をなさろうと かまいませぬが 江戸の将軍家は➡
もはや 戦を思いとどまることは ございませぬぞ。
将軍家に その気がのうても➡
この世良田二郎三郎 戦を止めてみせるわ。
どうやって?
このわしが 徳川家康公の 影であることを暴露する。
さすれば 徳川家の権威は失墜し➡
豊臣に味方する者も 大勢 出てこようのう。
おやめなされ。
さようなことを言ったとて 誰が信じます?
そこ許は もう 大御所そのものに なってしまっている。
今更 影武者などと 言ったところで➡
乱心したと思われるのが 落ちでござろう。
ふふふふふ…。
正純…。
そなた 弥八郎… いや 父 正信と違うて➡
こざかしい男よのう。
通りまする!
申し上げまする。
ただ今 駿府より 大御所の使いと 称する者がまいり➡
目通りを願っておりますが。 大御所の使いだと?
はっ! お梶と申す女子でございます。
お梶?
御用件を承りたい。
それは 淀様とお会いしたうえで。
何が目当てだ?
何か企みがなくては➡
女が一人で 敵のまっただなかに 飛び込んでは来まい?
無礼は許しませぬぞ!
待て待て! 乱暴はいかん。
左近様!
お方様が 目通りを許すとの仰せだ。
かようなところで お会いできましょうとは➡
天の助けでございます。
まいりましょう。 某が案内つかまつる。
近う。
お梶殿 懐かしいぞよ。
私 お方様のお顔を拝しますのは 初めてでございますが。
会ったことはなくとも そなたのことは よく覚えている。
秀頼が七つのときに賜った あの羽織の美しかったこと…。
今に忘られぬ思い出じゃ。
まぁ…。
あのようなものを それほどまでに…。
駿府から わざわざ まいられるとは➡
なんぞ 大事な用向きでも?
はい。
大御所様から 言づけを預かってまいりました。
言づけ…。
このままでは 豊臣家は滅んでしまいます。
戦をやめて➡
城を明け渡すようにとのことで ございます。
城を明け渡して どこへ行けというのじゃ?
どこであろうと 生きてあれば➡
大御所様が後ろ盾となって 秀頼様を守ってくださいます。
守る?
ふっ…。
なぜゆえ 大御所様が 仇ともなる秀頼を?
お方様…。
あれは…。
本物の大御所様ではございませぬ。
影武者の 世良田二郎三郎と申す者で➡
秀頼様が七つのときから ずっと➡
豊臣家のお味方を してまいりました。
世良田二郎三郎…。
秀頼様のお味方をすることは➡
天下を徳川家の思うままに させぬことであり➡
影武者が自分の命を 守ることでもありました。
どうか 私を信じて➡
戦を思いとどまってくださいまし。
秀頼様とお方様のお命は 必ず お守りいたします。
お梶殿 よく打ち明けてくれました。
お方様?
実はのう 関ヶ原の戦ののち➡
家康殿は すぐにも我らを 攻めてくると思っておりました。
そんな折 あの羽織を賜って➡
意外な思いがいたしました。
今までの家康殿とは何かが違う。
何かが… 違う。
そなたの羽織が そのことを教えてくれました。
お方様…。
大御所様… いえ 世良田殿と お梶殿の志➡
ありがたく思います。
では 城を 明け渡してくださいますか。
それはできませぬ。
何ゆえでございます。
この城を捨てるということは➡
家臣たちを見捨てることです。
あの者どもを見捨てて➡
どうして私と 秀頼だけが 生き延びることができましょう。
お方様。
私は最後まで 豊臣家の誇りを守りたいのです。
お方様。 将軍家が五万の軍勢を率いて➡
伏見城に 入城したそうでございます。
長居は無用です。
駿府まで 気をつけて帰るのですよ。
おい 急げ!
まだ諦めるのは早うござる。
機を見て和議に…。
左近殿は そう仰せか?
はい 自分は城の内に在って 淀様を説得する。
二郎三郎殿には 城の外に在って 将軍家を押さえてほしい と。
誰かおるか? はっ!
おお 出陣をする。 支度を急げ。
はは!
<大坂城では すでに 激戦が繰り広げられていた>
< この冬の陣で 将軍 秀忠率いる包囲軍を➡
最も苦しめたのは➡
城の南 天王寺口を守る 真田幸村であった>
何を攻めあぐんでおる!
敵はたかだか 牢人の寄せ集めではないか!
はは! しかし 采配をふるうのは➡
真田左衛門佐でござい…。
言い訳は聞きとうない! 恥を知れ!
(兵士たち)ははっ!
少しは 落ち着きなされよ。
落ち着いてなぞ いられるか。
真田には 関ヶ原の合戦の折も➡
煮え湯を飲まされたのだぞ。
ならば まともにやり合っても 分がないことは➡
おわかりでございましょう。 なに?
ここは搦手から 攻めるべきでございます。
搦手?
所領を餌に 味方に引き入れるのでござる。
<幸村への 使者として 徳川方の陣中に在った➡
叔父の真田信尹が遣わされた>
叔父上 お久しゅうござる。
戦国の世の常とはいえ➡
敵同士として 相まみえようとはのう。
いかがなされました?
将軍家のご内意を 伝えにまいった。
まずは 天下に比類なき その方の働き➡
あっぱれじゃ!
将軍家が さよう仰せか。 はははは!
いいや これは わしの感想じゃ。
叔父上。 御用件お仰せください。
将軍家はのう その方が 大坂城を見限って➡
徳川の味方に参ずるならば➡
信濃一国を宛がうと仰せじゃ。
失うた所領が 何倍にもなって 戻ってくるのじゃ。
お受けすべきであろう。
せっかくではございますが それは いたしかねまする。
馬鹿を申すな。
関ヶ原で 戦に敗れてから十四年。
徳川によって 高野山に 蟄居させられていた某を➡
最初にお取り立てくださったのは 秀頼公でござる。
その恩義の重きことを思わば➡
信濃一国は申すに及ばず➡
日本国を半分賜ろうとも➡
筋を曲げることは出来ませぬ。
さようか。
叔父上 某は初めより 討ち死にを覚悟しております。
華々しく戦って➡
武士の本懐を遂げることよりほか なんの望みもござらぬ。
よくぞ申した。
今の一言 千の功名にも優る。
真田の家の誉れじゃ。
叔父上 これが今生の別れでございます。
信濃一国を蹴ったと申すのか?
はっ! 所領に 望みはないそうでございます。
武将などという輩は➡
扱い難うございますな。
幸村め! わしへの面当てか!
目にもの見せてくれる!
明日は 総掛かりで真田を攻め潰す!
各々 覚悟を固めよ! (兵士たち)はっ!
只今 大御所様が お着きになられました。
秀忠。 昨日一日の戦で➡
二千もの兵を失のうたと聞いた。 まことか?
明日こそは 更なる人数をかけて 一気に揉み潰す所存にて。
たわけたことを申すな!
真田ほどの戦上手が➡
命を懸けてかかっておるのじゃ。
力押しなどすれば やたらに 兵を失うばかりではないか。
よいか!
みだりに攻め掛けてはならぬぞ! (兵士たち)はっ!
今日はいつになく 静かでございますな。
お気づきでございましたか?
そういえば 鉄砲の音が一つも。
ほんに嘘のような。
なぜだか おわかりか?
世良田二郎三郎が 着陣したからでござる。
世良田?
お梶殿より お聞きおよびでござりましょう。
世良田殿が…。
何者でございます? その世良田と申すのは。
この城の救いの神だ!
和議を結ぶなら 今でござります。
何を言うか! 勝っている我らが なんで和議を結ばねばならぬ!
この勝ちは長くは続かん!
お方様さえ その気になれば 大御所はいつにても➡
和議に応じられまする。 黙れ! 不届き者!
すまんが外してくれぬか。
(兵士たち)はっ!
島左近殿が捕らえられた?
淀君様に和議を お勧めしたところ➡
家来どもが騒ぎ立てまして。
困ったものだ。
淀君様を動かすには➡
まず取り巻きを 何とかしなければ。
うむ。
女官どもを脅してみるか。
撃て!
(砲弾の飛来音)
(悲鳴)
(悲鳴)
二郎三郎め やりおるわ。
<瞬く間に 和議は成立した>
<豊臣側の出した講和の条件は➡
秀頼の身の保障と本領の安堵➡
そして 城方の将兵の罪を 問わぬことの三点であった>
< これに対して 将軍 秀忠から 出された条件はただ一つ➡
大坂城の外堀を埋め立てること であった>
お梶 今 帰った。
お梶!
あはは。 まあ 嬉しそうなお顔。
うまくいったのでございますね。
おう 思惑どおり 事が運んだ。
ははは 和議に 持ち込むことができたぞ。
それは おめでとうございます。
今宵は祝杯を あげねばなりませぬな。
そうじゃな はは。
(二人)父上 お帰りなさいませ。
頼宣 頼房 しっかりと留守はできたか?
(二人)はい!
次は私も お供がしとうございます。
ふふふ 連れてってやろうな。
(戸が開く音)
おい!
どうしたのです!?
大坂から走り詰めで 帰ってきたんだ。
水を…。
大坂城で 何があった? 将軍家に謀られました。
どういうことだ? 大坂城では➡
和議の翌日から早速 外堀の埋め立てが行われまして。
いや しかし それは 誓紙で交わした約束だ。
ですが 外堀に続いて➡
約束にない内堀まで ことごとく埋め立てを。
内堀まで… まさか。
城方では それを 黙って見ていたのですか?
いえ すぐに 異議を申し立てましたが➡
将軍家は 途方もない人数をかけて 土居も石垣も突き崩し➡
わずか数日で 埋め尽くしてしまったのです。
それでは 城は裸同然ではないか。
<将軍 秀忠は 八万五千の軍勢を率いて➡
伏見城から出陣した>
治長殿 城を打って出るというのは まことでござるか?
この城は もはや籠城には耐えぬ。
坐して死を待つよりは➡
野外にて一戦に及ぶべし ということで 評議はまとまった。
一戦して 勝てる見込みがあるのか。
秀頼様のお為を思えば➡
ここはむしろ 牢人衆を召し放ち➡
城を開いて 徳川に降るべきではないか?
それ以外に 秀頼様の生きる道があるか!?
< その頃 影武者 家康も➡
四万の軍勢を率いて 出陣していた>
弥八郎 どうした。
おぬしの腹の中を 確かめておこうと思ってな➡
馬を飛ばしてきた。
腹の中? どういうことじゃ。
とぼけてはいかん。
おぬし また何か やらかすつもりだろう。
そうでなければ 四万もの手勢を率いて➡
出陣してくるわけがない。
将軍家を討つつもりなのか?
そのとおりだ。
あの男は汚すぎる。 許すわけにはいかん。
その気持 わからんではないが➡
思いとどまったほうがよい。
止めても無駄だ。
今度の御陣には 御長男の 頼宣殿も随行しておられる。
頼宣が どうしてだ?
おぬしが駿府を出陣したあとに わしが城から お連れしたのだ。
弥八郎 おぬし 頼宣を どこへ連れていった?
将軍家のお側に。
なにしろ十四歳で初陣だからな➡
何も知らずに 張り切っておられる。
弥八郎! 安心しろ。
おぬしが大人しくしていれば 頼宣殿の身に何事も起こらぬ。
弥八郎 おぬしを見損のうたぞ。
二郎三郎 おぬし 変わったな。
いや 変わったのは わしのほうか。
わしはな 徳川の家臣だ。
暴君といえども 仕えねばならぬ。
<夏の陣 最後の戦いは➡
五月七日に行われた。
この日 茶臼山へ向かった 影武者 家康の本陣を➡
待ち構えていたのは 真田幸村であった>
金扇の馬印 家康公に 間違いございませぬ!
うむ 大御所と道連れならば➡
武士の面目 これに 過ぎたるものはない 進め!
(一同)おお~っ!
殿を守れ! 殿を守れ!
敵が攻めてまいります。
旗印は見えたか?
六文銭!
真田幸村か 幸村ならば 討たれてやってもよい。
何をおっしゃいます!
わからぬか。 まことの武将に討たれるのは➡
もののふの本望という この気持が。
馬鹿をおっしゃいますな!
死なせてしまっては お梶様に恨まれます。
ぐずぐずするな!
<正午に始まった戦闘は 午後三時に終わった。
幸村討ち死にの報せが伝わると➡
城方の士気は一気に衰えた>
<一方 これにより勢いを得た 徳川勢は➡
大坂城に攻め入り 火の手があがった>
大坂城から煙が上がっております。
なんと!
千姫を死なせてはならぬ。
嫁にやったのは このわしじゃ。
お任せください。
馬鹿なまねはよせ。
この姫は 大事な人質。
我らが死ぬときは道連れにして➡
一矢なりとも 将軍家に報ゆるのじゃ。
姫君に何の罪があるというのだ。
お方様。
千は 秀頼の嫁じゃ。
我らと生死をともにするのが 道理でありましょう。
しかし ただ お死なせ申すより➡
僅かな望みでも 将軍家のもとにお返しして➡
秀頼様の助命を➡
嘆願していただくべきでは ござりませぬか。
お方様。
何とぞ。
将軍家は そなたを 大層 慈しんでおられたのう。
左近 そなたの申すとおりじゃ。
たとえ 僅かな望みであっても 何もせぬよりはまし。
頼みましたぞ。 しかと心得ました。
殿! 千。
嘆願などせんでよい。
みじめな思いをするだけだ。
嫌です 嫌です 嫌です 秀頼様!
(六郎)左近様!
六郎 姫君を将軍家へ。 はっ。
さあ。
(悲鳴)
待て! 待て!
さあ。
止まれ。 お待ちください。
このお方は 将軍家のご息女でござる。
これは なんと。 さあ こちらへ。
千姫様 只今 お着きでございます。
お願いでございます。
秀頼様のお命を お助けくださいまし。
お願いでございます 秀頼様を。
偽物ではあるまいな。
確かめよ。
お願いでございます 秀頼様をお助けくださいまし。
父上様 お願いでございます 父上。
秀頼様のお命を お助けくださいまし。
父上!
お待ちください お方様。
蔵に隠れても いずれは見つかります。
今のうちならば 城を抜け出せるやもしれません。
そなた 秀頼を落としてくりゃるか。
秀頼様お一人ならば➡
いずこかへ お匿い申し上げ 某がお世話を。
生きていれば いつかは再会の道も開けよう。
行きなさい。
わしは 世に隠れ住んでまで 生きていたくはない。
何をおっしゃいます。
みじめに生き延びるよりは➡
ここで 潔く死んでしまうほうがよい。
鉄砲隊が こっちへ向かってきます。
秀頼様のために これまで 石田治部少輔様をはじめ➡
何人もの男が死んでいきました。
その者たちのためにも 諦めてはなりませぬ。
すまぬ 左近。
秀頼様。 もうよい。
秀頼の言うとおりじゃ。
生きて苦難を忍ぶよりは➡
美しく滅んでしまうほうが➡
豊臣家には ふさわしいのかもしれぬ。
さらばじゃ 左近。
お方様。
♬~
秀頼様!
左近様!
♬~
千姫は どうした?
ご無事です。 ああ。
でも 左近様が。
左近殿が どうなされた?
秀頼様と一緒に。
<翌五月八日 大坂城は落城し➡
豊臣家とともに灰燼に帰した>
大願成就とは このことじゃ。
天下をざっと見渡してみても➡
わしに対抗し得る者は もはや 一人もおらぬ。
祝着この上もございませぬ。
ただし まだ一つ やり残したことがある。
影武者めの始末でございますか。
何じゃ その顔は。
天下を取りましたからには➡
もはや 捨て置いてもよかろうかと。
それでは わしの腹が癒えぬ。
それにな あやつの面を見るたびに➡
いまだに 父上に 頭を押さえられているようで➡
不快でたまらぬ。
なんとしても 生かしておくことはできぬ。
やつの子供も始末するのだ。
来い。 はい。
はぁ!!
えい やあ!
頼宣 頼房を殺せと 秀忠は命じたのじゃな。
将軍家は執念深い。
目的を達するまで➡
何度でも 刺客を差し向けてくるだろう。
頼宣 頼房の命を守るためならば 我が命など惜しゅうはない。
もののふとは どういうものか➡
あの秀忠に思い知らせてくれるわ。
待て 待て。 どこへ行く。
あっ… おい!
あっ… おっ… 大御所…。
なんだ 突然。
秀忠。 おぬしには愛想が尽きた。
忘れたか?
おぬし 断じて 我が子には 手を出さぬと約束をした。
その約束をたがえた。
ゆえに お前を…。
撃つ。
どいてくだされ 柳生殿。
おどきくだされ。
お待ちくだされ。
どうか こたびばかりは ご容赦を。
いいや 許すわけには まいりませぬ。
曲げてお願い申し上げまする。
某の一命に代えましても➡
将軍家を必ず お諌めいたしまする。
宗矩 何を申すか。
わしは 子を殺せなどと 命じた覚えはない。
秀忠。
この期に及んで まだ そのような言い逃れを。
嘘ではない。
あ…。
頭か 心の臓か。
撃つな… わしが悪かった。 許してくれ。
このとおりだ。 頼む。
撃つな…。
撃つな! 父上!
秀忠。
二代将軍 徳川秀忠殿。
世良田二郎三郎 これにて おいとまつかまつりまする。
♬~
何をしておる 追え!
追いかけて殺せ!
奴は 紙一重のところで 命を助けてくれたのですぞ。
それを ありがたがれと申すのか。
あの男は もはや 役目を終えたのです。
放っておけばよいでは ございませぬか!
よかろう。 あやつの命は助けてやろう。
だが 子供は生かしてはおかぬ。
ふん そのほうが おもしろい。
生きて我が子が 殺されるのを見るほうが➡
あやつにとっては 辛かろうからのう。
ははは…。
(笑い声)
その方 何者だ。
風魔の頭領 小太郎。
昼間 言い忘れたことがあってな。 それを伝えにまいった。
よいか。 二郎三郎殿のお子たちに 何事かあれば➡
己の命もなくなるものと思え。
風魔ごときを わしが 恐れるとでも思っているのか。
その方どもの根城を 焼き打ちにするぐらい➡
わしにとっては たやすいことだ。
いかに将軍家でも 風魔を根絶やしにはできぬ。
我ら道々の輩は 姿を変え 場所を変えて➡
脈々と生き続ける。
徳川の世が 滅びることはあっても➡
我らが死に絶えることは ない。
< それから およそ百年後の正徳六年。
七代将軍 家継の死によって➡
秀忠の血は絶え➡
かわって 八代将軍の座についたのは➡
影武者 家康の嫡子 頼宣の血を受け継いだ➡
紀州藩主 徳川吉宗であった。
おふうは 玉のような男の子を産み➡
風魔小太郎の血脈も保たれた>
<影武者 家康は➡
重い病の床にあった>
まあ。
起きたりして 大丈夫でございますか。
はは 今日は 久しぶりに気分がいい。 はは。
それは よろしゅうございました。
はあ。 (祭囃子)
どこぞで 祭りでもやっとるのか。
神社で お囃子の稽古を しているそうでございます。
ほう。
以前 二人で城を抜け出して➡
踊りにいったことが ございましたな。
あったな。 ははは。
また抜け出してみるか。
へへっ。
ほほほほ。
《風が鳴っている。
ああ… 懐かしい音だ。
風は常に わしの友だった。
幼い頃 村をさまよった日々も➡
信長を撃ったときも➡
いつも風の音が聞こえていた。
思えば 家康の影としての数年だけが➡
風と無縁の日々だった。
だが 家康が死んで➡
身代わりとなった頃から➡
また風が帰ってきた。
ははは… おもしろかったな。
しみじみ そう思う。
人のことは知らぬが➡
わしの人生は 退屈することはなかった。
家康の 身代わりとなった十五年間➡
心の休まる暇もない 緊張の連続だった。
それだけに 目もくらむばかりに おもしろかった。
何の不足もなく 悔いもなかった。
ははは… ようやった。
わしは 信長でも家康でもない。
どこにでもいる ただの人だ。
それも一所不在の野良犬だ。
しかし 野良犬にしては ようやった。
はははは…》
思えば わしの一生は➡
風に吹きっさらしじゃった。
でも あなたと一緒にいられて➡
私は幸せでした。
わしも… 幸せじゃった。
<世良田二郎三郎が➡
眠るがごとく 息を引き取ったのは➡
元和二年 四月のことであった>
Can't find what you're looking for?
Get subtitles in any language from opensubtitles.com, and translate them here.