All language subtitles for Kagemusha Tokugawa Ieyasu 2
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1
00:00:34,730 --> 00:00:39,167
<1600年 関ヶ原の戦いで
徳川家康は➡
2
00:00:39,167 --> 00:00:42,521
石田三成の家臣
島左近が放った刺客➡
3
00:00:42,521 --> 00:00:47,075
甲斐の六郎によって暗殺された。
4
00:00:47,075 --> 00:00:49,678
東軍 徳川家の命運は➡
5
00:00:49,678 --> 00:00:53,048
影武者 世良田二郎三郎に
託され➡
6
00:00:53,048 --> 00:00:55,234
その影武者の決断により➡
7
00:00:55,234 --> 00:01:00,205
東軍は関ヶ原の戦いに
見事勝利した。
8
00:01:00,205 --> 00:01:03,792
遅れて参戦した
家康の嫡子 秀忠は➡
9
00:01:03,792 --> 00:01:07,713
重臣たちの影武者続投説を
了解するが➡
10
00:01:07,713 --> 00:01:11,233
密かに 豊臣家を早急に滅ぼし➡
11
00:01:11,233 --> 00:01:15,187
影武者に代わる
二代将軍の座を狙っていた。
12
00:01:15,187 --> 00:01:20,559
二郎三郎を偽者と見破った
家康の側室 お梶の方は➡
13
00:01:20,559 --> 00:01:25,659
二郎三郎の人柄に惚れ
強い支えとなっていく>
14
00:01:27,733 --> 00:01:30,369
< そして 石田三成から➡
15
00:01:30,369 --> 00:01:33,905
豊臣家の安泰を託された
二郎三郎は➡
16
00:01:33,905 --> 00:01:38,393
豊臣家を滅ぼさんとする
秀忠との対立を➡
17
00:01:38,393 --> 00:01:40,393
深めていくのである>
18
00:01:55,610 --> 00:01:57,910
(一同)おめでとうござります。
19
00:01:59,865 --> 00:02:01,900
<将軍宣下からほどなく➡
20
00:02:01,900 --> 00:02:05,804
江戸で 祝賀の儀が執り行われた。
21
00:02:05,804 --> 00:02:12,461
その席上において 影武者 家康と
大納言 秀忠の戦いの幕は➡
22
00:02:12,461 --> 00:02:15,230
早くも切って落とされた>
23
00:02:15,230 --> 00:02:18,083
秀忠。
はっ。
24
00:02:18,083 --> 00:02:22,521
千姫は いくつになられたかの。
25
00:02:22,521 --> 00:02:25,223
七つでございますが。
26
00:02:25,223 --> 00:02:27,242
それが何か。
27
00:02:27,242 --> 00:02:35,567
いや 大坂の秀頼君と
どうかと思うてのう。
28
00:02:35,567 --> 00:02:39,187
まさか…。
29
00:02:39,187 --> 00:02:44,726
大坂の秀頼君と 千姫との縁組は➡
30
00:02:44,726 --> 00:02:53,802
ご病床の太閤殿下と
この家康が取り交わした➡
31
00:02:53,802 --> 00:02:57,239
誓約である。
32
00:02:57,239 --> 00:03:00,075
千姫付きの者は誰か。
33
00:03:00,075 --> 00:03:02,194
はっ。
34
00:03:02,194 --> 00:03:09,101
その方 豊臣家に申し入れ
話を進めるようにな。
35
00:03:09,101 --> 00:03:11,101
ははっ。
36
00:03:13,872 --> 00:03:17,259
うまく まとまればよいがの。
37
00:03:17,259 --> 00:03:22,013
戦を避けるためには
格好の縁組ですもの。
38
00:03:22,013 --> 00:03:27,436
淀様がお断りになるわけが
ございませぬ。
39
00:03:27,436 --> 00:03:36,128
しかし あの大納言 秀忠様が
溺愛されてる あの千姫を➡
40
00:03:36,128 --> 00:03:40,015
すんなりと手放されるかの。
41
00:03:40,015 --> 00:03:45,737
そこは
御内室のお江様が 頼みの綱。
42
00:03:45,737 --> 00:03:54,012
確かに あのお方は
淀様の妹御ではあられるが。
43
00:03:54,012 --> 00:03:59,734
それだけではございませぬ。
44
00:03:59,734 --> 00:04:04,239
大納言様を
お尻に敷いていらっしゃいます。
45
00:04:04,239 --> 00:04:06,374
お尻に…。
46
00:04:06,374 --> 00:04:12,397
< お江の方は
姉の淀君同様 気性が激しく➡
47
00:04:12,397 --> 00:04:17,035
夫の大納言 秀忠は
側室を一人もおけぬほど➡
48
00:04:17,035 --> 00:04:20,135
この妻を恐れ はばかっていた>
49
00:04:22,741 --> 00:04:27,195
そなたは
千を嫁にやるつもりなのか。
50
00:04:27,195 --> 00:04:29,748
申すまでもありませぬ。
51
00:04:29,748 --> 00:04:32,017
わしは反対じゃ。
52
00:04:32,017 --> 00:04:34,536
何ゆえでございます。
53
00:04:34,536 --> 00:04:38,440
またとない
良縁ではございませぬか。
54
00:04:38,440 --> 00:04:41,026
なにが良縁だ。
55
00:04:41,026 --> 00:04:44,729
娘を大坂城に
人質にやるようなものではないか。
56
00:04:44,729 --> 00:04:47,516
人質?
57
00:04:47,516 --> 00:04:49,518
馬鹿馬鹿しい。
58
00:04:49,518 --> 00:04:53,955
笑いごとではない。
戦になれば➡
59
00:04:53,955 --> 00:04:57,392
千は殺されることに
なるかもしれんのだぞ。
60
00:04:57,392 --> 00:04:59,895
世迷言をおっしゃいますな。
61
00:04:59,895 --> 00:05:02,297
なにが世迷言だ。
62
00:05:02,297 --> 00:05:06,034
そもそも
豊臣家と戦をせぬために➡
63
00:05:06,034 --> 00:05:10,739
千を嫁にやるのではありませぬか。
64
00:05:10,739 --> 00:05:13,708
それとも…。
65
00:05:13,708 --> 00:05:16,211
お前様は 私の姉に➡
66
00:05:16,211 --> 00:05:19,397
戦を仕掛ける腹でも
お持ちなのでございますか。
67
00:05:19,397 --> 00:05:21,867
いや さようなことは。
68
00:05:21,867 --> 00:05:27,122
この縁組は
大殿様じきじきの仰せです。
69
00:05:27,122 --> 00:05:32,122
お前様が口を挟むのは
僭越というものです。
70
00:05:40,519 --> 00:05:45,740
千殿 よくこそ まいられましたな。
71
00:05:45,740 --> 00:05:50,712
こうして顔を合わせるのは
何年ぶりでございましょう。
72
00:05:50,712 --> 00:05:57,312
一別以来の世の移り変わりは
恐ろしいほどじゃ。
73
00:06:02,774 --> 00:06:07,274
そなたの嫁御になられる
お方ですよ。
74
00:06:17,439 --> 00:06:23,439
まあ 御手ずから
もったいのうございます。
75
00:06:25,897 --> 00:06:30,368
<婚礼は
この年の七月に行われた。
76
00:06:30,368 --> 00:06:35,724
千姫七歳 秀頼十一歳であった。
77
00:06:35,724 --> 00:06:40,862
一方 伏見城へ戻った
影武者 家康にも➡
78
00:06:40,862 --> 00:06:42,914
おめでたが待ち構えていた>
79
00:06:42,914 --> 00:06:44,899
今 戻りました。
80
00:06:44,899 --> 00:06:48,203
おかえりなさいませ。
81
00:06:48,203 --> 00:06:51,539
お万様が また。
82
00:06:51,539 --> 00:06:54,743
え? あっ へっ…。
83
00:06:54,743 --> 00:06:57,243
また やや子が?
84
00:07:00,198 --> 00:07:02,901
どうして お万様ばかり…。
85
00:07:02,901 --> 00:07:05,720
いや そう言われてもな…。
86
00:07:05,720 --> 00:07:09,691
よほどに相性が
およろしいのでしょう。
87
00:07:09,691 --> 00:07:13,695
いててて…。
悔しゅうございます。
88
00:07:13,695 --> 00:07:20,735
< その夏 二人目の男児が生まれ
鶴千代と名づけられた。
89
00:07:20,735 --> 00:07:28,710
そして 翌 慶長九年
更に一人の赤子が産声をあげた。
90
00:07:28,710 --> 00:07:35,567
生まれたのは
秀忠が待ち望んだ男児 竹千代。
91
00:07:35,567 --> 00:07:37,936
すなわち のちの家光である>
92
00:07:37,936 --> 00:07:43,041
大納言様に お世継ぎができた。
93
00:07:43,041 --> 00:07:45,226
まことか?
94
00:07:45,226 --> 00:07:47,612
ついては将軍の位を➡
95
00:07:47,612 --> 00:07:51,232
即刻譲るようにとの仰せだ。
96
00:07:51,232 --> 00:07:53,585
それはできぬ。
97
00:07:53,585 --> 00:07:56,037
また盾をつく気か。
98
00:07:56,037 --> 00:08:03,395
あのお方が将軍の座に就けば
必ず天下が欲しくなる。
99
00:08:03,395 --> 00:08:09,884
天下を我がものとすれば
必ず 豊臣を滅ぼそうと…。
100
00:08:09,884 --> 00:08:13,738
いいかげんにせぬか。
101
00:08:13,738 --> 00:08:15,907
二郎三郎。
102
00:08:15,907 --> 00:08:20,278
おぬしはいったい
誰のために働いているのだ。
103
00:08:20,278 --> 00:08:25,100
お家にとって 価値よりも
害のほうが大きくなれば➡
104
00:08:25,100 --> 00:08:29,400
そのときは容赦なく始末されるぞ。
105
00:08:42,233 --> 00:08:45,070
わかった。
106
00:08:45,070 --> 00:08:47,055
そうか。
107
00:08:47,055 --> 00:08:50,375
じゃがの 弥八郎。
108
00:08:50,375 --> 00:08:53,975
ただでは譲らぬぞ。
109
00:08:58,683 --> 00:09:02,587
ただでは譲らぬとは
どういうことだ。
110
00:09:02,587 --> 00:09:07,742
将軍職をお譲りする代わりに➡
111
00:09:07,742 --> 00:09:12,247
駿府を賜りとう存じまする。
112
00:09:12,247 --> 00:09:14,399
今度は何を企んでおる。
113
00:09:14,399 --> 00:09:17,218
他意はござりませぬ。
114
00:09:17,218 --> 00:09:20,705
駿府は 某のふるさと。
115
00:09:20,705 --> 00:09:26,861
そこに城をいただいて
隠居をいたしとう存じまする。
116
00:09:26,861 --> 00:09:29,514
城だと?
はい。
117
00:09:29,514 --> 00:09:31,566
何のために。
118
00:09:31,566 --> 00:09:35,470
二郎三郎には 隠居したあとも➡
119
00:09:35,470 --> 00:09:39,441
あくまで大殿として
ふるまってもらわねばなりません。
120
00:09:39,441 --> 00:09:44,741
とすれば 当然 城が要りましょう。
121
00:09:46,698 --> 00:09:49,751
聞き届ければ➡
122
00:09:49,751 --> 00:09:53,188
差し出たまねはせぬと
約束するのだな。
123
00:09:53,188 --> 00:09:58,376
二代将軍 秀忠様が➡
124
00:09:58,376 --> 00:10:04,566
この世良田二郎三郎
安寧に暮らせるよう➡
125
00:10:04,566 --> 00:10:08,703
お約束いただければ。
126
00:10:08,703 --> 00:10:11,389
よかろう。
127
00:10:11,389 --> 00:10:16,411
城ひとつ くれてやろう。
128
00:10:16,411 --> 00:10:18,863
忝のう存じまする。
129
00:10:18,863 --> 00:10:23,785
約束は 必ず守る。
130
00:10:23,785 --> 00:10:25,785
はい。
131
00:10:31,376 --> 00:10:34,829
<慶長十年 影武者 家康は➡
132
00:10:34,829 --> 00:10:37,732
征夷大将軍を朝廷に返上し➡
133
00:10:37,732 --> 00:10:42,032
代わって秀忠が
二代将軍となった>
134
00:10:49,727 --> 00:10:52,797
今日という日を迎えられて➡
135
00:10:52,797 --> 00:10:56,401
その方も感慨ひとしおであろう。
136
00:10:56,401 --> 00:11:00,688
恐悦至極に存じまする。
137
00:11:00,688 --> 00:11:04,876
淀殿は わしが秀頼を差し置いて➡
138
00:11:04,876 --> 00:11:06,911
将軍になったというので➡
139
00:11:06,911 --> 00:11:10,682
怒り狂うているそうな。
140
00:11:10,682 --> 00:11:16,404
いっそのこと戦に持ち込んで➡
141
00:11:16,404 --> 00:11:19,073
打ち滅ぼしてしまってはどうか。
142
00:11:19,073 --> 00:11:22,710
時期尚早でございます。
143
00:11:22,710 --> 00:11:26,231
事を軽々しく進めては➡
144
00:11:26,231 --> 00:11:29,400
掴んだばかりの将軍の座も➡
145
00:11:29,400 --> 00:11:33,400
手の中から こぼれ落ちまするぞ。
146
00:11:38,443 --> 00:11:41,043
大儀じゃ。
147
00:11:50,071 --> 00:11:55,410
駿府のお城は
いつ出来上がるのです?
148
00:11:55,410 --> 00:11:59,030
これから縄張りだと聞いたから➡
149
00:11:59,030 --> 00:12:02,750
あと一~二年
先のことであろうな。
150
00:12:02,750 --> 00:12:06,404
私 待ち遠しゅうございます。
151
00:12:06,404 --> 00:12:10,041
そうか はははっ。
152
00:12:10,041 --> 00:12:14,746
わしはのう お梶殿。
153
00:12:14,746 --> 00:12:20,018
駿府を豊臣でも徳川でもない➡
154
00:12:20,018 --> 00:12:23,588
人々が分け隔てなく➡
155
00:12:23,588 --> 00:12:26,724
豊かに暮らせる地にしたいと
思うておる。
156
00:12:26,724 --> 00:12:33,364
誰もが仕合わせよく生きられる
自由の天地でございますね。
157
00:12:33,364 --> 00:12:39,771
そうじゃ。 そこに住む者は
年貢を納める必要もない。
158
00:12:39,771 --> 00:12:44,025
働けば働いた分
自分のものとなる。
159
00:12:44,025 --> 00:12:47,745
年貢も取らずに 大御所様は➡
160
00:12:47,745 --> 00:12:50,114
どうやって暮らしを
立てるのです?
161
00:12:50,114 --> 00:12:52,414
はははっ。
162
00:12:55,403 --> 00:12:59,357
かの太閤殿下のように➡
163
00:12:59,357 --> 00:13:05,713
海の向こうの国々と交易を進めて
金銀を溜める。
164
00:13:05,713 --> 00:13:08,399
それでよい。 ははっ。
165
00:13:08,399 --> 00:13:13,805
夢じゃ ははっ。 夢じゃ はははっ。
166
00:13:13,805 --> 00:13:20,111
やや子が生まれる前に
移り住みとうございました。
167
00:13:20,111 --> 00:13:23,711
やや子?
168
00:13:30,388 --> 00:13:33,688
やや子…。
169
00:13:38,079 --> 00:13:41,699
さぁ。
170
00:13:41,699 --> 00:13:45,420
さぁさぁ。
どこへ?
171
00:13:45,420 --> 00:14:22,490
♬~
172
00:14:22,490 --> 00:14:27,045
何を泣いておられるのです?
173
00:14:27,045 --> 00:14:34,068
久しく
こんな嬉しいことはなかったわ。
174
00:14:34,068 --> 00:14:39,023
あぁ ええなぁ この世は。
175
00:14:39,023 --> 00:14:43,945
はよ 飲んで。
176
00:14:43,945 --> 00:14:47,745
ええなぁ ええなぁ。
177
00:14:59,360 --> 00:15:04,832
なぁ お梶 踊りの輪に
加えていただこうか。
178
00:15:04,832 --> 00:15:06,832
あ?
179
00:15:18,379 --> 00:15:21,783
おぉ 元気じゃ元気じゃ。
180
00:15:21,783 --> 00:15:24,685
はははっ。
181
00:15:24,685 --> 00:15:28,706
入れてくれ 仲間に入れてくれ。
182
00:15:28,706 --> 00:15:44,405
♬~
183
00:15:44,405 --> 00:15:48,493
ええなぁ ええなぁ。
184
00:15:48,493 --> 00:15:53,093
ええなぁ ええなぁ。
185
00:15:57,401 --> 00:16:02,690
< それから二年の歳月を経た
慶長十二年。
186
00:16:02,690 --> 00:16:08,412
影武者 家康は
齢六十五に達していた>
187
00:16:08,412 --> 00:16:11,766
医者は何と?
188
00:16:11,766 --> 00:16:14,202
疲れではないかと。
189
00:16:14,202 --> 00:16:21,108
関ヶ原以来 溜まった疲れが
一度に出たのでございましょう。
190
00:16:21,108 --> 00:16:28,850
こんなときに申し訳ないが
わしは ここを離れねばならぬ。
191
00:16:28,850 --> 00:16:32,186
どういうことじゃ?
192
00:16:32,186 --> 00:16:34,906
今後は江戸に詰めて➡
193
00:16:34,906 --> 00:16:40,695
将軍家の補佐に
専念せよとのことでな。
194
00:16:40,695 --> 00:16:45,900
弥八郎 いや それは困る。
195
00:16:45,900 --> 00:16:49,787
わしの相談相手が いなくなる。
196
00:16:49,787 --> 00:16:54,442
倅の正純が
わしの代わりを務める。
197
00:16:54,442 --> 00:16:57,742
おい。
ははっ!
198
00:17:04,101 --> 00:17:06,701
お久しゅうござりまする。
199
00:17:08,723 --> 00:17:15,379
これまでのいきさつは
すべて明かしてある。
200
00:17:15,379 --> 00:17:18,679
何なりと お申しつけください。
201
00:19:42,810 --> 00:19:45,262
秀康様 どうなされました。
202
00:19:45,262 --> 00:19:48,762
京へ出たついでに
父上のお顔を見に来た。
203
00:20:11,422 --> 00:20:15,092
来てくれて ちょうどよかった。
204
00:20:15,092 --> 00:20:22,433
折り入って 秀康 そなたに
頼みたいことがあってのう。
205
00:20:22,433 --> 00:20:25,403
何でございましょう?
206
00:20:25,403 --> 00:20:33,427
大坂の秀頼君のことだ。
207
00:20:33,427 --> 00:20:40,050
もし わしが
死するようなことあらば➡
208
00:20:40,050 --> 00:20:45,923
江戸の将軍家 秀忠は➡
209
00:20:45,923 --> 00:20:50,461
大坂の豊臣家に対し➡
210
00:20:50,461 --> 00:20:54,761
兵を挙げるに違いない。
211
00:20:56,767 --> 00:20:59,136
わしはのう 秀康。
212
00:20:59,136 --> 00:21:05,559
豊臣 徳川両家が
並び立つことこそ➡
213
00:21:05,559 --> 00:21:10,264
天下にとって望ましいことじゃと
思うておる。
214
00:21:10,264 --> 00:21:17,421
そこでじゃ
なんとしても戦を避けるため➡
215
00:21:17,421 --> 00:21:23,427
秀康
そなたに尽力をしてもらいたい。
216
00:21:23,427 --> 00:21:26,430
尽力と申しますと?
217
00:21:26,430 --> 00:21:31,135
秀頼君の後ろ楯となり➡
218
00:21:31,135 --> 00:21:37,135
豊臣 徳川の仲を
取り持ってもらいたい。
219
00:21:43,113 --> 00:21:47,735
何か。
220
00:21:47,735 --> 00:21:54,475
お手前は 本当の父上ではない。
221
00:21:54,475 --> 00:21:57,075
そうでございましょう。
222
00:22:04,468 --> 00:22:07,755
お気づきでござりましたか。
223
00:22:07,755 --> 00:22:14,712
いかにも 某 徳川家康公の影。
224
00:22:14,712 --> 00:22:19,300
世良田二郎三郎と
申す者にござります。
225
00:22:19,300 --> 00:22:25,756
ご無礼の段
ご容赦くださりませ。
226
00:22:25,756 --> 00:22:32,563
前に 越前の国を賜ったお礼を
申し上げましたとき➡
227
00:22:32,563 --> 00:22:36,100
私にかけてくださいました
お言葉が➡
228
00:22:36,100 --> 00:22:40,754
父上らしからぬ温情に
満ちたものでありましたゆえ➡
229
00:22:40,754 --> 00:22:44,158
もしやと。
230
00:22:44,158 --> 00:22:47,444
なんと…。
231
00:22:47,444 --> 00:22:54,435
あのとき 本当の父上には
感じたことのなかった➡
232
00:22:54,435 --> 00:23:03,735
親の温もりを
私は なぜかお手前から。
233
00:23:05,796 --> 00:23:08,896
忝う存じまする。
234
00:23:11,135 --> 00:23:18,635
できますれば 今後も父上として
仰いでまいりたいと。
235
00:23:21,145 --> 00:23:25,245
もったいのうござります。
236
00:23:31,088 --> 00:23:43,417
大坂の秀頼君のこと
お願いできまするか?
237
00:23:43,417 --> 00:23:46,217
申すまでもございませぬ。
238
00:23:53,410 --> 00:23:59,767
あははははっ…。
239
00:23:59,767 --> 00:24:03,270
ご機嫌斜めか? あはははっ。
240
00:24:03,270 --> 00:24:08,108
一昨年 お梶が産んだ 姫君じゃ。
241
00:24:08,108 --> 00:24:11,578
市姫と申しまする。
242
00:24:11,578 --> 00:24:15,878
おお 母君そっくりの
美人におわす。
243
00:24:21,155 --> 00:24:23,891
兄者が伏見城へ?
244
00:24:23,891 --> 00:24:27,928
このところ 足繁く
お出入りなさっているご様子。
245
00:24:27,928 --> 00:24:29,913
どういうことだ?
246
00:24:29,913 --> 00:24:33,984
秀康様の武辺は
天下に聞こえておりまする。
247
00:24:33,984 --> 00:24:39,284
味方にして これほど
心強いお方はございますまい。
248
00:24:45,412 --> 00:24:51,368
影武者め 兄者と手を結んで
わしに敵対する気か。
249
00:24:51,368 --> 00:24:57,274
それとも 上様を
将軍の座から追い落とし➡
250
00:24:57,274 --> 00:24:59,760
秀康様をお跡に。
251
00:24:59,760 --> 00:25:05,860
まさか…。
あり得ぬことではございますまい。
252
00:25:07,935 --> 00:25:09,903
殺せ。
253
00:25:09,903 --> 00:25:11,922
生かしておくには➡
254
00:25:11,922 --> 00:25:15,743
兄者はあまりにも
人望があり過ぎる。
255
00:25:15,743 --> 00:25:20,764
秀康様を殺せと?
何をためらうことがある。
256
00:25:20,764 --> 00:25:27,755
我らは 柳生の命運を
徳川秀忠という男に賭けたのだ。
257
00:25:27,755 --> 00:25:33,560
賭けたからには
勝つために手段は選ばぬ。
258
00:25:33,560 --> 00:25:37,531
気をつけて人数を揃えろ。
259
00:25:37,531 --> 00:25:41,531
こちらの素性を知られぬようにな。
260
00:26:00,721 --> 00:26:16,770
♬~
261
00:26:16,770 --> 00:26:19,757
三左衛門!
262
00:26:19,757 --> 00:26:23,057
新陰流に泥を塗る気か。
263
00:26:44,765 --> 00:26:49,086
その方は?
柳生兵庫助と申しまする。
264
00:26:49,086 --> 00:26:54,107
忝い。
礼などはどうかご無用に。
265
00:26:54,107 --> 00:26:59,596
先ほどの刺客 拙者の叔父の
手の者らしゅうございます。
266
00:26:59,596 --> 00:27:04,635
叔父とは?
柳生宗矩。
267
00:27:04,635 --> 00:27:09,235
なんということだ。
268
00:27:12,793 --> 00:27:18,093
すまぬが
伏見の大御所様に 使いを頼む。
269
00:27:23,854 --> 00:27:25,889
お呼びでございましたか。
秀康が➡
270
00:27:25,889 --> 00:27:29,927
柳生の配下に襲われたと聞いた。
271
00:27:29,927 --> 00:27:33,764
その方 すぐに江戸に下り➡
272
00:27:33,764 --> 00:27:39,736
将軍家に 宗矩が首
差し出すよう申しつけい。
273
00:27:39,736 --> 00:27:44,791
その儀は 考え直されましたほうが
およろしいかと。
274
00:27:44,791 --> 00:27:47,227
何ゆえじゃ?
申しつけたところで➡
275
00:27:47,227 --> 00:27:50,564
将軍家がお聞き届けに
なろうとは思われませぬ。
276
00:27:50,564 --> 00:27:57,271
聞かねば 力尽くで
宗矩が首 討ち取るまで。
277
00:27:57,271 --> 00:28:04,428
恐れながら それは秀康様の
望むところではございませぬ。
278
00:28:04,428 --> 00:28:08,765
秀康様は 憎しみから
兄弟が相打つようなことだけは➡
279
00:28:08,765 --> 00:28:12,436
避けねばならぬと。
大御所様におかれましては➡
280
00:28:12,436 --> 00:28:16,423
むしろ 家中のものの暴発を
取り静めていただきたいとの➡
281
00:28:16,423 --> 00:28:18,423
仰せでございます。
282
00:28:21,762 --> 00:28:23,747
申し上げます。
283
00:28:23,747 --> 00:28:25,933
どうした?
はっ。
284
00:28:25,933 --> 00:28:35,075
秀康様が先ほど 息を
引き取られたよしにござります。
285
00:28:35,075 --> 00:28:37,075
なに?
286
00:28:52,292 --> 00:28:55,395
なんという
愚かなことをなされたのです!
287
00:28:55,395 --> 00:28:57,614
黙れ。
弟が兄に➡
288
00:28:57,614 --> 00:29:02,019
害をなすなどということは
天の許し給わぬところですぞ。
289
00:29:02,019 --> 00:29:06,223
ことが公になれば
なんとするつもりです。
290
00:29:06,223 --> 00:29:11,428
将軍家の威信は
地に堕ちまするぞ。
291
00:29:11,428 --> 00:29:15,899
しかし 秀康は
影武者に籠絡されて➡
292
00:29:15,899 --> 00:29:19,286
将軍家に
敵対しようとしておられた。
293
00:29:19,286 --> 00:29:21,271
何を申すか!
294
00:29:21,271 --> 00:29:24,741
放っておけば
影武者と手を結び➡
295
00:29:24,741 --> 00:29:27,427
お家に 仇をなされたに
違いないのだ。
296
00:29:27,427 --> 00:29:29,546
おっしゃるとおりです。
297
00:29:29,546 --> 00:29:33,266
その方に何がわかる。
298
00:29:33,266 --> 00:29:36,653
二郎三郎は 決してさような➡
299
00:29:36,653 --> 00:29:38,905
陰謀めいたことをする男ではない。
300
00:29:38,905 --> 00:29:41,091
父上は 二郎三郎と昵懇ゆえ➡
301
00:29:41,091 --> 00:29:43,727
お目が曇っておられるのです。
302
00:29:43,727 --> 00:29:46,079
かの者は影武者の分際を越えて➡
303
00:29:46,079 --> 00:29:49,182
豊臣家と己の身を守るために➡
304
00:29:49,182 --> 00:29:51,782
お家に害をなそうとしております。
305
00:29:55,589 --> 00:29:57,641
もはや見過ごしにはできぬ。
306
00:29:57,641 --> 00:30:01,741
目に物
見せてやらねばならぬ。
307
00:32:03,717 --> 00:32:07,571
< この年の七月
駿府に城が完成した。
308
00:32:07,571 --> 00:32:13,927
影武者 家康は
側室や子供たちを引き連れて➡
309
00:32:13,927 --> 00:32:15,912
念願の地に移り住んだ>
310
00:32:15,912 --> 00:32:23,136
お梶 この駿府はのう
西国と江戸を結ぶ街道上にある。
311
00:32:23,136 --> 00:32:26,936
将軍家を抑える重要な地じゃ。
312
00:32:30,727 --> 00:32:36,082
兵庫助殿
よう足を運んでくだされた。
313
00:32:36,082 --> 00:32:40,053
わざわざ使いを
くださいましたのは➡
314
00:32:40,053 --> 00:32:42,055
どのような 御用向きで。
315
00:32:42,055 --> 00:32:49,429
兵庫助殿を この駿府の城に
招きたいと思いましてな。
316
00:32:49,429 --> 00:32:54,050
知行は いかほどでもかまわぬ。
317
00:32:54,050 --> 00:32:58,955
過分のお申し出
忝くは存じまするが➡
318
00:32:58,955 --> 00:33:02,926
拙者には今は 仕官の望みは。
319
00:33:02,926 --> 00:33:07,063
まぁ そう言われるな。
320
00:33:07,063 --> 00:33:14,487
あははっ しばし この駿府の
地にて 見物などされながら➡
321
00:33:14,487 --> 00:33:19,087
ゆるゆると
考えられてはいかがかな?
322
00:33:29,719 --> 00:33:31,771
どうなさったのです?
323
00:33:31,771 --> 00:33:35,742
駿府の見物かたがた
様子を見にな。 おふうは?
324
00:33:35,742 --> 00:33:37,842
お梶様のおそばに。
325
00:33:42,933 --> 00:33:45,418
なにか変わった様子はないか?
326
00:33:45,418 --> 00:33:48,418
特には ございませぬが。
327
00:33:54,761 --> 00:33:58,665
こちらは
柳生兵庫助様でございます。
328
00:33:58,665 --> 00:34:00,767
柳生?
329
00:34:00,767 --> 00:34:05,088
同じ柳生一門でも
剣の志は一様ではない。
330
00:34:05,088 --> 00:34:11,244
拙者と叔父とでは
表と裏ほどの違いがござる。
331
00:34:11,244 --> 00:34:15,432
お手前は表か?
言うまでもないこと。
332
00:34:15,432 --> 00:34:20,887
叔父 宗矩は 柳生の庄の
当主におさまる代わりに➡
333
00:34:20,887 --> 00:34:23,456
将軍家の望むがままに➡
334
00:34:23,456 --> 00:34:26,610
門人たちを
暗殺の道具に使っております。
335
00:34:26,610 --> 00:34:33,900
己の栄達と引き換えに
流儀を売り渡したわけか。
336
00:34:33,900 --> 00:34:37,270
拙者は 流儀の正統を
継いだものとして➡
337
00:34:37,270 --> 00:34:41,057
なんとしても
叔父を倒さねばなりませぬ。
338
00:34:41,057 --> 00:34:46,813
だが そうなれば 将軍家まで
敵にまわすことになるぞ。
339
00:34:46,813 --> 00:34:50,813
もとより その所存でござる。
340
00:34:55,789 --> 00:34:58,742
今夜 大御所のお命を頂戴する。
341
00:34:58,742 --> 00:35:03,747
将軍家の御上意である。
342
00:35:03,747 --> 00:35:05,747
ためらわずに斬れ!
343
00:35:11,321 --> 00:35:14,421
連れていくか。
344
00:35:23,383 --> 00:36:04,524
♬~
345
00:36:04,524 --> 00:36:10,024
(泣き声)
346
00:36:15,435 --> 00:36:17,435
どうぞ!
347
00:36:23,093 --> 00:36:25,095
(悲鳴)
348
00:36:25,095 --> 00:36:27,113
お市が!
349
00:36:27,113 --> 00:36:30,467
お梶 お梶!
(おふう)お梶様は 私が。
350
00:36:30,467 --> 00:36:32,567
殿 こちらへ。
351
00:36:58,478 --> 00:37:00,478
うっ!
352
00:37:03,066 --> 00:37:06,503
殿 お逃げくだされ!
353
00:37:06,503 --> 00:37:34,764
♬~
354
00:37:34,764 --> 00:37:37,233
ぐわっ…。
355
00:37:37,233 --> 00:38:03,927
♬~
356
00:38:03,927 --> 00:38:06,596
世良田二郎三郎。
357
00:38:06,596 --> 00:38:12,396
おぬしの命運も
ここで尽きたようだな。
358
00:38:17,807 --> 00:38:19,907
小太郎殿 かたじけない。
359
00:38:22,428 --> 00:38:24,528
(兵庫助)叔父上!
360
00:38:27,951 --> 00:38:30,220
刀を引かせてください。
361
00:38:30,220 --> 00:38:33,656
兵庫助 邪魔立てをいたすな!
362
00:38:33,656 --> 00:38:36,256
六郎 奥へ。
はっ。
363
00:38:56,713 --> 00:38:58,932
ここは一対一で➡
364
00:38:58,932 --> 00:39:02,569
柳生の剣の正統を賭けて
勝負しようではありませぬか。
365
00:39:02,569 --> 00:39:06,789
わしの剣に正統も邪道もない。
366
00:39:06,789 --> 00:39:11,110
剣法など柳生の家を興し➡
367
00:39:11,110 --> 00:39:15,248
名を高めるための方便に過ぎぬ。
368
00:39:15,248 --> 00:39:21,321
刀を収めよ。 卑劣なまねをして
新陰流を貶めてはならぬ。
369
00:39:21,321 --> 00:40:14,921
♬~
370
00:40:52,462 --> 00:40:56,316
助左衛門 助左衛門。
371
00:40:56,316 --> 00:41:02,616
うっ…
おお ぶ… 無事でござったか。
372
00:41:05,642 --> 00:41:11,742
助左衛門 傷は浅いぞ。
373
00:41:15,401 --> 00:41:17,501
嘘をつけ…。
374
00:41:23,760 --> 00:41:30,049
お… おぬし うっ…。
375
00:41:30,049 --> 00:41:40,476
おぬしの役に立てて
わしは… 本望だ。
376
00:41:40,476 --> 00:41:44,276
なにを… 助左衛門。
377
00:42:01,230 --> 00:42:03,583
助左衛門…。
378
00:42:03,583 --> 00:42:09,383
助左衛門… 助左衛門…。
379
00:42:35,031 --> 00:42:48,031
(泣き声)
380
00:42:52,482 --> 00:42:56,082
お市が…。
381
00:43:08,147 --> 00:43:11,300
お市…。
お市…。
382
00:43:11,300 --> 00:43:34,300
♬~
383
00:43:36,225 --> 00:43:38,544
言い訳など聞きとうない。
384
00:43:38,544 --> 00:43:41,948
即刻 駿府へ取って返して
影武者めの首を取ってまいれ。
385
00:43:41,948 --> 00:43:45,735
しかし 今となりましては…。
できぬと申すのか。
386
00:43:45,735 --> 00:43:47,987
はっ。
387
00:43:47,987 --> 00:43:53,087
もはや敵は 一分の油断もなく
警戒しておりましょう。
388
00:43:59,916 --> 00:44:06,716
(笑い声)
389
00:46:50,720 --> 00:46:53,923
どうしても行くのかね。
390
00:46:53,923 --> 00:46:57,560
今は 一刻も早く
柳生の庄へ帰って➡
391
00:46:57,560 --> 00:47:02,264
一門のために
力を尽くさねばなりませぬ。
392
00:47:02,264 --> 00:47:05,267
できうれば ここに留まり➡
393
00:47:05,267 --> 00:47:10,239
剣法指南かたがた
長福丸 鶴千代の➡
394
00:47:10,239 --> 00:47:13,926
行く末を見守ってもらいたいと
思うたのだが。
395
00:47:13,926 --> 00:47:18,614
拙者は まだ
修行中の身でございます。
396
00:47:18,614 --> 00:47:24,214
わかった。 もう引き止めまい。
397
00:47:30,176 --> 00:47:35,064
命を無駄になされまするな。
398
00:47:35,064 --> 00:47:42,104
もし気が変わったら
ここへいつでも戻ってこられよ。
399
00:47:42,104 --> 00:47:46,942
<柳生兵庫助が
兵法指南役として➡
400
00:47:46,942 --> 00:47:49,345
尾張徳川家に仕えたのは➡
401
00:47:49,345 --> 00:47:53,845
これより八年後の
元和元年のことであった>
402
00:47:57,803 --> 00:48:01,403
<本多忠勝が
駿府城を訪ねてきた>
403
00:48:07,113 --> 00:48:09,482
忠勝殿。
404
00:48:09,482 --> 00:48:13,052
姫君を亡くされたと聞き➡
405
00:48:13,052 --> 00:48:17,306
遅まきなれど ひと言➡
406
00:48:17,306 --> 00:48:20,606
詫びを申し上げねばと
思いましてな。
407
00:48:22,561 --> 00:48:27,650
人として 子を失うことほど➡
408
00:48:27,650 --> 00:48:31,150
世の中 悲しいことはござらぬ。
409
00:48:33,722 --> 00:48:37,927
つらい目に遭わせたと➡
410
00:48:37,927 --> 00:48:41,897
誠に申し訳なく思っておりまする。
411
00:48:41,897 --> 00:48:47,286
いや… 何も
忠勝殿が詫びることなど…。
412
00:48:47,286 --> 00:48:52,057
いや そこ許を大殿に仕立て上げた
張本人はこのわしじゃ。
413
00:48:52,057 --> 00:48:58,998
そのために そこ許には 随分と➡
414
00:48:58,998 --> 00:49:03,319
苦しみを味わわせてしまった。
415
00:49:03,319 --> 00:49:05,619
いや…。
416
00:49:10,759 --> 00:49:14,446
忠勝殿。
417
00:49:14,446 --> 00:49:19,935
わしは そのおかげで
子を持つ喜びを➡
418
00:49:19,935 --> 00:49:23,155
味わうことができもうした。
419
00:49:23,155 --> 00:49:28,655
振り返れば 苦しいことばかりでは
ござりませなんだ。
420
00:49:33,732 --> 00:49:38,821
いやぁ しかし 早いものですなぁ。
421
00:49:38,821 --> 00:49:46,478
関ヶ原の合戦から もう十年も。
422
00:49:46,478 --> 00:49:48,397
はははっ。
423
00:49:48,397 --> 00:49:54,103
これほど長う
大殿を生きようとは➡
424
00:49:54,103 --> 00:49:57,573
あのときは
思いもよりませなんだ。
425
00:49:57,573 --> 00:50:00,993
よくぞ ここまで
やりとおしてくれた と➡
426
00:50:00,993 --> 00:50:05,793
わしは 感服しておる。
427
00:50:08,450 --> 00:50:12,271
しかし そこ許には
まだ頑張ってもらわねば。
428
00:50:12,271 --> 00:50:15,391
江戸の将軍家では 近頃➡
429
00:50:15,391 --> 00:50:20,262
鉛や 火薬を大量に
買い込んでいるそうだ。
430
00:50:20,262 --> 00:50:22,932
ということは…。
431
00:50:22,932 --> 00:50:27,102
いよいよ 始めまするのか?
432
00:50:27,102 --> 00:50:30,402
誰も望まぬ戦をな。
433
00:50:34,443 --> 00:50:43,552
あのお方は 関ヶ原の戦に
遅参した恥をそそごうと➡
434
00:50:43,552 --> 00:50:46,272
必死でござる。
435
00:50:46,272 --> 00:50:51,227
まるで 餓鬼でござる。
436
00:50:51,227 --> 00:50:57,783
しかし そのために
多くの者が死ぬことになる。
437
00:50:57,783 --> 00:51:02,638
戦を仕掛けずとも
豊臣家は 時が経てば➡
438
00:51:02,638 --> 00:51:06,138
しぜんに衰えるのだ。
439
00:51:09,061 --> 00:51:14,183
この戦 なんとしても
止めねばなりませんな。
440
00:51:14,183 --> 00:51:19,483
それができるのは その方だけだ!
441
00:51:22,308 --> 00:51:24,944
忠勝殿➡
442
00:51:24,944 --> 00:51:29,982
また 何もかも
この世良田二郎三郎に➡
443
00:51:29,982 --> 00:51:33,786
背負わせるおつもりで
ござりまするか。
444
00:51:33,786 --> 00:51:41,126
いや まぁ そう言わずに。
445
00:51:41,126 --> 00:51:49,726
これが
わしの最後の頼みでござる。
446
00:51:51,937 --> 00:51:54,606
大殿!
447
00:51:54,606 --> 00:51:57,092
<忠勝が世を去ったのは➡
448
00:51:57,092 --> 00:51:59,592
それから
間もなくのことであった>
449
00:52:02,448 --> 00:52:07,052
<数か月後 影武者 家康は
城下の寺に➡
450
00:52:07,052 --> 00:52:10,606
盟友 島左近を密かに招いた>
451
00:52:10,606 --> 00:52:14,226
実は 左近様➡
452
00:52:14,226 --> 00:52:18,263
お力をお借りせねば
ならぬことが➡
453
00:52:18,263 --> 00:52:20,282
持ち上がりましてな。
454
00:52:20,282 --> 00:52:24,236
何か差し迫った事態でも?
455
00:52:24,236 --> 00:52:30,309
江戸の将軍家は
豊臣家を滅ぼすべく➡
456
00:52:30,309 --> 00:52:33,609
戦の支度を整えておりまする。
457
00:52:38,150 --> 00:52:41,750
いずれ こうなると
わかってはいたが…。
458
00:52:44,106 --> 00:52:49,244
ただ この戦➡
459
00:52:49,244 --> 00:52:54,099
回避する手立てが
一つだけござりまする。
460
00:52:54,099 --> 00:52:58,754
秀頼様が
ただの大名に身を落とし➡
461
00:52:58,754 --> 00:53:02,207
徳川家に臣従する。
462
00:53:02,207 --> 00:53:05,307
そのとおりでござります。
463
00:53:07,896 --> 00:53:16,772
豊臣家が進んで 徳川家に
恭順の意を示せば➡
464
00:53:16,772 --> 00:53:20,726
戦の大義名分は失われまする。
465
00:53:20,726 --> 00:53:23,712
だが 恭順と申しても➡
466
00:53:23,712 --> 00:53:27,282
どのような形で表すのだ?
467
00:53:27,282 --> 00:53:35,424
秀頼殿に
二条城に出向いていただき➡
468
00:53:35,424 --> 00:53:42,598
このわしに 臣従の礼を
とってもらえばよい。
469
00:53:42,598 --> 00:53:49,772
問題は 淀殿が
それを承諾するかどうかだ。
470
00:53:49,772 --> 00:53:52,074
しかし 今度ばかりは➡
471
00:53:52,074 --> 00:53:56,061
秀頼様を
外に出していただくよう➡
472
00:53:56,061 --> 00:53:59,561
淀殿を説得して
いただけねばならぬ。
473
00:54:02,601 --> 00:54:08,323
それには わしよりも
うってつけの男がいる。
474
00:54:08,323 --> 00:54:11,923
加藤清正殿だ。
475
00:54:19,568 --> 00:54:23,272
そなた 秀頼に
二条城まで わざわざ➡
476
00:54:23,272 --> 00:54:27,142
頭を下げに出向け
と 言いやるのか?
477
00:54:27,142 --> 00:54:29,111
御意。
478
00:54:29,111 --> 00:54:33,015
とんでもないことでございます。
479
00:54:33,015 --> 00:54:35,234
そなた いつから関東に➡
480
00:54:35,234 --> 00:54:37,569
尻尾を振るようになったのじゃ?
481
00:54:37,569 --> 00:54:43,425
天下泰平を願う気持に
関東も上方もござりませぬ。
482
00:54:43,425 --> 00:54:50,432
それとも お方様は
つまらぬ体面にこだわって➡
483
00:54:50,432 --> 00:54:56,939
御歳十九の若君に
戦をさせることをお望みか!?
484
00:54:56,939 --> 00:54:59,591
(大蔵卿)なれど お方様。
485
00:54:59,591 --> 00:55:04,012
これが謀りごとならば
何といたします?
486
00:55:04,012 --> 00:55:05,914
謀りごと?
487
00:55:05,914 --> 00:55:10,914
秀頼様をおびき出して
害し奉ろうという。
488
00:55:13,438 --> 00:55:15,891
大御所ともあろうお方が➡
489
00:55:15,891 --> 00:55:20,512
世の謗りを一身に浴びるような➡
490
00:55:20,512 --> 00:55:24,612
さような 愚かなまねをするはずは
ござりませぬ。
491
00:55:32,391 --> 00:55:34,409
わかりました。
492
00:55:34,409 --> 00:55:36,578
承知していただけますか?
493
00:55:36,578 --> 00:55:39,878
占いで吉と出れば。
494
00:56:00,802 --> 00:56:04,102
吉と書き改めよ。
495
00:56:06,058 --> 00:56:10,612
さようなことをして 秀頼様に
もしものことがあれば➡
496
00:56:10,612 --> 00:56:13,632
わしの命はない。
497
00:56:13,632 --> 00:56:22,732
言うことを聞かねば
この場で命がなくなるぞ。
498
00:56:35,988 --> 00:56:40,988
もっと下。 下。
499
00:57:11,673 --> 00:57:16,828
念のため 今一度 占ってみよ。
500
00:57:16,828 --> 00:57:18,828
はっ。
501
00:57:22,584 --> 00:57:25,884
何度占っても 同じでござる。
502
00:57:39,935 --> 00:57:43,889
母上 私は二条城へまいります。
503
00:57:43,889 --> 00:57:47,926
なりませぬ!
万が一 襲われでもしたら…。
504
00:57:47,926 --> 00:57:53,598
千のおじじ様が なんで私を
殺すことがありましょう。
505
00:57:53,598 --> 00:57:58,403
よくぞ仰せになりました。
506
00:57:58,403 --> 00:58:01,773
こうと決まったうえは
この清正がお側を固め➡
507
00:58:01,773 --> 00:58:07,262
何事があろうと
必ずお守りいたします。
508
00:58:07,262 --> 00:58:10,432
ご安心召されよ。
509
00:58:10,432 --> 00:58:14,436
<二条城での対面は➡
510
00:58:14,436 --> 00:58:21,059
慶長十六年
三月二十八日に行われた。
511
00:58:21,059 --> 00:58:26,098
この日 秀頼を
真っ先に出迎えたのは➡
512
00:58:26,098 --> 00:58:28,917
頼宣 頼房と名を改めた➡
513
00:58:28,917 --> 00:58:32,417
影武者 家康の子供たちであった>
514
00:59:09,007 --> 00:59:13,007
いや よく おいでくだすった。
515
00:59:15,914 --> 00:59:18,950
千が よろしくと
申しておりました。
516
00:59:18,950 --> 00:59:21,319
おぉ さようか。
517
00:59:21,319 --> 00:59:24,790
いや 立派になられましたな。
518
00:59:24,790 --> 00:59:30,395
この日より
豊臣家 徳川家ともに和すのじゃ。
519
00:59:30,395 --> 00:59:35,400
幼き頃よりの友は終生の友じゃ。
520
00:59:35,400 --> 00:59:38,870
のう? 頼宣 頼房。
521
00:59:38,870 --> 00:59:40,870
(頼宣/頼房)はい。
522
00:59:42,741 --> 00:59:46,762
< しかし
二条城の対面から二か月後➡
523
00:59:46,762 --> 00:59:50,248
豊臣家 徳川家
両家のために尽くした➡
524
00:59:50,248 --> 00:59:52,851
加藤清正が この世を去り➡
525
00:59:52,851 --> 00:59:58,351
早くも 豊臣家に
暗雲が垂れ込めた>
526
01:00:02,744 --> 01:00:05,344
<事件は 突然 起こった>
527
01:00:08,767 --> 01:00:11,736
<京都 方広寺の大仏殿のために➡
528
01:00:11,736 --> 01:00:15,440
豊臣家が鋳造させた吊り鐘の銘が
不届きであると➡
529
01:00:15,440 --> 01:00:18,894
幕府から譴責を受けたのである>
530
01:00:18,894 --> 01:00:22,430
いったい
何が不届きだというのです?
531
01:00:22,430 --> 01:00:27,435
この「國家安康」というくだりが➡
532
01:00:27,435 --> 01:00:32,424
家康公の御名を断ち割って
呪詛するものである と…。
533
01:00:32,424 --> 01:00:34,943
それは
言いがかりというものじゃ。
534
01:00:34,943 --> 01:00:38,480
ですが 急ぎ 駿府へ下って
申し開きをいたさねば!
535
01:00:38,480 --> 01:00:40,565
申し開きなどして 何になる!
536
01:00:40,565 --> 01:00:44,565
これは 戦を始めるための口実!
537
01:00:46,438 --> 01:00:49,074
これほど うまくいこうとは
思わなかった。
538
01:00:49,074 --> 01:00:51,109
さようでございますか。
539
01:00:51,109 --> 01:00:54,729
あのような
見え透いた言いがかりに➡
540
01:00:54,729 --> 01:00:56,765
本気で食いついてこようとはのう。
541
01:00:56,765 --> 01:00:59,217
人を怒らせるには➡
542
01:00:59,217 --> 01:01:05,273
少々 露骨なくらい 吹っかけて
ちょうどでござる。
543
01:01:05,273 --> 01:01:09,273
戦にもっていくには
あと ひと押し。
544
01:01:11,730 --> 01:01:18,220
<豊臣家の家老 片桐且元は
釈明のため 駿府へ下った>
545
01:01:18,220 --> 01:01:20,772
大御所様に
お目通りを願いとうござる。
546
01:01:20,772 --> 01:01:22,741
その必要はござらぬ。
547
01:01:22,741 --> 01:01:27,112
今更 言い訳を聞いたところで
無駄というもの。
548
01:01:27,112 --> 01:01:31,766
なれど あの銘は
南禅寺の長老に書かせたもので➡
549
01:01:31,766 --> 01:01:34,402
当家としては
いちいちの文言までは…。
550
01:01:34,402 --> 01:01:36,438
黙らっしゃい!
551
01:01:36,438 --> 01:01:39,841
和解をお望みならば➡
552
01:01:39,841 --> 01:01:43,841
三つの条件を
飲んでいただかねばならぬ。
553
01:01:45,764 --> 01:01:52,721
一つ 大坂城を明け渡し
秀頼殿が他国へお移りになること。
554
01:01:52,721 --> 01:01:57,142
一つ 秀頼殿が
江戸へ参覲すること。
555
01:01:57,142 --> 01:02:03,442
一つ 淀の方を人質として
江戸へ差し出すこと。
556
01:02:22,434 --> 01:02:24,502
邪魔をするぞ。
557
01:02:24,502 --> 01:02:28,440
正純…。
558
01:02:28,440 --> 01:02:34,746
そなた 片桐且元殿を➡
559
01:02:34,746 --> 01:02:41,319
わしに断りもなしに
追い返したそうだな。
560
01:02:41,319 --> 01:02:43,819
さすがは お耳がお早い。
561
01:02:45,757 --> 01:02:48,293
すぐに呼び戻せ。
562
01:02:48,293 --> 01:02:52,731
呼び戻して
どうなさるおつもりです?
563
01:02:52,731 --> 01:02:58,436
方広寺の鐘の一件➡
564
01:02:58,436 --> 01:03:05,393
大御所の名を騙った
謀りごとだと且元殿に知らせる。
565
01:03:05,393 --> 01:03:11,733
何をなさろうと かまいませぬが
江戸の将軍家は➡
566
01:03:11,733 --> 01:03:17,272
もはや 戦を思いとどまることは
ございませぬぞ。
567
01:03:17,272 --> 01:03:21,743
将軍家に その気がのうても➡
568
01:03:21,743 --> 01:03:27,849
この世良田二郎三郎
戦を止めてみせるわ。
569
01:03:27,849 --> 01:03:31,820
どうやって?
570
01:03:31,820 --> 01:03:41,420
このわしが 徳川家康公の
影であることを暴露する。
571
01:03:44,099 --> 01:03:50,138
さすれば 徳川家の権威は失墜し➡
572
01:03:50,138 --> 01:03:55,238
豊臣に味方する者も
大勢 出てこようのう。
573
01:03:57,278 --> 01:04:00,315
おやめなされ。
574
01:04:00,315 --> 01:04:05,315
さようなことを言ったとて
誰が信じます?
575
01:04:12,277 --> 01:04:18,717
そこ許は もう 大御所そのものに
なってしまっている。
576
01:04:18,717 --> 01:04:23,321
今更 影武者などと
言ったところで➡
577
01:04:23,321 --> 01:04:28,321
乱心したと思われるのが
落ちでござろう。
578
01:04:30,278 --> 01:04:34,899
ふふふふふ…。
579
01:04:34,899 --> 01:04:38,236
正純…。
580
01:04:38,236 --> 01:04:46,244
そなた
弥八郎… いや 父 正信と違うて➡
581
01:04:46,244 --> 01:04:50,744
こざかしい男よのう。
582
01:07:31,826 --> 01:07:33,826
通りまする!
583
01:07:36,798 --> 01:07:38,733
申し上げまする。
584
01:07:38,733 --> 01:07:43,254
ただ今 駿府より 大御所の使いと
称する者がまいり➡
585
01:07:43,254 --> 01:07:46,291
目通りを願っておりますが。
大御所の使いだと?
586
01:07:46,291 --> 01:07:49,911
はっ!
お梶と申す女子でございます。
587
01:07:49,911 --> 01:07:51,911
お梶?
588
01:08:09,781 --> 01:08:11,783
御用件を承りたい。
589
01:08:11,783 --> 01:08:13,935
それは 淀様とお会いしたうえで。
590
01:08:13,935 --> 01:08:15,920
何が目当てだ?
591
01:08:15,920 --> 01:08:17,956
何か企みがなくては➡
592
01:08:17,956 --> 01:08:23,294
女が一人で 敵のまっただなかに
飛び込んでは来まい?
593
01:08:23,294 --> 01:08:25,294
無礼は許しませぬぞ!
594
01:08:27,265 --> 01:08:30,752
待て待て! 乱暴はいかん。
595
01:08:30,752 --> 01:08:32,804
左近様!
596
01:08:32,804 --> 01:08:37,304
お方様が
目通りを許すとの仰せだ。
597
01:08:42,230 --> 01:08:45,733
かようなところで
お会いできましょうとは➡
598
01:08:45,733 --> 01:08:48,269
天の助けでございます。
599
01:08:48,269 --> 01:08:52,907
まいりましょう。
某が案内つかまつる。
600
01:08:52,907 --> 01:08:55,007
近う。
601
01:09:04,769 --> 01:09:08,256
お梶殿 懐かしいぞよ。
602
01:09:08,256 --> 01:09:15,830
私 お方様のお顔を拝しますのは
初めてでございますが。
603
01:09:15,830 --> 01:09:21,630
会ったことはなくとも
そなたのことは よく覚えている。
604
01:09:23,554 --> 01:09:32,130
秀頼が七つのときに賜った
あの羽織の美しかったこと…。
605
01:09:32,130 --> 01:09:34,782
今に忘られぬ思い出じゃ。
606
01:09:34,782 --> 01:09:36,734
まぁ…。
607
01:09:36,734 --> 01:09:40,288
あのようなものを
それほどまでに…。
608
01:09:40,288 --> 01:09:45,259
駿府から
わざわざ まいられるとは➡
609
01:09:45,259 --> 01:09:49,263
なんぞ 大事な用向きでも?
610
01:09:49,263 --> 01:09:51,282
はい。
611
01:09:51,282 --> 01:09:55,753
大御所様から
言づけを預かってまいりました。
612
01:09:55,753 --> 01:09:57,822
言づけ…。
613
01:09:57,822 --> 01:10:02,427
このままでは
豊臣家は滅んでしまいます。
614
01:10:02,427 --> 01:10:04,479
戦をやめて➡
615
01:10:04,479 --> 01:10:08,433
城を明け渡すようにとのことで
ございます。
616
01:10:08,433 --> 01:10:12,070
城を明け渡して
どこへ行けというのじゃ?
617
01:10:12,070 --> 01:10:14,772
どこであろうと 生きてあれば➡
618
01:10:14,772 --> 01:10:19,160
大御所様が後ろ盾となって
秀頼様を守ってくださいます。
619
01:10:19,160 --> 01:10:21,779
守る?
620
01:10:21,779 --> 01:10:24,482
ふっ…。
621
01:10:24,482 --> 01:10:29,482
なぜゆえ 大御所様が
仇ともなる秀頼を?
622
01:10:32,473 --> 01:10:35,560
お方様…。
623
01:10:35,560 --> 01:10:38,560
あれは…。
624
01:10:40,431 --> 01:10:44,952
本物の大御所様ではございませぬ。
625
01:10:44,952 --> 01:10:49,924
影武者の
世良田二郎三郎と申す者で➡
626
01:10:49,924 --> 01:10:53,494
秀頼様が七つのときから ずっと➡
627
01:10:53,494 --> 01:10:58,449
豊臣家のお味方を
してまいりました。
628
01:10:58,449 --> 01:11:00,749
世良田二郎三郎…。
629
01:11:03,104 --> 01:11:05,490
秀頼様のお味方をすることは➡
630
01:11:05,490 --> 01:11:09,444
天下を徳川家の思うままに
させぬことであり➡
631
01:11:09,444 --> 01:11:14,465
影武者が自分の命を
守ることでもありました。
632
01:11:14,465 --> 01:11:17,568
どうか 私を信じて➡
633
01:11:17,568 --> 01:11:21,823
戦を思いとどまってくださいまし。
634
01:11:21,823 --> 01:11:28,823
秀頼様とお方様のお命は
必ず お守りいたします。
635
01:11:58,059 --> 01:12:04,599
お梶殿
よく打ち明けてくれました。
636
01:12:04,599 --> 01:12:06,584
お方様?
637
01:12:06,584 --> 01:12:11,122
実はのう 関ヶ原の戦ののち➡
638
01:12:11,122 --> 01:12:16,227
家康殿は すぐにも我らを
攻めてくると思っておりました。
639
01:12:16,227 --> 01:12:21,832
そんな折 あの羽織を賜って➡
640
01:12:21,832 --> 01:12:25,102
意外な思いがいたしました。
641
01:12:25,102 --> 01:12:32,393
今までの家康殿とは何かが違う。
642
01:12:32,393 --> 01:12:37,782
何かが… 違う。
643
01:12:37,782 --> 01:12:43,287
そなたの羽織が
そのことを教えてくれました。
644
01:12:43,287 --> 01:12:46,390
お方様…。
645
01:12:46,390 --> 01:12:55,266
大御所様… いえ
世良田殿と お梶殿の志➡
646
01:12:55,266 --> 01:12:58,903
ありがたく思います。
647
01:12:58,903 --> 01:13:03,608
では 城を
明け渡してくださいますか。
648
01:13:03,608 --> 01:13:05,610
それはできませぬ。
649
01:13:05,610 --> 01:13:07,745
何ゆえでございます。
650
01:13:07,745 --> 01:13:12,767
この城を捨てるということは➡
651
01:13:12,767 --> 01:13:17,905
家臣たちを見捨てることです。
652
01:13:17,905 --> 01:13:21,108
あの者どもを見捨てて➡
653
01:13:21,108 --> 01:13:25,279
どうして私と 秀頼だけが
生き延びることができましょう。
654
01:13:25,279 --> 01:13:28,933
お方様。
655
01:13:28,933 --> 01:13:36,433
私は最後まで
豊臣家の誇りを守りたいのです。
656
01:13:46,934 --> 01:13:51,439
お方様。
将軍家が五万の軍勢を率いて➡
657
01:13:51,439 --> 01:13:54,039
伏見城に
入城したそうでございます。
658
01:13:56,944 --> 01:13:59,030
長居は無用です。
659
01:13:59,030 --> 01:14:03,030
駿府まで
気をつけて帰るのですよ。
660
01:14:09,307 --> 01:14:11,807
おい 急げ!
661
01:14:22,153 --> 01:14:24,753
まだ諦めるのは早うござる。
662
01:14:31,445 --> 01:14:34,945
機を見て和議に…。
663
01:14:38,769 --> 01:14:42,657
左近殿は そう仰せか?
664
01:14:42,657 --> 01:14:48,646
はい 自分は城の内に在って
淀様を説得する。
665
01:14:48,646 --> 01:14:53,946
二郎三郎殿には 城の外に在って
将軍家を押さえてほしい と。
666
01:14:59,156 --> 01:15:01,609
誰かおるか?
はっ!
667
01:15:01,609 --> 01:15:07,048
おお 出陣をする。 支度を急げ。
668
01:15:07,048 --> 01:15:09,048
はは!
669
01:15:11,669 --> 01:15:15,969
<大坂城では すでに
激戦が繰り広げられていた>
670
01:15:25,399 --> 01:15:29,987
< この冬の陣で
将軍 秀忠率いる包囲軍を➡
671
01:15:29,987 --> 01:15:32,156
最も苦しめたのは➡
672
01:15:32,156 --> 01:15:37,956
城の南 天王寺口を守る
真田幸村であった>
673
01:15:40,264 --> 01:15:42,566
何を攻めあぐんでおる!
674
01:15:42,566 --> 01:15:45,419
敵はたかだか
牢人の寄せ集めではないか!
675
01:15:45,419 --> 01:15:49,273
はは!
しかし 采配をふるうのは➡
676
01:15:49,273 --> 01:15:51,392
真田左衛門佐でござい…。
677
01:15:51,392 --> 01:15:54,812
言い訳は聞きとうない!
恥を知れ!
678
01:15:54,812 --> 01:15:56,812
(兵士たち)ははっ!
679
01:15:59,550 --> 01:16:01,902
少しは 落ち着きなされよ。
680
01:16:01,902 --> 01:16:03,921
落ち着いてなぞ いられるか。
681
01:16:03,921 --> 01:16:06,223
真田には
関ヶ原の合戦の折も➡
682
01:16:06,223 --> 01:16:08,943
煮え湯を飲まされたのだぞ。
683
01:16:08,943 --> 01:16:12,580
ならば まともにやり合っても
分がないことは➡
684
01:16:12,580 --> 01:16:15,599
おわかりでございましょう。
なに?
685
01:16:15,599 --> 01:16:20,004
ここは搦手から
攻めるべきでございます。
686
01:16:20,004 --> 01:16:21,922
搦手?
687
01:16:21,922 --> 01:16:26,022
所領を餌に
味方に引き入れるのでござる。
688
01:16:32,099 --> 01:16:36,604
<幸村への 使者として
徳川方の陣中に在った➡
689
01:16:36,604 --> 01:16:40,704
叔父の真田信尹が遣わされた>
690
01:16:50,601 --> 01:16:52,553
叔父上 お久しゅうござる。
691
01:16:52,553 --> 01:16:55,105
戦国の世の常とはいえ➡
692
01:16:55,105 --> 01:16:59,059
敵同士として
相まみえようとはのう。
693
01:16:59,059 --> 01:17:01,312
いかがなされました?
694
01:17:01,312 --> 01:17:07,612
将軍家のご内意を
伝えにまいった。
695
01:17:14,758 --> 01:17:19,180
まずは 天下に比類なき
その方の働き➡
696
01:17:19,180 --> 01:17:21,115
あっぱれじゃ!
697
01:17:21,115 --> 01:17:23,968
将軍家が さよう仰せか。
はははは!
698
01:17:23,968 --> 01:17:27,905
いいや これは わしの感想じゃ。
699
01:17:27,905 --> 01:17:32,293
叔父上。 御用件お仰せください。
700
01:17:32,293 --> 01:17:38,933
将軍家はのう その方が
大坂城を見限って➡
701
01:17:38,933 --> 01:17:42,553
徳川の味方に参ずるならば➡
702
01:17:42,553 --> 01:17:49,243
信濃一国を宛がうと仰せじゃ。
703
01:17:49,243 --> 01:17:54,932
失うた所領が 何倍にもなって
戻ってくるのじゃ。
704
01:17:54,932 --> 01:17:58,552
お受けすべきであろう。
705
01:17:58,552 --> 01:18:04,975
せっかくではございますが
それは いたしかねまする。
706
01:18:04,975 --> 01:18:07,294
馬鹿を申すな。
707
01:18:07,294 --> 01:18:12,383
関ヶ原で
戦に敗れてから十四年。
708
01:18:12,383 --> 01:18:17,438
徳川によって 高野山に
蟄居させられていた某を➡
709
01:18:17,438 --> 01:18:21,392
最初にお取り立てくださったのは
秀頼公でござる。
710
01:18:21,392 --> 01:18:24,628
その恩義の重きことを思わば➡
711
01:18:24,628 --> 01:18:27,765
信濃一国は申すに及ばず➡
712
01:18:27,765 --> 01:18:30,417
日本国を半分賜ろうとも➡
713
01:18:30,417 --> 01:18:33,938
筋を曲げることは出来ませぬ。
714
01:18:33,938 --> 01:18:37,224
さようか。
715
01:18:37,224 --> 01:18:43,647
叔父上 某は初めより
討ち死にを覚悟しております。
716
01:18:43,647 --> 01:18:47,418
華々しく戦って➡
717
01:18:47,418 --> 01:18:52,218
武士の本懐を遂げることよりほか
なんの望みもござらぬ。
718
01:18:54,441 --> 01:18:57,111
よくぞ申した。
719
01:18:57,111 --> 01:19:02,416
今の一言 千の功名にも優る。
720
01:19:02,416 --> 01:19:07,516
真田の家の誉れじゃ。
721
01:19:11,108 --> 01:19:16,608
叔父上
これが今生の別れでございます。
722
01:19:22,453 --> 01:19:25,055
信濃一国を蹴ったと申すのか?
723
01:19:25,055 --> 01:19:28,742
はっ! 所領に
望みはないそうでございます。
724
01:19:28,742 --> 01:19:33,430
武将などという輩は➡
725
01:19:33,430 --> 01:19:36,800
扱い難うございますな。
726
01:19:36,800 --> 01:19:42,473
幸村め! わしへの面当てか!
727
01:19:42,473 --> 01:19:45,473
目にもの見せてくれる!
728
01:19:47,895 --> 01:19:50,998
明日は
総掛かりで真田を攻め潰す!
729
01:19:50,998 --> 01:19:54,598
各々 覚悟を固めよ!
(兵士たち)はっ!
730
01:19:56,587 --> 01:19:59,387
只今 大御所様が
お着きになられました。
731
01:20:10,668 --> 01:20:15,289
秀忠。 昨日一日の戦で➡
732
01:20:15,289 --> 01:20:19,610
二千もの兵を失のうたと聞いた。
まことか?
733
01:20:19,610 --> 01:20:23,580
明日こそは 更なる人数をかけて
一気に揉み潰す所存にて。
734
01:20:23,580 --> 01:20:25,716
たわけたことを申すな!
735
01:20:25,716 --> 01:20:28,452
真田ほどの戦上手が➡
736
01:20:28,452 --> 01:20:32,339
命を懸けてかかっておるのじゃ。
737
01:20:32,339 --> 01:20:37,439
力押しなどすれば やたらに
兵を失うばかりではないか。
738
01:20:51,075 --> 01:20:53,961
よいか!
739
01:20:53,961 --> 01:20:59,761
みだりに攻め掛けてはならぬぞ!
(兵士たち)はっ!
740
01:23:02,739 --> 01:23:06,143
今日はいつになく
静かでございますな。
741
01:23:06,143 --> 01:23:08,428
お気づきでございましたか?
742
01:23:08,428 --> 01:23:15,052
そういえば 鉄砲の音が一つも。
743
01:23:15,052 --> 01:23:18,405
ほんに嘘のような。
744
01:23:18,405 --> 01:23:21,491
なぜだか おわかりか?
745
01:23:21,491 --> 01:23:26,096
世良田二郎三郎が
着陣したからでござる。
746
01:23:26,096 --> 01:23:28,115
世良田?
747
01:23:28,115 --> 01:23:31,151
お梶殿より
お聞きおよびでござりましょう。
748
01:23:31,151 --> 01:23:33,904
世良田殿が…。
749
01:23:33,904 --> 01:23:37,107
何者でございます?
その世良田と申すのは。
750
01:23:37,107 --> 01:23:39,459
この城の救いの神だ!
751
01:23:39,459 --> 01:23:42,629
和議を結ぶなら
今でござります。
752
01:23:42,629 --> 01:23:46,400
何を言うか! 勝っている我らが
なんで和議を結ばねばならぬ!
753
01:23:46,400 --> 01:23:48,435
この勝ちは長くは続かん!
754
01:23:48,435 --> 01:23:52,356
お方様さえ その気になれば
大御所はいつにても➡
755
01:23:52,356 --> 01:23:55,456
和議に応じられまする。
黙れ! 不届き者!
756
01:24:00,297 --> 01:24:03,767
すまんが外してくれぬか。
757
01:24:03,767 --> 01:24:05,767
(兵士たち)はっ!
758
01:24:13,110 --> 01:24:16,213
島左近殿が捕らえられた?
759
01:24:16,213 --> 01:24:18,565
淀君様に和議を
お勧めしたところ➡
760
01:24:18,565 --> 01:24:21,435
家来どもが騒ぎ立てまして。
761
01:24:21,435 --> 01:24:23,770
困ったものだ。
762
01:24:23,770 --> 01:24:27,441
淀君様を動かすには➡
763
01:24:27,441 --> 01:24:29,426
まず取り巻きを
何とかしなければ。
764
01:24:29,426 --> 01:24:32,980
うむ。
765
01:24:32,980 --> 01:24:36,149
女官どもを脅してみるか。
766
01:24:36,149 --> 01:24:38,249
撃て!
767
01:24:42,756 --> 01:24:46,460
(砲弾の飛来音)
768
01:24:46,460 --> 01:24:49,760
(悲鳴)
769
01:25:09,283 --> 01:25:12,336
(悲鳴)
770
01:25:12,336 --> 01:25:16,836
二郎三郎め やりおるわ。
771
01:25:20,811 --> 01:25:23,911
<瞬く間に 和議は成立した>
772
01:25:26,717 --> 01:25:29,953
<豊臣側の出した講和の条件は➡
773
01:25:29,953 --> 01:25:34,091
秀頼の身の保障と本領の安堵➡
774
01:25:34,091 --> 01:25:39,391
そして 城方の将兵の罪を
問わぬことの三点であった>
775
01:25:41,448 --> 01:25:46,069
< これに対して 将軍 秀忠から
出された条件はただ一つ➡
776
01:25:46,069 --> 01:25:51,992
大坂城の外堀を埋め立てること
であった>
777
01:25:51,992 --> 01:25:55,779
お梶 今 帰った。
778
01:25:55,779 --> 01:25:57,731
お梶!
779
01:25:57,731 --> 01:26:02,285
あはは。
まあ 嬉しそうなお顔。
780
01:26:02,285 --> 01:26:04,888
うまくいったのでございますね。
781
01:26:04,888 --> 01:26:08,058
おう 思惑どおり 事が運んだ。
782
01:26:08,058 --> 01:26:12,112
ははは 和議に
持ち込むことができたぞ。
783
01:26:12,112 --> 01:26:15,082
それは おめでとうございます。
784
01:26:15,082 --> 01:26:18,051
今宵は祝杯を
あげねばなりませぬな。
785
01:26:18,051 --> 01:26:20,437
そうじゃな はは。
786
01:26:20,437 --> 01:26:23,407
(二人)父上 お帰りなさいませ。
787
01:26:23,407 --> 01:26:27,744
頼宣 頼房
しっかりと留守はできたか?
788
01:26:27,744 --> 01:26:30,263
(二人)はい!
789
01:26:30,263 --> 01:26:33,266
次は私も
お供がしとうございます。
790
01:26:33,266 --> 01:26:38,422
ふふふ 連れてってやろうな。
791
01:26:38,422 --> 01:26:40,522
(戸が開く音)
792
01:26:43,110 --> 01:26:45,062
おい!
793
01:26:45,062 --> 01:26:47,748
どうしたのです!?
794
01:26:47,748 --> 01:26:51,485
大坂から走り詰めで
帰ってきたんだ。
795
01:26:51,485 --> 01:26:53,485
水を…。
796
01:26:56,440 --> 01:26:59,040
大坂城で 何があった?
将軍家に謀られました。
797
01:27:04,781 --> 01:27:06,733
どういうことだ?
大坂城では➡
798
01:27:06,733 --> 01:27:10,554
和議の翌日から早速
外堀の埋め立てが行われまして。
799
01:27:10,554 --> 01:27:15,242
いや しかし それは
誓紙で交わした約束だ。
800
01:27:15,242 --> 01:27:17,978
ですが 外堀に続いて➡
801
01:27:17,978 --> 01:27:21,078
約束にない内堀まで
ことごとく埋め立てを。
802
01:27:28,989 --> 01:27:31,608
内堀まで… まさか。
803
01:27:31,608 --> 01:27:34,728
城方では それを
黙って見ていたのですか?
804
01:27:34,728 --> 01:27:37,664
いえ すぐに
異議を申し立てましたが➡
805
01:27:37,664 --> 01:27:42,102
将軍家は 途方もない人数をかけて
土居も石垣も突き崩し➡
806
01:27:42,102 --> 01:27:46,523
わずか数日で
埋め尽くしてしまったのです。
807
01:27:46,523 --> 01:27:51,123
それでは 城は裸同然ではないか。
808
01:27:56,566 --> 01:28:01,071
<将軍 秀忠は
八万五千の軍勢を率いて➡
809
01:28:01,071 --> 01:28:03,571
伏見城から出陣した>
810
01:28:09,946 --> 01:28:14,334
治長殿 城を打って出るというのは
まことでござるか?
811
01:28:14,334 --> 01:28:17,437
この城は もはや籠城には耐えぬ。
812
01:28:17,437 --> 01:28:19,439
坐して死を待つよりは➡
813
01:28:19,439 --> 01:28:23,393
野外にて一戦に及ぶべし
ということで 評議はまとまった。
814
01:28:23,393 --> 01:28:27,764
一戦して
勝てる見込みがあるのか。
815
01:28:27,764 --> 01:28:29,816
秀頼様のお為を思えば➡
816
01:28:29,816 --> 01:28:32,769
ここはむしろ 牢人衆を召し放ち➡
817
01:28:32,769 --> 01:28:38,225
城を開いて
徳川に降るべきではないか?
818
01:28:38,225 --> 01:28:42,245
それ以外に
秀頼様の生きる道があるか!?
819
01:28:42,245 --> 01:28:46,149
< その頃 影武者 家康も➡
820
01:28:46,149 --> 01:28:49,749
四万の軍勢を率いて
出陣していた>
821
01:28:58,745 --> 01:29:02,782
弥八郎 どうした。
822
01:29:02,782 --> 01:29:07,070
おぬしの腹の中を
確かめておこうと思ってな➡
823
01:29:07,070 --> 01:29:10,407
馬を飛ばしてきた。
824
01:29:10,407 --> 01:29:13,727
腹の中? どういうことじゃ。
825
01:29:13,727 --> 01:29:15,712
とぼけてはいかん。
826
01:29:15,712 --> 01:29:20,767
おぬし また何か
やらかすつもりだろう。
827
01:29:20,767 --> 01:29:25,555
そうでなければ
四万もの手勢を率いて➡
828
01:29:25,555 --> 01:29:30,810
出陣してくるわけがない。
829
01:29:30,810 --> 01:29:35,810
将軍家を討つつもりなのか?
830
01:29:42,722 --> 01:29:46,109
そのとおりだ。
831
01:29:46,109 --> 01:29:50,714
あの男は汚すぎる。
許すわけにはいかん。
832
01:29:50,714 --> 01:29:54,067
その気持
わからんではないが➡
833
01:29:54,067 --> 01:29:57,454
思いとどまったほうがよい。
834
01:29:57,454 --> 01:30:01,508
止めても無駄だ。
835
01:30:01,508 --> 01:30:07,897
今度の御陣には 御長男の
頼宣殿も随行しておられる。
836
01:30:07,897 --> 01:30:12,886
頼宣が どうしてだ?
837
01:30:12,886 --> 01:30:21,077
おぬしが駿府を出陣したあとに
わしが城から お連れしたのだ。
838
01:30:21,077 --> 01:30:28,435
弥八郎 おぬし 頼宣を
どこへ連れていった?
839
01:30:28,435 --> 01:30:32,305
将軍家のお側に。
840
01:30:32,305 --> 01:30:35,442
なにしろ十四歳で初陣だからな➡
841
01:30:35,442 --> 01:30:44,267
何も知らずに
張り切っておられる。
842
01:30:44,267 --> 01:30:47,921
弥八郎!
安心しろ。
843
01:30:47,921 --> 01:30:57,921
おぬしが大人しくしていれば
頼宣殿の身に何事も起こらぬ。
844
01:31:13,396 --> 01:31:20,403
弥八郎
おぬしを見損のうたぞ。
845
01:31:20,403 --> 01:31:29,813
二郎三郎 おぬし 変わったな。
846
01:31:29,813 --> 01:31:34,113
いや 変わったのは わしのほうか。
847
01:31:38,772 --> 01:31:43,827
わしはな 徳川の家臣だ。
848
01:31:43,827 --> 01:31:48,827
暴君といえども
仕えねばならぬ。
849
01:34:47,760 --> 01:34:50,914
<夏の陣 最後の戦いは➡
850
01:34:50,914 --> 01:34:54,734
五月七日に行われた。
851
01:34:54,734 --> 01:35:00,890
この日 茶臼山へ向かった
影武者 家康の本陣を➡
852
01:35:00,890 --> 01:35:05,562
待ち構えていたのは
真田幸村であった>
853
01:35:05,562 --> 01:35:09,933
金扇の馬印 家康公に
間違いございませぬ!
854
01:35:09,933 --> 01:35:13,086
うむ 大御所と道連れならば➡
855
01:35:13,086 --> 01:35:18,808
武士の面目 これに
過ぎたるものはない 進め!
856
01:35:18,808 --> 01:35:20,808
(一同)おお~っ!
857
01:35:28,117 --> 01:35:32,117
殿を守れ! 殿を守れ!
858
01:35:40,280 --> 01:35:42,215
敵が攻めてまいります。
859
01:35:42,215 --> 01:35:44,284
旗印は見えたか?
860
01:35:44,284 --> 01:35:46,269
六文銭!
861
01:35:46,269 --> 01:35:50,340
真田幸村か 幸村ならば
討たれてやってもよい。
862
01:35:50,340 --> 01:35:52,258
何をおっしゃいます!
863
01:35:52,258 --> 01:35:55,161
わからぬか。
まことの武将に討たれるのは➡
864
01:35:55,161 --> 01:35:57,080
もののふの本望という
この気持が。
865
01:35:57,080 --> 01:35:59,065
馬鹿をおっしゃいますな!
866
01:35:59,065 --> 01:36:03,586
死なせてしまっては
お梶様に恨まれます。
867
01:36:03,586 --> 01:36:05,686
ぐずぐずするな!
868
01:36:08,775 --> 01:36:13,396
<正午に始まった戦闘は
午後三時に終わった。
869
01:36:13,396 --> 01:36:17,150
幸村討ち死にの報せが伝わると➡
870
01:36:17,150 --> 01:36:20,750
城方の士気は一気に衰えた>
871
01:36:24,407 --> 01:36:27,327
<一方 これにより勢いを得た
徳川勢は➡
872
01:36:27,327 --> 01:36:30,827
大坂城に攻め入り
火の手があがった>
873
01:36:32,749 --> 01:36:35,485
大坂城から煙が上がっております。
874
01:36:35,485 --> 01:36:37,485
なんと!
875
01:36:48,748 --> 01:36:52,652
千姫を死なせてはならぬ。
876
01:36:52,652 --> 01:36:57,090
嫁にやったのは このわしじゃ。
877
01:36:57,090 --> 01:36:59,890
お任せください。
878
01:37:20,446 --> 01:37:22,565
馬鹿なまねはよせ。
879
01:37:22,565 --> 01:37:24,600
この姫は 大事な人質。
880
01:37:24,600 --> 01:37:26,969
我らが死ぬときは道連れにして➡
881
01:37:26,969 --> 01:37:29,572
一矢なりとも
将軍家に報ゆるのじゃ。
882
01:37:29,572 --> 01:37:32,392
姫君に何の罪があるというのだ。
883
01:37:32,392 --> 01:37:34,410
お方様。
884
01:37:34,410 --> 01:37:37,313
千は 秀頼の嫁じゃ。
885
01:37:37,313 --> 01:37:41,384
我らと生死をともにするのが
道理でありましょう。
886
01:37:41,384 --> 01:37:45,972
しかし
ただ お死なせ申すより➡
887
01:37:45,972 --> 01:37:50,443
僅かな望みでも
将軍家のもとにお返しして➡
888
01:37:50,443 --> 01:37:52,412
秀頼様の助命を➡
889
01:37:52,412 --> 01:37:55,412
嘆願していただくべきでは
ござりませぬか。
890
01:38:01,087 --> 01:38:03,087
お方様。
891
01:38:05,808 --> 01:38:08,608
何とぞ。
892
01:38:28,965 --> 01:38:36,065
将軍家は そなたを
大層 慈しんでおられたのう。
893
01:38:39,108 --> 01:38:45,765
左近 そなたの申すとおりじゃ。
894
01:38:45,765 --> 01:38:54,407
たとえ 僅かな望みであっても
何もせぬよりはまし。
895
01:38:54,407 --> 01:38:59,929
頼みましたぞ。
しかと心得ました。
896
01:38:59,929 --> 01:39:02,932
殿!
千。
897
01:39:02,932 --> 01:39:05,284
嘆願などせんでよい。
898
01:39:05,284 --> 01:39:07,303
みじめな思いをするだけだ。
899
01:39:07,303 --> 01:39:12,603
嫌です 嫌です 嫌です
秀頼様!
900
01:39:21,434 --> 01:39:23,970
(六郎)左近様!
901
01:39:23,970 --> 01:39:27,423
六郎 姫君を将軍家へ。
はっ。
902
01:39:27,423 --> 01:39:29,423
さあ。
903
01:39:34,397 --> 01:39:36,716
(悲鳴)
904
01:39:36,716 --> 01:39:39,652
待て!
待て!
905
01:39:39,652 --> 01:39:41,652
さあ。
906
01:39:44,140 --> 01:39:46,943
止まれ。
お待ちください。
907
01:39:46,943 --> 01:39:50,413
このお方は
将軍家のご息女でござる。
908
01:39:50,413 --> 01:39:54,413
これは なんと。
さあ こちらへ。
909
01:40:07,180 --> 01:40:11,780
千姫様 只今
お着きでございます。
910
01:40:19,408 --> 01:40:21,611
お願いでございます。
911
01:40:21,611 --> 01:40:27,717
秀頼様のお命を
お助けくださいまし。
912
01:40:27,717 --> 01:40:32,455
お願いでございます 秀頼様を。
913
01:40:32,455 --> 01:40:35,641
偽物ではあるまいな。
914
01:40:35,641 --> 01:40:37,641
確かめよ。
915
01:40:40,263 --> 01:40:43,449
お願いでございます
秀頼様をお助けくださいまし。
916
01:40:43,449 --> 01:40:47,403
父上様
お願いでございます 父上。
917
01:40:47,403 --> 01:40:51,824
秀頼様のお命を
お助けくださいまし。
918
01:40:51,824 --> 01:40:53,824
父上!
919
01:43:15,735 --> 01:43:17,887
お待ちください お方様。
920
01:43:17,887 --> 01:43:21,774
蔵に隠れても
いずれは見つかります。
921
01:43:21,774 --> 01:43:25,311
今のうちならば
城を抜け出せるやもしれません。
922
01:43:25,311 --> 01:43:29,582
そなた
秀頼を落としてくりゃるか。
923
01:43:29,582 --> 01:43:32,535
秀頼様お一人ならば➡
924
01:43:32,535 --> 01:43:36,335
いずこかへ お匿い申し上げ
某がお世話を。
925
01:43:38,240 --> 01:43:42,678
生きていれば
いつかは再会の道も開けよう。
926
01:43:42,678 --> 01:43:44,678
行きなさい。
927
01:43:47,383 --> 01:43:51,821
わしは 世に隠れ住んでまで
生きていたくはない。
928
01:43:51,821 --> 01:43:53,739
何をおっしゃいます。
929
01:43:53,739 --> 01:43:56,175
みじめに生き延びるよりは➡
930
01:43:56,175 --> 01:44:00,175
ここで
潔く死んでしまうほうがよい。
931
01:44:02,465 --> 01:44:05,465
鉄砲隊が
こっちへ向かってきます。
932
01:44:13,442 --> 01:44:19,565
秀頼様のために これまで
石田治部少輔様をはじめ➡
933
01:44:19,565 --> 01:44:22,284
何人もの男が死んでいきました。
934
01:44:22,284 --> 01:44:27,406
その者たちのためにも
諦めてはなりませぬ。
935
01:44:27,406 --> 01:44:31,406
すまぬ 左近。
936
01:44:34,296 --> 01:44:38,734
秀頼様。
もうよい。
937
01:44:38,734 --> 01:44:41,754
秀頼の言うとおりじゃ。
938
01:44:41,754 --> 01:44:46,859
生きて苦難を忍ぶよりは➡
939
01:44:46,859 --> 01:44:50,095
美しく滅んでしまうほうが➡
940
01:44:50,095 --> 01:44:55,095
豊臣家には
ふさわしいのかもしれぬ。
941
01:44:59,822 --> 01:45:03,822
さらばじゃ 左近。
942
01:45:08,564 --> 01:45:10,900
お方様。
943
01:45:10,900 --> 01:45:57,630
♬~
944
01:45:57,630 --> 01:45:59,730
秀頼様!
945
01:46:01,817 --> 01:46:03,817
左近様!
946
01:46:07,723 --> 01:46:30,279
♬~
947
01:46:30,279 --> 01:46:33,566
千姫は どうした?
948
01:46:33,566 --> 01:46:37,770
ご無事です。
ああ。
949
01:46:37,770 --> 01:46:42,174
でも 左近様が。
950
01:46:42,174 --> 01:46:44,974
左近殿が どうなされた?
951
01:46:49,982 --> 01:46:54,582
秀頼様と一緒に。
952
01:47:09,184 --> 01:47:14,089
<翌五月八日 大坂城は落城し➡
953
01:47:14,089 --> 01:47:18,089
豊臣家とともに灰燼に帰した>
954
01:47:20,095 --> 01:47:23,399
大願成就とは このことじゃ。
955
01:47:23,399 --> 01:47:26,101
天下をざっと見渡してみても➡
956
01:47:26,101 --> 01:47:30,489
わしに対抗し得る者は
もはや 一人もおらぬ。
957
01:47:30,489 --> 01:47:34,226
祝着この上もございませぬ。
958
01:47:34,226 --> 01:47:41,100
ただし まだ一つ
やり残したことがある。
959
01:47:41,100 --> 01:47:45,988
影武者めの始末でございますか。
960
01:47:45,988 --> 01:47:48,941
何じゃ その顔は。
961
01:47:48,941 --> 01:47:51,076
天下を取りましたからには➡
962
01:47:51,076 --> 01:47:54,730
もはや
捨て置いてもよかろうかと。
963
01:47:54,730 --> 01:47:57,566
それでは わしの腹が癒えぬ。
964
01:47:57,566 --> 01:48:04,440
それにな
あやつの面を見るたびに➡
965
01:48:04,440 --> 01:48:07,876
いまだに 父上に
頭を押さえられているようで➡
966
01:48:07,876 --> 01:48:10,279
不快でたまらぬ。
967
01:48:10,279 --> 01:48:18,137
なんとしても
生かしておくことはできぬ。
968
01:48:18,137 --> 01:48:23,137
やつの子供も始末するのだ。
969
01:48:28,297 --> 01:48:30,899
来い。
はい。
970
01:48:30,899 --> 01:48:33,318
はぁ!!
971
01:48:33,318 --> 01:48:37,118
えい やあ!
972
01:48:48,083 --> 01:48:55,941
頼宣 頼房を殺せと
秀忠は命じたのじゃな。
973
01:48:55,941 --> 01:48:58,911
将軍家は執念深い。
974
01:48:58,911 --> 01:49:01,363
目的を達するまで➡
975
01:49:01,363 --> 01:49:04,817
何度でも
刺客を差し向けてくるだろう。
976
01:49:04,817 --> 01:49:12,117
頼宣 頼房の命を守るためならば
我が命など惜しゅうはない。
977
01:49:15,444 --> 01:49:19,148
もののふとは どういうものか➡
978
01:49:19,148 --> 01:49:24,148
あの秀忠に思い知らせてくれるわ。
979
01:49:27,773 --> 01:49:30,776
待て 待て。 どこへ行く。
980
01:49:30,776 --> 01:49:33,095
あっ… おい!
981
01:49:33,095 --> 01:49:35,395
あっ… おっ… 大御所…。
982
01:49:55,117 --> 01:49:57,102
なんだ 突然。
983
01:49:57,102 --> 01:50:03,102
秀忠。 おぬしには愛想が尽きた。
984
01:50:06,395 --> 01:50:09,414
忘れたか?
985
01:50:09,414 --> 01:50:15,788
おぬし 断じて 我が子には
手を出さぬと約束をした。
986
01:50:15,788 --> 01:50:19,458
その約束をたがえた。
987
01:50:19,458 --> 01:50:23,058
ゆえに お前を…。
988
01:50:26,815 --> 01:50:28,815
撃つ。
989
01:50:32,821 --> 01:50:36,821
どいてくだされ 柳生殿。
990
01:50:38,861 --> 01:50:41,161
おどきくだされ。
991
01:50:45,150 --> 01:50:47,450
お待ちくだされ。
992
01:50:54,176 --> 01:50:57,079
どうか こたびばかりは ご容赦を。
993
01:50:57,079 --> 01:51:01,066
いいや 許すわけには
まいりませぬ。
994
01:51:01,066 --> 01:51:04,086
曲げてお願い申し上げまする。
995
01:51:04,086 --> 01:51:07,105
某の一命に代えましても➡
996
01:51:07,105 --> 01:51:09,741
将軍家を必ず
お諌めいたしまする。
997
01:51:09,741 --> 01:51:12,427
宗矩 何を申すか。
998
01:51:12,427 --> 01:51:16,832
わしは 子を殺せなどと
命じた覚えはない。
999
01:51:16,832 --> 01:51:18,851
秀忠。
1000
01:51:18,851 --> 01:51:23,121
この期に及んで まだ
そのような言い逃れを。
1001
01:51:23,121 --> 01:51:25,524
嘘ではない。
1002
01:51:25,524 --> 01:51:27,524
あ…。
1003
01:51:31,446 --> 01:51:34,433
頭か 心の臓か。
1004
01:51:34,433 --> 01:51:39,121
撃つな…
わしが悪かった。 許してくれ。
1005
01:51:39,121 --> 01:51:42,107
このとおりだ。 頼む。
1006
01:51:42,107 --> 01:51:44,142
撃つな…。
1007
01:51:44,142 --> 01:51:48,442
撃つな! 父上!
1008
01:51:55,153 --> 01:51:57,153
秀忠。
1009
01:52:31,506 --> 01:52:37,006
二代将軍 徳川秀忠殿。
1010
01:52:39,765 --> 01:52:45,771
世良田二郎三郎 これにて
おいとまつかまつりまする。
1011
01:52:45,771 --> 01:53:04,122
♬~
1012
01:53:04,122 --> 01:53:08,143
何をしておる 追え!
1013
01:53:08,143 --> 01:53:10,779
追いかけて殺せ!
1014
01:53:10,779 --> 01:53:16,435
奴は 紙一重のところで
命を助けてくれたのですぞ。
1015
01:53:16,435 --> 01:53:19,121
それを ありがたがれと申すのか。
1016
01:53:19,121 --> 01:53:22,824
あの男は もはや
役目を終えたのです。
1017
01:53:22,824 --> 01:53:25,824
放っておけばよいでは
ございませぬか!
1018
01:53:28,780 --> 01:53:33,452
よかろう。
あやつの命は助けてやろう。
1019
01:53:33,452 --> 01:53:38,457
だが 子供は生かしてはおかぬ。
1020
01:53:38,457 --> 01:53:42,057
ふん そのほうが おもしろい。
1021
01:53:44,112 --> 01:53:47,733
生きて我が子が
殺されるのを見るほうが➡
1022
01:53:47,733 --> 01:53:51,787
あやつにとっては
辛かろうからのう。
1023
01:53:51,787 --> 01:53:55,474
ははは…。
1024
01:53:55,474 --> 01:54:07,574
(笑い声)
1025
01:54:21,483 --> 01:54:24,783
その方 何者だ。
1026
01:54:26,755 --> 01:54:29,755
風魔の頭領 小太郎。
1027
01:54:31,810 --> 01:54:35,410
昼間 言い忘れたことがあってな。
それを伝えにまいった。
1028
01:54:37,416 --> 01:54:42,771
よいか。 二郎三郎殿のお子たちに
何事かあれば➡
1029
01:54:42,771 --> 01:54:46,725
己の命もなくなるものと思え。
1030
01:54:46,725 --> 01:54:51,096
風魔ごときを わしが
恐れるとでも思っているのか。
1031
01:54:51,096 --> 01:54:54,516
その方どもの根城を
焼き打ちにするぐらい➡
1032
01:54:54,516 --> 01:54:57,402
わしにとっては たやすいことだ。
1033
01:54:57,402 --> 01:55:02,791
いかに将軍家でも
風魔を根絶やしにはできぬ。
1034
01:55:02,791 --> 01:55:08,413
我ら道々の輩は
姿を変え 場所を変えて➡
1035
01:55:08,413 --> 01:55:10,413
脈々と生き続ける。
1036
01:55:12,784 --> 01:55:17,089
徳川の世が
滅びることはあっても➡
1037
01:55:17,089 --> 01:55:21,089
我らが死に絶えることは ない。
1038
01:55:34,122 --> 01:55:38,727
< それから
およそ百年後の正徳六年。
1039
01:55:38,727 --> 01:55:41,780
七代将軍 家継の死によって➡
1040
01:55:41,780 --> 01:55:44,783
秀忠の血は絶え➡
1041
01:55:44,783 --> 01:55:48,403
かわって
八代将軍の座についたのは➡
1042
01:55:48,403 --> 01:55:53,825
影武者 家康の嫡子
頼宣の血を受け継いだ➡
1043
01:55:53,825 --> 01:55:59,080
紀州藩主 徳川吉宗であった。
1044
01:55:59,080 --> 01:56:03,502
おふうは
玉のような男の子を産み➡
1045
01:56:03,502 --> 01:56:07,102
風魔小太郎の血脈も保たれた>
1046
01:56:10,425 --> 01:56:12,511
<影武者 家康は➡
1047
01:56:12,511 --> 01:56:15,511
重い病の床にあった>
1048
01:56:20,785 --> 01:56:22,785
まあ。
1049
01:56:26,791 --> 01:56:31,897
起きたりして
大丈夫でございますか。
1050
01:56:31,897 --> 01:56:36,468
はは 今日は
久しぶりに気分がいい。 はは。
1051
01:56:36,468 --> 01:56:39,120
それは よろしゅうございました。
1052
01:56:39,120 --> 01:56:41,406
はあ。
(祭囃子)
1053
01:56:41,406 --> 01:56:44,793
どこぞで 祭りでもやっとるのか。
1054
01:56:44,793 --> 01:56:48,847
神社で お囃子の稽古を
しているそうでございます。
1055
01:56:48,847 --> 01:56:50,782
ほう。
1056
01:56:50,782 --> 01:56:53,768
以前 二人で城を抜け出して➡
1057
01:56:53,768 --> 01:56:56,738
踊りにいったことが
ございましたな。
1058
01:56:56,738 --> 01:57:00,792
あったな。 ははは。
1059
01:57:00,792 --> 01:57:03,862
また抜け出してみるか。
1060
01:57:03,862 --> 01:57:05,830
へへっ。
1061
01:57:05,830 --> 01:57:08,830
ほほほほ。
1062
01:57:19,744 --> 01:57:22,797
《風が鳴っている。
1063
01:57:22,797 --> 01:57:26,785
ああ… 懐かしい音だ。
1064
01:57:26,785 --> 01:57:30,422
風は常に わしの友だった。
1065
01:57:30,422 --> 01:57:35,443
幼い頃 村をさまよった日々も➡
1066
01:57:35,443 --> 01:57:38,730
信長を撃ったときも➡
1067
01:57:38,730 --> 01:57:42,784
いつも風の音が聞こえていた。
1068
01:57:42,784 --> 01:57:48,740
思えば
家康の影としての数年だけが➡
1069
01:57:48,740 --> 01:57:52,394
風と無縁の日々だった。
1070
01:57:52,394 --> 01:57:56,615
だが 家康が死んで➡
1071
01:57:56,615 --> 01:57:59,601
身代わりとなった頃から➡
1072
01:57:59,601 --> 01:58:04,439
また風が帰ってきた。
1073
01:58:04,439 --> 01:58:08,843
ははは… おもしろかったな。
1074
01:58:08,843 --> 01:58:11,730
しみじみ そう思う。
1075
01:58:11,730 --> 01:58:14,449
人のことは知らぬが➡
1076
01:58:14,449 --> 01:58:19,721
わしの人生は
退屈することはなかった。
1077
01:58:19,721 --> 01:58:23,775
家康の
身代わりとなった十五年間➡
1078
01:58:23,775 --> 01:58:29,447
心の休まる暇もない
緊張の連続だった。
1079
01:58:29,447 --> 01:58:34,836
それだけに 目もくらむばかりに
おもしろかった。
1080
01:58:34,836 --> 01:58:38,773
何の不足もなく 悔いもなかった。
1081
01:58:38,773 --> 01:58:42,143
ははは… ようやった。
1082
01:58:42,143 --> 01:58:46,448
わしは 信長でも家康でもない。
1083
01:58:46,448 --> 01:58:52,120
どこにでもいる ただの人だ。
1084
01:58:52,120 --> 01:58:57,392
それも一所不在の野良犬だ。
1085
01:58:57,392 --> 01:59:02,831
しかし 野良犬にしては
ようやった。
1086
01:59:02,831 --> 01:59:05,831
はははは…》
1087
01:59:13,241 --> 01:59:18,496
思えば わしの一生は➡
1088
01:59:18,496 --> 01:59:21,796
風に吹きっさらしじゃった。
1089
01:59:23,735 --> 01:59:27,822
でも あなたと一緒にいられて➡
1090
01:59:27,822 --> 01:59:30,822
私は幸せでした。
1091
01:59:33,428 --> 01:59:38,728
わしも… 幸せじゃった。
1092
01:59:42,103 --> 01:59:45,073
<世良田二郎三郎が➡
1093
01:59:45,073 --> 01:59:48,827
眠るがごとく
息を引き取ったのは➡
1094
01:59:48,827 --> 01:59:52,827
元和二年 四月のことであった>
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