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(岡部)[こんばんは 岡部です。 えっ? 誰って? だから岡部だよ]
[屋台の常連客の岡部! さあ 今夜の『ミッドナイト屋台』は➡
味覚と嗅覚が回復したことを喜ぶ 翔太]
って何その格好!?
[なぜか有頂天になる私]
俺をバカにしてんのか!? 試してんの? 何?
[だが そのことが原因で 翔太と輝元の関係に変化が生じ➡
屋台は閉店の危機に]
(岡部)えっ 俺も味見したい! ちょっと今は黙ってて。
え~!? 今日 俺が主役なのに…。
[あぁ これも諸行無常なのか]
[土ドラ…]
[この後 すぐです]
輝元。 俺 鼻と舌が戻った。
マジか。 うん。
そうか…。 喜んでくんないの?
俺の居場所がなくなる。 えっ?
俺は もう必要ないってことだろ。
何言ってんだよ。 お前は屋台のプロデューサーだし➡
誰よりも魅力的に 俺の料理をプレゼンしてくれる。
俺は神の舌を持つ男だ。
屋台は終わり。 俺たちは解散だ。
はっ?
バカ言うなよ。 いつまでも一緒だろ!
おい 輝元。 輝元!
輝元!!
ハァ 夢か。
よかった…。
俺たち 解散か…。 えっ?
(輝徳・輝元)…虚妄 我亦為世父 救諸苦患者➡
為凡夫顛倒 実在而言滅 以常見我故…。
《線香の香りって落ち着くなあ》
(輝徳・輝元)放逸著…。
《やっぱりいいよなあ 木造建築の温かみのある香り》
《お米の甘味がたまんねえ》
《苦味の向こう側に 生産者さまの笑顔が見える》
《うん これぞ山と海のハーモニー》
《豆腐の苦味が 味噌の甘味に包み込まれてる》
《これぞ和の味わい》
ハァ… 日本に生まれてよかった。
(真耶)フフッ。 あっ すいません。
どうしたの? 急に。 いや 別に。
感謝の言葉を口に出すことは とても大切なことです。
そうね。
いつも おいしい朝食を ありがとうございます。
(真耶)いいえ こちらこそ。
いつも残さず食べてくれて ホントにありがとう。
♬~
《太陽と朝露の香り》
《迫り来る夏の足音が 聞こえてきそうだ》
(トイレの水を流す音) よいしょ。
⚟(戸の開く音)
(輝徳)《紙がないんだ。 持ってきてくれないか?》
(真耶)《もう お父さん!》
《鍵 閉めてって いつも言ってるでしょ!》
《あっ! うぅ…》 (真耶)《ハァ…》
《ごめんね 臭くて》
(嗅ぐ音)
臭くない。
あっ。
そんなに消臭剤 振りまくほど 臭かったですかね?
あっ いや あの…。
小さい方しか してないんですけどね。
えっ…。 何だか へこむな。
あの おじさん! おじさん。
すいません あの 傷つけるつもりは まったくなくて。
えっと…。
臭いって…。 はい。
翔太君… 戻ったんだね!
あっ… はい。 ハハハハハッ。
ハハハ… よかったね! はい。
よかった よかった。 ハハハ…。
痛い 痛い… おじさん 痛いです。 ハハハ…。
あのっ 輝元には まだ内緒でお願いします。
うん うん うん 分かった 分かった。
はい。 ハハハハ。
いい香り。 あれ? 鼻…。
はい 戻りました。
お~ おめでとうございます。 どうも。
ナスと トマト…。
夏野菜は 今年も高騰しそうですか?
今年も暑そうなんでね。 おそらく すると思います。
参ったな。 これで以上です。
ありがとうございます。 あっ リンゴがないですね。
あっ すいません。 すぐ配達し直します。
あっ! いや 大丈夫です。 自分で買いにいきます。
いや 持ってきますよ。 久しぶりに買い物に行きたいんで。
はい。
翔太。 お前 もしかして…。
うん。 おめでとう! よかったな。
ご心配お掛けしました。
あと もう少し酸味の強い リンゴが欲しいんですけど。
おお 奥の方が酸味強めだ。
じゃあ これも頂きます。 (宗夫)はいよ。
じゃあ また来ます。 おう 毎度あり。
(嗅ぐ音)
あと ここのハッサク ちょっとにおうんで➡
もしかしたら傷んでるかもです。 えっ?
じゃあ。
傷んでるって 新鮮なやつだぞ?
うぇっ ホントだ。
(深呼吸)
《帰ったら輝元に言おう》
《いい香りだ 売れる理由が分かる》
あっ。
《そうだ ちょっと試してみよう》
《まずは生クリームを 8分立てにする》
《カスタードを用意したら➡
生クリーム6とカスタード4の 割合にする》
《2つを合わせれば ディプロマットクリームの出来上がり》
お待たせ~!
おう。 って今日は ずいぶん早いね。
もう漬け置きもしてるんだ。 まあ 慣れてきたってのもあるし。
俺が味見しなくて大丈夫そう?
あっ あと実は…。
《治らなくても 俺がいる》
《俺が翔太の舌になる》
んっ?
いや お前に味見してほしい。 分かった。
実は試作品があって。
生クリームにカスタードを足して ディプロマットクリームを作ってみた。
おお~。 いいね その向上心 好きよ。
うん。 タイプの違う甘さが ケンカせずに高め合ってて➡
めちゃくちゃおいしい。 当たり前の組み合わせだけど➡
その奇跡的なバランスが 唯一無二の味を生み出してる。
これなら子供も喜ぶし ターゲット広がりそう。
やんじゃん!
よかった。 でも よくこんな繊細な味のバランス➡
味見もせずにできたな。 マジすげぇな!
いらっしゃいませ。 (客)プレーン2 ココア1 シナモン1で➡
お願いします。 プレーン2 ココア1 シナモン1。
うい! (客)これでお願いします。
ありがとうございます。
あっ おばあちゃん こんにちは! 来るの遅くなっちゃって。
いつものあるかしら? 大丈夫。
ちゃんと取り置きしてあるよ。 (女性)あら 悪いわね。
はい どうぞ。 糖分控えめのやつね。
(女性)おいしそう。 何か ずいぶん はやってるね。
うん おばあちゃんが 来てくれたからかな?
今日も完売御礼!
くぁ~ んん…。
じゃあ 俺 寺の仕事 まだ残ってるから➡
また後でね。 うん。
(真耶)ふ~ん? 輝元には まだ言えてなくて。
きっと喜ぶわよ。 でも何か怖いんです。
今の俺たちの関係が壊れそうで。
どうして? いや…。
あの子の役目がなくなるから? いや もちろん➡
輝元の役目は俺の舌ってだけじゃ ないんですけど。
でも やっぱり おっきい部分だし。
優しいのね 翔太君は。
あっ いや ただの心配性です。
でも言わないとね。
ずっと 隠しておけることでもないし。
そうですね。
あの子は大丈夫よ。
はい。
(鐘の音)
♬~
《味は分かってるけど 輝元に味見を頼むべきだよな…》
《何か だましてるみたいで 心苦しいな》
かき混ぜ過ぎじゃね?
おお…。
俺 翔太がうらやましいよ。
うらやましい?
やっぱりシェフだよな。 何がだよ。
主役だよ。 主役?
今日だって翔太が考えた新作が 一番最初に売り切れた。
俺は注文を聞いて ただ それを渡してただけ…。
お前は俺の舌だろ。
あんなに たくさんのお客さんが 来てくれるようになったのは➡
俺たち2人がいたからだろ。
どちらかが欠けても きっと駄目だった。
お前は俺の一部。
お前もシェフだ。 これからも頼んだぞ。
分かった。
味見 頼む。 うん。
♬~
バッチリ。 サンキュー。
♬~
何 飲みますか? (客)次は じゃあ 赤ワイン1つ。
赤ワイン。
ありがとうございます。 いい香り。
♬~
輝元。 んっ?
OK。
はい これ。 (岡部)サンキュー。
いただきます。
(岡部)うん…。➡
んっ? これは…。
♬~
岡部さん!? えっ…?
あの人 食い逃げじゃないよな?
違うって信じたいけど やっても不思議じゃないな。
いつもワンコインだしね。
⚟(駆けてくる足音)
戻ってきた。 よかった。
って何その格好!? えっ?
おかえりなさい 遠海 翔太シェフ。
えっ お… 俺に?
(岡部)はい! えっ どういうこと?
やっと言える…。
私は あなたのファンです。 受け取ってください。
あっ… はい。
どうしたんすか? 急に。
私ね 昔 パリでね➡
あなたの料理 たくさん 食べたことがあるんですよ。
ホントですか? (岡部)はい! あのう➡
私 今 こんなだけど 数年前までは世界中を飛び回る➡
やり手の貿易商だったんです。 岡部さん。
嘘は駄目だよ。 はい! そう言うと思ってました。
えっ?
うわっ!
ホントだ 海外ばっかり!
疑って すんまへん。 はい。
当時 パリでね たまたま食べた料理の味にね➡
衝撃を受けて! もう めっちゃ感動して➡
ぜひシェフに挨拶したいって 申し出たんですよ。
それで やって来たのが 翔太ってこと?
そうなのよ! こんな若い日本人が 本場のシェフを務めてて➡
しかも 大事なポジション任されてた。➡
私は びっくりした!
遠海 翔太。 その名前を 私は心に刻みました。
翔太は覚えてる? いや 正直 全然。
だよね。 (岡部)いや 俺 覚えてるから!
君が日本に帰国して➡
日本でレストランを開くって 聞いたときにはね➡
もう胸が高鳴ってワクワクして➡
いつオープンすんだろ いつオープンすんだろって待ってたら➡
予定日になっても オープンしなくて。
すみません。 もう 俺 諦めきれずにね➡
君の足跡をたどり続けてたら この屋台にたどりついたの。
どうして その話 今まで内緒にしてたんですか?
彼が味覚を失ったって知ったから。
もし俺がファンだって言ったら➡
君は 自分のことを 悲観するかもしれないだろ。
でも やっと伝えられる。 私は あなたのファンです。
あなたの料理で 人生 狂わされました。
メルシー。 メルシーボクー。
狂っちゃってるよ。 ありがとう! ホントにありがとう!
よーし じゃあ 乾杯だ! おい ギャルソン!
いや 輝元です。 この店で一番高いワイン開けてくれ!
あっ はい。
えっ? それ いつものじゃん。 えっ これですよ。
開けてくれ! はい。
すいません ありがとうございます。
ううん。 (グラスの引っ掛かる音)
大丈夫か? ギャルソン。 あっ 輝元です。
ありがとう 岡部さん。 すいません。
いやあ パリにいたときはね 毎日のように➡
君の店 通ってたんだよ。 ありがとうございます。
君は覚えてないかもしれないけど。 すいません。
最も衝撃を受けた料理はね 真鯛のポワレ。
当時の得意料理の一つです。 ええっ やっぱそうなんだ!
はい。 そうか そうか。
あのさ 俺も オーダーしていいかな?
はい。 あのパリで食べた真鯛のポワレと➡
まったく同じ味の真鯛のポワレを よろしくお願いします。
あのう 岡部さん。
味覚 戻ったんだろ? 俺には分かるよ。
いや 岡部さん。 えっ?
隠したって駄目だって! この屋台の料理はさ➡
どれもおいしかったけど 何かが足りなかったのよ。
でも今夜は違った。 完璧だった。
あのころに戻ってる。
どういうこと? お前 味覚 戻ったの?
うん。
あれ? えっ 何 バディに言ってなかったの?
はい。 えっ 言ってなかったのか。
それは悪いことしちゃったな。
何で すぐ教えてくれないの?
でも よかったじゃん。 いつから?
昨日 お前が作ったスープを 味見したときに気付いた。
それで あんなに 仕込み早かったの?
うん。 つまり 自分で味見できるのに➡
俺にさせてたってこと? 悪い。
俺をバカにしてんのか!? 試してんの? 何?
いや だから悪気はなかった…。 じゃ 何なんだよ!
気は使うだろって! 2人とも…。
俺たちって まだ その程度だったのかよ。
♬~
何か ホントにごめんね。
いえ 悪いのは自分なんで。
俺にできることあったら…。 ないです。
あした 楽しみにしてっから。
あしたは材料揃えておきますんで。 ありがとう。
じゃ ごちそうさま。
おやすみ。 ありがとうございました。
俺がお前の舌になってやるって 言ったから 気 使ったのか?
まあ それもある。
俺の役目がなくなるから 俺が いじけるとでも思ったの?
いや 別にそうは思ってねえけど。
俺は大丈夫だよ。
お前こそ どうなんだよ。 えっ?
回復したなら 店 出せるよな。
翔太が この屋台からいなくなる。 そっちの方が心配だよ。
バカ言うなよ。 俺は この屋台が一番…。
味覚がなくなってなかったら 屋台は やってなかったろ。
そりゃそうだろ。
俺 昨日の夜 夢 見たんだ。
夢? 味覚が戻って➡
翔太が この屋台から出てく夢。
《俺たち 解散か…》 《えっ?》
そういう意味だったのか。
俺は どこにも行かねえから。
そんなの分かんないだろ。
♬~
♬~
いらっしゃいませ。 (客)プレーン2つ。
プレーン2。 こちらにお願いします。
ありがとうございます。 そちらに お並びください。
こんにちは。 (客たち)こんにちは。
ハァ…。
翔太君。 あっ おじさん。
何を考えてるのかな?
(輝徳)そうか。 自分のお店を持ちたくなったんだ。
輝元に どこにも行かないとか 言っときながら➡
気付いたら 店を出すはずだった場所にいて。
翔太君が どんな選択をしようと➡
私は翔太君を応援してるよ。
翔太君が どこに行こうと 何をしようと➡
私は ずっと翔太君の味方だ。
おじさん…。
やり直すことはできないけれども 引き返すことはできる。
それが人生だ。
はい。 翔太君。
迷ってくれてありがとう。 えっ?
翔太君にとって うちの輝元が➡
大切な存在だったという証しだ。
輝元に出会ってくれて 本当にありがとう。
味覚を失った俺を➡
あいつは強引に 料理の世界に引き戻しました。
空気を読まない 料理はできない➡
いつも俺に報告なく勝手に進める。
ちょっとしたことで すぐケンカ売ってくるし➡
出ていったと思ったら➡
隠れて 話 聞いてたりして 姑息だし。
ハハ…。 でも…。
あいつがいなかったら 俺は終わってました。
人間関係がうまくいかなくて パリの店を辞めて➡
こっちで 店を出そうとしてるときも➡
やっぱり スタッフともめて…。
でも 屋台では うまくやれてると思うんです。
それは 翔太君が成長したという証しだ。
俺は何も変わってません。
あのころと違うのは 輝元がそばにいるってことです。
俺が毎日 体の芯から生きていられるのは➡
輝元がいるからなんです。
人は 天職に就くと輝くものだ。
今の輝元は 本当に輝いてる。
それも全て 翔太君のおかげだ。
ありがとな。 いえ。
俺はどうですか?
今の俺 輝いてます?
まぶしいくらいだ。
よかった…。
フフフッ。
(鐘の音)
岡部さんのやつ? うん。
後で ソース味見してくれ。 よせよ。
もう必要ないだろ。
俺の味見は もう必要ない。
あっ 別に いじけてるわけじゃないからな。
うん。
♬~
♬~
ホントに何も注文しないんですか? (岡部)うん。
最高に腹すかせた状態で 真鯛のポワレ食べたくてね。
いや それは さっきも聞きましたけど…。
何? 俺のいない所で 妖怪塩なめジジイとか言わないでよ。
岡部さんがいない所で 岡部さんの話題 出るの➡
あんまりないんで大丈夫です。
ありがとうございました。 ありがとうございました。
(客)ごちそうさまでした。
あ… あの 今から作るんで➡
そんな子犬みたいな目で 見ないでください。
子犬って フフッ。
翔太 俺 上がるから。 えっ?
2人の時間 邪魔しちゃ悪いしな。 お疲れ。
輝元君…。 おやすみ。
岡部さん 楽しんで。
♬~
♬~
フゥ。
《まずはソース》
♬~
《違う》
んっ? んっ? どうした?
駄目だ これじゃパリにいたときと おんなじ味になる。
いやいやいや それでいいんだけど 同じ味ってオーダーだし。
いや…。
過去の自分と今の自分 どっちがいいか判断してください。
あ… うん。
味見してくれ。
だから…。 俺は あのころを➡
再現したいわけじゃない。 あのころを超えたいんだ。
だから 味見してくれ。
お前の大事な役目だろ。
♬~
めちゃくちゃうまいな! えっ 俺も味見したい!
ちょっと今は黙ってて。 え~!? 今日 俺が主役なのに…。
何か隠し味ないかな?
あれとか どうかな?
あ~ あれね。 うん。
よし 乗った。 うん。
♬~
♬~
《皮に焼き色が付いたところで ひっくり返す》
《今だ》
♬~
《冷たい…》
《ここに…》
♬~
♬~
ムッシュ岡部 あちらの席へどうぞ。
ウイ。
♬~
♬~
お待たせしました。
真鯛のポワレです。
(生唾をのむ音)
おいしくなかったら 正直に言ってください。
分かった。
♬~
♬~
セシボン…。
翔太君。
パリで食べた味より 神懸かり的においしいよ。
君は 成長したんだね。
メルシー。
(岡部)うん。
俺たちがやってきたことは 間違いじゃなかった。
うん。
こいつのおかげです。
あらためまして➡
翔太の舌 やらせてもらってます。
俺が味噌好きだってこと 覚えててくれたんだね。
味噌ラーメン食べたとき その会話しましたよね。
さすがだな! フフ…。
ありがとうございます。
♬~
えっ?
はっ?
こんなにもらえませんよ!
これは今までの分と 君たち2人の未来への投資。
頑張ってね。 フフ。
♬~
ありがとうございます。 ありがとうございます。
じゃあ。
♬~
♬~
え~ 私も食べてみたいわ 真鯛のボレロ。
ポワレね。 アハハッ ごめんなさい。
雰囲気で覚えてたから。 少し お時間頂ければ➡
いつでも作りますよ。 ホント?
はい。 うれしい。
輝元 お前は幸せ者だな。
俺も そう思うよ。 (輝徳)うん。
だって こんなスーパーシェフと 一緒に屋台やれてんだもん。
何度も言うけど 俺たちは一心同体なんだから。
嘘でもうれしいよ。 嘘じゃねえよ。
♬~
彼のことなら 陽美さんに聞くのが一番。
[この作品を…]
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