All language subtitles for The End of the Pale Hour 1080p AMZN WEB-DL DDP2.0 H264

（電車の走行音）

（若者たちが はしゃぐ声）

（ドアベルの音）

（石田いしだ）え～ 経済学部の石田です

本日は お集まりいただき
ありがとうございます！

（学生たち）よっ！
（拍手）

（石田）あざっす　え～
景気がこれだけ厳しい中で—

今の段階で内定が出てる就活生は
ほとんどいないそうです

それも 第一志望の企業からとなると
さらにしぼられますよね

つまり 今日 ここにいる人たちは
みーんな 勝ち組っていうことです

（学生たちの 喜ぶ声）

（石田）では カンパーイ！

（学生たち）カンパーイ！

（学生たち）イエーイ　カンパーイ

（石田）笑って みんな

（石田）勝ち組 イエーイ

（シャッター音）

（宮内友香みやうち ゆうか）ねえ　どこ 内定したの？

（僕）あ… 東京中央印刷

へえ～　いいね 大手じゃん

こいつが印刷業界に
イノベーション起こすから—

覚えといてやってよ

（宮内）ほんと？

私 電通でんつう行くから
仕事で会うかもね

よろしく

あの… 俺 まだ なくてさ

全然いいよ

なんだよ 名刺ぐらい持っとけよ

（僕）ああ そうだよね
（宮内）いいって

はい よろしく　握手

よろしくお願いします

よろしくお願いしまーす

あっ 同じ業種のやつ 友達いるわ

（宮内）ほんとに？
（石田）うん 紹介する

（宮内）お願い

（学生）お兄さん ビール２つ

（僕）玉…

（学生）絶対 学生のうちに
留学はしといたほうがいいって

（学生たちの話し声）

（瓶が倒れる音）
（学生たち）ああ～っ

（石田）大丈夫　すいませんでした

♪～

～♪

（学生）ダメだよ
もう１回 もう１回

どうしたの？

（彼女）あっ　ごめん
携帯 なくしちゃったみたいで

マジ？

番号 言うから かけてくれない？

ああ　いいけど
番号いくつ？

（彼女）えっと　080

6513 724

（僕）724

（僕）どう？

（彼女）あ…

（僕）あ…

あっ いや あの
探すの下手すぎじゃない？

ごめん ごめん　鈍くさいよね

あ… いや いいけど べつに

先 出ちゃうんだけど
お金 どうしよう

あっ もう 帰るの？

（彼女）うん

ちょっと 顔 出そうと
思っただけだったから

（一気コールの声）

あ… 1,000円くらいで いいんじゃない？
渡しとくよ

（彼女）ありがと

（僕）うん

じゃっ

（僕）お疲れさま

（学生たち）なーに持ってんの？
なーに持ってんの？

（学生たち）
飲み足りないから持ってんの

（学生たち）
はい 飲んで 飲んで 飲んで
飲んで…

（僕）フ～

よいしょ

（女将おかみ）はい

ありがとうございます

（女将）今日は 一段と騒がしいね

いやあ ほんと すいません

めでたいから いいのよ

いや… でも ちょっと
浮かれすぎじゃないですか

自分たちで“勝ち組”なんて

（女将）うん
浮かれたっていいじゃない

若いんだから

（石田）おい！

（石田）お前
こんなとこ １人で いんなよ

上行けよ 上

いや ちょっと あの
すぐ戻るからさ

（石田）絶対？
（僕）うんうん 戻る戻る

あっ 水が—

おいしっ

（石田）女将さん
ハイボール３つ お願いします

（女将）はいはい

（石田）はいはい
はいはい はーい

（僕）めんどくさ

（女将）行ってきなさいよ
せっかくなんだから

はいはい

（携帯電話の通知音）

♪～

（僕）あの これ… ２人分
（女将）あっ？

あの 先 抜けるから
引いといてください

（女将）うんうん

（女将）うわっ

浮かれた顔してる

いや してないっすよ
うるさいっす マジで

（電車の走行音）

（携帯電話の通知音）

（僕）クジラ公園…

（彼女）お疲れさま

あの誘い方は ずるいでしょ

（彼女）えっ 何？

～♪

（僕）携帯
ほんとは なくしてなかったでしょ

（彼女）え？ 違う違う
ほんとに なくしてたよ

（僕）ほんとに？

（僕）
あんな あざとい誘い方あるのかって
びっくりしたんだけど

はい

変な飲み会 お疲れさまでした

乾杯

（彼女）フフッ

あっ　ハイボール好きだった？
勢いで買っちゃったから

飲み終わったら コンビニ行こ

うん　あっ なんか
あっちのほうにあったよ

ああ そうそう
そこで買ったから

…っていうかさ

なんでさ 飲み会 抜け出したのに
また 飲み直そうって思ったの？

（彼女）ん～

数あわせで呼ばれただけだったし—

だからって １人で飲み直すのも
さみしいじゃん

まあ

（彼女）…で スマホ見たら
着信履歴が残ってて

それで 誘ってみたの？

やっぱり ダメだったかな～

ダメじゃないんだけどさ

でも 来てくれたの うれしかった

♪～

えっ ３枚目でしょ

いや ４枚目でしょ

えっ 本気で言ってんの？
だって“トレモロ”入ってんだよ

いや RADラッドは“有心論ゆうしんろん”と
“ふたりごと”でしょ

絶対４枚目だって

いやあ ３枚目だと思うな～

リリースされたとき
高校で聴きまくったもん

あれ？ ３枚目ってさ
中学じゃなかった？

あっ ひょっとして浪人？

ううん

ああ でも私 院生だから

あっ じゃあ 年上だ

あの 敬語で話したほうが
いいですか？

（彼女）いやいやいや やめて
絶対 やめて

分かった　分かった

来年から 何すんの？

印刷会社で働く

代理店の人も びっくりするような
企画を考えて—

世の中 全体が
熱狂するようなものをつくりたい

へえ～ おもしろそうだね

人を楽しませる仕事が
したかったんだよね

（彼女）ふーん　そうなんだ

春から楽しみだね

（僕）うん

そっちは？

私はアパレルのブランド

小さいとこだけどね

途上国の素材使って
かわいいバックとか作ったりしてるの

へえ～ じゃあ あれだ
海外 行ったりとかもするの？

いつかはね

将来は ど派手な洋服が似合うような
おばあちゃんになって—

年をとることを
楽しめたらいいなって

へえ～ いいね

（彼女）うん　でしょ？ フフッ

～♪

ヤバッ 間に合うかな？

たぶん だけどさ

何？

俺といたら きっと楽しいよ

へえ～　自信満々じゃん

自信あるもん

なんか恥ずかしいけど

ありがと

（彼女）電車 出ちゃう　走ろっか

（僕）うん

（僕）間に合うかな？

（彼女）ねえ

（僕）ほいほいほい

（彼女）ほいほいほい　ほいっ

（彼女）ほいほいほい
（僕）ほい ほいっ

（石田）おい

（石田）おーい

（石田）おい

（僕）おっ

お前 こないだ
なんで 先に帰ったんだよ

あっ いや… えっと…

フッ

今日も飲むから来いよ
７時に ダルマな

あっ 行けたら行くわ

それ 絶対 来ないやつ

まあ でも 待ってるわ

じゃっ マジで待ってるからね

（僕）ただいま～

（母）あっ おかえり
今日は夕飯いるの？

（僕）あー そうね そうねえ…

（母）要らなかったら早く言ってよ

分かってるって 迷ってるだけ

何よ その言い方

（携帯電話の通知音）

どうしたの？

いやいやいや べつに
何でもないよ

（母）フフッ

（近寄る足音）

（彼女）へえ～
そういうのが好きなんだ

あっ いや あの… 違くて

この子ね 知り合いだったんだよね

（彼女）えっ そうなの？
（僕）うん そうなの

（彼女）へえ～ うちの大学の子？

うん いや 全然
あの… 遠めの知り合い

遠め？

うん　遠めの

へえ～
おっぱい大きい子 好きなの

いや べつに そんな… ねえ

じゃあ 小さいほうが好き？

（僕）あのさ 真っ昼間から
性癖チェック やめてよ

おっぱいかあ

ほんと やめろ　なあ

（女性たち）昨日もだよ

（女性１）昨日も同じ道を歩いてた
おとといだって その前だって

（女性２）何日も 何か月も 何年も
私は この道を行ったり来たり—

行ったり来たりしてる

（女性３）ほかに いっくらでも
道は広がっているはずなのに—

指定された 通勤経路に従って

（女性４）アリのように
家とオフィスを行ったり来たり—

行ったり来たりするだけ

（女性３）あのとき 私が夢見てた未来は
どこ行ったんだろ？

（女性４）いまだに諦めきれないのは
私だけなのかな

（女性１）お母さん

（倒れる音）
（観客）きゃっ

（僕）うー よいしょ

（僕）どうでした？

（彼女）んー…
ちょっと 期待外れかな

なんか ストーリーだけで言えば—

このあいだの飲み会の
延長線の話なんだなあって思った

えっ あの勝ち組 飲み会？

（彼女）うん
（僕）どういうこと？

私たち 一番の夢を
かなえたわけではないにしろ—

来年から働くことに
多少 前向きでは いるでしょ？

（僕）うーん　まあ そうね

（彼女）うん　でも その結果—

うまくいかなかったのが
今日の劇の人たちじゃん

夢見た景色とは
全然 違うところに立って—

こんなはずじゃなかったって
頑張って あらがって—

平凡から逃れようとして
何者かになろうとしてる

確かに そうかも

結局 主人公は飛び降りちゃったしね

社会人になったらさ—

いい会社に入ったら
何者かになれるって思ってても—

実際 そんなことないんだな

（僕）ハア～ そんなもんかあ

（彼女）フフッ

（彼女）じゃあ 次の問題です

（僕）はい どうぞ

（彼女）“コーテル”
これは どういう意味でしょうか？

（僕）コーテル？

（彼女）１ 餃子ギョーザ
（僕）うん

（彼女）２ 唐揚からあげ
（僕）おお

３ 炒飯チャーハン

泳いだね 目が
炒飯で目が泳いだね

えー　コーテル？

（彼女）うん

えー　唐揚

ブーッ　正解は餃子でした

（僕）難しいよ

はい じゃあ次
“ソーメン” これは？

ソーメン？

１ ごま団子だんご

（彼女）２ 焼きそば
（僕）焼きそば

３ 酢豚

あ～ はい　あ～ はい

えっ　まあ でも—

焼きそばだと なんか
そのまんますぎる気するし…

（彼女）うん

ソーメンでしょ？

えー ごま団子

（彼女）ウフフフッ

ブーッ 焼きそばでーす

（僕）マジで？
（彼女）はい

まんまじゃん

もうリーチだよ

ヤバい

（彼女）じゃあ 次

ハア～

コーテルリャンガーリャンテ

なんで ため息ついたの？

コーテル リャンガーリャンテ？

コーテルリャンガーリャンテ

いや もう選択問題ですらないから
分かんないよ

さっき コーテルは答え言ったでしょ

ああ 何だっけ？ コーテル

（僕）餃子だ　餃子
（彼女）そう

（僕）餃子… 餃子を
（彼女）を？

（僕）餃子を…
（彼女）を？

いっぱい下さい

違います～

違うよね～

はい　３回 間違えました
罰ゲームです

罰ゲームだ

はい　手 置いて

何？

マジ？ アハハッ

（僕）わっ イタッ
（彼女）ウソでしょ？

（僕）痛い痛い
（彼女）ウソだ

痛い痛い痛い
痛い痛い 痛い痛いっ

（僕）痛いよ
（彼女）え？

痛… マジで痛かった

（あくび）

眠さが限界

いったん 店 出ようか？

（僕）うーん そうだね　分かった

（彼女）フフフッ

（呼び出しブザーの音）

（僕）こっち？

（彼女）うん

どうしよっか？

どうしようね

あのね

もうちょっと 押してくれたら
いいかも

えっと…

うん？

えー…

押していいの？

うん　ちょっとだけ

えーっと…

じゃあ

じゃあ…

もし よかったら—

朝まで 一緒にいませんか？

はい　お願いします

（彼女）フフッ
（僕）ハッ

うん

（ドアが開く音）

（僕）お～ ほほっ

（ドアが開く音）

（僕）わっ すげえ　広いよ

（僕）ねえ？

（僕）んっ

近いね

フフッ

（歯がぶつかる音）
（彼女）あっ

（僕）あっ　イタッ
（彼女）あ… ダハッ

（僕）イッタ…

いや 下手かよ

（彼女）何 これ
中学生みたいじゃん

フフッ

楽しいね

うん　何 これって思ってる

分かる

♪～

（僕）すげえ 好き

（彼女）うん

～♪

（雨の音）

♪～（携帯電話からの音楽）

（彼女）うん？

もうちょっと聴かせて

（彼女）うん

これ 何て曲？

“エイリアンズ” キリンジ

好きだな これ

（彼女）ウフフ ダメだよ 臭いよ

（僕）ううん 好きな匂い

～♪

（携帯電話の通知音）

♪～

（彼女）おっ

（僕）デカッ

（僕）かっこいいな

（彼女）すごいね
（僕）ねえ

（彼女）きれい

（僕）おおっ 似合ってる

（僕）かわいいです

（僕）ネービー入ります ネービー
（彼女）ネービー？

（彼女）チ・ヨ・コ・レ・イ・ト

グリコ

やったーっ グ・リ・コッ

お手　お手は？

（彼女）おおっ やればできる
（僕）やればできる

（僕）おっ
（彼女）フフフッ

（彼女）ハッピーバースデー
（僕）すいません

（僕）22歳の抱負？
（彼女）うん

夢は おっきく

（彼女）夢は おっきく
（僕）夢は おっきく

（彼女）よろしくお願いします
（僕）お願いします

おめでと！

おおっ おおっ！ えっ

（僕）はい どうぞ

（僕）来るよ 来るよ
（彼女）ああ 来る来る

（彼女）怖い 怖いっ
（僕）来るよ

（ボールが当たった音）
（僕）おっ

（彼女）当たった　当たった！
（僕）当たるじゃん

（僕）うまいと思うけどな

（僕）いけいけ いけいけ
（彼女）あ～ おおっ すごーい

（僕）すごい すごい すごい

（彼女）ついた？
（僕）ついた ついた

（彼女）わ～

（僕）いや …ってか 寒っ

こんな時期 普通 花火しないから

えっ いいじゃん
もうすぐ 青春 終わっちゃうんだし—

楽しいこと全部やっとかないと

（僕）ちょっと
そんなこと 言わないでよ

社会人になっても
青春は まだ続くんだからさ

（彼女）でも 何でも そうじゃん
何だって いつかは終わるよ

（彼女）今度は
おっきな 打ち上げ花火 見に行こうね

～♪

（人事部社員）今から 皆さんに
新規ビジネスの提案をしていただきます

（人事部社員）
普及し始めている電子書籍を使って
自由な発想で—

印刷業界にイノベーションを起こすような
アイデアを考えてください

（人事部社員）
１チームずつプレゼンしてもらうので
自分たちなりの答えを出すように

（人事部社員）では 始めてください

（新入社員たち）はいっ

（古賀尚人こが なおと）
じゃあ 僕が意見をまとめていくので
ブレストしましょう

（黒澤くろさわ）うっす
（尚人）はい

（尚人）えーっと そうだな

じゃ まず 皆さんが どういったときに
電子書籍を利用するのか—

考えてみましょうか

（尚人）
うーん　スマホから どんな情報が
手に入ればいいと思う？

過去の買い物データでしょ
通勤状況

月々の読書量は…

２か月目から分かるか

あと 何かあるかな？

あ… じゃあ

ＳＮＳと連動するっていうのは
どうだろう？

その人の好みに合ったものとかが
分かるかも

おお いいじゃんそれ
いいよね？

（黒澤）うん
（女性社員）いい

ＳＮＳと連動

それ 結構いいな “ＳＮＳと…”

（尚人）このように
電子書籍アプリを中心とした—

新たなライフスタイルを創出する

（尚人）これが 僕たちの考える
電子書籍ビジネスの未来です

ご静聴ありがとうございました

（拍手）

（尚人）もらっちゃいました

（僕）すごいな

（黒澤）もう すげえな 古賀
これ配属にも影響あんじゃねえの？

だといいな

（黒澤）みんなの行きたいとこ
希望 通ったら 礼 言わなきゃだな

古賀って
どこの部署 行きたいの？

（尚人）企画部
（黒澤）ほ～

あっ 俺も

あっ そうなんだ
一緒に働けるといいな

おう

みんなで偉くなって
俺らで役員会議とか開きたいよな

おおっ いいね

いや でも まずは
同期で一番になるところからかな

ハッ かっこいい

（黒澤）期待してますよ 部長
（尚人）おう

いや 社長か

（尚人）社長
じゃあ社長と呼んでください

（黒澤）
ぜひ 社長と呼ばせていただきます

（尚人）いや～ 頑張ろう

すっごい 優秀なやつでさ
頭一つ抜けてるっていうか

（彼女）ふーん

自信満々なんだけど
全然 嫌みじゃないんだよ

あと かっこいいし

ふーん そっか
すごい子が いるんだね

うん　そっちは？

楽しいよ

自由な雰囲気だし
私に合ってるなあって

最初の何年か現場で学べば
商品の企画もできるみたい

（僕）ああ そうなんだ
（彼女）うん

たくさん 手に取ってもらえるの
いっぱい作るんだ

じゃあ おんなじような
仕事することになるかもね

（彼女）うん？
そんな大きな仕事じゃないよ

でも 自分が考えたものが
世に出るのは ちょっとワクワクする

だね　頑張ろうか

（彼女）うん
（僕）お互いね

中山なかやまさーん

（中山）はい

（中山）研修 お疲れさま

これから君のトレーナーになる
中山です　よろしく

（僕）よろしくお願いします

はい これ　一式ね

君の席

はい

（中山）着替えて
（僕）はい

（中山）終わった？

あっ はい

ああ 最後 ここ　ハンコ押して

はい

（僕）はい
（中山）はい

あの…

（中山）何？

総務部って
どんな仕事するんですか？

（中山）どんなって言われてもな

例えば
研修でグループワークしたろ？

あの会場のテーブルとイス 座席表
誰が用意したと思う？

総すべてを務めると書いて 総務だ

営業 企画 技術 製造
それぞれの部署が担当していない—

その他 すべてを受け持つ部署が
うちなんだよ

はい

（中山）あっ これ

（中山）次から ハンコは
少し斜めに押してくれない？

（僕）え？ 斜め？

分かりました

（男性店員）ありがとうございました
（女性店員）ありがとうございました

そう 総務部

いや 最悪だよ

（彼女）そっか
先輩たちは？ いい人そうだった？

いや 分かんないけど…

なんか ちょっと
人種 違うっていうかさ

（彼女）異動のお願いとかできないの？

いや 絶対ムリだよ
配属されたばっかだもん

（彼女）そっか

なんか この会社じゃなくても
よくなっちゃったな…

（彼女）何 言ってんの 元気出しなよ

（彼女）
ほら 週末はさ どっか遊びに行こ

うん　分かった

（扉が開く音）

（僕）ハア…　フウ～

何だよ 辛気くさいな

いや ほんと 落ち込むわ

まあ 俺もだけどな

いや でもさ 営業なんて花形じゃん

いやいや 営業こそ
体質 古いっていうか—

こう レールの上 走るのが一番みたいな
雰囲気 出てるんだよ

そうなんだ

就活のときは
かっこいいことばっか言ってたのに

入ってみると大違いだよな

いや こんなハズじゃなかったよなあ

まっ 問題を環境のせいにするなって
言うし—

自分の場所は
自分でつくれってことかもな

それも そうかもな

とにかく 社会人 楽しもうぜ

（僕）うっす
（尚人）はい

ただいまー

（彼女）あっ おかえり～

（尚人）おいっす

いや 結構 時間かかりそうだな
悪いな

（尚人）
いいよ　飲み代 払ってくれれば

出た

（彼女）よいしょ　イスも出来た

（僕）おっ ありがとう
（彼女）完成 完成

（尚人）どうですか？

いや 飲み代 払いますよ

はい　じゃあ 次 本棚

（僕）本棚
（尚人）本棚 はい

（３人）せーの はい

（尚人）よっしゃあ

（僕）よっしゃあ

（僕）懐かしいな それ

（僕）おわっ

（僕）あの… 何 見てんの
（尚人）ちょっと待って

やめて

ちょっと待って もうちょっと
今見たばっかり

（尚人）ちょっと もうちょっと
（僕）絶対 見せないから

マジで ちょっと

この植物 ここでいい？

うん？ うん　そこでいいよ

はい　あっ ついた～

（僕）いやあ
やればできるもんですね

いやあ 俺がいなかったら—

あと２日は段ボールの上で
寝ることになってたぞっ

私がいなかったら—

あと４倍は暗い気持ちで
組み立ててたと思うよ

（尚人）うん

はい　分かったから
ありがとうございます

（尚人）うん
（彼女）はい

…ので 飲みに行きましょう

（尚人）おっ　よしっ
（彼女）やったーっ おごりだーっ

あっ 俺におごりって言ったよね

（僕）尚人の おごりかな？
（尚人）俺の？

（尚人）あっ ここ

ここが 俺の行きつけだから
覚えといて

行きますね

（僕）よさそう

（尚人）こんばんは

（尚人）じゃあ
俺の街 高円寺こうえんじへ ようこそ

（僕）べつに尚人の街じゃねえだろ

またまた～
俺が住んでるから来たくせに？

いや どっちでもいいから
飲も！ はい 乾杯

（尚人）乾杯！

例えばさ ８月とかにさ—

渋谷の道玄坂どうげんざかの照明を
60％ぐらいカットして—

その代わりに
道に ちょうちんをぶら下げるの

（僕）そしたら 涼しげじゃない？

打ち上げ花火とかも上げちゃって

みんな
夏が待ち遠しくなる みたいな

（尚人）あっ じゃあ
それにかぶせて—

スクランブル交差点 封鎖して
盆踊り大会とか

（僕）あー いいね

もう 渋谷全体がさ
夏祭り会場みたいになってて

…で 109とか タワレコとか
マークシティとか—

あと ハンズとか パルコとかさ

もう 全部
屋台スペースみたいにしてさ

RedレッドBullブル に協賛してもらってね

出たあ Red Bull

もう イケてるクリエーティブの大半が
Red Bull だからね

（尚人）そう

ねえ いつもそんな話してんの？

いや もう 会社じゃさ
思ったこと やらせてもらえないのよ

そう　うちの頭の固さ
知らないでしょ？

染まんないように こうやって
クリエーティブ会議して—

頭 鍛えてんの

いや でも いつか ほんとに
２人で渋谷ジャックしてよね

いいね　いい 響きだね
渋谷ジャック

（僕）やろう
（尚人）うん

（僕）なっ

♪～

その着信が“おしりかじりむし”だった
っていう話

（尚人）速い

（僕）ヤバい ヤバい

（僕）Red Bull　Red Bull

（僕）ヤバいよ
（尚人）酔った？

（僕）みんなヤバいよ
（尚人）酔ってないよ

（尚人）俺 まだ酔ってないよ
（僕）酔ってるから

酔ってないじゃん

（尚人）これから行こ
これから行こう

（僕）どこ行くんです？
（尚人）もう１個 行こう もう１個

（僕）もう１個？
もう１個って言わないっしょ

（僕）ほっ

（彼女）おっ

（尚人）ほっ
（僕）おい

（僕）なんか この時間 幸せ

（彼女）分かる
ダラッダラしてるだけなのにね

（尚人）それがいいんですよ きっと

あ－　今日が終わっちゃうよ～

ほんと
あしたにならないでほしいわ

（彼女）昇ってくんなーっ

～♪

（セミの鳴き声）

（上司）これ　捺印なついんは
左斜めに傾けて押せって

はい

（上司）いつまで同じことやってるんだ

そんなんじゃ
優秀な後輩に すぐに抜かされるぞ

すいません

（僕）あの

そもそも
なんで傾ける必要があるんですか？

（中山）ハア…

左斜めに傾けることで—

上位の承認者に
頭を下げているように見えるだろ

いやあ そうですかね

そうですかねじゃないよ
敬意だよ 敬意

桐谷きりたにだって ちゃんとやってるぞ
なあ

（桐谷）はい
言われたことやってるだけですけど

そうだよ　お前も ちゃんとやれよ

すいません

あと あしたから俺いないけど
よろしくな

はい

えっ そうなんですか？

必要な資料は全部 ここにあるから

分かりました

♪ Got ta Jump N' Shout

♪ Got ta Jump N' Shout

知らない？ BASEMENTベースメントJAXXジャックス

まあ 知ってはいる

（中山）あっ 知ってる？
（僕）知ってはいますけど

（中山）へえ～

（中山）♪ Got ta Jump N' Shout

（中山）♪ Got ta Jump N' Shout

（パソコンからの音楽）

（彼女）フジロック？

そう　なんかさ 変な先輩がいてさ

（彼女）うん

その人 フジロックのときだけは
毎年必ず有給取って休んでるんだって

（彼女）ふーん

さっきから なんかソワソワしてると
思ったら それでか

行かない？

えーっ ヤダ
暑いし 怖いもん

ナンパとか多そうだし

見たいアーティストは
ワンマンで行くよ

そっか　そうだよね～

いや 行きたすぎでしょ

いやいやいや 大丈夫です
忘れて

（彼女）フジロックの代わりにさ
（僕）うんうん

（彼女）どっか行かない？

（僕）うん？

（彼女）だって
ずっと名残惜しそうにしてるんだもん

（僕）うーん だってさあ
フジ以外に行きたいとこないんだもん

（彼女）フフフッ 期待しすぎ
行ったことないんでしょ？

（僕）いや まっ そうなんだけどさ

（彼女）じゃあ こうしよう
（僕）うんうん

あれは 全部ウソです

例年の楽しそうなツイートは
もう全部サクラが仕込んでて—

今年はフランツも来日しないし
ウルフルズは復活延期

ＯＫオーケーＧＯゴーもSTRAIGHTENERストレイテナーも出ない

…で 会場は大型の竜巻と
台風に襲われて—

空からは
あ～ カエルが降ってくる

（僕）ねえ 何 言ってるの？

どこ行くかさ
車で走りながら決めるのは どう？

（僕）うーん

フジロックほど
最低な場所はないみたいだし—

私たちが過ごす所ほど
最高な所はないみたいだよ

私と行かない？
まだ知らない世界へ

（セミの鳴き声）

（彼女）お待たせ～
（僕）おい

（彼女）よいしょ

よし じゃあ 行こっか

どこ行く？

（彼女）えー　海

海？ えーっと どこの？

西か東だったら どっちがいい？

えー… じゃあ 西

オーケー
じゃあ その辺でホテルも取ります

マジで？

（彼女）レッツゴー！

♪～

（ホテルスタッフ）
お待ちしておりました

（僕）ちょっと すごい

（僕）マジか
（彼女）すごいね

（ホテルスタッフ）
どうぞ ご案内いたします

（僕）わっ 広っ
（彼女）ええーっ

（僕）広すぎだよ
（彼女）広っ

（僕・彼女）うわあ

（僕）すっげ

（彼女）でしょ
絶対 フジロックより いいって

（僕）いやあ でもさ これ
フジロック何回分なの？

（彼女）いや もう
その分 楽しむしかないでしょ

（僕）だね　ちょっと楽しもうよ

（彼女）おおっ すごい
（僕）おーいー

よっしゃ じゃあ
お先 入れますよ

ありがとうございます

（彼女）あっ じゃあ

あら いいですか
いいんですか

はい　チーズ

（シャッター音）

はい　チーズ

（シャッター音）

（僕）ヤバい ヤバい
（彼女）お～

（彼女）んっ
（僕）うわっ　ちょっと待って

（僕）いけっ
（彼女）ちょ 待って 待って　イッテエ

（僕）ちょっと なんか懐かしい感じ

あ… ちょっと

（僕）あ～
（彼女）ああ

ちょっと

～♪

あ～ 夢見てるみたい

ほんと それな

ねっ

もう いっそ
死んじゃいたいなー みたいな

冗談でも そんなこと言わないの

ごめん

もし 死んだら
俺も一緒に死ななきゃいけない

なんでよ

だって ほんとに いなくなったら
こっちも 死んでるようなもんだもん

ダメだよ　ちゃんと生きてね

じゃあ 死んだように生きる

（彼女）フフフッ
近所迷惑だからやめて

ハア…

好きだよ

うん

全部 好き

うん… ありがと

♪～

（僕）きれいだね

（彼女）うん

（彼女）魔法みたいな時間だったな

そうだねえ

行こっか

～♪

（セミの鳴き声）

フウ…

（製本機の作動音）

（上司）じゃ 向こうやって
（黒澤・尚人）はい

（黒澤）俺 奥行くわ
（尚人）うん

（黒澤）ういーっ 久しぶりじゃん
元気してた？

（僕）まあ それなりにな

しかし
いくら誤植 出たっつってもさ—

こんなに人件費かけたら
完全に赤字でしょ

（尚人）意味ねえよ
（僕）ほんとだよな

（黒澤）そうだ そうだ
俺たちまで工場詰め込まれて—

誰が売り上げ立てんだって話っしょ

（尚人）よし

（僕）じゃ これね
（尚人）おう

（尚人）どこ？

（僕）えっとね このページだね

あ～ 疲れた

今日のビールは うまいだろうな

聞いてる？

（僕）あ？

ああ ごめん　あの… そうだな

（尚人）絶対 聞いてなかった

（僕）いやいや ビールでしょ
聞いてたよ

（機械が止まる音）

（警報音）

（作業員１）誰か 救急車！

なんか ヤバそうじゃない？

（作業員２）事故だって
（作業員３）事故？

（作業員２）指 飛んだかもって
（作業員３）救急車 呼びます！

え… 指？

マジ？

（作業員４）救急車 呼びましたから

（中山）深呼吸 深呼吸
吸って 吐いて

すいません…

（中山）大丈夫だから

（中山）おいっ
氷とビニール袋 持ってこい

はいっ

あの 氷 持ってきました

（中山）ああ　ちょっと 指 探して

（作業員５）指だ！
（中山）えっ

あっ… あった

（中山）ちょ 氷！ 氷を 氷

（救急隊１）救急です 通してください
すいません

（救急隊２）
大丈夫ですか？ 歩けますか？

（近づく足音）

（尚人）ほい

（尚人）ハア…

どうした？ 元気出せよ

やっぱ俺 この仕事 向いてないわ

それ聞くの何回目か分かんないな

いや マジで今回は思ったんだって

なんで？

いやあ…

不謹慎なんだけど

（尚人）うん

ちょっと 興奮したんだよね

はあ？

いや… いや
めちゃくちゃ不謹慎なんだよ

不謹慎なんだけど

どれだけ自分が
退屈な毎日を過ごしてるのか—

思い知らされたっていうかさ

まあ… 分からんでもないけど

じゃあ 毎日
誰かの指を切断させるか？

いや それは ヤクザじゃん

フッ

あー なんか
スカッとすることしてえな

うーん そうだな
なんか沈んでてもしかたないしなあ

（尚人）何する？

（僕）ハッ

（空振りする音）

（尚人）下手くそか
ほんとに来たことあんの？

（僕）あるよ

（ボールが当たる音）

（僕）おお

（僕）彼女が好きで
飲んだあととかに連れてこられてたのっ

（尚人）出たー “彼女”

うるさいよ

あっ その彼女から
返信 来たんだっけ？

（僕）いや まだ

いっても １週間とかだろ？

忙しいんじゃないの？

（僕）いやあ
今まで そんなこと なかったしなあ

そっか

来る時が来たってやつか

あー それ マジで言わないで

いや… しんどいね

でもな

何？

いくら好きでも—

相手が結婚してたら
ハッピーエンドは望めねえよ

（ファンファーレ）

（機械の声）ホームラン ホームラン
ただいま ホームランが出ました

（機械の声）おめでとうございます

そんなこと…

（健太の声）最初から分かってたよ

（僕）えっ 何？ どういうこと？

夫がね 海外出張に出ちゃってて

だから 今は１人暮らし

えっ…

えっ あっ

あ… 結婚してんの？

（彼女）うん　ほんとは彼に
ついていく予定だったんだけど

まあ 行きたい会社もできたし

残ることにしたの

自分の人生
大事にしたいなって思って

でも 彼は約束が違うって

残ったからには
自由を謳歌おうかしようって決めたんだ

３年だけだしね

へえ～　そうなんだ

ねえ　音楽 何が好き？

えー RADとか？

おっ 何枚目？

４枚目？

えっ ３枚目でしょ

♪～（携帯電話からの音楽）

（僕）ねえ

（彼女）うん？

なんで俺だったの？

（彼女）今 そういうこと聞く？

（僕）うん

（彼女）横顔が似てたんだよね

誰に？

夫に

空港でね 別れるとき—

指輪 外されちゃったんだ

え？

こんなハズじゃ
なかったんだけどなあ

～♪

（雨の音）

（桐谷）フウ　寒いですね

（僕）よいしょ

（桐谷）今日は 一段と
顔 死んでますねえ

（僕）そんなことないよ

（桐谷）彼氏からLINE来なくて—

もんもんとしてる
女子大生みたいな顔 なってます

（僕）あのさ
桐谷 俺のことバカにしてるだろ？

（桐谷）し… してませんよ

（桐谷）でも
図星だったりしません？

（僕）違うよ

（桐谷）“道草を食う”って言葉
あるじゃないですか

あれって—

馬が道に生えてる草を食べるから
遅れちゃうって意味なんですって

（僕）は？

（桐谷）うーん

当時は それが普通なんだと思うと—

いろいろ
気長に待てたんだろうなあって

羨ましくなります

あのさ もしかして
俺のこと励まそうとしてくれてんの？

なんか 悩んでそうだったんで

（桐谷）でも
自分にも言ってるんです

私も何かと
やきもきするときあるんで

（僕）桐谷も
そんなときあるんだな

（桐谷）そりゃありますよ
人間ですから

（僕）ごめん ごめん

久しぶり

突然 帰ってきたんだよね

一応 聞くけどさ

旦那さんが だよね？

そう

そっか…

じゃあ 今 羽田着いたよ
みたいな感じだ

（彼女）うん
ほんと そうだった

それが あの旅行 行った日？

（彼女）うん

それから ずっと一緒にいて

だから 連絡も取れなくて
会える時間も作れなかったんだ？

まとめると そんな感じかも

ほんと ごめんね

せめて すぐに
ちゃんと伝えたかったんだけど

だけど？

ごめんなさい

一つ 聞きたいんだけどさ

（彼女）うん

ウソでもいいんだけど

ウソは言わない

ウソでもいいから
言ってほしいんだけどさ

何？

少しは好きでいてくれた？

ごめんね

ちゃんと すごく好きだったよ

（街の喧騒けんそう）

（若者たち）イエーイ

（救急車のサイレン）

あの…

はい

彼 今日も休みですか？

（中山）ええ　体調不良で
ここ数日 休んでます

そうっすか…

（僕）んっ…

ハア…

（水が流れる音）

（殴る音）

（殴る音）

ううっ

うあっ

（殴る音）

ああーっ！

（倒れる音）

（食器がぶつかる音）

（お湯を注ぐ音）

起きたか？

（尚人）連絡つかねえし
心配で来てみたら これだ

ハッ 感謝しろよ

ごめん

いや 謝んなよ

大丈夫だから

（お湯を注ぐ音）

（尚人）よし

（尚人）ほら　これ飲め

わっ 甘っ　何 これ？

（尚人）砂糖４つ入れた ハハッ
（僕）マジ？

人間の体は
暖めて 甘いもん入れると—

少しは落ち着くように
できてんだよ

（尚人）まっ
俺から言えることは一つだ

この機会に
めっちゃいい男になろうぜ

うえっ

（尚人）さすがに甘すぎた？

甘いよ これは

大丈夫か？

あ… ご迷惑を…

いやいやいや
ムリしないようにな

ありがとうございます

頑張りすぎないことだぞ

はい

（中山）寒い？
（僕）あっ 大丈夫です

（中山）お茶飲む？ 飲む？
うん 持ってくる

（僕）すいません

（尚人）せーの パンスト

（黒澤）太巻き

（バーテンダー）フルーツカップ

（黒澤）エロすぎだよ
（バーテンダー）ないないないない

（黒澤）飲も 飲も 飲も

（尚人）おおっ 来た来た
（僕）ういっす

（黒澤）どうした？ さえない顔して

あっ ちょっと 今
こいつ傷心中なんだから—

優しくしてやってよ

あら フラれたの？

いや…

ウッソ　マジで？

とりあえず 一緒にやろうぜ

何を？

エロく聞こえるけど
エロい言葉ではない山手線ゲーム

はあ？

（黒澤）ミスったら テキーラショット一気
（僕）マジで？

（黒澤）お姉さんが強つええんだ これが
（尚人）マジで強いから

負けないぞ　フフフッ

（尚人）じゃあ 俺からいくわ
（黒澤）ああ

エッチッチ 山手線ゲーム！

イエーイ

いくよ　せーの

アナリスト

むきぐり

御成門おなりもん

おおっ

いや… チンチン電車とかっすかね

はい 意味が分かりません
気持ち悪っ

一瞬 覚めそうになったもん 今

（僕）マジで？
（尚人）頼むって　いける

おっ いいね！
意外と飲むのはいいね

（黒澤）もう１回 もう１回やろう

（黒澤）ハハハッ
（尚人）あ～ 楽しかった

（黒澤）飲んだ

（黒澤）ちょっと あれだな
今日さ ぬいて帰ろうぜ

（尚人）おお～っ 出ました 部長

（尚人）給料日後ということは
おごりでしょうか？

誰が部長だ バカ

酔っ払ったノリで風俗おごるやつが
どこにいんだよ

そんなやつ 男前すぎんだろ お前
そんなやつ 絶対いないからね

いない いない　絶対 いないよ

これで 足りるか？

アッハハハッ

（尚人）足りる
（黒澤）足りる？

（尚人）ちょっと はい　持って

いや 俺 マジで
風俗 行ったことないから

（尚人）いいから
（僕）パス　行かない　パス

（尚人）じゃ 俺が２人分 持っとこ

要りませーん

（尚人）行ったことないの？
（僕）うん

（黒澤）マジかよ
お前 何して遊んでたの？

いや 行ったことあんの？ 逆に
尚人も？

俺 高円寺の店 何店舗か常連だよ

マジで？

めっちゃ近所じゃん

（黒澤）うおっしょいっ
じゃあ 今日 デビュー戦だ

元カノのこと全部 忘れてこうぜ！

部長　一生ついていきます

（僕）あのさ そんな 落ちてないから
俺 マジ行かないからさ

（黒澤）はあ？

お前 俺たちが落ちきってるみたいな
言い方すんなよ

お前 それは ほんとによくないぞ

（僕）ごめん　すいません

まっ　落ちきってるんですけどね

（尚人・黒澤）アハハッ

（僕）落ちてんじゃん

（尚人）行こっ　行こう 行こう
（黒澤）いいから 行くぞ おら

（僕）マジで？
（尚人）行こう 行こう

あっ　ハア

フウ～

（ミカ）かわいい

（ミカ）ねえ いくつ？

（僕）26です

（ミカ）若く見えるね

（ミカ）お仕事 何やってんの？

企画とか…

（ミカ）へえ～

聞いといて ごめん
よく分かんないや

あたしはね—

昼は 原宿の古着屋で働いてる

ギャップすごくない？

（僕）フフッ フフッ

（ミカ）ねえ

好きな人 どんな人だったの？

え？

（ミカ）フフッ　大体 分かるよ

で？ どんな人？

ミカさんより…

貧乳だった

（ミカ）フッ　貧乳好き？

いや べつに

（僕）でも—

好きな人のなら 何でもよかった

（ミカ）うん

（僕）一目ぼれとか 初めてでさ

（僕）いい年して
しょうもないとか思ってた

（僕）でも その人のしぐさも 声も
不機嫌な顔も—

全部 好きになってた

マジで好きでね

でも 相手はさあ…

結婚しててさ

一度作った幸せを
壊そうとは 思えないじゃん

だって 幸せでは いてほしいしさ

だから ２番でいいから

会ってるときだけは—

自分だけを見てほしいって

ほんとに ただ それだけだった

浮気とか不倫とかさあ—

よく 分かんなくて

どうでもよくて

つか 意味分かんなくてさ
嫌いで

でも 誰も許してくれないじゃん？

でも…

周りに どう言われようと—

ほんとに
全部 全部 どうでもよくてさ

それだけ
ただ 欲しかったんだよね

（上司）プレゼンの資料 大丈夫か？

（部下）はい　バッチリです
あとで 確認お願いします

あっ 営業部の高橋たかはしです

はい　分かりました
少々お待ちください

あっ もしもし 高橋課長

あの 外線１番で
テイオウ出版の加藤かとう様からお電話です

はい　はい 失礼します

（尚人）おうっ
（僕）おっ

（尚人）絶好調だな

…ってか こんなとこに珍しいな
始末書とか？

まあ そんなもん

何したんだよ

これ 出しにきた

どういうこと？

さっさと次のステージに行くよ 俺は

どこ行くの？

（尚人）編集プロダクション
まあ 小さい会社だけど

（僕）小さいって どのくらいよ

（尚人）俺 含めて 社員６人

（僕）６人？
（尚人）うん

超ベンチャーじゃん
大丈夫なの？

（尚人）
デカい会社は もうこりごりだって
お前も言ってたじゃん

（尚人）元から
うっすら知り合いだった社長が—

声 かけてくれてくれてさ

（尚人）渡りに船だし
飛び込むことにした

（僕）いやあ でも
よく決断できたな

うん

いや そんな顔すんなよ

また 飲みにでも行こうぜ

いや それは当たり前だろ そんなの

じゃあ そんときは
新しい彼女の話でも聞かせろよ

いやあ　たぶん
そんときまでに できてないと思うな

（尚人）
いやいやいや そこは頑張れよ

いや　今日に関しては
俺のセリフだわ

あっ そうだ

よいお年を

ハッ　いや でも
今年初めて言われたかも それ

俺も初めて言ったわ　ハハハッ

じゃあ よいお年を

（尚人）よいお年を

♪～

（キャスター）この漢字
“金(きん)”という文字でございました

カネね～

～♪

（作業員）
どうも ご協力ありがとうございました
ありがとうございまーす

（石田）ようっ

（僕）おっす

（石田）ういっ ういっ

（石田）マジ久しぶり
少し老けたね さすがに

（僕）そうだね

（石田）元気？

（僕）まあまあ ぼちぼち

（店員）いらっしゃいませ
（僕）あっ ホットコーヒーを

（店員）はい　かしこまりました

（石田）いやあ
やっと来てくれて うれしいよ

ずっと はぐらかすんだもん

それで… 何の話だっけ？

いや 早いな

メールで言ったとおりだよ
仕事したいんだ お前と

いや そんなこと言ってたっけ？

（石田）いや 学生の頃から言ってたろ
いつか仕事するかもって

その時が来たんだ 今 まさに

いや でもさ 仕事っつってもさ
何するの？

お前 今
人事系の仕事してるんでしょ？

うん まあ 広い意味で言うと人事系

社内の人脈が多い お前なら
活躍できると思うんだけどさ

何？ どんな仕事？

めっちゃくちゃ
いい化粧品があるんだよ

それ 一緒にやろうぜ

え？

（石田）いや 商品を俺から買って
それをお前が ほかの友達に売るんだよ

その差額が お前の取り分だ

いや それってさ…

（石田）違う！

ネズミ講とは 明確に違うし
ネットワークビジネスでもない

これは マジでクリーンな堅い仕事だ

インセンティブも入るから
多くの人に売りまくれば—

利益もグッと高くなるっていう
シンプルな仕組み

（僕）いや…

（石田）
世の中 楽なルートも存在してんだよ

（店員）お待たせいたしました

（石田）どう？ やる？

熱っ

（石田）お前 人脈持ってんだからさ

一緒に勝ち組になろうぜ

（石田）きったね　汚きたねえ

（石田）ああ すいません　拭くやつ…

（僕）あっ もしもし？
ダメもとでさあ 今 どこ？

（僕）あっ マジ？
あのさ 今 渋谷なんだけど—

ちょっと おもしろい話あるから
会おうよ

いや どんだけ疲れてんだよ
何か食いたいもんとかある？

（ドアベルの音）

（女将）いらっしゃい

あら 久しぶり

どうも

あの あとで もう１人来ます

えっ あっ ああ

入って

（尚人）ここ よく来てるの？
（僕）うん

（僕）大学時代にね
（尚人）ふーん

（女将）ねえ
ちゃんと社会人やってんの？

（僕）まあ それなりにやってます

（女将）うん　ハハハッ 何よりだ
何よりだ！

（僕）ハハハハ…

ごゆっくりね　ごゆっくりね

はい

よく来てたの 伝わった

よく来てたもん だって

（尚人）んっ
（僕）おう

でも 思ったより元気そうでよかったわ

うん　なんとか やってるよ
超しんどいけど フッ

やってけそうなの？ 今の会社

うん　まっ なんとか頑張ってみるわ

そっちは？

うーん まあ 俺も少しずつ
動きだしてるかなあ

おっ マジ？

まっ 社内異動だけどね

（尚人）えっ　ついに希望 出したんだ
（僕）うん

なんかさ
新サービスを企画する部署ができてさ

うん

これだ！ って思って出した

おー　いいじゃん

あ～

まあ あとは願うだけですね
その異動の成立を

うん　うまくいくといいな

（僕）うん

あれ？ …で 今日 その話？

（僕）違うんですよ
（尚人）うん？

（僕）聞いてくださいよ
（尚人）はい

（僕）いや たびたび しゃべった石田ね
（尚人）うん

（僕）石田と さっき会ったのよ
ひっさびさに

うん　さっき？

（僕）ひっさびさに会ったの
なんか 呼ばれて

（僕）したらさ もう完全に
ねずみ講の道 行っちゃってるわけ

（尚人）ハハハッ

（僕）牛丼だな

（尚人）いいね　まだ食べれんの？

（僕）…か 博多はかたラーメン

（尚人）おお ラーメン

（僕）いやあ いっちゃえるか？
（尚人）替え玉する 俺

（僕）この年齢の胃袋 いけるかな？

あ～　久しぶりに
こんな時間まで飲んだな

オールとか いつぶりだろ
よくやったよな

やったな

いやあ 明け方まで
ダラダラダラダラしゃべってさ

（尚人）ああ

（僕）
“渋谷ジャックする”とか言って

（尚人）ああ 言ってた！ ダッサ

（尚人）俺たちダサいな

（僕）あ～ ダサい

でも 俺は まだ 諦めてないから

いや 分かってるよ 俺もだよ

時間と お金ってさ—

いっぺんには手に入らないって
よく言うでしょ

うん まあ そうだな

でも あのときはさ
学生よりはカネはあったし—

頑張れば 夏休みも確保できたし—

体力あるから
オール明け出勤とかもできたじゃん

（僕）うん

（尚人）でも あれって—

若いときしか
できなかったことなんだよ

（僕）ああ　そうだなあ

（尚人）だから
こんなはずじゃなかったって—

あの 高円寺の隅っこで酒飲んでた
あの時間こそさ—

今 思えば… フッ 実は—

人生のマジックアワー
だったんじゃないかって—

思うんだよね

（尚人）フッ

（僕）マジックアワーねえ

（尚人）そう

（僕）あのさ
（尚人）うん？

俺ちょっと寄りたいとこあるから
ここで

（尚人）はっ？

ちょっと 散歩して帰るわ

ああ 分かった

元カノとの思い出の聖地巡礼だ

いや そんな言い方ある？

（尚人）ハハハハッ

相変わらずメンヘラこいてんの
ぶれなくて好きだわ

うるさいよ
もう 早く帰りなさい

じゃ また連絡するわ

（尚人）経堂きょうどうまで

（ドアが閉まる音）

（走り去る音）

♪～

～♪

あれ？ 携帯

ハハッ ハッ ハハハ

ハハハハ…

ハア…

♪～

～♪