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一条天皇と亡き皇后 定子の遺児➡
脩子内親王の裳着が行われた。
一条天皇の亡き定子への執着は強く➡
いまだ公卿に復帰していない伊周を➡
大臣の下 大納言の上に座らせるよう命じた。
(藤原伊周)譲られよ。
(藤原道綱)えっ? ここに入るの?
♬~
帝のお出ましでございます。
♬~
一条天皇は 表向き➡
伊周の昇殿は 脩子内親王の裳着に 参列させるためとしたが➡
真の目的は 道長への牽制であった。
♬~
♬~
♬~
(ウグイスの鳴き声)
(まひろ)暖かくなってきたわね。
母上も 春がお好きだった。
(いと)そうでございましたね。
(物音) (きぬ)ああ もう 我慢できない!
(乙丸)俺が 何をしたっていうんだよ。
(きぬ)それも分かっていないところが 嫌なのよ ケチ!
あっ お方様…。
情けない顔して どうしたの?
この人 紅を買おうとしたら➡
そんな余計なものを買うなと 言ったんですよ!
私は 京に来てから 紅も おしろいも 一度も買っていないのに。
だから もう 私 越前に帰ります!
えっ… 乙丸 そうなの?
私は…➡
こいつが美しくなって ほかの男の目に留まるのが怖いのです。
こいつは 私だけの こいつでないと嫌なのです。
だったら そう言えばいいじゃないか うつけ!
ごめんよ。
もう…。
お方様と亡き殿様も よくけんかをなさいましたね。
火取りの灰を投げつけたりなさって。
そんなことあったかしら?
亡き殿様とお方様の大げんかで あれに過ぎるものはございませんでした。
あ… せんだって➡
左大臣様にお渡しになった物語は どうなりましたの?
あれから お返事はないわ。
きっと 帝のお気に召さなかったのでしょう。
そうでございますか…。
よいお仕事になりそうでしたのに…。
でも あれが きっかけで➡
このごろ書きたいものが どんどん わき上がってくるの。はあ…。
帝のおためより何より 今は 私のために書いているの。
それは つまり 日々の暮らしのためには ならぬということでございますね。
♬~
脩子内親王の裳着から数日後➡
道長は 土御門殿で 漢詩の会を催し 伊周と隆家を招いた。
私のような者まで お招きくださり ありがたき幸せに存じます。
(藤原道長)楽しき時を過ごしてもらえれば 私もうれしい。
儀同三司 藤原伊周殿。
「春帰りて駐まらず 禁え難きを惜しみ…」。
(伊周)「枝は 花を落とし➡
峰は 視界を遮るように聳え 霞は 色を失う➡
春の装いは もろくも崩れて 谷は静かに 鳥のさえずりも消える。➡
年月は移ろい わが年齢も次第に老けてゆく➡
残りの人生 天子の恩顧を思う気持ちばかりが募る」。
(藤原斉信)まことに けなげな振る舞いであったな 伊周殿は。
(藤原公任)いやいや あれは 心の内とは裏腹であろう。
そう思うか? (藤原行成)はい…。
うっかり だまされるところだった。
それより 大したものだ 道長は。 まことに…。
帝が 伊周殿に お心を向け始めておいでだが➡
私は 全く焦っておりませんよ というふう?
敵を広い心で受け止める器の大きさだ。
(一条天皇)伊周を 陣定に参らせたい。➡
そのように皆を説き伏せよ。
恐れながら 難しいと存じます。
陣定は 参議以上と定められておりますゆえ➡
誰かが身まかるか 退かねばありえませぬ。
そなたならば いかようにもなろう。
難しいと存じます。
朕の強い意向とすれば 皆も逆らえまい。
されど それでは角が立つ。 異を唱える者も出よう。
ゆえに そなたの裁量に委ねておる。
朕のたっての願いだ。
難しきことながら はかってみましょう。
よしなに頼む。 お上。
過日 差し上げた物語は いかがでございましたか?
ああ… 忘れておった。
♬~
帝に献上した あれは…。
お心に かなわなかった。
力及ばず 申し訳ございませぬ。
落胆はせぬのか? はい。
帝にお読みいただくために 書き始めたものにございますが➡
もはや それは どうでもよくなりましたので➡
落胆はいたしませぬ。
今は 書きたいものを書こうと 思っております。
その心をかきたててくださった 道長様には➡
深く感謝いたしております。
それが お前がお前であるための道か?
さようでございます。
心の声 「源氏の君は お上が 常に おそばにお召しなさるので➡
心安く里住まいもできません。➡
心の中では ただ藤壺のお姿を 類いなきものなしと お思い申し上げ➡
このような人こそ 妻にしたい。➡
この人に似ている人など…」。
♬~
心の声 俺がほれた女は こういう女だったのか…。
辞表を出した公任に 翻意を促すため 一条天皇は 公任を従二位に昇進させた。
この辞表作戦を指南したのは 実資だった。
実資様 この度は まことに ありがとうございました。
(藤原実資)フフフフ…。 辞表は うまく効いたようだな。
ハハ… 実資様のお導きのおかげにございます。
うむ。
(斉信)ただの ごね得ではないか。
帝のお心も たわいないものにおわすな。
従二位 従二位 正二位。
従二位 従二位…。 (公任 実資)正二位。
従二位 従二位 正二位。 正二位。
では 親王様 これは いかがでございますか?
(藤原彰子)親王様 左大臣殿にお礼を。
(敦康親王)うれしく思う! 恐れ入り奉ります。
帝のお渡りにございます。
お渡りのお触れはあったのか!?
いいえ。 えっ。
さあさあ 片づけよ 片づけよ。
ここで お顔を拝せるとは。 ご機嫌麗しく。 うむ。
お上 これを左大臣にもらいました。 よかったな。
お上も ご一緒に遊びましょう! お上。
親王様 書のお稽古の刻限にございます。
嫌だ。
行っておいで。 はい…。
これにて 御免を被ります。
(一条天皇)待て。 はっ。
読んだぞ。 あ…。
あれは 朕への当てつけか? そのようなことはございませぬ。
(一条天皇) ところで あれを書いたのは 誰なのだ?
前越前守 藤原朝臣為時の娘 まひろにございます。
以前 帝にお目通りがかなったと 伺っております。
ああ あの女であるか。 はっ。
唐の故事や仏の教え 我が国の歴史を さりげなく取り入れておるところなぞ➡
書き手の博学ぶりは 無双と思えた。
その女に また会ってみたいものだ。
すぐにも 藤壺に召し出します。
会うなら 続きを読んでからとしよう。 続き… ですか?
あれで終わりではなかろう。
はっ。 承知つかまつりました。
あっ あっ…。
姫様!
♬~
中宮様の女房にならぬか? は?
この前 お気に召さなかったようだと 言った物語だが➡
帝が 続きを読みたいと仰せになった。
何だ その どうでもよい顔は。
続きをお読みくださいますなら この家で書いて お渡しいたします。
それでは駄目なのだ。
帝は 博学なお前にも興味をお持ちだ。
中宮様のおそばにいてもらえれば➡
帝が お前を目当てに 藤壺にお渡りになるやもしれぬ。
おとりでございますか。 そうだ。
まっ…。 娘と離れ難ければ 連れてまいれ。
女童として召し抱える。
考えてみてくれ。
(源 倫子)まひろさん?➡
殿が なぜ まひろさんを ご存じなのですか?
公任に聞いたのだ。 面白い物語を書く女子がおると。
(倫子)へえ~…。
帝は その女子が書いたものをお気に召し 続きをご所望だ。
まあ…。
藤壺に その女子を置いて 先を書かせれば 帝も 藤壺にお渡りになるやもしれぬ。
名案ですわ 殿! さすが!
そうか。 倫子が よいなら そういたそう。
これが 最後の賭けだ。 はい。
まひろさんのことは 昔から存じておりますし➡
私も うれしゅうございます。 うむ。
この先のことを考えますと➡
私が 藤壺に上がり 働くしかないと思います。
(藤原為時)わしとて まだまだ働ける。
年寄り扱いするでない。
されど 帝の覚えめでたく その 誉れを持って藤壺に上がるのは➡
悪いことではないぞ。
女房たちも 一目置こう。
ただ 賢子のことが…。
賢子のことは 案ずるな。
わしも いとも おるゆえ。
左大臣様は 藤壺に連れてきてもよいと 仰せなのです。
内裏は 華やかな所であるが 恐ろしき所でもある。
お前ほどの才があれば 恐れることもあるまいが➡
賢子のような幼子が暮らす所ではない。
そうですね。 賢子は 父上に懐いておりますので➡
私がいなくても 平気かもしれませぬ。
任せておけ。
母を誇りに思う娘に育てるゆえ。
どうしたの?
(賢子)母上は 私が嫌いなの?
そんなことありませんよ。 大好きよ。
大好きなら なぜ 内裏に行くの?
賢子も一緒に内裏に行く?
行かない。 じじが かわいそうだから。
じじではありません。 おじじ様でしょ。
行かない!
お休みの日には 帰ってくるから。
さみしかったら 月を見上げて。 母も同じ月を見ているから。
行かない!
♬~
(倫子)中宮様。
この度 新たにお仕えすることとなった 女房でございます。
出仕は 来月からとさせますので 今日は ご挨拶に。
前越前守 藤原朝臣為時の娘 まひろにございます。
帝たってのお望みで この藤壺で 物語を書くこととなりました。
お目をおかけくださいませ。
帝のお望み?
この者の書いた物語を 帝が 大層 お気に召されましたゆえ➡
格別に取り立てました。
帝と中宮様の御ために 一心に お仕え申し上げる所存にございます。
では 内裏の中は 衛門が案内いたせ。 (赤染衛門)はい。
あとは頼んだぞ。
(赤染衛門)帝のお目に留まるとは ご立派になられましたね。
いいえ…。
なんとか 今の藤壺の➡
どうにも行き詰まった気分が 改まると よろしいのですけれど…。
参りましょう。 はい。
まひろさん お子さんが おありなんですって?
はい。 7歳の娘がおります。
ご夫君を亡くされて 大変でしたわね。
まあ 夫は いても 大して当てになりませんけれど…。
私の夫は あちこちに子を作り それを 皆 私が育てておりました。
そのうち 最初の子が大きくなって 下の子らの面倒を見てくれるようになり➡
帰ってこない夫を待つのにも 飽きましたので➡
土御門殿に上がったのです。
あなた様が そのようなお方だとは… 存じませんでした。
フフフ…。 人の運不運は どうにもなりませんわね。
あんなに すばらしい 婿君と巡り会えた 土御門のお方様は➡
類いまれなる ご運の持ち主。
羨ましゅうございます。 まことに…。
あの… 中宮様は どういうお方なのでございましょう。
それが 謎ですの。 え?
お小さい頃から おそばにおられましたのに?
それでも分かりません。 奥ゆかしすぎて。
道長のもとに 安倍晴明 危篤の知らせが来た。
(須麻流の祈とう)
(安倍晴明) お顔を拝見してから死のうと思い➡
お待ちしておりました。
何を申しておる。
思いの外 健やかそうではないか。
私は 今宵 死にまする。
ようやく光を手に入れられましたな。
これで 中宮様も盤石でございます。
いずれ あなた様の家からは 帝も皇后も関白も出られましょう。
それほどまでに話さずともよい。
お父上が なしえなかったことを あなた様は 成し遂げられます。
幾たびも言うたが 父のまねをする気はない。
ただ一つ 光が強ければ 闇も濃くなります。
そのことだけは お忘れなく。
分かった。
呪詛も 祈とうも 人の心のありようなのでございますよ。
私が何もせずとも 人の心が勝手に震えるのでございます。
何も恐れることはありませぬ。
思いのままに おやりなさいませ。
♬~
長い間 世話になった。
♬~
その夜 自らの予言どおり 晴明は世を去った。
一条天皇は 伊周を 再び 陣定に召し出す宣旨を下した。
言葉もない。 全く言葉もない…。
(藤原顕光) 左大臣殿は 何をしとったのだ!
左大臣様を責めるのは どうなのですか?
(顕光)帝を おいさめできるのは 左大臣殿しかおらぬ!
右大臣様が おいさめしても いいではありませんか!
あ…。
言葉もない! 不吉なことが 起きなければよろしいが…。
その夜 皆既月食が起きた。
闇を恐れ 内裏は静まり返った。
♬~
(悲鳴)
月食が終わる頃 温明殿と綾綺殿の間から火の手が上がり➡
瞬く間に 内裏に燃え広がった。
(悲鳴)
敦康は どこだ!
ただいま お逃がしまいらせました。
そなたは 何をしておる?
お上は いかがなされたかと思いまして…。
参れ。
♬~
あっ!
大事ないか!
♬~
(居貞親王)昨夜の火事で 八咫鏡を 焼失したというのは まことなのか?
残念ながら 賢所まで火が回り 間に合いませんでした。
申し訳ございませぬ。
叔父上が謝ることはない。
これは たたりだ。
伊周などを陣定に戻したりするゆえ…。
叔父上も そう思うであろう。
帝も 八咫鏡を焼失されて 傷ついておられます。
もう これ以上 帝をお責めになりませぬよう。
東宮が帝を責め奉るなど あろうはずもない。
されど 月食と同じ夜の火事 これが たたりでなくて 何であろうか。
天が帝に玉座を降りろと言うておる。
帝は まだお若く ご退位は考えられませぬ。
どうかな…。
叔父上は 中宮が 皇子をもうけられるまで➡
帝のご退位は避けたかろうが こたびのことで よく分かった。
間違いない。 帝の御代は 長くは続くまい。
中宮様を 御自ら お助けくださった由 強きお心に 感服いたしました。
中宮ゆえ 当然である。
そなたのことは頼りにしておる。
されど 中宮 中宮と申すのは疲れる。
下がれ。 はっ。
♬~
誰も申さぬと存じますが この火の回り具合からすると➡
放火に違いございませぬ。
火をつけた者が 内裏におるということでございます。
こたびの火事は➡
私を陣定に加えたことへの不満の表れだと いわれております。➡
たとえ そうであろうとも 火をつけるなぞ お上のお命を危うくするのみ。➡
そういう者を お信じになってはなりませぬ。
お上にとって 信ずるに足る者は 私だけにございます。
月食を恐れ 皆 宿所に下がっており➡
帝のおそばにも蔵人がおりませず 中宮様のおそばにも女房が…。
もう その話はよい! はっ。
すまぬ。
いいえ…。
敦康親王様の別当として 申し上げねばと思いましたが➡
差し出たことでございました。 (恒方)お… お待ちを…。
(藤原隆家) 左大臣様! 私は 兄とは違います。
今 私が 左大臣様と話しておったのだ! 勝手に入ってくるなぞ無礼であろう!
そのことを どうしても お話ししたかったのです。
兄は 家の再興に命を懸けておりますが 私は そうではありませぬ。
私の望みは 志高く政を行うことのみにございます。
(行成)そのようなことに だまされぬぞ 左大臣様は!
(隆家)あなたと話しているのではない。
伊周殿は 帝を籠絡し奉り そなたは 左大臣様を懐柔する。
そういう たくらみであろう。
何だと?
そこまでとせよ!
そなたは下がれ。
あのお人は 左大臣様のことが好きなんですかね。
では 行ってまいります。
うむ。 帝にお認めいただき 中宮様にお仕えするお前は➡
我が家の誇りである。
(藤原惟規)大げさですねえ。➡
俺 内記にいるから遊びに来なよ。
中務省まで行ったりしても いいのかしら?待ってるよ。
父上 賢子をよろしくお願いいたします。
頼みましたよ。
お任せくださいませ!
身の才のありったけを尽くして すばらしい物語を書き➡
帝と中宮様のお役に立てるよう 祈っておる。
大げさだな…。
精いっぱい務めてまいります。
お前が… 女子であってよかった。
♬~
姫様…。 乙丸…。
たまには帰ってくるから泣かないで。
きぬを大事にね。
♬~
前越前守 藤原朝臣為時の娘 まひろにございます。
この屋敷を取り囲み 焼き払い奉ります。 やってみよ。
えっ。 ちゃんと起きなければなりませんよ。
どうしたの? 見栄えはしても 鈍いのは困るな。
遊びに来ただけじゃない? 光る君と呼ばれました。
朕を難じておると思い 腹が立った。 帝がお読みになるもの 私も読みたい。
今日より そなたを 藤式部と呼ぶことにいたす。
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