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正月 宮中では 天皇に屠蘇などの薬を献じて➡
一年の無病息災を祈る儀式が 行われていた。
宣孝は 天皇が 飲み切れなかった薬を 飲み干す 名誉な役割を担っていた。
(一同)お~!
(まひろ)わ~! 上手!
いいわね 皆に褒められて。 おいで。
おいで おいで。
(いと)惟規様は お歩きになるのさえ 遅かったのに➡
姫様は お早いこと。
父上がお帰りになったら➡
今日は たくさん遊んだこと お知らせしましょうね。
(藤原宣孝)帰ったぞ~!
(一同)お帰りなさいませ。
賢子。 父は 今日 帝の御前で 大層な役目を勤めたのだぞ。
清涼殿のきらびやかな ありさま まひろにも見せてやりたかったのう。
帝のご様子は…。
さすがに お姿は拝せなかったが➡
近頃は お顔色も悪く 覇気がないと専らのうわさだ。 フフ。
そうでございましたか…。
ああ。 帝に お目通りはできなかったが 左大臣様にお会いしたぞ。➡
ご息災であった。
ようございました。
ああ… 賢子が さっき➡
あそこから ここまで 球を転がしましたのよ。
おお! お前は 女子なのに 威勢がよいのう。 ハハハハ…。
ぶるぶる ぶるぶる バ~! (賢子)ヘヘッ!
ハハハハハ! ぶるぶる ぶるぶる… ウ~!
今の新しいですわね。 えっ…。
もう一度 お見せくださいませ。
ぶるぶる ぶるぶる ウ~!
(笑い声) もう一度…。
♬~
正月の除目の前に 各国の国司の働きを評定する➡
受領功過定が行われた。
(藤原顕光) 次に 越前守 藤原為時であるが➡
任期中 滞りなく税を納め➡
帳簿の記載にも 誤りや不審の点は 一切ないようである。
(平 惟仲)さりながら 宋人を帰国させる という役目を 果たせておりませぬぞ。
(藤原斉信) 宋の言葉にも長じておるということで➡
越前の国司になったのに 怠慢ではありませぬか。
(藤原実資)為時殿は 真面目なお方。 怠慢は言い過ぎである。
(藤原公任)そうでありますが 赴任して 4年でありますゆえ…。
心の声 (藤原道長)こたびは 任官は ならなかったか…。
「王戎簡要 裴楷清通➡
孔明臥龍」。
賢子。 賢子。
殿様が 越前からお戻りになっても あんたと私は 今のままよ。
時々 ここに来んのよ。 (福丸)いや~…。
殿様には ちゃんと会わせるから 堂々と来なさいよ~!
いや~…。
まっ ききょう様!➡
ただいま お方様を…。 どうぞ こちらへ。➡
お方様!
誰?
どうしておられるかと思っておりました。
(ききょう)脩子様や媄子様のお世話をして 過ごしておりました。
そして…。
これを書いておりました。
まあ…。
お美しく聡明で キラキラと輝いておられた皇后様と➡
この世のものとも思えぬほど 華やかであった後宮のご様子が➡
後の世まで語り継がれるよう 私が書き残しておこうと思いましたの。
まひろ様に 四季折々のことを書いて➡
皇后様をお慰めしたらと勧められて 書き始めた草子ですので➡
こたびも まず まひろ様に お読みいただきたいと思いましたの。
生き生きと弾むようなお書きぶりですわ。
ただ 私は 皇后様の影の部分も 知りたいと思います。
人には 光もあれば 影もあります。
人とは そういう生き物なのです。
それが 複雑であればあるほど 魅力があるのです。
そういう皇后様のお人となりを お書きに…。
皇后様に影などはございません。
あったとしても 書く気はございません。
華やかなお姿だけを 人々の心に残したいのです。
そうでございましたか…。
これは ご無礼いたしました。
皇后様のお命を奪った左大臣にも➡
一矢報いてやろうという 思いでございます。
左大臣様が お命を奪ったとは…。
左大臣は 競い合っておられた 皇后様のご兄弟を遠くへ追いやり➡
皇后様が出家なさったのを口実に 帝から引き離し➡
己の幼い娘を入内させ 中宮の座に就けました。
帝にさえ 有無を言わせぬ 強引なやり口と嫌がらせに➡
皇后様は お心もお体も弱ってしまわれたのです。
我が夫は➡
左大臣様に取り立てていただいて 感謝しておりましたけれど…。
まひろ様も だまされてはなりませんよ。
左大臣は 恐ろしき人にございます。
いかがいたした?
ああ いえ…。
遅くまで ご苦労さまでございました。
為時殿は 越前守を 再度 求めておったが こたびの除目で それは かなわなかった。
宋人を帰国させられなかったゆえで ございますか?
理由は よく分からぬが そうやもしれぬ。
宋人は 我々とは 違う考えを持っております。
表の顔と裏の顔があり 扱いは難しゅうございました。
父も 精いっぱい やっておりましたけれど…。
案ずることはない。 次の官職が決まるまで 為時殿は わしが面倒を見るゆえ➡
好きな学問をしながら のんびりと 越前の疲れを癒やしていただこう。
申し訳ないことでございます。
わしにとっても 義父上であるゆえ。 ハハハハ!
頼もしい婿様にございます。
昔のように貧しくなれば➡
従者や下女に いとまを出さねばならないところでした。
そのように しおらしい顔をするな。
強気でおれ! 強気で。
わしは お前に ほれ切っておるゆえ どこにも行かぬ。
そうでございました。
(笑い声)
何だ まだ起きておったのか。
(あさ)申し訳ございませぬ。 お目が覚めてしまわれて…。
ああ よいよい よいよい。 賢子 父と月を見よう。 なっ。➡
よし おいで。 おいで おいで おいで おいで…。
よし ここに座ろう。
ああ 月が きれいじゃのう…。 まあ…。
(宣孝)ハハハハ。
この明るさでは 賢子も目が覚めてしまうわな。
フフフ。
♬~
翌朝 国司を務める 山城国府に出かけた宣孝は➡
それきり戻ってこなかった。
お方様。 ん?
殿の北の方様のご使者が…。
北の方様からのお伝えにございます。
山城守 藤原宣孝は➡
にわかな病にて 4月25日に身まかりました。
弔いの儀も済ませましたので お知らせいたします。
にわかな病とは…。
北の方様は 豪放で快活であった殿様のお姿だけを➡
お心にお残しいただきたいと 仰せでございました。
私どもも ご最期のご様子は存じませぬ。
(きぬ)お父上は無官 殿様も亡くなってしまわれて➡
この家は どうなるの?
(乙丸)え~…。
飢えるのは嫌だから 私 越前に帰って また海に潜ろうかな。
えっ! あんたも来る?
えっ!
(恒方)弔いの儀は 既に済まされたとのことでございます。
うむ。
(足音)
賢子… 何?
父上は?
♬~
⚟(あさ)お世話になりました!
⚟(いと)お待ちなさい!
(いと)この恩知らず! もう よいから…。
(いと)お方様 乳母なぞおらずとも きぬと私で 姫様をお育ていたします!
はっ! ご安心くださいませ! ああ…。
(百舌彦)ああ… ワン!
百舌彦…。
左大臣 藤原道長様よりの使いとして 参りました。
為時殿には 長~い越前でのお役目➡
まことに ご苦労に存ずるとの 仰せにございます。
また この度は 宣孝殿 にわかに身まかられたること➡
痛ましき限り お慰めの言葉とて見つかりませぬ。
さぞ お嘆きとお察ししますが この上は くれぐれも御身大切におわしますように。
生前 夫は 左大臣様に 過分なお引き立てを賜り➡
一代の名誉と 常々 喜んでおりました。
お志に 改めて あつく御礼申し上げます。
越前守 再任を後押しすることができず すまなかったと➡
あるじは 申しておりました。
つきましては 為時殿より 左大臣家 ご嫡男 田鶴君に➡
漢籍のご指南を いただけないかとのことでございます。➡
屋敷でも 時折 漢詩の会が開かれますので そちらでも ご指南役を頼みたいと。
まあ つまり 左大臣家お抱えの ご指南役ということですな!➡
正式な官職ではないが お引き受けいただければ➡
禄は十分に出すと仰せにございます。
(藤原為時) 私のような者の暮らしのことまで➡
左大臣様にご心配いただくとは もったいなきことにございます。
されど そのお役目は 辞退いたしたく存じます。
私は 左大臣様の御父君 亡き関白 藤原兼家様にも➡
お雇いいただいていたことがございます。
されど 正式な官職を得るまで 耐え切れなかった己を恥じております。➡
左大臣様のお心を無にしてしまい まことに申し訳ございませぬ。
もし かなうならば この次の除目において お力添えを頂きとう存じます。
ああ…。
これこれ… 賢子。
姫様! 賢子。
来なさい… 来なさい!
あっ 百舌彦殿!
♬~
父上 まことに これで よろしかったのでございますか?
お断りするしかなかろう。
お前の心を思えば 左大臣様の北の方様のご嫡男に➡
漢籍の指南をすることはできぬ。
私の気持ちなぞ どうでもよろしいのに。
父上に官職なく 私に夫なく どうやって 乙丸や いとや きぬを養い➡
賢子を育ててゆくのでございますか?
あっ… それは そうであろうが…。
明日 道長様をお訪ねになり お申し出を受けると仰せくださいませ。
次の除目とて 当てにはなりませぬ。
賢子に ひもじい思いをさせないためにも 父上 お願いいたします。
そうであるな… そうである。
(源 倫子)よし これは持ってまいろう。
あっ それは よい。
次は 香炉じゃな。 殿のお戻りにございます。
(倫子)お帰りなさいませ。 うん。
お触りにならないで。
彰子様のご在所に納める品ですゆえ…。
毎日 藤壺を訪ねておるそうだな。
いつも そなたがおっては 帝も足をお運びになりにくい。
気を付けよ。
帝のお渡りがないのは 私のせいですの?
気を付けよと言うただけだ。
帝のお渡りがあるよう 華やかにご在所を彩るべく➡
知恵を絞っておりますのは 私でございます。
すまなかった。
♬~
(赤染衛門)中宮様 お母上にございますよ。
(藤原彰子)あ…。
母も 貝覆いをいたしましょう。
難しくて できませぬ…。 どれどれ…。
♬~
(藤原詮子の荒い息遣い)
(詮子)ありがとう。 もういいわ。
横になられませ。
話があるの。 それは また明日でも。
敦康親王を人質にしなさい。
定子の忘れ形見 敦康親王を 彰子に養育させるのよ。
人質として… でございますか?
昔 父上が 懐仁を 東三条殿に人質に取ると仰せになったの。
こたびも それね。
父上と同じことはしたくありませぬ。
お前は もう 父上を超えているのよ…。
あっ…。
(一条天皇)定子は どう思うであろうな…。
敦康親王様が お健やかであれば 亡き皇后 定子様のご鎮魂にもなります。
(一条天皇) 分かった。 敦康を 中宮 彰子に託そう。
はっ。 これからは お好きな時に 親王様にお会いになれます。
間もなく 敦康親王が 道長の後見を受け 中宮 彰子と藤壺で暮らし始めた。
♬~
(松)〽 タアハア
〽 トヲリョロ
(藤原伊周) 松! これは 何のための稽古だ。
お家を再興するためです。 そうだ。
我が家は 藤原の筆頭に立つべき家なのだ。
そのつもりで もう一度 やってみろ。
やってみろ! (源 幾子)殿 もうご勘弁くださいませ。
(藤原隆家)兄上の気持ちも分かるが➡
左大臣の権勢は もはや 揺るがぬぞ。 揺るがせてみせる。
内裏に 官職を得るまでは➡
とりあえず ひっそりしている方が 利口だと思うがな。
なぜ こんなことになったのだ…。
お前が 院に矢を放ったからであろう。
そこに戻る?
お前に説教されるいわれはない ということだ。
清少納言が来ているぞ。 兄上に頼みがあるそうだ。
通せ。 はっ!
定子様が世話になったのに 何もしてやれず すまぬと思っておった。
(ききょう) とんでもないことにございます。
里に帰って これを書いておりました。
あの楽しく華やかであった➡
皇后様のご在所の様子を 書き連ねたものにございます。➡
皇后様のすばらしさが 皆の心の内に 末永く とどまるように➡
これを 宮中にお広めいただきたく存じます。
これは 新しきものか?
さようにございます。 お目通しくださいませ。
早速 読んでみよう。
我らも日陰の身であるからのう。
私が なんとかいたそう。
そして 10月9日。
女院 詮子の40歳を祝う 四十の賀が 道長の主催により 華やかに行われた。
めでたく 四十の賀を執り行えたこと うれしく思います。
この上は 更に 天運に恵まれ➡
つつがなく過ごされるよう 望んでやみませぬ。
もったいなきお言葉を賜り 恐れ入り奉ります。
これに過ぎたる誉れはござりませぬ。
あつく御礼申し上げます。
(伊周の呪詛する声)
♬~
(斉信)今日の童舞は 道長の北の方の長男 田鶴君と➡
高松殿の長男 巌君が舞うそうだ。
道長らしくないな。
(源 俊賢)帝のご所望だと 妹 明子が 申しておりました。
それにしても 妻を2人同席させるのはないな。
(藤原行成)始まりますぞ。
〽
見事なものだな。
〽
見事なものであったな。
(藤原道綱)さすが 道長の子だね。
頭 こちらへ参れ。 はっ。
(顕光) お上より ただいま仰せがございました。
巌君の舞の師に➡
従五位下の位を授ける。
(巌君の師)な… なんたる栄誉! ははっ!
(泣き声)
田鶴。
女院様のめでたき場であるぞ。
泣くのは やめよ。
せっかくの興に水を差してしまいました。
お許しあれ。
これより 酒宴に移ります。
どうぞ ごゆるりと。
あっ…。
(一条天皇)母上! 姉上!
お上!
私に触れてはなりませぬ。
病に倒れた者に触れ 穢れともなれば 政は滞りましょう。
されど! あなた様は 帝でございますぞ!
姉上!
♬~
お薬湯にございます。
薬は要らぬ。
♬~
姉上… どうか… どうか お飲みくださいませ。
私は 薬は 飲まないの。
(呪詛する声)
頼みが…。
何でございますか?
伊周の… 位を… 元に戻しておくれ…。
帝と… 敦康のために…➡
伊周の怨念を… おさめたい…。
お願い… 道長…。
分かりました。
姉上…。
姉上…。
「春の初めから かぐや姫は 月が美しく出ているのを見て➡
ふだんよりも 物思いに沈んでいる様子である。➡
そばにいる人が 『月の顔を見るのは 不吉なことです』➡
と言って止めるけれども ともすれば 人目のないときに行き 月を見ては➡
甚だしくお泣きになる」。
姫様 今日は ジッとされていて いい子にしていられてますね。
母上 つづきは?
はい。
「七月十五日の月に…」。
詮子の望みどおり 伊周の位は 元に戻された。
(伊周)この度は ごえい慮によりて また御前に伺候することが かないました。
この大恩 終生 忘れはいたしませぬ。
(一条天皇)これからも 朕のために 大いに働いてくれ。➡
頼むぞ。 はっ。
時に 恐れながら これは かの清少納言が➡
皇后 定子様との思い出を さまざま記したものにございます。
どうぞ おそばにお置きくださいませ。
後世に「枕草子」と呼ばれる この書物の評判は➡
道長を脅かすこととなる。
♬~
こたびは 何をお書きになるのですか?
物語を…。
物語… でございますか…。
できるかどうか分からないけど。
我らの命も もたぬやもしれぬ…。 (祈とう)
中宮様のお目の向く先へ お入りくださいませ。
策略やもしれませぬ。 ん?
姉上みたいに 難しいことを言う女に ならない方がいいですよ。
面白い物語を書く女がおるようだぞ。
「あつさぞまさる…」。 ん?
お前は どうかしている。 あなた様を照らす光にございます。
誰か!
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