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戻りました。 (扉の開閉音)
お疲れ。
伝さんは? 出てるよ。
そっか。
あのさ 広瀬。
うん?
晃ちゃん いつ こっちに帰ってくるんだ?
うん…。
もう少し 先になるかも。
なぁ 広瀬。
何?
晃ちゃんは お前の妹なのか?
大学のころ 妹と2人で暮らしてたよな。
出来がよくて しっかりした妹だって。
「あきら」って名前の。
で犯人 見たの?
俺が気づいたときには もういなくて
晃は見たらしいんだけど…。
それで 晃ちゃんは大丈夫なの?
うん なんか いつもと変わんない感じで…
お前 妹と駆け落ちしたのか?
何言ってんの まっさん そんなことあるわけないし。
あぁ だよな 変なこと言って ごめんな。
いいって いいって。 そっか…。
よかった 間違いか。
じゃあ お先。
お疲れ。 お疲れ。
~
実は お母さんから連絡が来たんだ。
どうしても一度 珠希に会いたいって。
お母さんは 自分のことしか 考えてないんだよ。
珠希
(柳沢)お~い ハハ どうした?
具合でも悪いんか?
久しぶり。 久しぶりだな。
私さ その 柳沢にとっての野球みたいな
周りに誇れるもの 何もないんだよね。
あぁ 周りにか?
この間も面接で 自己PRしてって言われて
いっぱい練習したのに 何も答えられなかったの。
自分のこと話そうとすると 何も言葉が見つからない。
いつも周りに合わせて 流されて生きてきたから…。
森は 自由が怖いんだな。
自由? うん。
誰かの答えにのっかるのは 楽だけど
それを続けると 自分の考えに 自信がなくなってくるんだ。
そうすると 何を選んでも 間違いじゃないかって思ってくる。
選んだものが 正解か間違いかなんて
誰にも わからないし
みんな 選んだものを 正解にしようと頑張ってるんだ。
まっ 何選んでも 大変なんだけどさ。
だったら 自分の思うように 生きてみたらいいんじゃないか?
さぁて…。
それ 貸して。 やだよ。
いいから。 なんだよ。
よし いくよ…。
~
《なんか 少しだけ吹っ切れた気がした》
《桂ちゃん…。
私と離れて…。
自由に生きていますか?》
~
ある海辺の町にね 仲のいいきょうだいが住んでいた。
2人は どんなときも一緒だった。
でも ある日
少女は1人のおばあさんに そそのかされて
人魚になってしまうの。
人魚? そう。
でも 人間の姿に 戻れなくなってしまった少女は
大切な人と 離れ離れになってしまった。
じゃあね 桂ちゃん
離れ離れになって そのあと2人は…。
この先は1人で読んで。
はい。
《このまま 晃が戻ってこないなら
きっと そのほうがいい。
俺みたいな兄ちゃんが いなかったら
晃は どうしてたんだろうな。
晃は俺と違って 何でもよくできるから
いずれ いい人に巡り会って
幸せな普通の日々を 過ごしていたはずなのに。
俺の… 妹として 生まれてきたせいで》
(剛)何やってんだ?
久しぶり。
剛つん なんでいるの?
有休消化。 えっ?
有休たまってたから この際 使おうと思って。
温泉でもゆっくり浸かるかと 思ってきたら 広瀬がいた。
そんな偶然って…。
冗談だよ。
会いに来たんだ。
あのさ 前に聞かれたことあったよな。
男が好きなのが わかったのは いつかって。
いつかって はっきりは覚えてないけど
クラスで どの女子が好きかとかで 盛り上がってても
話に入っていけなくて。
エロ本 読んでも 全然 気持ちが動かなかった。
それで 俺は人とは 違うんだなって思った。
だから 相手が男でも女でも
好きになったらしかたないって お前に言われたとき
正直ちょっと救われたんだ。
あれは その…。
俺自身 人と違うんだなって 思ってたから。
妹を好きってことか?
気づいてたんだ。 ああ。
俺 晃と駆け落ちして ここに来たんだ。
そうか。
引かないの? 引かないよ。
普通 引くよ。
晃 今 家に帰っててさ
もしかしたら もう戻らないかもしれない。
だけど そのほうが いいんだろうな。
そしたら もう誰にも うそつかなくて済むし。
今まで散々 間違えてきたけど
今度こそ正しい選択を しなきゃダメなんだ。
(奈緒美)晃。
やっぱり それ似合うわ。
先方さんも喜ぶわね。
先方さん?
ちょっと遅れるらしいから レストランのほうで待ちましょう。
ここのレストラン とってもおいしいのよ。
うん?
お母さん 今日は お母さんが よくなったお祝いに
2人で食事をするんだよね? そうよ。
あと 晃にね 紹介したい人がいるのよ。
紹介?
3人兄弟のいちばん下で 小児科医。
うちに婿入りしてもいいって 言ってくれてるの。
えっ… それって お見合いってこと?
まあ そう堅苦しく考えないで。
すぐ結婚しろって 言ってるわけじゃないんだから。
それともアンタ 彼氏でもいるの?
いないけど…。
そうよね。 アンタって昔から 桂一の世話ばっかりで
ろくに遊んでもいなかったもんね。
周りからも よく言われたわよ。
「お宅は きょうだい仲よしよね。
お兄ちゃんのこと大好きなのね」 って笑われちゃって。
晃?
まさか… 違うわよね?
そんなおぞましいこと… してないわよね?
なんのこと?
そうよね。 アンタがそんな バカなまねするわけないものね。
ねぇ お母さん ひとつ 聞いてもいい?
何よ?
どうして私を産んだの?
桂一のためよ。
両親が死んだとき 私は誰も 頼れる人がいなくて孤独だった。
あの子に そんな思いをさせないために
晃を産んだのよ。
私 ちょっと化粧直してくるわね。
ホントに帰っちゃうの? 俺が居候してるところ
宿だから泊まっていけばいいのに。 もう切符とってあるから。
え~ そんなのキャンセルすれば?
福岡に転勤になったんだ。 えっ?
向こうへ行ったら もうめったに会えないだろうな。
えっ そんなの寂しい。
じゃあ 来るか? 一緒に。
えっ?
冗談だよ。
それより さっさと 妹 迎え行ってこい。
なんでそうなるの。 正しいことをするんだろ?
いや だから… それは…。
広瀬が言う正しさって
いったい誰にとっての 正しさなんだ?
世間にとってのか? 妹にとってのか?
他の誰でもなく お前にとっての正しい答えを選べ。
じゃあ 行くわ。 元気でな。
俺 もう剛つんに会えないんじゃ ないかって思ってたから
また会えて ホントにうれしかった。
だから これっきりみたいに 言わないでよ。
福岡 遠いけど また会いに来てよ。
そんで 俺が泣き言 言ったら また叱ってよ。
会いたいなら そっちが会いに来いよ。
そっか… その手があったね。
とにかく 剛つんは 一生 俺の友達でいてね。
ちょっ 何すんの!?
お前は そっちのほうがいいよ。
余計なもん見るな。
一つだけ見えてりゃいいんだよ。
頑張れよ。
~
きっつ!
よくこんなの掛けてられんな。
~
剛つんは 一生 俺の友達でいてね
何が 「一生の友達でいてね」だよ。
俺は一生…。
言えないんだよ。
他の誰でもなく
お前にとっての 正しい答えを選べ
《晃が俺から離れて
それを 俺が追いかけて。
また同じことを繰り返す》
《だけど 今度こそは
俺にとっての 正しい選択をするんだ》
(玄関チャイム)
アキ? どうしたの こんな時間に。
どうしても 珠希の顔が見たくて。
アキってば 私の彼氏ですか?
惚れちゃうじゃん。
とりあえず 入ったら?
珠希は あったかいなぁ。
珠希といるだけで 心が ぽかぽかする。
大好き。
どうした?
ごめん 急に告白しちゃって。
じゃあね。 おやすみ 珠希。
アキ…。
~
心配しないで。
帰ったら連絡するから。
《帆奈:きょうだいは 離れ離れになったまま
長い月日が流れました》
《帆奈:そんなある日
町に大きな嵐がやってきました》
《帆奈:先頭に立って 町のみんなを
高台に避難させた青年は 1人逃げ遅れて
暗い海の中に飲み込まれ
やがて力尽き
海の底へと沈んでいきました》
~
桂一…。
今更 何しに来たのよ。
珠希ちゃん?
どうしたの?
アキが…。
もしかして アンタが晃を連れ出したの?
連れ出した?
あの子 昨日から帰ってないのよ。
えっ?
お見合い? なんで 勝手に そんなことしたんだよ!
あの子のために決まってるでしょ。
あの子のため?
自分のエゴのために 晃を利用しただけだろ!?
晃のことなんか どうでもいいくせに!
どうでもいいわけないでしょ!?
あの子は 私の娘なのよ!
だったら…。
もう 晃には関わらないで!
文句があるなら俺が聞くから。
不満も怒りも ぶつけるなら俺だけにして!
(ドアの閉まる音)
その…。
何から話せばいいのか…。
私 全部 聞いてます。
知ってますから…。
そう…。
アキ… いきなり いなくなっちゃって
ずっと心配で 気になってて…。
やっと会えたと思ったら
もう ボロボロで 今にも 崩れちゃいそうで…。
(鼻をすする音)
連絡するって言ったのに…。
帰ったら ちゃんと 連絡するって…。
心配しないで。 帰ったら 連絡するから
帰る…?
はい…。
帰るって… 晃は 君に そう言ったの?
はい…。
晃が 帰る場所…。
わかったんですか?
もしかしたら… いや 帰るっていうか…。
早く行って… 心当たりがあるなら 早く!
でも 違うかもしれない…。
早く行け! 行け ヘタレ!
はい…!
《もし 俺と晃が 他人として 出会っていたなら
家庭を作るなんて未来が あったんだろうか?
俺みたいなヘタレを
晃が選ぶはずがない》
~
《そもそも 赤の他人だったら…》
おかえりなさい ヘタレ。
いただきます。 いただきま~す
《出会うことすら なかったんじゃないか?》
これ以上 桂ちゃんに 何かしたら
絶対 許さないから!
桂ちゃん 甘いの好きじゃん。
私が 誰を好きか
桂ちゃん 知ってるくせに…
行かないで…。
こっちじゃなくて… あっ…。 あっ あっちだ
《だから 俺たちは
兄と妹として 生まれてきたんじゃないのか…》
私たち 夫婦なんです。
ただいま
晃!
晃!? 晃!?
晃!
晃!
晃!? 晃!?
晃!
晃… 晃!?
晃… アキ…。
桂ちゃん…。
おい! 晃!?
泣かなくても… 大丈夫ですから。
大丈夫じゃないだろ!
こんなところで 1人で なに やってんだよ!
約束しましたよね?
また 来ようって…。
2人で 一緒にだろ!
勝手に 1人で来んなよ!
自殺するとでも思ったんですか?
しませんよ… そんなこと…。
するわけないじゃないですか…。
~
だって 私
桂ちゃんのために 生まれてきたんだから…。
お母さんに言われたんです…。
桂ちゃんを 1人にしないために
私を 産んだんだって…。
普通だったら
そんなこと言われたら…。
怒ったり… 悲しんだりするのかな?
でも私…。
うれしかったんです。
うれしい?
だから…。
私は…。
桂ちゃんといなきゃ だめなんだって…。
やっとわかったから…。
妹のままだとしても…。
ごめん 晃…。
えっ?
俺は 晃を…。
妹として見られない…。
兄にはなれなかった。
晃の気持ちをわかっていても
俺は 何もあげられない。
何もいらないから…。
桂ちゃんをください。
~
新婚さん?
そうなんです 新婚です。
あら そう 私も そんな頃があったわ。
若輩者ですが…。
《帆奈:逃げ遅れ 暗い海の中に沈んでいく
彼の腕を引っ張る 手がありました。
それは とても美しい人魚です。
人魚は 彼を引き寄せて言うのです。
やっとわかったわ。 きっと私は こうして
あなたを救うために 人魚になったのね》
外回り 行ってきます。 おぅ 頑張れよ。
《気がつくと青年は 浜辺に打ち上げられていました》
《彼は思います。
あれは 夢だったのだろうかと》
安心したとともに 涙があふれてきました。
《穏やかな波の音にまぎれて
つぶやくのです。
とても大事な人の名を》
晃…。
晃!
は~い!
行こう。 うん。
《あなたがいると 私は輝ける》
《あなたがいるだけで 私は 自分のことを好きになる》
《2人:私は 私の普通と生きていく》
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