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桂ちゃん!
桂ちゃん!
桂ちゃん! んっ?
いいかげん 起きてください!
晃さん… 春は 寝るもんですよ。 はっ?
春眠 暁を覚えず っていうじゃないですか。
いいから さっさと起きんか!
む~っ! 早く起きて!
やだ~っ! 起きて!
(桃子)おいしそう! おいしそうですね。
こうしてると なんだか 娘ができたみたい。
(2人)フフフフフ…。
上手 いい香りがしてきた。
わぁ~ きれいじゃない?
お味噌汁も いい感じですね。
ちょっと 飲んでみる? いいんですか? うん!
いただきま~す! (3人)いただきま~す!
よしよし じゃあ 卵焼きから食べちゃおうかな。
あま~っ!
おいしい~! 幸せ~。
さっきまで グズグズしてたくせに。 んっ?
明日からは 1人で起きてくださいね。
晃さん 無理です…。 無理じゃないです!
ムリムリ…。 無理じゃない。
2人とも ホント 仲よしだよね。
新婚さんだもんね~。
あっ ハハ いや…。
< ここに来て もうすぐ 4か月。
この宿に 住まわせてもらいながら
晃は 仲居として働き…>
<俺は 伝さんが営む 出版社で働いている>
桂一くん。 はい。
ちょっと おつかい 頼まれてくれるかな?
あっ はい。 よろしくね。
< ここには 俺たちを知る人はいない>
< ここでなら 何にも縛られず
自由に生きていける気がする>
~
< たとえ それが
正しいことじゃなくても…>
(松本)広瀬!
な~んか お前 すっかり この土地に なじんだよな~。
そうかな?
にしても ありえねえよ。
なんで 結婚したの 黙ってたんだよ?
ああ… うん…。
でも 晃ちゃん ホント いい子だよな~。
伝さんも桃子さんも褒めてたぞ。
晃は 昔っから しっかりしてて…。
昔から…。
えっ… 昔からの知り合いなの?
あっ えっと… 幼なじみでさ。
幼なじみ… そんな子 いたんだ?
あっ おつかいの途中だったから行くわ。
あとで 会社でね。 ああ。
~
んっ?
ここか…?
(玄関チャイム)
すみませ~ん! 月虹社の者ですが。
(帆奈)は~い! 今 行きま~す!
あっ… えっと
あっ… 編集長から お届け物で…。
ありがとう!
~
じゃあ これで…。
あっ あの… もしよかったら お茶でも…。
ちょうど フレンチトースト焼いて…。
なんか… 焦げてます?
えっ?
ヤバい!
ヤバい!
あ~っ 焦げてる! ヤバいヤバい ヤバい!
これじゃ 食べられない… よね?
せっかくなんで いただきます。
~
どう?
うん… あの…。
~
うわっ! 何これ マズッ!
ハァ… もう私ホント ドジだから
何やっても失敗しちゃうの。
僕もです。
うちには 妹がいるんですけど 妹は しっかり者で。
うちも一緒。 えっ?
私の弟は すっごくしっかりしてる子で
なんでもできて 優秀そのもの。
私の自慢。
弟…。
え… あの… どうしました?
あなた 弟に少し似てる。
どんどん洋服とか ちっちゃくなっちゃって。
そう あっという間に おっきくなるのねぇ かわいい。
ありがとうございます。 いいえ また来てよ ねっ。
じゃあ これで。 これから町内会の集まりに
行かなくちゃならなくて。 え~ そうなの 赤ちゃん連れて?
そうなんです いつもは お義母さんが見てて
くれてるんですけど 今 腰悪くしてて。
えっ 大変ねぇ そっか…。 あの よかったら
私が見てましょうか? えっ?
あの 私 保育の資格持ってて。 でも ご迷惑じゃないですか?
全然 迷惑なんかじゃないですよ。 そう?
じゃあ 預けたら? どう? 奥さん。
こんにちは。 かわいいね。
お留守番していられるかな?
いい子だね。
あ… ごめんなさい 急に。
あの… 気になってたんですけど
隣の部屋って…。
アトリエよ。
あ…。
すごいですね。
この絵 きれいです。
ありがとう。 弟よ。
~
あっ そうだ あなた名前は?
あっ 広瀬桂一です。
桂一… よろしくね 桂一。
お母さん すぐ帰ってくるからね。
お昼寝しよっか。
ねんねできる?
《桂ちゃんと私の子だったら どうなるのかなって…。
たった一瞬だけなら…。
思うだけなら 許されるのかな…》
~
絵本作家? うん。
帆奈さんの絵本作家としての デビュー作は… あっ あった これだ。
彼女は ご両親の仕事の関係で 外国育ちでね
外にも遊びに行かないで ずっと絵を描いていたらしい。
僕は 帆奈さんのファンでね。
いつか彼女と絵本を作りたいって 思ってるんだよね。
~
はい お待たせ。 ありがとうございます。
はい どうぞ。 おいしそう。
うわぁ すっごい!
桂一くん タコ好き? はい 大好きです。
そう よかった。 じゃあ 食べようか。
いただきま~す。 (晃たち)いただきます。
たくさん食べてね。 ありがとうございます。
(桃子)はい どうかな?
おいしい! (桃子)あぁ よかった!
桂ちゃん 人生最期の食事は タコ料理って決めてるもんね。
うん。
人生最期って 君たちは まだまだ これからでしょ。
子供が生まれることも あるだろうし 先は長いよ。
(伝二/桃子)ねぇ~。
~
何する? あぁ コップ 拭いて。
ヘイヘーイ。
なぁ 晃。 ん?
今度の休み 2人で どっか行かないか?
え? こっち来てから どこも行けてないし
たまにはさ…。 うん… いいですね。
じゃあ どこ行きたいか 考えといて。
どうした?
あの… 桂ちゃん…。
ん?
私と子供… つくりませんか?
え?
え? それは… 俺たちには…。
冗談ですよ 冗談 そんな顔しないでください。
真顔で 冗談 言うなって。 心臓止まるかと思った。
じゃあ まね事だけなら?
え?
子供をつくる まね事なら
私たちにもできますよ。
先 風呂 入ってくるな。
じゃあ 行きたいとこ 考えといてな。
相変わらず… ホント ヘタレ。
私と 子供… つくりませんか?
桂ちゃん? ん? どうしたんですか?
いつにもまして ボーッとして。 あぁ いや…。
なんですか? ここに来るの 気が進まなかったんですか?
いや そんなことないよ。 楽しみにしてたよ。
いつか来てみたかったの 桂ちゃんと海に。
(松本)へぇ 2人 出かけてるんだ。
うん 夫婦水入らずで デート。 新婚さんだもん。
新婚さん…。
ん? いや なんか あの2人
新婚さんって感じが しないからさ。
ん? なんていうか…。
伝さんと桃子さんみたいに
長年 連れ添った 夫婦みたいだから。
フフフ… 幼なじみらしいからね。
身内みたいなもんでしょ。
そういうもんか。 (桃子)うん。
これは ホラーだ。 あの世への入り口だよ。
行くよ 桂ちゃん。
え?
桂ちゃん… 死のう。
私たち 結ばれないなら やっぱり死のう。
晃。
見て 桂ちゃん。
きれい。
うん。
今なら… 死んでもいいかな。
えっ?
ウソ 死にたくない。
桂ちゃんと一緒にいたい。
また一緒に ここに来よう。
~
シャワー借りたよ。
寝てるし。
何すか 先輩 クマすごいですよ。
あっ? もしかして 朝帰りっすか?
だったら なんだよ。 え~ あっ… っつうか
あの人のことは もういいんすか? あの へっぽこ眼鏡は。
お前 朝から よく ペラペラしゃべるな。
ごまかさないでくださいよ。
アイツとは あれ以来 会ってないよ。
えっ そうなんですか?
行くぞ。
バカなこと 言ってんじゃねえよ!
あのころは もうちょっと マシだっただろうが!
~
よいしょ。
イッタ~ もう…。
(バイブ音)
(ため息)
~
《アキ どこにいるの?》
(桃子)どう? すてきです とっても。
ねぇ 七夕に間に合うように こしらえないとね。 はい。
まぁ どちらも お似合い。
浴衣を作るなんて 初めてです。 え~ そうなの?
はい 浴衣 憧れてたんですけど
お母さんが 仕事で 忙しい人だったから
言いだせなくて。
夢が一つ かないました。 夢なんて 大げさね。
ここでなら どんな夢も かなう気がします。
フフッ。
帆奈さんて 弟さんがいるんですよね。
えっ? すごく しっかりした弟だって。
うん… でもね
弟さんは もう亡くなってるんだ。
えっ?
重い病気だったらしくてね。
帆奈さんは 自分が助けてあげられたらって…。
(伝二)帆奈さんの絵本は 全部 弟さんのために描いたものなんだ。
だから もう描くことはないって…。
でも 僕は どうしても諦めきれなくてね。
帆奈さんが描いた絵本を また読んでみたいんだよね。
僕も 読んでみたいです。
そうか。
帆奈さん なんだか 魅力的な人でしたから。
~
(玄関チャイム)
帆奈さ~ん こんにちは 桂一です。
留守か…。
(ガラスが割れる音)
えっ?
えっ!?
えっ!?
帆奈さん!?
帆奈さん 帆奈さん!?
うん…。
あっ あの すみません 勝手に入って…。
カイト…。 うん?
あっ あの…。
失礼しました!
~
浴衣ができましたよ はい。
わぁ! まぁ!
いいのができたわね! すてきです…。
ねぇ!
ホント 晃ちゃんには感謝してるのよ。
しっかりしてて 働き者だし。
いえ そんな…。
正直でウソがないしね。
あら きれいだわ~。
うわぁ ホントいいのができたわね。
いや 今日はあっついな~。 はい。
あれ? おい まだか?
早くしないと混むぞ! は~い!
早く。 お待たせしました。
~
お待たせしました どう? モデルさんみたいでしょ。
うん? どうしたの?
いや あの…。
自分の嫁さんに 見とれるヤツが あるか!
ほら 桃子さんも準備 準備。
あっ そうね 私も準備しなきゃ。 暑い 暑い…。
ねぇ 早く着替えなきゃ 着替えなきゃ。
似合ってるよ。
ホント?
うん かわいい。
~
桂ちゃん。
うん?
《桂ちゃん 何か悩んでるの?》
何? 晃。 ううん なんでもない。
~
最近の子は夢がないな。
せめて100万円って 書けばいいのに。
あきら…。
なに おじちゃん。 僕に 何か用?
君 あきらっていうの?
これ 君が書いたの? うん!
ほら あきら行くぞ! うん!
じゃあね おじちゃん! じゃあね。
おじちゃんって それはないだろ。
~
《きれいな人…》
みんな いろんな 願いごとがあるのね。
すてきね。 はい。
あっ よかったら使ってください。
ううん いいの。
私の願いはもう 叶うことはないから。
書けた? うん。
願いごと 何て書いたの?
教えない。
(松本)広瀬!
おぉ まっさん。 こんにちは。
晃ちゃん 浴衣 すごく似合ってるね。
あっ 写真 撮ろっか?
あぁ えっと…。
撮ってもらおう。 うん。
じゃ この前で。
ほら もっと寄って。
よし いくぞ。
(カメラのシャッター音)
おっ かわいい。
めっちゃいい感じじゃない?
あぁ ホントだ。 ありがとうございます。
じゃ あとで送るわ。 オッケー。
じゃあ。 また。
じゃあ 上 行こっか。 うん。
帆奈さん。
ごめん すぐ戻るから。 えっ?
~
あの… この間のこと ちゃんと話したくて。
ごめん 寝ぼけてた。 人違いだったの ホントごめん。
カイト…。
えっ?
あのとき 俺のこと その人と間違えましたよね。
亡くなった弟よ。
広瀬のヤツ 晃ちゃんおいて 何してんだか。
帆奈さん なんだか 魅力的な人でしたから
私 桂ちゃん捜してきます。 (松本)えっ?
海斗は ダメな私を いっつも助けてくれた。
だから 海斗が 白血病になったとき
今度は私が 助けてあげなきゃって。
でも 私の骨髄は 海斗と適合しなかった。
そのとき初めて知ったの。
海斗と私は
血がつながらない 姉と弟だったんだって。
海斗は 私の手を握って 天国に旅立った。
その時 ようやくわかったの。
なんで 海斗が
私のことを 姉さんって 呼んでくれなかったのか。
なんで 時々 思いつめた顔で 私を見てたのか。
私は 海斗の気持ちに
何も気づいてあげられなかった。
1人でいかせちゃった。
どうしたの 桂一。
弟さんは… 本当に賢い人だったんですね。
俺なら伝えてました。
自分の気持ちを。
え?
伝えたって どうしようもないのに…。
俺には どうしたって
晃の望むものは あげられないのに。
なのに…。
俺のところにしばりつけて。
いい写真だなぁ。 あっ。
(バイブ音)
(敦子の声)わっ いい写真だね。 広瀬も晃ちゃんも楽しそう。
(敦子の声)広瀬って ホント 妹と仲いいよね。
妹?
妹なんです。
俺の嫁さんは 血のつながった妹なんです。
おじちゃんだ! おじちゃん!
遊んで! おじちゃん 遊んで!
ねえ ねえ! わかった じゃあ来い!
(2人)わ~!
~
《桂ちゃんは 私といると笑顔になれないの?》
鬼ごっこ…。 鬼ごっこだ!
じゃあ お姉さんに捕まるな! ほら お姉さんに捕まるな!
逮捕しちゃうぞ! (笑い声)
タッチ! ああ… 俺 鬼?
《桂ちゃんは私といると 幸せになれないの?》
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