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南！
優くん 京大だって？

おかげさまでなんとか｡

お兄ちゃん
お祝い ５万もくれたんだよ｡

いいのに｡
(くしゃみ)

ねぇ お母さん
今度さ 温泉でも行こうよ｡

えぇ？
私も やっと落ち着いたし➡

２人で のんびりしない？
そうね～｡

行こうよ お金なら 私 出すし｡

＜一人息子の
大学合格に喜ぶ香保さん＞

大学のお金も
いろいろかかるんじゃないの？

大丈夫よ｡

＜ と そのお母さんの ﾖｼ子さん｡

そんな ﾖｼ子さんも傷ついている＞

ただいま～｡

おかえり｡
ただいま｡

いや よいしょ…｡

よっ よいしょ…｡

な～んだ お母さん
まだ食べてなかったの？

俺のこと待たなくていいから
先 食べててって｡

う～ん 今日は たまたま
片づけることあったから｡

ん？

何？ 旅行？

うん 香保が
温泉にでも行かないかって｡

ふ～ん｡

優くんの受験が 落ち着いて
やっと のんびりできるからって｡

ふ～ん いいじゃん 行ってきなよ｡

う～ん… でも
私がいないと ｱﾝﾀ 困るでしょ｡

子どもじゃないんだからさぁ…｡

２日や３日くらい
どうってことないよ｡

いただきます｡
はい いただきます｡

俺のことなんかさ
気にしないでさ➡

旅行でも お芝居でも
どんどん 出かけたらいいんだよ｡

う～ん まぁ そうね｡

ほら 仲よかった
友達の人 いたじゃない｡

あの 善福寺の｡
あ～ 福島さん？

うん｡
う～ん 体 悪くして➡

入院してんのよ｡

あの… もう１人いたでしょ
あの 国立の｡

立花さん｡

う～ん 田舎暮らしがしたいって➡

去年 ご夫妻で
信州に移られたのよ｡

新しい友達 作ればいいんだよ｡

そうね｡

それにさ 最近はさ
お一人様みたいなのも➡

はやってるんだって｡

とにかくさ
のんびり楽しいことしてよ｡

俺のことなんか
気にしないでいいからさ｡

私に？

あっ うちの
販売促進ｷｬﾝﾍﾟｰﾝの一環で➡

たまに お客さんに
配ったりするんですよ｡

余りもので
申し訳ないんですけど➡

どうかなって｡
行かないの？

あぁ 俺はね こういうの➡

ちょっと よく
わかんないんですよね～｡

あっ それに この日 あの～
うちの おふくろが➡

上京してくるんで｡
お母さんが？

なんか 久しぶりに
顔が見たいとかで｡

まぁだから たまには
ごちそうしてやろうかなと思って｡

はい｡

あっ こういうの お嫌いですか？

ううん｡
あっ じゃあね➡

誰か 誘って行ってくださいよ｡

捨てるのも もったいないから｡
あっ じゃあ ありがとう｡

あの あっ じゃあ えぇ
あざした｡

ご苦労さん｡
あざした！

(ﾄﾞｱの閉まる音)

で ｺﾞﾐｽﾃｰｼｮﾝの清掃と➡

それから あの～
小学校の登下校の見守りは➡

各班の持ち回りで
よろしくお願いします｡

はい なんかありますか？

なければ 今日は こんなところで｡

はい どうも お疲れさまでした！
(一同)お疲れさまでした｡

あ～ 佐藤さん！

あの～ このあと まだ時間ある？

あっ はぁ…｡
ちょっと 話あるんだけど➡

いいかな？
はい｡

あぁ… じゃあ｡

いや～ もうﾎﾝﾄに悪いね
わざわざ時間 取らせて｡

いえ｡
あっ あのね➡

こちらの皆川さん 先々月ね
２丁目に越してきたばかりでね｡

あっ まだ
会ったことなかったよね？

はい…｡

じゃあ ちょっと座りましょう｡
うん いったん…｡

いったん いったん座りましょ｡
うん ﾍﾍﾍﾍ…｡

でね あの～ 皆川さん
娘さんと ２人暮らしなんだよ｡

ねっ｡
はい｡

娘さん まだ 一人なんだってさ｡

それで あの 話っていうのはね➡

佐藤さんの息子さん
どうかなと思って｡

えっ？
いやいや あの ほら➡

こちらの娘さんも
一人って聞いて➡

悟志くんのことが
もう頭に ﾊﾟｰって浮かんでさぁ｡

で 近所に
これこれ こういう人がいるから➡

一回 話してみないかって
声をかけたわけ｡

うん…
いやいや これは もう ﾎﾝﾄに➡

私のね おせっかいよ｡
本当に 余計なお世話なんだけど｡

ほら 悟志くんのこと
こんなときから知ってるから➡

放っておけなくて｡

今はね １人で
自由気ままにっていう➡

若い人も多いけど｡

子どもが いつまでも
一人っていうのは➡

やっぱり心配だよ｡

自分の老後よりさ
子どもの老後が➡

気になっちゃったりして｡
(笑い声)

会長｡
はいはい｡
ちょっといいですか？

あぁ はい わかりました｡

まぁ あの そういうことでね
まだほら お互いのことも➡

よく知らないし
まず あの 親同士で➡

ざっくばらんに
話でもしてみてよ｡

ねっ ﾌﾌﾌﾌ…｡

じゃあ まぁ そういうことで
よろしくね｡

はいはい どうも うん｡

昔から おせっかいな人でね…｡

(笑い声)

(香保)あっ お母さん？

えっ？ お兄ちゃん お見合い？

独身のお嬢さんがいるからって➡

自治会長さんに
親御さんを紹介されてね｡

えっ 娘さんって どんな人？

ｱﾝﾀと同い年よ｡

43歳 銀行に勤めてるんだって｡

いや そのお母さんの物腰が
やわらかくて➡

もうﾎﾝﾄに 控えめな人でね～｡

えぇ いいじゃない｡
お兄ちゃんに話してみたら？

周りが やいのやいの
言うのもね～｡

え～ 誰かいい人
いないかしら？

って お母さん
いつも言ってたじゃない｡

まぁ そうだけど｡

お兄ちゃんが結婚したら➡

お母さんだって
のんびりできるじゃない｡

ﾌﾌｯ いつまでも
世話焼いてないで➡

お母さんも 好きなことしたら？

いいお天気でよかったね～｡
(笑い声)

お弁当 おむすび おいしかった！
富士山 見た？

見た 見た 見た…｡

《好きなことと言われても…》

あっ ちょっと
休んでいきませんか？

あぁ…｡

どうぞ｡

あぁ…｡

いらっしゃい｡

あっ どうも｡

あっ 注文… しなくちゃね｡

ｵﾚﾝｼﾞｼﾞｭｰｽ お願いします｡

了解｡

♬～

ｽﾅｯｸに入るのは 初めてなの｡

こういう 雰囲気の喫茶店には
よ～く 昔 行ったわ｡

今は ｶﾌｪばっかりでしょ｡

私なんか 入りづらくて｡

今日も お疲れさま｡

いただきます｡

う～ん｡

おいしい！

すごく おいしい｡

お一人でやってらっしゃるの？

えぇ｡
まぁ～ すごいわね～｡

(ﾊﾞｲﾌﾞ音)

(悟志)｢打ち合わせが入り
帰りは９時頃です｡

先に食べててください｣｡

息子からなの｡

ご飯の支度しなくちゃと➡

思ってたけど
なんだか気が抜けちゃった｡

私 １人なら
お茶漬けでもかまわないし…｡

今夜は ちょっと
冷えるらしいですよ｡

わぁ…｡

あぁ おいしそうね～｡

いかがですか？

いかがですか？

いただいてみようかしら｡

ﾁｰｽﾞ 大丈夫ですか？
えぇ｡

♬～

はぁ～ そうやって食べるの？

♬～

お嬢さん お一人なんですか｡

もう 結婚する気は
ないようなこと言ってますが｡

私は いい人がいたら
結婚してほしいなって｡

先々のこと考えると
やっぱりね～｡

夫が もう いませんし
一人っ子なので➡

結婚すると
私が１人になってしまうのを➡

気にしてるようで｡
まぁ お母さん思いなんですね～｡

いえいえ…｡
で ご主人は？

いつ亡くなったんですか？

５年前です｡
あら～ うちと一緒｡

あら そうですか～｡

５年前に突然倒れて そのまんま｡

大変でしたね～｡
お互いに｡

私のことは いいんです｡

娘には 幸せに
なってもらいたいんです｡

あの～ もしも➡

ご縁がありましたら➡

なにとぞ
よろしくお願いいたします｡

いやいやいや…
こ… こちらこそ｡

落ち葉が いっぱいですもんね｡
ねぇ もう ﾎﾝﾄに｡

今日は
どうもありがとうございました｡

いえ そのうちにまた｡

楽しかった｡
そうだね～｡
ねぇ～｡

まぁ…｡

(ｵｰﾌﾞﾝﾄｰｽﾀｰの音)

はい どうぞ｡

♬～

熱いので 気をつけて｡

初めて食べるの｡
ｵﾆｵﾝｸﾞﾗﾀﾝｽｰﾌﾟ｡

いただきます｡

あつっ… 熱い 熱い…｡

ん… おいしい｡

ごちそうさまでした｡

とっても おいしかったわ｡

外で ごはんを食べるなんて
久しぶり｡

あぁ｡

知り合いがくれたんですけど｡

私も この店があるんで
どうしようかな～と思って｡

あ～ ｼｬﾝｿﾝ｡

あ～ 私が若い頃は
はやったのよ｡

そうなんですね｡
うん 私も好きでね｡

よく聴いたわ｡

ｲｳﾞ･ﾓﾝﾀﾝ｡

ﾋﾟｱﾌ ｱﾀﾞﾓ｡

まだ 子どもも小さくて➡

自分の時間なんか 全然なくて｡

でも 心の潤いみたいなものが
欲しくて➡

夜中に 音 小さくして
ﾚｺｰﾄﾞ聴いたりしてねぇ｡

時間が 有り余るようになったら➡

やりたいことも
一緒にやる人も➡

いないなんてね～｡

じゃあ 久しぶりにどうですか？

えっ？

よっ！

まさか？ えっ ｼｬﾝｿﾝ？

ﾏｲｸは あちら｡

あちらって言われても いや…｡
適当に合わせますから どうぞ｡

どう… どうぞって言われても｡

♬(ｱｺｰﾃﾞｨｵﾝ)

何を… 歌えばいいのかしら？

♬(ｱｺｰﾃﾞｨｵﾝ)

♬｢今の あなたの気持ち｣

♬(ｱｺｰﾃﾞｨｵﾝ)

♬(ｱｺｰﾃﾞｨｵﾝ)

♬｢俺のことは心配しないでと
言う息子｣

♬｢心配するわよ 親なんだし｣

♬｢周りは あれこれ言ってくる｣

♬｢だけど
これだけは 言わせてよ｣

♬｢聞かせてよ｣

♬｢かわいそうだなんて
思わないで｣

♬｢あの子には
あの子の人生があるの｣

♬｢私だってそうだわ
おひとりさまだけど｣

♬｢かわいそうじゃないわ｣

♬｢頑張って
やってきたんですもの｣

♬｢そうよ そのとおり｣

♬｢自治会の帰り道
路地裏のｽﾅｯｸに１人で入って｣

♬｢初めて会った人の前で
歌ってる｣

♬｢人生
何が起きるかわからない｣

♬｢そうよ
思いがけないことばかり｣

♬｢退屈なんて してられないわ｣

♬｢今まで 歩んできた
この細く長い道｣

♬｢なんでも好きなことやりなと
言われても｣

♬｢でも これだけは言わせてよ｣

♬｢聞かせてよ｣

♬｢人生 何が起きるかわからない｣

♬｢今まで歩んできた
この 細く長い道｣

♬｢何でも好きなことやりなと
言われても｣

♬｢でも これだけは言わせてよ｣

♬｢人生まだ｣

♬｢これからなのよ｣

どうも ごちそうさまでした｡

まぁ すっかり
長居をしてしまって｡

あの…｡
もう ここで…｡

これ よかったら｡

あぁ いいんですか？
どうぞ｡

まぁ ありがとうございます！

じゃあ 遠慮なく｡

♬～

(ﾊﾞｲﾌﾞ音)

もしもし？

(皆川)あの～ 昼間
お目にかかった 皆川です｡

あぁ 皆川さん｡

先ほどは 失礼しました｡

ぶしつけに あれこれ
お尋ねしてしまいまして｡

いいえ…｡

帰ってきて娘に叱られました｡

私のことは 大丈夫だから
気にしないでいいからって｡

ﾌﾌｯ もう こちらの心配なんて
どこ吹く風で｡

そうですか｡

ひと言 おわびをと
夜分に失礼しました｡

いいえ こちらこそ ご丁寧に
ありがとうございました｡

あ… あっ あの～｡

はい？

ｼｬﾝｿﾝ お好きですか？

あぁ… そうですか｡

ただいま～｡

ただいま｡
あぁ おかえり｡

何してんの？
ん ちょっとね～｡

えっ？ ﾚｺｰﾄﾞなんて どうすんの？

う～ん また聴いてみようかな～
なんて思って｡

どうしたの？ 急に｡

ん？ お父さんのｽﾃﾚｵ
まだ 聴けるかしら？

もう 何年も使ってないもんね～｡

ちょっと 見てみようか｡

えっ そぉ？ ﾌﾌﾌﾌ…｡

どうだろう？

いくよ｡
うん｡

♬(ﾚｺｰﾄﾞ)

♬～

ご苦労さん｡
(鼻歌)

(鼻歌)

♬｢こぐまで～す｣

♬｢伝票で～す｣

ｼｬﾝｿﾝです｡

それは わかるけど｡
いや～｡

あのあと ﾈｯﾄで
改めて聴いてみたら➡

なんか
心にしみたっていうかね｡

へぇ～｡

哀愁があって いいっすよね～｡

前はね ああいうの
よく わかんなかったんですよ 俺｡

でも 俺も
大人になったんすかね～｡

♬｢ｼｮｾﾅｻｰﾝ ﾄｳｺさ～ん｣

♬｢こぐまさ～ん 酒屋さ～ん｣

♬｢また来ます｣

(歌声)

義理の母の誕生日で…｡

＜香保さんの同級生の南さん＞

ちょっと 聞いたよ！
優くん 京大だって？

あっ うん
おかげさまでなんとか｡

すごいね～｡

もうさぁ 優くんなんて
気安く呼べないね｡

これから敬語 使わなきゃ｡

＜ いつも元気で
明るい彼女も また➡

傷ついている＞

いらっしゃい｡